特許第6846585号(P6846585)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6846585補強土壁式構造物の補強敷設部材連結構造及び補強敷設部材敷設方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6846585
(24)【登録日】2021年3月4日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】補強土壁式構造物の補強敷設部材連結構造及び補強敷設部材敷設方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/06 20060101AFI20210315BHJP
   E02D 17/18 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   E02B3/06
   E02D17/18 A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-1835(P2017-1835)
(22)【出願日】2017年1月10日
(65)【公開番号】特開2018-111956(P2018-111956A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2019年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501204525
【氏名又は名称】国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(74)【代理人】
【識別番号】100089886
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 雅雄
(72)【発明者】
【氏名】池野 勝哉
(72)【発明者】
【氏名】山下 徹
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】三好 俊康
(72)【発明者】
【氏名】森川 嘉之
(72)【発明者】
【氏名】水谷 崇亮
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英紀
【審査官】 東 芳隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−180041(JP,A)
【文献】 特開平11−229341(JP,A)
【文献】 特開昭51−052604(JP,A)
【文献】 特公昭44−012296(JP,B1)
【文献】 特開2005−133344(JP,A)
【文献】 特開2001−254364(JP,A)
【文献】 特開昭58−062220(JP,A)
【文献】 特開2007−056663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/06
E02D 17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に設置された壁体と、該壁体の背面側に裏込石を積み上げた裏込部と、一端が前記壁体に連結された状態で前記裏込部の所望の高さ毎に敷設された複数の面状、網状又格子状の補強敷設部材とを備えている補強土壁式構造物にあって、前記補強敷設部材を前記壁体に連結させる補強土壁式構造物の補強敷設部材連結構造において、
前記壁体の背面に上下に間隔をおいて固定された複数の連結ガイド部材と、前記補強敷設部材の一端が固定される取付用フレームに突設された連結用凸体とを備え、
前記連結用凸体は、前記取付用フレームに突設された支持基部と、該支持基部の側面より突出した係合張出片とを備え、
前記連結ガイド部材は、前記係合張出片が上面開口より挿入される係合穴部と、該係合穴部の背面側に配置された係止片部と、該係止片部と隣接した配置に形成された縦向きスリット状の支持基部挿通溝とを備え、
前記係合張出片が前記係止片部に係合されるようにしたことを特徴とする補強土壁式構造物の補強敷設部材連結構造。
【請求項2】
前記係合穴部は、壁体法線方向で対向する内側面が互いに平行配置に形成されている請求項1に記載の補強土壁式構造物の補強敷設部材連結構造。
【請求項3】
前記係合穴部は、壁体法線方向で対向する内側面が下方に向けて互いに近接するテーパ状に形成され、前記係合張出片が楔状に嵌合される請求項1に記載の補強土壁式構造物の補強敷設部材連結構造。
【請求項4】
前記壁体は、鋼製の壁用部材によって構成され、前記連結ガイド部材は、前記壁用部材の背面に突出して溶接されている請求項1〜3のいずれか1に記載の補強土壁式構造物の補強敷設部材連結構造。
【請求項5】
壁用部材を設置して壁体を構築した後、該壁体の背面側に所定の高さまで裏込材を投入する裏込材投入工程と、投入された裏込材の上面に面状、網状又格子状の補強敷設部材を敷設する部材敷設工程とを下側から順次繰り返す補強土壁式構造物の補強敷設部材敷設方法において、
前記補強敷設部材の一端に固定された取付用フレームに突設された支持基部と、該支持基部の側面より突出した係合張出片とを有してなる連結用凸体と、
前記係合張出片が上面開口より挿入される係合穴部と、該係合穴部の背面側に配置された係止片部と、該係止片部と隣接した配置に形成された縦向きスリット状の支持基部挿通溝とを有してなる連結ガイド部材とを使用し、
前記壁用部材の背面に上下に間隔をおいて複数の前記連結ガイド部材を固定しておき、
前記壁体を構築した後、前記各連結ガイド部材の高さまで前記壁体の背面側に裏込材を投入する毎に、前記連結用凸体を前記連結ガイド部材に係合させて前記補強敷設部材を前記壁体に連結するとともに、投入された裏込材上に前記補強敷設部材を敷設することを特徴とする補強土壁式構造物の補強敷設部材敷設方法。
【請求項6】
前記裏込材投入工程において、投入された裏込材の上面に展伸用凹部を形成し、前記補強敷設部材を前記展伸用凹部上に敷設した後、次の裏込材投入工程において前記展伸用凹部の中央部から裏込材の投入を開始する請求項5に記載の補強土壁式構造物の補強敷設部材敷設方法。
【請求項7】
前記補強敷設部材の他端側にアンカーフレームを固定しておき、該アンカーフレームを前記展伸用凹部の後方側縁部に設置する請求項6に記載の補強土壁式構造物の補強敷設部材敷設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に岸壁や護岸等の港湾構造物であって、水中に設置された矢板壁等の壁体とその背面側の裏込部と、裏込部に敷設された補強敷設部材とからなる補強土壁式構造物の補強敷設部材連結構造及び補強敷設部材敷設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
岸壁や護岸等の構造物には、前面部に鋼矢板等からなる壁体を備え、壁体の曲げ剛性とその根入れ部又は底面での受働抵抗によって土留めし、背面土圧や地震時に生ずる動水圧等の外力に対抗する構造のものが知られている。
【0003】
従来、この種の構造物では、例えば、水深5m以上の場合、壁体背面側の地盤に設置された控え工にタイロッドやタイワイヤ等のタイ材を介して矢板壁等の壁体を支持させる控え式矢板が広く使用されている。
【0004】
しかしながら、このような控え式矢板では、控え工を設置した後に矢板本体の背面に裏込めする必要があること、設置水深が深くなると矢板壁に求められる剛性が大きくなり工費が嵩むこと、控え工設置の用地幅確保が困難であること等から設置作業が煩雑で工期が長期化するという問題があった。
【0005】
そこで、近年では、陸上構造物の耐震工法として実績のある補強土工法を岸壁や護岸等の構造物へ適用することで、控え工及びタイロッド等のタイ材を省略し、矢板壁等の壁体と裏込部とが一体的な抗土圧構造を形成する技術の開発も模索されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0006】
この補強土工法を利用した補強土壁式構造物は、矢板壁等の壁体の背面側に固化処理土からなる裏込部を備え、この裏込部の所望高さ毎に一端が壁体に連結された状態でジオグリッド等の補強敷設部材が敷設され、裏込部におけるせん断強度を高めて壁体に作用する土圧の軽減を図るとともに、補強敷設部材を介して壁体を裏込部に支持させることによって、壁体と裏込部とが一体的な抗土圧構造を形成するようになっている。
【0007】
このような補強土壁式構造物の構築において、各補強敷設部材の設置は、所望高さまで固化処理土を堆積させ、その上面を均した後、ロール状に巻き取った状態でジオグリッド等の補強敷設部材を水中の設置箇所まで沈下させ、潜水士によって補強敷設部材の一端を壁体に連結させるとともに、壁体の水平方向後方に向けて展開させていた。
【0008】
また、効率良くジオグリッド等の補強敷設部材を沈下及び壁体への連結を行う方法として、壁体を構成する鋼管矢板等の壁体構成部材に予め溝型鋼等からなるガイド部材を備えておき、一端を棒状の連結部材に取り付け、且つ、ロール状に巻き取った状態のジオグリッド等の補強敷設部材を連結部材の両端をガイド部材に支持させた状態でスライドさせつつ沈下させる工法も開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−056663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述の如き従来の技術では、鋼矢板等の壁体構成部材の打設精度が大きく影響し、地盤条件等に起因して矢板の実際の打設位置と計画位置とにずれが生じた場合、ガイド部材間の距離が一定にならず、補強敷設部材の一端を巻き付けた連結部材がガイド材間から外れ、スライド不可能になるおそれがあった。
【0011】
また、上述の実施例では、ガイド材を壁体の上下全体に亘って設ける必要があるため、その分、材料費が嵩むという問題があった。
【0012】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、壁体の背面に補強敷設部材を容易に連結できる補強土壁式構造物の補強敷設部材連結構造及び補強敷設部材敷設方法の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、水中に設置された壁体と、該壁体の背面側に裏込石を積み上げた裏込部と、一端が前記壁体に連結された状態で前記裏込部の所望の高さ毎に敷設された複数の面状、網状又格子状の補強敷設部材とを備えている補強土壁式構造物にあって、前記補強敷設部材を前記壁体に連結させる補強土壁式構造物の補強敷設部材連結構造において、前記壁体の背面に上下に間隔をおいて固定された複数の連結ガイド部材と、前記補強敷設部材の一端が固定される取付用フレームに突設された連結用凸体とを備え、前記連結用凸体は、前記取付用フレームに突設された支持基部と、該支持基部の側面より突出した係合張出片とを備え、前記連結ガイド部材は、前記係合張出片が上面開口より挿入される係合穴部と、該係合穴部の背面側に配置された係止片部と、該係止片部と隣接した配置に形成された縦向きスリット状の支持基部挿通溝とを備え、前記係合張出片が前記係止片部に係合されるようにした補強土壁式構造物の補強敷設部材連結構造にある。
【0014】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記係合穴部は、壁体法線方向で対向する内側面が互いに平行配置に形成されていることにある。
【0015】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記係合穴部は、壁体法線方向で対向する内側面が下方に向けて互いに近接するテーパ状に形成され、前記係合張出片が楔状に嵌合されるようにしたことにある。
【0016】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項1〜3のいずれか1の構成に加え、前記壁体は、鋼製の壁用部材によって構成され、前記連結ガイド部材は、前記壁用部材の背面に突出して溶接されていることにある。
【0017】
請求項5に記載の発明の特徴は、壁用部材を設置して壁体を構築した後、該壁体の背面側に所定の高さまで裏込材を投入する裏込材投入工程と、投入された裏込材の上面に面状、網状又格子状の補強敷設部材を敷設する部材敷設工程とを下側から順次繰り返す補強土壁式構造物の補強敷設部材敷設方法において、前記補強敷設部材の一端に固定された取付用フレームに突設された支持基部と、該支持基部の側面より突出した係合張出片とを有してなる連結用凸体と、前記係合張出片が上面開口より挿入される係合穴部と、該係合穴部の背面側に配置された係止片部と、該係止片部と隣接した配置に形成された縦向きスリット状の支持基部挿通溝とを有してなる連結ガイド部材とを使用し、前記壁用部材の背面に上下に間隔をおいて複数の前記連結ガイド部材を固定しておき、前記壁体を構築した後、前記各連結ガイド部材の高さまで前記壁体の背面側に裏込材を投入する毎に、前記連結用凸体を前記連結ガイド部材に係合させて前記補強敷設部材を前記壁体に連結するとともに、投入された裏込材上に前記補強敷設部材を敷設する補強土壁式構造物の補強敷設部材敷設方法にある。
【0018】
請求項6に記載の発明の特徴は、請求項5の構成に加え、前記裏込材投入工程において、投入された裏込材の上面に展伸用凹部を形成し、前記補強敷設部材を前記展伸用凹部上に敷設した後、次の裏込材投入工程において前記展伸用凹部の中央部から裏込材の投入を開始することにある。
【0019】
請求項7に記載の発明の特徴は、請求項6の構成に加え、前記補強敷設部材の他端側にアンカーフレームを固定しておき、該アンカーフレームを前記展伸用凹部の後方側縁部に設置することにある。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る補強土壁式構造物の補強敷設部材連結構造は、上述したように、水中に設置された壁体と、該壁体の背面側に裏込石を積み上げた裏込部と、一端が前記壁体に連結された状態で前記裏込部の所望の高さ毎に敷設された複数の面状、網状又格子状の補強敷設部材とを備えている補強土壁式構造物にあって、前記補強敷設部材を前記壁体に連結させる補強土壁式構造物の補強敷設部材連結構造において、前記壁体の背面に上下に間隔をおいて固定された複数の連結ガイド部材と、前記補強敷設部材の一端が固定される取付用フレームに突設された連結用凸体とを備え、前記連結用凸体は、前記取付用フレームに突設された支持基部と、該支持基部の側面より突出した係合張出片とを備え、前記連結ガイド部材は、前記係合張出片が上面開口より挿入される係合穴部と、該係合穴部の背面側に配置された係止片部と、該係止片部と隣接した配置に形成された縦向きスリット状の支持基部挿通溝とを備え、前記係合張出片が前記係止片部に係合されるようにしたことにより、取付用フレーム、連結用凸体及び連結ガイド部材を介して各補強敷設部材の中央部がそれぞれ一点(1箇所)で壁体背面に連結されるので、各壁用部材の打設状況等に影響されずに確実に連結することができる。
【0021】
また、本発明において、前記係合穴部は、壁体法線方向で対向する内側面が互いに平行配置に形成されていることにより、裏込部下が軟弱地盤等で裏込部が沈下するような場合であっても、連結ガイド部材に連結用凸体に沿ってスライドできるので、連結部に作用する局所的な応力の発生を防止することができる。
【0022】
一方、本発明において、前記係合穴部は、壁体法線方向で対向する内側面が下方に向けて互いに近接するテーパ状に形成され、前記係合張出片が楔状に嵌合されるようにしたことにより、例えば、裏込部下の地盤が安定し、裏込部の沈下の懸念が無い場合に、水中においてボルト等を使用せずに壁体と補強敷設部材とを高精度で連結することができる。
【0023】
更に、本発明において、前記壁体は、鋼製の壁用部材によって構成され、前記連結ガイド部材は、前記壁用部材の背面に突出して溶接されていることにより、鋼製の壁用部材に連結ガイド部材を好適に設置することができる。
【0024】
また、本発明に係る補強土壁式構造物の補強敷設部材敷設方法は、壁用部材を設置して壁体を構築した後、該壁体の背面側に所定の高さまで裏込材を投入する裏込材投入工程と、投入された裏込材の上面に面状、網状又格子状の補強敷設部材を敷設する部材敷設工程とを下側から順次繰り返す補強土壁式構造物の補強敷設部材敷設方法において、前記補強敷設部材の一端に固定された取付用フレームに突設された支持基部と、該支持基部の側面より突出した係合張出片とを有してなる連結用凸体と、前記係合張出片が上面開口より挿入される係合穴部と、該係合穴部の背面側に配置された係止片部と、該係止片部と隣接し
た配置に形成された縦向きスリット状の支持基部挿通溝とを有してなる連結ガイド部材とを使用し、前記壁用部材の背面に上下に間隔をおいて複数の前記連結ガイド部材を固定しておき、前記壁体を構築した後、前記各連結ガイド部材の高さまで前記壁体の背面側に裏込材を投入する毎に、前記連結用凸体を前記連結ガイド部材に係合させて前記補強敷設部材を前記壁体に連結するとともに、投入された裏込材上に前記補強敷設部材を敷設することにより、連結ガイド部材に案内されて所望の位置に容易に補強敷設部材を連結することができる。また、壁体に対し連結ガイド部材を部分的に設けるので部材費用の低減を図ることができる。
【0025】
また、本発明において、前記裏込材投入工程において、投入された裏込材の上面に展伸用凹部を形成し、前記補強敷設部材を前記展伸用凹部上に敷設した後、次の裏込材投入工程において前記展伸用凹部の中央部から裏込材の投入を開始することにより、補強敷設部材のたるみを防止することができ、前記補強敷設部材の他端側にアンカーフレームを固定しておき、該アンカーフレームを前記展伸用凹部の後方側縁部に設置することにより、より確実に補強敷設部材のたるみを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係る補強土壁式構造物の補強敷設部材連結構造の概略を示す断面図である。
図2】同上の補強敷設部材連結構造を示す部分拡大平面図である。
図3】同上の連結ガイド部材を示す背面図である。
図4】連結ガイド部材の他の一例を示す背面図である。
図5】補強土壁式構造物の構築手順を示す概略断面図であって、壁体の構築工程の状態を示す図である。
図6】同上の補強敷設部材敷設工程の状態を示す概略断面図である。
図7図6の補強敷設部材敷設工程における補強敷設部材の設置状態を示す部分拡大概略断面図である。
図8】同上の裏込材投入工程の状態を示す概略断面図である。
図9】同上の裏込部の完成状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明に係る補強土壁式構造物の補強敷設部材連結構造を図1図9に示した実施例に基づいて説明する。尚、図中符号1は水底地盤、符号2は水面、符号3は補強土壁式構造物である。
【0028】
この補強土壁式構造物3は、前面部に設置された壁体4と、壁体4の背面側に裏込材5a,5a...を積み上げた裏込部5と、裏込部5を覆うように埋め立てた埋立て部6とを備えている。
【0029】
壁体4は、図2に示すように、複数の壁用部材7,7...によって構成され、各壁用部材7,7...が互いに側縁が連結された状態に水底地盤1に打設されて沖側と陸側とを隔てるようになっている。
【0030】
壁用部材7,7...は、複数の鋼矢板7a,7a...を互いにその側縁を連結することによってユニット化されており、これを上端が水面2上に突出し、且つ、下端が所望の根入れ深さに至るまで水底地盤1に打設することにより壁体4が構築される。尚、本実施例においては、壁体4の延長方向、即ち、各壁用部材7,7が連なる方向を壁体法線方向という。
【0031】
尚、壁用部材7,7...は、上述の一般的なU型鋼矢板やハット型鋼矢板からなるものに限定されず、例えば、鋼管矢板からなるものであってもよく、PC矢板等のコンクリート矢板からなるものであってもよい。
【0032】
裏込部5は、壁体4の背面側に栗石等の裏込材5a,5a...を堆積させることにより構築されている。尚、図中符号8は裏込部5の上面及び背面側斜面に亘って覆う遮水シートや防砂シート等のシート材8である。
【0033】
また、この補強土壁式構造物3は、裏込部5の所望の高さ毎に敷設された複数の補強敷設部材9を備え、裏込部5のせん断強度を高めて壁体4に作用する土圧の軽減を図るとともに、補強敷設部材9を介して壁体4を裏込部5に支持させることにより壁体4と裏込部5とが一体的な抗土圧構造を形成するようになっている。
【0034】
補強敷設部材9は、ジオグリッド等の可撓性及び耐蝕性を有しつつ高い引張強度が確保されたものを使用し、図2に示すように、互いに間隔をおいて平行に配置された多数の縦材9a,9a...と、縦材9a,9a間架け渡された互いに間隔を置いて平行配置された多数の横材9b,9b...とを一体に備えた格子シート状に形成されている。
【0035】
この補強敷設部材9の一端(先端)は、H型鋼等からなる取付用フレーム10に取り付けられ、補強敷設部材9が取付用フレーム10に幅方向に広げた状態で保持されるようになっている。
【0036】
尚、取付用フレーム10の態様は、上述したH型鋼を用いたものに限定されず、例えば、鋼管を用いてもよく、一対の溝形鋼をもって構成し、両溝形鋼間に補強敷設部材9の端部を挟持するものであってもよい。
【0037】
また、補強敷設部材9の他端には、逆T字鋼等からなるアンカーフレーム11を取り付けてもよい。
【0038】
また、各補強敷設部材9は、壁体4背面に固定された複数の連結ガイド部材12,12...と、取付用フレーム10に突設された連結用凸体13とからなる連結構造によって壁体4の背面に連結される。
【0039】
連結用凸体13は、図2図3に示すように、固定用フランジ部14に基端が支持された支持基部15と、支持基部15の先端両側部より外向きに突出した係合張出片16,16とを備え、支持基部15と係合張出片16,16とが平面視T字状を成している。
【0040】
また、連結用凸体13は、上下方向長さが連結ガイド部材12,12...の上下方向長さより短く形成されている。
【0041】
この連結用凸体13は、固定用フランジ部14が固定用ボルト17を介して取付用フレーム10に固定され、補強敷設部材9を巻き付けた状態で取付用フレーム10に固定できるようになっている。
【0042】
そして、この連結用凸体13を壁用部材7の上下に所定の間隔をおいて固定された連結ガイド部材12,12...に係合させることによって、補強敷設部材9を壁体4の背面に連結できるようになっている。
【0043】
連結ガイド部材12,12...は、連結用凸体13の係合張出片16,16が上面開口
より挿入される係合穴部18と、係合穴部18の背面側に配置された係止片部19,19と、係止片部19,19と隣接した配置に形成された縦向きスリット状の支持基部挿通溝20とを備え、係合穴部18に挿入された係合張出片16,16が係止片部19,19と互いに係合することにより連結用凸体13と連結されるようになっている。
【0044】
この連結ガイド部材12,12...は、鋼材からなる一対のL型部材21によって構成され、両L型部材21を対称配置に壁用部材7の背面に固定することによって連結ガイド部材12,12...を形成している。
【0045】
各L型部材21は、一方の側縁が壁用部材7に溶接された細板状の側板部22と、側板部22の他方の側縁より折り曲げられた係止片部19とを備え、両L型部材21が側板部22を壁体法線方向で互いに対向させ、且つ、各係止片部19,19が間隔をおいて突き合わされる配置とすることにより、壁体4の背面の側板部22,22間に係合穴部18が形成されるとともに、係合穴部18の背面側に係止片部19,19が配置され、両係止片部19,19間に支持基部挿通溝20が形成される。
【0046】
係合穴部18は、互いに対向する内側面、即ち、両側板部22が互いに平行に対向し、係合張出片16,16が上下方向で移動可能に挿入されるようになっている。
【0047】
よって、裏込部5下の地盤が沈下した場合であっても、連結用凸体13が連結ガイド部材12にガイドされつつ沈下に追従できるので、連結構造部分に局所的に応力が作用しないようになっている。
【0048】
尚、連結ガイド部材12,12...の態様は、上述の実施例に限定されず、例えば、裏込部5下の地盤が安定し、裏込部5が沈下するおそれが無い場合には、図4に示すように、係合穴部18の壁体法線方向で対向する内側面18a,18aが下方に向けて互いに近接するテーパ状に形成され、係合張出片16,16が楔状に嵌合されるようにしたものであってもよい。
【0049】
この場合、係合張出片16,16の側縁を斜め方向に切り欠き、楔状に形成することによって、連結ガイド部材12,12...と高精度で嵌合し、水中においてボルト等の固定具を使用せずとも、補強敷設部材9を壁体4に対して所定の高さに高精度で位置決めすることができる。
【0050】
次に、上述の如き連結構造を用いた補強土壁式構造物の補強敷設部材敷設方法について説明する。
【0051】
まず、事前準備として、陸上の作業ヤード等にて複数の鋼矢板を組み合わせて壁用部材7を形成し、各壁用部材7の所定の高さ位置毎に各連結ガイド部材12,12...を固定する。
【0052】
また、各補強敷設部材9には、その一端に取付用フレーム10を取り付けるとともに取付用フレーム10の前面に連結用凸体13を取り付け、他端にアンカーフレーム11を取り付ける。
【0053】
次に、図5に示すように、各壁用部材7,7...を、互いに各連結ガイド部材12,12...の高さを合わせつつ、所望の根入れ深さで水底地盤1に打設して水中前面部に壁体4を構築する。尚、各壁用部材7,7...の打設高さにばらつきが予想される場合には、各連結ガイド部材12,12の上下方向長さを長めに設定しておくことが望ましい。
【0054】
次に、ガット船やグラブ船等(図示せず)を用いて壁体4の背面側に割栗石からなる裏込材5a,5a...を投入し、所望の高さまで裏込材5a,5a...を堆積させる(裏込材投入工程)。
【0055】
その際、裏込材5a,5a...は、連結ガイド部材12,12...の位置を目安に投入し、裏込材5a,5a...の投入後は、投入された裏込材5a,5a...の上面を潜水士によって均す。その場合、図6図7(a)に示すように、補強敷設部材9の位置に合わせて下向きに窪んだ展伸用凹部23を形成する。尚、展伸用凹部23は、図7(b)に示すように、複数形成してもよい。
【0056】
次に、投入された裏込材上に補強敷設部材9を沈下させ、図7に示すように、最下部の連結ガイド部材12,12...に連結用凸体13を係合させるとともに、投入された裏込材5a,5a...の上面、即ち、展伸用凹部23上に補強敷設部材9を展張した状態で敷設する(補強敷設部材敷設工程)。
【0057】
尚、補強敷設部材9は、他端側に取り付けたアンカーフレーム11を展伸用凹部23の後方側縁部に位置するように設置し、補強敷設部材9が展張された状態とする。
【0058】
その際、連結用凸体13が連結ガイド部材12,12...に案内されつつ連結できるので、所望の高さに補強敷設部材9を容易に連結することができる。また、この連結構造を介して各補強敷設部材9の中央部が壁体4背面に対して一点(一箇所)で連結されるので、各壁用部材7,7...の打設状況等に影響されずに確実に連結することができる。
【0059】
次に、図8に示すように、ガット船やグラブ船等(図示せず)を用いて敷設された補強敷設部材9上に割栗石等からなる裏込材5a,5a...を所望高さまで投入する(裏込材投入工程)。
【0060】
その際、裏込材の投入は、展伸用凹部23の中央部から開始することにより、裏込材5a,5a...の重みによって補強敷設部材9が展伸用凹部23に沿って引き伸ばされ、補強敷設部材9をたるみの無い状態で裏込部5内に埋設することができる。
【0061】
以降、図6図8と同様に、裏込材投入工程と補強敷設部材敷設工程とを下側から所望高さ毎に繰り返し裏込部5を構築する。
【0062】
そして、裏込部5の構築が完了したら、図9に示すように、裏込部5の上面及び背面側斜面に遮水シートや防砂シート等のシート材8を設置した後、裏込部5を覆うように埋め立てる。また、必要に応じて壁体4の上部工や構造物上面の舗装等を行い作業が完了する。
【0063】
このように構成された補強土壁式構造物3の補強敷設部材連結構造では、潜水士によって水中で補強敷設部材9を壁体4に連結する作業を簡素化でき、安全かつ効率的に作業を行え、工期の短縮を図ることができる。
【0064】
また、本補強土壁式構造物3の補強敷設部材連結構造では、連結ガイド部材12,12...を壁体4の上下方向全体に亘って設ける必要がないので、その分の材料費を削減することができる。
【0065】
尚、上述の実施例では、補強敷設部材9にジオグリッド等の格子状のものを使用する例について説明したが、補強敷設部材9は、これに限定されず、例えば、網状、ハニカム構造状等であってもよい。
【0066】
更に、本発明は、矢板式構造物に限定されず、前面の壁体4にケーソン等の堤体やL型擁壁等を用いた重力式の構造物にも適用することができる。
【0067】
尚、本発明の補強土壁式構造物3には、護岸も含むものとし、港湾構造物の他、河川や湖等の構造物にも適用できるものとする。
【符号の説明】
【0068】
1 水底地盤
2 水面
3 補強土壁式構造物
4 壁体
5 裏込部
6 埋立て部
7 壁用部材
8 シート材
9 補強敷設部材
10 取付用フレーム
11 アンカーフレーム
12 連結ガイド部材
13 連結用凸体
14 固定用フランジ部
15 支持基部
16 係合張出片
17 固定用ボルト
18 係合穴部
19 係止片部
20 支持基部挿通溝
21 L型部材
22 側板部
23 展伸用凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9