特許第6846574号(P6846574)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6846574
(24)【登録日】2021年3月3日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】スルホンアミド化合物およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 271/113 20060101AFI20210315BHJP
   C07D 413/12 20060101ALI20210315BHJP
   A61K 31/4245 20060101ALI20210315BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210315BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   C07D271/113
   C07D413/12
   A61K31/4245
   A61P43/00 111
   A61P35/00
【請求項の数】24
【全頁数】56
(21)【出願番号】特願2020-529618(P2020-529618)
(86)(22)【出願日】2018年11月28日
(65)【公表番号】特表2021-504432(P2021-504432A)
(43)【公表日】2021年2月15日
(86)【国際出願番号】IB2018059430
(87)【国際公開番号】WO2019106579
(87)【国際公開日】20190606
【審査請求日】2020年5月29日
(31)【優先権主張番号】62/592,023
(32)【優先日】2017年11月29日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000207827
【氏名又は名称】大鵬薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩之
(72)【発明者】
【氏名】テン ジン
(72)【発明者】
【氏名】ギグナック ナサーン
【審査官】 神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/209155(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/083089(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/089018(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/080509(WO,A1)
【文献】 国際公開第2000/029375(WO,A1)
【文献】 国際公開第2001/010454(WO,A1)
【文献】 AHMAD, Md. Faiz et al.,Identification of Non-nucleoside Human Ribonucleotide Reductase Modulators,Journal of Medicinal Chemistry,2015年,Vol.58, No.24,p.9498-509, Supporting Information,DOI 10.1021/acs.jmedchem.5b00929
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化合物からなる群より選択される化合物の結晶形態:
5−ブロモ−2−(N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド;
5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド;
5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(3−エチル−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド;
5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(3−クロロ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド;
5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシ−4−メチル−d3−クロマン−8−スルホンアミド;
5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(3−クロロ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシ−4−メチルクロマン−8−スルホンアミド;
N−((1S,2R)−2−(3−ブロモ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−5−クロロ−4−ヒドロキシ−4−メチルクロマン−8−スルホンアミド;
5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(3−クロロ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシ−4−メチル−d3−クロマン−8−スルホンアミド;および
5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシクロマン−8−スルホンアミド。
【請求項2】
前記化合物が、
5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド
である、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項3】
前記結晶形態の化学的純度が90%以上である、請求項1または2に記載の結晶形態。
【請求項4】
前記結晶形態の光学純度が100%eeである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の結晶形態。
【請求項5】
前記結晶形態が、40℃および75%相対湿度への4時間の曝露に際して
(i)当初の光学純度と比較して、光学純度の変化が1.0%以下であり、および/または
(ii)当初の不純物量と比較して、不純物の増加が1.0%以下であるほど安定である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の結晶形態。
【請求項6】
安息香酸をさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の結晶形態。
【請求項7】
前記結晶形態が、安息香酸および前記化合物の共結晶である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の結晶形態。
【請求項8】
前記化合物と安息香酸とのモル比が1:1である、請求項6または7に記載の結晶形態。
【請求項9】
以下の化合物からなる群より選択される化合物の安息香酸塩:
5−ブロモ−2−(N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド;
5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド;
5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(3−エチル−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド;
5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(3−クロロ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド;
5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシ−4−メチル−d3−クロマン−8−スルホンアミド;
5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(3−クロロ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシ−4−メチルクロマン−8−スルホンアミド;
N−((1S,2R)−2−(3−ブロモ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−5−クロロ−4−ヒドロキシ−4−メチルクロマン−8−スルホンアミド;
5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(3−クロロ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシ−4−メチル−d3−クロマン−8−スルホンアミド;および
5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシクロマン−8−スルホンアミド。
【請求項10】
前記化合物が、
5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド
である、請求項9に記載の安息香酸塩。
【請求項11】
(i)請求項1〜8のいずれか1項に記載の結晶形態または請求項9もしくは10に記載の安息香酸塩、および(ii)製薬上許容される担体を含有する医薬組成物。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の結晶形態または請求項9もしくは10に記載の安息香酸塩を有効成分として含有する抗腫瘍剤。
【請求項13】
抗腫瘍剤が経口投与用抗腫瘍剤である、請求項12に記載の抗腫瘍剤。
【請求項14】
リボヌクレオチドリダクターゼ阻害剤の製造のための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の結晶形態または請求項9もしくは10に記載の安息香酸塩の使用。
【請求項15】
医薬の製造のための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の結晶形態または請求項9もしくは10に記載の安息香酸塩の使用。
【請求項16】
抗腫瘍剤の製造のための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の結晶形態または請求項9もしくは10に記載の安息香酸塩の使用。
【請求項17】
抗腫瘍剤が経口投与用抗腫瘍剤である、請求項16に記載の結晶形態または安息香酸塩の使用。
【請求項18】
リボヌクレオチドリダクターゼ阻害剤としての使用のための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の結晶形態または請求項9もしくは10に記載の安息香酸塩。
【請求項19】
腫瘍の予防または治療での使用のための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の結晶形態または請求項9もしくは10に記載の安息香酸塩。
【請求項20】
前記化合物を経口投与することによる腫瘍の予防または治療での使用のための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の結晶形態または請求項9もしくは10に記載の安息香酸塩。
【請求項21】
前記結晶形態の粉末X線回折パターンは、6.8°、7.8°、11.2°、13.4°、13.7°、16.0°、17.1°、17.8°および23.2°の(2θ±0.2°)での2個以上のピークを有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の結晶形態。
【請求項22】
前記結晶形態の粉末X線回折パターンは、6.8°、7.8°、11.2°、13.4°、13.7°、16.0°、17.1°、17.8°および23.2°の回折角(2θ±0.2°)を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の結晶形態。
【請求項23】
DSCにより測定した場合に、155℃〜168℃の吸熱ピークを有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の結晶形態。
【請求項24】
DSCにより測定した場合に、162℃での吸熱ピークを有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の結晶形態。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リボヌクレオチドリダクターゼ阻害作用を有するスルホンアミド化合物の新規結晶形態、該結晶形態化合物を含有する医薬組成物、ならびにその調製方法およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リボヌクレオチドリダクターゼ(以下、「RNR」ともいう)は、大サブユニットM1と小サブユニットM2のヘテロオリゴマーから構成され、両者の発現が酵素活性に必要とされる。RNRはリボヌクレオシド 5'−ジホスフェート(以下、「NDP」ともいう)を基質として認識し、2'−デオキシリボヌクレオシド 5'−ジホスフェート(以下、「dNDP」ともいう)へのその還元を触媒する。RNRはde novo dNTP合成経路における律速となる酵素であり、かつRNRはDNA合成および修復に必須の役割を果たす。
【0003】
RNRの酵素活性は細胞の増殖と密接に関連しており、特に癌において酵素活性が高いと報告されている。様々なタイプの固形腫瘍および血液癌において、RNRのサブユニットの一つであるM2の過剰発現および癌の予後に対するその影響が数多く報告されている。また、いくつかの癌種由来の細胞株および非臨床モデルにおいて、RNRの阻害により達成される細胞増殖阻害、in vivoでの抗腫瘍効果が報告されている、つまり、RNRが癌治療の重要な標的分子であることが強く示唆される。
【0004】
従来、RNR阻害活性を示す化合物としては、ヒドロキシウレア(以下、「HU」ともいう)、および3−アミノピリジン−2−カルボキサアルデヒド チオセミカルバゾン(以下、「3−AP」ともいう)が知られている。しかしながら、これらの化合物は、本開示に係るスルホンアミド化合物と構造が異なる。HUは臨床で30年以上にわたって使用されてきたが、RNR阻害活性が非常に弱くその効果は限られている。HUの使用に対する耐性も課題とされている。他方、3−APは金属イオンにキレート可能であり、特に鉄(Fe)イオンをキレートすることでRNRを阻害するが、3−APは他の様々なFeイオン含有タンパク質へのオフターゲット作用が示唆されており、このことが、臨床においては、低酸素症、呼吸困難、メトヘモグロビン血症等の副作用を引き起こす。
【0005】
そのため、金属イオンをキレートせず、RNRに関連する疾患、例えば癌の治療に用いることができる強力なRNR阻害剤の開発が強く望まれている。
【0006】
加えて、容易に取り扱うことができるRNR阻害剤の開発が望まれている。生物学的に活性な化合物の荷電性および吸湿性が、考えられる医薬組成物中へのその組み込みに際して、化合物の取り扱いに影響することが知られている。例えば、静電気を帯びる活性化合物は、製造中に、収量の低下および不均一な包装などの問題を生じ得る。つまり、低い静電荷を有する活性化合物が好ましい。吸湿性化合物は、周囲環境中に存在する水分量に応じて化合物質量の変化をもたらすそれらの水分吸収に起因する問題を提示し、このことが、化合物の生物学的有効性を正確に評価することおよび該化合物を含有する医薬組成物の均一性を確実にすることを困難にする。したがって、低い吸湿性を有する活性化合物が望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の課題のうちの一つは、RNRの強力かつ選択的な阻害剤であり、かつ抗腫瘍剤およびRNRに関連するその他の疾患の治療剤として用いることができる化合物の、新規安定、かつ比較的静電気を帯びにくい結晶形態、共結晶および/または塩を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の発明者らは、前記要件を満たす化合物を特定するために鋭意検討を重ねた結果、優れたRNR阻害活性を有するスルホンアミド化合物の、安定な、低帯電性および低吸湿性の形態、ならびに腫瘍およびRNRに関連する他の疾患を治療するための治療剤としての使用を見出した。これらのスルホンアミド化合物は、共結晶、および/または塩形態などの結晶形態として存在する。
【0009】
本開示の種々の態様は、次のセクション〔1〕〜〔28〕を提供する:
〔1〕以下の化合物からなる群より選択される化合物の結晶形態:
5−ブロモ−2−(N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド;
5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド;
5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(3−エチル−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド;
5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(3−クロロ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド;
5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシ−4−メチル−d3−クロマン−8−スルホンアミド;
5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(3−クロロ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシ−4−メチルクロマン−8−スルホンアミド;
N−((1S,2R)−2−(3−ブロモ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−5−クロロ−4−ヒドロキシ−4−メチルクロマン−8−スルホンアミド;
5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(3−クロロ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシ−4−メチル−d3−クロマン−8−スルホンアミド;および
5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシクロマン−8−スルホンアミド。
〔2〕前記結晶形態の化学的純度が90%以上である、セクション〔1〕に記載の結晶形態。
〔3〕前記結晶形態の光学純度が100%eeである、セクション〔1〕または〔2〕に記載の結晶形態。
〔4〕約40℃かつ約75%相対湿度で約4週間の条件への曝露に際して安定である、セクション〔1〕〜〔3〕のいずれか1つに記載の結晶形態。
〔5〕安息香酸をさらに含む、セクション〔1〕〜〔4〕のいずれか1つに記載の結晶形態。
〔6〕安息香酸および前記化合物の共結晶である、セクション〔1〕〜〔5〕のいずれか1つに記載の結晶形態。
〔7〕(i)セクション〔1〕〜〔6〕のいずれか1つに記載の結晶形態および(ii)製薬上許容される担体を含む医薬組成物。
〔8〕セクション〔7〕に記載の治療上有効量の医薬組成物を、それを必要とするヒト被験体に投与するステップを含む、in vivoでリボヌクレオチドリダクターゼを阻害する方法。一部の実施形態では、リボヌクレオチドリダクターゼの阻害は、ヒト被験体体内の腫瘍細胞中で生じる。
〔9〕セクション〔1〕〜〔6〕のいずれか1つに記載の結晶形態を有効成分として含有する抗腫瘍剤。一部の実施形態では、抗腫瘍剤は経口投与用抗腫瘍剤である。
〔10〕リボヌクレオチドリダクターゼ阻害剤の製造のための、セクション〔1〕〜〔6〕のいずれか1つに記載の結晶形態の使用。
〔11〕医薬としてのセクション〔1〕〜〔6〕のいずれか1つに記載の結晶形態の使用。
〔12〕抗腫瘍剤としてのセクション〔1〕〜〔6〕のいずれか1つに記載の結晶形態の使用。一部の実施形態では、抗腫瘍剤は経口投与用抗腫瘍剤である。
〔13〕リボヌクレオチドリダクターゼ阻害剤として使用するためのセクション〔1〕〜〔6〕のいずれか1つに記載の結晶形態。
〔14〕腫瘍の予防または治療での使用のためのセクション〔1〕〜〔6〕のいずれか1つに記載の結晶形態。
【0010】
〔15〕前記化合物を経口投与することによる腫瘍の予防または治療での使用のためのセクション〔1〕〜〔6〕のいずれか1つに記載の結晶形態。
〔16〕前記化合物または安息香酸が、1種以上の放射性同位体または非放射性同位体を用いて置換されていることができる、セクション〔1〕〜〔6〕のいずれか1つに記載の結晶形態。
〔17〕以下の化合物からなる群より選択される化合物の安息香酸塩:
5−ブロモ−2−(N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド;
5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド;
5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(3−エチル−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド;
5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(3−クロロ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド;
5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシ−4−メチル−d3−クロマン−8−スルホンアミド;
5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(3−クロロ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシ−4−メチルクロマン−8−スルホンアミド;
N−((1S,2R)−2−(3−ブロモ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−5−クロロ−4−ヒドロキシ−4−メチルクロマン−8−スルホンアミド;
5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(3−クロロ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシ−4−メチル−d3−クロマン−8−スルホンアミド;および
5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシクロマン−8−スルホンアミド。
〔18〕(i)セクション〔17〕に記載の安息香酸塩および(ii)製薬上許容される担体を含有する医薬組成物。
〔19〕セクション〔18〕に記載の治療上有効量の医薬組成物を、それを必要とするヒト被験体に投与するステップを含む、in vivoでリボヌクレオチドリダクターゼを阻害する方法。一部の実施形態では、リボヌクレオチドリダクターゼの阻害は、ヒト被験体体内の腫瘍細胞中で生じる。
〔20〕セクション〔17〕に記載の安息香酸塩を有効成分として含有する抗腫瘍剤。一部の実施形態では、抗腫瘍剤は経口投与用抗腫瘍剤である。
〔21〕リボヌクレオチドリダクターゼ阻害剤の製造のための、セクション〔17〕に記載の安息香酸塩の使用。
〔22〕医薬としてのセクション〔17〕に記載の安息香酸塩の使用。
〔23〕抗腫瘍剤としてのセクション〔17〕に記載の安息香酸塩の使用。一部の実施形態では、抗腫瘍剤は経口投与用抗腫瘍剤である。
〔24〕リボヌクレオチドリダクターゼ阻害剤として使用するためのセクション〔17〕に記載の安息香酸塩。
〔25〕腫瘍の予防または治療での使用のためのセクション〔17〕に記載の安息香酸塩。
〔26〕前記化合物を経口投与することによる腫瘍の予防または治療での使用のためのセクション〔17〕に記載の安息香酸塩。
〔27〕前記安息香酸が、1種以上の放射性同位体または非放射性同位体を用いて置換されていることができる、セクション〔17〕に記載の安息香酸塩。
〔28〕本開示は、RNR阻害剤として作用する、セクション〔1〕〜〔6〕のいずれか1つに記載の結晶形態、セクション〔6〕に記載の共結晶および/またはセクション〔17〕に記載の安息香酸塩に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、RNR阻害剤として有用な上記式(I)で表される新規スルホンアミド化合物またはその塩が提供される。
【0012】
本開示の結晶形態、共結晶および/または安息香酸塩は、優れたRNR阻害活性および安定性を有し、また、非吸湿性および非静電性であるので、取り扱いが容易である。したがって、本明細書中に記載される結晶形態、共結晶および/または安息香酸塩は、RNRが関与するその他の疾患の治療での使用のために好適である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本明細書中に開示される例示的化合物を用いた治療後の相対腫瘍体積(以下「RTV」ともいう)の経日的推移を示す図である。
図2】本明細書中に開示される例示的化合物を用いた治療後のRTVの経日的推移を示す図である。
図3】本明細書中に開示される例示的化合物を用いた治療後のRTVの経日的推移を示す図である。
図4】本明細書中に開示される例示的化合物を用いた治療後のRTVの経日的推移を示す図である。
図5】本明細書中に開示される例示的結晶形態を示す図である。例示的結晶形態は、0.15×0.20×0.25mmの結晶サイズを有し、無色であり、かつ平板形状を有していた。
図6】例示的共結晶の粉末X線回折(XRD)チャートを示す図である。
図7】例示的共結晶の示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す図である。
図8】例示的化合物の共結晶(A)および同じ化合物の遊離形態(B)の吸放湿等温曲線を示す図である。
図9】例示的安息香酸共結晶の単結晶分析結果に基づくX線回折パターンシミュレーション結果を示す図である。
図10】例示的結晶形態の光学純度測定データを示す図である。
図11】例示的結晶形態の光学純度測定データを示す図である。
図12】例示的結晶形態の光学純度測定データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、以下の化合物からなる群より選択される化合物の結晶形態、共結晶または安息香酸塩に関する:
5−ブロモ−2−(N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド;
5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド;
5−ブロモ−2−(N−((1S,2R)−2−(2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド;
5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド;
5−クロロ−2−(N−(1S,2R)−2−(2−フルオロナフタレン−1−イル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド;
5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(3−エチル−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド;
5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(3−クロロ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド;
5−ブロモ−2−(N−((1S,2R)−2−(3−クロロ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド;
2−(N−((1S,2R)−2−(3−ブロモ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)−5−クロロ−ベンズアミド;
5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−6−(ピロリジン−1−カルボニル)ピリジン−2−スルホンアミド;
5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシ−4−メチル−d3−クロマン−8−スルホンアミド;
5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(3−クロロ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシ−4−メチルクロマン−8−スルホンアミド;
N−((1S,2R)−2−(3−ブロモ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−5−クロロ−4−ヒドロキシ−4−メチルクロマン−8−スルホンアミド;
5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(3−クロロ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシ−4−メチル−d3−クロマン−8−スルホンアミド;
5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシクロマン−8−スルホンアミド;
3−クロロ−6−(N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)−N,N−ジメチルピコリンアミド;
4−アミノ−2−メトキシ−N−((1S,2R)−2−(8−メチルナフタレン−1−イル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)ベンゼンスルホンアミド;
4−アミノ−N−((1S,2R)−2−(2,3−ジヒドロ−1H−インデン−4−イル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−2−メトキシベンゼンスルホンアミド;および
5−クロロ−2−(((1S,2R)−メチル−d3−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド。
【0015】
一部の実施形態では、前記化合物は、以下の化合物からなる群より選択される:
5−ブロモ−2−(N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド;
5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド;
5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(3−エチル−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド;
5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(3−クロロ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド;
5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシ−4−メチル−d3−クロマン−8−スルホンアミド;
5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(3−クロロ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシ−4−メチルクロマン−8−スルホンアミド;
N−((1S,2R)−2−(3−ブロモ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−5−クロロ−4−ヒドロキシ−4−メチルクロマン−8−スルホンアミド;
5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(3−クロロ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシ−4−メチル−d3−クロマン−8−スルホンアミド;および
5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシクロマン−8−スルホンアミド。
【0016】
追加の実施形態では、前記化合物は、以下の化合物からなる群より選択される:
5−ブロモ−2−(N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド;
5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド;
5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(3−クロロ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド;
5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(3−クロロ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシ−4−メチルクロマン−8−スルホンアミド;および
5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシクロマン−8−スルホンアミド。
【0017】
一部の実施形態では、前記化合物は、5−ブロモ−2−(N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミドである。一部の実施形態では、本開示は、5−ブロモ−2−(N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミドの結晶形態、または安息香酸および該化合物の共結晶に関する。
【0018】
一部の実施形態では、前記化合物は、5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミドである。一部の実施形態では、本開示は、5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミドの結晶形態、または安息香酸および該化合物の共結晶に関する。
【0019】
一部の実施形態では、前記化合物は、5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(3−クロロ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミドである。一部の実施形態では、本開示は、5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(3−クロロ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミドの結晶形態、または安息香酸および該化合物の共結晶に関する。
【0020】
一部の実施形態では、前記化合物は、5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(3−クロロ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシ−4−メチルクロマン−8−スルホンアミドである。一部の実施形態では、本開示は、5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(3−クロロ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシ−4−メチルクロマン−8−スルホンアミドの結晶形態、または安息香酸および該化合物の共結晶に関する。
【0021】
一部の実施形態では、前記化合物は、5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシクロマン−8−スルホンアミドである。一部の実施形態では、本開示は、5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシクロマン−8−スルホンアミドの結晶形態、または安息香酸および該化合物の共結晶に関する。
【0022】
本開示の結晶形態化合物、共結晶および/または安息香酸塩ならびにその中間体は、再結晶化、結晶化、蒸留およびカラムクロマトグラフィーなどの周知の分離精製技術により、単離および精製することができる。
【0023】
光学異性体、立体異性体、互変異性体、または回転異性体が本開示の結晶形態化合物、共結晶または安息香酸塩中に存在し得るが、明示的に記載されない場合、結晶形態化合物、共結晶および/または安息香酸塩は、分離したかまたはそれらの混合物としてのこれらの異性体を包含することが意図される。例えば、別途記載されない限り、本開示の結晶形態化合物、共結晶および/または安息香酸塩が、ラセミ体であると分かる場合、該ラセミ体から分割できる考えられるエナンチオマーおよび/またはジアステレオマーもまた、本開示により包含されるとみなされる。エナンチオマーおよび/またはジアステレオマーは、典型的には、周知の合成法により取得することができる。
【0024】
本明細書中で用いられる場合で、かつ別途明記しない限り、用語「結晶」および本明細書中で用いられる関連する用語は、化合物、物質、修飾、材料、成分または生成物を描写するために用いる際には、化合物、物質、修飾、材料、成分または生成物が、X線回折により決定される場合に実質的に結晶であることを意味する。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,第21版,Lippincott,Williams and Wilkins,Baltimore,MD(2005);米国薬局方、第23版、1843−1844(1995)を参照されたい。
【0025】
本明細書中で用いられる場合で、かつ別途明記しない限り、用語「結晶形態」および本明細書中の関連する用語は、結晶である固体形態を意味する。結晶形態としては、単一成分結晶形態および複数成分結晶形態が挙げられ、任意により、限定するものではないが、共結晶、塩(製薬上許容される塩を含む)、多形体、溶媒和物、水和物、および/または他の分子複合体を含むことができる。特定の実施形態では、物質の結晶形態は、非晶質形態および/または他の結晶形態を実質的に含まないことができる。特定の実施形態では、物質の結晶形態は、重量基準で約0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45または50%未満の1種以上の非晶質形態および/または他の結晶形態を含有することができる。
【0026】
用語「共結晶」とは、当技術分野で公知の多数の共結晶形成物質に由来する分子複合体を意味する。塩とは異なり、共結晶は、典型的には、共結晶形成物質と薬物との間での水素転移を含まず、その代わりに、結晶構造中の共結晶形成物質とスルホンアミド化合物との間に水素結合、芳香環スタック、または分散力などの分子間相互作用を含む。一部の実施形態では、本開示は、本明細書中に記載される通り、安息香酸およびスルホンアミド化合物を含むかまたはそれらからなる共結晶に関する。
【0027】
本明細書中で用いられる場合で、かつ別途明記しない限り、用語「多形体」、「多形形態」および本明細書中の関連する用語は、実質的に同じ分子、分子群および/またはイオンからなる2種以上の結晶形態を意味する。異なる結晶形態同士と同様に、異なる多形体は、例えば、融点、融解熱、溶解度、溶解特性および/または振動スペクトル(結晶格子中の分子および/もしくはイオンの配置またはコンホメーションの結果として)などの異なる物性を有することができる。物性の差異は、貯蔵安定性、圧縮性および密度(製剤化および製品製造において重要である)、および溶解速度(バイオアベイラビリティにおいて重要な因子である)などの薬学的パラメータに影響する場合がある。安定性の違いは、化学的反応性での変化(例えば、投与剤形が、別の多形体から構成される場合よりも、ある多形体から構成される場合に、より速く変色するような、示差的酸化)もしくは機械的変化(例えば、動力学上は好ましい多形体が、熱動態学上はより安定な多形体へと変質すると、貯蔵中に錠剤が崩壊する)またはその両方(例えば、ある多形体の錠剤は、高湿度ではより分解し易い)により生じ得る。可溶性/溶解性の差異の結果として、極端なケースでは、一部の固体遷移が、効力の欠損を生じる場合があり、他の極端なケースでは、毒性を生じる場合がある。加えて、物性は、加工において重要であり得る(例えば、ある多形体は、溶媒和物を比較的形成し易い可能性があり、または不純物を除去するために濾過および洗浄することが困難であり得、かつ粒子の形状およびサイズ分布は多形体同士で異なり得るであろう)。
【0028】
本明細書中で用いられる場合で、かつ別途明記しない限り、用語「非晶質」、「非晶質形態」、および本明細書中で用いられる関連する用語は、当該物質、成分または生成物が、X線回折により決定される場合に実質的に結晶でないことを意味する。特に、用語「非晶質形態」は、不規則な固体形態、すなわち長距離にわたる結晶秩序を欠く固体形態を説明する。
【0029】
用語「製薬上許容される塩」とは、当技術分野で公知の様々な有機および無機対イオンから誘導される塩を意味する。製薬上許容される塩は、動物またはヒトによる摂取に対して安全であり得る。
【0030】
一態様では、本開示は、上記の通りのスルホンアミド化合物の結晶形態に関する。一部の実施形態では、本明細書中に開示されるスルホンアミド化合物の結晶の構造は、ラス状、平板状、および/または平面状結晶構造を含む。
【0031】
結晶形態および非晶質形態を特性決定するための技術としては、限定するものではないが、熱重量分析(TGA)、示差走査熱量測定(DSC)、X線粉末回折(XRPD)、単結晶X線回折、振動分光法、例えば、赤外(IR)およびラマン分光法、固体および溶液核磁気共鳴(NMR)分光法、光学顕微鏡観察、ホットステージ光学顕微鏡観察、走査型電子顕微鏡観察(SEM)、電子線結晶学および定量分析、粒径分析(PSA)、表面積分析、溶解度測定、溶解測定、原子分析、およびカール・フィッシャー分析が挙げられる。特徴的な単位格子パラメータは、限定するものではないが、単結晶回折および粉末回折をはじめとする、X線回折および中性子回折などの、1種以上の技術を用いて決定することができる。粉末回折データを解析するために有用な技術としては、リートベルト精密化などのプロファイル精密化が挙げられ、これは、例えば、2種以上の固相を含むサンプル中の単一相に関連する回折ピークを解析するために用いることができる。粉末回折データを解析するために有用な他の方法としては、単位格子インデックス化が挙げられ、この方法は、当業者が、結晶粉末を含有するサンプルから単位格子パラメータを決定することを可能にする。
【0032】
粉末X線回折スペクトルでは、回折角および全体パターンが、データの性質に応じて、結晶の正体を特定する上で重要であり得る。粉末X線回折スペクトルの相対的強度は、結晶成長の方向、粒径、または測定条件に応じて変化し得るので、つまり、厳格に解釈すべきではない。加えて、種々のパターンから得られる一部の値が、結晶成長の方向、粒径、測定条件等に依存する幾分かの誤差を生じ得る。例えば、回折角は、粉末X線回折スペクトルでの回折角度(2θ±0.2°)であり得、このことは、別途示されない限り、回折角が、個別に、いずれかの特定の値の±0.2°以内であり得ることを意味する。
【0033】
一部の実施形態では、本開示は、5−ブロモ−2−(N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミドの結晶形態に関する。追加の実施形態では、この結晶形態のX線回折パターンは、6.8°、7.8°、11.2°、13.4°、13.7°、16.0°、17.1°、17.8°および23.2°の(2θ±0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1.0°)での、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、または9個のピークを有する。さらなる実施形態では、5−ブロモ−2−(N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミドの結晶形態は、DSCにより測定した場合に、約154、155、156、157、158、159、160、または161℃から、約160、161、162、163、164、165、166、167、168、169または170℃までの吸熱ピークを有する。一部の実施形態では、5−ブロモ−2−(N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミドの結晶形態は、DSCにより測定した場合に、155℃〜168℃、158℃〜162℃、159℃〜161℃、159℃〜165℃、または160℃〜163℃の吸熱ピークを有する。追加の実施形態では、5−ブロモ−2−(N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミドの結晶形態は、DSCにより測定した場合に、約154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、または170℃の吸熱ピークを有する。追加の実施形態では、この結晶形態の光学純度は、100%eeである。
【0034】
一部の実施形態では、本開示は、5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミドの結晶形態に関する。追加の実施形態では、この結晶形態のX線回折パターンは、6.8°、7.8°、11.2°、13.4°、13.7°、16.0°、17.1°、17.8°および23.2°の(2θ±0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1.0°)での、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、または9個のピークを有する。さらなる実施形態では、5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミドの結晶形態は、DSCにより測定した場合に、約154、155、156、157、158、159、160、または161℃から、約160、161、162、163、164、165、166、167、168、169または170℃までの吸熱ピークを有する。一部の実施形態では、5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミドの結晶形態は、DSCにより測定した場合に、155℃〜168℃、158℃〜162℃、159℃〜161℃、159℃〜165℃、または160℃〜163℃の吸熱ピークを有する。追加の実施形態では、5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミドの結晶形態は、DSCにより測定した場合に、約154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、または170℃の吸熱ピークを有する。追加の実施形態では、この結晶形態の光学純度は、100%eeである。
【0035】
一部の実施形態では、本開示は5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(3−エチル−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミドの結晶形態に関する。追加の実施形態では、この結晶形態のX線回折パターンは、6.8°、7.8°、11.2°、13.4°、13.7°、16.0°、17.1°、17.8°および23.2°の(2θ±0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1.0°)での、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、または9個のピークを有する。さらなる実施形態では、5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(3−エチル−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミドの結晶形態は、DSCにより測定した場合に、約154、155、156、157、158、159、160、または161℃から、約160、161、162、163、164、165、166、167、168、169または170℃までの吸熱ピークを有する。一部の実施形態では、5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(3−エチル−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミドの結晶形態は、DSCにより測定した場合に、155℃〜168℃、158℃〜162℃、159℃〜161℃、159℃〜165℃、または160℃〜163℃の吸熱ピークを有する。追加の実施形態では、5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(3−エチル−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミドの結晶形態は、DSCにより測定した場合に、約154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、または170℃の吸熱ピークを有する。追加の実施形態では、この結晶形態の光学純度は、100%eeである。
【0036】
一部の実施形態では、本開示は、安息香酸および5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミドの共結晶に関する。追加の実施形態では、この共結晶のX線回折パターンは、6.8°、7.8°、11.2°、13.4°、13.7°、16.0°、17.1°、17.8°および23.2°の(2θ±0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1.0°)での、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、または9個のピークを有する。さらなる実施形態では、この共結晶は、DSCにより測定した場合に、約154、155、156、157、158、159、160、または161℃から、約160、161、162、163、164、165、166、167、168、169または170℃までの吸熱ピークを有する。一部の実施形態では、5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミドの安息香酸の共結晶は、DSCにより測定した場合に、155℃〜168℃、158℃〜162℃、159℃〜161℃、159℃〜165℃、または160℃〜163℃の吸熱ピークを有する。追加の実施形態では、この共結晶は、DSCにより測定した場合に、約154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、または170℃の吸熱ピークを有する。追加の実施形態では、この安息香酸の共結晶の光学純度は、100%eeである。
【0037】
一部の実施形態では、本開示は、5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(3−クロロ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミドの結晶形態に関する。追加の実施形態では、この結晶形態のX線回折パターンは、6.8°、7.8°、11.2°、13.4°、13.7°、16.0°、17.1°、17.8°および23.2°の(2θ±0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1.0°)での、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、または9個のピークを有する。さらなる実施形態では、5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(3−クロロ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミドの結晶形態は、DSCにより測定した場合に、約154、155、156、157、158、159、160、または161℃から、約160、161、162、163、164、165、166、167、168、169または170℃までの吸熱ピークを有する。一部の実施形態では、5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(3−クロロ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミドの結晶形態は、DSCにより測定した場合に、155℃〜168℃、158℃〜162℃、159℃〜161℃、159℃〜165℃、または160℃〜163℃の吸熱ピークを有する。追加の実施形態では、5−クロロ−2−(N−((1S,2R)−2−(3−クロロ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミドの結晶形態は、DSCにより測定した場合に、約154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、または170℃の吸熱ピークを有する。追加の実施形態では、この結晶形態の光学純度は、100%eeである。
【0038】
一部の実施形態では、本開示は、5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシ−4−メチル−d3−クロマン−8−スルホンアミドの結晶形態に関する。追加の実施形態では、この結晶形態のX線回折パターンは、6.8°、7.8°、11.2°、13.4°、13.7°、16.0°、17.1°、17.8°および23.2°の(2θ±0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1.0°)での、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、または9個のピークを有する。さらなる実施形態では、5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシ−4−メチル−d3−クロマン−8−スルホンアミドの結晶形態は、DSCにより測定した場合に、約154、155、156、157、158、159、160、または161℃から、約160、161、162、163、164、165、166、167、168、169または170℃までの吸熱ピークを有する。一部の実施形態では、5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシ−4−メチル−d3−クロマン−8−スルホンアミドの結晶形態は、DSCにより測定した場合に、155℃〜168℃、158℃〜162℃、159℃〜161℃、159℃〜165℃、または160℃〜163℃の吸熱ピークを有する。追加の実施形態では、5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシ−4−メチル−d3−クロマン−8−スルホンアミドの結晶形態は、DSCにより測定した場合に、約154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、または170℃の吸熱ピークを有する。追加の実施形態では、この結晶形態の光学純度は、100%eeである。
【0039】
一部の実施形態では、本開示は、5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(3−クロロ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシ−4−メチルクロマン−8−スルホンアミドの結晶形態に関する。追加の実施形態では、この結晶形態のX線回折パターンは、6.8°、7.8°、11.2°、13.4°、13.7°、16.0°、17.1°、17.8°および23.2°の(2θ±0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1.0°)での、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、または9個のピークを有する。さらなる実施形態では、5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(3−クロロ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシ−4−メチルクロマン−8−スルホンアミドの結晶形態は、DSCにより測定した場合に、約154、155、156、157、158、159、160、または161℃から、約160、161、162、163、164、165、166、167、168、169または170℃までの吸熱ピークを有する。一部の実施形態では、5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(3−クロロ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシ−4−メチルクロマン−8−スルホンアミドの結晶形態は、DSCにより測定した場合に、155℃〜168℃、158℃〜162℃、159℃〜161℃、159℃〜165℃、または160℃〜163℃の吸熱ピークを有する。追加の実施形態では、5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(3−クロロ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシ−4−メチルクロマン−8−スルホンアミドの結晶形態は、DSCにより測定した場合に、約154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、または170℃の吸熱ピークを有する。追加の実施形態では、この結晶形態の光学純度は、100%eeである。
【0040】
一部の実施形態では、本開示は、N−((1S,2R)−2−(3−ブロモ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−5−クロロ−4−ヒドロキシ−4−メチルクロマン−8−スルホンアミドの結晶形態に関する。追加の実施形態では、この結晶形態のX線回折パターンは、6.8°、7.8°、11.2°、13.4°、13.7°、16.0°、17.1°、17.8°および23.2°の(2θ±0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1.0°)での、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、または9個のピークを有する。さらなる実施形態では、N−((1S,2R)−2−(3−ブロモ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−5−クロロ−4−ヒドロキシ−4−メチルクロマン−8−スルホンアミドの結晶形態は、DSCにより測定した場合に、約154、155、156、157、158、159、160、または161℃から、約160、161、162、163、164、165、166、167、168、169または170℃までの吸熱ピークを有する。一部の実施形態では、N−((1S,2R)−2−(3−ブロモ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−5−クロロ−4−ヒドロキシ−4−メチルクロマン−8−スルホンアミドの結晶形態は、DSCにより測定した場合に、155℃〜168℃、158℃〜162℃、159℃〜161℃、159℃〜165℃、または160℃〜163℃の吸熱ピークを有する。追加の実施形態では、N−((1S,2R)−2−(3−ブロモ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−5−クロロ−4−ヒドロキシ−4−メチルクロマン−8−スルホンアミドの結晶形態は、DSCにより測定した場合に、約154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、または170℃の吸熱ピークを有する。追加の実施形態では、この結晶形態の光学純度は、100%eeである。
【0041】
一部の実施形態では、本開示は、5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(3−クロロ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシ−4−メチル−d3−クロマン−8−スルホンアミドの結晶形態に関する。追加の実施形態では、この結晶形態のX線回折パターンは、6.8°、7.8°、11.2°、13.4°、13.7°、16.0°、17.1°、17.8°および23.2°の(2θ±0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1.0°)での、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、または9個のピークを有する。さらなる実施形態では、5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(3−クロロ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシ−4−メチル−d3−クロマン−8−スルホンアミドの結晶形態は、DSCにより測定した場合に、約154、155、156、157、158、159、160、または161℃から、約160、161、162、163、164、165、166、167、168、169または170℃までの吸熱ピークを有する。一部の実施形態では、5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(3−クロロ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシ−4−メチル−d3−クロマン−8−スルホンアミドの結晶形態は、DSCにより測定した場合に、155℃〜168℃、158℃〜162℃、159℃〜161℃、159℃〜165℃、または160℃〜163℃の吸熱ピークを有する。追加の実施形態では、5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(3−クロロ−6−フルオロ−2−メチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシ−4−メチル−d3−クロマン−8−スルホンアミドの結晶形態は、DSCにより測定した場合に、約154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、または170℃の吸熱ピークを有する。追加の実施形態では、この結晶形態の光学純度は、100%eeである。
【0042】
一部の実施形態では、本開示は、5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシクロマン−8−スルホンアミドの結晶形態に関する。追加の実施形態では、この結晶形態のX線回折パターンは、6.8°、7.8°、11.2°、13.4°、13.7°、16.0°、17.1°、17.8°および23.2°の(2θ±0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1.0°)での、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、または9個のピークを有する。さらなる実施形態では、5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシクロマン−8−スルホンアミドの結晶形態は、DSCにより測定した場合に、約154、155、156、157、158、159、160、または161℃から、約160、161、162、163、164、165、166、167、168、169または170℃までの吸熱ピークを有する。一部の実施形態では、5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシクロマン−8−スルホンアミドの結晶形態は、DSCにより測定した場合に、155℃〜168℃、158℃〜162℃、159℃〜161℃、159℃〜165℃、または160℃〜163℃の吸熱ピークを有する。追加の実施形態では、5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシクロマン−8−スルホンアミドの結晶形態は、DSCにより測定した場合に、約154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、または170℃の吸熱ピークを有する。追加の実施形態では、この結晶形態の光学純度は、100%eeである。
【0043】
一部の実施形態では、本開示の結晶形態のX線回折パターンは、6.8°、7.8°、11.2°、13.4°、13.7°、16.0°、17.1°、17.8°および23.2°の(2θ±0.2°)での、2個以上のピークを有する。一部の実施形態では、結晶形態は、DSCにより測定した場合に、155℃〜168℃の吸熱ピークを有する。追加の実施形態では、本発明の結晶形態は、上記の実施形態の組み合わせにより特徴付けられる場合があり、これらは互いに矛盾しない。例えば、結晶形態は、X線回折パターンの上記のピークおよびDSCにより測定される上記の吸熱ピークの組み合わせにより特徴付けられる場合がある。
【0044】
DSC曲線での吸熱ピークのピーク温度に関して用いられる用語「約」とは、その値の±2、3、4または5℃以内の温度値を意味する。
【0045】
本明細書中で別途明記しない限り、用語「約」とは、特定の固体形態を特徴付けるために与えられる数値または値の範囲(例えば、具体的な温度または温度範囲;例えば、温度または湿度の関数としての質量変化などの質量変化;例えば、質量もしくは割合(%)基準での、溶媒または水含有量;あるいは、例えば、IRもしくはラマン分光法またはXRPDによる分析での、ピーク位置)との関連で用いられる場合、値または値の範囲が、該特定の固体形態を説明しながら、当業者には理解できると判断される程度まで逸脱している可能性があることを示す。例えば、特定の実施形態では、この文脈で用いられ、かつ別途明記しない限り、用語「約」とは、数値または値の範囲が、明示される値または値の範囲の25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5、または0.25%以内で変化する可能性があることを示す。
【0046】
一部の実施形態では、本明細書中に開示される結晶形態、共結晶または安息香酸塩は、空間的に規則的な原子配置を有する複数の結晶(結晶多形体)を含むことができ、かつ異なる物理化学的特性を生じ得る。追加の実施形態では、本明細書中に開示される結晶形態、共結晶または安息香酸塩は、結晶多形体を含有する混合物であり得る。
【0047】
一部の実施形態では、本開示の結晶形態、共結晶または安息香酸塩において、スルホンアミド化合物に対する安息香酸のモル比は、約0.4から約1.6、約0.6から約1.4、約0.8から約1.2、約0.9から約1.1、または約1から約1である。追加の実施形態では、本開示の結晶形態、共結晶または安息香酸塩において、スルホンアミド化合物と安息香酸とのモル比は、約0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3から、約1.3、1.2、1.1、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、または0.4までである。さらなる実施形態では、スルホンアミド化合物と安息香酸のモル比は、約1:1である。
【0048】
本開示の結晶形態、共結晶または安息香酸塩の一部の実施形態に従えば、スルホンアミド化合物または安息香酸は、1種以上の放射性同位体または非放射性同位体を用いて置換されていることができる。
【0049】
一部の実施形態では、本明細書中に開示される結晶形態、共結晶または安息香酸塩の光学純度は、少なくとも約70、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5または99.8%である。本明細書中で用いられる場合、光学純度またはキラル純度とは、1種類の純粋なエナンチオマーの旋光度に対するエナンチオマーの混合物を有するサンプルの観測旋光度を意味する。追加の実施形態では、光学純度は、約95%以上である。さらなる実施形態では、光学純度は、約98%以上である。またさらなる実施形態では、光学純度は、約100%である。一部の実施形態では、光学純度は、HPLCを用いて測定することができる。一部の実施形態では、本開示は、スルホンアミド化合物を安息香酸と混合することにより、または本明細書中に開示される方法によって結晶形態、共結晶もしくは安息香酸塩を形成させることにより、本明細書中に開示されるスルホンアミド化合物の光学純度を高める方法に関する。
【0050】
特定の実施形態では、本明細書中に開示される化合物の結晶形態、共結晶または安息香酸塩は、物理的および/または化学的に純粋であり得る。特定の実施形態では、本明細書中に開示される化合物の結晶形態、共結晶または安息香酸塩は、少なくとも約100、99、98、97、96、95、94、93、92、91、90、89、88、87、86、85、84、83、82、81または80%物理的および/または化学的に純粋であり得る。一部の実施形態では、本明細書中に開示される化合物の結晶形態、共結晶または安息香酸塩は、実質的に純粋である。本明細書中で用いられる場合で、かつ別途明記しない限り、「実質的に純粋な」、例えば、他の固体形態および/または他の化合物を実質的に含有しない、特定の結晶形態または非晶質形態を含むサンプルは、特定の実施形態では、約25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.75%、0.5%、0.25%または0.1重量%未満の1種以上の他の固体形態および/または他の化合物を含有する。
【0051】
一部の実施形態では、本明細書中に開示される化合物の結晶形態、共結晶または安息香酸塩は、約30、40、50、60、70または80℃および約65、70、75、80または85%相対湿度での約1、2、3、4、5、6、7、8、12、16、24、36、48、60、72、84、96、108、120、132、144、または156週間以上かつ約160、156、150、138、126、114、102、90、78、66、54、42、30、24、18、12または6週間以下の条件への曝露に際して安定である。該条件は、閉鎖条件または開放条件であり得る。本明細書中で用いられる場合、「閉鎖」条件とは、安定性実験中にサンプルを収容するボトルの蓋を閉めるかまたは密閉することを意味することができ、かつ「開放」条件とは、蓋が開いていることを意味することができる。追加の実施形態では、本明細書中に開示される化合物の結晶形態、共結晶または安息香酸塩は、約40℃および約75%相対湿度での少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22週間の条件への曝露に際して安定である。一部の実施形態では、該条件は閉鎖条件である。さらなる実施形態では、本明細書中に開示される化合物の結晶形態、共結晶または安息香酸塩は、約40℃および約75%相対湿度での約4週間の条件への曝露に際して安定である。一部の実施形態では、該条件は閉鎖条件である。つまり、本明細書中に開示される化合物の結晶形態、共結晶または安息香酸塩は、長期間にわたって優れた貯蔵安定性を示す。本明細書中では、「安定」であることとは、(i)当初の光学純度と比較して、光学純度の変化が約1.0、0.5、0.3、0.1、0.05、もしくは0.01%以下であること、(ii)当初の不純物量と比較して、不純物の増加が約1.0、0.5、0.3、0.1、0.05、もしくは0.01%以下であること、および/または(iii)X線回折パターンが、(2θ±0.2°)での当初のピークの10、20、30、40、50、60、70、80、もしくは90%以上を維持すること、を意味する。
【0052】
本開示の別の態様は、本明細書中に記載される結晶形態、共結晶および/または安息香酸塩を調製する方法に関し、該方法は、以下のステップを含む:少なくとも2種の溶媒を含む溶媒系の中に、安息香酸および本明細書中に記載されるスルホンアミド化合物を溶解させるステップ;および結晶形態、共結晶および/または安息香酸塩が形成され、かつ該溶媒系から単離されるまで、該溶媒系を過飽和させるステップ。別の態様では、本開示は、本明細書中に開示されるスルホンアミド化合物の結晶形態を、非結晶形態から調製する方法に関し、該方法は、以下のステップを含む:少なくとも2種の溶媒を含む溶媒系の中に、安息香酸およびスルホンアミド化合物を溶解させるステップ;および生成物が該溶媒系から結晶化するまで、該溶媒系を過飽和させるステップ。
【0053】
一部の実施形態では、前記方法は、本明細書中に開示されるスルホンアミド化合物を安息香酸に添加または混合するステップをさらに含むことができる。追加の実施形態では、スルホンアミド化合物と比較して、約0.8、0.9、1、2、3、4または5から、約1、2、3、4、5、6、7、8、または9までのモル当量の安息香酸を、該スルホンアミド化合物と混合することができる。一部の実施形態では、前記方法は、約0.8〜約5、約2〜約5、約3〜約5、約1〜約4、または約1〜6モル当量の安息香酸を、本明細書中に開示されるスルホンアミド化合物に添加または混合するステップをさらに含むことができる。追加の実施形態では、スルホンアミド化合物と比較して、約1、2、3、4、5、6、または7モル当量の安息香酸を、該スルホンアミド化合物と混合することができる。
【0054】
追加の実施形態では、溶解ステップは、安息香酸およびスルホンアミド化合物を溶媒系に添加または混合するステップを含むことができ、このとき、該溶媒系は、約10、11、12、13、14、15、18、20、22、25、27、30、35、38または40倍をはじめとする、体積基準で約10〜約40倍、約20〜約30倍、または約10〜約30倍の量である。さらなる実施形態では、溶解ステップは、安息香酸およびスルホンアミド化合物を溶媒系に添加するステップを含むことができ、このとき、該溶媒系は、体積基準で、約10、15、20、25、30、35、40から、約60、55、50、45、40、35または30倍の量である。追加の実施形態では、溶媒系の少なくとも2種の溶媒のうちの少なくとも1種が、ヘプタンまたはトルエンである。さらなる実施形態では、溶媒系は、ヘプタンおよびトルエンを含む。
【0055】
さらなる実施形態では、溶媒系において、またはヘプタンおよびトルエンの混合溶液において、トルエンの比率は、約5、8、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20%をはじめとする、約5、6、7、8、9、10または11から、約10、15、17または20%までである。さらなる実施形態では、ヘプタンおよびトルエンの混合溶液において、トルエンの比率は、5〜20%、10〜20%、5〜10%、または8〜15%である。
【0056】
一部の実施形態では、過飽和ステップは、溶媒系を加熱することを含む。さらなる実施形態では、過飽和ステップは、室温を超える温度または約38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55もしくは56℃から、約50、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65もしくは66℃までの温度で、約1、2、3、4または5時間から、約4、5、6、7、8、9、10、15、20、30または40時間までの間、溶解ステップ由来の懸濁液を混合するステップを含む。またさらなる実施形態では、過飽和ステップは、約40〜約60℃、約50〜約60℃、約40〜約50℃、または約38〜約65℃の温度で、約1〜約40時間、約3〜約4時間、約4〜約5時間、または約3〜約10時間の間、懸濁液を混合することを含む。追加の実施形態では、過飽和ステップは、約40〜約60℃の温度で、約3〜約10時間、懸濁液を混合することを含む。
【0057】
一部の実施形態では、本明細書中に記載される化合物の結晶形態、共結晶および/または安息香酸塩を調製する方法は、残留する過剰な安息香酸を除去するために、過飽和ステップから取得される生成物を洗浄するステップをさらに含む。
【0058】
本明細書中に記載される結晶形態、共結晶または安息香酸塩のプロドラッグも本開示に包含されるが、用語「プロドラッグ」とは、生体内における生理的条件下で酵素または胃酸による反応により本明細書中に開示される化合物またはその塩に変化する化合物、すなわち、酵素的酸化、還元、または加水分解等により本開示の化合物もしくはその塩に変化する化合物、または胃酸の作用により本明細書中に開示される化合物もしくはその塩へと変化する化合物を意味する。また、本明細書中に開示される化合物またはその塩のプロドラッグは、広川書店1990年刊「医薬品の開発」第7巻分子設計163頁から198頁に記載されているものなどの生理的条件下で本明細書中に開示される化合物またはその塩に変化する化合物であり得る。
【0059】
また、本開示の結晶形態、共結晶または安息香酸塩は、溶媒和物(例えば、水和物等)であっても、非溶媒和物であってもよく、いずれも本明細書中に開示される化合物またはその塩に包含される。同位元素(例えば、重水素、H、14C、35S、125I等)等で標識された化合物も、本明細書中に記載される化合物またはその塩に包含される。
【0060】
本明細書中に記載される結晶形態、共結晶または安息香酸塩は、RNRに対して阻害活性を有する。本明細書中に記載される通りの化合物の結晶形態、共結晶または安息香酸塩は、その優れたRNR阻害活性およびその構造により、鉄イオン要求性タンパク質へのオフターゲット作用に基づく副作用を引き起こすことなく、RNR関連疾患の予防または治療のための医薬として有用であり、かつ金属イオンをキレートしない。「RNR関連疾患」とは、RNRの機能を欠失、もしくは抑制および/または阻害することによって、その発症率を低下させることができるか、あるいはその症状が寛解もしくは緩和、および/または完治する疾患が挙げられる。このような疾患として、例えば、悪性腫瘍が挙げられる。対象となる悪性腫瘍は、特に制限はされないが、頭頚部癌、消化器癌(食道癌、胃癌、十二指腸癌、肝臓癌、胆道癌(例えば、胆嚢癌または胆管癌等)、膵臓癌、結腸直腸癌(例えば、結腸癌、直腸癌等)等)、肺癌(例えば、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、中皮腫等)、乳癌、生殖器癌(例えば、卵巣癌、子宮癌(例えば、子宮頚癌、子宮体癌等)等)、泌尿器癌(例えば、腎癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣腫瘍等)、造血器腫瘍(例えば、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫等)、骨・軟部腫瘍、皮膚癌、脳腫瘍等が挙げられる。
【0061】
本明細書において「RNR」は、ヒトまたは非ヒトのRNRを含み、好ましくはヒトRNRである。
【0062】
したがって、本開示は、本明細書中に記載される結晶形態、共結晶または安息香酸塩を有効成分として含有するRNR阻害剤を提供する。また、本開示は、本明細書中に記載される結晶形態、共結晶または塩の、RNR阻害剤の製造のための使用に関する。また、本開示は、本明細書中に記載される結晶形態、共結晶または安息香酸塩のRNR阻害剤としての使用を提供する。また、本開示は、RNR阻害剤に関連する疾患の予防または治療での使用のための本明細書中に記載される結晶形態、共結晶または安息香酸塩を提供する。
【0063】
さらに別の実施形態において、本開示は、本明細書中に記載される結晶形態、共結晶または安息香酸塩を有効成分として含有する医薬品を提供する。また、本開示は、本明細書中に記載される化合物の結晶形態、共結晶または安息香酸塩の、医薬の製造のための使用を提供する。また、本開示は、本明細書中に記載される化合物の結晶形態、共結晶または安息香酸塩の医薬としての使用を提供する。また、本開示は、医薬として使用するための本明細書中に記載される化合物の結晶形態、共結晶または安息香酸塩を提供する。
【0064】
さらに別の実施形態において、本開示は、本明細書中に記載される結晶形態、共結晶または安息香酸塩、および製薬上許容される担体を含有する医薬組成物を提供する。本明細書中に開示される結晶形態、共結晶または安息香酸塩は、吸湿性が低いかまたは吸湿性がなく、かつ低い帯電性を有するので、優れた取り扱い性を有する。吸湿性が低下するにつれて、保存および品質管理での貯蔵状態において存在する湿気の問題が軽減され、かつ錠剤またはカプセル剤などの固体調製物の製造時に、質量制御による調製の品質(均質性)を容易に制御することができる。加えて、帯電性が低いので、製造設備および包装への付着が著明でない。
【0065】
一部の実施形態において、上記医薬または医薬組成物は、RNR関連疾患の治療剤であり、より好ましい実施形態において、上記医薬または医薬組成物は、抗腫瘍剤である。
【0066】
追加の実施形態において、本開示は、RNR活性抑制方法を提供するために、有効量の本明細書中に記載される結晶形態、共結晶または安息香酸塩を、それを必要とする被験体に投与することに関する。また、本開示は、RNR関連疾患の予防、改善、または治療方法を提供するために、有効量の本明細書中に記載される結晶形態、共結晶または塩を被験体に投与することに関する。一部の実施形態において、RNR関連疾患の予防、改善、または治療方法は、腫瘍の予防、改善、または治療方法である。当該方法において、被験体としては、当該方法を必要とするヒトまたは非ヒト動物(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、イヌ、ネコ等)が挙げられる。追加の実施形態では、被験体は、本明細書中に記載されるRNR関連疾患に罹患している被験体であり得る。
【0067】
本明細書中に記載される結晶形態、共結晶または安息香酸塩を医薬として用いるにあたっては、必要に応じて製薬上許容される担体を配合し、予防または治療目的に応じて各種の投与剤形に適応させることが可能であり、該剤形としては、例えば、経口剤、注射剤、坐剤、軟膏剤、貼付剤等のいずれかが挙げられる。本明細書中に記載される結晶形態、共結晶または安息香酸塩は優れた経口吸収性を有するので、経口剤が好ましい。これらの投与剤形は、当技術分野で一般的に公知な慣用の製剤方法により製造できる。
【0068】
製薬上許容される担体に関しては、製剤材料として慣用の各種有機または無機担体物質が用いられ、固形製剤における賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤;液状製剤における溶媒、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等として配合される。また、必要に応じて防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、矯味・矯臭剤、および安定化剤をはじめとする製剤添加物を用いることもできる。
【0069】
製薬上許容される担体および製剤添加物としては、一般的に、例えば、賦形剤としては、乳糖、ショ糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、微結晶セルロース、珪酸等が挙げられ;結合剤としては、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、エチルセルロース(シェラックを含む)、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられ;崩壊剤としては、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、寒天末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、乳糖等が挙げられ;滑沢剤としては、精製タルクステアリン酸塩、ホウ砂、ポリエチレングリコール等が挙げられ;着色剤としては、酸化チタン、酸化鉄等が挙げられ;矯味・矯臭剤としては白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。
【0070】
経口投与用固形製剤は、本明細書中に記載される結晶形態、共結晶または安息香酸塩に、賦形剤を添加することにより調製することができ、および必要に応じて、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味・矯臭剤等をさらに添加することができ、その後、錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等へと製剤化することができる。
【0071】
注射用剤形は、本明細書中に記載される結晶形態、共結晶または安息香酸塩にpH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等を添加し、常法により皮下、筋肉内および静脈内用注射剤へと製剤化することにより調製することができる。
【0072】
坐剤を調製する場合、坐剤は、本明細書中に記載される有効成分に、賦形剤、および必要に応じて界面活性剤等を添加した後に、常法により製造することができる。軟膏剤(例えば、ペースト剤、クリーム剤およびゲル剤)の剤形で調製する場合、基剤、安定化剤、湿潤化剤、保存料等を、必要であれば混合し、常法により製剤化することができる。例えば、白色ワセリン、パラフィン、グリセリン、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト等を、基剤として用いることができる。保存料としては、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル等を用いることができる。貼付剤を調製する場合、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤等を、公知の方法により支持材に塗布することができる。支持材としては、コットン、スパン、化学繊維製の織布、不織布、軟質塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン製のフィルム等、または発泡シートが好適であり得る。
【0073】
上記の各投与単位剤形中に配合されるべき本明細書中に記載される結晶形態、共結晶または安息香酸塩の量は、これを適用すべき患者の症状により、またはその剤形により一定ではないが、一般に投与単位剤形あたり、経口投与用剤形では約0.05、0.1、1、5、10または20から、約100、500または1000mgまで、注射剤では約0.01または0.1から約200、300または500mgまで、坐剤では約1、5または10から約100、500または1000mgまでであり得る。
【0074】
また、上記投与剤形を有する薬剤の1日あたりの投与量は、患者の症状、体重、年齢、性別等によって異なり一定ではないが、本明細書中に記載される結晶形態、共結晶または安息香酸塩として成人(体重50kg)1日あたり0.05〜5000mg、好ましくは0.1〜2000mgとすればよく、これを1日1回または2〜3回に分けて投与するのが好ましい。
【0075】
図10〜12に記載される類似物質もまた、本出願に含められる。本発明の類似物質は、公知の方法により合成することができ、または市販品として入手することができる。類似物質は、高速液体クロマトグラフィーの保持時間、質量分析、およびフォトダイオードアレイ(PDA)の結果を、入手された類似物質と、本発明に従って検出される類似物質との間で比較することにより、特定することができる。
【0076】
さらに、これらの類似物質は、外部標準法または内部標準法のいずれかにより、定量的に測定することができる。
【0077】
これらの類似物質が、医薬剤または製剤調製物中に不純物として含有される可能性がある場合には、これらの類似物質は、医薬品規制調和国際会議のガイドラインICH−Q3Aに従って規制される。本発明の方法は、ガイドラインの基準を満たすか否かを確認することができるので、非常に有用である。
類似物質を、以下の表に示す。
【0078】
【表1】
【実施例】
【0079】
以下に実験例を示し、一部の実施形態に従って本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【0080】
実施例で用いた各種試薬は、特に記載のない限り市販品を使用した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーには、バイオタージ製SNAP−ULTRA(登録商標)Silicaプレパックドカラムまたは、逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィーにはバイオタージ製SNAP KP−C18−HS(登録商標)Silicaプレパックドカラムを用いた。逆相分取HPLCカラムクロマトグラフィーは下記条件にて実施した。注入量と勾配は適宜設定して実施した。
【0081】
カラム:YMC−Actus Triart C18,30×50mm,5μm
UV検出:254nm
カラム流速:40mL/min
移動相:水/アセトニトリル(0.1%ギ酸)
注入量:1.0mL
勾配:水/アセトニトリル(10%〜90%)
【0082】
NMRスペクトルは、AL400(400MHz;日本電子(JEOL))、Mercury400(400MHz;アジレント・テクノロジー)を使用し、重溶媒中にテトラメチルシランを含む場合は内部基準としてテトラメチルシランを用い、それ以外の場合には内部基準としてNMR溶媒を用いて測定し、全δ値をppmで示した。また、LCMSスペクトルはWaters製ACQUITY SQD(四重極型)を用いて下記条件にて測定した。
【0083】
カラム:Waters製ACQUITY UPLC(登録商標)BEH C18,2.1×50mm,1.7μm
MS検出:ESI negative
UV検出:254および280nm
カラム流速:0.5mL/min
移動相:水/アセトニトリル(0.1%ギ酸)
注入量:1μL
【0084】
【表2】
【0085】
略号の意味を以下に示す。
s:シングレット
d:ダブレット
t:トリプレット
q:カルテット
dd:ダブル ダブレット
dt:ダブル トリプレット
td:トリプル ダブレット
tt:トリプル トリプレット
ddd:ダブル ダブル ダブレット
ddt:ダブル ダブル トリプレット
dtd:ダブル トリプル ダブレット
tdd:トリプル ダブル ダブレット
m:マルチプレット
br:ブロード
brs:ブロードシングレット
DMSO−d:重ジメチルスルホキシド
CDCl:重クロロホルム
CDOD:重メタノール
CDI:1,1'−カルボニルジイミダゾール
DAST:三フッ化 N,N−ジエチルアミノ硫黄
DIBAL−H:水素化ジイソブチルアルミニウム
DMF:ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
THF:テトラヒドロフラン
WSC=EDCI=1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
HOBt=1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
【0086】
参考例A1:2−(1−ブロモエチル)−1−フルオロ−3,4−ジメチルベンゼン
[式I]
【化1】
【0087】
(工程1)1−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)エタノール
6−フルオロ−2,3−ジメチルベンズアルデヒド(22.0g)のTHF溶液(300mL)に臭化メチルマグネシウムのジエチルエーテル溶液(3.0M,70mL)を0℃で滴下後、反応混合物を室温で1時間撹拌した。氷浴下、飽和塩化アンモニウム水溶液(150mL)を滴下し、酢酸エチル(200mL)を加え、分層した。有機層を塩酸(1M,200mL)、水(200mL)およびブライン(200mL)で順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮することで1−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)エタノール(23.7g)を得た。
【0088】
(工程2)上記工程1で得られた1−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)エタノール(23.7g)のクロロホルム溶液(120mL)に、三臭化リン(26.5mL)を0℃で滴下し、反応液を0℃で30分間撹拌した。反応混合物を、氷冷した飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(1L)に加えた。混合物にクロロホルム(500mL)を加えた後、分層し、有機層を水(200mL)およびブライン(200mL)で順次洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮することで標記化合物(29.5g)を得た。
【0089】
参考例A2およびA3:参考例A1工程1および工程2と同様にして、出発物質であるアルデヒドと臭化メチルマグネシウムとを反応させた後、三臭化リンと反応させることにより、次に示す参考例A2およびA3の化合物を得た。
【0090】
【表3】
【0091】
参考例A4:2−(1−ブロモエチル)−4−エチル−1−フルオロ−3−メチルベンゼン
[式II]
【化2】
【0092】
(工程1)2−ブロモ−3−エチル−6−フルオロベンズアルデヒド
2−ブロモ−1−エチル−4−フルオロベンゼン(14.4g)のTHF溶液(150mL)に、−78℃でリチウムジイソプロピルアミドのTHF溶液(1.5M、54mL)を滴下した。反応液を30分間撹拌後、DMF(6.5mL)を加え、混合物をさらに20分間撹拌した。反応液に水(50mL)、塩酸(6M,50mL)を順次滴下し、混合物をヘキサン(100mL)で2回抽出した。合一した有機層をブライン(50mL)で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮することで、2−ブロモ−3−エチル−6−フルオロベンズアルデヒド(14.5g)を得た。
【0093】
(工程2)3−エチル−6−フルオロ−2−メチルベンズアルデヒド
上記工程1で得られた2−ブロモ−3−エチル−6−フルオロベンズアルデヒド(14.5g)の1,4−ジオキサン溶液(200mL)に、水(90mL)、リン酸三カリウム(32.0g)、メチルボロン酸(6.4g)、ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン付加物(1.75g)を加え、反応液を110℃で2時間加熱還流した。反応液を室温まで放冷し、ヘキサン(90mL)を加えた後、混合物をさらに2時間撹拌した。反応液をセライト濾過し、残渣をヘキサンで洗浄後、濾液を分層した。有機層をブライン(100mL)で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)で精製することで3−エチル−6−フルオロ−2−メチルベンズアルデヒド(8.4g)を得た。
【0094】
(工程3)参考例A1工程1および2の方法に準じ、上記工程2で得られた3−エチル−6−フルオロ−2−メチルベンズアルデヒド(8.4g)を用い、同様の操作を行うことで参考例A4の化合物を得た。
【0095】
参考例B1:(2S,3R)−2−アミノ−3−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)ブタン酸
[式III]
【化3】
【0096】
(S)−2−[o−[(N−ベンジルプロリル)アミノ]フェニル]−ベンジリデンアミノ−アセテート(2−)−N,N,N−ニッケル(II)(14.5g)のDMF溶液(50mL)に参考例A1で得られた2−(1−ブロモエチル)−1−フルオロ−3,4−ジメチルベンゼン(14.0g)のDMF溶液(50mL)を滴下し、水酸化カリウム(16.3g)を加え、1時間同温度で撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム溶液(50mL)および酢酸エチル(50mL)を加え分層し、水層を酢酸エチル(50mL)で2回抽出した。合一した有機層を水(50mL)、ブライン(50mL)で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル/ヘキサン)で精製した。得られた化合物をメタノール(120mL)に溶解し、塩酸(3M,90mL)を加え、混合物を80℃で45分間撹拌した。メタノールを減圧留去し、残渣にクロロホルム(50mL)および水(50mL)を加えた。水層をクロロホルム(50mL)で洗浄後、減圧下濃縮した。残渣を逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール/水)で精製することで、標記化合物(2.0g)を得た。
1H NMR (CD3OD) δ: 7.03 (dd, J=8.2, 5.7 Hz, 1H), 6.79 (dd, J=11.7, 8.4 Hz, 1H), 3.74-3.87 (m, 2H), 2.29 (s, 3H), 2.25 (s, 3H), 1.40 (dd, J=6.8, 2.4 Hz, 3H)。
【0097】
参考例B2〜B4
参考例A2〜A4で得られたアルキル化剤と(S)−2−[o−[(N−ベンジルプロリル)アミノ]フェニル]−ベンジリデンアミノ−アセテート(2−)−N,N,N−ニッケル(II)を反応させた後、酸加水分解により、次に示す参考例B2〜B4の化合物を製造した。
【0098】
【表4】
【0099】
参考例C1:5−クロロ−8−(クロロスルホニル)−4−メチル−d3−クロマン−4−イル アセテート
[式IV]
【化4】
【0100】
(工程1)8−ブロモ−5−クロロ−4−メチルクロマン−4−オール
ヨウ化メチル−d3−マグネシウムのジエチルエチルエーテル溶液(1.0M,63mL)にTHF(50mL)を加え、8−ブロモ−5−クロロクロマン−4−オン(7.5g)のTHF(50mL)溶液を室温で滴下した。反応液を同温度で10分間撹拌し、分層した。氷浴下、塩酸(1M,50mL)をゆっくり滴下し、酢酸エチル(50mL)を加え、分層した。水層を酢酸エチル(50mL)で抽出し、合一した有機層をブライン(50mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)で精製することで8−ブロモ−5−クロロ−4−メチルクロマン−4−オール(7.7g)を得た。
【0101】
(工程2)8−ブロモ−5−クロロ−4−メチル−d3−クロマン−4−イル アセテート
上記工程1で得られた8−ブロモ−5−クロロ−4−メチルクロマン−4−オール(7.7g)の無水酢酸溶液(100mL)にトリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム(III)(340mg)のアセトニトリル(12mL)溶液を−40℃で滴下し、反応液を同温度で30分間撹拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)、酢酸エチル(100mL)を順次加え、分層した。水層を酢酸エチル(100mL)で抽出し、合一した有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)で2回、ブライン(100mL)で1回洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)で精製することで8−ブロモ−5−クロロ−4−メチル−d3−クロマン−4−イル アセテート(8.9g)を得た。
【0102】
(工程3)8−(ベンジルチオ)−5−クロロ−4−メチル−d3−クロマン−4−イル アセテート
上記工程2で得られた8−ブロモ−5−クロロ−4−メチル−d3−クロマン−4−イル アセテート(6.7g)の1,4−ジオキサン(70mL)溶液に、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン(600mg)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(480mg)、N、N−ジイソプロピルエチルアミン(7.2mL)、ベンジルメルカプタン(2.8mL)を加え、反応液を90℃で2時間撹拌した。反応液を室温まで放冷し、セライト濾過した。残渣をヘキサン(50mL)で洗浄後、濾液に水(50mL)を加え分層した。有機層をブライン(50mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮した。反応液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)で精製することで8−(ベンジルチオ)−5−クロロ−4−メチル−d3−クロマン−4−イル アセテート(6.3g)を得た。
【0103】
(工程4)上記工程3で得られた8−(ベンジルチオ)−5−クロロ−4−メチル−d3−クロマン−4−イル アセテート(6.3g)のアセトニトリル(100mL)溶液に、0℃にて水(3mL)、酢酸(4.3mL)、1,3−ジクロロ−5,5−ジメチルヒダントイン(7.2g)をそれぞれ加え、反応液を同温度で30分間撹拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(70mL)、酢酸エチル(70mL)を加え、分層した。水層を酢酸エチル(70mL)で抽出した。合一した有機層をブライン(70mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)で精製することで標記化合物(5.3g)を得た。
【0104】
参考例C2〜C4:参考例C1工程1〜4の方法に準じて、以下の表に列記する出発物質を用いて、参考例C2の化合物を合成した。参考例C1工程3および4の方法に準じて、参考例C3およびC4の化合物を合成した。
【0105】
【表5】
【0106】
参考例D1:5−((1S,2R)−1−アミノ−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)プロピル)−1,3,4−オキサジアゾール−2(3H)−オン・一塩酸塩
[式V]
【化5】
【0107】
(工程1)(2S,3R)−2−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−3−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)ブタン酸
参考例B1より得られた(2S,3R)−2−アミノ−3−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)ブタン酸(515mg)に水(9mL)、1、4−ジオキサン(9mL)、トリエチルアミン(955μL)を順次加え、混合物を0℃に冷却した。反応液に二炭酸ジ−tert−ブチル(650mg)を同温度で加え、混合物を45分間撹拌した。反応液を塩酸(1M,20mL)に加え、酢酸エチル(20mL)で抽出した。有機層をブライン(20mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル/2%酢酸)で精製することで、(2S,3R)−2−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−3−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)ブタン酸(745mg)を得た。
【0108】
(工程2)tert−ブチル((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)カーバメート
上記工程1で得られた(2S,3R)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)ブタン酸(440mg)のTHF(14.0mL)溶液に、CDI(302mg)を加え、反応液を室温で20分間撹拌した。反応液を0℃に冷却し、ヒドラジン・一水和物(200μL)を加え、混合物を同温度で30分間撹拌した。反応液を水(20mL)に加え、酢酸エチル(20mL)で抽出した。有機層をブライン(20mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮した。得られた残渣の1,4−ジオキサン(14mL)溶液に、CDI(560mg)を加え、反応液を室温で30分撹拌した。反応液を水(20mL)に加え、酢酸エチル(20mL)で抽出した。有機層をブライン(20mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)で精製することでtert−ブチル((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)カーバメート(356mg)を得た。
【0109】
(工程3)上記工程2で得られたtert−ブチル((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)カーバメート(550mg)を塩酸−1,4−ジオキサン(4M,5.0mL)に溶解し、反応液を室温で1.5時間撹拌した。反応液を減圧下濃縮することで標記化合物を得た。
【0110】
参考例D2およびD3:参考例D1工程1〜3の方法に準じて、次に示す参考例D2およびD3の化合物を合成した。
【0111】
【表6】
【0112】
実施例1:5−ブロモ−2−(N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)ベンズアミド
(工程1)参考例B1より得られた(2S,3R)−2−アミノ−3−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)ブタン酸(300mg)の水(5.0mL)、1,4−ジオキサン(5.0mL)溶液に、トリエチルアミン(570μL)を加えた後、0℃に冷却した。反応液に4−ブロモ−2−シアノベンゼン−1−スルホニルクロリド(362mg)を加え、混合物を同温度で45分間撹拌した。反応液を塩酸(1M,15mL)に加え、酢酸エチル(15mL)で抽出した。有機層をブライン(20mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル/2%酢酸)で精製することで、(2S,3R)−2−(4−ブロモ−2−シアノフェニルスルホンアミド)−3−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)ブタン酸(465mg)を得た。
【0113】
(工程2)上記工程1で得られた(2S,3R)−2−(4−ブロモ−2−シアノフェニルスルホンアミド)−3−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)ブタン酸(465mg)のTHF(5.0mL)溶液に、CDI(210mg)を加え、反応液を室温で20分間撹拌した。反応液を0℃に冷却し、ヒドラジン・一水和物(200μL)を加え、混合物を同温度で20分間撹拌した。反応液を水(20mL)に加え、酢酸エチル(20mL)で抽出した。有機層をブライン(20mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮した。得られた残渣の1,4−ジオキサン(4.0mL)溶液に、CDI(211mg)を加え、反応液を45℃で1時間撹拌した。反応液を水(20mL)に加え、酢酸エチル(20mL)で抽出した。有機層をブライン(20mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)で精製することで4−ブロモ−2−シアノ−N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)ベンゼンスルホンアミド(386mg)を得た。
【0114】
(工程3)上記工程2で得られた4−ブロモ−2−シアノ−N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)ベンゼンスルホンアミド(386mg)のDMSO(5.0mL)溶液に、氷浴下にて過酸化水素水(1.0mL)、炭酸カリウム(420mg)を順次加え、反応液を60℃にて2.5時間撹拌した。反応液を氷浴した塩酸(1M,15mL)にゆっくりと加えた後、酢酸エチル(15mL)で抽出した。有機層をブライン(20mL)で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)で精製することで、標記化合物を得た。
【0115】
実施例2〜4
実施例1工程1〜3の方法に準じて、実施例2〜4の化合物を合成した。必要な原料を以下の表に記載した。
【0116】
【表7】
【0117】
実施例5:5−クロロ−N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシ−4−メチル−d3−クロマン−8−スルホンアミド異性体Aおよび異性体B
(工程1)5−クロロ−8−(N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)−4−メチル−d3−クロマン−4−イル アセテート
参考例D1で得られた5−((1S,2R)−1−アミノ−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)プロピル)−1,3,4−オキサジアゾール−2(3H)−オン・一塩酸塩(45mg)のピリジン(1.5mL)溶液に、参考例C1で得られた5−クロロ−8−(クロロスルホニル)−4−メチル−d3−クロマン−4−イル アセテート(80mg)を加え、反応液を室温で12時間撹拌した。反応液を減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)で精製することで、標記化合物(59mg)を1:1のジアステレオマー混合物として得た。
【0118】
(工程2)上記工程1で得られた5−クロロ−8−(N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)スルファモイル)−4−メチル−d3−クロマン−4−イル アセテート(59mg)の1:1のジアステレオマー混合物をメタノール(2.0mL)、水(1.0mL)に溶解し、水酸化リチウム(5mg)を加え、反応液を55℃で1時間撹拌した。反応液を濃縮後、残渣に塩酸(1M,10mL)、酢酸エチル(10mL)を加え、分層した。水層を酢酸エチル(10mL)で抽出し、合一した有機層をブライン(10mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮した。残渣を逆相HPLC(水/アセトニトリル)で精製し、フラクションを濃縮することで2つのジアステレオマー生成物をそれぞれ得た。先に溶出した物質を化合物Aとし、後に溶出した物質を化合物Bとした。
【0119】
実施例6〜8:実施例5工程2の方法に準じて、次に示す実施例6〜8の化合物を合成した。ジアステレオマーを分離した場合は先に溶出した化合物をA、後に溶出した化合物をBとした。ジアステレオマーの比率は特に記載がない限り、1:1の混合物とする。必要な原料を以下の表に記載した。
【0120】
【表8】
【0121】
実施例9:5−フルオロ−N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−ヒドロキシクロマン−8−スルホンアミド異性体Aおよび異性体B
(工程1)参考例D1で得られた5−((1S,2R)−1−アミノ−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)プロピル)−1,3,4−オキサジアゾール−2(3H)−オン・一塩酸塩(40mg)と参考例C3で得られた5−フルオロ−4−オキソクロマン−8−スルホニルクロリド(60mg)を用いて実施例5工程1の方法に準じて、5−フルオロ−N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−オキソクロマン−8−スルホンアミド(44mg)を得た。
【0122】
(工程2)上記工程1で得られた5−フルオロ−N−((1S,2R)−2−(6−フルオロ−2,3−ジメチルフェニル)−1−(5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)プロピル)−4−オキソクロマン−8−スルホンアミド(44mg)のエタノール(2.0mL)溶液に、水素化ホウ素ナトリウム(13.5mg)を加え、反応液を室温で30分間撹拌した。反応液を減圧下濃縮後、残渣に水(10mL)、酢酸エチル(10mL)を加え、分層し、水層を酢酸エチル(10mL)で抽出した。合一した有機層をブライン(10mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮した。残渣を逆相HPLC(水/アセトニトリル)で精製し、フラクションを濃縮することで2つのジアステレオマー生成物をそれぞれ得た。先に溶出した物質を化合物Aとし、後に溶出した物質を化合物Bとした。
【0123】
実施例10:実施例5工程1および実施例9工程2の方法に準じて、次に示す実施例10の化合物を合成した。ジアステレオマーを分離した場合は先に溶出した化合物をA、後に溶出した化合物をBとした。ジアステレオマーの比率は特に記載がない限り、1:1の混合物とする。必要な原料を以下の表に記載した。
【0124】
【表9】
【0125】
比較例として、下記式の化合物を得た。
[式VI]
【化6】
【0126】
1H NMR (CD3OD) δ: 7.54 (d, J=8.4 Hz, 2H), 7.17-7.29 (m, 5H), 7.08-7.14 (m, 2H), 4.55-4.61 (m, 1H), 3.00-3.13 (m, 2H), 2.39 (s, 3H)。
【0127】
以下、実施例1〜10の化合物の構造式および物性値を示す。
【0128】
【表10】
【0129】
実験例:本開示に係る化合物を、以下の試験法を用いて評価した。
実験例1:ヒトRNR阻害作用
被検化合物のリボヌクレオチド還元反応(以下RNR反応)に対する阻害活性を、下記方法によりシチジンジホスフェート(以下、CDP)からのデオキシシチジンジホスフェート(以下、dCDP)の生成を測定することにより求めた。
【0130】
アミノ末端にヒスチジンタグを融合したヒトM1サブユニットおよびヒトM2サブユニット(アミノ末端59アミノ酸を欠損させた変異体)を大腸菌にて高発現させ、回収後に可溶化し、ヒスチジンタグ付加ヒトM1およびM2タンパク質をニッケルキレートカラムで精製した。
【0131】
被検化合物のRNR反応に対する阻害活性測定法は、文献Cancer Research 64、1−6(2004)に記載されている方法を参考にした。
【0132】
まず、被検化合物をDMSOで段階希釈した。次に、0.02%ウシ胎児血清由来アルブミン水溶液中にヒトM1タンパク質とヒトM2タンパク質を加えた後、本開示の化合物のDMSO溶液または対照DMSO溶液(DMSOの終濃度は1%)を加え、混合物を室温で20分間静置した。その後、反応緩衝液[終濃度で50mM HEPES緩衝液(pH7.2)、終濃度で4mM酢酸マグネシウム、終濃度で100mM塩化カリウム、終濃度で6mMジチオトレイトール、終濃度で2mMアデノシントリホスフェート、終濃度で0.24mMニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸]および終濃度で10μMのCDPを加えて、37℃で30分間インキュベーションし、RNR反応を行った。反応後直ちに100℃で15分間加熱して反応を停止させた後、10,000rpmで10分間遠心分離した。遠心分離後、得られた上清の一部(5μL)をShim−pack XR−ODS(島津ジーエルシー社製、3.0×100mm)を用いて高速液体クロマトグラフ(島津製作所製、Prominence)にて分析した。測定波長265nm、流速0.5mL/minで移動相A(10mMリン酸二水素カリウム(pH6.7)、10mMテトラブチルアンモニウム、0.25%メタノール)と移動相B(50mMリン酸二水素カリウム(pH6.7)、5.6mMテトラブチルアンモニウム、30%メタノール)の12:13混合物から同2:3混合物への9分間濃度勾配により溶離し、基質であるCDP(RT 5.9min)および反応生成物であるdCDP(RT 6.2min)を測定した。
【0133】
被検化合物の阻害活性は次式により求め、RNR反応を50%阻害する被検化合物の濃度をIC50(μM)として表19−1〜表19−3に示した。
【0134】
【数1】
【0135】
この結果、下記表より明らかなように、本発明化合物は優れたRNR阻害作用を有することが明らかとなった。一方、比較例1の化合物は、IC50は43μMであり、本発明の実施例化合物に見られるようなRNRに対する阻害活性を示さなかった。
【0136】
【表11】
【0137】
実験例2:ヒト由来乳癌細胞株に対する細胞増殖抑制効果
ヒト由来乳癌細胞株HCC1806細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)を含むATCC推奨のロズウェルパーク記念研究所培地(RPMI−1640)中で、80%を超えない細胞密度で毎日継代した。細胞増殖抑制活性の試験を開始するため、HCC1806細胞を上記培地中に懸濁し、96ウェル平底プレートの各ウェルに1ウェルあたりの細胞数がそれぞれ2000個となるように180μL播種した後、細胞を5%炭酸ガス含有の培養器中37℃で1日間培養した。翌日、被検化合物をDMSOで溶解し、最終濃度の10倍濃度に蒸留水で段階希釈した薬剤添加溶液を細胞の培養プレートの各ウェルに20μL加え、細胞を5%炭酸ガス含有の培養器中37℃で72時間培養した。72時間培養後、グルタルアルデヒド20μLを各ウェルに添加し30分静置後、プレートを水で10回洗い乾燥させた。染色液(0.05%クリスタルバイオレット、20%メタノール溶液)100μLを各ウェルに添加し30分静置後、プレートを水で10回洗浄し乾燥させた。抽出液(0.1N NaHPO:100%エタノール=1:1)100μLを各ウェルに添加・混和し、プレートリーダー(コロナ電気株式会社製、MTP−450)を用いて540nmの波長にて測定した。以下の式より増殖阻害率を算出し、50%阻害する被検化合物の濃度(IC50(μM))を求めた。結果を表11に示す。
【0138】
増殖阻害率(%)={(C−B)−(T−B)}/(C−B)×100
T:被検化合物を添加したウェルの吸光度
C:被検化合物を添加しなかったウェルの吸光度
B:細胞懸濁液を添加しなかったウェルの吸光度。
【0139】
この結果、下記表より明らかなように、本開示の化合物は癌細胞に対する増殖阻害活性を有することが明らかとなった。
【0140】
【表12】
【0141】
実験例3:ヒト癌由来癌細胞株に対する細胞増殖抑制効果
実験例2の方法に準じて表12および13に記載した各種癌細胞株に対する細胞増殖抑制効果を評価した。
【0142】
この結果、下記表より明らかなように、本開示の化合物はヒト由来の各種癌細胞に対する増殖阻害活性を有することが明らかとなった。
【0143】
【表13】
【0144】
【表14】
【0145】
実験例4:ヒト由来血液癌細胞株(MV−4−11)皮下移植モデルを用いた抗腫瘍効果の評価(in vivo)
ヒト由来血液癌細胞株MV−4−11をヌードマウスの皮下に移植し、腫瘍が生着したヌードマウスの腫瘍体積が約100〜300mm程度になった時点で、各群の腫瘍体積の平均が均一になるよう無作為層別化により1群4匹を割付(0日目)、本開示の化合物を14日間、1日1回100mg/kg/日にて連日経口投与した。
【0146】
各被験化合物投与における腫瘍の経時的増殖推移を比較するため、腫瘍の増殖割合として群分け時の腫瘍体積を1とした相対腫瘍体積(Relative tumor volume;RTV)を以下の式に従って算出し、各個体のRTVの平均値の推移を図1〜4に示した。
【0147】
RTV=(腫瘍体積計測日の腫瘍体積)/(群分け時の腫瘍体積)
【0148】
最終評価日の本開示の化合物投与群の平均RTV値が、対照群の平均RTV値より小さく、かつ統計的有意差(Student−t検定)を示した場合に、本開示の化合物は有意に有効であると判定し、図に*印で示した(*:p<0.05)。
この結果、本開示の化合物は有意な抗腫瘍効果を示すことが明らかとなった。
【0149】
実験例5:結晶形態、共結晶または塩の例示的サンプルの形成
実施例1〜10から選択される化合物について、合計47種類の二次化合物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、L−アルギニン、水酸化カルシウム、水酸化コリン、ジエチルアミン、L−リジン、ジエタノールアミン、トロメタミン、エチレンジアミン、シュウ酸、ジベンゾイル−L−酒石酸、マレイン酸、グルタミン酸、マロン酸、フマル酸、L−酒石酸、4−ヒドロキシベンズアミド、ニコチンアミド、イソニコチンアミド、サッカリン、ガラクタル酸、クエン酸、D−グルクロン酸(D-Glucuronic acid)、L−リンゴ酸、エチレンジアミン、グルタル酸、コハク酸、尿素、アルギニン、安息香酸、アスコルビン酸、メチルパラベン、バニリン、グリコール酸、塩酸、馬尿酸、L−乳酸、メタンスルホン酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸一水和物、硫酸、L−アラニン、グリシン、メグルミン、L−プロリン、L−セリン、L−バリン)と共に結晶化させようと試みたが、安息香酸との組み合わせのみが、結晶形態、共結晶または塩の例示的サンプルを形成した。
【0150】
はじめに、実施例1〜10から選択された化合物93mgを、500μLの酢酸イソプロピルに溶解させ、溶液を60℃で撹拌し;233μLの安息香酸のメタノール溶液(濃度:0.8672mmol/mL)をサンプルに加えた。混合物を60℃で10分間撹拌し、予熱したシリンジフィルター(0.2μm、ナイロン)を通して濾過し、続いて、周囲温度まで冷却してから、周囲温度未満で保存し、蒸発させ、蒸発から得られたゲルを1mLヘプタン中にて周囲条件で30日間撹拌することにより、1当量の安息香酸を含有する例示的サンプルを得た。しかしながら、この製造方法では、30日間を超える製造期間がかかり、約10mgの例示的サンプルしか得られなかった。
【0151】
別の例では、ヘプタン−トルエン混合溶媒中に同じ化合物を同様の量で懸濁する方法により、3gの例示的サンプルが得られ、これを40℃以上で撹拌した。例えば、実施例1〜10から選択された3000mgの化合物に対して、1518mgの安息香酸を添加し、57mLのヘプタンおよび3mLのトルエンをそこに加えた。懸濁液を、60℃で加熱しながら約4.5時間撹拌した。懸濁液を濾過により回収し、ヘプタン:トルエンの19:1混合物を用いて洗浄し、60℃まで加熱した。固体を回収し、乾燥させて、3420.6mg(回収率91%)の生成物を98.67%の化学的純度および100%eeの光学純度で得た。H-NMR(CDCl3) δ: 8.77 (s, 1H), 8.09 (d, J=8.0Hz, 2H), 7.89 (d, J=8.0Hz, 1H), 7.60 (t, J=7.2Hz, 1H), 7.54 (d, J=2Hz, 1H), 7.40 - 7.51 (m, 3H), 6.91 (dd, J=6.0Hz, 8.4Hz, 1H), 6.87 (d, 9.6Hz, 1H), 6.67 (dd, J=8.0Hz, 8.4Hz, 1H), 6.55 (br s, 1H), 6.34 (br s, 1H), 4.88 (dd, J=9.6Hz , 10.4Hz, 1H), 3.40 - 3.55 (m, 1H), 2.15 (s, 6H), 1.42 (d, J=6.8Hz, 3H)。
【0152】
懸濁液を濾過し、ヘプタンとトルエンとの混合物を用いて固体をリンスし、60℃で加熱した。得られた結晶形態、共結晶または塩の物理化学的特性を評価した結果として、驚くべきことに、この生成物が、貯蔵安定性に優れ、さらに低い吸湿性および帯電性を有し、かつ取り扱いが容易であることが見出された。
【0153】
別の例では、実施例1〜10から選択された1000mgの化合物に対して、506mgの安息香酸を添加し、19mLのヘプタンおよび1mLのトルエンをそこに加えた。懸濁液を、60℃で加熱しながら約3.5時間撹拌した。懸濁液を濾過により回収し、ヘプタン:トルエンの19:1混合物を用いて洗浄し、60℃まで加熱した。固体を回収し、乾燥させて、947mg(回収率75.6%)の例示的サンプルを得た。
【0154】
加えて、結晶化研究のために用いた47種類の二次化合物のうちには、塩基性官能基(またはカチオン)を含有する二次化合物があったが、酸性である本開示の化合物は、これらの塩基性二次化合物とは結晶を形成しなかった。つまり、酸性化合物が、酸性化合物である安息香酸のみと、結晶形態、共結晶または塩を形成したことは、予期せぬことであった。さらに、得られる結晶形態、共結晶または塩が、どのような種類の物理化学的特性を有するかは、予測不可能である。
【0155】
実験例6:構造的特徴
単結晶分析:5mLのヘプタン、3mLの酢酸n−プロピル、および203.3mgの安息香酸を、実施例2の化合物を用いた実験例5からのサンプル(以下では、「本発明の例示的サンプル」とも称される)100mgに添加し、80℃で溶解させた。溶解生成物に対して、810mgの安息香酸を加えて溶解させた。少量の生成物を添加し、混合物を、60℃にて一晩静置させた。その後、温度を50℃まで低下させ、6日間静置させることにより、単結晶分析のための結晶を得た。
【0156】
測定は以下の測定条件下で行ない、データ処理はデータ測定・処理ソフトウェアCrysAlisPro、構造解析プログラムパッケージCrystalStructure、および一体化型粉末X線分析ソフトウェアPDXLを用いて行なった:
装置:XtaLAB PRO MM 007
X線源:Cu Kα(λ=1.54184Å)
管電圧・管電流:40kV−30mA
測定温度:−173℃(噴霧低温デバイスを用いて)
コリメータ直径:Φ0.3mm
カメラ長:39.71mm
振動角:0.25°
曝露時間:0.25sec/piece
合計測定数:14476シート
合計測定時間1時間35分。
【0157】
結果を以下および図5に示す:
結晶系:単斜晶系
空間群:P21/n(No.4)
格子定数:a=13.89023(9)Å
b=7.77623(4)Å
c=14.00408(9)Å
α=90°
β=110.5202(7)°
γ=90°
単位格子の体積:1416.653(16)Å3。
【0158】
本発明の例示的サンプルの粉末X線回折データは、以下の試験条件に従って測定した:
装置:EMPYREAN(PANalytical社製)
反射法(集約法)
ターゲット:Cu
X線管電流:40mA
X線管電圧:45kV
走査範囲:2θ=5.0〜40.0°
ステップ:2θ=0.0131°
平均時間/ステップ:8.670s
走査速度:0.0015°/s
発散スリット:1°
散乱スリット:2.0mm
受光スリット:8.0mm。
【0159】
X線回折スペクトルを図6に示す。サンプルの粉末X線回折パターンは、6.8°、7.8°、11.2°、13.4°、13.7°、16.0°、17.1°、17.8°および23.2°の回折角(2θ±0.2°)を有する。
【0160】
実験例7:示差走査熱量測定(DSC測定)
本発明の例示的サンプルのDSC測定は、以下の試験条件に従って行なった:
装置:DSC 1 STAR System(METTLER TOLEDO社製)
サンプル:約1mg
サンプル容器:アルミニウム製
昇温範囲:25〜290℃
昇温速度:10℃/min
雰囲気ガス:窒素
窒素ガス流速:50mL/min。
【0161】
データ処理を含む装置の操作は、DSC装置と共に提供されるマニュアルに従った。得られたDSC曲線を、図7に示す。DSC結果に示される通り、吸熱ピーク(ピーク頂点)は162℃において示された。
【0162】
図9は、単結晶解析の結果からXRD回折パターンをシミュレーションした結果を示し、回折角(2θ±0.2°)の特徴的ピーク(6.8°、7.8°、11.2°、13.4°、13.7°、16.0°、17.1°、17.8°および23.2°)は、上記の例と合致する。
【0163】
実験例8:吸湿性
吸放湿試験は、以下の条件に従って行なった。
約10〜15mgのサンプルを専用の石英ホルダーに満たし、各湿度での各サンプルの重量を継続的に測定し、以下の条件下で記録した。データ処理を含む装置の操作は、各装置により指示される方法および手順に従った:
装置:VTI SA+(TA Instruments社製)
乾燥温度:60℃
加熱速度1℃/min
乾燥平衡:300分間を超過しない範囲では、5分間に0.01wt%の低下がないことを確認
測定温度:25℃
加湿平衡:120分間を超過しない範囲では、5分間に0.01wt%の増加がないことを確認
相対湿度プログラム:5〜95%RHまで5%RHずつ増加、および95%RH〜5%RHまで5%RHずつ低下。
【0164】
遊離形態の化合物が、最初に非晶質物質として得られた場合には、遊離形態は吸湿性を有し(図8)、かつ高い帯電特性も有した。ここで、「遊離形態」とは、薬物物質単独による非晶質物質を意味する。しかしながら、上記の通り、実施例2の化合物の遊離形態の結晶形態、共結晶または塩が得られ、このサンプルは、吸湿性を有さず(図8)、かつ帯電特性が弱かった。
【0165】
図8に示される通り、得られた生成物(粉砕生成物)の吸湿性は、吸放湿試験において95%の相対湿度下で約0.1%の質量変化であり、つまり、該生成物は、ほとんど吸湿性を示さなかった。これらの物理化学的特性は、同化合物の遊離形態の吸湿性および帯電性に対して優れている。
【0166】
得られた実施例2の固体生成物は低い帯電性を有し、スパチュラまたはガラス瓶への少量の付着が観察された。
【0167】
比較例として、残留溶媒を除去するために、上記の化合物の噴霧乾燥を行なった。2gの化合物を18gのエタノールに溶解させ、以下の条件下で噴霧乾燥を行なった:
熱入力後加温:progression
排熱温度:78℃
フィード流速:5mL/min
噴霧窒素流速:350L/hour。
【0168】
得られた噴霧乾燥生成物を、大気中で90℃において1時間、減圧下で乾燥させ、遊離形態の化合物を取得し、これは非晶質であり、高い帯電性を有し、かつ移動時にスパチュラまたはガラス瓶によるはるかに多くの付着を示した。さらに、図8に示される通り、吸放湿試験において95%の相対湿度下で約3.8%の質量増加が観察された。この比較例もまた、以下の安定性試験のために用いた。
【0169】
実験例9:安定性試験
最初に、以下の方法により、化学的純度を測定した。
サンプル溶液中の類似物質の量を、HPLC分析により測定した。データ処理を含む装置の操作は、装置(すなわち、Prominence−i)と共に提供されるマニュアルに従った。約2mgの本発明の例示的サンプルを4mLの移動相A/移動相B混合物(17:3)に溶解させ、得られた混合物をサンプル溶液として用いた。
【0170】
カラム:CAPCELL PAK ADME(Shiseido製)(4.6×150mm、3μm)
UV検出:220nm
カラム温度:40℃
カラム流速:1.0mL/min
移動相:A:5mMリン酸緩衝液、pH6.2/アセトニトリル(4:1)
B:アセトニトリル
注入量:5μL
サンプル冷却器温度:5℃
収集時間:40分間。
【0171】
【表15】
【0172】
上記で得られた本発明の例示的サンプルおよび遊離形態の固体安定性を、サンプルを40℃/75%RH(閉鎖および開放条件)において2週間または4週間保存した後に試験した。開放条件とは、ガラス瓶の蓋を除去してキムワイプを用いて覆ったことを意味する:
測定時点:2週間および4週間
保存量:約50〜60mg
保存容器:褐色ガラス瓶。
【0173】
【表16】
【0174】
保存後、サンプルは少量の類似物質しか生じず、このことは、遊離形態を有する比較例と比べて優れた安定性を示した。したがって、本開示のサンプルは、優れた安定性を示すことが確認された。
【0175】
以下のHPLC条件により、光学純度も測定した:
検出器:UV(240nm)
カラム:CHIRALPAK IE(4.6×250mm、5μm)/Daicel社
カラム温度:40℃
移動相:n−ヘキサン/エタノール/エタノールアミン/酢酸(65:35:0.5:0.2)
流速:1.0mL/min
注入:5μL
サンプル温度:5℃
測定時間:40分間
定量限界(LOQ):
化合物−RR,RS,SS:0.05%。
【0176】
光学純度は、0.2%光学異性体も添加して測定した。
【0177】
上記で得られた本発明の例示的サンプルおよび遊離形態の固体安定性を、サンプルを40℃/75%RH(閉鎖および開放条件)において24時間保存する前後に試験した。24時間後では、光学純度の著しい変化は観察されなかった。
【0178】
光学純度測定研究の結果を、図10〜12に示す。
【0179】
実験例10:溶解度試験
約15mgの本発明の例示的サンプルを1mLの各溶媒に添加し、遮光条件下で37℃において2時間膨潤させた。遠心分離後、各上清を濾過し、0.1mLの濾液に対して0.7mLの水:アセトニトリル混合物(1:1)を添加した。溶解度試験は、以下の条件に従って、5μLの溶媒を用いて行なった:
検出器:紫外分光光度計(波長:230nm)
カラム:CAPCELPAK ADME(4.6×150mm、3mm)
カラム温度:約40℃の一定温度
移動相A: A:5mMリン酸緩衝液(pH6.52)とアセトニトリルとの混合物(4:1)
B:アセトニトリル
移動相の追従:以下の表に指示される通りに、移動相AおよびBを混合することにより、勾配を制御
流速:1.0mL/分
測定時間:注入後12分間。
【0180】
【表17】
【0181】
溶解度試験の結果を、以下の表18に示す。
【0182】
【表18】
【0183】
2時間の溶解度試験後には、XRDパターンの著しい変化は観察されず、かつ遊離酸形態と本発明の例示的サンプルとの間に有意差は観察されなかった。
【0184】
実験例11:固体安定性試験
上記で得られた本発明の例示的サンプルおよび遊離形態の固体安定性を、サンプルを40℃/75%RH(開放条件)、70℃(閉鎖条件)および80℃(閉鎖条件)において2週間または4週間保存した後に試験した。開放条件とは、ガラス瓶の蓋を除去してキムワイプを用いて覆ったことを意味し、70℃および80℃は閉鎖条件とした:
測定時点:2週間および4週間
保存量:約30mg
保存容器:褐色ガラス瓶。
【0185】
サンプル溶液中の類似物質の量を、HPLC分析により測定した。データ処理を含む装置の操作は、装置(すなわち、Prominence−i)と共に提供されるマニュアルに従った。約2mgの本発明の例示的サンプルを4mLの移動相A/移動相B混合物(17:3)に溶解させ、得られた混合物をサンプル溶液として用いた。
【0186】
カラム:CAPCELL PAK ADME(Shiseido製)(4.6×150mm、3μm)
UV検出:220nm
カラム温度:40℃
カラム流速:1.0mL/min
移動相:A:5mMリン酸緩衝液、pH6.5/アセトニトリル(4:1)
B:アセトニトリル
注入量:5μL
サンプル冷却器温度:5℃
収集時間:40分間。
【0187】
【表19】
【0188】
【表20】
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