【文献】
株式会社アサヒペン,やぶれにくいプラスチック障子紙,2015年 4月28日,URL,https://www.asahipen.jp/product/prashou/
【文献】
カセン和紙工業株式会社,プラカフィルム障子 すじ雲竜,2016年 8月28日,URL,https://www.kasen.biz/product/detail.php?product_id=1139
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
合成樹脂製フィルムに紙を積層したタイプの障子紙については従来から種々提案されている。例えば、特許文献1、2、3、4。
【0003】
従来から市販されている、合成樹脂製フィルムの両面に紙を積層している障子紙の中には、本来の障子紙の風合いが損なわれているものが存在している。
【0004】
この原因としては、主に2つの問題が考えられる。一つは使用している紙の繊維が化学繊維(おもにポリエステル繊維)を80%以上使用しているので表面がのっぺりしているものである。もう一つは、紙とフィルムの貼り合せの接着剤が紙に深く浸透しているため全体に硬く、締まった感じにできあがっているものである。
【0005】
また、従来から市販されている、合成樹脂製フィルムの両面に紙を積層している障子紙の場合、一般的には、ポリエチレンフィルムを中心として、その両面に、樹脂層を介在させて、紙を積層する構造が採用されている。
【0006】
この場合には、寸法安定性が出ないため、紙/接着/フィルム/接着/紙の構造にして、支持体としてのフィルム利用が提案されたことがある。
【0007】
この構造の場合には、樹脂による押し出し接着、ホットメルト接着、ドライラミ接着、ウェットラミ接着等、で加工が可能になる。
【0008】
この中で樹脂による押し出し接着や、ホットメルト接着の場合は、樹脂が接着界面である紙とフィルムの間に押し出されて圧着されるため、一方的に紙面に樹脂が多く浸透して接着されることがある。
【0009】
これが実際に使用されるときには次のような4点が発現する。
1.樹脂量が多いため、製品の段階で丸めておくと、貼り作業の時に広げなければならないが、フィルムと樹脂の量で巻癖が強くでて、反発が強く、糊の初期接着力では付かないですぐに剥がれる現象が引き起こされる。
2.樹脂が紙の中まで浸透しているので、貼る作業の時に使用する糊の水分が十分に浸透できず、糊の乾燥が悪く接着の妨げになる。
3.紙自体を樹脂の接着力で止めてあるだけなので、温湿度による紙の変化で次第にゆがみが発生する。
4.貼り替え時の剥がすときに、水または剥がし液の浸透が遅く、従来より時間と手間がかかる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
障子紙は年々進化し続けて今日にいたるが、伝統的なでんぷん系や府糊で貼る方法から熱融着樹脂や繊維を使用したアイロンで貼るタイプ、また近年ではペットブームから丈夫さを追求したプラスチック障子紙と呼ばれる紙をフィルムでサンドした障子紙を粘着テープで貼るものまで、様々な種類が市販されている。
【0032】
また、サイズも3尺×6尺の一枚貼りのタイプが主流となっている。
【0033】
しかし残念ながらどのタイプも誰でも簡単にきれいに貼れるという障子紙は見つからないのが実情である。
【0034】
また、見た目は伝統的な風合いのある障子紙であって、なおかつ、誰でも簡単にきれいに貼れるという障子紙は見つからないのが実情である。
【0035】
本願の発明者は、見た目は伝統的な風合いのある障子紙であって、できる限り簡単に貼れて、しかもきれいに貼れ、その状態が長続きする障子紙を提供するべく種々の検討を進めてきた。
【0036】
すなわち、本願発明者は、次のような目的で本願発明を完成させた。
普通の障子紙で風合いを殺さない。
一般的な貼り方で使用する府糊やでんぷん糊の吸収が良く、初期接着が良い。従来品では糊の吸収が悪いので、初期の段階で巻癖の跳ね返りで付きにくい現象がしばしば起こる。
初期の貼った状態が長続きする。従来品は温湿度の影響でゆがみや弛みが出やすくなる。
貼り替え時に剥がしやすい。水または剥がし液の浸透が良い。
本願の発明者は、このような目的を達成するべく鋭意検討を進め、大きく2つのことに着目した。
【0037】
一つは合成樹脂製フィルムの表面、裏面への和紙製障子紙の積層方法、すなわち、接着方法である。
【0038】
和紙である障子紙は独特の風合いと呼ばれるものが特徴なのでその良さを殺さない積層方法、接着方法を検討した。
【0039】
この目的の観点からは、接着剤の量がなるべく少なくなる方法が望ましい。
【0040】
そのことにより風合いは保たれる。また、貼り作業の時に巻癖が出にくく貼りやすくなる。紙の繊維が多く残っていることにより府糊やでんぷん糊の水分を吸いやすくなり、初期接着が上がる。
【0041】
また、逆に剥がすときには水または剥がし液が浸透しやすく早く剥がせるようになる。
【0043】
すなわち、上述した積層方法、接着方法により、きれいに貼りやすくはなるが障子紙はノーサイズの紙なので常に温湿度の影響をうけ、伸縮を繰り返し、次第にゆがみを発生する。
【0044】
これを防ぐためには紙自体の寸法安定化を図る必要が出てくる。
【0045】
一般に紙の場合は内添処理によりサイズ性を付与することが可能である。
【0046】
しかし障子紙といわれる物は全くサイズを利かせないのが常識になっている。そこでサイズ性がなくても長く寸法安定化ができる方法を検討した。
【0047】
この実施形態の障子紙は、合成樹脂製フィルムを間に挟んで、当該合成樹脂製フィルムの表面及び裏面にそれぞれ和紙製の障子紙の裏面側が積層されているものである。
【0048】
すなわち、この実施形態の障子紙の両面外側は和紙製の障子紙の表面が出る構造・形態になり、表裏のない両面表の障子紙となる。
【0049】
こうして、この実施形態の障子紙は、見た目は伝統的な風合いのある障子紙で表裏がないものとなる。
【0050】
この実施形態では、前記合成樹脂製フィルムの前記表面及び前記裏面の中のどちらか一方に印刷が施されている障子紙にすることができる。
【0051】
前記合成樹脂製フィルムを透明あるいは半透明とし、その表面及び裏面の中のどちらか一方に印刷を施しておくことで、障子紙の表側、裏側のどちらからでも印刷されている柄や模様、図形などを視認することができる。すなわち、フィルムの表面、裏面に積層されている和紙製障子紙を透かして、フィルムに印刷されている柄や模様、図形などを視認することができる。
【0052】
この場合、印刷なので何色でも可能で、きれいにすることができる。
【0053】
印刷は、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフ輪などで行うことができる。
【0054】
なお、この場合、インキの種類はバインダーにアクリルやウレタンのものが望ましい。
【0055】
なお、合成樹脂製フィルムを間に挟んで、当該合成樹脂製フィルムの表面及び裏面にそれぞれ和紙製の障子紙が積層されているこの実施形態の障子紙とした後に、表面あるいは裏面になっている前記和紙製障子紙の表面に印刷を施す実施形態にすることもできる。
【0056】
この実施形態では、前記合成樹脂製フィルムの前記表面及び前記裏面の中のどちらか一方に機能剤による塗工を施しておくことができる。
【0057】
前記機能剤としては、遮熱剤、光分散剤、示温剤、紫外線感知剤のいずれかを採用することができる。これによって、遮熱、光分散、示温、紫外線感知などの機能を備えている障子紙とすることができる。
【0058】
これによって実現できる新たな機能をもった障子紙としては次のようなものを例示できる。
【0059】
遮熱障子紙
近年の温暖化による温度上昇でエアコン等の使用が増えているが省エネ効果を高めることも大事であり、遮熱障子紙を提案するものである。
【0060】
例えば、アンチモンドーブ酸化スズ(ATO)やスズドープ酸化インジウム(IOT)等をアクリル系水性エマルジョンをバインダーとしてこの実施形態の障子紙に採用されている合成樹脂製フィルムに塗工することにより、高い遮熱効果を得ることができる。これは、大阪住友セメント(株)によって実績が示されているものであり、その効果を障子紙に応用するものである。
【0061】
紫外線カット障子紙
酸化チタンのナノ粒子を水性エマルジョン等のバインダーにまぜてこの実施形態の障子紙に採用されている合成樹脂製フィルムに塗工することにより紫外線の拡散・カットの効果が発現でき、畳やジュータン、フローリング等の色焼けを緩和できる。
【0062】
示温障子紙
サーモクロミックを利用した示温インクには可逆性と不可逆性のインクがある。たとえばH.W.サンズ社のTLCインク、MSA5000のように25℃まで赤、26℃から緑、30℃から青、44℃から透明になるようなものがある。
【0063】
この示温インクでこの実施形態の障子紙に採用されている合成樹脂製フィルム面に文字や柄を印刷しておけば温度変化を知らせ、空調設備の使用目安にすることができる。また、可逆性インキを印刷しておけば一定の温度で模様が発現することもできる。
【0064】
その他、この実施形態の障子紙に採用されている合成樹脂製フィルム面に様々な機能を有する薬剤を塗工することで障子紙に様々な機能を付与することができる。
【0065】
なお、合成樹脂製フィルムを間に挟んで、当該合成樹脂製フィルムの表面及び裏面にそれぞれ和紙製の障子紙が積層されているこの実施形態の障子紙とした後に、表面あるいは裏面になっている前記和紙製障子紙の表面に前記機能剤による塗工を施す実施形態にすることもできる。
【0066】
この実施形態において、合成樹脂製フィルムは、厚み12μ〜25μのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムあるいは、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルムにすることができる。
【0067】
貼った後も長く初期の状態を維持できる寸法安定の観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムあるいは、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルムを採用することが望ましい。
【0068】
また、出来上がりの感触から合成樹脂製フィルムは厚み12μ〜25μのものが望ましい。
【0069】
なお、合成樹脂製フィルムの表面、裏面のそれぞれに和紙製の障子紙を積層する観点から、合成樹脂製フィルムの表面、裏面のそれぞれに、あらかじめ、コロナ処理を施しておくことが望ましい。
【0070】
この実施形態において、前記和紙製の障子紙は坪量13g〜50g/m
2にすることができる。
【0071】
合成樹脂製フィルムの表面、裏面の両面から貼り合せることを考慮したものである。
【0072】
合成樹脂製フィルムの表面、裏面にそれぞれ積層する前記和紙製障子紙は同じ和紙製障子紙でも異なる和紙製障子紙でも構わない。
【0073】
この実施形態において、前記和紙製の障子紙は、寸法安定化用の水溶液を前記和紙製の障子紙に塗布し、乾燥させる前処理を経たものにすることができる。
【0074】
寸法安定化のために前処理を施してから貼合加工するものである。
【0075】
この場合、前記水溶液は、アクリルオリゴマーを水溶性高分子の主剤とし、ポリビニルアルコール (PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、メラミン、エポキシ、ウレタン、アルキッド、ポリエステル、ポリエーテルの中から選ばれる一種以上を水溶性高分子の助剤として、前記主剤4に対して、前記助剤4〜1の質量割合で調製した水溶液にすることができる。
【0076】
前記和紙製障子紙の寸法安定化を施すことで湿度による吸放湿による影響を極力少なくすることができる。
【0077】
すなわち、前記和紙製障子紙の寸法安定化を施すことで合成樹脂製フィルムの表面、裏面にそれぞれ和紙製の障子紙を積層した後の水分による影響で和紙製障子紙のみが伸び縮みすることにより起こる面のゆがみを少なくすることができる。これによって、貼った後の経時変化をほとんどなくすことができる。
【0078】
この実施形態で採用する和紙製の障子紙は、一般的に、ポリエチレンンオキサイドを使用するくらいでサイズ剤や定着剤も使用しないで水素結合のみで紙になっている。
【0079】
水分により水素結合は簡単に離れてしまうので水溶性高分子で補強する必要がある。
【0080】
そこで、この実施形態では、寸法安定化用の水溶液を前記和紙製の障子紙に塗布し、乾燥させる前処理を行う際の前記水溶液として、アクリルオリゴマーを水溶性高分子の主剤とし、ポリビニルアルコール (PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、メラミン、エポキシ、ウレタン、アルキッド、ポリエステル、ポリエーテルの中から選ばれる一種以上を水溶性高分子の助剤として、この主剤と助剤とで調製した水溶液を使用している。
【0081】
これによって、前記和紙製の障子紙を構成している繊維のリンス効果と結合補強を行うものである。
【0082】
なお、この実施形態では、前記主剤4に対して、前記助剤4〜1の質量割合で調製した水溶液にしている。
【0083】
この実施形態では、前記寸法安定化用の水溶液を前記和紙製の障子紙の前記坪量に対して重量比で1〜2gになるよう塗布している。
【0084】
すなわち、前述した和紙製の障子紙の坪量に対して重量比で1〜2gになるように前記寸法安定化用の水溶液を含浸させている。
【0085】
たとえば、坪量23g/m
2の和紙製障子紙を使用する場合は見かけで30%以上つまり6.9g/m
2以上の前記寸法安定化用の水溶液を塗布・含浸させることになる。
【0086】
6.9g/m
2で固形分が1g以上になる為には液濃度を14.5%以上にすることになる。
【0087】
この範囲であると風合いも損なわず、寸法安定性は格段に向上する。
【0088】
前述した和紙製の障子紙の場合は湿潤強度がないので、表面から(貼り合せ時は裏面使用)グラビアコートやロールコーターを使用して前記寸法安定化用の水溶液を塗布・含浸することができる。
【0089】
この実施形態において、前記合成樹脂製フィルムの表面及び裏面への前記和紙製障子紙の積層は、前記合成樹脂製フィルムの表面あるいは裏面に、ウレタン系、アクリル系、塩酢ビ系、あるいは、ポリエステル系の水性型接着剤を塗布し、前記和紙製障子紙の積層する面に、メラミン、イソシアネート、ヒドラジン、カルボジイミド、エポキシ、シランカップリング剤のいずれかの水性高分子型接着剤を塗布し、両者の塗布面を貼り合わせて乾燥させることにより構成することができる。
【0090】
上述した構成によって、前記和紙製障子紙の寸法安定化を図ることにより、ホットメルト接着、樹脂の押し出し接着、ドライ接着、ウェット接着、等を利用して、上述した合成樹脂製フィルムと貼り合せても形状の安定化は図れる。
【0091】
しかし、上述した巻癖と初期接着の観点からは、課題の解決に至らない。
【0092】
通常のポリサンドやドライ接着では接着剤の量が多く紙への浸透が多くなり風合いを損なってしまうので、少ない接着剤量で貼れる方法としてウェット&ドライ方式で貼る方が良い結果が得られた。
【0093】
この実施形態における接着のポイントである少ない接着剤の量で貼り合せるにはソフト接着を行う必要がある。
【0094】
ソフト接着ならば、接着樹脂の種類が多くあり様々な工夫が可能である。
【0095】
代表的なものとして、ゴム系、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)樹脂系、ウレタン樹脂系、アクリル樹脂系、塩酢ビニル樹脂系、ポリエステル樹脂系、等を使用できる。
【0096】
一般には主剤と硬化剤の2液が使用されるが、この実施形態では、樹脂量を減らす目的で固形分濃度が高くできる水性型接着剤を使用している。
【0097】
特に、ウレタン樹脂系、アクリル樹脂系、塩酢ビニル樹脂系、ポリエステル樹脂系、等が好ましい。
【0098】
これらは主剤樹脂に対して硬化剤を使用することになり、一般には主剤に対して1〜10質量%くらいの範囲で助剤を加えた溶液として使用されるが、これでは塗布量を減らせない。
【0099】
そこで、この実施形態では、主剤と助剤とを別々に分けて主剤はフィルム面に塗布し助剤は紙面に塗布し、同時に合わせて貼り合せる方法(ウェット&ドライコンタクト)で上述した積層構造を構成している。
【0100】
そこで、前記合成樹脂製フィルムの表面あるいは裏面に、ウレタン樹脂系、アクリル樹脂系、塩酢ビニル樹脂系、あるいは、ポリエステル樹脂系の水性型接着剤を塗布し、前記和紙製障子紙の積層する面に、メラミン、イソシアネート、ヒドラジン、カルボジイミド、エポキシ、シランカップリング剤のいずれかの水性高分子型接着剤を塗布し、両者の塗布面を貼り合わせて乾燥させることにより上述した積層構造を構成している。
【0101】
いずれも水系の高分子ものであるので使用しやすい。
【0102】
これらは、いずれも、グラビアコーターやロールコーターで目的としている所定量塗布することができる。
【0103】
図1はこの実施形態の障子紙の製造工程の一例を説明する概念図である。まず、「ラミ第一工程」で説明しているように、合成樹脂製フィルム(A)の接着面にウレタン樹脂系、等の水性型接着剤(a液)を塗布しつつ、同時に、和紙製障子紙(B1)の裏面にメラミン、等の水性高分子型接着剤(b液)を塗布し、同時に貼り合わせて、そのままオーブンで一旦乾燥させ、その後、さらに熱ロールを通過させながら圧着し巻き取る(貼合品C)。次に「ラミ第二工程」で説明しているように、貼合品Cにおける合成樹脂製フィルム(A)の接着面(すなわち「ラミ第一工程」で和紙製障子紙が接合された面の反対側の面)にウレタン樹脂系、等の水性型接着剤(a液)を塗布しつつ、同時に、新たな別の和紙製障子紙(B2)の裏面にメラミン、等の水性高分子型接着剤(b液)を塗布し、同時に貼り合わせて、そのままオーブンで一旦乾燥させ、その後、さらに熱ロールを通過させながら圧着し巻き取る(貼合品D)。
【0104】
その後、40〜50℃で24〜72時間エージングさせ完成する。
【0105】
水性系の接着剤なら40%以上の濃度のものができるので固形分で1〜5g/m
2の範囲で充分な接着力が得られる。
【0106】
合成樹脂製フィルムに塗布する、ウレタン樹脂系、アクリル樹脂系、塩酢ビニル樹脂系、あるいは、ポリエステル樹脂系の水性型接着剤は、たとえば、40〜45%濃度のものを5〜10g/m
2とし、和紙製障子紙の積層する面に塗布する、メラミン、イソシアネート、ヒドラジン、カルボジイミド、エポキシ、シランカップリング剤のいずれかの水性高分子型接着剤は、前記合成樹脂製フィルムに塗布される水性型接着剤の2〜10質量%になるように調整することができる。
【0107】
主剤と助剤を分離したことにより両基材の濡れ性を上げることができ少ない量の接着剤で貼り合せることができ目的を達成できる。
【0108】
図2は、この実施形態の障子紙の断面構造を説明するものである。
【0109】
図2(a)図示のように、合成樹脂製フィルムを間に挟んで、当該合成樹脂製フィルムの表面(
図2(a)における上側面)及び裏面(
図2(a)における下側面)にそれぞれ接着層を介在させて、和紙製の障子紙の裏側面が積層(接着)されている。
【0110】
図2(b)図示の構造は合成樹脂製フィルムの裏面(
図2(b)における下側面)に印刷が施されているものである。図示していないが、合成樹脂製フィルムの表面(
図2(b)における上側面)に印刷が施されている形態にすることもできる。
【0111】
図2(c)図示の構造は合成樹脂製フィルムの裏面(
図2(b)における下側面)に機能剤による塗工が施されているものである。図示していないが、合成樹脂製フィルムの表面(
図2(c)における上側面)に機能剤による塗工が施されている形態にすることもできる。
【0112】
いずれの形態であっても、
図2(a)、(b)、(c)における上下の和紙製の障子紙は裏面側が接着層を介して中間層であるフィルムに接着されるようになっている。そこで、この実施形態の障子紙は、見た目が伝統的な風合いのある障子紙となり、
図2(a)、(b)、(c)における上下方向のどちらから見ても障子紙の表面が見える、表裏がない障子紙になる。
【0113】
この実施形態によれば、紙の風合いを殺さないように接着し、巻癖の緩和、初期接着の向上、貼り替え時の剥がしやすさ、長期の寸法安定が得られる。
【0114】
この実施形態の障子紙は、障子の桟に貼るときにきれいに貼ることができる。
【0115】
特に、一枚貼りのときに簡単にきれいに張ることができる。
【0116】
従来から行われている、水溶性糊を用いた貼り付けや、アイロン貼りでも、簡単にきれいに張ることができる。
【0117】
なお、アイロン貼りに供される場合には、この実施形態の障子紙とした後、片面にアイロン用の塗料を塗布するか、押し出しで接着性樹脂で接着膜を作製したものを使用する。または、後から塗料塗布か接着性樹脂膜を形成してもよい。
【0118】
この実施形態の障子紙は、障子の桟に貼った後も長く初期の状態を維持できる。
【0119】
この実施形態の障子紙は、従来の抄き柄を印刷により再現できるものとなる。
【0120】
この実施形態の障子紙は、中間層を形成するフィルムに機能剤を塗工することにより新たな機能性障子紙となる。
【0121】
以下、本発明の実施例をいくつか説明するが、本発明は上述した実施形態及び以下の実施例に限定されることなく特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々に変更可能である。
【実施例1】
【0122】
(株)モルザ製の米坪27g/m
2の和紙製障子紙の表面に次のようにして前処理を行った。
【0123】
(株)三水のAL-8(アクリル)の4%液に(株)星光PMCのロジンサイズ液2%、日本酢ビ・ポバール(株)の完全ケン化PVA JF-10の2%溶液を混合して処理液を調製した。
【0124】
処理液を和紙製障子紙の表面にグラビアロールで15g/m
2になるように全面塗布し、98℃から100℃のオーブンで10秒ほど乾燥させて巻き取った。
【0125】
中間層を形成する合成樹脂製フィルムとして、フタムラ化学製のPETフィルム(両面コロナ処理品)12μを使用した。
【0126】
フタムラ化学製のPETフィルム(両面コロナ処理品)の片面にサイデン化学のサイビノールPZ15の40%液を10g/m
2塗工しつつ、和紙製障子紙の裏側にサイデン化学のエポキシE-106の5%溶液を3g/m
2塗布し、同時に貼り合せた。これを、オーブンに98℃で20秒入れ乾燥させ、そのあとすぐに90℃の熱ロールに圧着させて巻き取った。
【0127】
次に、フタムラ化学製のPETフィルム(両面コロナ処理品)の他方の面にサイデン化学のサイビノールPZ15の40%液を10g/m
2塗工しつつ、もう一枚の和紙製障子紙の裏側にサイデン化学のエポキシE-106の5%溶液を3g/m
2塗布し、同時に貼り合せた。これを、オーブンに98℃で20秒入れ乾燥させ、そのあとすぐに90℃の熱ロールに圧着させて巻き取った。
【0128】
こうして、両面共表の障子紙を完成させた。
【0129】
巻き取りのまま48〜72時間40℃から50℃の部屋に入れてエージングし、強固な接着をした一枚の障子紙で、寸法安定性の良いものを得ることができた。
【実施例2】
【0130】
実施例1で使用した合成樹脂製フィルムに替えて、実施例1で使用した合成樹脂製フィルム(フタムラ化学製のPETフィルム(両面コロナ処理品)12μ)にグラビア印刷で花柄をカラーで印刷したものを使用した。
【0131】
その他の点は実施例1と同様にして障子紙を製造した。
【0132】
障子紙のどちらの面からも透かし模様のようにきれいに柄が見えるようにできあがった。
【実施例3】
【0133】
実施例1の製造工程において、2回目の貼り合わせ工程で使用する和紙製障子紙として表面にアイロンで貼れる樹脂を塗布したものを使用して貼り合せを行った。
【0134】
この実施例で製造した障子紙では、片面側は、和紙製障子紙の表面になるが、その反対側の面は、和紙製障子紙の表面にアイロンで貼れる樹脂が塗工されている面になる。
【実施例4】
【0135】
実施例1〜3で調製した障子紙をそれぞれ市販されている障子紙のように直径5cm程度に巻いて準備し、1枚貼りの障子紙として、1間の障子桟に対してそれぞれを貼ってみた。
【0136】
従来から障子紙の貼りつけに使用されている水溶性糊を用いて、実施例1、実施例2の障子紙をそれぞれ貼った。
【0137】
障子の桟にエッジを合わせて障子紙を置き、片側の端に糊を付け端のみ接着させて位置決めした。残りの桟に糊を塗布し、全面に糊がついたところで障子紙を転がすように展開した。この時、長尺の物差しでおさえながら開いていくことで、簡単にスムースに作業を行うことができた。
【0138】
すべて接着した後、糊がある程度乾くまで待ってから、桟のエッジ部の不要部分をカッターで切落として貼りつけ完了とした。
【0139】
実施例1、2の障子紙のいずれもシワ、弛みがなくきれいに貼れた。
【0140】
実施例3の障子紙はアイロンで貼れるので、障子紙のエッジと桟のエッジを合わせ、アイロンで止め、障子紙を展開しながら順番にアイロンを当てながら接着した。
【0141】
貼り終わったら、桟の余分な部分をカッターで切り、アイロンを当てながら余分な紙のみを取りつつ、再度、接着部をおさえた。
【0142】
この実施例3の障子紙もきれいに貼れ、シワや弛みもなかった。
【0143】
(比較検討試験1)
市販の和紙製障子紙(検体(A))と、当該市販の和紙製障子紙に対して実施例1で説明した寸法安定化の前処理を行ったもの(検体(B))を準備した。
【0144】
日立製作所製の恒温恒湿槽EC−12HHPに検体(A)と検体(B)を入れ、湿度90%、温度30度に1時間入れた時の紙の寸法変化(1)と、さらにそれを湿度20%、温度10度に1時間入れた後の寸法変化を比較した。N数はそれぞれ100とした。結果は次の通りであった。
【0145】
スタート前(mm) (1) (2)
(A)縦 1000 1005 998
横 1000 1015 986
(B)縦 1000 1000 1000
横 1000 1000.5 1000
【0146】
この検討結果から寸法安定化の効果を確認することができた。
【0147】
(比較検討試験2)
実施例1、2で調製した障子紙と、実施例1、2の障子紙作製に使用した和紙製障子紙とを用い、環境試験により比較を行った。
【0148】
比較方法は、10cm角の障子桟を準備し、これに対して、比較対象の障子紙をそれぞれをでんぷん糊で接着させた。いずれの比較対象品もそれぞれ10個の検体を準備した。
【0149】
(株)日立製作所製の恒温恒湿槽EC-12HHPにすべての検体を入れ、プログラムNo.33 MIL-S-202F 106Dを選択し、設定された温度と湿度のサイクルテストを行った。
【0150】
具体的には温度が−10℃から65℃、湿度が0〜92%までをプログラムサイクルで252.5時間行った。
【0151】
テストが終了した時点で検体すべての状態を目視検査したところ、比較対象である実施例1、2の障子紙作製に使用した和紙製障子紙は10検体ともすべてたるんだ状態になっていた。
【0152】
一方、実施例1、2の検体はいずれも変化がなかった。
【0153】
この検討から実施例1、2の障子紙は長い間同じ形状を維持できることが確認できた。