【実施例】
【0069】
以下、本発明を試験例に基づいてより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の試験例に限定されるものではない。
【0070】
〔試験例1:FENタンパク質の調製〕
表1に示す様々な種のフラップエンドヌクレアーゼ(FEN)タンパク質をコードする遺伝子をPCR法又は化学合成により取得し、取得した遺伝子を大腸菌用の発現ベクター(pET21a)に組み換えた。化学合成により取得した遺伝子の場合は、C末端にヒスチジン6残基を付与するように遺伝子を合成した。なお、試験No.1(略称Afu)のFENタンパク質は、従来ICA法に使用されていた酵素である(特表2001−518805号公報参照)。
【0071】
【表1】
【0072】
構築した発現ベクターで大腸菌(BL21−CodonPlus(DE3))を形質転換した。形質転換後の大腸菌を100μg/mLのアンピシリン及び35μg/mLのクロラムフェニコールを含むLB培地に播種し、OD
600が約0.5になるまで37℃で培養した。次いで、1M IPTGを終濃度が0.5mMとなるように添加し、25℃で16時間培養して、FENタンパク質を大量発現させた。
【0073】
培養した大腸菌(培地1L)を遠心分離により回収し、緩衝液(25mL)に再懸濁した。再懸濁した大腸菌を超音波破砕した後、遠心分離して上清を回収した。次いで、回収した上清を60〜80℃で20分間加熱した後、遠心分離して上清を回収した。次いで、回収した上清にポリエチレンイミンを添加した後、遠心分離して上清を回収した。回収した上清に硫酸アンモニウムを80%飽和となるように添加し、形成された沈殿を回収した。得られた沈殿を硫酸アンモニウムを含む緩衝液に再懸濁し、不溶物を除去した後、疎水性相互作用クロマトグラフィーにより分画し、目的とするFENタンパク質を含む画分を回収した。回収した画分を緩衝液で透析した後、FENタンパク質をヘパリンアフィニティクロマトグラフィーにより更に精製した。C末端にヒスチジン残基を有するタンパク質の場合は、培養した大腸菌(培地1L)を遠心分離により回収し、緩衝液(25mL)に再懸濁した。再懸濁した大腸菌を超音波破砕した後、遠心分離して上清を回収した。次いで、回収した上清を60〜80℃で20分間加熱した後、遠心分離して上清を回収した。次いで、回収した上清をTALONメタルアフィニティーレジン(クロンテック社)に添加し、イミダゾールを含む緩衝液を用いて、固定化金属アフィニティークロマトグラフィーにより分画し、目的とするFENタンパク質を含む画分を回収した。
【0074】
なお、試験No.7(略称Sso)及び試験No.8(略称Sto)のFENタンパク質は、上記の精製過程において凝集沈殿してしまい、精製ができなかったため、以降の検討から除外した。
【0075】
精製された各FENタンパク質は、紫外線吸収を測定し、波長280nmのモル吸光係数より濃度を算出した。また、精製された各FENタンパク質をSDS−PAGEで解析したところ、予想されるサイズの単一バンドが確認された。また、一部マイナーバンドが検出されるものもあったが、非特異的なヌクレアーゼ活性がないことを確認した。
【0076】
〔試験例2:フラップ切断活性の評価〕
試験例1で精製したFENタンパク質のフラップ切断活性を評価した。開裂構造は、標的核酸(5’−GGTGATCGTTCGCTACATGTCGTCAGGATTCCAGGCAG−3’:配列番号1)、第一核酸(5’−FITC−AGACACATGGTATGTAGCGAACGATCACC−3’:配列番号2)及び第二核酸(5’−CTGCCTGGAATCCTGACGAC−3’:配列番号3)により形成した。当該開裂構造では、第一核酸の5’側の部分配列(5’端から下線を付したTまでの11塩基)がフラップとして1本鎖で突き出している。
【0077】
切断反応は、50mM Tris−HCl(pH7.6)、2.5mM MgCl
2、10nM 基質DNA(上記の標的核酸、第一核酸及び第二核酸の等モル混合物)、0.5μM FENタンパク質の組成で反応溶液を調製し、当該反応溶液を55℃で10分間インキュベートすることで行った。
【0078】
反応終了後、8M尿素を含む12%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動した。次いで、イメージアナライザ(Typhoon Trio+,GE Healthcare社製)を用いて、未切断の開裂構造(38塩基の位置のバンド)及び切断されたフラップ(11塩基の位置のバンド)の蛍光強度を測定した。測定された蛍光強度から、下記式に従って、フラップ切断活性を算出した。結果を表2に示す。
フラップ切断活性=(11塩基の位置のバンドの蛍光強度)/{(11塩基の位置のバンドの蛍光強度)+(38塩基の位置のバンドの蛍光強度)}×100(%)
【0079】
【表2】
【0080】
表2に示すとおり、試験No.13(略称Pogun)及び試験No.15(略称Clagu)以外のFENタンパク質には、充分なフラップ切断活性が認められた。
【0081】
〔試験例3:2段階フラップ切断活性の評価〕
試験例2でフラップ切断活性が認められたFENタンパク質に対し、ICA法で通常採用されている2段階のフラップ切断反応におけるフラップ切断活性を評価した。評価系の概要は
図2に示すとおりである。
図2に示す評価系は、アレルプローブを蛍光標識することで、FENタンパク質による1段階目のフラップ切断反応(第一開裂構造の第一フラップを切断する反応)を検出可能にした点以外は、ICA法で一般に用いられる反応系と同等である。
【0082】
図2に示す評価系では、標的核酸(塩基配列:5’−GGTGATCGTTCGCTACATGTCGTCAGGATTCCAGGCAG−3’:配列番号4)と、第一核酸及び第二核酸にそれぞれ相当するアレルプローブ(塩基配列:5’−FAM−AGACACATGGTATGTAGCGAACGATCACC−BHQ1−3’:配列番号5)及びインベーダーオリゴヌクレオチド(塩基配列:5’−CTGCCTGGAATCCTGACGAC−3’:配列番号6)とから、第一開裂構造が形成される。アレルプローブの5’端及び3’端には、それぞれ蛍光分子(FAM)及び消光分子(BHQ1:チミン残基にブラックホールクエンチャーが修飾されたもの。)が結合されており、FENタンパク質により第一フラップが切断されると(1段階目のフラップ切断反応)、FAMの緑色蛍光が検出されるようになる。切断された第一フラップは、リンカー分子(ここでは、検出用核酸の塩基配列の一部)によって結合した第三核酸及び第四核酸に相当する検出用核酸(塩基配列:5’−RedmondRed−TCT−EclipseQuencher−TCGGCCTTTTGGCCGAGAGACTCCGCGTCCGT−3’:配列番号7)と第二開裂構造を形成する。検出用核酸の5’端には蛍光分子(RedmondRED)が結合されており、検出用核酸の5’末端から3残基目と4残基目の間には、消光分子(Eclipse Quencher)が挿入されており、FENタンパク質により第二フラップが切断されると(2段階目のフラップ切断反応)RedmondREDの赤色蛍光が検出されるようになる。
【0083】
試験No.1(略称Afu)、試験No.3(略称Mth)、試験No.4(略称Pab)及び試験No.6(略称Tko)のFENタンパク質に対して、2段階のフラップ切断反応を評価した。2段階のフラップ切断反応は、1μM アレルプローブ(第一核酸)、1μM インベーダーオリゴヌクレオチド(第二核酸)、4μM 検出用核酸(第三核酸及び第四核酸)、50mM Tris−HCl(pH8.5)、0.05v/v% Tween20、20mM MgCl
2、0.086mg/mL又は0.1mg/mL FENタンパク質、0M、1.5pM、100nM又は1μM 標的核酸の組成で反応溶液を調製し、LightCycler480(登録商標)(Roche Diagnostics製)を使用してリアルタイムで蛍光強度を測定しながら、65℃で60分間インキュベートすることで行った。
【0084】
蛍光強度のリアルタイム測定の結果の一例を
図3に示す。
図3は、試験No.6(略称Tko)のFENタンパク質を使用したときの測定結果である。
図3(A)は、緑色蛍光(遊離した第一フラップからの蛍光)の測定結果を示すグラフである。
図3(B)は、赤色蛍光(遊離した第二フラップからの蛍光)の測定結果を示すグラフである。
【0085】
図3に示すとおり、標的核酸の濃度に応じて、緑色蛍光及び赤色蛍光共に増加する傾向が確認できる。なお、標的核酸の濃度が100nM及び1μMの場合は、標的核酸濃度が高いため、蛍光強度が飽和していると考えられる。また、標的核酸の濃度が1.5pMの場合、緑色蛍光と比べて赤色蛍光の方がバックグラウンド(標的核酸の濃度が0Mの場合)との差が大きくなっているが、これは、遊離した第一フラップが繰り返し検出用核酸と第二開裂構造を形成することによりシグナル(遊離した第二フラップ)の増幅が生じているためである。
【0086】
反応開始から30分後の時点での標的核酸の濃度が1.5pMの場合の赤色蛍光強度(シグナル)と標的核酸の濃度が0Mの場合の赤色蛍光強度(ノイズ)との比からS/N比を算出した。結果を表3に示す。
【0087】
【表3】
【0088】
表3に示すとおり、試験No.3(略称Mth)、試験No.4(略称Pab)及び試験No.6(略称Tko)のFENタンパク質は、従来使用されていた試験No.1(略称Afu)のFENタンパク質よりも高いS/N比を示した。
【0089】
上記以外のFENタンパク質及び試験No.6(略称Tko)のFENタンパク質に対して、以下の条件で2段階のフラップ切断反応を評価した。2段階のフラップ切断反応は、1μM アレルプローブ(第一核酸)、1μM インベーダーオリゴヌクレオチド(第二核酸)、2μM 検出用核酸(第三核酸及び第四核酸)、50mM Tris−HCl(pH8.5)、0.05v/v% Tween20、2.5mM MgCl
2、1.16μM(試験No.10のみ)又は7.74μM FENタンパク質、0M、1.5pM、30pM又は100pM 標的核酸の組成で反応溶液を調製し、LightCycler480(登録商標)(Roche Diagnostics製)を使用してリアルタイムで蛍光強度を測定しながら、65℃で60分間インキュベートすることで行った。
【0090】
反応開始から30分後の時点での標的核酸の濃度が1.5pMの場合の赤色蛍光強度(シグナル)と標的核酸の濃度が0Mの場合の赤色蛍光強度(ノイズ)との比からS/N比を算出した。結果を表4に示す。
【0091】
【表4】
【0092】
試験No.9〜試験No.21のFENタンパク質には、高いS/N比を示すものはなかった。
【0093】
〔試験例4:フラップ切断反応の反応条件の検討〕
試験No.3(略称Mth)及び試験No.6(略称Tko)のFENタンパク質を使用して、試験例3と同様の評価系で、フラップ切断反応の反応条件の検討を行った。
【0094】
<pH>
反応液組成は、pHをpH7.5、pH8.0、pH8.5又はpH9.0に調整した50mM Tris−HClをベースに、1μM アレルプローブ(第一核酸)、1μM インベーダーオリゴヌクレオチド(第二核酸)、2μM 検出用核酸(第三核酸及び第四核酸)、0.05v/v% Tween20、2.5mM MgCl
2、0.5μM FENタンパク質、0M、100pM又は1nM 標的核酸を含む組成とした。反応液量は、10μLとした。反応溶液を調製した後、LightCycler480(登録商標)(Roche Diagnostics製)を使用してリアルタイムで蛍光強度を測定しながら、67℃で60分間インキュベートしてフラップ切断反応を行った。なお、pHの検討には、試験No.6(略称Tko)のFENタンパク質のみを使用した。
【0095】
反応開始から30分後の時点での標的核酸の濃度が100pMの場合の赤色蛍光強度(シグナル)と標的核酸の濃度が0Mの場合の赤色蛍光強度(ノイズ)との比からS/N比を算出した。結果を表5に示す。また、
図4に蛍光強度のリアルタイム測定の結果(グラフ)を示す。グラフの縦軸は蛍光強度を示し、横軸は反応開始からの時間(分)を示す、
図4(A)〜(D)は、試験No.6(略称Tko)のFENタンパク質を使用してpH7.5、pH8.0、pH8.5又はpH9.0で測定した結果を示す。
【0096】
【表5】
【0097】
図4及び表5に示すとおり、反応液のpHが7.5以上9.0以下の範囲内で良好なS/N比が認められた。また、pH8.5付近では、良好なS/N比に加えて、赤色蛍光強度の立ち上がりがより早くなる効果が認められた。赤色蛍光強度の立ち上がりが早いほど、より短時間での検出が可能になる。
【0098】
<温度>
反応液組成は、1μM アレルプローブ(第一核酸)、1μM インベーダーオリゴヌクレオチド(第二核酸)、2μM 検出用核酸(第三核酸及び第四核酸)、50mM Tris−HCl(pH8.5)、0.05v/v% Tween20、2.5mM MgCl
2、0.5μM FENタンパク質、0M、30pM又は1nM 標的核酸とした。反応液量は、10μLとした。反応溶液を調製した後、LightCycler480(登録商標)(Roche Diagnostics製)を使用してリアルタイムで蛍光強度を測定しながら、55℃、60℃、65℃、67℃又は70℃で60分間インキュベートしてフラップ切断反応を行った。
【0099】
反応開始から30分後の時点での標的核酸の濃度が30pM又は1nMの場合の赤色蛍光強度(シグナル)と標的核酸の濃度が0Mの場合の赤色蛍光強度(ノイズ)との比からS/N比を算出した。結果を表6に示す。また、
図5〜
図8に蛍光強度のリアルタイム測定の結果(グラフ)を示す。グラフの縦軸は蛍光強度を示し、横軸は反応開始からの時間(分)を示す、
図5(A)〜(E)は、試験No.6(略称Tko)のFENタンパク質を使用して、標的核酸の濃度30pMで55℃、60℃、65℃、67℃又は70℃で測定した結果を示す。
図6(A)〜(E)は、試験No.6(略称Tko)のFENタンパク質を使用して、標的核酸の濃度1nMで55℃、60℃、65℃、67℃又は70℃で測定した結果を示す。
図7(A)〜(E)は、試験No.3(略称Mth)のFENタンパク質を使用して、標的核酸の濃度30pMで55℃、60℃、65℃、67℃又は70℃で測定した結果を示す。
図8(A)〜(E)は、試験No.3(略称Mth)のFENタンパク質を使用して、標的核酸の濃度1nMで55℃、60℃、65℃、67℃又は70℃で測定した結果を示す。
【0100】
【表6】
【0101】
図5〜8及び表6に示すとおり、反応液の温度が55℃以上70℃以下の範囲内で良好なS/N比が認められた。また、試験No.6(略称Tko)のFENタンパク質では、温度が60℃以上70℃以下の範囲内では、良好なS/N比に加えて、標的核酸の濃度が低い場合でも、赤色蛍光強度の立ち上がりがより早くなる効果が認められた。同様の効果が、試験No.3(略称Mth)のFENタンパク質では、温度が55℃以上65℃以下の範囲内で認められた。
【0102】
<Mg
2+イオン濃度>
反応液組成は、1μM アレルプローブ(第一核酸)、1μM インベーダーオリゴヌクレオチド(第二核酸)、2μM 検出用核酸(第三核酸及び第四核酸)、50mM Tris−HCl(pH8.5)、0.05v/v% Tween20、1mM、2.5mM、5mM、10mM又は20mM MgCl
2、0.5μM FENタンパク質、0M、100pM又は1nM 標的核酸とした。反応液量は、10μLとした。反応溶液を調製した後、LightCycler480(登録商標)(Roche Diagnostics製)を使用してリアルタイムで蛍光強度を測定しながら、67℃で60分間インキュベートしてフラップ切断反応を行った。なお、Mg
2+イオン濃度の検討には、試験No.6(略称Tko)のFENタンパク質のみを使用した。
【0103】
反応開始から30分後の時点での標的核酸の濃度が100pMの場合の赤色蛍光強度(シグナル)と標的核酸の濃度が0Mの場合の赤色蛍光強度(ノイズ)との比からS/N比を算出した。結果を表7に示す。また、
図9に蛍光強度のリアルタイム測定の結果(グラフ)を示す。グラフの縦軸は蛍光強度を示し、横軸は反応開始からの時間(分)を示す、
図9(A)〜(E)は、試験No.6(略称Tko)のFENタンパク質を使用してMg
2+濃度1mM、2.5mM、5mM、10mM又は20mMで測定した結果を示す。
【0104】
【表7】
【0105】
図9及び表7に示すとおり、反応液中のMg
2+濃度が1mM以上20mM以下の範囲内(好ましくは、2.5mM以上20mM以下の範囲内)で良好なS/N比が認められた。また、Mg
2+濃度が5mM以上10mM以下の範囲内では、良好なS/N比に加えて、赤色蛍光強度の立ち上がりがより早くなる効果が認められた。
【0106】
<K
+イオン濃度>
反応液組成は、1μM アレルプローブ(第一核酸)、1μM インベーダーオリゴヌクレオチド(第二核酸)、2μM 検出用核酸(第三核酸及び第四核酸)、50mM Tris−HCl(pH8.5)、0.05v/v% Tween20、2.5mM MgCl
2、0mM、25mM、50mM、100mM又は200mM KCl、0.5μM FENタンパク質、0M、1nM又は10nM 標的核酸とした。反応液量は、10μLとした。反応溶液を調製した後、LightCycler480(登録商標)(Roche Diagnostics製)を使用してリアルタイムで蛍光強度を測定しながら、67℃で60分間インキュベートしてフラップ切断反応を行った。
【0107】
反応開始から30分後の時点での標的核酸の濃度が1nMの場合の赤色蛍光強度(シグナル)と標的核酸の濃度が0Mの場合の赤色蛍光強度(ノイズ)との比からS/N比を算出した。結果を表8に示す。また、
図10〜11に蛍光強度のリアルタイム測定の結果(グラフ)を示す。グラフの縦軸は蛍光強度を示し、横軸は反応開始からの時間(分)を示す、
図10(A)〜(E)は、試験No.6(略称Tko)のFENタンパク質を使用してK
+濃度0mM、25mM、50mM、100mM又は200mMで測定した結果を示す。
図11(A)〜(E)は、試験No.3(略称Mth)のFENタンパク質を使用してK
+濃度0mM、25mM、50mM、100mM又は200mMで測定した結果を示す。
【0108】
【表8】
【0109】
図10〜11及び表8に示すとおり、反応液中のK
+濃度が100mM以下の範囲内で良好なS/N比が認められた。また、当該範囲内でS/N比及び立ち上がりの早さに大きな差異はないことから、K
+は必ずしも必要がない(0mMでよい)ことが分かる。
【0110】
<Tris(トリスヒドロキシメチルアミノメタン)濃度>
反応液組成は、1μM アレルプローブ(第一核酸)、1μM インベーダーオリゴヌクレオチド(第二核酸)、2μM 検出用核酸(第三核酸及び第四核酸)、5mM、20mM、50mM、100mM、200mM、300mM、400mM又は500mM Tris−HCl(pH8.5)、0.05v/v% Tween20、5mM MgCl
2、0.5μM FENタンパク質、0M、100pM又は1nM 標的核酸とした。反応液量は、10μLとした。反応溶液を調製した後、LightCycler480(登録商標)(Roche Diagnostics製)を使用してリアルタイムで蛍光強度を測定しながら、67℃で60分間インキュベートしてフラップ切断反応を行った。
【0111】
反応開始から30分後の時点での標的核酸の濃度が100pMの場合の赤色蛍光強度(シグナル)と標的核酸の濃度が0Mの場合の赤色蛍光強度(ノイズ)との比からS/N比を算出した。結果を表9に示す。また、
図12〜13に蛍光強度のリアルタイム測定の結果(グラフ)を示す。グラフの縦軸は蛍光強度を示し、横軸は反応開始からの時間(分)を示す、
図12(A)〜(H)は、試験No.6(略称Tko)のFENタンパク質を使用してTris濃度5mM、20mM、50mM、100mM、200mM、300mM、400mM又は500mMで測定した結果を示す。
図13(A)〜(H)は、試験No.3(略称Mth)のFENタンパク質を使用してTris濃度5mM、20mM、50mM、100mM、200mM、300mM、400mM又は500mMで測定した結果を示す。
【0112】
【表9】
【0113】
図12〜13及び表9に示すとおり、反応液中のTris濃度が300mM以下の範囲内(好ましくは、5mM以上300mM以下の範囲内)で良好なS/N比が認められた。また、赤色蛍光強度の立ち上がりも早かった。
【0114】
〔試験例5:デジタル計測への応用〕
試験No.1(略称Afu)及び試験No.6(略称Tko)のFENタンパク質を使用して、デジタル計測による標的核酸の検出効率を評価した。
【0115】
複数のマイクロウェルを有する平板状の透明なシクロオレフィンポリマー(COP)製の基板と、COP製のカバー部材とを貼り合わせ、マイクロ流体デバイスを作製した。カバー部材は、貼り合わされたときにマイクロウェルが形成されている領域を挟むように注入口と排出口を有し、周縁部に盛り上がった50μmの段差があるものを用いた。マイクロ流体デバイスの各ウェルは、円筒形に形成した。各ウェルの直径(開口径)は10μm、ウェルの深さは15μmに設計した。基板及びカバー部材は、熱可塑性樹脂を用いて射出成形で作製した。段差の端部と基板とを接触させ、接触部分をレーザー溶着した。
【0116】
試薬1として、150aM ターゲットDNAオリゴ(ファスマック社製:標的核酸:5’−CCGAAGGGCATGAGCTGCATGATGAGCTGCACGGTGGAGGTGAGGCAGATGCCCAG−3’:配列番号8)、0.5μM アレルプローブ(ファスマック社製:第一核酸:5’−ACGGACGCGGAGTGCAGCTCATGCCC−3’:配列番号9)、1μM インベーダーオリゴ(ファスマック社製:第二核酸:5’−CCACCGTGCARCTCATCAA−3’:配列番号10)、4μM FRET Cassette(RedmondRED−Eclipse Quanrure)(つくばオリゴサービス社製:第三核酸及び第四核酸:5’−Redmond Red−TCT−Eclipse Quencher−TCGGCCTTTTGGCCGAGAGACTCCGCGTCCGT−3’:配列番号11)、FENタンパク質(略称Tko又は略称Afu)、50mM Tris−HCl(pH8.5)、20mM MgCl
2、0.05v/v% Tween20を含む水溶液を調製した。また、封止液として、フッ素系オイル(FC40、SIGMA社製)を使用した。
【0117】
まず、上記で調製した試薬1(20μL)をピペットを用いてマイクロ流体デバイスの注入口に送液して、マイクロウェル及び流路を試薬1で満たした。その後、フッ素系オイル(150μL)をマイクロ流体デバイスの注入口に送液して、流路内の試薬1を置換し、試薬1をマイクロウェル内に封止した。余剰の試薬1及びフッ素系オイルは、排出口から排出された。
【0118】
マイクロ流体デバイスをホットプレート上に載せ、ホットプレート温度を67℃に加熱して、25分間反応を行った。その後、蛍光顕微鏡(BZ−X700、キーエンス社製)でマイクロ流体デバイスの観察を行った。結果を
図14に示す。
【0119】
事前の予備実験から、投入した標的核酸量(150aM)から予想される輝点数は(1ウェル/13513ウェル)であった。
図14に示すとおり、試験No.6(略称Tko)のFENタンパク質の結果は、予想値とほぼ一致した。一方、試験No.1(略称Afu)のFENタンパク質の結果は、予想値を大幅に上回り、そのうちの大半はぼんやりとした輝度のもの(副反応)であった。