【実施例】
【0079】
以下に実験例を示し、一部の実施形態に従って本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【0080】
実施例で用いた各種試薬は、特に記載のない限り市販品を使用した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーには、バイオタージ製SNAP−ULTRA(登録商標)Silicaプレパックドカラムまたは、逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィーにはバイオタージ製SNAP KP−C18−HS(登録商標)Silicaプレパックドカラムを用いた。逆相分取HPLCカラムクロマトグラフィーは下記条件にて実施した。注入量と勾配は適宜設定して実施した。
【0081】
カラム:YMC−Actus Triart C18,30×50mm,5μm
UV検出:254nm
カラム流速:40mL/min
移動相:水/アセトニトリル(0.1%ギ酸)
注入量:1.0mL
勾配:水/アセトニトリル(10%〜90%)
【0082】
NMRスペクトルは、AL400(400MHz;日本電子(JEOL))、Mercury400(400MHz;アジレント・テクノロジー)を使用し、重溶媒中にテトラメチルシランを含む場合は内部基準としてテトラメチルシランを用い、それ以外の場合には内部基準としてNMR溶媒を用いて測定し、全δ値をppmで示した。また、LCMSスペクトルはWaters製ACQUITY SQD(四重極型)を用いて下記条件にて測定した。
【0083】
カラム:Waters製ACQUITY UPLC(登録商標)BEH C18,2.1×50mm,1.7μm
MS検出:ESI negative
UV検出:254および280nm
カラム流速:0.5mL/min
移動相:水/アセトニトリル(0.1%ギ酸)
注入量:1μL
【0084】
【表2】
【0085】
略号の意味を以下に示す。
s:シングレット
d:ダブレット
t:トリプレット
q:カルテット
dd:ダブル ダブレット
dt:ダブル トリプレット
td:トリプル ダブレット
tt:トリプル トリプレット
ddd:ダブル ダブル ダブレット
ddt:ダブル ダブル トリプレット
dtd:ダブル トリプル ダブレット
tdd:トリプル ダブル ダブレット
m:マルチプレット
br:ブロード
brs:ブロードシングレット
DMSO−d
6:重ジメチルスルホキシド
CDCl
3:重クロロホルム
CD
3OD:重メタノール
CDI:1,1'−カルボニルジイミダゾール
DAST:三フッ化 N,N−ジエチルアミノ硫黄
DIBAL−H:水素化ジイソブチルアルミニウム
DMF:ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
THF:テトラヒドロフラン
WSC=EDCI=1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
HOBt=1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
【0086】
参考例A1:2−(1−ブロモエチル)−1−フルオロ−3,4−ジメチルベンゼン
[式I]
【化1】
【0087】
(工程1)1−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)エタノール
6−フルオロ−2,3−ジメチルベンズアルデヒド(22.0g)のTHF溶液(300mL)に臭化メチルマグネシウムのジエチルエーテル溶液(3.0M,70mL)を0℃で滴下後、反応混合物を室温で1時間撹拌した。氷浴下、飽和塩化アンモニウム水溶液(150mL)を滴下し、酢酸エチル(200mL)を加え、分層した。有機層を塩酸(1M,200mL)、水(200mL)およびブライン(200mL)で順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮することで1−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)エタノール(23.7g)を得た。
【0088】
(工程2)上記工程1で得られた1−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)エタノール(23.7g)のクロロホルム溶液(120mL)に、三臭化リン(26.5mL)を0℃で滴下し、反応液を0℃で30分間撹拌した。反応混合物を、氷冷した飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(1L)に加えた。混合物にクロロホルム(500mL)を加えた後、分層し、有機層を水(200mL)およびブライン(200mL)で順次洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮することで標記化合物(29.5g)を得た。
【0089】
参考例A2およびA3:参考例A1工程1および工程2と同様にして、出発物質であるアルデヒドと臭化メチルマグネシウムとを反応させた後、三臭化リンと反応させることにより、次に示す参考例A2およびA3の化合物を得た。
【0090】
【表3】
【0091】
参考例A4:2−(1−ブロモエチル)−4−エチル−1−フルオロ−3−メチルベンゼン
[式II]
【化2】
【0092】
(工程1)2−ブロモ−3−エチル−6−フルオロベンズアルデヒド
2−ブロモ−1−エチル−4−フルオロベンゼン(14.4g)のTHF溶液(150mL)に、−78℃でリチウムジイソプロピルアミドのTHF溶液(1.5M、54mL)を滴下した。反応液を30分間撹拌後、DMF(6.5mL)を加え、混合物をさらに20分間撹拌した。反応液に水(50mL)、塩酸(6M,50mL)を順次滴下し、混合物をヘキサン(100mL)で2回抽出した。合一した有機層をブライン(50mL)で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮することで、2−ブロモ−3−エチル−6−フルオロベンズアルデヒド(14.5g)を得た。
【0093】
(工程2)3−エチル−6−フルオロ−2−メチルベンズアルデヒド
上記工程1で得られた2−ブロモ−3−エチル−6−フルオロベンズアルデヒド(14.5g)の1,4−ジオキサン溶液(200mL)に、水(90mL)、リン酸三カリウム(32.0g)、メチルボロン酸(6.4g)、ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン付加物(1.75g)を加え、反応液を110℃で2時間加熱還流した。反応液を室温まで放冷し、ヘキサン(90mL)を加えた後、混合物をさらに2時間撹拌した。反応液をセライト濾過し、残渣をヘキサンで洗浄後、濾液を分層した。有機層をブライン(100mL)で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)で精製することで3−エチル−6−フルオロ−2−メチルベンズアルデヒド(8.4g)を得た。
【0094】
(工程3)参考例A1工程1および2の方法に準じ、上記工程2で得られた3−エチル−6−フルオロ−2−メチルベンズアルデヒド(8.4g)を用い、同様の操作を行うことで参考例A4の化合物を得た。
【0095】
参考例B1:(2S,3R)−2−アミノ−3−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)ブタン酸
[式III]
【化3】
【0096】
(S)−2−[o−[(N−ベンジルプロリル)アミノ]フェニル]−ベンジリデンアミノ−アセテート(2−)−N,N,N−ニッケル(II)(14.5g)のDMF溶液(50mL)に参考例A1で得られた2−(1−ブロモエチル)−1−フルオロ−3,4−ジメチルベンゼン(14.0g)のDMF溶液(50mL)を滴下し、水酸化カリウム(16.3g)を加え、1時間同温度で撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム溶液(50mL)および酢酸エチル(50mL)を加え分層し、水層を酢酸エチル(50mL)で2回抽出した。合一した有機層を水(50mL)、ブライン(50mL)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル/ヘキサン)で精製した。得られた化合物をメタノール(120mL)に溶解し、塩酸(3M,90mL)を加え、混合物を80℃で45分間撹拌した。メタノールを減圧留去し、残渣にクロロホルム(50mL)および水(50mL)を加えた。水層をクロロホルム(50mL)で洗浄後、減圧下濃縮した。残渣を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール/水)で精製することで、標記化合物(2.0g)を得た。
1H NMR (CD
3OD) δ: 7.03 (dd, J=8.2, 5.7 Hz, 1H), 6.79 (dd, J=11.7, 8.4 Hz, 1H), 3.74-3.87 (m, 2H), 2.29 (s, 3H), 2.25 (s, 3H), 1.40 (dd, J=6.8, 2.4 Hz, 3H)。
【0097】
参考例B2〜B4:
参考例A2〜A4で得られたアルキル化剤と(S)−2−[o−[(N−ベンジルプロリル)アミノ]フェニル]−ベンジリデンアミノ−アセテート(2−)−N,N,N−ニッケル(II)を反応させた後、酸加水分解により、次に示す参考例B2〜B4の化合物を製造した。
【0098】
【表4】
【0099】
参考例C1:5−クロロ−8−(クロロスルホニル)−4−メチル−d3−クロマン−4−イル アセテート
[式IV]
【化4】
【0100】
(工程1)8−ブロモ−5−クロロ−4−メチルクロマン−4−オール
ヨウ化メチル−d3−マグネシウムのジエチルエチルエーテル溶液(1.0M,63mL)にTHF(50mL)を加え、8−ブロモ−5−クロロクロマン−4−オン(7.5g)のTHF(50mL)溶液を室温で滴下した。反応液を同温度で10分間撹拌し、分層した。氷浴下、塩酸(1M,50mL)をゆっくり滴下し、酢酸エチル(50mL)を加え、分層した。水層を酢酸エチル(50mL)で抽出し、合一した有機層をブライン(50mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)で精製することで8−ブロモ−5−クロロ−4−メチルクロマン−4−オール(7.7g)を得た。
【0101】
(工程2)8−ブロモ−5−クロロ−4−メチル−d3−クロマン−4−イル アセテート
上記工程1で得られた8−ブロモ−5−クロロ−4−メチルクロマン−4−オール(7.7g)の無水酢酸溶液(100mL)にトリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム(III)(340mg)のアセトニトリル(12mL)溶液を−40℃で滴下し、反応液を同温度で30分間撹拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)、酢酸エチル(100mL)を順次加え、分層した。水層を酢酸エチル(100mL)で抽出し、合一した有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)で2回、ブライン(100mL)で1回洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)で精製することで8−ブロモ−5−クロロ−4−メチル−d3−クロマン−4−イル アセテート(8.9g)を得た。
【0102】
(工程3)8−(ベンジルチオ)−5−クロロ−4−メチル−d3−クロマン−4−イル アセテート
上記工程2で得られた8−ブロモ−5−クロロ−4−メチル−d3−クロマン−4−イル アセテート(6.7g)の1,4−ジオキサン(70mL)溶液に、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン(600mg)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(480mg)、N、N−ジイソプロピルエチルアミン(7.2mL)、ベンジルメルカプタン(2.8mL)を加え、反応液を90℃で2時間撹拌した。反応液を室温まで放冷し、セライト濾過した。残渣をヘキサン(50mL)で洗浄後、濾液に水(50mL)を加え分層した。有機層をブライン(50mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮した。反応液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)で精製することで8−(ベンジルチオ)−5−クロロ−4−メチル−d3−クロマン−4−イル アセテート(6.3g)を得た。
【0103】
(工程4)上記工程3で得られた8−(ベンジルチオ)−5−クロロ−4−メチル−d3−クロマン−4−イル アセテート(6.3g)のアセトニトリル(100mL)溶液に、0℃にて水(3mL)、酢酸(4.3mL)、1,3−ジクロロ−5,5−ジメチルヒダントイン(7.2g)をそれぞれ加え、反応液を同温度で30分間撹拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(70mL)、酢酸エチル(70mL)を加え、分層した。水層を酢酸エチル(70mL)で抽出した。合一した有機層をブライン(70mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)で精製することで標記化合物(5.3g)を得た。
【0104】
参考例C2〜C4:参考例C1工程1〜4の方法に準じて、以下の表に列記する出発物質を用いて、参考例C2の化合物を合成した。参考例C1工程3および4の方法に準じて、参考例C3およびC4の化合物を合成した。
【0105】
【表5】
【0106】
参考例D1:5−((1S,2R)−1−アミノ−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)プロピル)−1,3,4−オキサジアゾール−2(3H)−オン・一塩酸塩
[式V]
【化5】
【0107】
(工程1)(2S,3R)−2−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−3−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)ブタン酸
参考例B1より得られた(2S,3R)−2−アミノ−3−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)ブタン酸(515mg)に水(9mL)、1、4−ジオキサン(9mL)、トリエチルアミン(955μL)を順次加え、混合物を0℃に冷却した。反応液に二炭酸ジ−tert−ブチル(650mg)を同温度で加え、混合物を45分間撹拌した。反応液を塩酸(1M,20mL)に加え、酢酸エチル(20mL)で抽出した。有機層をブライン(20mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル/2%酢酸)で精製することで、(2S,3R)−2−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−3−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)ブタン酸(745mg)を得た。
【0108】
(工程2)tert−ブチル((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)カーバメート
上記工程1で得られた(2S,3R)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)ブタン酸(440mg)のTHF(14.0mL)溶液に、CDI(302mg)を加え、反応液を室温で20分間撹拌した。反応液を0℃に冷却し、ヒドラジン・一水和物(200μL)を加え、混合物を同温度で30分間撹拌した。反応液を水(20mL)に加え、酢酸エチル(20mL)で抽出した。有機層をブライン(20mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮した。得られた残渣の1,4−ジオキサン(14mL)溶液に、CDI(560mg)を加え、反応液を室温で30分撹拌した。反応液を水(20mL)に加え、酢酸エチル(20mL)で抽出した。有機層をブライン(20mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)で精製することでtert−ブチル((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)カーバメート(356mg)を得た。
【0109】
(工程3)上記工程2で得られたtert−ブチル((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)カーバメート(550mg)を塩酸−1,4−ジオキサン(4M,5.0mL)に溶解し、反応液を室温で1.5時間撹拌した。反応液を減圧下濃縮することで標記化合物を得た。
【0110】
参考例D2およびD3:参考例D1工程1〜3の方法に準じて、次に示す参考例D2およびD3の化合物を合成した。
【0111】
【表6】
【0112】
実施例1:5−ブロモ−2−(N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド
(工程1)参考例B1より得られた(2S,3R)−2−アミノ−3−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)ブタン酸(300mg)の水(5.0mL)、1,4−ジオキサン(5.0mL)溶液に、トリエチルアミン(570μL)を加えた後、0℃に冷却した。反応液に4−ブロモ−2−シアノベンゼン−1−スルホニルクロリド(362mg)を加え、混合物を同温度で45分間撹拌した。反応液を塩酸(1M,15mL)に加え、酢酸エチル(15mL)で抽出した。有機層をブライン(20mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル/2%酢酸)で精製することで、(2S,3R)−2−(4−ブロモ−2−シアノフェニルスルホンアミド)−3−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)ブタン酸(465mg)を得た。
【0113】
(工程2)上記工程1で得られた(2S,3R)−2−(4−ブロモ−2−シアノフェニルスルホンアミド)−3−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)ブタン酸(465mg)のTHF(5.0mL)溶液に、CDI(210mg)を加え、反応液を室温で20分間撹拌した。反応液を0℃に冷却し、ヒドラジン・一水和物(200μL)を加え、混合物を同温度で20分間撹拌した。反応液を水(20mL)に加え、酢酸エチル(20mL)で抽出した。有機層をブライン(20mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮した。得られた残渣の1,4−ジオキサン(4.0mL)溶液に、CDI(211mg)を加え、反応液を45℃で1時間撹拌した。反応液を水(20mL)に加え、酢酸エチル(20mL)で抽出した。有機層をブライン(20mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)で精製することで4−ブロモ−2−シアノ−N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)ベンゼンスルホンアミド(386mg)を得た。
【0114】
(工程3)上記工程2で得られた4−ブロモ−2−シアノ−N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)ベンゼンスルホンアミド(386mg)のDMSO(5.0mL)溶液に、氷浴下にて過酸化水素水(1.0mL)、炭酸カリウム(420mg)を順次加え、反応液を60℃にて2.5時間撹拌した。反応液を氷浴した塩酸(1M,15mL)にゆっくりと加えた後、酢酸エチル(15mL)で抽出した。有機層をブライン(20mL)で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)で精製することで、標記化合物を得た。
【0115】
実施例2〜4
実施例1工程1〜3の方法に準じて、実施例2〜4の化合物を合成した。必要な原料を以下の表に記載した。
【0116】
【表7】
【0117】
実施例5:5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシ−4−メチル−d3−クロマン−8−スルホンアミド異性体Aおよび異性体B
(工程1)5−クロロ−8−(N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)−4−メチル−d3−クロマン−4−イル アセテート
参考例D1で得られた5−((1S,2R)−1−アミノ−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)プロピル)−1,3,4−オキサジアゾール−2(3H)−オン・一塩酸塩(45mg)のピリジン(1.5mL)溶液に、参考例C1で得られた5−クロロ−8−(クロロスルホニル)−4−メチル−d3−クロマン−4−イル アセテート(80mg)を加え、反応液を室温で12時間撹拌した。反応液を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)で精製することで、標記化合物(59mg)を1:1のジアステレオマー混合物として得た。
【0118】
(工程2)上記工程1で得られた5−クロロ−8−(N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)−4−メチル−d3−クロマン−4−イル アセテート(59mg)の1:1のジアステレオマー混合物をメタノール(2.0mL)、水(1.0mL)に溶解し、水酸化リチウム(5mg)を加え、反応液を55℃で1時間撹拌した。反応液を濃縮後、残渣に塩酸(1M,10mL)、酢酸エチル(10mL)を加え、分層した。水層を酢酸エチル(10mL)で抽出し、合一した有機層をブライン(10mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮した。残渣を逆相HPLC(水/アセトニトリル)で精製し、フラクションを濃縮することで2つのジアステレオマー生成物をそれぞれ得た。先に溶出した物質を化合物Aとし、後に溶出した物質を化合物Bとした。
【0119】
実施例6〜8:実施例5工程2の方法に準じて、次に示す実施例6〜8の化合物を合成した。ジアステレオマーを分離した場合は先に溶出した化合物をA、後に溶出した化合物をBとした。ジアステレオマーの比率は特に記載がない限り、1:1の混合物とする。必要な原料を以下の表に記載した。
【0120】
【表8】
【0121】
実施例9:5−フルオロ−N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシクロマン−8−スルホンアミド異性体Aおよび異性体B
(工程1)参考例D1で得られた5−((1S,2R)−1−アミノ−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)プロピル)−1,3,4−オキサジアゾール−2(3H)−オン・一塩酸塩(40mg)と参考例C3で得られた5−フルオロ−4−オキソクロマン−8−スルホニルクロリド(60mg)を用いて実施例5工程1の方法に準じて、5−フルオロ−N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−オキソクロマン−8−スルホンアミド(44mg)を得た。
【0122】
(工程2)上記工程1で得られた5−フルオロ−N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−オキソクロマン−8−スルホンアミド(44mg)のエタノール(2.0mL)溶液に、水素化ホウ素ナトリウム(13.5mg)を加え、反応液を室温で30分間撹拌した。反応液を減圧下濃縮後、残渣に水(10mL)、酢酸エチル(10mL)を加え、分層し、水層を酢酸エチル(10mL)で抽出した。合一した有機層をブライン(10mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮した。残渣を逆相HPLC(水/アセトニトリル)で精製し、フラクションを濃縮することで2つのジアステレオマー生成物をそれぞれ得た。先に溶出した物質を化合物Aとし、後に溶出した物質を化合物Bとした。
【0123】
実施例10:実施例5工程1および実施例9工程2の方法に準じて、次に示す実施例10の化合物を合成した。ジアステレオマーを分離した場合は先に溶出した化合物をA、後に溶出した化合物をBとした。ジアステレオマーの比率は特に記載がない限り、1:1の混合物とする。必要な原料を以下の表に記載した。
【0124】
【表9】
【0125】
比較例として、下記式の化合物を得た。
[式VI]
【化6】
【0126】
1H NMR (CD3OD) δ: 7.54 (d, J=8.4 Hz, 2H), 7.17-7.29 (m, 5H), 7.08-7.14 (m, 2H), 4.55-4.61 (m, 1H), 3.00-3.13 (m, 2H), 2.39 (s, 3H)。
【0127】
以下、実施例1〜10の化合物の構造式および物性値を示す。
【0128】
【表10】
【0129】
実験例:本開示に係る化合物を、以下の試験法を用いて評価した。
実験例1:ヒトRNR阻害作用
被検化合物のリボヌクレオチド還元反応(以下RNR反応)に対する阻害活性を、下記方法によりシチジンジホスフェート(以下、CDP)からのデオキシシチジンジホスフェート(以下、dCDP)の生成を測定することにより求めた。
【0130】
アミノ末端にヒスチジンタグを融合したヒトM1サブユニットおよびヒトM2サブユニット(アミノ末端59アミノ酸を欠損させた変異体)を大腸菌にて高発現させ、回収後に可溶化し、ヒスチジンタグ付加ヒトM1およびM2タンパク質をニッケルキレートカラムで精製した。
【0131】
被検化合物のRNR反応に対する阻害活性測定法は、文献Cancer Research 64、1−6(2004)に記載されている方法を参考にした。
【0132】
まず、被検化合物をDMSOで段階希釈した。次に、0.02%ウシ胎児血清由来アルブミン水溶液中にヒトM1タンパク質とヒトM2タンパク質を加えた後、本開示の化合物のDMSO溶液または対照DMSO溶液(DMSOの終濃度は1%)を加え、混合物を室温で20分間静置した。その後、反応緩衝液[終濃度で50mM HEPES緩衝液(pH7.2)、終濃度で4mM酢酸マグネシウム、終濃度で100mM塩化カリウム、終濃度で6mMジチオトレイトール、終濃度で2mMアデノシントリホスフェート、終濃度で0.24mMニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸]および終濃度で10μMのCDPを加えて、37℃で30分間インキュベーションし、RNR反応を行った。反応後直ちに100℃で15分間加熱して反応を停止させた後、10,000rpmで10分間遠心分離した。遠心分離後、得られた上清の一部(5μL)をShim−pack XR−ODS(島津ジーエルシー社製、3.0×100mm)を用いて高速液体クロマトグラフ(島津製作所製、Prominence)にて分析した。測定波長265nm、流速0.5mL/minで移動相A(10mMリン酸二水素カリウム(pH6.7)、10mMテトラブチルアンモニウム、0.25%メタノール)と移動相B(50mMリン酸二水素カリウム(pH6.7)、5.6mMテトラブチルアンモニウム、30%メタノール)の12:13混合物から同2:3混合物への9分間濃度勾配により溶離し、基質であるCDP(RT 5.9min)および反応生成物であるdCDP(RT 6.2min)を測定した。
【0133】
被検化合物の阻害活性は次式により求め、RNR反応を50%阻害する被検化合物の濃度をIC
50(μM)として表19−1〜表19−3に示した。
【0134】
【数1】
【0135】
この結果、下記表より明らかなように、本発明化合物は優れたRNR阻害作用を有することが明らかとなった。一方、比較例1の化合物は、IC
50は43μMであり、本発明の実施例化合物に見られるようなRNRに対する阻害活性を示さなかった。
【0136】
【表11】
【0137】
実験例2:ヒト由来乳癌細胞株に対する細胞増殖抑制効果
ヒト由来乳癌細胞株HCC1806細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)を含むATCC推奨のロズウェルパーク記念研究所培地(RPMI−1640)中で、80%を超えない細胞密度で毎日継代した。細胞増殖抑制活性の試験を開始するため、HCC1806細胞を上記培地中に懸濁し、96ウェル平底プレートの各ウェルに1ウェルあたりの細胞数がそれぞれ2000個となるように180μL播種した後、細胞を5%炭酸ガス含有の培養器中37℃で1日間培養した。翌日、被検化合物をDMSOで溶解し、最終濃度の10倍濃度に蒸留水で段階希釈した薬剤添加溶液を細胞の培養プレートの各ウェルに20μL加え、細胞を5%炭酸ガス含有の培養器中37℃で72時間培養した。72時間培養後、グルタルアルデヒド20μLを各ウェルに添加し30分静置後、プレートを水で10回洗い乾燥させた。染色液(0.05%クリスタルバイオレット、20%メタノール溶液)100μLを各ウェルに添加し30分静置後、プレートを水で10回洗浄し乾燥させた。抽出液(0.1N NaH
2PO
4:100%エタノール=1:1)100μLを各ウェルに添加・混和し、プレートリーダー(コロナ電気株式会社製、MTP−450)を用いて540nmの波長にて測定した。以下の式より増殖阻害率を算出し、50%阻害する被検化合物の濃度(IC
50(μM))を求めた。結果を表11に示す。
【0138】
増殖阻害率(%)={(C−B)−(T−B)}/(C−B)×100
T:被検化合物を添加したウェルの吸光度
C:被検化合物を添加しなかったウェルの吸光度
B:細胞懸濁液を添加しなかったウェルの吸光度。
【0139】
この結果、下記表より明らかなように、本開示の化合物は癌細胞に対する増殖阻害活性を有することが明らかとなった。
【0140】
【表12】
【0141】
実験例3:ヒト癌由来癌細胞株に対する細胞増殖抑制効果
実験例2の方法に準じて表12および13に記載した各種癌細胞株に対する細胞増殖抑制効果を評価した。
【0142】
この結果、下記表より明らかなように、本開示の化合物はヒト由来の各種癌細胞に対する増殖阻害活性を有することが明らかとなった。
【0143】
【表13】
【0144】
【表14】
【0145】
実験例4:ヒト由来血液癌細胞株(MV−4−11)皮下移植モデルを用いた抗腫瘍効果の評価(in vivo)
ヒト由来血液癌細胞株MV−4−11をヌードマウスの皮下に移植し、腫瘍が生着したヌードマウスの腫瘍体積が約100〜300mm
3程度になった時点で、各群の腫瘍体積の平均が均一になるよう無作為層別化により1群4匹を割付(0日目)、本開示の化合物を14日間、1日1回100mg/kg/日にて連日経口投与した。
【0146】
各被験化合物投与における腫瘍の経時的増殖推移を比較するため、腫瘍の増殖割合として群分け時の腫瘍体積を1とした相対腫瘍体積(Relative tumor volume;RTV)を以下の式に従って算出し、各個体のRTVの平均値の推移を
図1〜4に示した。
【0147】
RTV=(腫瘍体積計測日の腫瘍体積)/(群分け時の腫瘍体積)
【0148】
最終評価日の本開示の化合物投与群の平均RTV値が、対照群の平均RTV値より小さく、かつ統計的有意差(Student−t検定)を示した場合に、本開示の化合物は有意に有効であると判定し、図に*印で示した(*:p<0.05)。
この結果、本開示の化合物は有意な抗腫瘍効果を示すことが明らかとなった。
【0149】
実験例5:結晶形態、共結晶または塩の例示的サンプルの形成
実施例1〜10から選択される化合物について、合計47種類の二次化合物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、L−アルギニン、水酸化カルシウム、水酸化コリン、ジエチルアミン、L−リジン、ジエタノールアミン、トロメタミン、エチレンジアミン、シュウ酸、ジベンゾイル−L−酒石酸、マレイン酸、グルタミン酸、マロン酸、フマル酸、L−酒石酸、4−ヒドロキシベンズアミド、ニコチンアミド、イソニコチンアミド、サッカリン、ガラクタル酸、クエン酸、D−グルクロン酸(D-Glucuronic acid)、L−リンゴ酸、エチレンジアミン、グルタル酸、コハク酸、尿素、アルギニン、安息香酸、アスコルビン酸、メチルパラベン、バニリン、グリコール酸、塩酸、馬尿酸、L−乳酸、メタンスルホン酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸一水和物、硫酸、L−アラニン、グリシン、メグルミン、L−プロリン、L−セリン、L−バリン)と共に結晶化させようと試みたが、安息香酸との組み合わせのみが、結晶形態、共結晶または塩の例示的サンプルを形成した。
【0150】
はじめに、実施例1〜10から選択された化合物93mgを、500μLの酢酸イソプロピルに溶解させ、溶液を60℃で撹拌し;233μLの安息香酸のメタノール溶液(濃度:0.8672mmol/mL)をサンプルに加えた。混合物を60℃で10分間撹拌し、予熱したシリンジフィルター(0.2μm、ナイロン)を通して濾過し、続いて、周囲温度まで冷却してから、周囲温度未満で保存し、蒸発させ、蒸発から得られたゲルを1mLヘプタン中にて周囲条件で30日間撹拌することにより、1当量の安息香酸を含有する例示的サンプルを得た。しかしながら、この製造方法では、30日間を超える製造期間がかかり、約10mgの例示的サンプルしか得られなかった。
【0151】
別の例では、ヘプタン−トルエン混合溶媒中に同じ化合物を同様の量で懸濁する方法により、3gの例示的サンプルが得られ、これを40℃以上で撹拌した。例えば、実施例1〜10から選択された3000mgの化合物に対して、1518mgの安息香酸を添加し、57mLのヘプタンおよび3mLのトルエンをそこに加えた。懸濁液を、60℃で加熱しながら約4.5時間撹拌した。懸濁液を濾過により回収し、ヘプタン:トルエンの19:1混合物を用いて洗浄し、60℃まで加熱した。固体を回収し、乾燥させて、3420.6mg(回収率91%)の生成物を98.67%の化学的純度および100%eeの光学純度で得た。H-NMR(CDCl
3) δ: 8.77 (s, 1H), 8.09 (d, J=8.0Hz, 2H), 7.89 (d, J=8.0Hz, 1H), 7.60 (t, J=7.2Hz, 1H), 7.54 (d, J=2Hz, 1H), 7.40 - 7.51 (m, 3H), 6.91 (dd, J=6.0Hz, 8.4Hz, 1H), 6.87 (d, 9.6Hz, 1H), 6.67 (dd, J=8.0Hz, 8.4Hz, 1H), 6.55 (br s, 1H), 6.34 (br s, 1H), 4.88 (dd, J=9.6Hz , 10.4Hz, 1H), 3.40 - 3.55 (m, 1H), 2.15 (s, 6H), 1.42 (d, J=6.8Hz, 3H)。
【0152】
懸濁液を濾過し、ヘプタンとトルエンとの混合物を用いて固体をリンスし、60℃で加熱した。得られた結晶形態、共結晶または塩の物理化学的特性を評価した結果として、驚くべきことに、この生成物が、貯蔵安定性に優れ、さらに低い吸湿性および帯電性を有し、かつ取り扱いが容易であることが見出された。
【0153】
別の例では、実施例1〜10から選択された1000mgの化合物に対して、506mgの安息香酸を添加し、19mLのヘプタンおよび1mLのトルエンをそこに加えた。懸濁液を、60℃で加熱しながら約3.5時間撹拌した。懸濁液を濾過により回収し、ヘプタン:トルエンの19:1混合物を用いて洗浄し、60℃まで加熱した。固体を回収し、乾燥させて、947mg(回収率75.6%)の例示的サンプルを得た。
【0154】
加えて、結晶化研究のために用いた47種類の二次化合物のうちには、塩基性官能基(またはカチオン)を含有する二次化合物があったが、酸性である本開示の化合物は、これらの塩基性二次化合物とは結晶を形成しなかった。つまり、酸性化合物が、酸性化合物である安息香酸のみと、結晶形態、共結晶または塩を形成したことは、予期せぬことであった。さらに、得られる結晶形態、共結晶または塩が、どのような種類の物理化学的特性を有するかは、予測不可能である。
【0155】
実験例6:構造的特徴
単結晶分析:5mLのヘプタン、3mLの酢酸n−プロピル、および203.3mgの安息香酸を、実施例2の化合物を用いた実験例5からのサンプル(以下では、「本発明の例示的サンプル」とも称される)100mgに添加し、80℃で溶解させた。溶解生成物に対して、810mgの安息香酸を加えて溶解させた。少量の生成物を添加し、混合物を、60℃にて一晩静置させた。その後、温度を50℃まで低下させ、6日間静置させることにより、単結晶分析のための結晶を得た。
【0156】
測定は以下の測定条件下で行ない、データ処理はデータ測定・処理ソフトウェアCrysAlisPro、構造解析プログラムパッケージCrystalStructure、および一体化型粉末X線分析ソフトウェアPDXLを用いて行なった:
装置:XtaLAB PRO MM 007
X線源:Cu Kα(λ=1.54184Å)
管電圧・管電流:40kV−30mA
測定温度:−173℃(噴霧低温デバイスを用いて)
コリメータ直径:Φ0.3mm
カメラ長:39.71mm
振動角:0.25°
曝露時間:0.25sec/piece
合計測定数:14476シート
合計測定時間1時間35分。
【0157】
結果を以下および
図5に示す:
結晶系:単斜晶系
空間群:P21/n(No.4)
格子定数:a=13.89023(9)Å
b=7.77623(4)Å
c=14.00408(9)Å
α=90°
β=110.5202(7)°
γ=90°
単位格子の体積:1416.653(16)Å3。
【0158】
本発明の例示的サンプルの粉末X線回折データは、以下の試験条件に従って測定した:
装置:EMPYREAN(PANalytical社製)
反射法(集約法)
ターゲット:Cu
X線管電流:40mA
X線管電圧:45kV
走査範囲:2θ=5.0〜40.0°
ステップ:2θ=0.0131°
平均時間/ステップ:8.670s
走査速度:0.0015°/s
発散スリット:1°
散乱スリット:2.0mm
受光スリット:8.0mm。
【0159】
X線回折スペクトルを
図6に示す。サンプルの粉末X線回折パターンは、6.8°、7.8°、11.2°、13.4°、13.7°、16.0°、17.1°、17.8°および23.2°の回折角(2θ±0.2°)を有する。
【0160】
実験例7:示差走査熱量測定(DSC測定)
本発明の例示的サンプルのDSC測定は、以下の試験条件に従って行なった:
装置:DSC 1 STAR System(METTLER TOLEDO社製)
サンプル:約1mg
サンプル容器:アルミニウム製
昇温範囲:25〜290℃
昇温速度:10℃/min
雰囲気ガス:窒素
窒素ガス流速:50mL/min。
【0161】
データ処理を含む装置の操作は、DSC装置と共に提供されるマニュアルに従った。得られたDSC曲線を、
図7に示す。DSC結果に示される通り、吸熱ピーク(ピーク頂点)は162℃において示された。
【0162】
図9は、単結晶解析の結果からXRD回折パターンをシミュレーションした結果を示し、回折角(2θ±0.2°)の特徴的ピーク(6.8°、7.8°、11.2°、13.4°、13.7°、16.0°、17.1°、17.8°および23.2°)は、上記の例と合致する。
【0163】
実験例8:吸湿性
吸放湿試験は、以下の条件に従って行なった。
約10〜15mgのサンプルを専用の石英ホルダーに満たし、各湿度での各サンプルの重量を継続的に測定し、以下の条件下で記録した。データ処理を含む装置の操作は、各装置により指示される方法および手順に従った:
装置:VTI SA+(TA Instruments社製)
乾燥温度:60℃
加熱速度1℃/min
乾燥平衡:300分間を超過しない範囲では、5分間に0.01wt%の低下がないことを確認
測定温度:25℃
加湿平衡:120分間を超過しない範囲では、5分間に0.01wt%の増加がないことを確認
相対湿度プログラム:5〜95%RHまで5%RHずつ増加、および95%RH〜5%RHまで5%RHずつ低下。
【0164】
遊離形態の化合物が、最初に非晶質物質として得られた場合には、遊離形態は吸湿性を有し(
図8)、かつ高い帯電特性も有した。ここで、「遊離形態」とは、薬物物質単独による非晶質物質を意味する。しかしながら、上記の通り、実施例2の化合物の遊離形態の結晶形態、共結晶または塩が得られ、このサンプルは、吸湿性を有さず(
図8)、かつ帯電特性が弱かった。
【0165】
図8に示される通り、得られた生成物(粉砕生成物)の吸湿性は、吸放湿試験において95%の相対湿度下で約0.1%の質量変化であり、つまり、該生成物は、ほとんど吸湿性を示さなかった。これらの物理化学的特性は、同化合物の遊離形態の吸湿性および帯電性に対して優れている。
【0166】
得られた実施例2の固体生成物は低い帯電性を有し、スパチュラまたはガラス瓶への少量の付着が観察された。
【0167】
比較例として、残留溶媒を除去するために、上記の化合物の噴霧乾燥を行なった。2gの化合物を18gのエタノールに溶解させ、以下の条件下で噴霧乾燥を行なった:
熱入力後加温:progression
排熱温度:78℃
フィード流速:5mL/min
噴霧窒素流速:350L/hour。
【0168】
得られた噴霧乾燥生成物を、大気中で90℃において1時間、減圧下で乾燥させ、遊離形態の化合物を取得し、これは非晶質であり、高い帯電性を有し、かつ移動時にスパチュラまたはガラス瓶によるはるかに多くの付着を示した。さらに、
図8に示される通り、吸放湿試験において95%の相対湿度下で約3.8%の質量増加が観察された。この比較例もまた、以下の安定性試験のために用いた。
【0169】
実験例9:安定性試験
最初に、以下の方法により、化学的純度を測定した。
サンプル溶液中の類似物質の量を、HPLC分析により測定した。データ処理を含む装置の操作は、装置(すなわち、Prominence−i)と共に提供されるマニュアルに従った。約2mgの本発明の例示的サンプルを4mLの移動相A/移動相B混合物(17:3)に溶解させ、得られた混合物をサンプル溶液として用いた。
【0170】
カラム:CAPCELL PAK ADME(Shiseido製)(4.6×150mm、3μm)
UV検出:220nm
カラム温度:40℃
カラム流速:1.0mL/min
移動相:A:5mMリン酸緩衝液、pH6.2/アセトニトリル(4:1)
B:アセトニトリル
注入量:5μL
サンプル冷却器温度:5℃
収集時間:40分間。
【0171】
【表15】
【0172】
上記で得られた本発明の例示的サンプルおよび遊離形態の固体安定性を、サンプルを40℃/75%RH(閉鎖および開放条件)において2週間または4週間保存した後に試験した。開放条件とは、ガラス瓶の蓋を除去してキムワイプを用いて覆ったことを意味する:
測定時点:2週間および4週間
保存量:約50〜60mg
保存容器:褐色ガラス瓶。
【0173】
【表16】
【0174】
保存後、サンプルは少量の類似物質しか生じず、このことは、遊離形態を有する比較例と比べて優れた安定性を示した。したがって、本開示のサンプルは、優れた安定性を示すことが確認された。
【0175】
以下のHPLC条件により、光学純度も測定した:
検出器:UV(240nm)
カラム:CHIRALPAK IE(4.6×250mm、5μm)/Daicel社
カラム温度:40℃
移動相:n−ヘキサン/エタノール/エタノールアミン/酢酸(65:35:0.5:0.2)
流速:1.0mL/min
注入:5μL
サンプル温度:5℃
測定時間:40分間
定量限界(LOQ):
化合物−RR,RS,SS:0.05%。
【0176】
光学純度は、0.2%光学異性体も添加して測定した。
【0177】
上記で得られた本発明の例示的サンプルおよび遊離形態の固体安定性を、サンプルを40℃/75%RH(閉鎖および開放条件)において24時間保存する前後に試験した。24時間後では、光学純度の著しい変化は観察されなかった。
【0178】
光学純度測定研究の結果を、
図10〜12に示す。
【0179】
実験例10:溶解度試験
約15mgの本発明の例示的サンプルを1mLの各溶媒に添加し、遮光条件下で37℃において2時間膨潤させた。遠心分離後、各上清を濾過し、0.1mLの濾液に対して0.7mLの水:アセトニトリル混合物(1:1)を添加した。溶解度試験は、以下の条件に従って、5μLの溶媒を用いて行なった:
検出器:紫外分光光度計(波長:230nm)
カラム:CAPCELPAK ADME(4.6×150mm、3mm)
カラム温度:約40℃の一定温度
移動相A: A:5mMリン酸緩衝液(pH6.52)とアセトニトリルとの混合物(4:1)
B:アセトニトリル
移動相の追従:以下の表に指示される通りに、移動相AおよびBを混合することにより、勾配を制御
流速:1.0mL/分
測定時間:注入後12分間。
【0180】
【表17】
【0181】
溶解度試験の結果を、以下の表18に示す。
【0182】
【表18】
【0183】
2時間の溶解度試験後には、XRDパターンの著しい変化は観察されず、かつ遊離酸形態と本発明の例示的サンプルとの間に有意差は観察されなかった。
【0184】
実験例11:固体安定性試験
上記で得られた本発明の例示的サンプルおよび遊離形態の固体安定性を、サンプルを40℃/75%RH(開放条件)、70℃(閉鎖条件)および80℃(閉鎖条件)において2週間または4週間保存した後に試験した。開放条件とは、ガラス瓶の蓋を除去してキムワイプを用いて覆ったことを意味し、70℃および80℃は閉鎖条件とした:
測定時点:2週間および4週間
保存量:約30mg
保存容器:褐色ガラス瓶。
【0185】
サンプル溶液中の類似物質の量を、HPLC分析により測定した。データ処理を含む装置の操作は、装置(すなわち、Prominence−i)と共に提供されるマニュアルに従った。約2mgの本発明の例示的サンプルを4mLの移動相A/移動相B混合物(17:3)に溶解させ、得られた混合物をサンプル溶液として用いた。
【0186】
カラム:CAPCELL PAK ADME(Shiseido製)(4.6×150mm、3μm)
UV検出:220nm
カラム温度:40℃
カラム流速:1.0mL/min
移動相:A:5mMリン酸緩衝液、pH6.5/アセトニトリル(4:1)
B:アセトニトリル
注入量:5μL
サンプル冷却器温度:5℃
収集時間:40分間。
【0187】
【表19】
【0188】
【表20】