特許第6846902号(P6846902)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6846902
(24)【登録日】2021年3月4日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】食品洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   A23N 12/02 20060101AFI20210315BHJP
   B08B 3/04 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   A23N12/02 Q
   B08B3/04 Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-189044(P2016-189044)
(22)【出願日】2016年9月28日
(65)【公開番号】特開2018-50508(P2018-50508A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】特許業務法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 喜智
【審査官】 土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−075050(JP,A)
【文献】 実開平03−037893(JP,U)
【文献】 特開2016−063760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23N 12/02
B08B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌または除菌成分を有する洗浄水を用いて食品を洗浄する洗浄装置であって、
被洗浄物としての食品を収容する洗浄タンクと、
前記洗浄タンクの側壁に設けられた給水口から、前記洗浄タンク内に洗浄水を一定方向に供給する給水経路と、
前記洗浄タンクの底壁、または前記側壁の前記給水口よりも下方位置から取水した洗浄水を、前記洗浄タンクの前記側壁に設けられた戻し口から、前記洗浄タンク内に戻す循環経路とを備え、
前記戻し口は、前記給水口よりも上に位置し、
前記給水口からの洗浄水の流水方向と前記戻し口からの洗浄水の流水方向とが、立体的に交差する、食品洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄タンクの前記底壁は、略矩形形状であり前記側壁は、前記底壁の四辺それぞれに下端が連結された4つの側壁を含み、
前記給水口と前記戻し口とは、前記4つの側壁のうち、互いに隣接する2つの側壁にそれぞれ設けられる、請求項1に記載の食品洗浄装置。
【請求項3】
前記循環経路上に前記洗浄水を流動させるための循環ポンプと、
前記給水口からの給水開始後、前記洗浄タンク内の洗浄水が第1水位に達したことを検知した場合に、前記循環ポンプの駆動を開始する制御装置とをさらに備える、請求項1または2に記載の食品洗浄装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記洗浄タンク内の洗浄水が前記第1水位よりも高い第2水位に達したことを検知した場合に、前記給水口からの給水を停止し、洗浄水の循環を継続して行う、請求項3に記載の食品洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌または除菌成分を有する洗浄水を用いて食品を洗浄する食品洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、微酸性電解水など、殺菌または除菌成分を有する洗浄水を用いて、青果などの食品を洗浄する食品洗浄装置が存在する。
【0003】
たとえば特開2016−63760号公報(特許文献1)では、洗浄タンクに水道水を供給する供給経路と、途中位置に循環ポンプを有し、洗浄タンクに両端が接続された循環経路とを備えた食品洗浄装置が開示されている。この洗浄装置では、循環経路から分岐する分岐経路に電気分解装置を設けている。
【0004】
また、洗浄タンク内の食品の洗い残しを防ぐために、特許第4567808号公報(特許文献2)には、気泡による曝気と水流が洗浄水槽の全体に亘って均一に分散するように、気泡を含んだ洗浄水を洗浄水槽の底部から噴射させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−63760号公報
【特許文献2】特許第4567808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
微酸性電解水などの電解水を用いることで、食品に付着した有機物(汚れ、細菌類)を除去し、食品を殺菌または除菌することができる。しかし、洗浄タンク内において電解水の動きが十分でない場合には、局所的に有効塩素成分が消費され、局所的に濃度が低下する現象が生じる。また、電解水の動きが少ない場合、食品表面(微生物等の付着物を含む)に電解水が十分に接触しない個所が生じる可能性がある。これらの要因から、洗浄タンク内での水流を確保しなければ、食品を十分に殺菌または除菌できないおそれがある。
【0007】
特許文献1の食品洗浄装置では、洗浄タンク内に給水経路からの水流と循環経路の戻し口からの水流とが生じ得るが、給水経路から供給される水は電解水ではないため、電解水の流水方向は、循環経路の戻し口からの一方向のみである。したがって、このような構成ではやはり、食品表面に局所的な汚れが残ってしまうおそれがある。
【0008】
特許文献2の構成では、洗浄水槽の底部から気泡を含んだ洗浄水を噴射させることにより生じる曝気と水流とで食品を下から煽って上下に浮沈させることで、被洗浄物を洗浄する。しかし、このような構成では、食品を傷めてしまうおそれがある。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、食品を傷めることなく、効果的に殺菌または除菌することのできる食品洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明のある局面に従う食品洗浄装置は、殺菌または除菌成分を有する洗浄水を用いて食品を洗浄する洗浄装置であって、被洗浄物としての食品を収容する洗浄タンクと、洗浄タンクに設けられた給水口から、洗浄タンク内に洗浄水を一定方向に供給する給水経路と、洗浄タンクの下部から取水した洗浄水を、洗浄タンクに設けられた戻し口から、洗浄タンク内に戻す循環経路とを備える。戻し口は、給水口とは上下高さが異なっており、給水口からの洗浄水の流水方向と戻し口からの洗浄水の流水方向とが、立体的に交差する。
【0011】
好ましくは、戻し口は、給水口よりも上に位置する。
【0012】
好ましくは、洗浄タンクは、略矩形形状の底壁と、底壁の四辺それぞれに下端が連結された4つの側壁とを含む。この場合、給水口と戻し口とは、4つの側壁のうち、互いに隣接する2つの側壁にそれぞれ設けられることが望ましい。
【0013】
食品洗浄装置は、循環経路上に洗浄水を流動させるための循環ポンプと、給水口からの給水開始後、洗浄タンク内の洗浄水が第1水位に達したことを検知した場合に、循環ポンプの駆動を開始する制御装置とをさらに備えることが望ましい。
【0014】
また、制御装置は、洗浄タンク内の洗浄水が第1水位よりも高い第2水位に達したことを検知した場合に、給水口からの給水を停止し、洗浄水の循環を継続して行うことが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、食品の損傷を防止または抑制することができる。また、食品を効果的に殺菌または除菌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係る食品洗浄装置の外観例を示す斜視図である。
図2】本発明の実施の形態における洗浄タンクの外観斜視図である。
図3】本発明の実施の形態に係る食品洗浄装置の配管構成例を示す図である。
図4】本発明の実施の形態に係る食品洗浄装置の機能構成を示すブロック図である。
図5】本発明の実施の形態に係る食品洗浄装置の基本動作を示すフローチャートである。
図6】洗浄タンクに設けられた給水口からの電解水の流水方向を概念的に示す図である。
図7】洗浄タンクに設けられた戻し口からの電解水の流水方向を概念的に示す図である。
図8】給水口からの電解水の流水方向と戻し口からの電解水の流水方向とが、立体的に交差することを概念的に示す図である。
図9】電解水の給水と電解水の循環とが並行して行われている期間中に、洗浄タンク内に生じ得る3つの流路を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0018】
(基本構成について)
はじめに、図1図3を参照して、本実施の形態に係る食品洗浄装置1の基本構成について説明する。
【0019】
食品洗浄装置1は、たとえば立方体形状の筐体90と、筐体90内に設けられた洗浄タンク10とを備えている。洗浄タンク10には、被洗浄物としての食品を収納する網カゴ11が設置される。洗浄タンク10は、たとえば、平面視矩形状の水槽であり、略矩形形状の底壁31と、底壁31の四辺それぞれに下端が連結された4つの側壁32とで構成されている。
【0020】
図1に示されるように、筐体90の上面に、洗浄タンク10への食品の投入および取り出しのために開放可能な蓋91と、洗浄の開始および停止を指示するための操作ボタン93とが設けられている。
【0021】
図3に示されるように、食品洗浄装置1は、基本の配管構成として、給水経路21と、排水経路22と、循環経路23とを有している。
【0022】
給水経路21は、洗浄タンク10の給水口12に接続されている。給水経路21上には、制御装置によって開閉制御される給水バルブ21aが設けられている。給水バルブ21aが開状態のとき、殺菌作用を有する電解水が給水経路21を介して洗浄タンク10に供給される。給水経路21を介して供給される電解水は、たとえば40mg/kg程度の有効塩素濃度の微酸性電解水である。給水口12は、洗浄タンク10の側壁32に位置する。
【0023】
排水経路22は、洗浄タンク10の排水口13に接続されている。排水経路22上には、制御装置によって開閉制御される排水バルブ22aが設けられている。排水バルブ22aが開状態のとき、洗浄タンク10内の電解水が排水経路22を介して排水される。排水口13は、洗浄タンク10の底壁31に位置する。
【0024】
循環経路23は、排水経路22から分岐し、洗浄タンク10の戻し口14に接続されている。循環経路23は、途中位置に循環ポンプ23aを有している。排水バルブ22aが閉状態で、かつ、循環ポンプ23aがONのとき、洗浄タンク10内の電解水が循環経路23を介して循環する。戻し口14は、側壁32に位置する。なお、循環経路23は、排水経路22とは独立して設けられていてもよい。
【0025】
なお、洗浄タンク10の側壁32には、給水口12および戻し口14よりも上方に位置するオーバーフロー口15が設けられている。これにより、食品の洗浄期間において所定の水位を超えた電解水がオーバーフロー口15から外部に排水される。
【0026】
本実施の形態の食品洗浄装置1は、側壁32に設けられた給水口12および循環経路23の戻し口14から供給される電解水によって洗浄タンク10内に水流を発生させ、その水流によって食品を洗浄する構成である。食品を効果的に洗浄するための給水口12および戻し口14の配置形態については、後に詳述する。
【0027】
(機能構成および基本動作について)
次に、食品洗浄装置1の機能構成および基本動作について説明する。
【0028】
図4は、食品洗浄装置1の機能構成を示すブロック図である。食品洗浄装置1は、上記したバルブ21a,22aおよび循環ポンプ23aに加え、水位センサ71,72と、濃度センサ73と、操作部74と、これらに電気的に接続された制御装置50とを備える。
【0029】
水位センサ71は、洗浄タンク10内の電解水の水位が第1水位に達したことを検知する。水位センサ72は、洗浄タンク10内の電解水の水位が第2水位に達したことを検知する。第1水位は第2水位よりも低い。以下、第1水位を「中レベル」、第2水位を「高レベル」という。なお、高レベルは、オーバーフロー口15付近の高さであり、典型的にはオーバーフロー口15のやや上の高さである。中レベルは、典型的には高レベルの1/2程度の高さである。
【0030】
濃度センサ73は、洗浄タンク10内の電解水の濃度を検知する。操作部74は、ユーザからの指示を受け付ける。操作部74は、上記した操作ボタン93を含む。
【0031】
制御装置50は、各種演算処理を行う制御部51と、各種データおよびプログラムを記憶するための記憶部52と、計時動作を行う計時部53とを含む。制御部51は、たとえばCPU(Central Processing Unit)により実現される。
【0032】
図5は、食品洗浄装置1の基本動作を示すフローチャートである。なお、図5に示す一連の食品洗浄処理は、制御装置50の制御部51が、記憶部52に予め記憶された食品洗浄プログラムを読み出して実行することによって実現される。なお、食品洗浄処理が開始される前は、各バルブ21a,22aは閉状態であり、循環ポンプ23aはOFFである。
【0033】
ユーザにより操作ボタン93が操作されて、洗浄開始の指示が入力されると、制御部51は、給水バルブ21aを開状態とし、洗浄タンク10への電解水の給水が開始される(S11)。これにより、洗浄タンク21内には、給水口12から噴出される電解水による一定方向の水流が生じる。
【0034】
その後、水位センサ71により洗浄タンク21内の電解水の水位が、中レベルと検知された場合(S12にてYES)、制御部51は、循環ポンプ23aをONにし、循環ポンプ23aの駆動を開始する。これにより、洗浄タンク10内の電解水の循環が開始される(S13)。すなわち、洗浄タンク10内の電解水が排水口13から取水され、取水された電解水が循環経路23を通過して戻し口14から洗浄タンク10に戻される。これにより、洗浄タンク21内には、給水口12から噴出される電解水による水流と、戻し口14から噴出される電解水による水流とが生じる。
【0035】
さらに、水位センサ72により洗浄タンク10内の電解水の水位が、高レベルと検知されると(S15にてYES)、制御部51は、給水バルブ21aを閉状態とし、給水経路21からの電解水の給水を停止する(S16)。これにより、洗浄タンク21内には、戻し口14から噴出される電解水による水流だけが生じる。
【0036】
給水を停止してからたとえば所定時間経過すると(S17にてYES)、制御部51は、循環ポンプ23aをOFFにし、電解水の循環を停止する(S18)。引き続き、排水バルブ22aを開状態とし、洗浄タンク10内の電解水を排水する(S19)。なお、洗浄タンク10内の電解水は全量排水されるのではなく、一定量の電解水を残して排水されることが望ましい。
【0037】
電解水の排水が終わると、再びS11に戻り、上記処理が繰り返される。一連の食品洗浄処理は、予め設定された洗浄時間が経過した場合に終了してもよい。あるいは、サイクルごとに濃度センサ73により検知される濃度の低下度合を検出し、電解水の濃度の低下度合が所定値未満となった場合に、洗浄が完了したと判断して一連の食品洗浄処理を終了してもよい。
【0038】
電解水で青果を洗浄する場合、一般的には流水洗浄(かけ流し)されることが多いが、本実施の形態では循環経路23の戻り水の水流を利用して食品を洗浄するため、流水洗浄だけを行う食品洗浄装置に比べて節水効果がある。
【0039】
なお、本実施の形態では、電解水の給水のみが行われる給水期間、電解水の給水と電解水の循環とが並行して行われる並行期間、および、電解水の循環のみが行われる循環期間が、繰り返されることとしたが、繰り返されることなく1サイクルで終了してもよい。
【0040】
(給水口および戻し口の配置形態について)
再び図2を参照して、給水口12および戻し口14の配置形態について説明する。なお、図2において、矢印A1は洗浄タンク10の上方を示し、矢印A2は洗浄タンク10の正面方向(前方)を示している。
【0041】
洗浄タンク10の4つの側壁32は、正面側に位置する側壁32aと、正面から見て右側に位置する側壁32bと、背面側に位置して側壁32aに対面する側壁32cと、正面から見て左側に位置して側壁32bに対面する側壁32dとで構成される。
【0042】
本実施の形態において、給水口12は、たとえば背面側の側壁32cに設けられている。図6は、給水口12からの電解水の流水方向41を概念的に示す図である。図6(A)には洗浄タンク10を上から見た状態が示され、図6(B)には洗浄タンク10を正面側から見た状態が示されている。
【0043】
図6に示されるように、給水口12からの電解水の流水方向41は、背面側の側壁32cから正面側の側壁32aに向かう方向であり、底壁31と大よそ平行である。この流水方向41は、洗浄タンク10内に形成される電解水の第1の流路を規定する。第1の流路を流れる電解水は、高濃度の電解水である。給水口12の位置は、正面から見て少なくとも網カゴ11と重なる位置であり、第1の流路は網カゴ11を通過する。
【0044】
戻し口14は、側壁32cと交差する、たとえば右側の側壁32bに設けられている。図7は、戻し口14からの電解水の流水方向42を概念的に示す図である。図7(A)には洗浄タンク10を上から見た状態が示され、図7(B)には洗浄タンク10を正面側から見た状態が示されている。
【0045】
図7に示されるように、戻し口14からの電解水の流水方向42は、右側の側壁32bから左側の側壁32dに向かう方向であり、底壁31と大よそ平行である。この流水方向42は、洗浄タンク10内に形成される電解水の第2の流路を規定する。第2の流路を流れる電解水は、循環経路23からの戻り水であるため、第1の流路を流れる電解水よりも濃度が低い。戻し口14の位置もまた、正面から見て少なくとも網カゴ11と重なる位置であり、第2の流路も網カゴ11を通過する。
【0046】
なお、洗浄タンク10内に配置された網カゴ11は、給水口12および戻し口14からの水流を(できるだけ)妨げないように構成されていることが望ましい。また、典型的には、給水口12からの水量の方が、戻し口14からの水量よりも多い。
【0047】
ここで、本実施の形態では、戻し口14が給水口12よりも上に位置する。具体的には、給水口12は、中レベルL1よりも低い位置に設けられる。戻し口14は、少なくとも高レベルL2の高さよりも低く、中レベルL1付近に設けられる。
【0048】
図5のフローチャートを用いて説明したように、洗浄期間中、給水口12を介した電解水の給水と電解水の循環とが一定期間(図5のS13〜S16までの間)並行して行われる。そのため、この並行期間中、給水口12からの電解水の流水方向41(第1の流路)と、戻し口14からの電解水の流水方向42(第2の流路)とは、(ぶつかり合うことなく)立体的に交差する。図8は、このことを概念的に示す図である。図8(A)には洗浄タンク10を上から見た状態が示され、図8(B)には洗浄タンク10を正面側から見た状態が示されている。
【0049】
このように、並行期間において、洗浄タンク10内に形成される2つの流路が立体的に交差するため、被洗浄物である食品周辺の水の動きを十分に確保することができる。そのため、本実施の形態の食品洗浄装置1によれば、洗浄タンク10内において水の動きが十分でない場合に起こり得る、局所的な濃度低下を防止することができる。また、洗浄タンク10内の有効塩素濃度の均一化を図ることができる。また、食品自体にも動きが出ることで、食品に死角が生じ難くなり、食品表面への電解水の接触を促進することもできる。
【0050】
また、洗浄タンク10内に爆気を与えたり、激しい水流を生じさせたりする洗浄方法ではないため、洗浄中の食品の損傷を防止または抑制することができる。つまり、食品を傷めることなく優しく洗い上げることができる。
【0051】
さらに、本実施の形態では、給水口12が戻し口14よりも下方に位置し、底壁31に比較的近い位置にある。そのため、給水口12から流出した濃度の高い電解水が、底壁31に設けられた排水口13から循環経路23に取り込まれる。したがって、洗浄タンク10内に形成される2つの流路上を流れる電解水の濃度に極端な差が出ないため、より効果的に有効塩素濃度の均一化を図ることができる。
【0052】
また、給水口12は、洗浄タンク10の底壁31に比較的近い位置に配置されているため、第1の流路の電解水を底壁31に沿って流動させることができる。そのため、網カゴ11の底に沈む食品の洗い残しを防止することができる。さらに、微酸性電解水は気発することで塩素ガスが生じ得るが、給水口12の位置を低く設定することで、高濃度電解水の供給時に塩素ガスを洗浄タンク10内の電解水に溶かすことができる。したがって、塩素ガスの漏出を抑制することができる。
【0053】
ここで、実際には、電解水の循環が行われている間、排水口13に生じる電解水の吸引作用により、循環経路23の戻し口14から流出する電解水の一部は、対面する側壁32dまで直進せずに、底壁31の排水口13へ向かうことが想定される。そのため、図9に示すように、洗浄タンク10内には、第2の流路から下方の排水口13へ向かって分岐する第3の流路がさらに形成される。
【0054】
したがって、並行期間中においては、洗浄タンク10内に、背面側から正面側へ向かう第1の流路と、右から左へ向かう第2の流路と、この第2の流路から分岐し、上から下へ向かう第3の流路との3つの流路が形成されることになる。つまり、洗浄タンク10内には、電解水の流路が三次元方向それぞれに形成される。したがって、本実施の形態のように、洗浄期間中に、電解水の給水と電解水の循環とを並行して行う並行期間を設けることで、効率良く食品を殺菌または除菌することができる。
【0055】
なお、本実施の形態では、排水口13が、給水口12からの第1の流路の真下に位置するため、第3の流路と第1の流路とは交差し、第3の流路を流れる電解水は第1の流路を通過する構成である。しかしながら、第1の流路と第3の流路とが交差しないように、給水口12および排水口13の位置を定めてもよい。
【0056】
(変形例)
本実施の形態では、給水口12が1つだけ設けられる例を示したが、限定的ではない。つまり、複数の給水口12から一定方向(たとえば背面側から正面側)に水流を発生させてもよい。同様に、戻し口14が1つだけ設けられる例を示したが、限定的ではない。つまり、複数の戻し口14から、上記一定方向に直交する方向(たとえば右から左)に水流を発生させてもよい。
【0057】
また、排水口13が、洗浄タンク10の底壁31に設けられる例を示したが、限定的ではない。排水口13は、給水口12よりも下に位置していればよく、側壁32の下端部に設けられてもよい。つまり、排水口13は、洗浄タンク10の下部に配置されていればよい。
【0058】
また、本実施の形態では、戻し口14が給水口12よりも上に位置することとしたが、戻し口14と給水口12との上下高さが異なっていればよい。つまり、第1の流路と第2の流路とが立体的に交差していればよい。
【0059】
また、本実施の形態では、平面視において洗浄タンク10の短辺方向に沿うように給水口12からの第1の流路を形成し、洗浄タンク10の長辺方向に沿うように戻し口14からの第2の流路を形成したが、これらの方向は逆であってもよい。
【0060】
また、本実施の形態では、洗浄タンク10が平面視において略矩形形状であることとしたが、限定的ではない。たとえば、洗浄タンク10は、円形の底壁と円筒形状の側壁とで構成されていてもよい。あるいは、底壁と側壁との区別なく、洗浄タンク10の全体がたとえば半球状に形成されていてもよい。
【0061】
また、本実施の形態において、電解水は微酸性電解水であることとしたが、限定的ではなく、アルカリ性の電解水であってもよい。あるいは、殺菌または除菌成分を有する洗浄水であれば、電解水でなくてもよい。
【0062】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0063】
1 食品洗浄装置、10 洗浄タンク、11 網カゴ、12 給水口、13 排水口、14 戻し口、15 オーバーフロー口、21 給水経路、21a,22a バルブ、22 排水経路、23 循環経路、23a 循環ポンプ、31 底壁、32 側壁、41,42 流水方向、50 制御装置、51 制御部、52 記憶部、53 計時部、71,72 水位センサ、73 濃度センサ、74 操作部、90 筐体、91 蓋、93 操作ボタン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9