特許第6846565号(P6846565)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6846565
(24)【登録日】2021年3月3日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】壁高欄の養生方法及び養生シート
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/10 20060101AFI20210315BHJP
   E04G 21/02 20060101ALI20210315BHJP
   E04G 9/10 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   E01D19/10
   E04G21/02 104
   E04G9/10 101B
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2020-161447(P2020-161447)
(22)【出願日】2020年9月25日
【審査請求日】2020年9月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000103769
【氏名又は名称】オリエンタル白石株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592021984
【氏名又は名称】明治商工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【弁理士】
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】俵 道和
(72)【発明者】
【氏名】市川 達朗
(72)【発明者】
【氏名】宮内 慎介
(72)【発明者】
【氏名】勝山 正樹
【審査官】 荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−184310(JP,A)
【文献】 特開2001−048675(JP,A)
【文献】 特開平08−196153(JP,A)
【文献】 特開2002−227415(JP,A)
【文献】 特開2003−293380(JP,A)
【文献】 特開2018−162560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00−24/00
E02D 27/00−27/52
E04G 21/00−21/10
E04G 21/24−21/32
E04G 9/00−19/00
E04G 25/00−25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の壁高欄として現場でコンクリートを打設して養生する壁高欄の養生方法であって、
前記壁高欄の型枠にコンクリートを打設した後、樹脂シートの間に断熱材が介装された養生シートで前記型枠を覆い、前記養生シートに設けられたループ状の単管ペケットに挿通した単管パイプを重石として前記養生シートの端部を固定するとともに、
前記型枠の上に所定間隔をおいて複数のコの字状のスペーサーを載置して前記型枠の正面、背面、及び天面と前記養生シートとの間に温風が流通可能な所定の隙間を形成し、
前記壁高欄の内側の床版上に設置された加熱手段から前記養生シートの内側に温風を供給して給熱養生すること
を特徴とする壁高欄の養生方法。
【請求項2】
前記型枠の正面から背面に達するダクトホースを設置して前記型枠の正面と背面を連通し、前記加熱手段で温風を供給すること
を特徴とする請求項1に記載の壁高欄の養生方法。
【請求項3】
前記養生シート同士を面ファスナーで接合して前記加熱手段で温風を供給すること
を特徴とする請求項1又は2に記載の壁高欄の養生方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の壁高欄の養生方法に用いられる養生シートであって、
二枚の矩形状の樹脂シートの間に断熱材が介装された積層シートとなっており、
短手方向又は正方形の一方向の両端部に所定間隔をおいて単管パイプを挿通するループ状の単管ペケットが取り付けられ、且つ、長手方向又は正方形の他方向の一端部に面ファスナーが取り付けられており、隣接する他の養生シートと面ファスナーで接合可能に構成されていること
を特徴とする養生シート。
【請求項5】
前記樹脂シートは、少なくとも表面側となる一枚が黒色となっていること
を特徴とする請求項4に記載の養生シート。
【請求項6】
前記断熱材は、厚さの異なる2種類の発泡樹脂フォームから組み合わせ自在となっていること
を特徴とする請求項4又は5に記載の養生シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁高欄の養生方法及び養生シートに関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁上部工(上部構造)の施工において、冬期期間(日平均4℃以下)にコンクリートを打ち込む際は、寒中コンクリート対策が必要となる。寒中コンクリート対策の一つとして、凝結硬化の初期にコンクリートを凍結させない必要がある。コンクリートの凍結温度は、水セメント比、混和材料の種類、及びその量によって若干異なるが、およそ−2.0〜−0.5℃といわれている。
【0003】
また、コンクリートが凍結しないまでも5℃程度以下の低温に晒されると、凝結及び硬化反応が相当に遅延するため、一般的には初期凍害に対する抵抗性を有する5.0N/mm以上の圧縮強度が得られるまで養生温度を5℃以上に保つ必要がある。
【0004】
特に、橋梁の壁高欄のように吹きっ晒しで地面に接する他の道路より熱容量が小さく部位にコンクリートを打ち込む際は、放射冷却等で凍結するおそれが高く、凝結硬化の初期にコンクリートを凍結させない工夫が必要となる。
【0005】
従来、橋梁の壁高欄を現地でコンクリートを打設して養生する際は、ブルーシートと呼ばれるポリエチレンなどの合成樹脂製のシートで覆い、ジェットヒーターなどの加熱手段で加熱して給熱養生していた。
【0006】
しかし、このような従来の壁高欄の養生方法では、(1)シート同士の継ぎ目に隙間ができ、冷気がシート内に入り込むという密閉性が低いという問題、(2)現状行われているブルーシートや防炎シートでは保温性が低いという問題、があった。
【0007】
また、従来の壁高欄の養生方法では、(3)シートが軽く、且つ隙間があるため強風でシートが飛ばされるリスクが高いという問題、(4)シート同士を固定するのに労力がかかり施工性が悪いという問題、があった。
【0008】
その上、従来の壁高欄の養生方法では、(5)壁高欄の背面まで均一な温度を保つこができないという養生温度の不均一の問題、(6)シートの保温効果が低いため加熱手段の燃料が嵩みCO排出量が増加するという環境負荷が高いという問題、などがあった。
【0009】
従来の壁高欄の養生方法としては、例えば、特許文献1には、コンクリート1の打設後に複数の孔を有するホース2をコンクリート表面の所定箇所に設置し、保水性の繊維シート3aと不透水性のプラスチックフィルム3bを含むコンクリート養生シート3を用い、コンクリート養生シート3の保水性の繊維シート3aがコンクリート1及びホース2側に配置されるようにコンクリート1及びホース2を覆い、ホース2から水4を散水してコンクリート1の表面を湿潤させるとともにコンクリート養生シート3に吸水させ、コンクリート1の表面に吸水したコンクリート養生シート3を密着させてコンクリートの湿潤養生を行うコンクリートの養生施工方法が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0011]〜[0035]、図面の図1図3等参照)。
【0010】
しかし、特許文献1に記載のコンクリートの養生施工方法は、湿潤養生を行うことを主眼とするものであり、前記(1)〜(6)の問題を十分に解決することができるものではなかった。
【0011】
また、低温環境のコンクリートの養生方法としては、特許文献2に、基礎コンクリート1の天面側と基礎型枠2の外面側とを養生カバー3で覆って基礎コンクリート1を養生させる方法であって、養生カバー3として、基礎型枠2の外面側に面する領域に面状ヒーター8を備え、基礎コンクリート1の天面側に面する領域にはヒーターを備えないものを用い、面状ヒーター8で基礎コンクリート1を型枠の外側から加熱しながら養生させることを特徴とする基礎コンクリートの養生方法が開示されている(特許文献2の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0020]〜[0032]、図面の図1図3等参照)。
【0012】
しかし、特許文献2の基礎コンクリートの養生方法は、壁高欄の養生方法ではなく、前記(1)〜(6)の問題を十分に解決することができるものではなかった。特に、通電ヒーターで常時通電して加熱するものであり、壁高欄に適用した場合、施設の設置費用が膨大になるだけでなく、電気代も莫大なものになり、実現できるものではなかった。
【0013】
特に、加熱手段として燃料費が安いジェットヒーターを用いて壁高欄に給熱養生を行った場合、ジェットヒーターは、壁高欄の内側に設置するしかなく、壁高欄の背面側が凍結するおそれがあった。また、凍結しないようにジェットヒーターで壁高欄の正面側(内側)を高温にしすぎると、硬化速度にばらつきが生じ、コンクリートの品質に悪影響を及ぼすという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2017−66762号公報
【特許文献2】特開2003−293380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、前記(1)〜(6)の問題を解決すること、特に、加熱手段から遠い壁高欄の背面側も均一に保温することができる壁高欄の養生方法及び養生シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に係る壁高欄の養生方法は、橋梁の壁高欄として現場でコンクリートを打設して養生する壁高欄の養生方法であって、前記壁高欄の型枠にコンクリートを打設した後、樹脂シートの間に断熱材が介装された養生シートで前記型枠を覆い、前記養生シートに設けられたループ状の単管ペケットに挿通した単管パイプを重石として前記養生シートの端部を固定するとともに、前記型枠の上に所定間隔をおいて複数のコの字状のスペーサーを載置して前記型枠の正面、背面、及び天面と前記養生シートとの間に温風が流通可能な所定の隙間を形成し、前記壁高欄の内側の床版上に設置された加熱手段から前記養生シートの内側に温風を供給して給熱養生することを特徴とする。
【0017】
請求項2に係る壁高欄の養生方法は、請求項1に係る壁高欄の養生方法において、前記型枠の正面から背面に達するダクトホースを設置して前記型枠の正面と背面を連通し、前記加熱手段で温風を供給することを特徴とする。
【0018】
請求項3に係る壁高欄の養生方法は、請求項1又は2に係る壁高欄の養生方法において、前記養生シート同士を面ファスナーで接合して前記加熱手段で温風を供給することを特徴とする。
【0019】
請求項4に係る養生シートは、請求項1ないし3のいずれかに記載の壁高欄の養生方法に用いられる養生シートであって、二枚の矩形状の樹脂シートの間に断熱材が介装された積層シートとなっており、短手方向又は正方形の一方向の両端部に所定間隔をおいて単管パイプを挿通するループ状の単管ペケットが取り付けられ、且つ、長手方向又は正方形の他方向の一端部に面ファスナーが取り付けられており、隣接する他の養生シートと面ファスナーで接合可能に構成されていることを特徴とする。
【0020】
請求項5に係る養生シートは、請求項4に係る養生シートにおいて、前記樹脂シートは、少なくとも表面側となる一枚が黒色となっていることを特徴とする。
【0021】
請求項6に係る養生シートは、請求項4又は5に係る養生シートにおいて、前記断熱材は、厚さの異なる2種類の発泡樹脂フォームから組み合わせ自在となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1〜3に係る発明によれば、複数のコの字状のスペーサーを載置して型枠と養生シートとの間に隙間を形成して給熱養生するので、加熱手段から遠い壁高欄の背面側も均一に保温することができ、硬化速度も均一となりコンクリートの品質が向上する。また、請求項1〜3に係る発明によれば、断熱材が介装された養生シートで覆って保温するので、保温性が高く、加熱手段の燃料費を低減するだけでなく、環境負荷も低減することができる。そして、請求項1〜3に係る発明によれば、ループ状の単管ペケットに挿通した単管パイプを重石として養生シートの端部を固定しているので、施工性が高いだけでなく、捲れやすいシート端部が一直線状に重石が設置されることとなり、強風で養生シートが飛ばされるおそれが低減され、安全性が向上する。
【0023】
特に、請求項2に係る発明によれば、型枠の正面から背面に達するダクトホースを設置して温風を供給するので、さらに壁高欄を均一に保温することができ、硬化速度が均一となって壁高欄のコンクリートの品質が向上する。
【0024】
特に、請求項3に係る発明によれば、シート同士を面ファスナーで接合するので、養生シート同士の接合部分の密閉性が高くなり、温風が漏れないため保温性が向上するだけでなく、シート飛散のおそれも低減して安全性も向上する。また、請求項3に係る発明によれば、従来、結束バンドや紐でハトメ部分を結合するより格段に接合時間が短縮でき、各段に施工性を向上させることができる。
【0025】
請求項4〜6に係る発明によれば、断熱材が介装された養生シートで覆って保温するので、保温性が高く、加熱手段の燃料費を低減するだけでなく、環境負荷も低減することができる。また、請求項4〜6に係る発明によれば、ループ状の単管ペケットに挿通した単管パイプを重石として養生シートの端部を固定しているので、施工性が高いだけでなく、捲れやすいシート端部が一直線状に重石が設置されることとなり、強風で養生シートが飛ばされるおそれが低減され、安全性が向上する。その上、請求項4〜6に係る発明によれば、シート同士を面ファスナーで接合するので、養生シート同士の接合部分の密閉性が高くなり、温風が漏れないため保温性が向上するだけでなく、シート飛散のおそれも低減して安全性も向上する。また、従来、結束バンドや紐でハトメ部分を結合するより格段に接合時間が短縮でき、各段に施工性を向上させることができる。
【0026】
特に、請求項5に係る発明によれば、樹脂シートの表面側の一枚が黒色となっているので、日中の太陽の輻射熱を吸収して保温性が高く、環境負荷を低減することができる。
【0027】
特に、請求項6に係る発明によれば、断熱材は、厚さの異なる2種類の発泡樹脂フォームから組み合わせ自在となっているので、環境温度に応じて養生シート内の温度を調整可能となり、コンクリートの品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本発明の実施形態に係る養生シートを示す図であり、(a)が表面図、(b)が裏面図である。
図2図2は、同上の養生シートのペケット詳細図であり、(a)が表面図、(b)が側面図である。
図3図3は、同上の養生シートの構成を示す模式断面図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る壁高欄の養生方法のスペーサー設置工程を示す工程説明図である。
図5図5は、同上の壁高欄の養生方法のダクトホース設置工程を示す工程説明図である。
図6図6は、同上の壁高欄の養生方法の加熱手段設置工程を示す工程説明図である。
図7図7は、同上の壁高欄の養生方法の養生シート被覆工程を示す工程説明図である。
図8図8は、同上の壁高欄の養生方法の単管パイプ設置工程を示す工程説明図である。
図9図9は、保温効果確認試験体形状図である。
図10図10は、温度分布測定用試験体形状図である。
図11図11は、温度分布測定試験状況を示す写真である。
図12図12は、ケース1の経過時間と温度の関係を示すグラフである。
図13図13は、ケース2の経過時間と温度の関係を示すグラフである。
図14図14は、ケース3の経過時間と温度の関係を示すグラフである。
図15図15は、ケース4の経過時間と温度の関係を示すグラフである。
図16図16は、最高温度を比較したフラフである。
図17図17は、ブルーシートを用いた場合の温度変化を示すグラフである。
図18図18は、壁高欄用養生シートを用いた場合の温度変化を示すグラフである。
図19図19は、試験ケース毎の各測定点の最高温度を示すグラフである。
図20図20は、各測定点における最高温度と最低温度の温度差を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る壁高欄の養生方法及び養生シートの一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
[養生シート]
先ず、図1図3を用いて、本発明の実施形態に係る養生シートについて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る養生シート1を示す図であり、(a)が表面図、(b)が裏面図である。また、図2は、ペケット詳細図であり、(a)が表面図、(b)が側面図である。そして、図3は、本発明の実施形態に係る養生シート1の構成を示す模式断面図である。
【0031】
図1図3に示すように、本実施形態に係る養生シート1は、表裏二枚のA方向の長さH1=5200mm×B方向の長さH2=5200mmの正方形状の樹脂シート2、2’の間に、断熱材3が介装された積層シートとなっている。この養生シート1は、後述のように、現場打ちの壁高欄を覆い、加熱手段を用いて温風を供給して壁高欄を給熱養生する際に用いられる。
【0032】
(樹脂シート)
本実施形態に係る樹脂シート2、2’は、表面(天面)及び裏面(地面)のいずれもポリエチレンからなる117kg/m、1枚あたり4.4kgとなる従来の3000番手(厚手)のブルーシートより軽量な素材からなるシートである。勿論、樹脂シート2は、ポリエステルの基布に難燃剤を配合した塩化ビニルでラミネートコーティングした防炎シートや、ポリエチレンの基布に表面処理を行って自己消火機能を付加した難燃シートなど、としても構わない。要するに、本発明に係る樹脂シートは、ポリエチレンに限らず、他の樹脂からなるシートとすることができる。
【0033】
また、図1(a)に示すように、表面(天面)側の樹脂シート2のA方向(一方向)の両端部には、所定間隔をおいて単管パイプ(直径48.6mmの鋼管:JIS G 3444)を挿通するループ状の単管ペケット20が取り付けられている。これに対して、図1(b)に示すように、裏面(地面)側の樹脂シート2’には、単管ペケット20は取り付けられていない。
【0034】
この単管ペケット20は、図2(a)に示すように、一枚の長方形状のシート材からなるペケット本体20aが、中央付近に設けられた固着部20bで樹脂シート2に固着されている。また、ペケット本体20aの長手方向の両端部には、一対の面ファスナー20cが取り付けられている。このため、単管ペケット20は、いちいち単管パイプをペケットのループに横から挿通することなく、面ファスナー20cの圧着係合又は剥離離脱の作業だけで単管パイプを装着することができ、作業効率の高い構成となっている。
【0035】
その上、図1(a)に示すように、表面(天面)側の樹脂シート2のA方向と直交するB方向(他方向)の一端部には、面ファスナー21の雄部が取り付けられている。また、図1(b)に示すように、これと対応する裏面(地面)側の樹脂シート2’のB方向(他方向)の一端部には、面ファスナー21の雌部が取り付けられている。勿論、面ファスナー21の雄部と雌部は、逆になっていてもよい。要するに、養生シート1は、B方向に沿って、隣接する他の養生シート1と面ファスナー21で接合可能に構成されていればよい。
【0036】
なお、図1(a)、図1(b)に示す符号22は、トラロープや結束バンドなどの紐状のものを止め付けるための金属リングで補強された孔からなるハトメ部22である。
【0037】
また、少なくとも表面(天面)側の樹脂シート2は、即ち、表面(天面)側の樹脂シート2だけ、又は表面(天面)側の樹脂シート2及び裏面(地面)側の樹脂シート2’の両方は、従来のブルーシートと相違して黒色のシートなっていることが好ましい。日射が当たる外側となる表面(天面)側の樹脂シート2が黒色となり、日中の太陽の輻射熱を効率よく吸収することができ、保温性を高くすることができるからである。
【0038】
さらに、表面(天面)側の樹脂シート2と裏面(地面)側の樹脂シート2’は、例えば、樹脂シート2が黒色で樹脂シート2’が青色など、異なる色からなること、又は樹脂シート2の表面に養生中など表面(天面)であることが表記されていることが好ましい。養生シート1の表裏を作業員が間違えて出戻り作業となることを低減できるからである。
【0039】
(断熱材)
断熱材3は、図3に示すように、ポリウレタンを発泡させて平面視矩形状に成形した単数又は複数の発泡ポリウレタンフォームからなる。本実施形態に係る断熱材3は、厚さ2mm(65g/m)の発泡ポリウレタンフォーム3aと厚さ3mm(75g/m)の発泡ポリウレタンフォーム3bの2種類の発泡樹脂フォームが用意されている。このため、簡単に出し入れ可能な発泡ポリウレタンフォーム3a、3bを組み合わせることで、厚さ2mm〜10mmまで1mmごとにフォームの厚さを自由に選択可能となっている。このため、養生シート1は、全体の厚さが周りの環境温度に応じて適宜選択可能となっており、環境温度に応じて温度調整が容易となっている。
【0040】
勿論、本発明に係る断熱材は、発泡ポリウレタンフォームに限られず、他の発泡樹脂からなる発泡樹脂フォームとすることができる。また、本発明に係る断熱材は、発泡樹脂に限られず、多孔質材やグラスウールなどの繊維材など、熱伝達が遅く、断熱効果の高い素材することもできる。但し、本実施形態に係る断熱材3のように、発泡ポリウレタンフォームなどの発泡樹脂フォームとすることにより、安価な汎用樹脂からなり、軽量で取り扱い易い養生シートとすることができる。
【0041】
なお、養生シート1として、H1=5200mm×H2=5200mmの正方形状のものを例示して説明したが、正方形状に限られず、長方形状であっても構わない。但し、養生シート1は、二間三間の通常のブルーシートのようにH1=3600mm×H2=5400mmなど、A方向の長さH1<B方向の長さH2となる長方形状のシートであることが好ましい。つまり、養生シート1が長方形状の場合、A方向が短手方向であり、B方向が長手方向となっており、その短辺H1に沿って面ファスナー21が取り付けられ、隣接する養生シート1同士を長辺H2の方向(長手方向)に連接できるからである。
【0042】
以上説明した本発明の実施形態に係る養生シート1によれば、断熱材3が介装された養生シート1で壁高欄の型枠を覆って保温するので、保温性が高く、加熱手段の燃料費を低減するだけでなく、環境負荷も低減することができる。
【0043】
また、養生シート1によれば、端部にループ状の単管ペケット20を用いて、簡単に短時間で単管パイプを重石として養生シートの端部を固定することができる。このため、施工性が高いだけでなく、捲れやすいシート端部が一直線状に重石が設置されることとなり、強風で養生シートが飛ばされるおそれが低減され、安全性が向上する。
【0044】
その上、養生シート1によれば、養生シート1同士を面ファスナー21で接合できるので、養生シート1同士の接合部分の密閉性が高くなり、温風が漏れないため保温性が向上するだけでなく、シート飛散のおそれも低減して安全性も向上する。また、従来のブルーシートのように、結束バンドや紐でハトメ部分を結合するより格段に接合時間が短縮でき、各段に施工性を向上させることができる。
【0045】
さらに、養生シート1によれば、すくなくとも樹脂シート2の表面側の一枚が黒色となっているので、日中の太陽の輻射熱を吸収して保温性が高く、環境負荷を低減することができる。
【0046】
[壁高欄の養生方法]
次に、図4図8を用いて、本発明の実施形態に係る壁高欄の養生方法について説明する。前述の養生シート1を用いて現場打ちの壁高欄Wを覆い、加熱手段として灯油を燃料とするジェットヒーターJHを用いて温風を供給して壁高欄Wを給熱養生する場合を例示して説明する。
【0047】
なお、符号TGは、橋桁TGであり、符号S1は、床版S1である。また、正面とは、床版S1上に立った壁高欄Wの内側から壁高欄Wを見た状態で正面に見える面を指し、背面とは、正面の反対側の壁高欄Wの外側の面を指す(以下、同じ)。
【0048】
(スペーサー設置工程)
先ず、図4に示すように、本実施形態に係る壁高欄の養生方法では、壁高欄Wの型枠Kにコンクリートを打設した後、打設が完了した型枠Kの上に順次、コの字状の複数のスペーサー4を所定間隔をおいて載置して設置するスペーサー設置工程を行う。図4は、本実施形態に係る壁高欄の養生方法のスペーサー設置工程を示す工程説明図である。
【0049】
このスペーサー4は、樹脂、ゴム材、又は金属などジェットヒーターからの温風で変形しない材料からなり、型枠Kの上部に嵌め込んで載置するだけで温風を流通可能な50mm程度の所定の隙間が型枠Kの正面、背面、及び天面との間に同時に確保する機能を有している。
【0050】
(ダクトホース設置工程)
次に、図5に示すように、本実施形態に係る壁高欄の養生方法では、PF管やCD管などの樹脂製の可撓管からなるダクトホース5を設置するダクトホース設置工程を行う。図5は、本実施形態に係る壁高欄の養生方法のダクトホース設置工程を示す工程説明図である。
【0051】
このダクトホース5は、壁高欄Wの型枠Kの内側(正面側)下部付近から天面を経由して外側(背面側)下部付近まで達する長さの前述のスペーサー4で形成可能な隙間内に収まる径の可撓管である。
【0052】
(加熱手段設置工程)
次に、図6に示すように、本実施形態に係る壁高欄の養生方法では、ジェットヒーターJH及びそのダクト(図示せず)などの加熱手段を設置する加熱手段設置工程を行う。図6は、本実施形態に係る壁高欄の養生方法の加熱手段設置工程を示す工程説明図である。
【0053】
このジェットヒーターJHは、灯油を燃料とする一般的なジェットヒーターである。勿論、本発明に係る加熱手段は、ジェットヒーターに限られず、寒冷地域においてもコンクリートが凍結しない温度の温風を熱源から供給可能な加熱手段であればよい。
【0054】
なお、前述のスペーサー設置工程、ダクトホース設置工程、及び加熱手段設置工程は、いずれを先に行ってもよい。実際には、これらの3つの工程を壁高欄Wの型枠Kにコンクリートを打設した後、打設が完了した型枠Kに順次、同時並行に行う。
【0055】
(養生シート被覆工程)
次に、図7に示すように、本実施形態に係る壁高欄の養生方法では、前述の養生シート1で壁高欄Wの型枠Kを覆って被覆する養生シート被覆工程を行う。図7は、本実施形態に係る壁高欄の養生方法の養生シート被覆工程を示す工程説明図である。
【0056】
本工程では、養生シート1のB方向(図1参照)を型枠Kの長手方向である橋軸方向Xとして養生シート1で型枠Kを覆って、養生シート1の端部同士を面ファスナー21(図1参照)で接続して行く。
【0057】
(単管パイプ設置工程)
次に、図8に示すように、本実施形態に係る壁高欄の養生方法では、単管パイプP1を養生シート1に装着して重石とする単管パイプ設置工程を行う。図8は、本実施形態に係る壁高欄の養生方法の単管パイプ設置工程を示す工程説明図である。
【0058】
具体的には、一対の面ファスナー20c同士(図2参照)が剥がされた状態の養生シート1の単管ペケット20の上に、単管パイプP1を床版S1上を転がして載置し、一対の面ファスナー20cを押圧係合してループ状にすることで単管パイプP1を養生シート1に装着する。
【0059】
また、図8に示すように、単管ペケット20と型枠KやジェットヒーターJHなどの間に余ったスペースができないように、足場板APなどの長尺な重石を養生シート1の上に載置することが好ましい。ジェットヒーターJHで温風を供給するスペースを最小限化するとともに、強風で養生シート1がバタついて捲れ上がることを防止するためである。
【0060】
(給熱養生)
その後、本実施形態に係る壁高欄の養生方法では、ジェットヒーターJHを稼働して、加熱手段であるジェットヒーターJHから壁高欄Wの型枠Kを覆った養生シート1の内側に温風を供給して給熱養生する。
【0061】
このとき、本実施形態に係る壁高欄の養生方法では、スペーサー設置工程でコの字状のスペーサー4を載置して50mm程度の所定の隙間を型枠Kの正面、背面、及び天面との間に形成する。このため、壁高欄Wの正面側からジェットヒーターJHで供給した温風を型枠Kの背面側まで滞ることなく供給することができる。よって、加熱手段から遠い壁高欄Wの背面側も均一に保温することができ、コンクリートの硬化速度も均一となりコンクリートの品質が向上する。
【0062】
また、本実施形態に係る壁高欄の養生方法では、ダクトホース設置工程でダクトホース5を設置するので、温風を型枠Kの背面側までさらに滞ることなく供給することができ、加熱手段から遠い壁高欄Wの背面側も均一に保温することができる。よって、コンクリートの硬化速度もさらに均一となりコンクリートの品質が向上する。
【0063】
その上、本実施形態に係る壁高欄の養生方法では、断熱性の高い発泡樹脂フォームが介装された養生シート1で覆って保温するので、保温性が高く、加熱手段の燃料費を低減するだけでなく、環境負荷も低減することができる。
【0064】
それに加え、本実施形態に係る壁高欄の養生方法では、ループ状の単管ペケット20に挿通した単管パイプP1を重石として養生シート1の端部を固定しているので、施工性が高いだけでなく、捲れやすいシート端部が一直線状に重石が設置されることとなり、強風で養生シートが飛ばされるおそれが低減され、安全性が向上する。
【0065】
本実施形態に係る壁高欄の養生方法では、養生シート1同士を面ファスナー21で接合するので、養生シート1同士の接合部分の密閉性が高くなり、温風が漏れないため保温性が向上するだけでなく、シート飛散のおそれも低減して安全性も向上する。また、従来のブルーシートのように、結束バンドや紐でハトメ部分を結合するより格段に接合時間が短縮でき、施工性が向上する。
【0066】
以上、本発明の実施形態に係る養生シート及び壁高欄の養生方法について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【0067】
次に、図9図20を用いて本発明の実施形態に係る養生シート及び壁高欄の養生方法の効果を確認するために行った保温効果の確認試験、及び壁高欄の温度分布評価試験について説明する。
【0068】
(目的及び試験概要)
本試験では、従来の養生方法と壁高欄用養生シート(前述の養生シート1相当、以下同じ)を用いた際の養生効果を硫認するために、壁高欄養生用シートを用いた際の保温効果の評価試験を行った。
【0069】
さらに、給熱養生を行った際に壁高欄の前面(正面)にシートで覆った隙間やダクトを通して橋軸方向へ温風を流しているが、壁高欄の背面まで温風が届かない場合は均一な養生が行われずに、壁高欄の端部が凍結する可能性が考えられるため、壁高欄の温度分布を評価する試験を行った。
【0070】
なお、ブルーシートは#1000番手を用い、壁高欄用養生シートは#2500の黒色のシートで耐光性がブルーシートの2倍程度であり、2mmの発泡ポリウレタンフォームを挟み込み保温性を高めたシートを使用した。
【0071】
[保温効果確認試験]
図9に示す足場を設置し、長さ7.3×高さ1.55×幅 1.22m(約13.8m)の空間を表1に示すシートの種類、隙間の有無及びジェットヒーターの出力等の条件を変えた際の保温効果について評価を行った。ジェットヒーターはORION社製の HG30RS(仕様:電源は100V、熱出力は9.3Kw、燃料消費量は0.96L/H)を使用した。
【0072】
【表1】
【0073】
[温度分布評価試験]
壁高欄についてジェットヒーターなどを用いて給熱養生を行う際は、橋面側(内側)の壁高欄前面(正面)にジェットヒーターを配置しているため壁高欄の背面に温度が行き渡らない可能性が考えられる。壁高欄の背面に温風が供給されない場合は、寒冷地においては一部分が凍結することや、給熱温度に差がある場合はコンクリートの品質に違いが生じ、コンクリートの耐久性に悪影響を与えることが懸念される。
【0074】
そこで本試験では、壁高欄を均一な状態で給熱養生を行うための対策として、シートの種類(ブルーシート及び壁高欄用養生シート)と、壁高欄の背面に温度を均一に送る対策(1.壁高欄の天端に隙間を設ける、2.温風を直接壁高欄の背面に送るためのグクトホースを配過する、1.と2.の組合せ)を実施し、その際の壁高欄の温度分布の測定を行った。試験体の形状図を図10に示し、試験条件を表1に示し、試験状況を図11に示す。ヒートガンを壁高欄前面(正面)に設置し温風を供給した状態で壁高欄周囲の8点と外気温度の温度を測定した。
【0075】
【表2】
【0076】
(保温効果確認試験の試験結果)
表1に示した試験条件についてシート内の温度4点(測定点(1)〜(4))と外気温度の測定を行った。ケース1の経過時間と温度の関係を図12に示す。ジェットヒーターの出力は弱の状態で、ブルーシートまたは壁高欄用養生シートについて隙間なく足場全体を覆った場合の結果を示す。温度について測定点(1)〜(4)のの平均値を用いた。
【0077】
外気温度が0〜5℃の状況で、プルーシートを用いた場合の最高温度は25℃であり、壁高欄用養生シートを用いた場合の最高温度は35℃であった。また、壁高欄用養生シートを用いた場合にシートの継ぎ目を完全に塞ぐ効果と断熱性の高いシートを用いることの効果で約+10℃の温度上昇効果が得られることが確認された。
【0078】
ケース2の経過時間と温度の関係を図13に示す。ジェットヒーターの出力は弱の状態で、ブルーシートの両側面の継ぎ目に5cm程度の隙間を設け、壁高欄用養生シートについて隙間なく足場全体を覆った場合の結果を示す。温度について測定点(1)〜(4)の平均値を用いた。
【0079】
外気温度が0〜5℃の状況で、ブルーシートを用い7.3mの養生区間でシートの接合部に5cm程度の隙間がある場合の最高温度は20℃であり、壁高欄用養生シートを用い隙間を設けない状態での最高温度は34℃であった。また、シートを連結することで外からの冷気の流入を防ぎシート内に温風を閉じ込める効果により、壁高欄用養生シートを用いた場合に約+14℃の温度上昇効果が得られることが確認された。
【0080】
ケース3の経過時間と温度の関係を図14に示す。ブルーシートはジェットヒーターの出力を強にした状態で隙間なく足場全体を覆い、壁高欄用養生シートはジェットヒーターの出力は弱の状態で隙間なく足場全体を覆った場合の結果を示す。温度について測定点(1)〜(4)の平均値を用いた。
【0081】
ヒーターの出力を強にした場合の燃料の使用量は0.94L/hであり、弱の場合は0.71L/hであった。本試験の条件において、ブルーシートを用いてジェットヒーターの出力を強にした場合より、壁高欄用養生シートを用いてジェットヒーターの出力を弱とした場合が高い保温効果が得られている。以上より、壁高欄用養生シートを使用することで、ブルーシートを使用した場合と比較して、時間当たりの燃料効率は70%以下でブルーシートより高い保温効果が得られることが確認された。
【0082】
ケース4の経過時間と温度の関係を図15に示す。壁高欄用養生シートについてジェットヒーターの出力は弱の状態でブルーシート及び壁高欄用養生シートの両側面の継ぎ目に5cm程度の隙間を設けた場合の結果を示す。温度について測定点(1)〜(4)の平均値を用いた。
【0083】
ブルーシートと壁高欄用養生シートについて隙間については同じ条件とした場合に外気温度が0〜5℃の状況で、ブルーシートを用い7.3mの養生区間でシートの接合部に 5cm程度の隙間がある場合の最高温度は20℃であり、壁高欄用養生シートを用い隙間を設けた状態での最高温度は29℃であり、シートの接合部に隙間がある場合でも断熱性が高いシートを用いることで、壁高欄用養生シートについて約+9℃の温度上昇効果が得られることが確認された。
【0084】
シートの種類としてプルーシート及び壁高欄用養生シートと設置条件として完全に密閉した場合とシートの接続部に隙間を設けた場合の最高温度の比較を図16に示す。今回試験を行った条件において、ブルーシートと壁高欄用養生シートについて密閉された状態で給熱養生を行った場合に約+10℃の温度上昇効果が確認された。実際の施工状況を模擬した比較として、ブルーシート用いた場合はシートの継ぎ目に隙間かある状況であり、壁高欄用養生シートを用いた場合は、面ファスナーを用いて完全に密閉することが可能であるためブルーシートの隙間ありと壁高欄用養生シートの密閉状態を比較すると約+15℃の温度上昇効果が硴認された。
【0085】
(壁高欄の温度分布評価試験結果)
図10に示す壁高欄の型枠に設置した熱電対(1)〜(8)と外気温度の関係について、ブルーシートの結果を図17に示し、壁高欄用養生シートの結果を図18に示す。図17及び図18の測定点の最高温度を図19に示し、各測定点の最高温度と最低温度の差を図20に示す。
【0086】
図19に示すブルーシートと壁高欄用養生シートの最高温度を比較すると、壁高欄用養生シートを用いた際に最高温度が高くなる傾向を示し、これより断熱性が高いシートを使用している効果が確認された。天端の隙間の影響とダクトホースの影響について、ダクトホースを設置することで壁高欄の背面までに前面と近い温度にできることが確認された。
【0087】
また、天端に隙間を設けることで隙間を設けない場合と比較して若干の温度上昇は確認されたが前面より背面の温度が20℃程度低くなることが確認された。ダクトホースのみとダクトホースと天端の隙間有りを比較すると、天端に隙間を設けることで壁高欄頂部(熱電対(4))付近の温度を上昇できる効果が確認された。
【0088】
図20の各測定点の最低温度と最高温度の差を確認すると、ブルーシートを用いた場合より壁高欄用養生シートを用いた場合の方の温度差が小さくなっており、壁高欄全体が均一な温度で養生されていることが確認された。また、天端の隙間とダクトホースを使用した効果について、ダクトホースを使用する方が直接温風を壁高欄の背面に供給することが可能となるために壁高欄周辺を均一に養生するための高い効果が確認された。さらに、天端の隙間とダクトホースを組み合わせることで、ダクトホースのみの場合より、より均一
な温度で養生できることが確認された。
【0089】
(まとめ)
(1)保温効果確認試験
実施工での壁高欄の養生方法を模擬した状況でプルーシートと壁高欄用養生シートの保温効果を比較した。外気温度か0〜5℃程度で小型のジェットヒーターを用いて約13.8mの空間の温度変化を比較した結果、ブルーシートを用いた場合の最高温度は20℃であり、壁高欄用養生シートを用いた場合はシートの隙間を防止し断熱性の高いシートも用いることで最高温度は35℃程度が確認された。これは、ブルーシートより1.75倍程度の温度上昇効果である。
【0090】
(2)壁高欄の温度分布評価試験
実際の壁高欄を模擬した試験体について、ブルーシートと壁高欄用養生シートについて、壁高欄の背面に温風を送るための対策の実施の有無による壁高欄周囲の温度分布について比較を行った。その結果、ブルーシートより壁欄用養生シートを用いた場合の方が高い温度で均一に養生できることが確認された。さらに、壁高欄背面に温風を送るための対策として天端の隙間を設ける方法やダクトホースを配置することで、より均な温度条件で養生できる効果が確認された。
【符号の説明】
【0091】
1:養生シート
2:樹脂シート
20:単管ペケット
20a:ペケット本体
20b:固着部
20c:面ファスナー
21:面ファスナー
22:ハトメ部
3:断熱材
4:スペーサー
5:ダクトホース
TG:橋桁
S1:床版
W:壁高欄
K:型枠
JH:ジェットヒーター(加熱手段)
P1:単管パイプ
AP:足場板
X:橋軸方向
【要約】
【課題】加熱手段から遠い壁高欄の背面側も均一に保温することができる壁高欄の養生方法及び養生シートを提供する。
【解決手段】橋梁の壁高欄として現場でコンクリートを打設して養生する壁高欄の養生方法において、壁高欄の型枠にコンクリートを打設した後、樹脂シートの間に断熱材が介装された養生シートで前記型枠を覆い、前記養生シートに設けられたループ状の単管ペケットに挿通した単管パイプを重石として前記養生シートの端部を固定するとともに、前記型枠の上に所定間隔をおいて複数のコの字状のスペーサーを載置して前記型枠の正面、背面、及び天面と前記養生シートとの間に隙間を形成し、前記壁高欄の内側の床版上に設置された加熱手段から前記養生シートの内側に温風を供給して給熱養生する。
【選択図】図8
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20