【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本発明は、請求項1及び請求項4のいずれか一項に記載の改質された赤泥、請求項12に記載の特徴を有する改質された赤泥の製造方法、改質された赤泥を含む貯蔵媒体、貯蔵媒体を含む熱貯蔵装置、及び改質された赤泥の貯蔵媒体としての、特に熱貯蔵装置における多岐にわたる使用、並びに最適な使用方法に関する。
【0015】
1つの実施の形態においては、改質された赤泥は、以下の成分:
ヘマタイト(Fe
2O
3)と、
コランダム(Al
2O
3)と、
ルチル(TiO
2)及び/又はアナターゼ(TiO
2)と、
石英(SiO
2)と、
任意に、ペロブスカイト(CaTiO
3)と、
任意に、シュードブルッカイト((Fe
3+,Fe
2+)
2(Ti,Fe
3+)O
5)、ネフェリン((Na,K)[AlSiO
4])、及び/又はアウィナイト((Na,Ca)
4〜8[Al
6Si
6O
24(SO
4)])と、
を含有する。
【0016】
この場合に、改質された赤泥は、Na
2O及び/又はガラス、例えばソーダガラス及び/又はカリソーダガラスを実質的に含まない。好ましくは、改質された赤泥は、同様にK
2O及び/又はCaO及び/又は更なるその他のアルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物を実質的に含まない。
【0017】
赤泥は、ボーキサイトからのアルミニウムのアルカリ性浸出後に残留する不溶性成分である。赤泥は、ゴミ捨て場においてアルカリ性環境で洗い流される。そのため、赤泥はアルカリ金属を不確定な量で遊離苛性ソーダの形で又はCO
2による炭酸飽和により生ずる炭酸ナトリウムの形で含有する。この遊離アルカリ金属含量は、鉱物学的相の形成に積極的であるが不確定な影響を及ぼすので、確定的かつ制御可能な比率を達成するためには、このアルカリ金属含量、すなわちNa
2O、しかしまたK
2O、並びにアルカリ土類金属含量、すなわちCaO及びMgOを、洗浄又は中和によって少なくとも十分により一層完全に除去せねばならない。それにより、改質された赤泥はNa
2O及びK
2Oを実質的に含まないため、ソーダガラス及び/又はカリガラスは、テンパリングに際して形成し得ない。
【0018】
本出願に関して「実質的に含まない」とは特に、0.5重量%未満、特に0.2重量%未満、特に0.1重量%未満、特に0.05重量%未満、特に0.03重量%未満、特に0.01重量%未満の含量と解釈され得る。
【0019】
したがって、改質された赤泥は、特に(結晶性)ヘマタイト(Fe
2O
3)、コランダム(Al
2O
3)、ルチル(TiO
2)及び/又はアナターゼ(TiO
2)、並びに石英(SiO
2)の成分を含有してもよく、又は実質的に上記成分からなってもよい。更なる成分が含まれていてもよいが、含まれていなければならないわけではない。そのような更なる(任意の)成分としては、特にペロブスカイト(CaTiO
3)、シュードブルッカイト((Fe
3+,Fe
2+)
2(Ti,Fe
3+)O
5)、ネフェリン((Na,K)[AlSiO
4])、及び/又はアウィナイト((Na,Ca)
4〜8[Al
6Si
6O
24(SO
4)])を挙げることができ、それらは全て結晶形で存在し得る。しかしながらこの場合に、改質された赤泥は、Na
2O(同様にK
2O及びCaO)及び/又はガラスを実質的に含有しない。
【0020】
1つの実施の形態においては、改質された赤泥は、
48重量%〜55重量%、特に49重量%〜54重量%、特に50重量%〜53重量%のヘマタイト(Fe
2O
3)と、
13重量%〜18重量%、特に14重量%〜17重量%、特に15重量%〜16重量%のコランダム(Al
2O
3)と、
8重量%〜12重量%、特に9重量%〜11重量%のルチル(TiO
2)及び/又はアナターゼ(TiO
2)と、
2重量%〜5重量%、特に3重量%〜4重量%の石英(SiO
2)と、
0.03重量%未満、特に0.01重量%未満のNa
2O及び/又は0.1重量%未満、特に0.05重量%未満のガラスと、
を含有し得る。
【0021】
1つの実施の形態においては、改質された赤泥は、
10重量%〜55重量%、特に10重量%〜50重量%の鉄化合物と、
12重量%〜35重量%のアルミニウム化合物と、
3重量%〜17重量%、特に5重量%〜17重量%のケイ素化合物と、
2重量%〜12重量%、特に2重量%〜10重量%の二酸化チタンと、
0.5重量%〜6重量%のカルシウム化合物と、
任意選択で、更なる不可避の不純物と、
の無機組成を有する実質的にNa
2Oを含まない洗浄された(又は中和された)赤泥を、少なくとも800℃、特に少なくとも850℃、特に少なくとも900℃、特に少なくとも950℃、好ましくは少なくとも1000℃の温度に、例えば1100℃から1200℃の間の温度、例えば1150℃に加熱することによって得ることができる。こうして得ることができる改質された赤泥は、テンパリングされた赤泥、又は焼結された赤泥、又はヘマタイトセラミックとも呼称され得る。
【0022】
ボーキサイトからのアルミニウムのアルカリ性浸出後に不溶性成分として残留する赤泥は、通常はかなりの量のNa
2O又はその他のアルカリ金属酸化物若しくはアルカリ土類金属酸化物を含有し、それらは水酸化物として又は炭酸塩としても存在し得る。そのような(未洗浄の)赤泥が800℃を上回る、特に1000℃を上回る温度に加熱されると、これらのアルカリ性成分は、同様に赤泥中に含まれる(結晶性)SiO
2のガラス、例えばソーダガラス及び/又はカリソーダガラスへの変換を引き起こし、これは粗悪な熱伝導体、そうでなければ断熱体であるため、本発明による改質された赤泥の電流からの熱の貯蔵(電・熱併給)又は熱から電流への変換(熱・電併給)のための使用目的に大きな不利益があるか、又はそれどころか相反するものとなる。また、未洗浄の赤泥の加熱に際してアルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物等の高い反応性に基づいて、本発明により不所望な更なる物質も形成し得る。さらに、そのような反応性物質が本発明による改質された赤泥中に存在することは、熱貯蔵装置中での改質された赤泥の絶え間ない加熱及び冷却を伴う熱貯蔵装置におけるその使用のためにも不利益となる。それというのも、改質された赤泥の化学的安定性(すなわち、室温から約1000℃までの選択された作業温度での繰り返しの加熱及び冷却の間に化学反応がないこと)及び物理的安定性(存在する鉱物相の種々の熱膨張及び熱収縮と共に耐熱衝撃性及び耐熱サイクル性への影響)は、本発明による熱貯蔵装置の寿命のために重要であるからである。
【0023】
したがって、本発明によれば赤泥を加熱前に洗浄することが必要であり、こうしてその赤泥は、Na
2O(及びその他のアルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物、例えばK
2O及び/又はCaO)を実質的に含まず、好ましくはまた加熱に際して還元的に作用し得る有機成分も含まない。Na
2Oもその他のアルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物も、アルカリ性(すなわち塩基性)物質であるので、実質的にNa
2Oを除去する洗浄は中和とも呼称され得て、又は相応して洗浄された赤泥は、中和された赤泥とも呼称され得る。適切には、その洗浄は、有利に酸又は酸性物質、例えば塩化鉄(II)が添加されていてもよい水によって行われる。
【0024】
1つの実施の形態においては、改質された赤泥(テンパリング後)は、以下の成分:
ギブサイト(Al(OH)
3)、
ゲータイト(FeO(OH))、
ベーマイト(AlO(OH))、
カンクリナイト(Na
6Ca
2[(CO
3)
2|Al
6Si
6O
24])、
のうちの1つ、2つ、3つ、又は4つ全てを実質的に含まない。
【0025】
1つの実施の形態においては、改質された赤泥は、以下の成分:
チタン酸アルミニウム(Al
2TiO
5)、
(元素)鉄(Fe)、
マイエナイト(Ca
12Al
14O
33)、
ウルボスピネル(Fe
2TiO
4)、
アンドラダイト(Ca
3Fe
2(SO
4)
3)、
の1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つ全てを実質的に含み得ない。
【0026】
これらの不所望な成分は、赤泥が十分かつ入念に洗浄されなかった場合に、とりわけ有機成分が除去された場合にも、及び/又は還元性雰囲気中で加熱若しくは焼結された場合に生成し得る。
【0027】
その加熱は、示された温度において、特に5分間から36時間までの、特に5分間から24時間までの、特に5分間から12時間までの、特に5分間から6時間までの、特に5分間から2時間までの、特に5分間から1時間までの、特に5分間から30分間までの時間にわたって行われ得る。
【0028】
1つの実施の形態においては、改質された赤泥は、15%未満の、特に5%〜12%の範囲の多孔性を有し得る。この場合に細孔サイズは小さい。そのような比較的低い多孔性は、赤泥の本発明による改質に基づいて容易に達成可能であり、そして本発明による改質された赤泥の使用目的のために有利な高い熱容量、及び無機物質のために典型的な熱伝導率(比較的低い多孔性による界面での低いフォノン散乱に基づく)の達成のために特に適している。多孔性は、特にガス吸着等温線を用いてBJH法に従って測定することができる。
【0029】
1つの実施の形態においては、改質された赤泥は、3.90g/cm
3〜4.0g/cm
3の範囲の、特に3.91g/cm
3〜3.95g/cm
3の範囲の、特に3.92g/cm
3〜3.94g/cm
3の範囲の、特に約3.93g/cm
3の密度を有し得る。そのような比較的高い密度は、同様に赤泥の本発明による改質に基づいて容易に達成可能であり、そして本発明による改質された赤泥の使用目的のために有利な高い熱容量、及び典型的な熱伝導率の達成のために特に適している。
【0030】
1つの実施の形態においては、改質された赤泥は、3μm〜10μmの範囲の、特に5μm〜8μmの範囲の平均粒度d50を有し得る。平均粒度d50は、特に、レーザ回折によって、又はISO 13320(2009)によるレーザ回折(MALVERN社)によって測定され得る。
【0031】
1つの実施の形態においては、改質された赤泥は、0.5μm〜2.5μmの範囲の、特に1.0μm〜2.0μmの範囲の粒度d10、及び/又は15μm〜50μmの範囲の、特に20μm〜40μmの範囲の粒度d90を有し得る。粒度d10及び粒度d90は、特に、レーザ回折によって、又はISO 13320(2009)によるレーザ回折(MALVERN社)によって測定され得る。
【0032】
1つの実施の形態においては、改質された赤泥は、0.6kJ/(kg・K)〜0.8kJ/(kg・K)の範囲の、特に0.65kJ/(kg・K)〜0.75kJ/(kg・K)の範囲の20℃での比熱容量、及び/又は0.9kJ/(kg・K)〜1.3kJ/(kg・K)の範囲の、特に0.95kJ/(kg・K)〜1.2kJ/(kg・K)の範囲の726.8℃での比熱容量を有し得る。比熱容量は、特に、DIN EN ISO 11357−4に従って測定され得る。
【0033】
1つの実施の形態においては、改質された赤泥は、3W/(m・K)〜35W/(m・K)の範囲の、特に5W/(m・K)〜20W/(m・K)の範囲の、特に8W/(m・K)〜12W/(m・K)の範囲の比熱伝導率を有し得る。比熱伝導率は、特に、平板形の試験体全体にわたってラムダメータにおいてDIN ISO 8302に従って測定され得る。
【0034】
1つの実施の形態においては、改質された赤泥は、圧縮された固体の形で存在し得る。
【0035】
改質された赤泥の製造方法は、
10重量%〜55重量%、特に10重量%〜50重量%の鉄化合物と、
12重量%〜35重量%のアルミニウム化合物と、
3重量%〜17重量%、特に5重量%〜17重量%のケイ素化合物と、
2重量%〜12重量%、特に2重量%〜10重量%の二酸化チタンと、
0.5重量%〜6重量%のカルシウム化合物と、
任意選択で、更なる不可避の不純物と、
の無機組成を有する赤泥を洗浄及び乾燥させることと、
引き続き、洗浄された(中和された)赤泥を、少なくとも800℃、特に少なくとも850℃、特に少なくとも900℃、特に少なくとも950℃、好ましくは少なくとも1000℃の温度に、例えば1100℃〜1200℃の間の範囲に、例えば約1150℃に加熱することと、
を含む。
【0036】
赤泥の洗浄は特に、加熱されるべき赤泥が、先に論じられた理由からNa
2O(及びその他のアルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物、例えばK
2O及び/又はCaO)を実質的に含まず、好ましくはまた加熱に際して還元的に作用し得る有機成分も含まないように用いられる。このためには、その洗浄は特に、有利に酸又は酸性物質、例えば塩化鉄(II)が添加されていてもよい水によって行われ得る。
【0037】
1つの実施の形態においては、その加熱は、示された温度において、特に5分間から36時間までの、特に5分間から24時間までの、特に5分間から12時間までの、特に5分間から6時間までの、特に5分間から2時間までの、特に5分間から1時間までの、特に5分間から30分間までの時間にわたって行われ得る。
【0038】
1つの実施の形態においては、洗浄され乾燥された赤泥の加熱は、非還元性(中性)(ガス)雰囲気中で行われ得る。これらによって、赤泥中の成分、特に鉄化合物の(不所望な)還元が回避され得る。
【0039】
1つの実施の形態においては、赤泥は1回だけ(すなわち複数回ではない)加熱される。赤泥の複数回の加熱、例えば予備焼結は、本発明による方法では一般的に必要ではないので、有利にはこの(本発明によれば不要の)追加の方法工程を省くことができる。
【0040】
1つの実施の形態においては、上記方法は、(焼結又はテンパリングされた)赤泥の上流での造粒を加熱後に行い、引き続き、造粒された赤泥又は造粒物を圧縮することを更に含み得る。テンパリングされた赤泥の造粒は、非常に狭く調整された湿分範囲内での圧縮を容易にする(又はそれどころかその圧縮を初めて可能にする)。
【0041】
1つの実施の形態においては、改質された赤泥の製造方法において、本発明による改質された赤泥が製造され得る。
【0042】
貯蔵媒体は、本発明による改質された赤泥を含む。本出願に関して「貯蔵媒体」とは、特に、活性の(又は有効な)貯蔵材料と解釈され得る。例えば、熱貯蔵装置の場合に、貯蔵媒体は、相応の(又は適切な)熱容量及び熱伝導率を有さねばならない熱貯蔵性材料であり得る。
【0043】
貯蔵媒体は、改質された赤泥の他に、任意選択で更なる成分を含有し得る。
【0044】
1つの実施の形態においては、貯蔵媒体は、以下の成分のうちの1つ以上を更に含み得る:
空気の包有(貯蔵媒体内部での空気の吸収)及び/又は空気の吸着(表面への空気の付着)を回避するための作用物質(例えば、電流・熱貯蔵装置用の基材を、二軸スクリュー式押出機によって、5重量%から10重量%までのポリジメチルシロキサンポリマー又はポリジフェニルシロキサンポリマーを添加しつつ、それと同時に真空脱ガス(例えば直列接続されたロータリベーン式真空ポンプ)を最大出力で使用しつつ、ポリシロキサン系中での強力な分散によって全ての空気の包有が除去されるように処理することができる。得られる材料は混練可能である)、
熱伝導率の改善のための作用物質、特に金属コロイド、金属粉末、黒鉛及びケイ素含有物質からなる群から選択される、熱伝導率の改善のための作用物質、
チキソトロピー性組成物の形成のための作用物質(特に、ポリペンタエリトリトール及びカルボン酸(例えばC18)を、二軸スクリュー式押出機中で処理する前に熱媒体の基材中に添加することによって、この基材は、例えば拡大された範囲でチキソトロピーが調整され得る。電流・熱貯蔵装置の起動過程、すなわちゆっくりとした加熱において、ポリシロキサンの他に、これらの作用物質も炭素へと熱分解され得る。ここで、生ずる炭素は、電流・熱貯蔵装置の所望の特性に対して悪影響を及ぼさずに、熱伝導率を改善する)。
【0045】
1つの実施の形態においては、貯蔵媒体は、可塑剤(「plastisizer」)を実質的に含み得ない。可塑剤は、本発明による赤泥では一般的に必要ではないので、有利にはこの(本発明によれば不要な)可塑剤を省くことができる。
【0046】
熱貯蔵装置は、本発明による貯蔵媒体を含む。本出願に関して「熱貯蔵装置」とは、特に、活性の熱貯蔵性材料として貯蔵媒体を含み、それ以外にさらに、任意選択で更なる装置的要素を備える装置と解釈され得る。
【0047】
1つの実施の形態においては、熱貯蔵装置は、電流・熱貯蔵装置であり得る。本出願に関して「電流・熱貯蔵装置」とは、特に、電気的エネルギーを熱的エネルギー(熱エネルギー)へと変換することができ、及び/又は熱的エネルギー(熱エネルギー)を電気的エネルギーへと変換することができる、特に電気的エネルギーを熱的エネルギーへも、熱的エネルギーを電気的エネルギーへも変換することができる貯蔵装置と解釈され得る。
【0048】
1つの実施の形態においては、熱貯蔵装置は、熱貯蔵装置の蓄熱及び放熱のための装置を更に含み得る。熱貯蔵装置の蓄熱及び放熱のための装置は、例えば機械的構造要素、及び/又はその他の構造要素、例えば伝導性接点若しくは端子、特に導電性接点若しくは端子、及び/又は熱伝導性接点若しくは端子を備え得る。
【0049】
1つの実施の形態においては、熱貯蔵装置は、電流を熱に変換するための手段、例えばカートリッジヒーター又は抵抗線若しくは電熱線を更に備える電流・熱貯蔵装置であり得る。これにより、電気的エネルギーの熱的エネルギーへの変換が可能となり得る。この場合に、これらの手段は、貯蔵媒体と間接的又は直接的に接触していてもよく、例えば貯蔵媒体中に埋設されていてもよい。
【0050】
1つの実施段階においては、熱貯蔵装置は、熱を電流に変換するための手段、例えば蒸気又は高温空気を生成するための装置とタービンと発電機とを備える熱・電流貯蔵装置であり得る。これにより、熱の電流への変換が可能となる。
【0051】
本発明による熱貯蔵装置は、電力・熱併給(電・熱併給)のために構成されていても、電力・熱・電力併給(電・熱・電併給)のために構成されていてもよい。すなわち、本発明による熱貯蔵装置は、電力・熱併給(又は電流(電力)・熱併給)のために使用することもでき、電力・熱・電力併給(又は電流(電力)・熱・電流(電力)併給)のために使用することもできる。このために必要な全ての特性及び特徴、例えば密度ρ、比熱伝導率c
p、作業温度間隔ΔT、物質内部の熱伝導能λ、貯蔵装置中での熱的エネルギーの固有の伝達能(温度拡散率)、多孔性、粒径分布又は粒度分布、硬度及び同時に高い靭性、並びに化学的安定性は、本発明による改質された赤泥によって、その化学的組成又はその製造に応じた改質に基づいて満たされ得る。
【0052】
つまり、熱貯蔵装置の動作方式は、2段階:
第1段階:電力・熱(電・熱)併給、
第2段階:熱・電力(熱・電)併給、
に分けることができる。
【0053】
両方の段階は、それぞれ個別に又は組み合わせて電力・熱・電力併給として使用することができる。
【0054】
電力・熱併給は95%〜100%の効率で動作する。そのため、本発明による熱貯蔵装置は、熱を必要とするシステムに熱を伝達するために理想的な媒体であり、すなわち本発明による熱貯蔵装置は、理想的な種類の熱伝達装置である。その装置には、例えば建物(床暖房及び壁面暖房)、更にあらゆる種類の工業的装置、例えばボイラ、ロータリーキルン、蒸留装置、配管系、コーヒーマシンその他多数が該当する。
【0055】
この種のあらゆるシステムへの熱伝達(電力・熱併給)は、95%〜100%の効率を有する方法が使用されるので非常に魅力の高いものである。熱伝達のために現在使用されるシステムは、通常は25%〜35%の効率で動作する。つまり、その電力・熱・熱併給は所要エネルギー、ひいてはエネルギー費用を約1/3に削減する。それにより、世界的規模で化石燃料の燃焼からの大量のCO
2を削減することができる。電力・熱併給のための熱貯蔵装置は、熱伝達側を除く全ての他の面が断熱されているように作製することができる。それは、あらゆる種類の工業的装置の空間についても金属表面についても当てはまる。
【0056】
さらに、本発明は、本発明による改質された赤泥の、貯蔵媒体としての、特に熱貯蔵装置における使用に関する。
【0057】
1つの実施の形態においては、改質された赤泥は、熱の貯蔵のために、1000℃までの温度で、特に100℃を上回って1000℃までの温度で使用することができる。しかしながら、80℃を上回る温度での、特に90℃を上回る温度での熱の貯蔵のための使用も可能である。
【0058】
1つの実施の形態においては、改質された赤泥は、同時に加熱可能かつ冷却可能な貯蔵媒体として使用することができる。これにより、例えば貯蔵媒体が作動時に500℃より高く加熱されないことが達成され得る、いわば制御が提供され、それによって(三方晶)α−石英から(六方晶)β−石英への反転を回避することができる。すなわち、予め決められた閾値、例えば500℃を上回る貯蔵媒体の加熱は、対応する熱量を別の媒体へと同時に放熱して、それにより相応して冷却されることにより打ち消される。
【0059】
この事実は、今までの貯蔵技術の革新的な進展を表す。これまで、全ての貯蔵装置は、例えば電池若しくは揚水貯蔵装置、又は最初に電流により高温空気を生成した後に石を加熱する(蓄熱過程)電力・熱貯蔵装置のように蓄熱又は放熱され得た。高温の石は、第2段階(放熱過程)で冷たい空気を高温空気に加熱した後に、水から蒸気を起こし、タービン及び発電機が駆動される。蓄熱過程でも放熱過程でも、約100℃から例えば1000℃までの温度間隔又はその一部を経過する。
【0060】
記載された2段階法における重大な問題は、蓄熱及び放熱に際して通過する温度間隔における貯蔵物質中に含まれる結晶性物質の体積的な膨張能又は収縮能である。全ての含まれる物質は、その都度の温度間隔において様々な膨張係数を有するので、物質(例えば天然石)は、組織的に砕けることにより破壊される。すなわち、耐熱衝撃性及び耐熱サイクル性は必要な大きさで与えられていない。
【0061】
蓄熱及び放熱を同時に行うことができる場合には、より大きな温度間隔をもはや通過する必要はない。貯蔵装置の作動は、目下任意の望ましい温度で又は狭い温度帯の範囲内で行うことができる。蓄熱過程で供給されたエネルギーは、放熱過程で同じ大きさで再び放出される。すなわち、ほぼ一定の温度では膨張係数は安定したままであり、変化しない。それにより、各々の含まれる物質で特異的に変化する膨張係数の破壊的な力は無くなる。耐熱衝撃性及び耐熱サイクル性が存在しており、すなわち熱貯蔵装置は、長期間にわたり作動され得る。例えば500℃を超過しない場合に、水酸化物、水和酸化物、及び炭酸塩の分解以外の分解は行われず、また焼結等も行われない。貯蔵物質は、全てのパラメータが安定したままであり、分解、相転移、焼結等の変化は行われない。遊離苛性ソーダ又はそこから炭酸飽和により生成される炭酸ナトリウムを排除することで、経過する温度範囲における化学的・鉱物学的化学種の形成へのアルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物の影響が妨げられる。その場合にのみ、明らかに定義された物質が、あらゆる点で定義されたパラメータを伴って形成され得る。例えば、本発明による貯蔵物質には、以下の物質、つまりヘマタイト、α−Al
2O
3、アナターゼ、ルチル、ペロブスカイト、カンクリナイト、及び石英だけが含まれている。
【0062】
貯蔵されるべきピーク電流量が発生する場合に、貯蔵装置の作動温度範囲を、例えば1000℃に広げなければならない場合に、貯蔵材料の化学的・鉱物学的成分(表1の「ボーキサイト残渣の鉱物相」を参照)は変化するものの、耐熱サイクル性及び耐熱衝撃性は不変のままである。それというのも、蓄熱過程及び放熱過程が、1つの温度又は狭い温度帯で行われ、すなわち貯蔵装置の膨張係数に応じた自己破壊は起こりえないからである。
【0063】
1つの実施の形態においては、改質された赤泥は、電流・熱貯蔵装置における貯蔵媒体として使用することができる。
【0064】
1つの実施の形態においては、貯蔵媒体は、電流によって加熱することができ、及び/又は電流を発生しながら冷却され得る。
【0065】
1つの実施の形態においては、改質された赤泥は、再生可能エネルギー源から得られた電流の貯蔵のために使用することができる。本出願に関して「再生可能エネルギー源」とは、特に、風力、水力、潮力、太陽エネルギー(ソーラーエネルギー)、地熱及びバイオマスと解釈され得るが、その発生時間は人的な影響から非常に大幅に遠ざけられており、そのため効率的な貯蔵可能性が非常に重要となる再生可能エネルギー源、例えば特に風力、潮力及び太陽エネルギー(ソーラーエネルギー)が好ましい。
【0066】
1つの実施の形態においては、電流・熱貯蔵装置は、電流によって加熱され、こうして貯蔵媒体を加熱する抵抗線を備え得る。
【0067】
1つの実施の形態においては、貯蔵媒体中に貯蔵された熱的エネルギーは、その他の媒体、好ましくは流体媒体へと伝達されて、その貯蔵媒体は冷却(放熱)され得る。その際、上記その他の媒体、又は熱交換器媒体も、特に、水、(水蒸気)、溶融塩、例えばイオン性液体、熱媒油、又はガスからなる群から選択される。
【0068】
貯蔵媒体は、例えば熱交換器のように別の媒体又は熱交換器媒体によって貫流され得る。貯蔵媒体の熱交換器としての相応の構成は、該貯蔵媒体の少なくとも初めての自由成形性に基づくものである。この場合に、例えば、対応する1つ以上の貯蔵媒体要素中に相応の流体媒体のためのメアンダー形状の管が設けられていてもよい。しかしながら他方で、幾何学形状の塊状物として成形された貯蔵媒体要素を、矩形断面、多角形断面、又は円形断面を有する相応する管系が生ずるように配置することもできる。その一方で、貯蔵媒体の相応する塊状物に流通させることもでき、詳しく言えば、別の媒体又は熱交換器媒体が事前に選択可能な流速で貯蔵媒体の1つ以上の表面を流過する場合に、上記塊状物を介してこの別の媒体又は熱交換器媒体が流れることもできる。
【0069】
この場合に、貯蔵媒体の冷却(放熱)の制御は、例えば別の媒体又は熱交換器媒体の温度及び流速を介して行うことができる。これにより、予め決められた閾値を上回る又はそれを下回る貯蔵媒体の加熱及び/又は冷却を避けることができる。
【0070】
この場合に、電流の生成は、例えば蒸気タービン又はガスタービンによって行うことができ、ガスタービンの場合には、貯蔵媒体は、例えば作動ガスの加熱のための「燃焼室」の機能を担い得る。この場合に、作動ガスとして空気が使用され得る。
【0071】
1つの実施の形態においては、貯蔵媒体及び放熱装置は、一体式で存在しても、又は別々の要素として存在してもよい。本明細書では、貯蔵媒体要素と制御装置と電流発生ユニットとが、例えばソーラー設備を備える家の領域内で閉じたユニットとして一体化され設置されている1つのシステムをなす装置が考えられる。
【0072】
1つの実施の形態においては、電流・熱貯蔵装置は、電流・熱併給が行われることにより、送電系の存在なくして電気的エネルギーを輸送するために利用することができる。このために、例えば少ない質量、例えば3キログラム〜5キログラムを有する貯蔵媒体要素を準備した後に、それらを断熱ボックス内で安全にかつ低い熱損失で広範囲にわたって輸送することができる。目的地に到着した後で、熱エネルギーから再び電気的エネルギーを得ることができる。
【0073】
1つの実施の形態においては、電流・熱貯蔵装置は、熱・電流併給により再び電流を発生することができる。このために、ガスタービン又は蒸気タービン、しかしながらまた熱電効果又はゼーベック効果に基づく熱電発電機も使用され得る。
【0074】
1つの実施の形態においては、電流・熱貯蔵装置は、孤立したエネルギー利用者へのエネルギー供給のために使用することができる。
【0075】
1つの実施の形態においては、孤立したエネルギー利用者に、熱エネルギー及び電気的エネルギーを供給することができる。すなわち、この場合には電力系統接続とは独立した、いわゆるアイランド稼働が可能である。
【0076】
1つの実施の形態においては、電流・熱貯蔵装置は、機械又は移動装置、例えば車両へのエネルギー供給のために使用することができる。それは、例えば作動媒体が貯蔵媒体要素を介して加熱され得るガスタービン駆動装置を備えた車両のために適している。
【0077】
同時に蓄熱及び放熱され得る熱貯蔵装置は、常に電力・熱・電力併給に関しては、電流生成体、例えば再生可能エネルギー(そのためCO
2不含)と貯蔵装置とタービンと発電機とからなる火力発電所である。
【0078】
しかしまた、この種類の熱貯蔵装置は、理想形では別のシステムで熱伝達装置として使用され得る。この場合に、例えば装置工学の分野における電力・熱・熱併給が重要である。例えば、ボイラ、ロータリーキルン、又はあらゆる種類の工業的装置の加熱をもはや、例えば蒸気又は高温の燃焼ガスを用いて行う必要がないため、むしろ貯蔵物質を、例えば電力(再生可能エネルギー由来の電流)により加熱し、直接接触させることによって、例えば金属又はセラミック又は別の物質へと伝達することが可能である。電力・熱併給の効率は95%〜100%であるので、システムの加熱は同様の効率で可能である。この利点は、将来的にエネルギー費用を大幅に下げ、技術的構成を容易にすることとなる。これには、例えば貯蔵媒体を含む加熱可能な要素による建物の暖房が該当する。
【0079】
本発明の実施形態の更なる課題及び利点は、以下の詳細な説明及び添付の図面に基づき明らかになる。