(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6846809
(24)【登録日】2021年3月4日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】含水率測定機
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3554 20140101AFI20210315BHJP
G01N 21/3563 20140101ALI20210315BHJP
【FI】
G01N21/3554
G01N21/3563
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-22859(P2018-22859)
(22)【出願日】2018年2月13日
(65)【公開番号】特開2019-138790(P2019-138790A)
(43)【公開日】2019年8月22日
【審査請求日】2019年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】599005686
【氏名又は名称】有限会社オーテック
(74)【代理人】
【識別番号】100103654
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100165755
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 典彦
(72)【発明者】
【氏名】大谷 元秀
(72)【発明者】
【氏名】岡田 昌也
【審査官】
塚本 丈二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−057513(JP,A)
【文献】
特開2008−249609(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0168694(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/01
G01N 21/17−21/61
G01N 13/04
G01N 22/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の臀部の形状を模した湾曲形態のカートリッジの外表面に吸収性物品の表面を隣接し、前記カートリッジの内部に含水率を測定するための前記吸収性物品と非接触の状態で検出するセンサを備えた含水率測定装置であって、
前記カートリッジは下面において開口した開口部を有し、
前記センサは、センサ本体とアタッチメントとを連結してなり、
前記アタッチメントは、前記センサ本体の下面に固定する筒状形態であり、内部が空洞となる空洞部と、前記空洞部の周囲に所定の肉厚となる肉厚部と、前記アタッチメントの上面側では前記空洞部の内方へせり出して前記センサ本体を固定する止部と、を有し、
前記アタッチメントは、前記カートリッジの前記開口部の外縁に接触し、前記吸収性物品との間に間隙を有することを特徴とする含水率測定機。
【請求項2】
カートリッジは、開口部とアタッチメントとの接触部分に溶接加工することで前記カートリッジ内部への入水を防止する防水手段を施したことを特徴とする請求項1に記載の含水率測定機。
【請求項3】
人体の臀部の形状を模した湾曲形態のカートリッジの外表面に吸収性物品を隣接するように配置した後に、前記吸収性物品に対して所定量の水分を供給し、前記カートリッジの内部に配置されたセンサにより前記吸収性物品の含水率を測定する含水率測定方法であって、
前記カートリッジは下面において開口した開口部を有し、
前記センサは、センサ本体とアタッチメントとを連結してなり、
前記アタッチメントは、前記センサ本体の下面に固定する筒状形態であり、内部が空洞となる空洞部と、前記空洞部の周囲に所定の肉厚となる肉厚部と、前記アタッチメントの上面側では前記空洞部の内方へせり出して前記センサ本体を固定する止部を有し、
前記アタッチメントは、前記カートリッジの前記開口部の外縁に接触し、前記吸収性物品との間に間隙を有し、
前記センサと前記アタッチメントは、前記吸収性物品に非接触となる状態で、前記開口部を通して前記吸収性物品の含水率を検出することを特徴とする含水率測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吸収させたオムツなどの吸収性物品の含水率を測定する含水率測定機及び含水率測定方法である。
【背景技術】
【0002】
従来、吸収性・快適性に優れたオムツなどの吸収性物品を研究開発・製造する際に、適切な吸収性素材の選択や配置等を評価する一つの指標として吸収性物品に液体を滴下した際の含水率を測定することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された水分測定装置は、オムツなどの吸収性物品である試験体の表面に残存する水分層に光線を照射して散乱光を発生させ、その散乱光を光電変換器によって電圧に変換して検出することで、試験体の表面に残存する水分を測定する表面水分測定装置が提案されている。
【0004】
従来の測定装置では、オムツなどの吸収性物品をカートリッジの外面に装着し、カートリッジの内側に備えたセンサにより、カートリッジ越しに吸収性物品の吸水率を測定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−134231号公報(特許第2812440号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の測定装置に用いていたカートリッジは、オムツなどの吸収性物品を外周面に装着して、カートリッジの内部に配置するセンサで測定していたため、カートリッジを通して検出せざるを得なかった。カートリッジは樹脂製素材により成型されるものであるため、より精度の高い測定を行うために、カートリッジを介さない測定が求められてきた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の含水率測定装置は、
人体の臀部の形状を模した湾曲形態のカートリッジの外表面に吸収性物品の表面を隣接し、前記カートリッジの内部に含水率を測定するための
前記吸収性物品と非接触の状態で検出するセンサを備えた含水率測定装置であって、
前記カートリッジは下面において開口した開口部を有し、前記センサは、センサ本体とアタッチメントとを連結してなり、前記アタッチメントは、前記センサ本体の下面に固定する筒状形態であり、内部が空洞となる空洞部と、前記空洞部の周囲に所定の肉厚となる肉厚部と、前記アタッチメントの上面側では前記空洞部の内方へせり出して前記センサ本体を固定する止部と、を有し、前記アタッチメントは、前記カートリッジの前記開口部の外縁に接触し、前記吸収性物品との間に間隙を有することを特徴とするものである。
【0009】
また、カートリッジは、開口部とアタッチメントとの接触部分に溶接加工することで前記カートリッジ内部への入水を防止する防水手段を施したことが好ましい。
【0010】
また、本発明にかかる含水率測定方法は、
人体の臀部の形状を模した湾曲形態のカートリッジの外表面に吸収性物品を隣接するように配置した後に、前記吸収性物品に対して所定量の水分を供給し、前記カートリッジの内部に配置されたセンサにより前記吸収性物品の含水率を測定する
含水率測定方法であって、
前記カートリッジは下面において開口した開口部を有し、前記センサは、センサ本体とアタッチメントとを連結してなり、前記アタッチメントは、前記センサ本体の下面に固定する筒状形態であり、内部が空洞となる空洞部と、前記空洞部の周囲に所定の肉厚となる肉厚部と、前記アタッチメントの上面側では前記空洞部の内方へせり出して前記センサ本体を固定する止部を有し、前記アタッチメントは、前記カートリッジの前記開口部の外縁に接触し、前記吸収性物品との間に間隙を有し、前記センサ
と前記アタッチメントは、
前記吸収性物品
に非接触
となる状態で、前
記開口部を通して
前記吸収性物品の含水率を検出することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る含水率測定機及び含水率測定方法によると、開口部を通じてセンサによる含水率を検出することで、より精度の高い測定が可能になる。また、間隙を有することで、センサと吸収性物品とが非接触の状態を保ち、検出位置の自然な含水率を測定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の含水率測定機の含水率測定機の一例を示す正面断面図である。
【
図2】本発明のカートリッジの一例を示す斜視図であって、正面側の面を切り欠いて示したものである。
【
図3】本発明のセンサの一例であるセンサ本体とアタッチメントを示したもので、(a)が両者を分離した分解斜視図、(b)が両者を取り付けた状態の底面図である。
【
図4】センサをカートリッジに取り付けた状態の一例を示す一部拡大断面図である。
【
図5】
図4の別の実施形態である一部拡大断面図である。
【
図6】本発明に係る含水率測定機を含む含水率測定装置の全体の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る含有率測定機及び測定方法について実施形態を添付の図面に基づいて説明する。なお、吸収性物品Wは水分を吸収するオムツ(或いはオムツや生理用ショーツなどの股下周辺に設けられた吸収パッドなどの吸収体)を例示するものである。
【0014】
本実施形態に係る含水率測定機を含む含水率測定装置は、
図6に示すように、吸収性物品Wに吸収された含水率を測定する含水率測定機100と、該含水率測定機100に液体を供給する液体供給部101と、含水率測定機100及び液体供給部101を制御し得る制御部102と、を備えてなり、含水率測定機100は、吸収性物品Wを湾曲した状態で載置する載置台103と、該載置台103上方から吸収性物品Wを接触した状態で設置するカートリッジ1を有するものである。なお、本実施形態では、カートリッジ1を内部に有する含水率測定機100と制御部102等が分離したものであるが、これらが一体化したものであってもよい。
【0015】
この含有率測定機100は、供給管104がカートリッジ1内部に配設された液体供給部101と接続し、供給された液体を吸収性物品Wの表面に供給する。滴下される液体、水分が吸収性物品Wに吸収された状態を測定するセンサ11、11を有する。
【0016】
センサ11、11は、カートリッジ1内で適切に測定し得るように光学式のものを使用するとともに、供給管104の周囲に固定され、含水率の測定位置である所定の位置の近傍に配設される。このセンサ11は、2種類の波長1.3μm及び1.45μmの赤外線を照射する赤外線ダイオードを主体とする光源と、該光源から照射された赤外線による吸収性物品Wの表面の反射光を検出するフォトダイオードを主体とする検出部と、を備えるものである。この2種類の赤外線のうち、波長1.3μmは水に吸収されない参照光としてノイズを除去するために測定するとともに、水に吸収される波長1.45μmの反射光を測定することで、吸収性物品Wの含水率を測定するものである。本実施形態では光学式センサを利用するものであるが、検出対象となる吸収性物品Wと非接触の状態で検出するセンサであれば光学式以外のセンサであってもよい。
【0017】
このセンサ11、11は、供給管104周辺の含水率をより一層精密に測定するために少なくとも2つ以上を並列に配設することが好適である。その並列状態は、一方を真下に向けたものとし、もう一方を約15度傾斜させたものや(
図4参照)、一方を真下に向けたものとし、もう一方を約30度傾斜させたもの(
図5参照)が好ましいが、両方を所定の角度で傾けたものでもよく(
図1参照)、1つのセンサ11であってもよい。なお、
図4及び
図5は、供給管104を省略して図示している。
【0018】
図1に含水率測定機100を示す。カートリッジ1は、吸収性物品Wの表面に液体を供給する供給管104と、吸収性物品Wの含水率を測定するセンサ11、11と、供給される水量を確認するための水量確認センサを内包する箱体からなる。
【0019】
図2に示すように、この箱体状のカートリッジ1の形状は、上面を方形状の平面と、下面1aとなる円周面と、両側方に所定の幅を設けた側面を有するもので、下方に向けた滑らかな凸型湾曲形状である。この下方に向けた凸型湾曲形状としたことで、着用者の着用した状態を再現するために、人体の臀部等の形状等を簡易的に模した形態となる。少なくともオムツ等の吸収性物品Wのみに接触し得る程度の面積を有することが必要となる。
【0020】
このカートリッジ1は、幼児用のオムツを吸収性物品Wとした場合の形態であるが、例えば高齢者用のオムツを吸収性物品Wとする場合(図示しない)は、高さ方向長さを長くし、下方を略鋭角状の先端とする形態で、正面視で滑らかな略逆三角形状となるものを用いることができる。
【0021】
カートリッジ1は、その下面1aであってセンサを配置する位置である配置位置A、Aにおいて、カートリッジ1の下方を貫通して開口した開口部2、2を有する。つまり、
図2に示す開口部2、2が配置位置A、Aとなる。本実施形態において、開口部2、2は、二ヶ所に設けたものであるが、別の実施形態として1つの開口部であってもよく、3以上の開口部であってもよい。開口部2、2の外縁は後述のとおり、センサ11の形態に応じて決定するものであり、少なくとも本実施形態においてはセンサの赤外線照射位置を貫通する孔となることが必要となる。
【0022】
図1に示すように、カートリッジ1の外周面となる下面1aの表面に隣接して、吸収性物品Wを配置する。この吸収性物品Wはカートリッジ1に引っ掛けるように留め、載置台103との間に隙間を有する取付でもよく、カートリッジ1と載置台103との間で挟み込んでもよい。その後に、供給管104より液体、水分を供給し、センサ11、11により含水率を測定する。
【0023】
次に、センサ11の具体的な形態について、
図3により説明する。なお、
図3(a)において、左奥側を上側、右手前側を下側として説明する。この上側とは、
図3、4に示すように、カートリッジ1にセンサ11、11を取り付けた状態で上側、下側となるものであって、傾斜させて取り付けたセンサ11については、カートリッジ1に接地する側を下側としている。
【0024】
図3(a)に示すように、本実施形態のセンサ11は、センサ本体12とアタッチメント13とを連結したものである。アタッチメント13は、センサ本体12の赤外線照射距離等の性能に応じて必要となるもので、センサ本体12によってはアタッチメント13が無く、センサ本体12のみからなるものであってもよい。
【0025】
アタッチメント13は、上方にセンサ本体12を連結するもので、アタッチメント13の下方からビス14、14を通し、センサ本体12の下面とアタッチメント13の上面とを固定する。アタッチメント13は、樹脂製素材からなる内部が空洞となる空洞部13aを有する筒状形態であり、この空洞部の周囲に所定の肉厚となる肉厚部13c、13cを有する。また、
図2(b)に示すように、アタッチメント13の上面側では空洞部13aの内方へせり出す止部13b、13bが形成されている。この止部13b、13bに形成されたビス孔と、センサ本体12に形成されたビス孔にビス14、14を通して、センサ本体12とアタッチメント13とを固定する。
【0026】
このようにセンサ本体12とアタッチメント13からなるセンサ11により、センサ本体12とアタッチメント13とを接合させるとともに、センサ本体12の照射レンズ12aの照射方向にアタッチメント13の空洞部13aがあることで、アタッチメント13を介して、検査対象物に対して、なんらの障害物を介さずに検査をすることが可能になる。
【0027】
アタッチメント13の下面は、設置するカートリッジ1の形状に応じて傾斜、湾曲させる。
図3(a)に示すアタッチメント13は、一側方から他側方にかけて湾曲するように形成されたものであるが、この形状に限定されず、設置するカートリッジの形状に応じて、曲率や角度などを適宜変更することが好ましい。
【0028】
図4に示すように、カートリッジ1内から下面1aの設置位置A、Aとなる開口部2、2に、センサ11、11を設置する。この実施形態におけるこの開口部2の外縁は、センサ11、11のアタッチメント13、13の空洞部13aの外縁と同じとなる。そのため、アタッチメント13の下面の肉厚部13c、13cが開口部2の外縁の外方部分に接触する。
【0029】
また、
図5に示すように、カートリッジ1の下面1aの開口部2、2の外縁を、アタッチメント13、13自体の外縁と同じくしてもよい。この場合、アタッチメント13の肉厚部13c、13cを含めて、開口部2、2に挿入することとなり、アタッチメント13の下方側の側面が開口部2、2の外縁に接することとなる。
【0030】
センサ11、11のアタッチメント13と吸収性物品Wとは非接触の状態を保つために、間隙2a、2aを有している。つまり、
図4に示す実施形態では、カートリッジ1の開口部2、2の外縁がアタッチメント13、13の空洞部13a13aの外縁と一致していることから、アタッチメント13、13の肉厚部13c、13cがカートリッジ1の内面に接触し、アタッチメント13と吸収性物品Wとが直接接触しない。この場合には、カートリッジ1の開口部2、2の開口した部分と間隙2a、2aとが一致することとなる。また、
図5に示す実施形態では、カートリッジ1の開口部2、2の外縁がアタッチメント13、13の外縁と一致していることから、開口部2にアタッチメント13が挿入され得るが、完全に挿入せず、吸収性物品Wとの間に間隙2a、2aが形成される位置に固定している。
【0031】
このアタッチメント13、13と吸収性物品Wとの間に間隙2a、2aを有することで、吸収性物品Wに加圧を一切かけることなく、自然な状態での吸収状態を測定することができ、より精密な検査を実施することが可能になる。
【0032】
アタッチメント13、13とカートリッジ1の内周面との間は、防水処理が施される。具体的には、アタッチメント13、13とカートリッジ1との接触部分に溶接加工を施すことにより、吸収性物品Wの水分、液体がカートリッジ1内に流入することを防止する。
【符号の説明】
【0033】
1…カートリッジ、1a…下面、2…開口部(設置位置A)、2a…間隙、11…センサ、12…センサ本体、13…アタッチメント、100…含水率測定機