【実施例1】
【0019】
以下、本発明の実施例1について
図1〜
図15に基づいて説明する。
車両用制御装置1は、運転者の筋活動に応じてアクセルペダル3の反力値を制御することにより、運転者に踏込速度に拘らず操作リニアリティを付与可能に構成されている。
図1に示すように、制御装置1は、ECU(Electronic Control Unit)2を備えている。ECU2は、CPU、ROM、RAM等からなる電子制御ユニットであり、ROMに記憶されているアプリケーションプログラムをRAMにロードし、CPUで実行することにより各種演算処理を行っている。
【0020】
ECU2は、アクセルペダル3の踏込又は踏戻操作量(以下、踏込量と略す)Sを検出する踏込量センサ4と、アクセルペダル3の踏込速度Vを検出する踏込速度センサ5(踏込速度検出手段)と、車両の走行速度を検出する速度センサ6と、車両に作用するヨーレートを検出するヨーレートセンサ7と、車両の走行加速度を検出する加速度センサ8と、運転者のシートポジションを検出するシート位置センサ9(シート位置検出手段)と、車両走行部10と、反力制御機構11と、ナビゲーションシステム12等に電気的に接続されている。
【0021】
図2に示すように、アクセルペダル3は、車体に対して回動可能に保持され、その踏込操作によって運転者によるエンジン出力の増減意図が入力される。
踏込量センサ4は、アクセルペダル3又は回転軸31に設けられ、その回動量からアクセルペダル3の踏込ストローク、所謂踏込量Sを検出する。踏込量センサ4で検出されたアクセルペダル3の踏込量Sは、ECU2に出力される。尚、運転者の踏込みによる踏力が作用しない場合、アクセルペダル3は、アクセルペダル3に連結されたリターンスプリング32によって踏込量Sが零である初期位置に戻るように付勢されている。
踏込速度センサ5は、アクセルペダル3の回転軸31に設けられ、その回転速度からアクセルペダル3の踏込速度Vを検出する。踏込速度センサ5で検出されたアクセルペダル3の踏込速度Vは、ECU2に出力される。
【0022】
シート位置センサ9は、シートクッションの中心位置からフロアパネルまでの上下(鉛直)方向の離隔距離をシート高さT(T1,T2,T3)として検出している(
図6参照)。また、このシート位置センサ9は、スライドレールの後端位置からシートクッションの中心位置までの前後(水平)方向の離隔距離をスライド量L(L1,L2,L3)として検出している(
図7参照)。シート位置センサ9で検出されたシート高さT及びスライド量Lは、ECU2に出力される。
速度センサ6、ヨーレートセンサ7、加速度センサ8は、各々の検出結果をECU2に出力している。
【0023】
車両走行部10は、車両の走行制御を実行するための駆動機構や操舵機構である。
この車両走行部10は、エンジン制御部、ステアリングアクチュエータ、ブレーキアクチュエータ、及びシフトアクチュエータ(何れも図示略)等によって構成されている。
車両走行部10は、ECU2からの出力信号に基づいて車両の走行制御を実行している。
【0024】
図2に示すように、反力制御機構11は、第1,第2摩擦部材41,42と、電磁式アクチュエータ43等を備えている。
第1摩擦部材41は回動軸31の一端部に固着され、第2摩擦部材42が第1摩擦部材41に臨む状態で配設されている。第2摩擦部材42は、回動軸31の軸心延長上に配設された保持軸44に対して、回転不能且つ軸心方向に相対移動可能に保持されている。
アクチュエータ43は、第1,第2摩擦部材41,42を圧接状態と離隔状態との間において相対位置関係を変更し、圧接時における圧接力を調整可能に構成されている。
【0025】
ナビゲーションシステム12は、車両の経路案内を行うシステムである。
図1に示すように、ナビゲーションシステム12には、車両の現在位置を検出するためのGPS受信部13が電気的に接続されている。GPS受信部13は、複数のGPS衛星からの信号を受信することで車両の現在位置を検出する。
また、ナビゲーションシステム12は、道路地図データを記憶した地図データベースと、交通規則データを記憶した交通規則データベースとを備えている。
ナビゲーションシステム12は、GPS受信部13による車両の現在位置データ、地図データベースの道路地図データ及び交通規則データベースの交通規則データを利用して運転者に目的地までの経路案内を行う。
これにより、ナビゲーションシステム12は、車両の現在位置データ、道路地図データ、及び交通規則データをECU2に出力する。
【0026】
次に、ECU2について説明する。
図1に示すように、ECU2は、走行制御部21と、記憶部22と、筋活動推定部23(筋活動推定手段)と、反力設定部24(反力設定手段)等を備えている。
走行制御部21は、アクセルペダル3の踏込量Sと速度センサ6によって検出された車速に基づいてエンジンの出力を制御すると共に車両走行状態とエンジンの運転状態とに基づいて変速機の変速比を選択可能に構成されている。
変速機で減速されたエンジンの出力はドライブシャフト(図示略)を介して駆動輪に伝達される。
【0027】
記憶部22は、運転者によるアクセルペダル3の踏込量Sと踏込速度Vとアクセルペダル3から運転者に作用する物理的な反力値に相当している反力Fとによって規定された三次元マップMを予め格納している。
図3に示すように、三次元マップMは、アクセルペダル3の踏込量S(Sa〜Sd)に相当するS軸(縦軸)と、アクセルペダル3の踏込速度Vに相当するV軸(横軸)と、アクセルペダル3を介して運転者に付与される反力F(Fa〜Ff)に相当するF軸(高さ軸)との3軸によって立体状に形成されている。
この三次元マップMの基本特性は、標準的な運転者を対象として形成され、この運転者による所定のアクセルペダル3の操作、所謂踏込及び踏戻動作(足関節の底屈及び背屈運動)において、二関節筋(例えば、腓腹筋等)と単関節筋(例えば、前脛骨筋やヒラメ筋等)とが所定のバランス範囲(例えば、二関節筋の寄与率が40%以上且つ60%未満)内で動作されることを前提条件として設定されている。尚、バランス範囲は、予め実験等により求めている。
【0028】
三次元マップMにおける反力Fと踏込量Sとの相関特性(以下、F−S特性という)において、踏込側特性は、踏込開始領域に相当する踏込開始から初期踏込量Saまでの初期往特性FA(FAa)と初期踏込量Saから最大踏込量Sbまでの主往特性FB(FBa〜FBf)とによって構成されている。また、踏戻側特性は、最大踏込量Sbから初期踏込量Saまでの主復特性FC(FCa〜FCf)と踏込終了領域に相当する初期踏込量Saから踏戻終了までの終期復特性FD(FDa)とによって構成されている。
尚、特段の説明がない場合、便宜上、踏込量S(Sa〜Sd)、反力F(Fa〜Ff)、特性FA(FAa),FB(FBa〜FBf),FC(FCa〜FCf),FD(FDa)を夫々代表する符号として踏込量S、反力F、特性FA,FB,FC,FDを用いて以下の説明を行う。
【0029】
図3,
図4(a)に示すように、初期往特性FAは、踏込量Sの増加に応じて線形状に増加するように設定され、主往特性FBは、踏込量Sの増加に応じて増加すると共に下方に向かって突出するように設定されている。
復特性FCは、踏込量Sの減少に応じて線形状に減少するように設定され、終期復特性FDは、主復特性FCよりも大きい減少傾向で線形状に減少するように設定されている。
【0030】
運転者の感覚として知覚される反力知覚量P(感覚強さ)は反力F(刺激強さ)の対数に比例する(Weber-Fechnerの法則)ため、次式(1)によって所定の傾向を備えた反力知覚量Pに基づいて反力Fの値や傾向を求めることができる。
P=klog(F)+K …(1)
尚、Kは積分定数である。
【0031】
図5(a)に示すように、反力知覚量Pと反力Fとの相関特性(以下、P−F特性という)を上方凸状の対数関数形状に設定することにより、運転者に対して破線で示す線形連続性を有する反力知覚量Pを知覚(体感)させることができる。それ故、
図4(a)に示すように、低踏込速度におけるF−S特性において、初期踏込量Sa且つ反力Faの位置から最大踏込量Sb且つ反力Fbの位置に相当する主往特性FBは、
図5(a)に示す上方凸状の対数関数形状を反転させた下方凸状の指数関数形状に設定されている。
この主往特性FBは、初期踏込量Saと最大踏込量Sbの中間点である中間踏込量Sc(反力Fc)に接近する程、主往特性FBの接線角度の変化率が小さくなるように設定されている。
【0032】
また、三次元マップMは、アクセルペダル3の踏込速度Vが大きい程主往特性FBの非線形度合いが小さくなるように設定されている。
図5(b)に示すように、高踏込速度領域のP−F特性は、
図5(a)に示す低踏込速度領域のP−F特性に比べてP−F特性上の接線角度の変化率が小さくなるように形成された上方凸状の対数関数形状に設定されている。それ故、
図4(b)に示すように、高踏込速度におけるF−S特性において、初期踏込量Sa且つ反力Fdの位置から最大踏込量Sb且つ反力Feの位置に相当する主往特性FBaは、
図4(a)に示す主往特性FBよりも接線角度の変化率が小さい下方凸状の指数関数形状に設定されている。
これは、刺激認識能力が低い高踏込速度領域よりも刺激認識能力が高い低踏込速度領域において、運転者に線形連続性を強く知覚させることにより、運転者に踏込速度Vに拘らず操作リニアリティを感覚的及び経験的に体感させるためである。
また、主往特性FBaは、主往特性FBと同様に、初期踏込量Saと最大踏込量Sbの中間点である中間踏込量Sc(反力Ff)に接近する程、主往特性FBaの接線角度の変化率が小さくなるように設定されている。
尚、前述した接線角度の変化率に代えて、特定領域における曲率半径の逆数を用いて非線形度合を調整しても良い。
【0033】
次に、筋活動推定部23について説明する。
筋活動推定部23は、運転者の姿勢状況に基づいてアクセルペダル3の操作に対する二関節筋の寄与率を推定するように構成されている。
二関節筋は、単関節筋に比べてエネルギー効率が高く、また、動作速度も速い特性を有している。そこで、アクセルペダル3を操作する際、運転者の運転姿勢が、二関節筋の寄与率が小さくなる姿勢状況の場合、アクセルペダル3の反力Fを高めることにより、足関節周りの骨格筋のうち二関節筋の活動比率を高め、運転者によるアクセルペダル3の踏込及び踏戻動作において二関節筋の筋活動に対する寄与率を高くしている。
この筋活動推定部23は、運転者の姿勢状況をシート位置センサ9によって検出されたシートポジションをパラメータとして判定している。
【0034】
図6(a)に示すように、運転者によって調節されたシート高さTがT1の場合、運転者の膝が屈曲されて膝の角度θ1が小さくなるため、足関節の屈曲及び背屈運動における二関節筋の寄与率が減少する(単関節筋の寄与率が増加する)。
図6(b)に示すように、運転者によって調節されたシート高さTがT2(T2<T1)の場合、運転者の膝の角度θ2が膝角度θ1よりも大きいため、膝角度θ2における二関節筋の寄与率は、膝角度θ1における二関節筋の寄与率よりも増加する。
図6(c)に示すように、運転者によって調節されたシート高さTがT3(T3<T2)の場合、運転者の膝の角度θ3が膝角度θ2よりも大きいため、膝角度θ3における二関節筋の寄与率は、膝角度θ2における二関節筋の寄与率よりも増加する。
これにより、シート高さTが低い程、二関節筋の寄与率の増加を推定している。
【0035】
図7(a)に示すように、運転者によって調節されたスライド量LがL1(女性や体格が小柄)の場合、運転者の膝角度θ4が小さくなるため、足関節の屈曲及び背屈運動における二関節筋の寄与率が減少する。
図7(b)に示すように、運転者によって調節されたスライド量LがL2(体格が標準)(L2<L1)の場合、膝角度θ5が膝角度θ4よりも大きくなるため、膝角度θ5における二関節筋の寄与率は、膝角度θ4における二関節筋の寄与率よりも増加する。
図7(c)に示すように、運転者によって調節されたスライド量LがL3(体格が大柄)(L3<L2)の場合、膝角度θ6が膝角度θ5よりも大きくなるため、膝角度θ6における二関節筋の寄与率は、膝角度θ5における二関節筋の寄与率よりも増加する。
これにより、スライド量Lが短い程、二関節筋の寄与率の増加を推定している。
【0036】
筋活動推定部23は、シート高さTとスライド量Lを加算した加算値T+Lが閾値Aよりも小さいとき、二関節筋の寄与率が大になり、加算値T+Lが閾値A以上且つ閾値B(A<B)以下のとき、二関節筋の寄与率が中になり、加算値T+Lが閾値Bよりも大きいとき、二関節筋の寄与率が小になることを夫々推定している。
尚、閾値A,Bは、人間の関節粘弾性特性に基づいて予め実験等により求めている。
【0037】
また、筋活動推定部23は、運転中の走行状況、具体的には、アクセルペダル3の踏込初期の踏込速度Vに基づいて活動主体とすべき人体における下肢の主働筋が単関節筋と二関節筋の何れであるか推定するように構成されている。
急加速(例えば、踏込速度Vが大きい1sec未満の加速操作)のとき、動作速度が速く且つ操作力が大きい二関節筋が主働筋に適しており、中加速(例えば、踏込速度Vが急加速よりも小さく且つ1〜3secの加速操作)のとき、単関節筋と二関節筋のバランスがとれた状態(バランス範囲)が適しており、緩加速(例えば、踏込速度Vが中加速よりも小さく且つ3sec以上の加速操作)のとき、踏込及び踏戻動作の操作精度が高い単関節筋が主働筋に適している。そこで、アクセルペダル3を操作する際、急加速操作が検出された場合、二関節筋を活動主体とすべき主働筋、中加速操作が検出された場合、単関節筋と二関節筋が協働すべき状況、緩加速操作が検出された場合、単関節筋を活動主体とすべき主働筋として推定している。
この筋活動推定部23は、運転状況を踏込速度センサ5によって検出された踏込速度V及びアクセルペダル3の操作時間によって判定している。
【0038】
次に、反力設定部24について説明する。
反力設定部24は、主往特性FBにおける反力Fを筋活動推定部23によって推定された二関節筋の筋活動に対する寄与率に基づき補正するように構成されている。
この反力設定部24は、推定された二関節筋の寄与率に応じて主往特性FBの反力Fを補正するための姿勢補正係数K1を夫々設定している。
本実施例では、二関節筋の寄与率が大のとき、二関節筋が十分活動しているため、基本特性を維持するように姿勢補正係数K1を零に設定し、二関節筋の寄与率が中のとき、二関節筋の寄与率を高めるため、反力Fを増加するように姿勢補正係数K1をK1a(0<K1a)に設定し、二関節筋の寄与率が小のとき、二関節筋の寄与率を更に高めるため、姿勢補正係数K1をK1aよりも大きい値のK1bに設定している。
【0039】
反力設定部24は、主往特性FBの反力Fを筋活動推定部23によって推定された主働筋に基づき補正するように構成されている。
この反力設定部24は、推定された活動主体とすべき主働筋に応じて主往特性FBの反力Fを補正するための主往特性補正係数K2を夫々設定している。
本実施例では、踏込速度Vが0以下のとき、基本特性を維持するように主往特性補正係数K2を零に設定し、踏込速度Vが緩加速のとき、主往特性FBの反力Fを減少するように主往特性補正係数K2をK2a(K2a<0)に設定し、前操作の主働筋が二関節筋で且つ踏込速度Vが中加速のとき、反力Fを減少するように主往特性補正係数K2をK2b(K2a<K2b<0)に設定し、前操作の主働筋が単関節筋で且つ踏込速度Vが中加速のとき、反力Fを増加するように主往特性補正係数K2をK2c(0<Kc)に設定し、踏込速度Vが急加速のとき、反力Fを更に増加するように主往特性補正係数K2をK2cよりも大きい値のK2dに設定している。
【0040】
主往特性補正係数K2aは、二関節筋の寄与率を前述したバランス範囲の下限値に相当する略40%未満にするため、基本特性における主往特性FBの反力Fを単関節筋の寄与率が略60%以上の所定の反力Fに補正する係数である。主往特性補正係数K2b,K2cは、基本特性における主往特性FBの反力Fを二関節筋の寄与率がバランス範囲(二関節筋の寄与率が40%以上且つ60%未満)内の所定の反力Fに補正する係数である。主往特性補正係数K2dは、二関節筋の寄与率をバランス範囲の上限値に相当する略60%よりも大きくするため、基本特性における主往特性FBの反力Fを二関節筋の寄与率が略60%以上の所定の反力Fに補正する係数である。尚、主往特性補正係数K2a〜K2dは、必ずしもバランス範囲の上限値及び下限値に基づき設定する必要はなく、設計条件に基づき任意に設定しても良い。
【0041】
また、反力設定部24は、車両発進時、急加速操作が行われた場合、初期踏込量Saよりも小さい領域の初期往特性FA及び終期復特性FDを所定量反力増加方向に補正した初期特性(初期往特性FAa及び終期復特性FDa)を演算し、この初期特性に基づいて初期特性補正を行っている。
この反力設定部24は、初期特性補正を行う場合、次式(2)に基づき、主往特性FB及び主復特性FCについてF−S特性全体をオフセット的に反力増加方向に補正している。
Fx=(1+α×K1+β×K2)×F …(2)
Fxは補正後の反力値、α,βは係数である。
【0042】
反力設定部24は、初期往特性補正を行わない(急加速発進時以外)場合、次式(3)に基づき、運転状況に応じてF−S特性を補正している。
Fx=F+(γ×K1+δ×K2)×S …(3)
γ,δは係数である。
この反力設定部24は、反力制御機構11に補正されたF−S特性に基づく反力Fに関する指令信号を出力する。
【0043】
次に、
図8〜
図10のフローチャートに基づいて、制御装置1の制御処理手順について説明する。
尚、Si(i=1,2…)は、各処理のためのステップを示す。
図8のフローチャートに示すように、まず、S1にて、イグニッション(Ig)がオン操作されたか否か判定する。
S1の判定の結果、イグニッションがオン操作された場合、各種センサ4〜9及びナビゲーションシステム12から入力された情報を読み込み(S2)、S3に移行する。
S3では、車両が発進時か否か判定する。
S3の判定の結果、車両が発進時の場合、姿勢補正係数K1を演算し(S4)、S5に移行する。
【0044】
S5では、運転者が急加速操作による発進を行ったか否か判定する。
S5の判定の結果、運転者が急加速操作を行った場合、初期往特性FA及び終期復特性FDについて初期特性を演算し(S6)、S7に移行する。
S7では、主往特性補正係数K2を演算し、S8に移行する。
S8では、初期特性補正の有無を判定する。
S8の判定の結果、初期特性補正された場合、式(2)に基づき補正後の反力Fxを演算し(S9)、S10に移行する。
S10では、補正後の反力Fxを反映させたF−S特性に基づいて反力制御機構11を作動させて、リターンする。
【0045】
S8の判定の結果、初期特性補正されていない場合、式(3)に基づき補正後の反力Fxを演算し(S11)、S10に移行する。
S5の判定の結果、運転者が急加速操作を行わっていない場合、S7に移行する。
S3の判定の結果、車両が発進時ではない場合、S12に移行し、主往特性FBに相当する領域を走行しているか否か判定する。
S12の判定の結果、主往特性FBに相当する領域を走行している場合、S7に移行する。S12の判定の結果、主往特性FBに相当する領域を走行していない場合、リターンする。
【0046】
次に、S4の姿勢補正係数演算行程について説明する。
図9のフローチャートに示すように、姿勢補正係数演算処理では、まず、シート高さTとスライド量Lを加算した加算値T+Lが閾値A以上か否か判定する(S21)。
S21の判定の結果、加算値T+Lが閾値A以上の場合、S22に移行し、加算値T+Lが閾値B以下か否か判定する。
【0047】
S22の判定の結果、加算値T+Lが閾値B以下の場合、二関節筋の筋活動に対する寄与率が低い姿勢状況であるため、姿勢補正係数K1にK1aを代入して(S23)、終了する。
S22の判定の結果、加算値T+Lが閾値Bよりも大きい場合、二関節筋の筋活動に対する寄与率が更に低い姿勢状況であるため、姿勢補正係数K1にK1bを代入して(S24)、終了する。
S21の判定の結果、加算値T+Lが閾値A未満の場合、二関節筋の筋活動に対する寄与率が高い姿勢状況であるため、姿勢補正係数K1に零を代入して(S24)、終了する。
【0048】
次に、S7の主往特性補正係数演算行程について説明する。
図10のフローチャートに示すように、主往特性補正係数演算処理では、まず、アクセルペダル3の踏込速度Vが零よりも大きい(踏込操作有り)か否か判定する(S31)。
S31の判定の結果、アクセルペダル3の踏込速度Vが零よりも大きい場合、S32に移行し、緩加速か否か判定する。
S32の判定の結果、緩加速の場合、動作の操作精度を高めるため、主往特性補正係数K2にK2aを代入して(S33)、終了する。
【0049】
S32の判定の結果、緩加速ではない場合、S34に移行し、中加速か否か判定する。
S34の判定の結果、中加速の場合、S35に移行し、前操作の主働筋が二関節筋であるか否か判定する。
S35の判定の結果、前操作の主働筋が二関節筋である場合、二関節筋主動の状態からバランス範囲内の状態に補正するため、主往特性補正係数K2にK2bを代入して(S36)、終了する。
【0050】
S35の判定の結果、前操作の主働筋が二関節筋ではない場合、単関節優位の状態又はバランス状態からバランス範囲内の状態に補正するため、主往特性補正係数K2にK2cを代入して(S37)、終了する。
S34の判定の結果、中加速ではない場合、急加速であるため、動作速度を速く且つ操作力を大きくするために主往特性補正係数K2にK2dを代入して(S37)、終了する。
S31の判定の結果、アクセルペダル3の踏込速度Vが零以下の場合、主往特性補正係数K2に零を代入して(S39)、終了する。
【0051】
図11〜
図15に基づき、各操作時のF−S特性を具体的に説明する。
尚、
図11〜
図15では、理解の容易化を図るため、下方凸状である主往特性FBを便宜的に主復特性FCに平行な線形状に表示し、F−S特性をモデル化して示している。
図11に示すように、発進且つ急加速操作時、活動すべき主働筋が二関節筋であると推定されるため、初期往特性FA及び終期復特性FDは、各々が上方に移行された初期往特性FAb及び終期復特性FDbに初期特性補正され、主往特性FB及び主復特性FCも同様に上方に移行された主往特性FBb及び主復特性FCbに補正されている。これにより、補正前のF−S特性全体を上方にオフセット的に移行させることにより、主往特性FBの反力Fを二関節筋の寄与率が60%以上の反力Fxからなる主往特性FBbに補正している。また、推定された二関節筋の筋活動に対する寄与率が低い姿勢状況の場合、オフセット量が更に増加される。
【0052】
図12に示すように、踏込量Sdの地点から急加速操作(例えば、高速道路の本線合流や割り込み等)した時、活動すべき主働筋が二関節筋であると推定されるため、主往特性FBcは踏込量Sdから主往特性FBよりも傾斜角度が大きく且つ反力値が高くなるように補正されている。主復特性FCcも主往特性FBcと同様に補正されている。これにより、主往特性FBの反力Fを二関節筋の寄与率が60%以上の反力Fxからなる主往特性FBcに補正している。また、推定された二関節筋の筋活動に対する寄与率が低い姿勢状況の場合、更に踏込量Sdの地点からの傾斜角度及び反力値の増加傾向が拡大される。
【0053】
図13に示すように、踏込量Sdの地点から緩加速操作(例えば、平坦路走行等)した時、活動すべき主働筋が単関節筋であると推定されるため、主往特性FBdは踏込量Sdから主往特性FBよりも傾斜角度が小さく且つ反力値が低くなるように補正されている。主復特性FCdも主往特性FBdと同様に補正されている。これにより、主往特性FBの反力Fを二関節筋の寄与率が40%未満の反力Fxからなる主往特性FBdに補正している。また、推定された二関節筋の筋活動に対する寄与率が低い姿勢状況の場合、踏込量Sdの地点からの傾斜角度及び反力値の減少傾向が縮小される。
補正前の主往特性FBと補正後の主往特性FBc(主往特性FBd)の傾斜角度の差が所定の閾値以上の場合、運転者が特性変更に伴う違和感を感じるため、補正前の主往特性FBの終端(踏込量Sdの直前領域)と補正後の主往特性FBcの始端(踏込量Sdの直後領域)を滑らかに接続する補正を行っている。
【0054】
図14に示すように、主働筋が二関節筋である操作中に中加速操作(例えば、高速道路の加速車線から平坦路に移行等)した時、二関節筋と単関節筋の協働状態が適していると推定されるため、主往特性FBeは踏込量Sdから主往特性FBよりも傾斜角度(接線角度)が小さくなるように補正されている。主復特性FCeも主往特性FBeと同様に補正されている。また、推定された二関節筋の筋活動に対する寄与率が低い姿勢状況の場合、踏込量Sdの地点からの傾斜角度の減少傾向が縮小される。
図15に示すように、主働筋が単関節筋である操作中に中加速操作(平坦路から高速道路の加速車線に移行等)した時、二関節筋と単関節筋の協働状態が適していると推定されるため、主往特性FBfは踏込量Sdから主往特性FBよりも傾斜角度が大きくなるように補正されている。主復特性FCfも主往特性FBfと同様に補正されている。また、推定された二関節筋の筋活動に対する寄与率が低い姿勢状況の場合、踏込量Sdの地点からの傾斜角度の増加傾向が拡大される。尚、中加速操作の場合、姿勢補正を含めて補正完了後の反力Fxがバランス範囲内に収まるように上限値及び下限値が調整されている。
【0055】
次に、上記車両用制御装置1の作用、効果について説明する。
本制御装置1によれば、この車両用制御装置1では、運転者の姿勢状況に基づいてアクセルペダル3の操作に対する二関節筋の寄与率を推定する筋活動推定部23を備えているため、運転者の膝角度θを介してアクセルペダル3操作に関与する二関節筋の寄与率を推定することができる。反力設定部24が、主往特性FBの傾斜角度又は主往特性の反力Fを筋活動推定部23によって推定されたアクセルペダル3の操作に対する二関節筋の寄与率に基づき補正するため、アクセルペダル3の反力Fを介してアクセルペダル3操作に関与する二関節筋の寄与率を増加することができ、運転者のアクセルペダル3の操作性を向上することができる。
【0056】
反力設定部24は、アクセルペダル3の操作に対する二関節筋の寄与率が小さい程主往特性FBを反力増加方向に補正するため、寄与率に応じて二関節筋の活動を誘発することができ、アクセルペダル3操作に関与する二関節筋の寄与率を増加することができる。
【0057】
反力設定部24は、主往特性FBを含むF−S特性全体をオフセット的に補正するため、制御処理上、簡単な構成で、二関節筋の寄与率を調整することができる。
【0058】
運転者のシート位置を検出するシート位置センサ9を備え、筋活動推定部23は、シート位置センサ9によって検出されたシート位置によってアクセルペダル3の操作に対する二関節筋の寄与率を推定するため、シート位置をパラメータとして運転者の姿勢状況を判定することができ、アクセルペダル3の操作に対する二関節筋の寄与率を推定することができる。
【0059】
次に、前記実施形態を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施形態においては、アクチュエータと摩擦部材とにより構成した反力制御機構を用いた例を説明したが、反力モータを備えたアクセルバイワイヤ機構を用いても良い。
【0060】
2〕前記実施形態においては、姿勢状況をシート高さとスライド量からなるシートポジションを介して推定した例を説明したが、何れか一方のみを用いて推定しても良い。また、シートポジションに加えて、車両のボディ形状(セダン、スポーツ、SUV等)を推定要件としても良い。この場合、SUVは膝角度が小、セダンは膝角度が中、スポーツは膝角度が大として分類する。
【0061】
3〕前記実施形態においては、急加速発進時、F−S特性全体をオフセット的に反力増加方向に補正した例を説明したが、初期往特性と終期復特性のみ増加補正しても良い。
また、初期往特性と終期復特性のみ増加補正すると共に、踏込量中盤まで二関節筋優位になるよう補正し、中盤以降単関節筋優位になるよう補正することも可能である。
【0062】
4〕前記実施形態においては、膝角度が大中小の3通りに区分した例を説明したが、大小2通りの区分でも良く、4通り以上の区分や、膝角度に応じたリニアな補正を行うことも可能である。また、姿勢状況に応じて傾斜角度及び反力値を増加する例を説明したが、膝角度が大き過ぎる運転者の場合、若干単関節筋の寄与率を増加するため、二関節筋の寄与率を減少させても良い。
【0063】
5〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加した形態や各実施形態を組み合わせた形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。