特許第6846616号(P6846616)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6846616新規の材料、並びに該材料の低温領域、中温領域及び高温領域における顕熱エネルギー貯蔵システムにおける貯蔵媒体としての使用のための製造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6846616
(24)【登録日】2021年3月4日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】新規の材料、並びに該材料の低温領域、中温領域及び高温領域における顕熱エネルギー貯蔵システムにおける貯蔵媒体としての使用のための製造
(51)【国際特許分類】
   C01F 7/06 20060101AFI20210315BHJP
   C01G 49/02 20060101ALI20210315BHJP
   C01G 49/06 20060101ALI20210315BHJP
   C02F 11/00 20060101ALI20210315BHJP
   C09K 5/14 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   C01F7/06 C
   C01G49/02 B
   C01G49/06 A
   C02F11/00 L
   C09K5/14 Z
【請求項の数】38
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2019-539771(P2019-539771)
(86)(22)【出願日】2017年9月1日
(65)【公表番号】特表2020-508950(P2020-508950A)
(43)【公表日】2020年3月26日
(86)【国際出願番号】EP2017072012
(87)【国際公開番号】WO2018157954
(87)【国際公開日】20180907
【審査請求日】2019年7月31日
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2017/054767
(32)【優先日】2017年3月1日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514024860
【氏名又は名称】フルオシュミ ゲーエムベーハー フランクフルト
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ロックテシェル, クリスチャン
【審査官】 神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0158318(US,A1)
【文献】 米国特許第04133866(US,A)
【文献】 特表2015−502517(JP,A)
【文献】 特表2014−520243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 7/00
C02F 11/00
C04B 18/00
C09K 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質された赤泥であって、以下の成分:
ヘマタイト(Fe)と、
コランダム(Al)と、
ルチル(TiO)及び/又はアナターゼ(TiO)と、
石英(SiO)と、
ロブスカイト(CaTiO)と、
ュードブルッカイト((Fe3+,Fe2+(Ti,Fe3+)O)、ネフェリン((Na,K)[AlSiO])、及び/又はアウィナイト((Na,Ca)4〜8[AlSi24(SO)])と、
を含有し、前記改変された赤泥は、0.5重量%未満のNaO及び/又はガラスを含有し、3.90g/cm〜4.0g/cmの範囲の密度を有する、改変された赤泥。
【請求項2】
48重量%〜55重量%のヘマタイト(Fe)と、
13重量%〜18重量%のコランダム(Al)と、
8重量%〜12重量%のルチル(TiO)及び/又はアナターゼ(TiO)と、
2重量%〜5重量%の石英(SiO)と、
0.03重量%未満のNaO及び/又は0.1重量%未満のガラスと、
を含有する、請求項1に記載の改質された赤泥。
【請求項3】
前記改質された赤泥は、0.5重量%未満のチタン酸アルミニウム(AlTiO)、鉄(Fe)、マイエナイト(Ca12Al1433)、ウルボスピネル(FeTiO)、及び/又はアンドラダイト(CaFe(SO)を含有する、請求項1又は2に記載の改質された赤泥。
【請求項4】
10重量%〜55重量%の鉄化合物と、
12重量%〜35重量%のアルミニウム化合物と、
3重量%〜17重量%のケイ素化合物と、
2重量%〜12重量%の二酸化チタンと、
0.5重量%〜6重量%のカルシウム化合物と、
0.5重量%未満のNaOと、
可避の不純物と、
の無機組成を有する洗浄された赤泥を、少なくとも800℃の温度に加熱することによって得ることができる、3.90g/cm〜4.0g/cmの範囲の密度を有する、改質された赤泥。
【請求項5】
前記改質された赤泥は、15%未満の多孔性を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の改質された赤泥。
【請求項6】
前記改質された赤泥は、3.93g/cmの密度を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の改質された赤泥。
【請求項7】
前記改質された赤泥は、3μm〜10μmの範囲の平均粒度d50を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の改質された赤泥。
【請求項8】
前記改質された赤泥は、0.5μm〜2.5μmの範囲の粒度d10、及び/又は15μm〜50μmの範囲の粒度d90を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の改質された赤泥。
【請求項9】
前記改質された赤泥は、0.6kJ/(kg・K)〜0.8kJ/(kg・K)の範囲の20℃での比熱容量、及び/又は0.9kJ/(kg・K)〜1.3kJ/(kg・K)の範囲の726.8℃での比熱容量を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の改質された赤泥。
【請求項10】
前記改質された赤泥は、3W/(m・K)〜35W/(m・K)の範囲の比熱伝導率を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の改質された赤泥。
【請求項11】
前記改質された赤泥は、圧縮された固体の形で存在する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の改質された赤泥。
【請求項12】
以下の工程:
10重量%〜55重量%の鉄化合物と、
12重量%〜35重量%のアルミニウム化合物と、
3重量%〜17重量%のケイ素化合物と、
2重量%〜12重量%の二酸化チタンと、
0.5重量%〜6重量%のカルシウム化合物と、
可避の不純物と、
の無機組成を有する赤泥を洗浄及び乾燥させる工程と、
引き続き、洗浄された赤泥を、少なくとも800℃の温度に加熱する工程と、
を含み、3.90g/cm〜4.0g/cmの範囲の密度を有する、改質された赤泥の製造方法。
【請求項13】
前記赤泥の洗浄は、塩化鉄(II)を含有する水を用いて行われる、請求項12に記載の改質された赤泥の製造方法。
【請求項14】
前記洗浄及び乾燥された赤泥の加熱は、非還元性雰囲気中で実施される、請求項12又は13に記載の改質された赤泥の製造方法。
【請求項15】
以下の工程:
加熱後に赤泥を造粒する工程と、
引き続き、造粒物を圧縮する工程と、
を更に含む、請求項12〜14のいずれか一項に記載の改質された赤泥の製造方法。
【請求項16】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の改質された赤泥を含む貯蔵媒体。
【請求項17】
空気の包有及び空気の吸着を回避するための作用物質、
属コロイド、金属粉末、黒鉛及びケイ素含有物質からなる群から選択される熱伝導率の改善のための作用物質、
チキソトロピー性組成物の形成のための作用物質、
のうちの1種以上を更に含む、請求項16に記載の貯蔵媒体。
【請求項18】
前記貯蔵媒体は、実質的に可塑剤を含まない、請求項16又は17に記載の貯蔵媒体。
【請求項19】
請求項16〜18のいずれか一項に記載の貯蔵媒体を含む熱貯蔵装置。
【請求項20】
前記熱貯蔵装置の蓄熱及び放熱のための装置を更に含む、請求項19に記載の熱貯蔵装置。
【請求項21】
電流を熱に又は熱を電流に変換するための手段を更に含む、請求項19又は20に記載の熱貯蔵装置。
【請求項22】
電力・熱併給(電・熱併給)又は電力・熱・電力併給(電・熱・電併給)のために構成されている、請求項19〜21のいずれか一項に記載の熱貯蔵装置。
【請求項23】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の改質された赤泥の、貯蔵媒体としての使用。
【請求項24】
00℃を上回って1000℃までの温度での熱の貯蔵のための、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
繰り返し加熱可能かつ冷却可能な貯蔵媒体としての、請求項23又は24に記載の使用。
【請求項26】
同時に加熱可能かつ冷却可能な貯蔵媒体としての、請求項23〜25のいずれか一項に記載の使用。
【請求項27】
電流・熱貯蔵装置における貯蔵媒体としての、請求項23〜26のいずれか一項に記載の使用。
【請求項28】
建物における暖房装置及びあらゆる種類の工業的装置への熱伝達装置としての、請求項23〜27のいずれか一項に記載の使用。
【請求項29】
前記貯蔵媒体は、電流によって加熱され、及び/又は電流を発生しながら冷却される、請求項27に記載の使用。
【請求項30】
再生可能エネルギー源から得られた電流の貯蔵のための、請求項27又は28に記載の使用。
【請求項31】
前記電流・熱貯蔵装置は、電流によって加熱され、こうして前記貯蔵媒体を加熱する抵抗線を備える、請求項27〜29のいずれか一項に記載の使用。
【請求項32】
前記貯蔵媒体中に貯蔵された熱的エネルギーは、水、蒸気、溶融塩、熱媒油、又はガスからなる群から選択される流体媒体へと伝達され、こうして前記貯蔵媒体は冷却される、請求項24〜30のいずれか一項に記載の使用。
【請求項33】
前記貯蔵媒体及び放熱装置は、一体式で存在するか、又は別々の要素として存在する、請求項23〜31のいずれか一項に記載の使用。
【請求項34】
前記電流・熱貯蔵装置は、電流・熱併給が行われることにより、送電系の存在なくして電気的エネルギーを輸送するために利用される、請求項27〜32のいずれか一項に記載の使用。
【請求項35】
前記電流・熱貯蔵装置は、熱・電流併給により再び電流を生成する、請求項27〜33のいずれか一項に記載の使用。
【請求項36】
前記電流・熱貯蔵装置は、孤立したエネルギー利用者へのエネルギー供給のために使用される、請求項27〜34のいずれか一項に記載の使用。
【請求項37】
孤立したエネルギー利用者に、熱エネルギー及び電気的エネルギーが供給される、請求項35に記載の使用。
【請求項38】
前記電流・熱貯蔵装置は、機械又は車両のような移動装置のエネルギー供給のために使用される、請求項27〜34のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質された赤泥又は改質されたボーキサイト残渣(以下で、ALFERROCK(登録商標)とも呼ばれる)並びにその製造方法及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギー法(EEG)により、ドイツでは、2038年までの原子力エネルギー及び石炭火力発電からの撤退が定められている。それに代わるものとして、ウインドパーク、ソーラー設備及びバイオガス設備がドイツにとっての電力供給を意味するものとなる。
【0003】
しかしながら特に、ウインドパーク及びソーラー設備は、無風の場合及び暗闇の場合に電気が生成されないという不利点を有する。そのため、これらの再生可能エネルギーは、安定したエネルギー供給に依存している消費者、特に産業消費者のためにベース負荷需要を満たすことはできない。
【0004】
このシステム上の不利点を回避するために、エネルギー供給とエネルギー消費とを切り離さねばならない。エネルギー供給者とエネルギー消費者との間を結ぶエネルギー貯蔵装置のみが、エネルギー流を必要な方法で均等化して、それにより再生可能エネルギーを、ベース負荷需要を満たすものにすることに成功する。
【0005】
したがって、再生可能エネルギー源からエネルギーを回収するに際してのこれらの不利点を解決することができ、さらに資源削減的にかつ費用効果高く得ることさえ可能なエネルギー貯蔵装置及びそのために適した貯蔵媒体が必要とされている。
【0006】
ボーキサイトから水酸化アルミニウム(ATH)を得るためのバイヤー法において赤泥が廃棄物として生ずることは知られている。赤泥(RS)とは、以下で、バイヤー法に際して生成されるボーキサイトからATHを得る際に生ずる残渣と解釈される。アルミニウムを得る際に生ずるボーキサイト残渣又は赤泥の大部分は、更に処理されずに、産業的使用に供されることなく、ゴミ捨て場に廃棄される。
【0007】
従来技術から、ボーキサイト残渣はその大きな内部表面積に基づき吸着材として適していることは既に知られている。
【0008】
さらに、改質されたボーキサイト残渣は、その化学組成に基づき、無機のハロゲン不含の防炎剤として、コンパウンドとして又は発泡された形でも提供されるあらゆる種類のプラスチックにおいて使用することができることが知られている(特許文献1)。
【0009】
さらに、改質されたボーキサイト残渣は、高い密度を有するので、この組成物は、防音材として、又は掘削泥増量のために、又は放射線防御のためにも使用することができることが知られている(特許文献2)。
【0010】
さらに、特許文献3から、流体処理及び有害物質除去のためのボーキサイト残渣を有する多孔質粒状材料が知られている。有害物質には、例えば、重金属、アニオン及びガスが該当する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2012/126487号
【特許文献2】国際公開第2014/114283号
【特許文献3】国際公開第2005/061408号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
120℃から250℃の間の温度に加熱された改質された低クロム酸塩ボーキサイト残渣を用いた実験において、本発明者らは、驚くべきことに、冷却が予想外にもゆっくりと起こることを突き止めた。この考察を考慮に入れて、本発明の発明者らは、(任意に低クロム酸塩)ボーキサイト残渣又は赤泥の、それが熱処理に供される場合の挙動について広範囲にわたる調査を実施し、その際に、化学的パラメータ、鉱物学的パラメータ、物理的パラメータ、及び機械的パラメータ、特に熱的パラメータを比較観察した。こうして、本発明者らは、貯蔵媒体として、特に熱貯蔵装置として使用することができる新たに改質された赤泥を獲得した。
【0013】
その熱処理は上述のパラメータに決定的な形で影響を与え、それにより全体として熱貯蔵装置の特性に本質的な影響を及ぼし、ここで特に、周期的に熱が加えられた場合の熱貯蔵装置の挙動(耐熱サイクル性、耐熱衝撃性)が重要である。出発材料として使用される赤泥の化学的組成と熱処理に際して経過する温度範囲とに基づき、それぞれ異なる化学的・鉱物学的化学種が生じ得るが、それらの化学種も種々の化学的特性、物理的特性、鉱物学的特性、機械的特性、及び熱的特性を有している。これらの特性全体により、貯蔵機構の特性が決まる。それにより、貯蔵機構の特性に任意の形で、すなわち狙い通りに影響を与えることに成功する。最も重要な特性には、例えば、
熱容量
熱伝導率
導電性
密度
硬度
靭性
多孔性
耐熱衝撃性
耐熱サイクル性
熱膨張係数
化学的安定性
等が含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本発明は、請求項1及び請求項4のいずれか一項に記載の改質された赤泥、請求項12に記載の特徴を有する改質された赤泥の製造方法、改質された赤泥を含む貯蔵媒体、貯蔵媒体を含む熱貯蔵装置、及び改質された赤泥の貯蔵媒体としての、特に熱貯蔵装置における多岐にわたる使用、並びに最適な使用方法に関する。
【0015】
1つの実施の形態においては、改質された赤泥は、以下の成分:
ヘマタイト(Fe)と、
コランダム(Al)と、
ルチル(TiO)及び/又はアナターゼ(TiO)と、
石英(SiO)と、
任意に、ペロブスカイト(CaTiO)と、
任意に、シュードブルッカイト((Fe3+,Fe2+(Ti,Fe3+)O)、ネフェリン((Na,K)[AlSiO])、及び/又はアウィナイト((Na,Ca)4〜8[AlSi24(SO)])と、
を含有する。
【0016】
この場合に、改質された赤泥は、NaO及び/又はガラス、例えばソーダガラス及び/又はカリソーダガラスを実質的に含まない。好ましくは、改質された赤泥は、同様にKO及び/又はCaO及び/又は更なるその他のアルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物を実質的に含まない。
【0017】
赤泥は、ボーキサイトからのアルミニウムのアルカリ性浸出後に残留する不溶性成分である。赤泥は、ゴミ捨て場においてアルカリ性環境で洗い流される。そのため、赤泥はアルカリ金属を不確定な量で遊離苛性ソーダの形で又はCOによる炭酸飽和により生ずる炭酸ナトリウムの形で含有する。この遊離アルカリ金属含量は、鉱物学的相の形成に積極的であるが不確定な影響を及ぼすので、確定的かつ制御可能な比率を達成するためには、このアルカリ金属含量、すなわちNaO、しかしまたKO、並びにアルカリ土類金属含量、すなわちCaO及びMgOを、洗浄又は中和によって少なくとも十分により一層完全に除去せねばならない。それにより、改質された赤泥はNaO及びKOを実質的に含まないため、ソーダガラス及び/又はカリガラスは、テンパリングに際して形成し得ない。
【0018】
本出願に関して「実質的に含まない」とは特に、0.5重量%未満、特に0.2重量%未満、特に0.1重量%未満、特に0.05重量%未満、特に0.03重量%未満、特に0.01重量%未満の含量と解釈され得る。
【0019】
したがって、改質された赤泥は、特に(結晶性)ヘマタイト(Fe)、コランダム(Al)、ルチル(TiO)及び/又はアナターゼ(TiO)、並びに石英(SiO)の成分を含有してもよく、又は実質的に上記成分からなってもよい。更なる成分が含まれていてもよいが、含まれていなければならないわけではない。そのような更なる(任意の)成分としては、特にペロブスカイト(CaTiO)、シュードブルッカイト((Fe3+,Fe2+(Ti,Fe3+)O)、ネフェリン((Na,K)[AlSiO])、及び/又はアウィナイト((Na,Ca)4〜8[AlSi24(SO)])を挙げることができ、それらは全て結晶形で存在し得る。しかしながらこの場合に、改質された赤泥は、NaO(同様にKO及びCaO)及び/又はガラスを実質的に含有しない。
【0020】
1つの実施の形態においては、改質された赤泥は、
48重量%〜55重量%、特に49重量%〜54重量%、特に50重量%〜53重量%のヘマタイト(Fe)と、
13重量%〜18重量%、特に14重量%〜17重量%、特に15重量%〜16重量%のコランダム(Al)と、
8重量%〜12重量%、特に9重量%〜11重量%のルチル(TiO)及び/又はアナターゼ(TiO)と、
2重量%〜5重量%、特に3重量%〜4重量%の石英(SiO)と、
0.03重量%未満、特に0.01重量%未満のNaO及び/又は0.1重量%未満、特に0.05重量%未満のガラスと、
を含有し得る。
【0021】
1つの実施の形態においては、改質された赤泥は、
10重量%〜55重量%、特に10重量%〜50重量%の鉄化合物と、
12重量%〜35重量%のアルミニウム化合物と、
3重量%〜17重量%、特に5重量%〜17重量%のケイ素化合物と、
2重量%〜12重量%、特に2重量%〜10重量%の二酸化チタンと、
0.5重量%〜6重量%のカルシウム化合物と、
任意選択で、更なる不可避の不純物と、
の無機組成を有する実質的にNaOを含まない洗浄された(又は中和された)赤泥を、少なくとも800℃、特に少なくとも850℃、特に少なくとも900℃、特に少なくとも950℃、好ましくは少なくとも1000℃の温度に、例えば1100℃から1200℃の間の温度、例えば1150℃に加熱することによって得ることができる。こうして得ることができる改質された赤泥は、テンパリングされた赤泥、又は焼結された赤泥、又はヘマタイトセラミックとも呼称され得る。
【0022】
ボーキサイトからのアルミニウムのアルカリ性浸出後に不溶性成分として残留する赤泥は、通常はかなりの量のNaO又はその他のアルカリ金属酸化物若しくはアルカリ土類金属酸化物を含有し、それらは水酸化物として又は炭酸塩としても存在し得る。そのような(未洗浄の)赤泥が800℃を上回る、特に1000℃を上回る温度に加熱されると、これらのアルカリ性成分は、同様に赤泥中に含まれる(結晶性)SiOのガラス、例えばソーダガラス及び/又はカリソーダガラスへの変換を引き起こし、これは粗悪な熱伝導体、そうでなければ断熱体であるため、本発明による改質された赤泥の電流からの熱の貯蔵(電・熱併給)又は熱から電流への変換(熱・電併給)のための使用目的に大きな不利益があるか、又はそれどころか相反するものとなる。また、未洗浄の赤泥の加熱に際してアルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物等の高い反応性に基づいて、本発明により不所望な更なる物質も形成し得る。さらに、そのような反応性物質が本発明による改質された赤泥中に存在することは、熱貯蔵装置中での改質された赤泥の絶え間ない加熱及び冷却を伴う熱貯蔵装置におけるその使用のためにも不利益となる。それというのも、改質された赤泥の化学的安定性(すなわち、室温から約1000℃までの選択された作業温度での繰り返しの加熱及び冷却の間に化学反応がないこと)及び物理的安定性(存在する鉱物相の種々の熱膨張及び熱収縮と共に耐熱衝撃性及び耐熱サイクル性への影響)は、本発明による熱貯蔵装置の寿命のために重要であるからである。
【0023】
したがって、本発明によれば赤泥を加熱前に洗浄することが必要であり、こうしてその赤泥は、NaO(及びその他のアルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物、例えばKO及び/又はCaO)を実質的に含まず、好ましくはまた加熱に際して還元的に作用し得る有機成分も含まない。NaOもその他のアルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物も、アルカリ性(すなわち塩基性)物質であるので、実質的にNaOを除去する洗浄は中和とも呼称され得て、又は相応して洗浄された赤泥は、中和された赤泥とも呼称され得る。適切には、その洗浄は、有利に酸又は酸性物質、例えば塩化鉄(II)が添加されていてもよい水によって行われる。
【0024】
1つの実施の形態においては、改質された赤泥(テンパリング後)は、以下の成分:
ギブサイト(Al(OH))、
ゲータイト(FeO(OH))、
ベーマイト(AlO(OH))、
カンクリナイト(NaCa[(CO|AlSi24])、
のうちの1つ、2つ、3つ、又は4つ全てを実質的に含まない。
【0025】
1つの実施の形態においては、改質された赤泥は、以下の成分:
チタン酸アルミニウム(AlTiO)、
(元素)鉄(Fe)、
マイエナイト(Ca12Al1433)、
ウルボスピネル(FeTiO)、
アンドラダイト(CaFe(SO)、
の1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つ全てを実質的に含み得ない。
【0026】
これらの不所望な成分は、赤泥が十分かつ入念に洗浄されなかった場合に、とりわけ有機成分が除去された場合にも、及び/又は還元性雰囲気中で加熱若しくは焼結された場合に生成し得る。
【0027】
その加熱は、示された温度において、特に5分間から36時間までの、特に5分間から24時間までの、特に5分間から12時間までの、特に5分間から6時間までの、特に5分間から2時間までの、特に5分間から1時間までの、特に5分間から30分間までの時間にわたって行われ得る。
【0028】
1つの実施の形態においては、改質された赤泥は、15%未満の、特に5%〜12%の範囲の多孔性を有し得る。この場合に細孔サイズは小さい。そのような比較的低い多孔性は、赤泥の本発明による改質に基づいて容易に達成可能であり、そして本発明による改質された赤泥の使用目的のために有利な高い熱容量、及び無機物質のために典型的な熱伝導率(比較的低い多孔性による界面での低いフォノン散乱に基づく)の達成のために特に適している。多孔性は、特にガス吸着等温線を用いてBJH法に従って測定することができる。
【0029】
1つの実施の形態においては、改質された赤泥は、3.90g/cm〜4.0g/cmの範囲の、特に3.91g/cm〜3.95g/cmの範囲の、特に3.92g/cm〜3.94g/cmの範囲の、特に約3.93g/cmの密度を有し得る。そのような比較的高い密度は、同様に赤泥の本発明による改質に基づいて容易に達成可能であり、そして本発明による改質された赤泥の使用目的のために有利な高い熱容量、及び典型的な熱伝導率の達成のために特に適している。
【0030】
1つの実施の形態においては、改質された赤泥は、3μm〜10μmの範囲の、特に5μm〜8μmの範囲の平均粒度d50を有し得る。平均粒度d50は、特に、レーザ回折によって、又はISO 13320(2009)によるレーザ回折(MALVERN社)によって測定され得る。
【0031】
1つの実施の形態においては、改質された赤泥は、0.5μm〜2.5μmの範囲の、特に1.0μm〜2.0μmの範囲の粒度d10、及び/又は15μm〜50μmの範囲の、特に20μm〜40μmの範囲の粒度d90を有し得る。粒度d10及び粒度d90は、特に、レーザ回折によって、又はISO 13320(2009)によるレーザ回折(MALVERN社)によって測定され得る。
【0032】
1つの実施の形態においては、改質された赤泥は、0.6kJ/(kg・K)〜0.8kJ/(kg・K)の範囲の、特に0.65kJ/(kg・K)〜0.75kJ/(kg・K)の範囲の20℃での比熱容量、及び/又は0.9kJ/(kg・K)〜1.3kJ/(kg・K)の範囲の、特に0.95kJ/(kg・K)〜1.2kJ/(kg・K)の範囲の726.8℃での比熱容量を有し得る。比熱容量は、特に、DIN EN ISO 11357−4に従って測定され得る。
【0033】
1つの実施の形態においては、改質された赤泥は、3W/(m・K)〜35W/(m・K)の範囲の、特に5W/(m・K)〜20W/(m・K)の範囲の、特に8W/(m・K)〜12W/(m・K)の範囲の比熱伝導率を有し得る。比熱伝導率は、特に、平板形の試験体全体にわたってラムダメータにおいてDIN ISO 8302に従って測定され得る。
【0034】
1つの実施の形態においては、改質された赤泥は、圧縮された固体の形で存在し得る。
【0035】
改質された赤泥の製造方法は、
10重量%〜55重量%、特に10重量%〜50重量%の鉄化合物と、
12重量%〜35重量%のアルミニウム化合物と、
3重量%〜17重量%、特に5重量%〜17重量%のケイ素化合物と、
2重量%〜12重量%、特に2重量%〜10重量%の二酸化チタンと、
0.5重量%〜6重量%のカルシウム化合物と、
任意選択で、更なる不可避の不純物と、
の無機組成を有する赤泥を洗浄及び乾燥させることと、
引き続き、洗浄された(中和された)赤泥を、少なくとも800℃、特に少なくとも850℃、特に少なくとも900℃、特に少なくとも950℃、好ましくは少なくとも1000℃の温度に、例えば1100℃〜1200℃の間の範囲に、例えば約1150℃に加熱することと、
を含む。
【0036】
赤泥の洗浄は特に、加熱されるべき赤泥が、先に論じられた理由からNaO(及びその他のアルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物、例えばKO及び/又はCaO)を実質的に含まず、好ましくはまた加熱に際して還元的に作用し得る有機成分も含まないように用いられる。このためには、その洗浄は特に、有利に酸又は酸性物質、例えば塩化鉄(II)が添加されていてもよい水によって行われ得る。
【0037】
1つの実施の形態においては、その加熱は、示された温度において、特に5分間から36時間までの、特に5分間から24時間までの、特に5分間から12時間までの、特に5分間から6時間までの、特に5分間から2時間までの、特に5分間から1時間までの、特に5分間から30分間までの時間にわたって行われ得る。
【0038】
1つの実施の形態においては、洗浄され乾燥された赤泥の加熱は、非還元性(中性)(ガス)雰囲気中で行われ得る。これらによって、赤泥中の成分、特に鉄化合物の(不所望な)還元が回避され得る。
【0039】
1つの実施の形態においては、赤泥は1回だけ(すなわち複数回ではない)加熱される。赤泥の複数回の加熱、例えば予備焼結は、本発明による方法では一般的に必要ではないので、有利にはこの(本発明によれば不要の)追加の方法工程を省くことができる。
【0040】
1つの実施の形態においては、上記方法は、(焼結又はテンパリングされた)赤泥の上流での造粒を加熱後に行い、引き続き、造粒された赤泥又は造粒物を圧縮することを更に含み得る。テンパリングされた赤泥の造粒は、非常に狭く調整された湿分範囲内での圧縮を容易にする(又はそれどころかその圧縮を初めて可能にする)。
【0041】
1つの実施の形態においては、改質された赤泥の製造方法において、本発明による改質された赤泥が製造され得る。
【0042】
貯蔵媒体は、本発明による改質された赤泥を含む。本出願に関して「貯蔵媒体」とは、特に、活性の(又は有効な)貯蔵材料と解釈され得る。例えば、熱貯蔵装置の場合に、貯蔵媒体は、相応の(又は適切な)熱容量及び熱伝導率を有さねばならない熱貯蔵性材料であり得る。
【0043】
貯蔵媒体は、改質された赤泥の他に、任意選択で更なる成分を含有し得る。
【0044】
1つの実施の形態においては、貯蔵媒体は、以下の成分のうちの1つ以上を更に含み得る:
空気の包有(貯蔵媒体内部での空気の吸収)及び/又は空気の吸着(表面への空気の付着)を回避するための作用物質(例えば、電流・熱貯蔵装置用の基材を、二軸スクリュー式押出機によって、5重量%から10重量%までのポリジメチルシロキサンポリマー又はポリジフェニルシロキサンポリマーを添加しつつ、それと同時に真空脱ガス(例えば直列接続されたロータリベーン式真空ポンプ)を最大出力で使用しつつ、ポリシロキサン系中での強力な分散によって全ての空気の包有が除去されるように処理することができる。得られる材料は混練可能である)、
熱伝導率の改善のための作用物質、特に金属コロイド、金属粉末、黒鉛及びケイ素含有物質からなる群から選択される、熱伝導率の改善のための作用物質、
チキソトロピー性組成物の形成のための作用物質(特に、ポリペンタエリトリトール及びカルボン酸(例えばC18)を、二軸スクリュー式押出機中で処理する前に熱媒体の基材中に添加することによって、この基材は、例えば拡大された範囲でチキソトロピーが調整され得る。電流・熱貯蔵装置の起動過程、すなわちゆっくりとした加熱において、ポリシロキサンの他に、これらの作用物質も炭素へと熱分解され得る。ここで、生ずる炭素は、電流・熱貯蔵装置の所望の特性に対して悪影響を及ぼさずに、熱伝導率を改善する)。
【0045】
1つの実施の形態においては、貯蔵媒体は、可塑剤(「plastisizer」)を実質的に含み得ない。可塑剤は、本発明による赤泥では一般的に必要ではないので、有利にはこの(本発明によれば不要な)可塑剤を省くことができる。
【0046】
熱貯蔵装置は、本発明による貯蔵媒体を含む。本出願に関して「熱貯蔵装置」とは、特に、活性の熱貯蔵性材料として貯蔵媒体を含み、それ以外にさらに、任意選択で更なる装置的要素を備える装置と解釈され得る。
【0047】
1つの実施の形態においては、熱貯蔵装置は、電流・熱貯蔵装置であり得る。本出願に関して「電流・熱貯蔵装置」とは、特に、電気的エネルギーを熱的エネルギー(熱エネルギー)へと変換することができ、及び/又は熱的エネルギー(熱エネルギー)を電気的エネルギーへと変換することができる、特に電気的エネルギーを熱的エネルギーへも、熱的エネルギーを電気的エネルギーへも変換することができる貯蔵装置と解釈され得る。
【0048】
1つの実施の形態においては、熱貯蔵装置は、熱貯蔵装置の蓄熱及び放熱のための装置を更に含み得る。熱貯蔵装置の蓄熱及び放熱のための装置は、例えば機械的構造要素、及び/又はその他の構造要素、例えば伝導性接点若しくは端子、特に導電性接点若しくは端子、及び/又は熱伝導性接点若しくは端子を備え得る。
【0049】
1つの実施の形態においては、熱貯蔵装置は、電流を熱に変換するための手段、例えばカートリッジヒーター又は抵抗線若しくは電熱線を更に備える電流・熱貯蔵装置であり得る。これにより、電気的エネルギーの熱的エネルギーへの変換が可能となり得る。この場合に、これらの手段は、貯蔵媒体と間接的又は直接的に接触していてもよく、例えば貯蔵媒体中に埋設されていてもよい。
【0050】
1つの実施段階においては、熱貯蔵装置は、熱を電流に変換するための手段、例えば蒸気又は高温空気を生成するための装置とタービンと発電機とを備える熱・電流貯蔵装置であり得る。これにより、熱の電流への変換が可能となる。
【0051】
本発明による熱貯蔵装置は、電力・熱併給(電・熱併給)のために構成されていても、電力・熱・電力併給(電・熱・電併給)のために構成されていてもよい。すなわち、本発明による熱貯蔵装置は、電力・熱併給(又は電流(電力)・熱併給)のために使用することもでき、電力・熱・電力併給(又は電流(電力)・熱・電流(電力)併給)のために使用することもできる。このために必要な全ての特性及び特徴、例えば密度ρ、比熱伝導率c、作業温度間隔ΔT、物質内部の熱伝導能λ、貯蔵装置中での熱的エネルギーの固有の伝達能(温度拡散率)、多孔性、粒径分布又は粒度分布、硬度及び同時に高い靭性、並びに化学的安定性は、本発明による改質された赤泥によって、その化学的組成又はその製造に応じた改質に基づいて満たされ得る。
【0052】
つまり、熱貯蔵装置の動作方式は、2段階:
第1段階:電力・熱(電・熱)併給、
第2段階:熱・電力(熱・電)併給、
に分けることができる。
【0053】
両方の段階は、それぞれ個別に又は組み合わせて電力・熱・電力併給として使用することができる。
【0054】
電力・熱併給は95%〜100%の効率で動作する。そのため、本発明による熱貯蔵装置は、熱を必要とするシステムに熱を伝達するために理想的な媒体であり、すなわち本発明による熱貯蔵装置は、理想的な種類の熱伝達装置である。その装置には、例えば建物(床暖房及び壁面暖房)、更にあらゆる種類の工業的装置、例えばボイラ、ロータリーキルン、蒸留装置、配管系、コーヒーマシンその他多数が該当する。
【0055】
この種のあらゆるシステムへの熱伝達(電力・熱併給)は、95%〜100%の効率を有する方法が使用されるので非常に魅力の高いものである。熱伝達のために現在使用されるシステムは、通常は25%〜35%の効率で動作する。つまり、その電力・熱・熱併給は所要エネルギー、ひいてはエネルギー費用を約1/3に削減する。それにより、世界的規模で化石燃料の燃焼からの大量のCOを削減することができる。電力・熱併給のための熱貯蔵装置は、熱伝達側を除く全ての他の面が断熱されているように作製することができる。それは、あらゆる種類の工業的装置の空間についても金属表面についても当てはまる。
【0056】
さらに、本発明は、本発明による改質された赤泥の、貯蔵媒体としての、特に熱貯蔵装置における使用に関する。
【0057】
1つの実施の形態においては、改質された赤泥は、熱の貯蔵のために、1000℃までの温度で、特に100℃を上回って1000℃までの温度で使用することができる。しかしながら、80℃を上回る温度での、特に90℃を上回る温度での熱の貯蔵のための使用も可能である。
【0058】
1つの実施の形態においては、改質された赤泥は、同時に加熱可能かつ冷却可能な貯蔵媒体として使用することができる。これにより、例えば貯蔵媒体が作動時に500℃より高く加熱されないことが達成され得る、いわば制御が提供され、それによって(三方晶)α−石英から(六方晶)β−石英への反転を回避することができる。すなわち、予め決められた閾値、例えば500℃を上回る貯蔵媒体の加熱は、対応する熱量を別の媒体へと同時に放熱して、それにより相応して冷却されることにより打ち消される。
【0059】
この事実は、今までの貯蔵技術の革新的な進展を表す。これまで、全ての貯蔵装置は、例えば電池若しくは揚水貯蔵装置、又は最初に電流により高温空気を生成した後に石を加熱する(蓄熱過程)電力・熱貯蔵装置のように蓄熱又は放熱され得た。高温の石は、第2段階(放熱過程)で冷たい空気を高温空気に加熱した後に、水から蒸気を起こし、タービン及び発電機が駆動される。蓄熱過程でも放熱過程でも、約100℃から例えば1000℃までの温度間隔又はその一部を経過する。
【0060】
記載された2段階法における重大な問題は、蓄熱及び放熱に際して通過する温度間隔における貯蔵物質中に含まれる結晶性物質の体積的な膨張能又は収縮能である。全ての含まれる物質は、その都度の温度間隔において様々な膨張係数を有するので、物質(例えば天然石)は、組織的に砕けることにより破壊される。すなわち、耐熱衝撃性及び耐熱サイクル性は必要な大きさで与えられていない。
【0061】
蓄熱及び放熱を同時に行うことができる場合には、より大きな温度間隔をもはや通過する必要はない。貯蔵装置の作動は、目下任意の望ましい温度で又は狭い温度帯の範囲内で行うことができる。蓄熱過程で供給されたエネルギーは、放熱過程で同じ大きさで再び放出される。すなわち、ほぼ一定の温度では膨張係数は安定したままであり、変化しない。それにより、各々の含まれる物質で特異的に変化する膨張係数の破壊的な力は無くなる。耐熱衝撃性及び耐熱サイクル性が存在しており、すなわち熱貯蔵装置は、長期間にわたり作動され得る。例えば500℃を超過しない場合に、水酸化物、水和酸化物、及び炭酸塩の分解以外の分解は行われず、また焼結等も行われない。貯蔵物質は、全てのパラメータが安定したままであり、分解、相転移、焼結等の変化は行われない。遊離苛性ソーダ又はそこから炭酸飽和により生成される炭酸ナトリウムを排除することで、経過する温度範囲における化学的・鉱物学的化学種の形成へのアルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物の影響が妨げられる。その場合にのみ、明らかに定義された物質が、あらゆる点で定義されたパラメータを伴って形成され得る。例えば、本発明による貯蔵物質には、以下の物質、つまりヘマタイト、α−Al、アナターゼ、ルチル、ペロブスカイト、カンクリナイト、及び石英だけが含まれている。
【0062】
貯蔵されるべきピーク電流量が発生する場合に、貯蔵装置の作動温度範囲を、例えば1000℃に広げなければならない場合に、貯蔵材料の化学的・鉱物学的成分(表1の「ボーキサイト残渣の鉱物相」を参照)は変化するものの、耐熱サイクル性及び耐熱衝撃性は不変のままである。それというのも、蓄熱過程及び放熱過程が、1つの温度又は狭い温度帯で行われ、すなわち貯蔵装置の膨張係数に応じた自己破壊は起こりえないからである。
【0063】
1つの実施の形態においては、改質された赤泥は、電流・熱貯蔵装置における貯蔵媒体として使用することができる。
【0064】
1つの実施の形態においては、貯蔵媒体は、電流によって加熱することができ、及び/又は電流を発生しながら冷却され得る。
【0065】
1つの実施の形態においては、改質された赤泥は、再生可能エネルギー源から得られた電流の貯蔵のために使用することができる。本出願に関して「再生可能エネルギー源」とは、特に、風力、水力、潮力、太陽エネルギー(ソーラーエネルギー)、地熱及びバイオマスと解釈され得るが、その発生時間は人的な影響から非常に大幅に遠ざけられており、そのため効率的な貯蔵可能性が非常に重要となる再生可能エネルギー源、例えば特に風力、潮力及び太陽エネルギー(ソーラーエネルギー)が好ましい。
【0066】
1つの実施の形態においては、電流・熱貯蔵装置は、電流によって加熱され、こうして貯蔵媒体を加熱する抵抗線を備え得る。
【0067】
1つの実施の形態においては、貯蔵媒体中に貯蔵された熱的エネルギーは、その他の媒体、好ましくは流体媒体へと伝達されて、その貯蔵媒体は冷却(放熱)され得る。その際、上記その他の媒体、又は熱交換器媒体も、特に、水、(水蒸気)、溶融塩、例えばイオン性液体、熱媒油、又はガスからなる群から選択される。
【0068】
貯蔵媒体は、例えば熱交換器のように別の媒体又は熱交換器媒体によって貫流され得る。貯蔵媒体の熱交換器としての相応の構成は、該貯蔵媒体の少なくとも初めての自由成形性に基づくものである。この場合に、例えば、対応する1つ以上の貯蔵媒体要素中に相応の流体媒体のためのメアンダー形状の管が設けられていてもよい。しかしながら他方で、幾何学形状の塊状物として成形された貯蔵媒体要素を、矩形断面、多角形断面、又は円形断面を有する相応する管系が生ずるように配置することもできる。その一方で、貯蔵媒体の相応する塊状物に流通させることもでき、詳しく言えば、別の媒体又は熱交換器媒体が事前に選択可能な流速で貯蔵媒体の1つ以上の表面を流過する場合に、上記塊状物を介してこの別の媒体又は熱交換器媒体が流れることもできる。
【0069】
この場合に、貯蔵媒体の冷却(放熱)の制御は、例えば別の媒体又は熱交換器媒体の温度及び流速を介して行うことができる。これにより、予め決められた閾値を上回る又はそれを下回る貯蔵媒体の加熱及び/又は冷却を避けることができる。
【0070】
この場合に、電流の生成は、例えば蒸気タービン又はガスタービンによって行うことができ、ガスタービンの場合には、貯蔵媒体は、例えば作動ガスの加熱のための「燃焼室」の機能を担い得る。この場合に、作動ガスとして空気が使用され得る。
【0071】
1つの実施の形態においては、貯蔵媒体及び放熱装置は、一体式で存在しても、又は別々の要素として存在してもよい。本明細書では、貯蔵媒体要素と制御装置と電流発生ユニットとが、例えばソーラー設備を備える家の領域内で閉じたユニットとして一体化され設置されている1つのシステムをなす装置が考えられる。
【0072】
1つの実施の形態においては、電流・熱貯蔵装置は、電流・熱併給が行われることにより、送電系の存在なくして電気的エネルギーを輸送するために利用することができる。このために、例えば少ない質量、例えば3キログラム〜5キログラムを有する貯蔵媒体要素を準備した後に、それらを断熱ボックス内で安全にかつ低い熱損失で広範囲にわたって輸送することができる。目的地に到着した後で、熱エネルギーから再び電気的エネルギーを得ることができる。
【0073】
1つの実施の形態においては、電流・熱貯蔵装置は、熱・電流併給により再び電流を発生することができる。このために、ガスタービン又は蒸気タービン、しかしながらまた熱電効果又はゼーベック効果に基づく熱電発電機も使用され得る。
【0074】
1つの実施の形態においては、電流・熱貯蔵装置は、孤立したエネルギー利用者へのエネルギー供給のために使用することができる。
【0075】
1つの実施の形態においては、孤立したエネルギー利用者に、熱エネルギー及び電気的エネルギーを供給することができる。すなわち、この場合には電力系統接続とは独立した、いわゆるアイランド稼働が可能である。
【0076】
1つの実施の形態においては、電流・熱貯蔵装置は、機械又は移動装置、例えば車両へのエネルギー供給のために使用することができる。それは、例えば作動媒体が貯蔵媒体要素を介して加熱され得るガスタービン駆動装置を備えた車両のために適している。
【0077】
同時に蓄熱及び放熱され得る熱貯蔵装置は、常に電力・熱・電力併給に関しては、電流生成体、例えば再生可能エネルギー(そのためCO不含)と貯蔵装置とタービンと発電機とからなる火力発電所である。
【0078】
しかしまた、この種類の熱貯蔵装置は、理想形では別のシステムで熱伝達装置として使用され得る。この場合に、例えば装置工学の分野における電力・熱・熱併給が重要である。例えば、ボイラ、ロータリーキルン、又はあらゆる種類の工業的装置の加熱をもはや、例えば蒸気又は高温の燃焼ガスを用いて行う必要がないため、むしろ貯蔵物質を、例えば電力(再生可能エネルギー由来の電流)により加熱し、直接接触させることによって、例えば金属又はセラミック又は別の物質へと伝達することが可能である。電力・熱併給の効率は95%〜100%であるので、システムの加熱は同様の効率で可能である。この利点は、将来的にエネルギー費用を大幅に下げ、技術的構成を容易にすることとなる。これには、例えば貯蔵媒体を含む加熱可能な要素による建物の暖房が該当する。
【0079】
本発明の実施形態の更なる課題及び利点は、以下の詳細な説明及び添付の図面に基づき明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
図1】乾燥した従来のボーキサイト残渣の粒度分布を示す図である。
図2】赤泥を100℃から1000℃までに酸素(O)雰囲気又は窒素(N)雰囲気において加熱した間の試験体の密度の推移を示す図である。
図3】本発明の例示的な1つの実施形態による1000℃でテンパリングされた赤泥の粒度分布を示す図である。
図4】本発明の例示的な1つの実施形態による表3に記載した測定列の、ALFERROCK(商標)の比熱容量についてのグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0081】
以下に、本発明の更なる詳細及び本発明の更なる実施形態を記載する。しかしながら、本発明は、以下の詳細な説明に限定されるものではなく、その詳細な説明は、単に本発明による教示内容の説明に用いられるに過ぎない。
【0082】
例示的な1つの実施形態又は例示的な1つの主題と関連して記載される特徴は、それ以外のどの例示的な実施形態とも、又はそれ以外のどの例示的な主題とも組み合わせることができることに留意されたい。特に、本発明による改質された赤泥の例示的な1つの実施形態と関連して記載される特徴は、本発明による改質された赤泥のそれ以外のどの例示的な実施形態とも、改質された赤泥、貯蔵媒体、熱貯蔵装置の製造方法及び改質された赤泥の使用のどの例示的な実施形態とも、明示的に別段示されていない限り組み合わせることができ、その逆も可能である。
【0083】
不定冠詞又は定冠詞、例えば「ein」、「eine」、「eines」、「der」、「die」及び「das」を伴う単数の概念が示される場合に、文脈により一義的にそれ以外のことが規定されない限り、それと一緒に、複数の概念も含み、その逆も当てはまる。本明細書で使用されるような表現「含む(umfassen)」又は「有する(aufweisen)」は、「含有する(enthalten)」又は「包含する(beinhalten)」を含むだけでなく、「からなる(bestehen aus)」及び「実質的にからなる(im Wesentlichen bestehen aus)」も意味し得る。
【0084】
本発明の範囲において実施される調査に関して、調査されるべき物質を、まずは室温で特性決定し、特に化学組成及び鉱物学的組成を測定した。さらに、この物質を、ゆっくりと1000℃に加熱し、この場合に100℃おきに、鉱物学的相並びに密度及び比熱容量を測定した。
【0085】
調査されるべき物質の特性決定:
1.化学組成(ボーキサイト残渣について典型的なもの)
10重量%〜50重量%の鉄化合物
12重量%〜35重量%のアルミニウム化合物
5重量%〜17重量%のケイ素化合物
2重量%〜10重量%の二酸化チタン
0.5重量%〜6重量%のカルシウム化合物
【0086】
2.鉱物学的組成
調査の開始状態において、X線撮影により以下の鉱物相:
ヘマタイト
ゲータイト
アナターゼ
ルチル
ペロブスカイト
ベーマイト
ギブサイト
カンクリナイト
石英
が確認された。
【0087】
3.粒度
粒径(μm)は、図1に示されている。それによれば、その物質は非常に微細であり、3つの極大値を有している。分布が良好な場合には、その物質が高い密度を有することが予想された。それというのも、非常に微細な結晶は、中程度の微細度の結晶の間隙にはまることができ、この中程度の微細度の結晶は、より大きい結晶の間隙にはまることができるからである。測定された3.63(g/cm)の密度は、この見込みの正しさを証明している。
【0088】
任意の粒度分布を有する熱的に安定かつ化学的に不活性な物質の添加によって、未だに存在する中空空間を、機械的特性、電気的特性、及び熱的特性に作用を及ぼしつつ減らすことができる。それは、本発明に関する貯蔵機構の更なる最適化を表す。
【0089】
4.試験の実施
試験物質の試料を、酸素下及び窒素下で1000℃まで徐々に加熱した。それぞれ、100℃、200℃、300℃、400℃、500℃、600℃、700℃、800℃、900℃及び1000℃で、試料を取り出し、鉱物学的組成及び密度の変化を求めた。
【0090】
比熱容量は、室温(30.26℃)から584.20℃までの温度範囲で測定した。
【0091】
5.結果の解釈
5.1.鉱物相
温度に依存して、物質の鉱物学的組成は変動する(以下の表1を参照)。
【0092】
約300℃でギブサイトは分解し、約400℃でゲータイトは分解し、そして約500℃でベーマイトは崩壊する。573℃でα−石英はβ−石英へと変換される。
【0093】
600℃を上回ると、カンクリナイトNaCa[(AlSiO(CO]からのCO放出が起こる。600℃で密度の最初の極大値が存在する。本明細書では、該物質は、実質的にヘマタイト(Fe)及びコランダム(Al)からなるとともに、より低い割合で、TiO、カンクリナイト、及びペロブスカイトからなる。
【0094】
1000℃では、カンクリナイト並びにTiO相のアナターゼ及びルチルの両方は、鉱物のシュードブルッカイト[(Fe3+Ti]O及びネフェリン[(Na,K)[AlSiO]へと変換される。
【0095】
【表1】
【0096】
5.2.密度
図2から明らかなように、密度は、温度の関数として100℃での3.63(g/cm)から、1000℃での3.93(g/cm)へと進展する。水及びCOの離脱を伴う鉱物相の分解並びに焼結過程により、密度は、600℃から700℃の間で低下し、その後に1000℃までに3.93(g/cm)の値に再び上昇する。
【0097】
熱的領域での使用のためには、物体として安定であり、かつそれぞれ任意選択の温度範囲でHO又はCO等の更なるガスを離脱せず、更なる焼結過程も受けない物質だけしか使用することができない。Fe、Al、TiO又はSiO等の酸化物は、温度増大に際してほとんど目立った変化を起こさない。必須の1つの特性は、1000℃まで加熱された物質の密度が、冷却に際して一定のままで、例えば再水和が起こらないことにある。
【0098】
5.3.粒度
本発明による物質の1000℃の温度までのテンパリングは、粒径を、例えば水酸化物、水和酸化物又は炭酸塩の分解と焼結過程とによって大幅により高い値に移行させる(図3を参照)。こうして、例えば、
0.074μmのd10値は、1.341μmにまで増大し、
0.261μmのd50値は、6.743μmにまで増大し、
1.692μmのd90値は、28.17μmにまで増大する。
【0099】
5.4.比熱容量
物質の比熱容量は、温度の関数である。温度が高まるに伴い、比熱容量も増大する。以下の表2は、相応の例を示している。
【0100】
【表2】
【0101】
混合物においては、比熱容量は、混合物のそれぞれの成分の比熱容量の合計である。
【0102】
提供された物質の特性決定により、混合物は、種々の鉱物性物質からなることが示される。テンパリングに際して、物質の一部は分解し、例えば水又はCOを離脱して、酸化物又はその他の化学的に安定な鉱物相が形成される。さらに焼結過程が行われる。
【0103】
これらの物質の測定結果は、30℃で0.791(kJ/(kg・K))の値を示し、584℃で1.037(kJ/(kg・K))の値を示している。1000℃では、外挿によって、1.14(kJ/(kg・K))〜1.18(kJ/(kg・K))の値を想定することができる(図4を参照のこと)。
【0104】
【表3】
【0105】
1000℃に加熱された物質の冷却に際して、c値は、それぞれの温度に対応する値にまで下がる。しかしながら、出発物質は、鉱物相の分解とその他の物質の形成とによって変化して、更に焼結過程が行われたので、該物質は、冷却後に出発物質とは異なる比熱容量の値を有する。重要なことは、テンパリングの後に、何度でも加熱及び冷却することができ、この場合に混合物中の個々の物質の更なる変化が起こらない安定な物質が提供されることが確認されることである。既に挙げたように、それは密度についても当てはまる。
【0106】
5.5.比熱伝導率
系の熱伝導率は、とりわけ、圧力、温度、鉱物学的組成、多孔度、密度等のパラメータに依存している。
【0107】
既述したように、提供された物質の加熱によって、全ての熱的に不安定な成分は分解された。テンパリングの後に、コランダム(Al)、ヘマタイト(Fe)、ルチル及びアナターゼ(TiO)並びに耐火性物質、例えばシュードブルッカイト[(Fe3+Ti]O又はネフェリン[(Na,K)[AlSiO]からなる物質が存在する。
【0108】
以下の表4において、テンパリングされた物質の極めて重要な成分である物質の熱伝導率及び密度の値が挙げられている。
【0109】
【表4】
【0110】
テンパリング過程の間に、生成された物質は、その粒径の点で大幅に大きくなり、この場合に表面積は小さくなった。それにより、一次結晶内部でも、導電率は表4に示されている値の方向に高まる。原則的に、結晶混合物中でフォノンが結晶界面で反射されると同時に、熱伝導率は低下する。すなわち、物質の結晶構造と熱伝導率とは因果関係がある。
【0111】
その物質混合物中には、測定される熱伝導率を下げる空気が粗悪な熱伝導体としてなおも含まれている。この作用を避けるためには、種々の方法が考えられ、それには、例えば圧力の使用、すなわち該物質を固体へと圧縮することが該当する。
【0112】
さらに、微結晶間又は微結晶表面上での空気の包有を防ぎ、それにより固い物質塊状物の製造を可能にする物質を添加することができる。
【0113】
この物質には、例えば、
金属コロイド
金属粉末
黒鉛
Siベースの焼結可能な熱分解性の物質
が該当する。
【0114】
上述の物質の添加の他に、さらに圧力及び熱エネルギーを使用することができる。
【0115】
熱伝導性の良い物質塊状物を製造することができるということは、決定的に重要なことである。テンパリング後に得られる物質を熱貯蔵装置として使用する場合に、良好な熱伝導率、特に空気の包有の回避は、蓄熱過程(物質の加熱)及び放熱過程(貯蔵された熱の、例えば蒸気を生成する系への伝達)のために重要である。
【0116】
[実施例]
比率1:1のテンパリングされていない物質及び1000℃までテンパリングされた物質からなる提供された物質の混合物を、5%のPDMS(ポリジメチルシロキサンプレポリマー)で表面改質して、BUSS混練機又は同方向回転型の二軸スクリュー式押出機中に装入する。配合機は、135℃のハウジング温度を有し、そして最大の真空脱ガスを伴う。トルクは、最大値の65%〜85%に調整される。材料は、冷却コンベアを経て取り出される。
【0117】
こうして生成された水不含及び空気不含の生成物を、断熱容器中に装入して、機械的に圧密化する。その後に、ゆっくりと1000℃に高温加熱し、それにより熱貯蔵装置を使用準備ができたものにする。PDMSの代わりに、金属粉、黒鉛又は塩溶液等のその他の物質を使用することもできる。
【0118】
6.まとめ
出発物質として、洗浄又は中和の後に十分にアルカリ金属不含かつアルカリ土類金属不含のボーキサイト残渣/赤泥が使用される。例えば1000℃以上の温度までテンパリングした後にも明確なパラメータを有する単純かつ明確に定義された物質構造を得ることが目標である。
【0119】
1000℃の温度までテンパリングすると、物質混合物内の、上記温度区間において不安定な全ての成分は分解する。それには、ギブサイト、ゲータイト、ベーマイト並びにカンクリナイト及びTiO相が該当し、物質混合物は、任意選択で1000℃にてシュードブルッカイト[(Fe3+Ti]O及びネフェリン[(Na,K)[AlSiO]を形成する。
【0120】
冷却後には、Al、Fe、TiO、SiO等の酸化物及び任意選択で1000℃までの再度のテンパリングに際して更なる変化を呈さないシュードブルッカイト及びネフェリン等の高温耐性の物質からなる物質混合物が存在していた。
【0121】
物質組成の上述の変化に伴い、密度も、室温での3.63(g/cm)から1000℃での3.93(g/cm)まで変化した。この予想される過程は、焼結効果を更に伴った。1000℃までテンパリングされた物質混合物の冷却に際して、1000℃で到達した密度は、不変のままである。それというのも、Al、Fe並びにTiO及びSiO等の酸化物は、25℃から1000℃の間の温度範囲においてそれらの密度を変えないからである。
【0122】
この焼結効果及び鉱物相の分解は、物質混合物において粒径をより大きな値の方向に移行させた。テンパリングの前には、例えばd50=0.261μm及びd90=1.692μmであったが、テンパリング後には、以下の値:d50=6.743μm及びd90=28.17μmを測定することができた。粒子の拡大は、表面積の低下及びより良い熱伝導率を意味する。非常に小さな微結晶の間の空気含量(粗悪な熱伝導体)は低減された。
【0123】
特性決定された物質の比熱容量の調査により、25℃での0.79(kJ/(kg・K))から600℃での1.037(kJ/(kg・K))への比熱容量の上昇が示された。1000℃では、外挿によって、1.14(kJ/(kg・K))〜1.18(kJ/(kg・K))の値が予想される。
【0124】
既に示されたように、密度も増大しているため、熱貯蔵装置として使用するための決定的に重要な基準としての密度及び比熱容量の積は、水のその積を上回る値を達成する。水は、20℃で998.2(kg/m)の密度及び4.182(kJ/(kg・K))の突出した比熱容量を有する。それにより、4175(kJ/(m・K))の体積熱容量が得られる。それに対して、提供された物質は、3890(kg/m)の密度及び1.037(kJ/(kg・K))の比熱容量を有し、それにより約600℃で4034(kJ/(m・K))の体積熱容量を有する。1000℃では、3930(kg/m)の密度についての値及び1.16(kJ/(kg・K))のcが得られる。それにより、体積熱容量は、4559(kJ/(m・K))の値を達成する。この値は、水の値を大幅に上回る。
【0125】
水及び規定された物質の間の本質的な違いは、貯蔵媒体が動作し得る温度である。水は、理想的には40℃から90℃の間の温度範囲で動作する、つまり50℃のΔTを有するが、提供された物質は、1000℃までの温度範囲で動作し得る、すなわち該物質は、水を100℃の温度以降で蒸発させ、したがって900℃のΔTで動作し得る。この理由から、提供された物質は、水と比較して15倍〜20倍の熱量を貯蔵し得る(体積基準)。
【0126】
熱伝導係数は、貯蔵媒体においては、放熱過程のためよりも、蓄熱過程(貯蔵装置の加熱)のためにより高い重要性を有する。該物質中に必須に含まれる酸化物の熱伝導能は、3(W/(m・K))から35(W/(m・K))の間にある。熱貯蔵装置のために決定的に重要なことは、貯蔵媒体として使用される物質を、熱的エネルギーの流れが最適に起こり得る、すなわち、熱体から貯蔵物質中へ、貯蔵物質内で、そして貯蔵物質から熱エネルギーを消費する系へと起こり得る、固体塊状物に圧密化し得る必要があることである。この点では、熱伝導性の悪いガスを、物質内部から又は物質の表面上から取り除く場合が有利である。圧力を使用する他に、一次結晶を「つなぎ合わせる」物質が添加され得る。それには、例えば金属コロイド、金属粉末、黒鉛、Si含有の焼結可能な熱分解性の物質が該当する。また決定的に重要なことは、とりわけ、提供された物質の1000℃までのテンパリング過程において、あらゆる不安定な物質が分解され、こうして十分に酸化物系の熱的安定性の貯蔵物質が提供され、該貯蔵物質は、何度でも加熱及び冷却することが可能であるが、この場合に、HO又はCO等の貯蔵塊状物を破壊し得るガスを生成しないことである。
【0127】
熱貯蔵装置の蓄熱及び放熱は、任意の温度又は狭い温度帯で同時に行われる。それによって、熱膨張係数の永続的な変化が妨げられ、熱衝撃挙動及び熱サイクル挙動は、エネルギー貯蔵装置の長い予想寿命に関して安定化される。
【0128】
提供された物質の、高温用熱貯蔵装置のための貯蔵材料としての使用
貯蔵システム
水も固体物質(例えば、今までに記載した物質)も、顕熱貯蔵システムに該当する(熱貯蔵材料の熱を感知可能であるので、顕熱性)。
【0129】
熱貯蔵装置は、電力・熱併給を介してウインドパーク又はソーラー設備からの電気的エネルギーによって加熱することができる。無風の場合又は暗闇の場合にも、これらの熱貯蔵装置は、例えば、タービンを駆動させる蒸気を生成することができ、そのタービンは再び、下流の発電機を介して電気的エネルギーを生成する(熱・電力併給)。それにより、熱貯蔵装置は、非常用発電機の役割又は大きな様式において「代替発電所」の役割を担う。この過程がうまくいくと、送電系をより簡易かつ効率的に構想することもできる。
【0130】
エネルギー貯蔵装置への要求事項を、以下に挙げる:
高いエネルギー密度
高い電力密度
低い累積エネルギー消費
低い損失
低い自己放熱
長いサイクル寿命
長い寿命
低い設備費用
低い運転費用
【0131】
提供された物質は、課される要求事項を高度に満たす。
【0132】
上記物質は、
無機物質であり、
安全であり、
長寿命であり、
リサイクル可能であり、
非常に多量に入手可能であり、
経済性が高く、
1000℃までの温度範囲で動作し、
蓄熱及び放熱が同時に可能であり、
容易に製造することができる。
【0133】
特に、提供された物質が高温用顕熱貯蔵装置として同時に蓄熱及び放熱することができるということは、制御可能な持続的に稼働する貯蔵発電所を運転することを可能にする。これにより、エネルギー生成の隙間を補うことができるか、又はより高い必要条件を満足することができる。
【0134】
さらに、熱貯蔵装置は、特に風力発電所地帯又はソーラー地帯のために使用することができ、それにより、そこで生成されたエネルギーは「パッケージソリューション」としてベース負荷需要を満たすことができる。
【0135】
さらに、例えば小さい熱貯蔵装置ユニットは、例えば住居への完全なエネルギー供給のために使用することができる。これらの小さいユニットは、例えば再生可能エネルギーによって加熱され、その後に定期的な交換において、完全なエネルギー供給のために、すなわち住居用の熱エネルギー及び電気のために使用される。
【0136】
さらに、小さい熱貯蔵装置ユニットは、あらゆる種類の機械において、エネルギー供給の目的のために使用することができる。
【0137】
さらに、電気的エネルギーは、電力・熱併給により熱貯蔵装置の形で送電系を用いずに「輸送可能」にすることができる。
【0138】
上記様式及び方式で、車両を動かすこともできる。定期的にバッテリのように交換される熱貯蔵装置は、熱・電力併給が行われることにより電気モータをリチウムバッテリと同等に動かすことができる。
【0139】
熱を電気的エネルギーに変換するための設備は、貯蔵装置の一体式構成要素として実現することができるか、又はそれとは独立したユニットにおいて実現することができる。
【0140】
[実施例]
提供された物質は、濾過ケークであり、それは、最初に熱処理に供さねばならない。すなわち、ゆっくりと1000℃まで加熱せねばならない。この場合に、最初に濾過ケークの水分を蒸発させ、引き続き1000℃までで、高温領域で不安定な全ての鉱物を焼成する。該物質は、その後には酸化物及びネフェリン又はそれ以外の安定な無機相のみからなる。この物質を冷却することで、貯蔵材料が形成される。
【0141】
貯蔵材料の蓄熱(すなわち加熱)は、埋設された抵抗線又はカートリッジヒーター、すなわちセラミックスリーブ中の抵抗線又はそれ以外のシステムによって直接的に行われる。相応の制御装置を介して、貯蔵材料は、任意の温度で一定に調整することができる。
【0142】
放熱は、適切かつ最適な(温度範囲/蒸気圧)位置で貯蔵材料中に導かれる水循環路を介して行われる。水が蒸発し、蒸気がタービンを動かし、電気が生成される。過剰の蒸気は、冷却装置(「冷却塔」)を介して再び水循環路へと返送される。
【0143】
熱供給部(最高温の位置)及び排熱部の間で、熱貯蔵媒体の特定の熱伝導を介して最適な条件を調整することができる。
【0144】
熱貯蔵材料は、熱供給用の加熱装置及び排熱のための配管系(水)と一緒に塊状物へと固結される。この塊状物は、外部に対して断熱される。
【0145】
決定的なことは、こうして特性決定された熱貯蔵システムは、同時に蓄熱及び放熱することができるということである。一般的に、貯蔵装置は、蓄熱か又は放熱がなされるように設計されている(これについては、揚水貯蔵装置を参照)。再生可能エネルギーによる同時の蓄熱及び放熱が可能なことで、それに対して、安定なベース負荷需要を満たすことができる貯蔵発電所を構築することができる。
【0146】
顕熱貯蔵装置のための現在最も重要な熱貯蔵システムは、水である。このシステムは、水が100℃を上回ると蒸気として存在するため、水によって理想的には40℃〜90℃の温度区間で稼働されることを特徴としている。つまり、水は50℃のΔTを有する。
【0147】
それに対して、提供された物質から製造された貯蔵材料により動作する熱貯蔵システムは、1000℃までの温度で動作し得る、すなわち該物質は、水を100℃の温度以降で蒸発させることができ、したがって900℃のΔTで動作し得る。つまり、このシステムは、高温用貯蔵システムに該当する。
【0148】
[実施例]
顕熱貯蔵材である水/ALFERROCK(登録商標)の比較
貯蔵することができる熱量の計算
貯蔵材料が貯蔵することのできる熱量Qは、以下の等式:
Q=m×c×ΔT=ρ×c×V×ΔT[J]
に従い得る。
m=質量[kg]
=比熱容量[kJ/(kg・K)]
ρ=密度[kg/m
V=体積[m
ρ×c=体積熱容量[kJ/(m・K)]
ΔT=温度区間[K]
Q(1m)=体積熱容量×ΔT[J]
【0149】
1.水(1mの場合)
ρ=998.2(kg/m
=4.182(kJ/(kg・K))
ρ×c=4175(kJ/(m・K))
ΔT=50K
Q=4175(kJ/(m・K))×50K×1m
Q=208.7×10kJ
【0150】
Whに換算:
1J=1Wh/3600
=57.88kWh
【0151】
2.ALFERROCK(登録商標)(1mの場合)
ρ=3930(kg/m
=1.16(kJ/(kg・K))
ρ×c=4558.8(kJ/(m・K))
ΔT=900K
Q=4558.8(kJ/(m・K))×900K×1m
Q=4102.9×10kJ/m
【0152】
Whに換算:
1J=1Wh/3600
ALFERROCK(登録商標)=1.1397MWh
【0153】
3.ALFERROCK(登録商標)/水の比較
ALFERROCK/Q=1.1397MWh/57.88kWh=19.7
【0154】
ALFERROCK(登録商標)は、1000℃までの動作温度で19.7倍の熱量を貯蔵することができる。
【0155】
高温用熱貯蔵媒体であるALFERROCK(登録商標)は、低温においても、熱貯蔵材、熱交換材及び熱調節材として卓越的に使用することができる。注目すべきことは、提供された物質のテンパリングに際して、100℃での3.63(g/cm)から1000℃での3.93(g/cm)までの密度の上昇が逆行せずに、一定に3.93(g/cm)で変動しないことである。大きさρ×cは、それと共に9%だけ上がる。
【0156】
以下の表5において、約200℃、300℃、400℃、500℃及び600℃の範囲における貯蔵可能な熱量が挙げられており、それらは十分に魅力的な値を示している。
【0157】
【表5】
図1
図2
図3
図4