(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
縦長で幅方向の中心部が突弧状に湾曲する取付本体の上面に模擬皮下組織層を装着し、該模擬皮下組織層の上に模擬血管を配置し、該模擬血管の上方を覆って模擬皮膚層を配置し、その内方に腕通し部分を有する注射練習具において、
硬質素材からなる前記取付本体は、湾曲した突弧状の形態で、湾曲形態を変更する湾曲変更手段が形成され、
前記模擬皮膚層を有する上カバーは、駆血帯通し孔を有する駆血帯巻付け部分を有することを特徴とする注射練習具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された注射練習具では、机などに取付本体を載置して使用するとともに、サイズが一定であるため、腕の太さの違いなどの個人差や臨場感を再現することは困難であった。また、現実の駆血帯を用いて怒張させた状態を再現することはできなかった。
【0006】
特許文献2に記載された発明では、駆血帯を用いて怒張させた状態を再現することができるというものであるが、人工血管を駆血帯で縛るだけでは、血管の内圧を十分に上昇させることができないため、臨場感のある状態を再現することが困難であった。また、ベースなどの外観が軟質部材で形成されているため、練習者が未経験であると、ベースを通り越して疑似被用者の腕に刺さるのではないかなどの不安を感じてしまうことがあった。
【0007】
上記、従来技術の欠点に鑑み、疑似被用者の個人差や対面実施等の臨場感を再現した状態で練習をすることができ、より練習効果を向上させることができる注射練習具を実現することを目的とする発明である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の注射練習具は、縦長で幅方向の中心部が突弧状に湾曲する取付本体の上面に模擬皮下組織層を装着し、該模擬皮下組織層の上に模擬血管を配置し、該模擬血管の上方を覆って模擬皮膚層を配置し、その内方に腕通し部分を有する注射練習具において、硬質素材からなる前記取付本体は、湾曲した突弧状の形態で、湾曲形態を変更する湾曲変更手段が形成され
、前記模擬皮膚層を有する上カバーは、駆血帯通し孔を有する駆血帯巻付け部分を有することを特徴とするものである。
【0009】
また、湾曲変更手段は、取付本体の長手方向にかけて形成する折り曲げ溝を幅方向に複数設けたものであることが好ましい。
【0010】
また、
上カバーは、一方の側方で取付本体に開閉自在に取り付けられるものであって、もう一方の側方では、開閉状態を係止する揺動自在の係止手段を有することが好ましい。
【0012】
また、模擬血管は、一方の先端が閉塞した管状とし、開放端を柔軟な素材で形成し、模擬血液を密封した模擬血液バックに連結し、取付本体の長手方向の一端部に、前記模擬血液バックを収容するバック収容部を形成し、該バック収容部に収容した模擬血液バックから前記模擬血管を模擬皮下組織層上に延長させたものであって、上カバーには、収容した模擬血液バックを圧迫する押え具を設け、前記押え具が駆血帯巻付け部分を兼ねることが好ましい。
【0013】
また、取付本体の一端部に、複数のバック収容部を前記取付本体の円周方向に並設し、押え具は、前記一端部の上面全体を覆うことが好ましい。
【0014】
また、取付本体は、湾曲した突弧状の形態で保持するデッキに着脱自在としたことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明により、腕に装着する取付本体の湾曲を適宜、変更して使用することができる。従来の腕に装着する練習具よりも、模擬皮膚層や模擬皮下組織層以外の多くの部分が硬質樹脂により形成されているため、練習者が未経験であっても、安心して、使用することができる。模擬血管に刺さらなくとも、取付本体を通り越して実際の腕に刺さることなく、安心して臨場感ある練習が可能になる。
さらに練習者が駆血帯の巻き付け位置を把握し易くすることで、駆血帯の巻き付けが模擬血液バッグを圧迫でき、より臨場感ある練習が可能になる。
【0016】
また、請求項2に記載の発明により、湾曲変更手段が形成されており、巻き付ける腕の太さに応じて取付本体の湾曲状態を変更することが可能になる。
【0017】
また、請求項3に記載の発明により、上カバーの安定した係止が可能になる。これは、取付本体を使用した場合には、前後方向に掛けて若干のアーチ状態(湾曲状態)が異なるものとなる(手首側にかけて収縮する)。そこで、上カバーの係止爪を被係止部に係合させ易くするために。被係止部を前後方向に揺動、回動することが好ましく、上カバーの安定した係止が可能になる。
【0018】
また、請求項
4に記載の発明により、練習者が駆血帯の巻き付け位置を把握し易くするとともに、駆血帯の巻き付けが模擬血液バックを押える押え具を兼ねることで、駆血帯の巻き付けが模擬血液バックを圧迫でき、より臨場感ある練習が可能になる。
【0019】
また、請求項
5に記載の発明により、複数の模擬血液を使用することができ、押え具で全ての模擬血液バックの固定が可能になる。
【0020】
また、請求項
6に記載の発明により、卓上で使用できるデッキに着脱自在にすることができ、卓上で使用する場合と腕に巻き付けて使用する場合との両方に使用することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る注射練習具の実施形態を添付の図面に基づいて説明する。なお、本説明にあたり、取付本体1の長手方向を前後方向とし、
図1の左奥側を前側とし、右手前側を後側とする。また、取付本体1の長手方向と直交する方向を幅方向としてその幅方向両側を側方として説明する。
【0023】
本発明に係る注射練習具の基本的な形態は、
図1に示すように、取付本体1と、取付本体1の上面に配置する模擬皮下組織層2と、模擬皮下組織層2の上に配置する模擬血管3、3に連結して模擬血液を供給する模擬血液バック6、6と、模擬血管3、3の上方を覆う模擬皮膚層4を張設する上カバー5とを備えている。
【0024】
取付本体1は、硬質樹脂からなる略板状体を全体として突弧形状、アーチ形状に湾曲した形態を有するものである。突弧形状、アーチ形状となる取付本体1の裏面側となる内方が開放されており、その開放された内方部分が腕通し部分51となる。取付本体1は、ベース40に取り付けた状態で卓上に置いて使用することもできるが、
図2に示すように、ベース40から取り外して、取付本体1の内方部分となる腕通し部分51を疑似被用者の腕50に巻いて使用することもできる。
【0025】
図2に示すように、疑似被用者の腕50に巻いて使用する場合、取付本体1を腕50の肘関節から5〜10cm中枢側(肩側)より手首側の位置で装着部20によって装着する(
図4参照)。そして、腕50に装着させた状態で模擬皮膚層4の表面(上面)から模擬血管3に注射針を刺して、血管注射の練習をすることができる。疑似被用者の腕50に装着することで、対面した疑似被用者の腕への血管注射を模すことができ、疑似被用者の個人差や対面実施等の臨場感を再現することができる。
【0026】
まず、取付本体1の構成について説明する。取付本体1は、ABS樹脂など硬質の合成樹脂材を用いている。このように硬質素材を用いることにより、練習者が誤って使用した場合に、注射針が取付本体1を貫通することを防ぐのみならず、模擬皮膚層4や模擬皮下組織層2等を除いた全体及び外観が硬質素材によって成型されているものであるため、注射練習が未経験であっても安心して利用することができる。
【0027】
図3に示すように、取付本体1の縦方向長さ(
図3の長手方向長さ)は一般的な人の肘関節から5〜10cm中枢側(肩側)から前腕までとなる所定の長さを有し、本実施形態では230mmとしている。取付本体1の左右端部に形成される両側差込片30、30間となる幅方向長さは、一般的な人の肘より手首までの位置での腕の太さとなる所定の長さを有し、本実施形態では115mmとしている。取付本体1は、幅方向の中心部を突弧状に湾曲させて、全体として突弧状、アーチ状に成型する。両差込片30、30間から突弧状となった頂点の高さは、約45mmである。
【0028】
取付本体1は、長手方向の両前後端が起立した起立片31、31を有する。取付本体1の表面では、この長手方向に沿って、前側の起立片31から後側の起立片31にかけて、湾曲変更手段である2本の折り曲げ溝27、27を有する。この折り曲げ溝27、27に対応する前後の起立片31、31の位置で切り欠かれた切欠き32、32が形成される。この折り曲げ溝27、27と切欠き32、32により、
図3上の矢印線Z、Zに示すように、取付本体1の差込片30、30をもって広げたり、狭めたりして取付本体1の湾曲状態を変更することができる。これにより、疑似被用者の腕50の太さに応じて、取付本体1の幅や湾曲状態、アーチ状態を調整することが可能になる。
【0029】
取付本体1の差込片30、30には、その中央に装着部20を支持する支持孔33、33が形成され、この支持孔33、33にベルト状の装着部20、20を通すことで支持する。
図4に示すように、一方の装着部20には係止部20aが配置され、もう一方は所定の長さの装着部20であって被係止部20bが配置されている。取付本体1を疑似被用者の腕50に巻き付け、装着部20の係止部20aを被係止部20bに係止して装着部20によって腕50を締め付けることで、腕50に装着することができる。そして、取付本体1は、装着部20によって腕50を締め付けることで円周方向に屈曲して、装着する腕50に合わせて縮径することができ、装着させる腕50の形状に追従し易くなり、臨場感をより高めることができる。
【0030】
取付本体1の表面側(上面)は、
図3に示すように、模擬皮下組織層2を着脱自在で配置できるように周囲から一段凹んだ部分となる装着位置Aを有している。具体的には、取付本体1の前側の段部11、11と、後側の起立片31との間であって、左右側の左右段部34、34との間である。模擬皮下組織層2で上面を覆う範囲は、取付本体1上面の注射練習をするのに十分な広さとなる。この左右段部34、34はその下端付近で前側、中央、後側に取付孔29、29が形成される。
【0031】
次に、取付本体1の装着位置Aに装着する模擬皮下組織層2について説明する。
図5に示すように、模擬皮下組織層2は、取付本体1の上面の湾曲形状と一致する突弧状、アーチ状の板体28、28と、この板体28、28の上面に貼着した疑似皮下組織の感触を再現する低反発性発泡材とからなる。低反発性発泡材は例えば低発泡ウレタンなどであり、メモリーフォーム(登録商標)が好ましい。板体28、28の先端28a、28aは、模擬皮下組織層2の左右側から突出した状態となり、この先端28a、28aを取付孔29(
図3参照)に差し込むことで模擬皮下組織層2全体を取付本体1に対して着脱自在としている。
【0032】
この模擬皮下組織層2が板体28、28を取付本体1の取付孔29、29に差し込んで取り付ける構成とすることにより、取付本体1のアーチ状態の変化(湾曲状態の変化)があっても模擬皮下組織層2を適切に配置することが可能になる。つまり、取付本体1の装着位置Aに模擬皮下組織層2を張り付けるだけでは、取付本体1を折り曲げ溝27、27や切欠き32、32によりアーチ状態の形態を変更させた場合に、その表面の伸縮により模擬皮下組織層2が剥がれてしまったり、破損してしまう。一方、板体28、28に取り付けた場合には、取付本体1のアーチ状態を変更しても、板体28、28が湾曲して、かつ、その先端28a、28aに所定の長さを有するため、アーチ状態を変更したときに生じる表面の伸びを吸収して、安定して模擬皮下組織層2を配置することが可能になる。
【0033】
次に模擬皮膚層4を張設する上カバー5について
図6で説明する。模擬皮下組織層2の上側を覆う模擬皮膚層4は、取付本体1の上面に配置する上カバー5に張設される(
図1参照)。
図6ないし
図8に示すように、この上カバー5は、取付本体1上面の湾曲形状と一致するアーチ状に形成され、その中央部分が切除されている。この切除された中央部分に模擬皮膚層4が張設される。
【0034】
模擬皮膚層4は、ウレタン系材料で形成することで、シリコン系材料で形成した場合と異なり、消毒アルコールの乾燥状態(濡れ具合)を目視で確認でき、乾燥が不十分な未消毒状態での注射を防ぐことができる。また、ウレタン系マイクロセルポリマーシートを用いることで、アルコールによる膨張から未消毒状態を確認することができる。
【0035】
上カバー5は、長手方向の側縁部分に取付本体1への固定手段として、その側方片であって、係止爪24が形成される片の反対側の片の前後2箇所に、各々が外方に向けた鍵状の嵌合突起22、22が設けられる。取付本体1の右側段部34に、この嵌合突起22、22を嵌入するための被嵌合孔(図示しない)が形成され、これらの嵌合により、上カバー5を取付本体1に対して着脱自在に取り付けることができる。
【0036】
上カバー5の嵌合突起22、22が形成される片において、嵌合突起22、22より上方である近傍に、その長手方向にかけて折り曲げ線9(リビングヒンジ)を形成し、この折り曲げ線9に沿って折曲することによって模擬皮膚層4を張設した上カバー5全体を、取付本体1の上方に向けて開閉自在とする。そして、上カバー5で取付本体1の上面を覆って押圧状態とすることによって、模擬皮膚層4の下に模擬血管3が存在している注射の練習状態を実現することができる。
【0037】
上カバー5は模擬皮膚層4を張設した内方部分の長手方向に4本の折り曲げ溝14、14、14、14を並列して形成している。そして、この折り曲げ溝14に沿って上カバー5を折曲することによって上カバー5を縮径させて、腕50に合わせて縮径した取付本体1のアーチ状態の変更形状に上カバー5を追従させることができる。
【0038】
嵌合突起22、22により開閉自在となった上カバー5の閉じた状態を係止するため、嵌合突起22、22を設けた側方と反対側の側方に、係止爪24と被係止部25とからなる係止手段が設けられる。これは、上カバー5には爪状の係止爪24が形成され、取付本体1にはフックを有する被係止部25(
図8参照)が形成され、これらを係止させることによって、上カバー5を閉じて模擬皮膚層2を押圧した状態を維持することができる。
【0039】
被係止部25の具体的な形態は、
図8及び
図9から理解されるように、取付本体1側に突出する支持軸(図示しない)を取付本体1の揺動孔21(
図3参照)に回転自在で取り付けることによって、この揺動孔21(支持軸)を支点として取付本体1の長手方向に揺動することができる。被係止部25は係止爪24よりも幅広の挿通部25aを有し、この挿通部25aの内面に係止爪24を係止する凸部(フック)を複数有している。なお、符号26は挿通部25aを変形させて係止爪24の係止を解くつまみである。
【0040】
この揺動は、疑似被用者の腕50に取付本体1を取り付け、さらに上カバー5を閉じて係止爪24と被係止部25とを係合させるときに、この係合を容易にするものである。つまり、一般的に人の腕は肘部分から手首部分にかけてその周囲が短くなる。疑似被用者の腕50に取付本体1の腕通し部分51を挿入し、取付本体1の長手方向中央部分にあるベルト状の装着部20で締め付けると、肘側(肩側)が太くなり、手首側が細くなることから、前後方向に掛けてアーチ状態が若干の異なるものとなる(手首側にかけて収縮する)。そこで、上カバー5の係止爪24を被係止部25に係合させ易くするために。被係止部25を前後方向に回動・揺動することが好ましく、上カバー5の安定した係止が可能になる。
【0041】
次に、取付本体1に配置する模擬血管3の装着について説明する(
図1参照)。模擬血管3は、模擬血液バック6とともに使い捨てのものとして供給している。模擬血液バック6は、
図10に示すように、図面上方形の袋(ケース)に模擬血液を収容し、このケースの基端部から先方に向けて円筒状の連結部15を突出させ、この連結部15に天然ゴムなどで形成する盲筒状の模擬血管3を接続している。
【0042】
模擬血液バック6に充填する模擬血液は、赤く着色し臨場感を持たせるとともに、模擬血管3を含めその内部に空気が入らない状態で密封しておき、模擬血液バック6及び模擬血管3全体を密封包装しておくのが好ましい。模擬血液バック6や模擬血管3内に空気が入らない状態としておくことによって、練習者が針を刺した時、液体と空気が混じりあった気泡がシリンジ内に入るのを防止することができる。また、模擬血液バック6を完全な密封包装とすることによって、模擬血液バック6や天然ゴムである模擬血管3の劣化を防止することができる。模擬皮下組織層2の上に配置する模擬血管3は、練習者の技量に応じて直線状や蛇行状態に配置することが好ましい。
【0043】
図3に示すように、取付本体1の前側の起立片31から複数の段部11、11の間に、左右の幅方向に溝状となるバック収容部7を有する。バック収容部7は、幅方向(左右方向)に並ぶ複数の設置部10、10、10を形成している。設置部10に模擬血液バック6を配置することで、後述の使用時に駆血帯16を巻くことで、押え具8により、複数の模擬血液バック6を一度に圧迫するとともに、設置部10に配置した模擬血液バック6から突出する模擬血管3を、適正に模擬皮下組織層2の上に配置することができるようにしている(
図2参照)。
【0044】
また、
図1に示すように、取付本体1の前側には、バック収容部7の内奥(基端部)に段部11を設け、段部11の設置部10の中央と並ぶ位置にスリット12を形成し、連結部15及び模擬血管3がスリット12に入り込むことができるようにしている。このスリット12によって、設置部10に配置した模擬血液バッグ6をバック収容部7の所定位置に確実にセットし、模擬血管3が適正に模擬皮下組織層2上に位置するようにすることができる。
【0045】
図6に示すように、上カバー5の前側であって、バック収容部7の上方に位置する部位には、模擬血液バック6を押圧するための押え具8が配置される。押え具8は上カバー5の前側中央に形成した薄肉部13(リビングヒンジ)を介して上カバー5に連結される。
図11の破線に示すように、押え具8は薄肉部13を屈曲させることで前下方に移動自在であり、後述する駆血帯16(
図2参照)を巻き付けて薄肉部13を屈曲させることによって押え具8で模擬血液バック6を押圧することができる。押え具8の底面には、模擬血液バッグ6を効果的に押圧することができるように、押圧凸部8aを設けている(
図1参照)。押圧凸部8a、8a、8aは、上カバー5の円弧よりも下方に突出するよう形成しており、設置部10、10、10の上方に位置するようにしている。
【0046】
上記構成とすることにより、押え具8を下方に向けて押し込むと、押圧凸部8aが模擬血液バッグ6を上方から圧迫し、その内部に充填している模擬血液の内圧を上昇させる。この内圧上昇は、模擬血管3内の模擬血液も同じであり、現実の怒張状態と似た状態を実現する。
【0047】
図2に示すように、押え具8を駆血帯16で腕50ごと締め付けることによって、駆血帯16の取付を練習することができるとともに、模擬血液バッグ6を圧迫して一定内圧の怒張状態(圧迫状態)を維持することができるようにしている。怒張状態を解除するには、駆血帯16による締付状態を解除することによって押え具8を上方に戻す(押え具8による圧下を解く)こととなる。そして、駆血帯16の締付によって上カバー5の長手方向の押え具8側が他方側よりも取付本体1に近づくように変形することがある。この変形に対して被係止部25を揺動させることによって、係止爪24と被係止部25の係止を維持することができる。
【0048】
押え具8を複数の設置部10、10、10の上方に配置することで、複数の模擬血液を使用することができ、押え具8で全ての模擬血液に対応することが可能になる。設置部10、10、10の表面にはトウソクヒ(橈側皮静脈)やシャクソクヒ(尺側皮静脈)などの模擬血管3によって模擬する血管名やその一部を記載してもよい。また、バック収容部7を広く形成するとともに、上カバー5を揺動自在で係止することによって、異なる容量の模擬血液バック6を配置することができる。例えば従来の約2倍といった、大容量の模擬血液バック6を配置することによって、多量の模擬血液を要する真空採血などを練習することができる。また、異なる容量の模擬血液バック6としては複数の設置部10、10、10に跨って配置される大型のものであってもよい。
【0049】
模擬皮膚層4は、使用(練習)によって針孔が穿孔される。したがって、模擬皮膚層4は適宜交換するのが好ましい。そのため、上カバー5を着脱自在とすることによって、例えば上カバー5のみを練習者各自が所有して気兼ねなく練習し、取付本体1を共有とすることができる。
【0050】
上カバー5に模擬皮膚層4を張着するには、練習者の技量に応じて、好みの材質や厚みの模擬皮膚層4を、両面粘着テープなどを用いて上カバー5に貼り付ける。また、模擬皮膚層4を厚いものに変えることで、浮腫状態の場合の注射を練習することができる。
【0051】
図1に示すように、取付本体1は、机などに載置するために底面が平坦となったデッキ40を設けるのが好ましい。デッキ40は、長方形の底板からなり、その底板の側端部は取付本体1の両差込片30、30を差し込み固定するための溝部41、41を有しており、これらの係合により取付本体1をデッキ40から着脱自在としている。取付本体1をデッキ40に装着することによって、腕50に装着させなくても駆血帯16の取付や血管注射を練習することができる。
【0052】
デッキ40の前後両端付近には、取付本体1を保持するための保持部42、42が形成されている。この突弧状、アーチ状の保持部42、42に取付本体1の下面を載せることで、取付本体1を突弧状態、アーチ状態を保持したまま、デッキ40に載せることが可能になる。また、この保持部42、42は、取付本体1の折り曲げ溝27、27の位置に応じた凹部42a、42aが形成されている。この折り曲げ溝27、27の前後端が凹部42a、42aに入り込み、取付本体1がデッキ40に保持された状態でズレたりすることを防止する。
【0053】
また、デッキ40の長手方向の前後両端部は、幅方向の中央部を突弧状に膨出させてかまぼこ状に形成されている。デッキ40は全体として上方に開放する殻状とし、取付本体1を蓋とすることで収納部43を形成している。この収納部43に練習に必要な留置針、シリンジ、注射針、駆血帯16などを保管しておくことも可能である。
【0054】
取付本体1のバッグ収容部7に相当する位置において、デッキ40には、その両側方において、内側に凹んだ駆血帯通し孔52、52が形成される。この駆血帯通し孔52、52は、デッキ40だけでなく、取付本体1及び上カバー5の相当する位置にも同じく形成されている。この駆血帯通し孔52、52により、装着時に腕に巻くように駆血帯16を通すことができ、より臨場感をもった練習が可能になる。
【0055】
上カバー5において、押え具8の幅方向両端にも駆血帯通し孔52、52が形成され、取付本体1やデッキ40にも駆血帯通し孔52、52が形成されているため、練習者はこの駆血帯通し孔52、52と押え具8の部分が駆血帯巻付け部分であることが明示されて、駆血帯16の巻き付け位置を把握し易くなるとともに、駆血帯16を巻き付けし易くし、巻き付け状態を保持し易くしている。
【0056】
本実施形態においては、取付本体1、上カバー5、デッキ40のいずれにも駆血帯通し孔52、52が形成されたものを例示しているが、必ずしもこの形態に限定するものではなく、例えば取付本体1のみに駆血帯通し孔52、52が形成されるものでもよい。
【0057】
この駆血帯16の巻き付けが押え具8を兼ねることにより、駆血帯16を巻きつけると、押え具8が模擬血液バック6を押え、圧迫状態とすることができる。これは、実際の注射をする場合に駆血帯16を使用する場合を再現するものであるため、より臨場感のある練習が可能になる。また、駆血帯通し孔52、52によってラテックス製の多い紐状だけでなく帯状などの他の形状の駆血帯16も使用することができ、疑似被用者がラテックスアレルギーであっても布製などの駆血帯16で練習することができる。