特許第6846581号(P6846581)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6846581セメント組成物用粘性調整剤及びセメント組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6846581
(24)【登録日】2021年3月4日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】セメント組成物用粘性調整剤及びセメント組成物
(51)【国際特許分類】
   C04B 24/08 20060101AFI20210315BHJP
   C04B 14/04 20060101ALI20210315BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   C04B24/08
   C04B14/04 C
   C04B28/02
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-40265(P2017-40265)
(22)【出願日】2017年3月3日
(65)【公開番号】特開2018-145043(P2018-145043A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2017年12月27日
【審判番号】不服2019-12128(P2019-12128/J1)
【審判請求日】2019年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106438
【氏名又は名称】サンノプコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112438
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 健一
(72)【発明者】
【氏名】北村 匠
(72)【発明者】
【氏名】安藤 毅
【合議体】
【審判長】 日比野 隆治
【審判官】 馳平 憲一
【審判官】 金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−193416(JP,A)
【文献】 特開2006−151760(JP,A)
【文献】 特開昭50−22021(JP,A)
【文献】 特開昭53−138430(JP,A)
【文献】 特開2011−195430(JP,A)
【文献】 特開2009−209020(JP,A)
【文献】 特開昭54−154425(JP,A)
【文献】 特開昭54−153829(JP,A)
【文献】 特開2004−196568(JP,A)
【文献】 特開昭58−17830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00-32/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価アルコール脂肪酸フルエステル(A)を含んでなることを特徴とするセメント組成物用粘性調整剤(アルコールを含むもの、ナフタレンスルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物ナトリウム塩、水及び硫酸アルミニウムカリウムを含むもの、並びにCaO/Alのモル比が1.5以上、かつブレーン比表面積が4000cm/g以上のカルシウムアルミネートを含むものを除く。)。
【請求項2】
さらに多孔質粉体(B)を含んでなり、多孔質粉体(B)の含有量が多価アルコール脂肪酸フルエステル(A)100重量部に対して40〜9900重量部である請求項1に記載のセメント組成物用粘性調整剤。
【請求項3】
多価アルコール脂肪酸フルエステル(A)が、グリセリン脂肪酸フルエステル、ポリグリセリン脂肪酸フルエステル、ソルビタン脂肪酸フルエステル、トリメチロールプロパン脂肪酸フルエステル及びショ糖脂肪酸フルエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載のセメント組成物用粘性調整剤。
【請求項4】
多孔質粉体(B)が10〜500ml/100gのDBP吸油量をもつ粉体である請求項2〜3のいずれかに記載のセメント組成物用粘性調整剤。
【請求項5】
セメント、水及び請求項1〜4のいずれかに記載のセメント組成物用粘性調整剤を含んでなることを特徴とするセメント組成物(アルコールを含むもの、ナフタレンスルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物ナトリウム塩、水及び硫酸アルミニウムカリウムを含むもの、並びにCaO/Alのモル比が1.5以上、かつブレーン比表面積が4000cm/g以上のカルシウムアルミネートを含むものを除く。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセメント組成物粘性調整剤及びこれを含んでなるセメント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
保水性、鏝すべり性、鏝切れ性及び再接着性防止に優れる水硬性材料用混和剤として、「水溶性セルロースエーテル(A)及び水不溶性樹脂粒子(B)を必須とする水硬性材料用混和剤であって、
前記樹脂粒子(B)の平均粒子径が1〜50μmであり、
前記樹脂粒子(B)の比重が0.5〜1.5であり、
前記セルロースエーテル(A)100重量部に対する、前記樹脂粒子(B)の重量割合が5〜200重量部である、水硬性材料用混和剤」が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−117176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の水硬性材料用混和剤を用いると、セメント組成物の鏝捌き性(鏝切れ性、鏝伸び性等)が不十分であるという問題に加え、セメント組成物硬化体の耐水性が不十分であるという問題がある。
本発明の目的は、セメント組成物の鏝捌き性(鏝切れ性、鏝伸び性等)に優れ、セメント組成物硬化体の耐水性に優れたセメント組成物粘性調整剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のセメント組成物用粘性調整剤は、多価アルコール脂肪酸フルエステル(A)を含んでなる点(アルコールを含むものナフタレンスルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物ナトリウム塩、水及び硫酸アルミニウムカリウムを含むもの、並びにCaO/Alのモル比が1.5以上、かつブレーン比表面積が4000cm/g以上のカルシウムアルミネートを含むものを除く。)を要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のセメント組成物用粘性調整剤は、セメント組成物に優れた鏝捌き性(鏝切れ性、鏝伸び性等)を付与でき、セメント組成物硬化体に優れた耐水性を付与できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
多価アルコール脂肪酸フルエステル(A)は、多価アルコールと脂肪酸とのフルエステルであれば制限なく使用でき、1種類の多価アルコールと複数種類の脂肪酸とのフルエステルであってもよく、1種類の多価アルコールと1種類の脂肪酸とのフルエステルであってもよく、これらのいずれかの混合物又はこれらの混合物であってもよい。
【0008】
多価アルコールとしては、ジオール、トリオール及び4〜14価のポリオールが含まれる。
ジオールとしては、炭素数2〜6のジオールが含まれ、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、イソブチレングリコール及びシクロヘキサンジオール等が挙げられる。
【0009】
トリオールとしては、炭素数3〜6のトリオールが含まれ、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール及びシクロヘキサントリオール等が挙げられる。
【0010】
4〜14価のポリオールとしては、ポリグリセリン{ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリン、オクタグリセリン、ノナグリセリン、デカグリセリン、ウンデカグリセリン、ドデカグリセリン等}及び糖類{ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビタン、ソルビトール、マンノース、グルコース、ガラクトース、スクロース、ラクトース、ラフィノース、メレジトース、アカルボース、スタキオース等}等が挙げられる。
【0011】
これらのうち、トリオール及び4〜8価のポリオールが好ましく、さらに好ましくはトリオール、特に好ましくはトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン及びグリセリン、最も好ましくはグリセリンである。
【0012】
脂肪酸としては、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸が含まれる。
飽和脂肪酸としては、炭素数2〜30の飽和脂肪酸が含まれ、直鎖飽和脂肪酸及び分岐飽和脂肪酸が使用できる。
【0013】
直鎖飽和脂肪酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、セロチン酸及びメリシン酸等が挙げられる。
【0014】
分岐飽和脂肪酸としては、イソ酪酸、イソ吉草酸、ピバル酸及びイソステアリン酸等が挙げられる。
【0015】
不飽和脂肪酸としては、炭素数3〜30の直鎖不飽和脂肪酸が含まれ、直鎖不飽和脂肪酸及び分岐不飽和脂肪酸が使用できる。
【0016】
直鎖不飽和脂肪酸としては、アクリル酸、クロトン酸、ヘプテン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸及びトリアコンテン酸等が挙げられる。
【0017】
分岐不飽和脂肪酸としては、メタクリル酸、イソミリストレイン酸及びイソオレイン酸等が挙げられる。
【0018】
これらのうち、鏝捌き性及び耐水性の観点から、直鎖飽和脂肪酸及び直鎖不飽和脂肪酸が好ましく、さらに好ましくはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、クロトン酸、ヘプテン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸及びオレイン酸、特に好ましくはミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸及びオレイン酸、最も好ましくはパルミチン酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸及びオレイン酸である。
【0019】
多価アルコール脂肪酸フルエステル(A)は、多価アルコールと脂肪酸とから公知の方法(エステル化反応)で製造してもよいし、動植物に由来するものを使用してもよく、市場からも容易に入手できるものも少なくない。
【0020】
1種類の多価アルコールと複数種類の脂肪酸とのフルエステルとして、市場から入手できる商品としては、大豆油、ヤシ油、パーム油、アマニ油、綿実油及びナタネ油{日清オイリオ株式会社}等が挙げられる。
【0021】
1種類の多価アルコールと1種類の脂肪酸とのフルエステルとして、市場から入手できる商品としては、トリミリスチン(グリセリンのミリスチン酸トリエステル)、トリステアリン(グリセリンのステアリン酸トリエステル)、トリオレイン(グリセリンのオレイン酸トリエステル)、トリパルミチン(グリセリンのパルミチン酸トリエステル)及びトリベヘニン(グリセリンのベヘニン酸トリエステル){東京化成工業株式会社}等が挙げられる。
【0022】
多価アルコール脂肪酸フルエステル(A)の純度(重量%)は、多価アルコール脂肪酸フルエステルを主成分として含まれていれば制限はないが、80以上が好ましく、さらに好ましくは90以上、特に好ましくは95以上である。この範囲であると、鏝捌き性がさらに良好となる。
【0023】
純度は、多価アルコール脂肪酸フルエステルの状態等によって定量方法が決定され、公知の定量方法(液体クロマトグラフィー法、ガスクロマトグラフィー法等)によって定量される。
【0024】
1種類の多価アルコールと複数種類の脂肪酸とのフルエステルの酸価(mgKOH/g)は、15以下が好ましく、さらに好ましくは10以下、特に好ましくは5以下、最も好ましくは2以下である。この範囲であると、鏝捌き性がさらに良好となる。
【0025】
酸価は、JIS K0070−1992の「3.1中和滴定」に準拠して測定される。
【0026】
1種類の多価アルコールと1種類の脂肪酸とのフルエステルの水酸基価(mgKOH/g)は、150以下が好ましく、さらに好ましくは100以下、特に好ましくは50以下、つぎに好ましくは30以下、さらに好ましくは15以下、最も好ましくは10以下である。この範囲であると、鏝捌き性がさらに良好となる。
【0027】
水酸基価は、JIS K0070−1992の「7.1中和滴定法」に準拠して測定される。
【0028】
本発明のセメント組成物用粘性調整剤には、さらに多孔質粉体(B)を含むことが好ましく、多孔質粉体(B)の含有量(重量部)は、多価アルコール脂肪酸フルエステル(A)100重量部に対して、40〜9900が好ましく、さらに好ましくは50〜1900、特に好ましくは60〜900である。多孔質粉体(B)を含むと、セメント組成物用粘性調整剤がスラリー状乃至粉体状になるためセメント等とさらに均一混合しやすくなる。
【0029】
多孔質粉体(B)としては、多孔質粉体であれば制限がないが無機多孔質粉体が好ましく、さらに好ましくは酸化ケイ素、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の多孔質粉体、特に好ましくは酸化ケイ素及び炭酸カルシウム、最も好ましくは酸化ケイ素である。
【0030】
多孔質粉体(B)のフタル酸ジ−n−ブチル(DBP)吸油量(ml/100g)は、10〜500が好ましく、さらに好ましくは50〜400、特に好ましくは100〜300である。この範囲であると、セメント等とさらに均一混合しやすくなる。
【0031】
DBP吸油量は、JIS K5101−1991に準拠して、25℃で測定される値である(多孔性粉体(B)にジブチルフタレート(DBP)を滴下しつつ練り合わせ、全体がかたい1つの塊となる点を終点とする。)。
【0032】
多孔質粉体(B)を含む場合、多価アルコール脂肪酸フルエステル(A)及び多孔質粉体(B)を均一混合できれば、本発明のセメント組成物用粘性調整剤の製造方法に制限はなく、多価アルコール脂肪酸フルエステル(A)及び多孔質粉体(B)を一括して混合する方法(1)、多価アルコール脂肪酸フルエステル(A)に多孔質粉体(B)を少量ずつ連続又は分割して加えながら混合する方法(2)、多孔質粉体(B)に多価アルコール脂肪酸フルエステル(A)を少量ずつ連続又は分割して加えながら混合する方法(3)、多価アルコール脂肪酸フルエステル(A)と多孔質粉体(B)を少量ずつ連続又は分割して混合する方法(4)等が適用できる。これらのうち、製造効率の観点等から、方法(3)が好ましい。
【0033】
多孔質粉体(B)を含む場合、多価アルコール脂肪酸フルエステル(A)及び多孔質粉体(B)を混合する攪拌混合装置としては、公知の攪拌混合装置が使用でき、プロペラ型攪拌機、ディゾルバー、ホモミキサー、ボールミル、サンドミル、ニーダー、ラインミキサー、リボンミキサー、傾胴ミキサー、オムニミキサー及びヘンシェルミキサー等が挙げられる。
【0034】
本発明のセメント組成物用粘性調整剤は、セメント組成物(セメントペースト、モルタル、コンクリート、セメントプラスター、ポリマーセメント、ポリマーモルタル、ポリマーコンクリート等)用粘性調整剤として好適である。また、本発明のセメント組成物用粘性調整剤は、石膏、漆喰、ドロマイトプラスター、ぱて、(粘土、珪藻土、ラッカーパテ、エポキシパテ、ポリエステルパテ、ラッカーパテ、炭酸カルシウムパテ等)等のコテ塗りにより塗装する際にも使用できる。
【0035】
本発明のセメント組成物用粘性調整剤の使用量(重量%)は、多価アルコール脂肪酸フルエステル(A)の重量がセメントの重量に基づいて、0.01〜10となる量が好ましく、さらに好ましくは0.03〜5となる量、特に好ましくは0.05〜3となる量である。この範囲であると、鏝捌き性がさらに良好となる。
【0036】
本発明のセメント組成物は、セメント、水及び上記のセメント組成物用粘性調整剤を含んでいれば、調製方法やその他の添加剤の有無、各含有量等は通常のセメント組成物と変わらない。
【0037】
セメントとしては、特に限定はなく、石膏及び/又はクリンカーを含んでいればよく、混合材料等を含んでいてもよい。
【0038】
セメント組成物には、骨材(砂、砂利等)や添加剤(AE剤、減水剤、AE減水剤、湿潤剤、膨張剤、防水剤、遅延剤、増粘剤、凝集剤、収縮低減剤、強度向上剤、硬化促進剤、消泡剤等)を含んでもよい。
【実施例】
【0039】
以下、特記しない限り、部は重量部を意味する。
<実施例1>
多価アルコール脂肪酸フルエステル(A1;トリオレイン、東京化成工業株式会社、グリセリンのオレイン酸トリエステル、ガスクロマトグラフィーによる純度80重量%)をそのまま、本発明のセメント組成物用粘性調整剤(1)とした。
【0040】
<実施例2>
リボンミキサー(アルファー株式会社)を用いて、多孔質粉体(B1;Nipsil NA、東ソー・シリカ株式会社、酸化ケイ素、DBP吸油量250ml/100g、「Nipsil」は同社の登録商標である。)60部に、多価アルコール脂肪酸フルエステル(A2;ナタネ油、酸価0.1mgKOH/g、日清オイリオ株式会社)100部を少量ずつ滴下して、均一混合することにより、本発明のセメント組成物用粘性調整剤(2)を得た。
【0041】
<実施例3>
多孔質粉体(B1)60部を、多孔質粉体(B2;Nipsil ER、東ソー・シリカ株式会社、酸化ケイ素、DBP吸油量180ml/100g)900部に変更したこと以外、実施例2と同様にして、本発明のセメント組成物用粘性調整剤(3)を得た。
【0042】
<実施例4>
多価アルコール脂肪酸フルエステル(A2)を多価アルコール脂肪酸フルエステル(A3;大豆油、酸価0.1mgKOH/g、日清オイリオ株式会社)に変更したこと以外、実施例2と同様にして、本発明のセメント組成物用粘性調整剤(4)を得た。
【0043】
<実施例5>
多価アルコール脂肪酸フルエステル(A2)を多価アルコール脂肪酸フルエステル(A4;綿実油、酸価2mgKOH/g、日清オイリオ株式会社)に変更したこと以外、実施例2と同様にして、本発明のセメント組成物用粘性調整剤(5)を得た。
【0044】
<実施例6>
多孔質粉体(B1)を、多孔質粉体(B3;SILYSIA 370、富士シリシア化学株式会社、酸化ケイ素、DBP吸油量300ml/100g、「SILYSIA」は有限会社ワイ・ケイ・エフの登録商標である。)に変更したこと以外、実施例2と同様にして、本発明のセメント組成物用粘性調整剤(6)を得た。
【0045】
<実施例7>
多孔質粉体(B1)を、多孔質粉体(B4;SILYSIA 710、富士シリシア化学株式会社、酸化ケイ素、DBP吸油量100ml/100g)に変更したこと以外、実施例2と同様にして、本発明のセメント組成物用粘性調整剤(7)を得た。
【0046】
<比較例1>
特許文献1の実施例4の記載に準拠して、リボンミキサー(アルファ株式会社)を用いて、水溶性セルロースエーテル(マーポローズ 90MP−4000、松本油脂製薬株式会社、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)100部及び水不溶性樹脂粒子{マツモトマイクロスフェアーM−100、松本油脂製薬株式会社、PMMA樹脂、平均粒子径8μm、比重1.20)50部を均一混合して、比較用のセメント組成物用粘性調整剤(D1)を得た。
【0047】
(鏝捌き性評価方法)
実施例で得たセメント組成物用粘性調整剤(1〜7)及び比較例で得たセメント組成物用粘性調整剤(D1)と下表の配合成分の配合量とを用いて、モルタルミキサーにて均一混合してセメント組成物(1〜7、D1)を調製した。
また、セメント組成物用粘性調整剤を水に変更したこと以外、同様にして、セメント組成物(ブランク)を調製した。
【0048】
【表1】
【0049】
使用する材料及び道具を20℃に温度調整しこの温度で、30×60cmのスレート板に厚さ1cmになるように金鏝で調製した各セメント組成物を塗りつけて、次の基準で鏝捌き性を評価した。この結果を下表に示す。
【0050】
(鏝切れ)
○金鏝に試料が付着せず、平滑に塗りつけられた
△金鏝に試料が付着しないが、平滑に塗りつけられない
×金鏝に試料が付着する
【0051】
(鏝伸び)
○試料を容易に金鏝で押し広げることができ、平滑にできる
△試料を容易に鏝で押し広げることができるが、平滑にできない
×試料を容易に押し広げることができない
【0052】
【表2】
【0053】
(耐水性評価)
調製した各セメント組成物(1〜7、D1、ブランク)をモールド(内寸10×10×1cm)に流し込み、振動を与え表面を水平にし、20℃で1週間静置後、モールドを外して、10×10×1cmの評価用硬化体を作製した。
評価用硬化体の表面に0.02±0.005mLの脱イオン水を滴下し、10秒後に水滴の接触角(度)を測定し、測定結果を下表に示す。接触角が大きいほど、水が表面に濡れにくいことを意味し、耐水性に優れている。なお、接触角の測定は協和化学株式会社製コンタクトアングルメーターCAAを用いて20℃温調室にて実施した。
【0054】
【表3】
【0055】
以上の通り、本発明のセメント組成物用粘性調整剤(1〜7)は、比較用のセメント組成物用粘性調整剤(D1)やブランクに比べて、鏝捌き性(鏝切れ性、鏝伸び性等)及び耐水性に優れていた。