(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6846588
(24)【登録日】2021年3月4日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】薬剤包装体
(51)【国際特許分類】
A61J 1/03 20060101AFI20210315BHJP
B65D 83/04 20060101ALI20210315BHJP
B65D 75/34 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
A61J1/03 370
B65D83/04 D
B65D75/34
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2020-128686(P2020-128686)
(22)【出願日】2020年7月6日
(62)【分割の表示】特願2016-129352(P2016-129352)の分割
【原出願日】2016年6月14日
(65)【公開番号】特開2020-179249(P2020-179249A)
(43)【公開日】2020年11月5日
【審査請求日】2020年7月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516195074
【氏名又は名称】神原 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】神原 秀夫
【審査官】
小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3155333(JP,U)
【文献】
特表2011−527194(JP,A)
【文献】
特開2006−117325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/03
B65D 75/34
B65D 83/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤の収容空間が複数形成されている薬剤包装体であって、
複数の第1収容部と、前記第1収容部の周囲に設けられる第1貼着部と、を有する第1シートと、
所定方向において前記第1収容部と間隔を空けて配置されることにより該第1収容部との間に前記収容空間を区画形成する複数の第2収容部と、前記第2収容部の周囲に設けられ前記第1貼着部に貼着される第2貼着部と、を有する第2シートと、を備え、
前記所定方向に沿って前記第1収容部を見た場合に前記第1収容部と前記第1貼着部との間に表れる前記第1収容部の輪郭が、前記薬剤が効能を発揮する器官の輪郭を呈していることを特徴とする薬剤包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤の変質や破損の防止に用いられる薬剤包装体が普及している。例えば、特許文献1には、PTP(Press Through Pack)シートと称される薬剤包装体が記載されている。当該薬剤包装体は、2枚のシートの間に薬剤の収容空間を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の薬剤包装体では、患者や医療従事者による薬剤の取り違えを防止するために、シートに薬剤の名称を印刷することが一般的になっている。しかしながら、患者等が薬剤の知識に乏しい者である場合、当該名称を読み取ることができても、薬剤が効能を発揮する器官を理解することが困難である。この結果、薬剤の誤用を招くおそれがあった。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、薬剤が効能を発揮する器官を患者等に容易に理解させることが可能な薬剤包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る薬剤包装体は、
薬剤の収容空間が複数形成されている薬剤包装体であって、複数の第1収容部と、第1収容部の周囲に設けられる第1貼着部と、を有する第1シートと、
所定方向において第1収容部と間隔を空けて配置されることにより第1収容部との間に収容空間を区画形成する
複数の第2収容部と、第2収容部の周囲に設けられ第1貼着部に貼着される第2貼着部と、を有する第2シートと、を備える。
第1収容部は、薬剤が効能を発揮する器官の
輪郭を表示している。
【0007】
また、所定方向に沿って第1収容部を見た場合に表れる第1収容部の輪郭が、薬剤が効能を発揮する器官の輪郭を呈していてもよい。【0008】
また、所定方向に沿って第1収容部を見た場合に第1収容部と第1貼着部との間に表れる第1収容部の輪郭が、薬剤が効能を発揮する器官の輪郭を呈していてもよい。【0010】
なお、本明細書における「器官」は、胃、脳、肝臓、肺、血管等の人体内のもののみならず、耳、足、手等も含む。
【0011】
また、本明細書における「効能を発揮する器官」は、薬剤の提供者が、当該薬剤が効能を発揮することを期待する器官を意味する。例えば、所謂胃薬の「効能を発揮する器官」は胃である。薬剤の効能の程度は、患者ごとに異なる。この点、本明細書における「効能を発揮する器官」は、あらゆる患者の当該器官において、薬剤の効能が発揮されることを必要としない。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、薬剤が効能を発揮する器官を患者等に容易に理解させることが可能な薬剤包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態に係る薬剤包装体を示す平面図である。
【
図3】第1実施形態の変形例に係る薬剤包装体を示す平面図である。
【
図4】第2実施形態に係る薬剤包装体を示す平面図である。
【
図5】第3実施形態に係る薬剤包装体を示す平面図である。
【
図6】第4実施形態に係る薬剤包装体を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0019】
図1及び
図2を参照しながら、第1実施形態に係る薬剤包装体1について説明する。薬剤包装体1は、PTPシートと称され、複数の錠剤2の包装に用いられる。錠剤2が効能を発揮する器官は脳である。すなわち、錠剤2は、脳において効能を発揮することを期待され、患者に提供される薬剤である。
【0020】
薬剤包装体1は、第1シート3と第2シート4とを備える。第1シート3は、ポリエチレンやポリ塩化ビニル等の透明性が高い樹脂材料によって形成されている。第1シート3は、第1収容部5と第1貼着部6とを有している。第1貼着部6は薄膜状に形成されている。第1収容部5は、例えば真空成型により、薄膜の複数個所を同一方向に膨出させることによって形成されている。第2シート4は、薄膜状のアルミ箔である。
【0021】
薬剤包装体1は、第1シート3に第2シート4を貼着することによって形成される。第2シート4の貼着は、接着剤を用いた接着や、第1シート3を溶融させることによる溶着等、種々の方法によって行うことができる。
【0022】
薬剤包装体1の製造工程では、第1シート3の第1収容部5の内部に錠剤2を配置するとともに、その第1シート3に第2シート4を貼着する。
図2に示されるように、第2シート4は、第2貼着部8において第1シート3の第1貼着部6に貼着される。これにより、第1シート3の第1収容部5と、第2シート4と、の間に、錠剤2を収容する収容空間9が形成される。収容空間9は、その一部が第1シート3の第1収容部5によって区画形成され、他部が第2シート4の第2収容部7によって区画形成される。
【0023】
本実施形態では、器官表示部10が第1収容部5に設けられている。詳細には、第1収容部5が器官表示部10としても機能している。器官表示部10は、錠剤2が効能を発揮する器官の形状を表示する。すなわち、本実施形態では、器官表示部10は脳を表示している。
【0024】
第1収容部5は、側面部51、蓋部52、及び連接部53を有している。側面部51は、第1貼着部6から略垂直に立ち上がり、筒形状を呈している。蓋部52は、間隔を空けて第2収容部7と対向している。蓋部52は、第2収容部7とは反対の方向に突出するように湾曲している。連接部53は、側面部51の端部と蓋部52の端部とを連接している。連接部53が脳の輪郭を呈することによって、器官表示部10は脳の輪郭を表示している。
【0025】
また、蓋部52には、溝54,55が形成されている。溝54,55は、いずれも周囲と不連続な曲率によって形成された面である。溝54は、蓋部52の中央部を横断するように形成されている。溝54は、右脳と左脳との境界を模している。溝55は、溝54によって区画された各部位に複数形成されており、脳溝を模している。溝54,55は、第1収容部5の真空成型に用いられる金型に突起を形成しておくとともに、当該突起の形状を第1収容部5に転写することによって形成できる。
【0026】
錠剤2を服用しようとする患者は、薬剤包装体1から錠剤2を取り出す際に、蓋部52を手指で第2収容部7側に押す。これにより、蓋部52によって押された錠剤2が第2収容部7を突き破り、収容空間9から錠剤2が排出される。
【0027】
また、
図1に示されるように、第1シート3の第1貼着部6に複数のスリット31が形成されている。スリット31は、第1シート3を、2つの収容空間9を含む小単位ごとに区分している。薬剤包装体1は、スリット31に沿って折り曲げられることによって、小単位ごとに切り離せるように構成されている。
【0028】
この薬剤包装体1の構成では、錠剤2が効能を発揮する器官である脳の形状を表示する器官表示部10が設けられている。したがって、上記構成によれば、患者等は、器官表示部10による表示に基づいて、錠剤2が効能を発揮する器官である脳を視覚的且つ容易に理解することが可能になる。すなわち、患者等は、錠剤2が、脳においてその効能を発揮する薬剤であることを、視覚的且つ容易に理解することが可能になる。
【0029】
また、器官表示部10は第1収容部5に設けられている。第1収容部5は、収容空間9の一部を区画形成する。したがって、薬剤包装体1がスリット31において小単位ごとに切り離された場合でも、器官表示部10が欠損することはない。この結果、錠剤2が効能を発揮する器官が脳であることを、患者等に理解させることが可能になる。
【0030】
また、器官表示部10は、脳の輪郭を表示している。この構成によれば、薬剤包装体1を容易に製造しながらも、錠剤2が効能を発揮する器官である脳を患者等に確実に理解させることが可能になる。
【0031】
また、第1収容部5は、第1貼着部6から立ち上がる側面部51と、間隔を空けて第2収容部7と対向する蓋部52と、側面部51と蓋部52とを連接する連接部53と、を有する。連接部53が脳の輪郭を呈している。連接部53は、側面部51と蓋部52との間の形状変化が生じる部分であるため、患者等に視認され易い。このような連接部53が脳の輪郭を呈していることにより、器官表示部10は脳の輪郭を明確に表示することができる。この結果、錠剤2が効能を発揮する器官が脳であることを、患者等に確実に理解させることが可能になる。
【0032】
また、蓋部52に溝54,55が形成されている。この構成によれば、実際の脳に存在する凹凸を、溝54,55によって模すことが可能になる。この結果、簡易な構成ながらも、脳の形状を詳細に表示し、錠剤2が効能を発揮する器官が脳であることを、患者等に確実に理解させることが可能になる。
【0033】
尚、脳の表示は、
図1及び
図2に示されるものに限定されない。
図3は、第1実施形態の変形例に係る薬剤包装体1Aを示している。薬剤包装体1Aの構成のうち、第1実施形態の構成と同一のものは同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0034】
薬剤包装体1Aでは、第1収容部5Aが器官表示部10Aとして機能している。この薬剤包装体1Aの器官表示部10Aも、第1収容部5Aの側面部51A、蓋部52A、及び連接部53Aによって脳の形状を表示している。また、蓋部52Aを横断する溝54Aが、右脳と左脳との境界を模している。器官表示部10Aは、第1実施形態と比べて緩慢な線によって脳の形状を表示している。
【0035】
すなわち、器官表示部10,10Aによる表示は、それを視認した患者等の大半が、脳を想起できるものであれば、種々の態様のものを採用することができる。
【0036】
次に、第2実施形態に係る薬剤包装体1Bについて、
図4を参照しながら説明する。この薬剤包装体1Bは、複数の錠剤2Bの包装に用いられる。薬剤包装体1Bの構成のうち、第1実施形態の構成と同一のものは同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0037】
錠剤2Bは、制酸剤、消化酵素、粘膜修復剤、及び鎮痙剤を含有している。患者が錠剤2Bを服用することにより、胃痛が軽減される。すなわち、錠剤2Bが効能を発揮する器官は胃であり、当該効能は胃痛の軽減である。薬剤包装体1Bでは、第1収容部5Bが器官表示部10Bとして機能し、胃の形状を表示している。
【0038】
第1収容部5Bの連接部53Bが胃の輪郭を呈している。連接部53Bは、側面部51Bと蓋部52Bとを連接している。第1収容部5Bは、その2つの端部が狭窄しており、全体として胃の形状を模している。薬剤包装体1Bのこのような構成により、患者等は、錠剤2Bが効能を発揮する器官が胃であることを容易に理解することができる。
【0039】
次に、第3実施形態に係る薬剤包装体1Cについて、
図5を参照しながら説明する。この薬剤包装体1Cは、複数の錠剤2Cの包装に用いられる。薬剤包装体1Cの構成のうち、第1実施形態の構成と同一のものは同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0040】
錠剤2Cが効能を発揮する器官は肺である。薬剤包装体1Cでは、第1収容部5Ca,5Cbが器官表示部10Ca,10Cbとして機能し、肺の形状を表示している。
【0041】
第1収容部5Caの連接部53Caが右肺の輪郭を呈している。連接部53Caは、側面部51Caと蓋部52Caとを連接している。また、第1収容部5Cbの連接部53Cbが左肺の輪郭を呈している。連接部53Cbは、側面部51Cbと蓋部52Cbとを連接している。薬剤包装体1Cのこのような構成により、患者等は、錠剤2Cが効能を発揮する器官が肺であることを容易に理解することができる。
【0042】
次に、第4実施形態に係る薬剤包装体1Dについて、
図6を参照しながら説明する。この薬剤包装体1Dは、複数の錠剤2Dの包装に用いられる。薬剤包装体1Dの構成のうち、第1実施形態の構成と同一のものは同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0043】
錠剤2Dが効能を発揮する器官は耳である。薬剤包装体1Dでは、第1収容部5Da,5Dbが器官表示部10Da,10Dbとして機能し、耳介の形状を表示している。第1収容部5Daの連接部53Daが右耳の耳介の輪郭を呈している。連接部53Daは、側面部51Daと蓋部52Daとを連接している。また、第1収容部5Dbの連接部53Dbが左耳の耳介の輪郭を呈している。連接部53Dbは、側面部51Dbと蓋部52Dbとを連接している。
【0044】
さらに、蓋部52Daに溝54Dが形成され、蓋部52Dbに溝55Dが形成されている。溝54D,55Dは、いずれも耳介の舟状窩を模している。器官表示部10Da,10Dbは、この溝54D,55Dにより、耳介の形状を詳細に表示している。薬剤包装体1Dのこのような構成により、患者等は、錠剤2Dが効能を発揮する器官が耳であることを容易に理解することができる。
【0045】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズ等は、例示したものに限定されず、適宜変更することができる。
【0046】
上記実施形態では、薬剤包装体の例としてPTP包装シートを用いている。しかし、本発明はこの態様に限定されない。すなわち、本発明は、SP(Strip Package)シート等、他の形態の包装にも適用することができる。
【0047】
また、上記実施形態では、薬剤の例として錠剤を用いている。しかし、本発明はこの態様に限定されない。すなわち、本発明は、顆粒薬や粉薬等、他の形態の薬剤にも適用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1,1A,1B,1C,1D:薬剤包装体
2,2B,2C,2D:錠剤(薬剤)
3:第1シート
4:第2シート
5,5A,5B,5Ca,5Cb,5Da,5Db:第1収容部
6:第1貼着部
7:第2収容部
8:第2貼着部
9:収容空間
10,10A,10B,10Ca,10Cb,10Da,10Db:器官表示部
51,51A,51B,51Ca,51Cb,51Da,51Db:側面部
52,52A,52B,52Ca,52Cb,52Da,52Db:蓋部
53,53A,53B,53Ca,53Cb,53Da,53Db:連接部
54,55,54A,54D,55D:溝