特許第6846906号(P6846906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6846906
(24)【登録日】2021年3月4日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】置換サリチルアルデヒド誘導体の合成
(51)【国際特許分類】
   C07D 493/08 20060101AFI20210315BHJP
【FI】
   C07D493/08 BCSP
【請求項の数】17
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2016-207841(P2016-207841)
(22)【出願日】2016年10月24日
(62)【分割の表示】特願2013-530310(P2013-530310)の分割
【原出願日】2011年9月22日
(65)【公開番号】特開2017-25096(P2017-25096A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2016年10月24日
【審判番号】不服2019-10860(P2019-10860/J1)
【審判請求日】2019年8月16日
(31)【優先権主張番号】61/385,551
(32)【優先日】2010年9月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517433669
【氏名又は名称】サウジ アラムコ テクノロジーズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジェイ ジェイ. ファーマー
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエル イー. ジョブ
【合議体】
【審判長】 瀬良 聡機
【審判官】 井上 千弥子
【審判官】 大熊 幸治
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/022388(WO,A2)
【文献】 特許第6031442(JP,B2)
【文献】 JONES,P.R.et.al.,The first examples of unsymmetrically substituted anhydro dimers of salicylaldehyde,Synthetic Communications,1988年,Vol.18,No.4,pp.433−40
【文献】 R.Tecwyn WILLIAMS,Tetra−acetyl Aldehydophenylglucosides,Journal of the Chemical Society,1940年,pp.1402−3
【文献】 QUESADA,E.et.al.,The first total syntheses of (±)−Preussomerins K and L using 2−arylacetal anion technology,Tetrahedron Letters,2004年,Vol.45,No.25,pp.4877−4881
【文献】 KULKARNI,V.S.et.al.,A facile synthesis of anhydro−dimers of o−hydroxybenzaldehydes,Synthetic Communications,1986年,Vol.16,No.2,pp.191−3
【文献】 V.B.VOLEVA et.al.,SYNTHESIS AND STRUCTURE OF ANHYDRODIMERS OF SALICYLALDEHYDES,RUSSIAN CHEMICAL BULLETIN,1995年8月,Vol.44,No.8,pp.1489−1491
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D493/08
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式D2からD8:
【化19】

のいずれか1つの化合物
(式中、
Zは、窒素またはリンであり;
Xは、ハロゲン‐C20カルボキシ;または‐C20アルキルスルホナトあり;
11、R12、R13、R21、R22、R23、R24およびR25はそれぞれ、独立して、水素‐C20アルキル;C‐C20アルケニル;C‐C20アルキルアリール;C‐C20アリールアルキル;または、ヒドロカルビルによって置換されたXIV族金属のメタロイド基であり、R11、R12およびR13のうちの2つ、もしくはR21、R22、R23、R24およびR25のうちの2つは、任意に、一緒に縮合されて、架橋構造を形成し;
31、R32およびR33はそれぞれ、独立して、水素;C‐C20アルキル;C‐C20アルケニル;C‐C20アルキルアリール;C‐C20アリールアルキル;または、ヒドロカルビルによって置換されたXIV族金属のメタロイド基であり、R31、R32およびR33のうちの2つは、任意に、一緒に縮合されて、架橋構造を形成し;
62は、水素、メチル、エチル、n‐プロピル、イソプロピル、もしくはtert‐ブチルであり;
nは1から20であり;
X´は、酸素、硫黄もしくはN‐Rであり;
Rは、水素;C‐C20アルキル;C‐C20アルケニル;C‐C20アルキルアリール;またはC‐C20アリールアルキルである。)。
【請求項2】
前記化合物は、式D5の化合物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化合物は、式D8の化合物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
各Zは、窒素である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
11、R12、R13、R21、R22、R23、R24およびR25はそれぞれ、独立して、C‐C20アルキルである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
62は、水素である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
62は、メチル、エチル、n‐プロピル、イソプロピル、もしくはtert‐ブチルである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
62は、メチルである、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
62は、tert‐ブチルである、請求項7に記載の化合物。
【請求項10】
D9、およびD11からD13:
【化20】

のいずれか1つの化合物であって、式中、X、R62およびnは、請求項1に定義するとおりである化合物。
【請求項11】
前記化合物は、式D11の化合物である、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
前記化合物は、式D12の化合物である、請求項10に記載の化合物。
【請求項13】
前記化合物は、式D13の化合物である、請求項10に記載の化合物。
【請求項14】
62は、水素である、請求項10〜13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
62は、メチル、エチル、n‐プロピル、イソプロピル、もしくはtert‐ブチルである、請求項10〜13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
62は、メチルである、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
62は、tert‐ブチルである、請求項15に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2010年9月22日に出願された米国仮出願シリアル番号61/385,551の優先権を主張し、これらの全内容は、引用により本明細書中に組み込まれる。
【0002】
本発明の技術分野
本発明は、化学合成の分野に属する。特に、本発明は、アンヒドロ二量体中間体を使用する、置換サリチルアルデヒド誘導体の合成のための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
サリチルアルデヒド1とその誘導体(例えば、式中、Rは水素以外である)は、医薬および他の生物学的に活性のある分子の合成を含む、多くの分野、ならびに、触媒反応および他の工程に使用される有機金属化合物のリガンドの形成での適用が見出され、広く使用されている化学物質である。
【0004】
【化1】
【0005】
サリチルアルデヒド誘導体の合成は、頻繁に試みられ、他のフェニル誘導体では良好な反応が、サリチルアルデヒド系に適用される場合、非常に不十分な収率である、多くの事例が文書化されている。理論によって拘束されるか、または、これによって、本発明の範囲を限定せずに、二量体材料およびオリゴマーを形成する分子間反応を介してか、または、サリチルアルデヒド誘導体の他の箇所に化学的に影響を与える試みに使用される試薬もしくは中間体を用いたこれらの官能基の望ましくない相互作用を介する、フェノールとアルデヒドの相互作用によって、不十分な収率が生じる場合が多いと考えられている。この問題への一般的なアプローチは、最終サリチルアルデヒド誘導体に必要とされる機能性を有する、置換フェノールを合成し、次いで、ホルミル化反応を行って、オルトアルデヒド基(aldehyde group ortho)を、フェノールの酸素に導入し、必要なサリチルアルデヒドを形成することである。残念なことに、かかるホルミル化反応は、中程度の収率、および/または望ましくない副産物の形成を生じる場合が多い。本発明は、この問題および他の関連する問題への解決策を提供する。
【0006】
サリチルアルデヒドの二環式アンヒドロ二量体が記載され、これらの構造は、1920年代に早くも解明された[(i)非特許文献1(ii)非特許文献2(iii)非特許文献3(iv)非特許文献4(v)非特許文献5(vi)非特許文献6]。アンヒドロ二量体に対する付加的な関心は、プロイッソメリンとして総体的に知られている、天然産物のファミリーにおける環系の同定によって刺激されたが、これらは、置換サリチルアルデヒド誘導体の合成においてマスクされたサリチルアルデヒド中間体として、これまでに利用されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Lindemann, H.; Forth, H. Liebigs Ann. Chem. 1924, 219-232.
【非特許文献2】Adams, R.; Fogler, M.F.; Kreger, C.W. J. Am. Chem. Soc. 1922, 44, 1126-1133.
【非特許文献3】Newman, M.S.; Pinkus, A.G. J. Org. Chem. 1954, 19, 996-1002.
【非特許文献4】Jones, P.R.; Gelinas, R. M. J. Org. Chem. 1981, 46, 194-196.
【非特許文献5】Ragot, J.P.; Prime, M.E.; Archibald, S.J.; Taylor, R.J.K. Org. Lett. 2000, 2, 1613-1616.
【非特許文献6】Vol’eva, V.B.; Belostotskaya, I.S.; Shishkin, O.V.; Struchkov, Y.T.; Ershov, V.V. Russ. Chem. Bull. 1995, 44, 1489-1491.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、オルト‐ホルミルのフェノール部分の反応性をマスクする好都合な合成中間体として、サリチルアルデヒドとその誘導体のアンヒドロ二量体が作用することができるという認識を包含する。ある実施態様において、本発明には、故意にこれらの二量体を形成し、二量化したサリチルアルデヒド誘導体のアリール環または置換基において化学作用させ、次いで、二量体を加水分解して、変換されたサリチルアルデヒド誘導体の2つの分子を遊離させる方法が含まれる。
【0009】
本発明は、特に、次に示す工程を含む、サリチルアルデヒド誘導体を合成する方法を提供する:a)サリチルアルデヒドまたはその誘導体を提供する工程、b)得られたサリチルアルデヒド化合物のアンヒドロ二量体を形成する工程、c)アンヒドロ二量体において1以上の化学変換を行う工程、およびd)アンヒドロ二量体を加水分解して、工程(a)で得られたものと異なるサリチルアルデヒド誘導体を提供する工程。また、本発明は、かかるサリチルアルデヒドアンヒドロ二量体を製造する方法も包含する。
【0010】
本発明は、新規のサリチルアルデヒド二量体を含む、合成物を提供する。ある実施態様において、かかるサリチルアルデヒド二量体は、触媒、特にサレン型触媒の合成に、特に有用性がある。一部の実施態様において、かかるサリチルアルデヒド二量体は、生物学的に活性のある分子の合成に、特に有用性がある。
【0011】
定義
具体的な官能基および化学用語の定義を、以下により詳細に説明する。本発明の目的で、化学元素は、元素周期表、CAS形式、「化学および物理学ハンドブック(Handbook of Chemistry and Physics)」(第75版、内表紙)に従って識別され、また、これら
に説明されるように、具体的な官能基が一般に定義される。さらに、有機化学の一般的な原理、ならびに具体的な機能的部分および反応性は、Thomas Sorrellの文献:「有機化
学(Organic Chemistry), University Science Books, Sausalito, 1999;SmithとMarchの文献:「上級有機化学(Advanced Organic Chemistry)」,第5版, John Wiley
& Sons, Inc., New York, 2001;Larockの文献:「包括的な有機変換(Comprehensive Organic Transformations)」, VCH Publishers, Inc., New York, 1989;Carruthersの文献:「有機合成の近代的方法(Some Modern Methods of Organic Synthesis)」,第3版, Cambridge University Press, Cambridge, 1987に記載されており、これらの各々の全内容は、引用により本明細書中に組み込まれる。
【0012】
本発明のある化合物は、1以上の不斉中心を含み、このため、種々の立体異性体の形態(例えば、エナンチオマー、および/またはジアステレオマー)で存在することができる。したがって、本発明の化合物とその組成物は、個々のエナンチオマー、ジアステレオマー、もしくは幾何異性体の形態であってもよいし、または、立体異性体の混合物の形態であってもよい。ある実施態様において、本発明の化合物は、エナンチオピュアな化合物(enantiopure compound)である。ある実施態様において、エナンチオマーまたはジアステ
レオマーの混合物を提供する。
【0013】
また、本明細書に説明するある化合物は、特に断りのない限り、ZまたはE異性体のいずれかとして存在することができる、1以上の二重結合を有する。さらに、本発明は、他の異性体を実質的に含まない個々の異性体としてか、または、種々の異性体の混合物(例えば、エナンチオマーのラセミ混合物)として、化合物を包含する。
【0014】
本明細書に使用する「異性体」という用語には、すべての幾何異性体および立体異性体が含まれる。例えば、「異性体」には、本発明の範囲内にある、シス異性体およびトランス異性体、E異性体およびZ異性体、RエナンチオマーおよびSエナンチオマー、ジアステレオマー、(D)異性体、(L)異性体、これらのラセミ混合物、ならびにこれらの他の混合物が含まれる。例えば、一部の実施態様において、立体異性体は、1以上の対応する立体異性体を実質的に含まないものであってもよく、また、「立体化学的に濃縮した(stereochemically enriched)」ことも意味し得る。
【0015】
特定のエナンチオマーが好ましい場合、一部の実施態様において、エナンチオマーは、相対するエナンチオマーを実質的に含まないものであってもよく、また、「光学的に濃縮した(optically enriched)」ことも意味し得る。本明細書に使用する「光学的に濃縮し
た」とは、化合物が、顕著に大きな割合の1つのエナンチオマーから構成されることを意味する。ある実施態様において、化合物は、少なくとも約90重量%の好ましいエナンチオマーから構成される。別の実施態様において、化合物は、少なくとも約95重量%、98重量%または99重量%の好ましいエナンチオマーから構成される。好ましいエナンチオマーは、キラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、ならびにキラル塩の形成および結晶化を含む、当業者に公知の方法によって、ラセミ混合物から単離されるか、または不斉合成によって調製されてもよい。例えば、Jacquesらの文献:「エナンチオマー、
ラセミ化合物、および解像能(Enantiomers, Racemates and Resolutions)」(Wiley Interscience, New York, 1981);Wilen, S.H.らの文献:Tetrahedron 33:2725 (1977);Eliel, E.L. の文献:「炭素化合物の立体化学(Stereochemistry of Carbon Compounds)」(McGraw-Hill, NY, 1962);Wilen, S.H.の文献:「分解剤のおよび光学解像度の表(Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions)」p. 268 (E.L. Eliel, Ed., Univ. of Notre Dame Press, Notre Dame, IN 1972)を参照
されたい。
【0016】
本明細書に使用する、「ハロ」および「ハロゲン」という用語は、フッ素(フルオロ、‐F)、塩素(クロロ‐Cl)、臭素(ブロモ、‐Br)、およびヨウ素(ヨード、‐I)から選択される原子を指す。
【0017】
本明細書に使用する、「脂肪族」または「脂肪族基」という用語は、直鎖(すなわち、分岐していない)であるか、分岐しているか、または環状(縮合、架橋、およびスピロ縮合を含む)であり、また、完全に飽和されているか、または、1単位以上の不飽和を含むが、芳香族ではない、炭化水素部分を意味する。別段の定めがない限り、脂肪族基は、1個から30個の炭素原子を含む。ある実施態様において、脂肪族基は、1個から12個の炭素原子を含む。ある実施態様において、脂肪族基は、1個から8個の炭素原子を含む。ある実施態様において、脂肪族基は、1個から6個の炭素原子を含む。一部の実施態様において、脂肪族基は、1個から5個の炭素原子を含む。一部の実施態様において、脂肪族
基は、1個から4個の炭素原子を含む。一部の実施態様において、脂肪族基は、1個から3個の炭素原子を含む。一部の実施態様において、脂肪族基は、1個から2個の炭素原子を含む。適切な脂肪族基には、直鎖のまたは分岐した、アルキル基、アルケニル基、およびアルキニル基、ならびに、これらのハイブリッド((シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキル、または(シクロアルキル)アルケニル等)が含まれるが、これらに限定されない。
【0018】
本明細書に使用する「不飽和」という用語は、部分が、1以上の二重結合または三重結合を有することを意味する。
【0019】
単独で、または大きな部分の一部として使用する、「脂環」、「炭素環(carbocycle)」、または「炭素環(carbocyclic)」という用語は、本明細書に説明するように、3員から
12員を有する、飽和しているか、または部分的に不飽和の環状脂肪族の単環もしくは二環の環系であって、上に定義し、本明細書に説明するように、脂肪族環系が場合により置換される、環系を意味する。脂環基には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、シクロヘプテニル、シクロオクチル、シクロオクテニル、およびシクロオクタジエニルが含まれるが、これらに限定されない。一部の実施態様において、シクロアルキルは、3個から6個の炭素を有する。また、「脂環」、「炭素環」、または「炭素環式」という用語には、1以上の芳香環または非芳香環(デカヒドロナフチルもしくはテトラヒドロナフチル等)と縮合された脂肪族環も含まれ、結合の基または箇所が脂肪族環上にある。ある実施態様において、「3員から8員炭素環」という用語は、3員から8員の飽和、または部分的に不飽和の単環式炭素環を指す。ある実施態様において、「3員から14員炭素環」、および「C3‐14炭素環」という用語は、3員から8員の飽和、もしくは部分的に不飽和の単環式炭素環、または、7員から14員の飽和、もしくは部分的に不飽和の多環式炭素環を指す。ある実施態様において、「C3‐20炭素環」という用語は、3員から8員の飽和、もしくは部分的に不飽和の単環式炭素環、または、7員から20員の飽和、もしくは部分的に不飽和の多環式炭素環を指す。
【0020】
本明細書に使用する「アルキル」という用語は、単一の水素原子の除去によって1個から6個の炭素原子を含む脂肪族部分から誘導される、飽和された、直鎖のまたは分岐した炭化水素基を指す。別段の定めがない限り、アルキル基は、1個から12個の炭素原子を含む。ある実施態様において、アルキル基は、1個から8個の炭素原子を含む。ある実施態様において、アルキル基は、1個から6個の炭素原子を含む。一部の実施態様において、アルキル基は、1個から5個の炭素原子を含む。一部の実施態様において、アルキル基は、1個から4個の炭素原子を含む。ある実施態様において、アルキル基は、1個から3個の炭素原子を含む。一部の実施態様において、アルキル基は、1個から2個の炭素原子を含む。アルキル基の例には、メチル、エチル、n‐プロピル、イソプロピル、n‐ブチル、イソブチル、sec‐ブチル、sec‐ペンチル、イソペンチル、tert‐ブチル、n‐ペンチル、ネオペンチル、n‐ヘキシル、sec‐ヘキシル、n‐ヘプチル、n‐オクチル、n‐デシル、n‐ウンデシル、ドデシル等が含まれるが、これらに限定されない。
【0021】
本明細書に使用する「アルケニル」という用語は、単一の水素原子の除去によって少なくとも1つの炭素‐炭素二重結合を有する、直鎖のまたは分岐した脂肪族部分から誘導される、1価の基を意味する。別段の定めがない限り、アルケニル基は、2個から12個の炭素原子を含む。ある実施態様において、アルケニル基は、2個から8個の炭素原子を含む。ある実施態様において、アルケニル基は、2個から6個の炭素原子を含む。一部の実施態様において、アルケニル基は、2個から5個の炭素原子を含む。一部の実施態様において、アルケニル基は、2個から4個の炭素原子を含む。一部の実施態様において、アル
ケニル基は、2個から3個の炭素原子を含む。一部の実施態様において、アルケニル基は、2個の炭素原子を含む。アルケニル基には、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、1‐メチル‐2‐ブテン‐1‐イル等が含まれる。
【0022】
本明細書に使用する「アルキニル」という用語は、単一の水素原子の除去によって少なくとも1つの炭素‐炭素三重結合を有する、直鎖のまたは分岐した脂肪族部分から誘導される、1価の基を意味する。別段の定めがない限り、アルキニル基は、2個から12個の炭素原子を含む。ある実施態様において、アルキニル基は、2個から8個の炭素原子を含む。ある実施態様において、アルキニル基は、2個から6個の炭素原子を含む。一部の実施態様において、アルキニル基は、2個から5個の炭素原子を含む。一部の実施態様において、アルキニル基は、2個から4個の炭素原子を含む。一部の実施態様において、アルキニル基は、2個から3個の炭素原子を含む。一部の実施態様において、アルキニル基は、2個の炭素原子を含む。代表的なアルキニル基には、エチニル、2‐プロピニル(プロパルギル)、1‐プロピニル等が含まれるが、これらに限定されない。
【0023】
単独で、または「アラルキル」、「アラルコキシ」、または「アリールオキシアルキル」の大きな部分の一部として使用する、「アリール」という用語は、併せて5員環から20員環を有する、単環および多環の環系であって、該系の少なくとも1つが芳香族であり、かつ該系のそれぞれの環が、3員環から12員環を含む、環系を指す。「アリール」という用語は、「アリール環」という用語と区別なく使用されてもよい。本発明のある実施態様において、「アリール」とは、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラシル等を含むが、これらに限定されない、芳香環系であって、1以上の置換基を有し得る、芳香環系をいう。また、本明細書に使用する場合、「アリール」という用語の範囲内に含まれるものは、芳香環が、ベンゾフラニル、インダニル、フタルイミジル、ナフトイミジル(naphthimidyl)、フェナントリイジニル(phenantriidinyl)、またはテトラヒドロナフチル等
のうちの1以上の付加的な環と縮合された基である。ある実施態様において、「8員から14員アリール」という用語は、8員から14員の多環式アリール環を指す。
【0024】
単独で、または大きな部分(例えば、「ヘテロアラルキル」、または「ヘテロアラルコキシ」)の一部として使用する、「ヘテロアリール」、および「heteroar-」という用語
は、5個から14個の環原子(好ましくは、5個、6個もしくは9個の環原子)を有する基;環状アレイ(cyclic array)に6個、10個または14個のπ電子を共有する基;お
よび、炭素原子に加えて、1個から5個のヘテロ原子を有する基を指す。「ヘテロ原子」という用語は、窒素、酸素、または硫黄を指し、これには、窒素または硫黄の酸化形態、および塩基性窒素の四級化形態が含まれる。ヘテロアリール基には、チエニル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、インドリジニル、プリニル、ナフチリジニル、ベンゾフラニル、およびプテリジニルが含まれるが、これらに限定されない。また、本明細書に使用する、「ヘテロアリール」、および「heteroar-」という用語に
は、複素芳香環が、アリール、脂環、またはヘテロシクリル環のうちの1以上と縮合され、結合の基または箇所が複素芳香環上にある基も含まれる。非限定例には、インドリル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンズチアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、4H‐キノリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、およびピリド[2,3‐b]‐1,4‐オキサジン‐3
(4H)‐オンが含まれる。ヘテロアリール基は、単環または二環であってもよい。「ヘテロアリール」という用語は、「ヘテロアリール環」、「ヘテロアリール基」、または「複素芳香族」という用語と区別なく使用されてもよく、これらの用語のいずれには、場合
により置換される環が含まれる。「ヘテロアラルキル」という用語は、ヘテロアリールによって置換されたアルキル基であって、場合により、アルキルおよびヘテロアリール部分が独立して置換される、アルキル基を指す。ある実施態様において、「5員から10員ヘテロアリール」という用語は、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択された1個から3個のヘテロ原子を有する、5員から6員ヘテロアリール環、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択された1個から4個のヘテロ原子を有する、8員から10員二環式ヘテロアリール環を指す。ある実施態様において、「5員から12員ヘテロアリール」という用語は、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択された1個から3個のヘテロ原子を有する、5員から6員ヘテロアリール環、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択された1個から4個のヘテロ原子を有する、8員から12員二環式ヘテロアリール環を指す。
【0025】
本明細書に使用する、「複素環(heterocycle)」、「ヘテロシクリル」、「複素環基」
、および「複素環(heterocyclic ring)」という用語は、区別なく使用され、飽和されているか、または部分的に不飽和であり、また、炭素原子に加えて、上に定義する、1個以上の(好ましくは1個から4個の)ヘテロ原子を有する、安定した5員から7員単環式、または7員から14員二環式複素環部分を指す。複素環の環原子に関して使用される場合、「窒素」という用語には、置換された窒素が含まれる。例として、酸素、硫黄、もしくは窒素から選択される0個から3個のヘテロ原子を有する、飽和しているか、または部分的に不飽和の環において、窒素は、N(3,4‐ジヒドロ‐2H‐ピロリル中の)、NH(ピロリジニル中の)、またはNR(N‐置換ピロリジニル中の)であってもよい。一部の実施態様において、「3員から7員複素環」という用語は、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択された1個から2個のヘテロ原子を有する、3員から7員の、飽和しているか、または、部分的に不飽和の単環式複素環を指す。一部の実施態様において、「3員から8員複素環」という用語は、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択された1個から2個のヘテロ原子を有する、3員から8員の、飽和しているか、または、部分的に不飽和の単環式複素環を指す。
【0026】
複素環は、安定した構造が生じるヘテロ原子または炭素原子の懸垂基に結合することができ、また、環原子のうちのいずれかは、場合により置換することができる。かかる飽和しているか、または部分的に不飽和の複素環基の例には、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、ピロリジニル、ピロリドニル、ピペリジニル、ピロリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、ジオキサニル、ジオキソラニル、ジアゼピニル、オキサアゼピニル(oxazepinyl)、チアゼピニル(thiazepinyl)、モルホリニル、およびキヌクリジニルが含まれ
るが、これらに限定されない。「複素環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロシクリル環」、「複素環基(heterocyclic group)」、「複素環部分」、そして「複素環基(heterocyclic radical)」という用語は、区別なく本明細書に使用され、また、ヘテロシクリル環が、アリール、ヘテロアリール、または脂環(インドリニル、3H‐インドリル、クロマニル、フェナントリジニル、もしくはテトラヒドロキノリニル等)のうちの1以上と縮合され、結合の基または箇所がヘテロシクリル環上にある基も含まれる。ヘテロシクリル基は、単環または二環であってもよい。「ヘテロシクリルアルキル」という用語は、ヘテロシクリルによって置換されたアルキル基であって、場合により、アルキルおよびヘテロシクリル部分が独立して置換される、アルキル基を指す。
【0027】
本明細書に使用する「部分的に不飽和」という用語は、少なくとも1つの二重結合または三重結合を含む、環部分を指す。「部分的に不飽和」という用語は、不飽和の複数の部位がある環を包含することを意図するが、本明細書に定義するように、アリールまたはヘテロアリール部分を含むことを意図しない。
【0028】
当業者は、本明細書に説明する合成法が、種々の保護基を利用できることを認識する。本明細書に使用する「保護基」という用語は、特定の機能的部分(例えば、O、S、もしくはN)が、マスクされるか、またはブロックされることを意味し、必要に応じて、反応が、多官能化合物において、他の反応部位で選択的に行われることを可能にする。一部の実施態様において、保護基は、良好な収率で選択的に反応して、計画された反応に対して安定した、保護基質を生ずる。保護基は、容易に入手可能で、他の官能基を攻撃しない、無毒性であることが好ましい試薬によって、選択的に除去可能であることが好ましい。保護基は、分離可能な誘導体(より好ましくは、新規の立体中心の発生のない)を形成する。また、保護基は、好ましくは、反応の更なる部位を無効にする最小限の付加的機能性を有する。非限定例として、ヒドロキシル保護基には、メチル、メトキシルメチル(MOM)、メチルチオメチル(MTM)、t‐ブチルチオメチル、(フェニルジメチルシリル)メトキシメチル(SMOM)、ベンジルオキシメチル(BOM)、p‐メトキシベンジルオキシメチル(PMBM)、(4‐メトキシフェノキシ)メチル(p‐AOM)、グアイアコルメチル(guaiacolmethyl)(GUM)、t‐ブトキシメチル、4‐ペンテニルオキシメチル(POM)、シロキシメチル、2‐メトキシエトキシメチル(MEM)、2,2,2‐トリクロロエトキシメチル、ビス(2‐クロロエトキシ)メチル、2‐(トリメチルシリル)エトキシメチル(SEMOR)、テトラヒドロピラニル(THP)、3‐ブロモテトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、1‐メトキシシクロヘキシル、4‐メトキシテトラヒドロピラニル(MTHP)、4‐メトキシテトラヒドロチオピラニル、4‐メトキシテトラヒドロチオピラニルS,S‐ジオキシド、1‐[(2‐クロロ‐4‐メチル)フェニル]‐4‐メトキシピペリジン‐4‐イル(CTMP)、1,4‐ジオキサン‐2‐イル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフラニル、2,3,3a,4,5,6,7,7a‐オクタヒドロ‐7,8,8‐トリメチル‐4,7‐メタノベンゾフラン‐2‐イル、1‐エトキシエチル、1‐(2‐クロロエトキシ)エチル、1‐メチル‐1‐メトキシエチル、1‐メチル‐1‐ベンジルオキシエチル、1‐メチル‐1‐ベンジルオキシ‐2‐フルオロエチル、2,2,2‐トリクロロエチル、2‐トリメチルシリルエチル、2‐(フェニルセレニル)エチル、t‐ブチル、アリル、p‐クロロフェニル、p‐メトキシフェニル、2,4‐ジニトロフェニル、ベンジル、p‐メトキシベンジル、3,4‐ジメトキシベンジル、o‐ニトロベンジル、p‐ニトロベンジル、p‐ハロベンジル、2,6‐ジクロロベンジル、p‐シアノベンジル、p‐フェニルベンジル、2‐ピコリル、4‐ピコリル、3‐メチル‐2‐ピコリルN‐オキシド、ジフェニルメチル、p,p’‐ジニトロベンズヒドリル、5‐ジベンゾスベリル、トリフェニルメチル、α‐ナフチルジフェニルメチル、p‐メトキシフェニルジフェニルメチル、ジ(p‐メトキシフェニル)フェニルメチル、トリ(p‐メトキシフェニル)メチル、4‐(4'‐ブロモ
フェナシルオキシフェニル)ジフェニルメチル(4-(4'-bromophenacyloxyphenyl)diphenylmethyl)、4,4’,4”‐トリス(4,5‐ジクロロフタルイミドフェニル)メチル、
4,4’,4”‐トリス(レブリノイルオキシフェニル)メチル(4,4',4''-tris(levulinoyloxyphenyl)methyl)、4,4’,4”‐トリス(ベンゾイルオキシフェニル)メチル、
3‐(イミダゾール‐1‐イル)ビス(4',4''‐ジメトキシフェニル)メチル、1,1‐ビス(4-メトキシフェニル)‐1'‐ピレニルメチル、9‐アントリル、9‐(9‐フェニル)キサンテニル、9‐(9‐フェニル‐10‐オキソ)アントリル、1,3‐ベンゾジチオラン‐2‐イル、ベンズイソチアゾリルS,S‐ジオキシド、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、トリイソプロピルシリル(TIPS)、ジメチルイソプロピルシリル(IPDMS)、ジエチルイソプロピルシリル(DEIPS)、ジメチルテキシルシリル、t‐ブチルジメチルシリル(TBDMS)、t‐ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、トリベンジルシリル、トリ‐p‐キシリルシリル、トリフェニルシリル、ジフェニルメチルシリル(DPMS)、t‐ブチルメトキシフェニルシリル(TBMPS)、蟻酸塩、ベンゾイルホルマート、酢酸塩、クロロアセタート、ジクロロアセタート、トリクロロアセタート、トリフルオロアセタート、メトキシアセタート、トリフェニルメトキシアセタート、フェノキシアセタート、p‐クロロフェノキシアセター
ト、3‐フェニルプロピオナート、4‐オキソペンタノアート(レブリナート)、4,4‐(エチレンジチオ)ペンタノアート(レブリノイルジチオアセタール(levulinoyldithioacetal))、ピバロアート(pivaloate)、アダマントアート(adamantoate)、クロトナート、4‐メトキシクロトナート、安息香酸塩、p‐フェニルベンゾアート、2,4,6‐トリメチルベンゾアート(メシトエート)、アルキルメチルカルボナート、9‐フルオレニルメチルカルボナート(Fmoc)、アルキルエチルカルボナート、アルキル2,2,2‐トリクロロエチルカルボナート(Troc)、2‐(トリメチルシリル)エチルカルボナート(TMSEC)、2‐(フェニルスルホニル)エチルカルボナート(Psec)、2‐(トリフェニルホスホニオ)エチルカルボナート(Peoc)、アルキルイソブチルカルボナート、アルキルビニルカルボナート、アルキルアリルカルボナート、アルキルp‐ニトロフェニルカルボナート、アルキルベンジルカルボナート、アルキルp‐メトキシベンジルカルボナート、アルキル3,4‐ジメトキシベンジルカルボナート、アルキルo‐ニトロベンジルカルボナート、アルキルp‐ニトロベンジルカルボナート、アルキルS‐ベンジルチオカルボナート、4‐エトキシ‐1‐ナフチルカルボナート(4-ethoxy-1-napththyl carbonate)、メチルジチオカルボナート、2‐ヨードベンゾアート、4‐アジ
ドブチラート、4‐ニトロ‐4‐メチルペンタノアート、o‐(ジブロモメチル)ベンゾアート、2‐ホルミルベンゼンスルホナート、2‐(メチルチオメトキシ)エチル、4‐(メチルチオメトキシ)ブチラート、2‐(メチルチオメトキシメチル)ベンゾアート、2,6‐ジクロロ‐4‐メチルフェノキシアセタート、2,6‐ジクロロ‐4‐(1,1,3,3‐テトラメチルブチル)フェノキシアセタート、2,4‐ビス(1,1‐ジメチルプロピル)フェノキシアセタート、クロロジフェニルアセタート、イソブチラート、モノスクシナート(monosuccinoate)、(E)‐2‐メチル‐2‐ブテノアート、o‐(メトキシカルボニル)ベンゾアート、α‐ナフトアート、硝酸塩、アルキルN,N,N’,N’‐テトラメチルホスホロジアミダート、アルキルN‐フェニルカルバマート、ホウ酸塩、ジメチルホスフィノチオイル、アルキル2,4‐ジニトロフェニルスルフェナート、硫酸塩、メタンスルホナート(メシラート)、ベンジルスルホナート、およびトシラート(Ts)が含まれる。例示的な保護基、本明細書に詳述されるが、本開示が、これらの保護基に限定されることを意図しないことが認識される。むしろ、種々の付加的な同等の保護基を、上述の基準を使用し、容易に特定することができ、また、本開示の方法に利用することができる。さらに、種々の保護基は、GreeneとWutsに文献(下記)に記載されている。
【0029】
本明細書に説明するように、本発明の化合物は、「場合により置換される」部分を含んでいてもよい。一般に、「置換される」という用語は、「場合により」という用語が先行するか、または先行しないにかかわらず、明示する部分の1以上の水素が、適切な置換基と置換されることを意味する。特に断りのない限り、「場合により置換される」基は、該基のそれぞれの置換可能な位置で、適切な置換基を有し、所定の構造における1つを超える位置が、明示する基から選択された1つを超える置換基と置換することができる場合、置換基は、すべての位置で同じか、または異なる。本発明で想定される置換基の組合せは、安定しているか、または化学的に実現可能な化合物の形成で得られるものが好ましい。本明細書に使用する「安定した」という用語は、化合物の生成、検出、およびある実施態様において、これらの回収、精製を可能にする条件、ならびに、本明細書に開示する目的のうちの1以上に使用する条件に供する場合、実質的に変化しない化合物を指す。
【0030】
「場合により置換される」基の置換可能な炭素原子における適切な1価の置換基は、独立して、ハロゲン;‐(CH0‐4R°;‐(CH0‐4OR°;‐O‐(CH0‐4C(O)OR°;‐(CH0‐4CH(OR°);‐(CH0‐4SR°;R°と置換されてもよい、‐(CH0‐4Ph;R°と置換されてもよい、‐(CH0‐4O(CH0‐1Ph;R°と置換されてもよい、‐CH=CHPh;‐NO;‐CN;‐N;‐(CH0‐4N(R°);‐(CH0‐4
N(R°)C(O)R°;‐N(R°)C(S)R°;‐(CH0‐4N(R°)C(O)NR°;‐N(R°)C(S)NR°;‐(CH0‐4N(R°)C(O)OR°;‐N(R°)N(R°)C(O)R°;‐N(R°)N(R°)C(O)NR°;‐N(R°)N(R°)C(O)OR°;‐(CH0‐4C(O)R°;‐C(S)R°;‐(CH0‐4C(O)OR°;‐(CH0‐4C(O)N(R°);‐(CH0‐4C(O)SR°;‐(CH0‐4C(O)OSiR°;‐(CH0‐4OC(O)R°;‐OC(O)(CH0‐4SR‐、SC(S)SR°;‐(CH0‐4SC(O)R°;‐(CH0‐4C(O)NR°;‐C(S)NR°;‐C(S)SR°;‐SC(S)SR°、‐(CH0‐4OC(O)NR°;‐C(O)N(OR°)R°;‐C(O)C(O)R°;‐C(O)CHC(O)R°;‐C(NOR°)R°;‐(CH0‐4SSR°;‐(CH0‐4S(O)R°;‐(CH0‐4S(O)OR°;‐(CH0‐4OS(O)R°;‐S(O)NR°;‐(CH0‐4S(O)R°;‐N(R°)S(O)NR°;‐N(R°)S(O)R°;‐N(OR°)R°;‐C(NH)NR°;‐P(O)R°;‐P(O)R°;‐OP(O)R°;‐OP(O)(OR°);SiR°;‐(C1‐4直鎖または分岐アルキレン)O‐N(R°);ま
たは、‐(C1‐4直鎖または分岐アルキレン)C(O)O‐N(R°)(式中、R°は、下に定義するように置換されてもよく、かつ、独立して、水素、C1‐8脂肪族、‐CHPh、O(CH0‐1Ph、または、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択された0個から4個のヘテロ原子を有する、飽和されているか、もしくは部分的に不飽和の5員環から6員環、またはアリール環であるか、または、上の定義にもかかわらず、2つの独立したR°の発生は、これらの介在する原子と一緒になって、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択された0個から4個のヘテロ原子を有する、飽和されているか、もしくは部分的に不飽和の3員環から12員環、またはアリール単環、もしくはアリール多環を形成し、下に定義するように置換されてもよい。)である。
【0031】
R°における適切な1価の置換基(または、これらの介在する原子と一緒になって、2つの独立したR°が発生することによって形成された環)は、独立して、ハロゲン;‐(CH0‐2、‐(ハロR)、‐(CH0‐2OH、‐(CH0‐2OR、‐(CH0‐2CH(OR;‐O(ハロR)、‐CN、‐N、‐(CH0‐2C(O)R、‐(CH0‐2C(O)OH、‐(CH0-2
(O)OR、‐(CH0-4C(O)N(R°);‐(CH0‐2SR
‐(CH0‐2SH、‐(CH0‐2NH、‐(CH0‐2NHR、‐(CH0‐2NR、‐NO、‐SiR、‐OSiR、‐C(O)SR、‐(C1‐4直鎖または分岐アルキレン)C(O)OR、または‐SSR(式中、Rはそれぞれ、置換されていないか、もしくは、「ハロ」が先行する箇所で、1以上のハロゲンのみと置換され、かつ、独立して、C1‐4脂肪族、‐CHPh、‐O(CH0‐1Ph、または、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択された0個から4個のヘテロ原子を有する、飽和されているか、もしくは部分的に不飽和の5員環から6員環、またはアリール環である。)である。R°の飽和炭素原子における適切な2価の置換基には、=Oおよび=Sが含まれる。
【0032】
「場合により置換される」基の飽和炭素原子における適切な2価の置換基には、次に示すものが含まれる:=O、=S、=NNR、=NNHC(O)R、=NNHC(O)OR、=NNHS(O)、=NR、=NOR、‐O(C(R))2‐3O‐、または‐S(C(R))2‐3S‐(式中、Rの独立した発生はそれぞれ、水素、下に定義するように、置換されてもよいC1‐6脂肪族、または、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択された0個から4個のヘテロ原子を有する、飽和されているか、部分的に不飽和の5員環から6員環、またはアリール環から選択される。)。「場合により置換される」基の隣接する置換可能な炭素に結合される、2価の置換基には、次
に示すものが含まれる:‐O(CR2‐3O‐(式中、Rの独立した発生はそれぞれ、水素、下に定義するように、置換されてもよいC1‐6脂肪族、または、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択された0個から4個のヘテロ原子を有する、飽和されているか、部分的に不飽和の非置換5員環から6員環、またはアリール環から選択される。)。
【0033】
の脂肪族基における適切な置換基には、ハロゲン、‐R、‐(ハロR)、‐OH、‐OR、‐O(ハロR)、‐CN、‐C(O)OH、‐C(O)OR、‐NH、‐NHR、‐NR、または‐NO(式中、Rはそれぞれ、置換されていないか、もしくは、「ハロ」が先行する箇所で、1以上のハロゲンのみと置換され、かつ、独立して、C1‐4脂肪族、‐CHPh、‐O(CH0‐1Ph、または、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択された0個から4個のヘテロ原子を有する、飽和されているか、もしくは部分的に不飽和の5員環から6員環、またはアリール環である。)が含まれる。
【0034】
「場合により置換される」基の置換可能な窒素における適切な置換基には、‐R、‐NR、‐C(O)R、‐C(O)OR、‐C(O)C(O)R、‐C(O)CHC(O)R、‐S(O)、‐S(O)NR、‐C(S)NR、‐C(NH)NR、または‐N(R)S(O)(式中、Rはそれぞれ、独立して、水素、下に定義するように、置換されてもよいC1‐6脂肪族、非置換の‐OPh、または、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択された0個から4個のヘテロ原子を有する、飽和されているか、部分的に不飽和の非置換5員環から6員環、もしくはアリール環、または、上の定義にもかかわらず、2つの独立したRの発生は、これらの介在する原子と一緒になって、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択された0個から4個のヘテロ原子を有する、飽和されているか、もしくは部分的に不飽和の非置換3員環から12員環、またはアリール単環、もしくはアリール二環を形成する。)が含まれる。
【0035】
の脂肪族基における適切な置換基は、独立して、ハロゲン、‐R、‐(ハロR)、‐OH、‐OR、‐O(ハロR)、‐CN、‐C(O)OH、‐C(O)OR、‐NH、‐NHR、‐NR、または‐NO(式中、Rはそれぞれ、置換されていないか、もしくは、「ハロ」が先行する箇所で、1以上のハロゲンのみと置換され、かつ、独立して、C1‐4脂肪族、‐CHPh、‐O(CH0‐1Ph、または、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択された0個から4個のヘテロ原子を有する、飽和されているか、もしくは部分的に不飽和の5員環から6員環、またはアリール環である。)である。
【0036】
本明細書の一部の化学構造において、置換基は、表された分子の他の結合と交差する結合に結合することが示される。これは、有効な位置(通常、親構造の水素原子の代わりの)で、分子に1以上の置換基が結合できることを意味する。置換された分子の原子が、2つの置換可能な位置を有する場合、2つの基が同じ原子に存在し得る。1つを超える置換基が存在する場合、それぞれは、他のものと独立して定義され、それぞれは、種々の構造を有し得る。分子の結合と交差して示される置換基が‐Rである場合、これは、先行する段落に説明するように、環が「場合により置換される」と表現するかの如く、同じ意味を有する。
【0037】
本明細書に使用する「サリチルアルデヒド」という用語は、置換された、または非置換の2‐ヒドロキシベンズアルデヒドを意味する。
【0038】
本明細書に使用する「アンヒドロ二量体」という用語は、水の喪失によるオルトホルミルフェノールの2つの分子の反応から形成された、分子を指す。この二量体が、具体的に
定義された構造を有することを本明細書に示すが、本明細書に開示する方法は、この正確な構造に限定されず、このため、形成され得る他の二量体または偽二量体の化合物を包含する。
【0039】
本明細書に使用する「化学変換」という用語は、アンヒドロ二量体で行うことができる化学反応を指す。一部の実施態様において、かかる化学変換は、アンヒドロ二量体の二環式アセタール部分における相当な程度の望ましくない反応を生じない。このため、導入された官能基は、二量体の加水分解に使用される化学物質と実質的に相溶性があり、サリチルアルデヒド生成物を回収する。一部の実施態様において、アンヒドロ二量体において行われる化学変換には、アルキル化、アリール化、およびアシル化等の炭素‐炭素結合形成反応;ハロゲン化、ニトロ化、酸化、シリル化、メタル化等を含むが、これらに限定されない炭素‐ヘテロ原子結合形成反応、ならびに、酸化、還元、付加、保護、脱保護、付加環化、アミノ化、脱カルボキシル化、クリック反応、遷移金属触媒カップリング、メタセシス、アルキル化、エステル化、水素化処理、カップリング反応等を含むが、これらに限定されない、アリール環に存在する官能基の変換が含まれる。
【0040】
本明細書に使用するTBDとは、1,5,7‐トリアザビシクロ[4.4.0]デカ‐5‐エンをいう。
【発明を実施するための形態】
【0041】
一態様において、本発明は、次に示す工程を含む、サリチルアルデヒド誘導体を合成する方法を包含する:a)サリチルアルデヒドまたはその誘導体を提供する工程、b)得られたサリチルアルデヒド化合物のアンヒドロ二量体を形成する工程、c)アンヒドロ二量体において1以上の化学変換を行う工程、およびd)アンヒドロ二量体を加水分解して、工程(a)で得られたものと異なるサリチルアルデヒド誘導体を提供する工程。
【0042】
一部の実施態様において、提供する方法は、a)サリチルアルデヒドまたはその誘導体を提供する工程と、b)得られたサリチルアルデヒド化合物のアンヒドロ二量体を形成する工程と、を含む。ある実施態様において、提供する方法は、アンヒドロ二量体において1以上の化学変換を行う工程をさらに含む。一部の実施態様において、提供する方法は、アンヒドロ二量体を加水分解して、工程(a)で得られたものと異なるサリチルアルデヒド誘導体を提供する工程をさらに含む。
【0043】
一部の実施態様において、提供する方法は、a)サリチルアルデヒドを脱水して、アンヒドロ二量体を形成する工程と、b)1以上の位置において、アンヒドロ二量体の少なくとも1つの芳香環をアルキル化する工程と、c)アルキル化されたアンヒドロ二量体を加水分解して、アルキル化されたサリチルアルデヒド(salicyladehyde)誘導体を回収する工程と、を含む。
【0044】
アンヒドロ二量体の形成は、当該技術分野で公知のもの等の適切な条件を用いて行うことができる。一般的な条件は、脱水剤の存在下で酸触媒を使用する。かかる方法の1つは、硫黄またはアルキルスルホン酸触媒の存在下で酸無水物を使用する。塩化チオニル、リン酸化物、ジアルキルジカルボナート(dialkyldicarbonate)等の他の脱水試薬、ならびに、共沸(ディーンシュタルク等)によって水を除去するか、または、吸着剤に依存して、物理的に水を隔離する(分子ふるい、無水塩等)、脱水反応条件に基づくものを含めて、他の多くの方法を使用できることが当業者に明らかである。
【0045】
同様に、置換されたサリチルアルデヒドを回収するアンヒドロ二量体の加水分解は、文献の手順を用いて行うことができる。これらは、通常、水性鉱酸等のプロトン性溶媒での酸性処理を使用するが、他の加水分解条件を用いることができることが当業者に明らかで
ある。多くの例が、アセタールおよびケタールの加水分解を説明する文献から利用可能である。また、これらの条件のいずれも、本発明の実施態様に用いてもよい。
【0046】
アンヒドロ二量体段階で行われた化学変換は、まったく多様であることができ、唯一の限定は、使用される試薬および条件が、アンヒドロ二量体の二環式アセタール部分における相当な程度の望ましくない反応を生じず、導入された官能基が、二量体の加水分解に使用される化学物質と実質的に相溶性があり、サリチルアルデヒド生成物を回収することを必要とする、実用的なものである。一部の実施態様において、複数のかかる反応は、アンヒドロ二量体で行い、その後、該二量体の加水分解によって、最終的に置換されたサリチルアルデヒド誘導体を回収する。
【0047】
ある実施態様において、本明細書に説明する方法および化合物は、公知の金属錯体および/またはそのリガンドの合成に有用である。一部の実施態様において、本明細書に説明する方法および化合物は、国際公開公報第2008136591号、同2010013948号、同2010022388号、同2009137540号、同2008150033号、米国特許出願公開第2010029896号、米国特許第6,870,004号、同7,304,172号、特開2010‐001443号、中国特許第101020747号、同10229276号、J. Am. Chem. Soc., 2007, 129, p. 8082-83, Bull. Korean Chem. Soc., 2009, Vol. 30, No. 3 p. 745-748, Angew. Chem.
Int. Ed. 2008, 47, 7306-9, Angew. Chem. Int. Ed. 2006, 45, 7274-7277, J. Am. Chem. Soc. 2009, p. 11509、およびMacromolecules, 2010, 43 (3), p. 1396-1402に記載される、化合物の合成に有用である(これらの各々の全内容は
、引用により本明細書中に組み込まれる。)。
【0048】
I.炭素‐炭素結合形成反応
ある実施態様において、アンヒドロ二量体における1以上の化学変換を行う工程は、1以上の位置において、アンヒドロ二量体の少なくとも1つの芳香環で炭素‐炭素結合形成反応を行うことを含む。ある実施態様において、アンヒドロ二量体の少なくとも1つの芳香環での炭素‐炭素結合形成反応は、1以上の位置において、アンヒドロ二量体の少なくとも1つの芳香環をアルキル化することを含む。
【0049】
ある実施態様において、アルキル化は、アンヒドロ二量体を含む両方のサリチルアルデヒド(salicylaldhyde)分子において同等に生じる。ある実施態様において、この工程は、アリール環における非炭素置換基(Q)を、炭素原子に置換することを伴う。ある実施態様において、かかる方法は、次に示すスキーム1に従って進行する。
【0050】
【化2】
(式中、Rは、アリール環の1以上の位置で、場合により存在する、1以上の非水素置換基を表し、‐R基はそれぞれ、独立して選択され、以下に定義するとおりであり;‐Qは、アリール環に存在する1以上の置換可能な基を表し、また、「-alkyl」は、炭素原子(脂肪族、アシル、アリール等を含む)を介してアリール環に結合し、かつ1以上の‐Q基の代わりに、アリール環で導入される、1以上の部分を表す。)。
【0051】
ある実施態様において、スキーム1の‐Q基は、‐H、F、Cl、Br、I、‐B(OR、‐OSO、およびこれらのうちの2以上の組合せからなる群より選択される。
【0052】
ある実施態様において、スキーム1の‐Q基は‐Hである。ある実施態様において、オルト位、パラ位またはオルト位、およびパラ位の‐Hは、炭素原子と置換される。
【0053】
ある実施態様において、アルキル化は、出発サリチルアルデヒドのヒドロキシル基に対して、非置換芳香環のオルト位で生じる。
【0054】
【化3】


(式中、‐R基は、以下に定義するとおりであり、また、「-alkyl」は、炭素原子(脂肪族、アシル、アリール等を含む)を介してアリール環に結合する部分を表す。)。
【0055】
ある実施態様において、アルキル化は、出発サリチルアルデヒドのヒドロキシル基に対して、芳香環のパラ位で生じる。ある実施態様において、この工程は、次に示すスキームに従って進行する。
【0056】
【化4】

(式中、‐R基は、以下に定義するとおりであり、また、「-alkyl」は、上に定義するとおりである。)。
【0057】
一部の実施態様において、ビスアルキル化は、出発サリチルアルデヒドのヒドロキシル基に対して、芳香環のオルト位およびパラ位で生じる。ある実施態様において、この工程は、次に示すスキームに従って進行する。
【0058】
【化5】

(式中、‐R基は、以下に定義するとおりであり、また、「-alkyl」は、上に定義するとおりである。)。
【0059】
ある実施態様において、提供する方法は、第1のアルキル化試薬を使用する、第1のアルキル化工程と、第2のアルキル化試薬を使用する、第2のアルキル化工程とを含み、第1のアルキル化試薬と第2のアルキル化試薬が異なる。ある実施態様において、第1のアルキル化(alkyating)工程は、アリールのパラ位で、出発サリチルアルデヒドのフェノー
ルのヒドロキシ基に、置換基を導入し、また、第2のアルキル化工程は、アリールのオルト位で、出発サリチルアルデヒドのフェノールのヒドロキシ基に、異なる置換基を導入する。別の実施態様において、第1のアルキル化(alkyating)工程は、アリールのオルト位
で、出発サリチルアルデヒドのフェノールのヒドロキシ基に、置換基を導入し、また、第2のアルキル化工程は、アリールのパラ位で、出発サリチルアルデヒドのフェノールのヒドロキシ基に、異なる置換基を導入する。ある実施態様において、これらの工程は、次に
示すスキームに従って進行する。
【0060】
【化6】

(式中、‐R基は、以下に定義するとおりであり、また、「-alkyl」は、上に定義するとおりである。)。
【0061】
一部の実施態様において、出発サリチルアルデヒドは、フェノールに対して、アリールのオルト位で置換され、また、アルキル化工程は、アリールのパラ位で、フェノールのヒドロキシル基に置換基を導入する。
【0062】
一部の実施態様において、出発サリチルアルデヒドは、フェノールに対して、アリールのパラ位で置換され、また、アルキル化工程は、アリールのオルト位で、フェノールのヒドロキシル基に置換基を導入する。
【0063】
ある実施態様において、アルキル化は、Hから、場合により置換される脂肪族基に、アンヒドロ二量体のRを変換する。ある実施態様において、Rで導入された、任意に置換される脂肪族基は、任意に置換されるC1‐20脂肪族、および任意に置換されるアリールからなる群より選択される。
【0064】
ある実施態様において、芳香環をアルキル化する工程は、フリーデル・クラフツ条件下で、アンヒドロ二量体を反応させることを含む。ある実施態様において、芳香環をアルキル化する工程は、フリーデル・クラフツアルキル化条件またはアシル化条件下で、アンヒドロ二量体を反応させることを含む。フリーデル・クラフツ反応に適切な試薬および条件は、当該技術分野で周知である。かかる変換のための例示的な条件には、Jerry Marchの文献:「上級有機化学(ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY)」, 第4版, pp 534-552と、
該文献に引用される参考文献に見出されたものが含まれるが、これらに限定されない。
【0065】
ある実施態様において、フリーデル・クラフツアルキル化条件は、次に示すものからなる群より選択される化合物のうちの少なくとも1つと、アンヒドロ二量体を反応させることを含む:ルイス酸およびプロトン酸からなる群より選択されるプロモーターの存在下で、アルケン、アルコール、ハロゲン化アルキル、およびこれらのうちの2以上の混合物。
【0066】
ある実施態様において、炭素‐炭素結合形成反応を行う工程は、遷移金属触媒および適切な試薬と、アンヒドロ二量体を反応させて、新しい炭素結合置換基を導入することを含む。ある実施態様において、かかる遷移金属触媒炭素‐炭素結合形成反応は、アンヒドロ二量体と適切な試薬の間で発生し、アンヒドロ二量体および試薬が、相補的なカップリング基を有する。適切なカップリング反応が当業者に周知であり、これは、一般に、電子求
引性基(EWG)(例えば、Cl、Br、I、OTf、OT、OM等)を有する、アンヒドロ(anydro)二量体または試薬のいずれかを含み、生じる極性炭素‐EWG結合は、電子を多く含む金属(例えば、低原子価パラジウムまたはニッケル種)、および陽性基(例えば、ボロン酸、ホウ素エステル、ボラン、スタンナン、シリル種、亜鉛種、アルミニウム種、マグネシウム種、ジルコニウム種等)の相補的なカップリング基による酸化的付加の影響を受けやすく、また、陽性カップリング基を有する炭素は、他の陽性種(例えば、PdII‐IV種またはNiII‐IV種)への移動の影響を受けやすい。
【0067】
ある実施態様において、遷移金属触媒炭素‐炭素結合形成反応を行う工程は、遷移金属触媒および適切な試薬と、ハロゲンまたは類似する基(すなわち、スルホン酸エステル、もしくは他の離脱基)に置換されたアンヒドロ二量体の位置を反応させて、その位置で、新しい置換基を導入することを含む。ある実施態様において、遷移金属触媒炭素‐炭素結合形成反応を行う工程は、周期表の1から2族または12から14族(IA‐IIAおよびIIB‐IVA)の原子と置換されたアンヒドロ二量体の位置を反応させることを含む。ある実施態様において、原子は、ホウ素、スズ、ケイ素、マグネシウム、または亜鉛原子と、その位置で新しい炭素結合置換基を導入する、遷移金属触媒、および適切な試薬からなる群より選択される。かかる変換を行うに適切な条件、触媒、および試薬は、当該技術分野で周知である。適切な条件は、Jerry Marchの文献:「上級有機化学(ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY)」, 第4版, pp 534-552と、該文献に引用される参考文献に見出
すことができる。
【0068】
一部の実施態様において、カップリングは、スズキカップリングである。種々のハロゲン化アリールとのボロン酸のスズキカップリングは、塩基性条件下で、パラジウム触媒テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、または、トランス‐ジクロロビス(トリ‐o‐トリルホスフィン)パラジウム(II)、Pd(II)Cl(PPh、Pd(II)Cl(dppb)、Pd(II)(OAc)+PPh、Pd(II)(OAc)+トリ(o‐トリル)ホスフィン(パラダサイクル)、もしくはPd/C等の他の適切な供給源を使用して、一般に行われる。一般に、反応塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、もしくは水酸化バリウム、重炭酸ナトリウムもしくは重炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、もしくは炭酸タリウム、フッ化セシウムもしくはフッ化カリウム、ナトリウムtert‐ブトキシド、もしくはカリウムtert‐ブトキシド(potssium tert-butoxide)、リン酸カリウム、またはトリエチ
ルアミンであり、また、溶媒には、DMF、エタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、水、トルエン/ベンゼンおよびこれらの混合物と、BuNCもしくは18‐クラウン‐6等の相間移動試薬(phase transfer reagent)が含まれる。例示的な反応には、A. de MeijereとF. Diederich編集の文献:「金属触媒クロスカップリング反応(Metal-Catalyzed Cross-Coupling Reactions)」, 第
2版 John Wiley & Sons, 2004;および、Negishi, E.の文献(de Meijere, A.
編集):「有機合成のための有機パラジウム化学物質のハンドブック(Handbook of Organopalladium Chemistry for Organic Synthesis)」, Negishi, E., de Meijere, A. Editors, Wiley:New York, NY, 2002に記載されるものが含まれる。
【0069】
II.炭素‐ヘテロ原子結合形成反応
別の実施態様において、アンヒドロ二量体における1以上の化学変換を行う工程は、1以上の位置において、アンヒドロ二量体の少なくとも1つの芳香環で炭素‐ヘテロ原子結合形成反応を行うことを含む。
【0070】
ある実施態様において、炭素‐ヘテロ原子結合形成反応は、ハロゲン化、または、次に示すものからなる群より選択される原子によって結合された基の導入から選択される:酸素、窒素、硫黄、リン、ホウ素、スズ、ケイ素、リチウム、マグネシウム、またはこれら
のうちの2以上の組合せ。
【0071】
ある実施態様において、工程(a)で形成されたアンヒドロ二量体は、次式を有する:
【0072】
【化7】


(式中、R、R、RおよびRのうちの少なくとも1つは、‐Hであり、残部はそれぞれ、独立して、ハロゲン、‐NO、‐CN、‐Si(R、‐SR、‐S(O)R、‐S(O)、‐NRC(O)R、‐OC(O)R、‐CO、‐NCO、‐N、‐OR、‐OC(O)N(R2、‐N(R2、‐NRC(O)R、‐NRC(O)ORからなる群より選択されるか;または、C1‐20脂肪族;C1‐20ヘテロ脂肪族;フェニル;飽和されているか、もしくは部分的に不飽和の単環式炭素環、7個から14個の炭素の、飽和されているか、もしくは部分的に不飽和の炭素環;窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択された1個から4個のヘテロ原子を有する、5員から6員単環式ヘテロアリール環;窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択された1個から3個のヘテロ原子を有する、3員から8員の、飽和されているか、もしくは部分的に不飽和のヘテロアリール環;窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択された1個から5個のヘテロ原子を有する、飽和されているか、もしくは部分的に不飽和の6員から12員多環式複素環;8員から14員アリール;または、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択された1個から5個のヘテロ原子を有する、8員から10員二環式ヘテロアリール環からなる群より選択された、任意に置換される基であり、Rの発生はそれぞれ、独立して、‐H、または、C1‐6脂肪族、3員から7員複素環、フェニル、および8員から10員アリールからなる群より選択された、任意に置換される基であり、かつ、2以上の隣接するR基は、一緒になって、0個から4個のヘテロ原子を有した、任意に置換される、飽和されているか、もしくは部分的に不飽和の、または芳香族の5員から12員環を形成する。)。
【0073】
ある実施態様において、Rは、アンヒドロ二量体が形成される、得られたサリチルアルデヒド誘導体中の‐Hである。
【0074】
ある実施態様において、サリチルアルデヒド誘導体中のRは、任意に置換されるC1‐20脂肪族、および、任意に置換されるアリールからなる群より選択される。
【0075】
ある実施態様において、アンヒドロ二量体が形成される、得られたサリチルアルデヒド誘導体中のRは、メチル、エチル、n‐プロピル、イソプロピル、n‐ブチル、sec‐ブチル、t‐ブチル、イソアミル、tert‐アミル、および置換されたフェニルからなる群より選択される。
【0076】
III.官能基の操作
アンヒドロ(anhydo)二量体において置換基を付加するか、または修飾する反応に加えて、本発明が、アンヒドロ二量体置換基自体への化学操作を包含することが認識される。あ
る実施態様において、アンヒドロ二量体における1以上の化学変換を行う工程は、1以上の化学反応を行って、アンヒドロ二量体の既存官能基を操作することを含む。かかる反応には、還元、酸化、付加、保護、脱保護、付加環化、アミノ化、脱カルボキシル化、ハロゲン化、遷移金属触媒炭素‐炭素結合カップリング、クリック反応、環閉鎖または交差メタセシス反応等の有機合成で一般的に行われるものが含まれ得る。したがって、操作された官能基は、サリチルアルデヒド(salicaldehyde)のアリール環に結合されるものである
か、または、アリール環に結合された置換基に存在し得る。
【0077】
次に示すスキームは、本発明のある方法を具体化する、化学合成の非限定例を表す。かかる反応を行うためのかかる化学変換および有用な試薬は、当業者に公知であり、また、文献(例えば、Marchの文献、上記参照)においても利用可能である。
【0078】
【化8-1】

【化8-2】
【0079】
【化9-1】

【化9-2】
【0080】
【化10-1】

【化10-2】
【0081】
【化11-1】

【化11-2】
【0082】
【化12-1】

【化12-2】
【0083】
【化13-1】

【化13-2】
【0084】

【化14-1】

【化14-2】
【0085】
【化15-1】

【化15-2】
【0086】
【化16-1】

【化16-2】
【0087】
【化17-1】

【化17-2】
【0088】
IV.物質の組成物
ある実施態様において、本発明は、置換サリチルアルデヒド化合物の生成における有用性を有する新規組成物を包含する。ある実施態様において、本発明は、スキームおよび上述の説明に開示するアンヒドロ二量体を提供する。
【0089】
ある実施態様において、本発明は、サレン触媒の生成において有用性を有するアンヒドロ二量体を包含する。ある実施態様において、かかる化合物は、次に示す構造D1を有する:
【0090】
【化18】

(式中、RおよびRは、独立して、水素、ハロゲン、‐NO、‐CN、‐Si(R、‐SR、‐S(O)R、‐S(O)、‐NRC(O)R、‐OC(O)R、‐CO、‐NCO、‐N、‐OR、‐OC(O)N(R2、‐N(R2、‐NRC(O)R、‐NRC(O)ORからなる群より選択されるか;または、C1‐20脂肪族;C1‐20ヘテロ脂肪族;フェニル;飽和されているか、もしくは部分的に不飽和の単環式炭素環、7個から14個の炭素の、飽和されているか、もしくは部分的に不飽和の多環式炭素環;窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択された1個から4個のヘテロ原子を有する、5員から6員単環式ヘテロアリール環;窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択された1個から3個のヘテロ原子を有する、3員から8員の、飽和されているか、もしくは部分的に不飽和のヘテロ複素環;窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択された1個から5個のヘテロ原子を有する、飽和されているか、もしくは部分的に不飽和の6員から12員多環式ヘテロアリール環;8員から14員アリール;または、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択された1個から5個のヘテロ原子を有する、8員から10員二環式ヘテロアリール環からなる群より選択された、任意に置換される基であり、Rの発生はそれぞれ、独立して、‐H、または、C1‐6脂肪族、3員から7員複素環、フェニル、および8員から10員アリールからなる群より選択された、任意に置換される基であり、かつ、2以上の隣接するR基は、一緒になって、0個から4個のヘテロ原子を有した、任意に置換される、飽和されているか、もしくは部分的に不飽和の、または芳香族の5員から12員環を形成する(但し、RおよびRは共に水素でない)。)。
【0091】
ある実施態様において、式D1の化合物におけるRおよびRのうちの少なくとも1つは、C1‐20脂肪族、およびC1‐20ヘテロ脂肪族からなる群より選択された、任意に置換される基である。ある実施態様において、式D1の化合物におけるRおよびRは、独立して、C1‐20脂肪族、およびC1‐20ヘテロ脂肪族からなる群より選択された、任意に置換される基である。
【0092】
ある実施態様において、式D1の化合物におけるRおよびRのうちの少なくとも1つは、t‐ブチルである。ある実施態様において、式D1の化合物におけるRおよびR
は共に、t‐ブチルである。
【0093】
ある実施態様において、本発明は、サレン触媒の生成において有用性を有するアンヒドロ二量体を提供する。ある実施態様において、かかる化合物は、次に示す構造D2からD8のいずれかを有する:
【0094】
【化19】

(式中、
Zは、窒素またはリンであり、Zにおける形式電荷は、原子価条件を満たし;
Xは、ハロゲン;C‐C20アリールオキシ;ハロゲン、窒素、酸素、ケイ素、硫黄、およびリンからなる群より選択された機能的部分のうちの1以上を有する、C‐C20アリールオキシ;C‐C20カルボキシ;ハロゲン、窒素、酸素、ケイ素、硫黄、およびリンからなる群より選択された機能的部分のうちの1以上を有する、C‐C20カルボキシ;C‐C20アルコキシ;ハロゲン、窒素、酸素、ケイ素、硫黄、およびリンからなる群より選択された機能的部分のうちの1以上を有する、C‐C20アルコキシ;C‐C20アルキルスルホナト;ハロゲン、窒素、酸素、ケイ素、硫黄、およびリンからなる群より選択された機能的部分のうちの1以上を有する、C‐C20アルキルスルホナト;C‐C20アミド;または、ハロゲン、窒素、酸素、ケイ素、硫黄、およびリンからなる群より選択された機能的部分のうちの1以上を有する、C‐C20アミドであり;
11、R12、R13、R21、R22、R23、R24およびR25はそれぞれ、独立して、水素;オキソ;C‐C20アルキル;ハロゲン、窒素、酸素、ケイ素、硫黄、およびリンからなる群より選択された機能的部分のうちの1以上を有する、C‐C20アルキル;C‐C20アルケニル;ハロゲン、窒素、酸素、ケイ素、硫黄、およびリンからなる群より選択された機能的部分のうちの1以上を有する、C‐C20アルケニル;C‐C20アルキルアリール;ハロゲン、窒素、酸素、ケイ素、硫黄、およびリンからなる群より選択された機能的部分のうちの1以上を有する、C‐C20アルキルア
リール;C‐C20アリールアルキル;ハロゲン、窒素、酸素、ケイ素、硫黄、およびリンからなる群より選択された機能的部分のうちの1以上を有する、C‐C20アリールアルキル;または、ヒドロカルビルによって置換されたXIV族金属のメタロイド基であり、R11、R12およびR13のうちの2つ、もしくはR21、R22、R23、R24およびR25のうちの2つは、任意に、一緒に縮合されて、架橋構造を形成し;
31、R32およびR33はそれぞれ、独立して、水素;C‐C20アルキル;ハロゲン、窒素、酸素、ケイ素、硫黄、およびリンからなる群より選択された機能的部分のうちの1以上を有する、C‐C20アルキル;C‐C20アルケニル;ハロゲン、窒素、酸素、ケイ素、硫黄、およびリンからなる群より選択された機能的部分のうちの1以上を有する、C‐C20アルケニル;C‐C20アルキルアリール;ハロゲン、窒素、酸素、ケイ素、硫黄、およびリンからなる群より選択された機能的部分のうちの1以上を有する、C‐C20アルキルアリール;C‐C20アリールアルキル;ハロゲン、窒素、酸素、ケイ素、硫黄、およびリンからなる群より選択された機能的部分のうちの1以上を有する、C‐C20アリールアルキル;または、ヒドロカルビルによって置換されたXIV族金属のメタロイド基であり、R31、R32およびR33のうちの2つは、任意に、一緒に縮合されて、架橋構造を形成し;
62は、水素、メチル、エチル、n‐プロピル、イソプロピル、もしくはtert‐ブチルであり;
nは1から20であり;
Xは、酸素、硫黄もしくはN‐Rであり;
Rは、水素;C‐C20アルキル;ハロゲン、窒素、酸素、ケイ素、硫黄、およびリンからなる群より選択された機能的部分のうちの1以上を有する、C‐C20アルキル;C‐C20アルケニル;ハロゲン、窒素、酸素、ケイ素、硫黄、およびリンからなる群より選択された機能的部分のうちの1以上を有する、C‐C20アルケニル;C‐C20アルキルアリール;ハロゲン、窒素、酸素、ケイ素、硫黄、およびリンからなる群より選択された機能的部分のうちの1以上を有する、C‐C20アルキルアリール;C‐C20アリールアルキル;ハロゲン、窒素、酸素、ケイ素、硫黄、およびリンからなる群より選択された機能的部分のうちの1以上を有する、C‐C20アリールアルキルである。)。
【0095】
ある実施態様において、本発明は、次に示す構造D9からD13のいずれかを有する、アンヒドロ二量体を包含する:
【0096】
【化20】

(式中、
X、nおよびR62は、上に定義するとおりである。)。
【0097】
ある実施態様において、本発明は、次に示す構造D14からD18のいずれかを有する、アンヒドロ二量体を包含する:
【0098】
【化21】

(式中、
26は、水素、ハロゲン、任意に置換されるC‐C20脂肪族、および、任意に置換されるアリールからなる群より選択され;
およびRは、それぞれの発生において、独立して、水素、ハロゲン、および、任意に置換されるC‐C脂肪族からなる群より選択され;
Q’は、ハロゲン、ヒドロキシル、スルホン酸エステル、中性もしくはカチオン窒素含有官能基、および中性もしくはカチオンリン含有官能基からなる群より選択され;かつ、
mは1から10である。)。
【0099】
ある実施態様において、式D14からD18の化合物におけるQは、臭素、塩素、ヨウ素、‐OH、‐OSOR、‐N(R)、‐N(R)、‐P(R)、置換されたグアニジン、グアニジニウム、およびアミジンからなる群より選択される。ある実施態様において、式D14からD18の化合物におけるQ’は、ヒドロキシルである。ある実施態様において、式D14からD18の化合物におけるQ’は、臭素である。ある実施態様において、式D14からD18の化合物におけるQ’は、グアニジンである。ある実施態様において、式D14からD18の化合物におけるQ’は、TBDである。ある実施態様において、式D14からD18の化合物におけるQ’は、[N‐メチルTBD]であ
る。ある実施態様において、式D14からD18の化合物におけるQ’は、トリアルキルアンモニウムである。
【0100】
ある実施態様において、式D14からD18の化合物におけるR26は、‐H、ハロゲン、メチル、エチル、n‐プロピル、i‐プロピル、n‐ブチル、sec‐ブチル、およびt‐ブチルからなる群より選択される。ある実施態様において、式D14からD18の化合物におけるR26は、t‐ブチルである。
【0101】
ある実施態様において、式D14からD18の化合物におけるnは、1から6の整数である。ある実施態様において、式D14からD18の化合物におけるnは、2から5の整数である。ある実施態様において、式D14からD18の化合物におけるnは、3または4の整数である。
【実施例】
【0102】
実施例1
【0103】
【化22】
【0104】
5‐tert‐ブチル‐2‐ヒドロキシ‐3‐ヨードベンズアルデヒド(8.5g、28.1 mmol)とイートンの試薬(7.5%w/w、30mL)の混合物を、常温で2.5時間撹拌した。この反応混合物を、水(45mL)中NaOH(24g、600 mmol)の冷却(0℃から5℃)溶液に滴下した。添加が終了した後、形成された固形物を、真空ろ過によって収集し、また、ろ過ケーキを、水(3×30mL)によって十分に洗浄した。乾燥後、黄褐色の粉末のアンヒドロ二量体を得た(5.4g、65%)。
NMR(400 MHz, CDCl):δ1.27(s,18 H),6.37(s,2H),7.32(d,2H,J=2.2 Hz),7.71(d,2H,J=2.2 Hz)。
【0105】
実施例2
【0106】
【化23】
【0107】
5‐tert‐ブチル‐3‐ブロモ‐2‐ヒドロキシベンズアルデヒド(5g、19.4 mmol)とイートンの試薬(7.5%w/w、20mL)の混合物を、常温で5時間撹拌した。この反応混合物を、水(35mL)中NaOH(16g、400 mmol)の冷却(0℃から5℃)溶液に滴下した。添加が終了した後、形成された固形物を、真空ろ過によって収集し、また、ろ過ケーキを、水(3×30mL)によって十分に洗浄した。乾燥後、黄褐色の粉末のアンヒドロ二量体を定量的収率で得た(4.83g、100%)。H NMR(400 MHz,CDCl):δ1.27(s,18 H),6.42(s,2H),7.30(d,2H,J=2.2 Hz),7.51(d,2H,J=2.2 Hz)。
【0108】
実施例3
【0109】
【化24】
【0110】
EtOAc(9mL)中5‐tert‐ブチル‐3‐(3‐ブロモプロピル)‐2‐ヒドロキシベンズアルデヒド(5g、16.8 mmol)の溶液に、イートンの試薬(5.5mL)を加えた。この反応混合物を、65℃で4.5時間加熱し、次いで、0℃から5℃に冷却した。冷却したMeOH(10mL)を加え、得られたスラリーをろ過した。ろ過ケーキを、冷却したMeOH(2×10mL)によって洗浄し、ろ過ケーキを乾燥して、白色の粉末のアンヒドロ二量体を得た(3.25g、67%)。H NMR(300 MHz,CDCl):δ1.27(s,18 H),2.07(m,2H),2.71(m,2H),3.29(m,2H),6.32(s,2H),7.13(d,2H,J=2.4 Hz),7.15(d,2H,J=2.4 Hz)。
【0111】
実施例4
【0112】
【化25】
【0113】
DMF(7mL)中に懸濁させた亜鉛粉末(1.28g、19.6 mmol)を、常温、窒素下で、I(0.21g、1 mmol)によって処理した。赤色が消失したら、混合物を50℃まで加温し、必要量の1‐クロロ‐4‐ヨードブタン(2mL、16.3 mmol)を加えた。2時間後、5‐tert‐ブチル‐3‐ブロモ‐2‐ヒドロキシベンズアルデヒドのアンヒドロ二量体(2.3g、4.6 mmol)、およびPdCl‐dppf‐CHCl(0.37g、0.45 mmol)を加えた。60℃の加熱を17時間継続した。その後、水(20mL)を加え、沈殿を形成した。物質を真空ろ過によって収集し、乾燥して、高い収率(2.18g、90%)の所望の生成物を得た。H NMR(400 MHz,CDCl):δ1.26(s,18 H),1.65(m,2H),1.76(m,2H),2.58(m,2H),3.49(t,2H,J=6.5 Hz),6.32(s,2H),7.08(d,2H,J=2.4 Hz),7.12(d,2H,J=2.4 Hz)。
【0114】
実施例5
【0115】
【化26】
【0116】
フラスコに、Pd(OAc)(2.2mg、0.01 mmol)、ネオメンチルジフェニルホスフィン(13mg、0.04 mmol)、アクリル酸メチル(55mg、0.64 mmol)、EtN(55mg、0.54 mmol)、および5‐tert‐ブチル‐3‐ブロモ‐2‐ヒドロキシベンズアルデヒドのアンヒドロ二量体(55mg、0.11 mmol)を充填した。内容物を、N下で、ACN(1.25mL)中に懸濁させ、95℃で14時間加熱した。この混合物を、常温まで冷却し、得られたスラリーをろ過した。ろ過ケーキを、ヘプタン(0.5mL)によって洗浄し、乾燥して、白色の固形物の所望の生成物を得た(42mg、0.083 mmol、75%)。H NMR(400 MHz,CDCl):δ1.26(s,18 H),3.82(s,6H),6.41(s,2H),6.57(d,2H,J=16 Hz),7.35(d,2H,J=2.4 Hz),7.50(d,2H,J=2.4 Hz),7.88(d,2H,J=16 Hz)。
【0117】
実施例6
【0118】
【化27】
【0119】
5‐tert‐ブチル‐2‐ヒドロキシ‐3‐ヨードベンズアルデヒドのアンヒドロ二量体(150mg、0.25 mmol)を、THF(0.25mL)中に溶解し、常温、窒素下で、THF(2M、0.66 mmol)中iPrMgClの溶液によって処理した。0.5時間以内に、THF(1M、0.5 mmol)中CuCN‐2LiClの溶液を加え、この混合物をさらに0.5時間撹拌させた。必要量の1,3‐ジブロモプロパン(0.067mL、0.66 mmol)を加え、混合物を60℃まで加熱した。2時間後、HPLC分取物を、基準試料のHPLCクロマトグラムと比較して決定することにより、所望の生成物の形成を示した。
【0120】
実施例7
【0121】
【化28】
【0122】
5‐tert‐ブチル‐2‐ヒドロキシベンズアルデヒドのアンヒドロ二量体(630mg、1.9 mmol)、およびN‐ブロモスクシンアミド(665mg、3.7 mmol)を、室温でDMF(4mL)中に溶解した。3時間後、温度を60℃まで徐々に上昇させた。より多くのNBS(1.75g、9.7 mmol)を、7時間、反応物に加えた。この反応物を水で希釈し、形成された沈殿を真空ろ過によって収集し、水によって十分に洗浄した。乾燥後、粉末の所望の生成物を得た(710mg、76%)。H NMR(400 MHz,CDCl):δ1.27(s,18H),6.42(s,2H),7.3(d,J=2.1 Hz,2H),7.51(d,J=2.1 Hz,2H)。
【0123】
実施例8
【0124】
【化29】
【0125】
5‐tert‐ブチル‐3‐(3‐ブロモプロピル)‐2‐ヒドロキシベンズアルデヒドのアンヒドロ二量体(1g、1.7 mmol)を、10mLアセトニトリル中で、1,5,7‐トリアザビシクロ[4.4.0]デカ‐5‐エン(TBD)(0.53g、3.8 mmol)と合わせた。この混合物を65℃まで加熱し、16時間保持した。次いで、溶液をヘキサン(1×10 mL)によって洗浄し、油に濃縮した。この油をEtOH中で取り出し、65℃で、1M HCl(20mL)によって処理した。1時間後、濃HCl(2mL)を加えた。3時間後、濃HSO(1mL)を加え、反応物を65℃でさらに3時間撹拌した。その後、溶媒を除去し、EtOAcを加えて、二相性混合物を得た。水層を、NaOH水溶液によってpH7に調整した。層を分離し、水性物をジクロロメタンによって再度抽出した。有機抽出物を濃縮して、油を得た(1.22g)。
NMR(400 MHz,CDCl):δ1.23(s,9H),1.89(m,4H),1.99(m,2H),2.69(dd,J=7.5,8.9 Hz,2H),3.27(m,6H),3.41(t,J=7.3 Hz,2H),3.57(t,J=7.3 Hz,2H),7.32(d,J=2.5 Hz,1H),7.48(d,J=2.5 Hz,1H),9.90(s,1H)。
【0126】
実施例9
【0127】
【化30】
【0128】
5‐tert‐ブチル‐3‐(3‐ブロモプロピル)‐2‐ヒドロキシベンズアルデヒドのアンヒドロ二量体(0.5g、0.86 mmol)を、1.5mLアセトニトリル中で、7‐メチル‐1,5,7‐トリアザビシクロ[4.4.0]デカ‐5‐エン(MeTBD)(0.37g、2.6 mmol)と合わせた。この混合物を70℃まで加熱し、5時間保持した。次いで、この反応物を、室温まで一晩冷却させた。濃HCl(0.8mL、9.9 mmol)を加え、この混合物を50℃から65℃で8時間加熱し、5時間後、濃HCl(0.4mL、4.9 mmol)をさらに添加した。この反応は、HClおよびACN水溶液中溶液の所望の生成物を生じた。低分解能質量分析(m/z):[M]372.3,[(2M‐H)]743.0。
【0129】
他の実施態様
前述するものは、本発明のある非限定的な実施態様の説明である。したがって、本明細書に説明する本発明の実施態様が、本発明の原理の適用の例示であるにすぎないことが理解される。示される実施態様の詳細に対する本明細書の参照は、特許請求の範囲を限定することを意図せず、特許請求の範囲自身は、本発明に不可欠であると考えられる特徴を詳述する。
【0130】
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
a)サリチルアルデヒドまたはその誘導体を提供する工程と、
b)提供されたサリチルアルデヒド化合物のアンヒドロ二量体を形成する工程と、を含む、方法。
(項2)
前記アンヒドロ二量体において1以上の化学変換を行う工程をさらに含む、上記項1記載の方法。
(項3)
前記アンヒドロ二量体を加水分解して、前記工程(a)で提供されたものと異なるサリチルアルデヒド誘導体を提供さする工程をさらに含む、上記項2記載の方法。
(項4)
a)サリチルアルデヒドを脱水して、アンヒドロ二量体を形成する工程と、
b)1以上の位置において、アンヒドロ二量体の少なくとも1つの芳香環をアルキル化する工程と、
c)アルキル化されたアンヒドロ二量体を加水分解して、アルキル化されたサリチルアルデヒド誘導体を回収する工程と、を含む、
上記項3記載の方法。
(項5)
芳香環をアルキル化する工程が、フリーデル・クラフツアルキル化条件下で、前記アンヒドロ二量体を反応させることを含む、上記項4記載の方法。
(項6)
前記フリーデル・クラフツアルキル化条件が、ルイス酸およびプロトン酸からなる群より選択されるプロモーターの存在下で、アルケン、アルコール、ハロゲン化アルキル、およびこれらのうちの2以上の混合物からなる群より選択される化合物のうちの少なくとも1つと、前記アンヒドロ二量体を反応させることを含む、上記項5記載の方法。
(項7)
前記アルキル化が、前記アンヒドロ二量体を含む両方のサリチルアルデヒド分子において同等に生じる、上記項4記載の方法。
(項8)
前記アルキル化が、出発サリチルアルデヒドのヒドロキシル基に対して、芳香環のオルト位で生じる、上記項4記載の方法。
(項9)
前記アルキル化が、出発サリチルアルデヒドのヒドロキシル基に対して、芳香環のパラ位で生じる、上記項4記載の方法。
(項10)
ビスアルキル化が、出発サリチルアルデヒドのヒドロキシル基に対して、芳香環のオルト位およびパラ位で生じる、上記項4記載の方法。
(項11)
前記方法が、第1のアルキル化試薬を使用する、第1のアルキル化工程と、第2のアルキル化試薬を使用する、第2のアルキル化工程と、を含み、該第1のアルキル化試薬と該第2のアルキル化試薬が異なる、上記項4記載の方法。
(項12)
前記第1のアルキル化工程が、アリールのパラ位で、出発サリチルアルデヒドのフェノールのヒドロキシ基に、置換基を導入し、かつ、前記第2のアルキル化工程が、アリールのオルト位で、出発サリチルアルデヒドのフェノールのヒドロキシ基に、異なる置換基を導入する、上記項11記載の方法。
(項13)
出発サリチルアルデヒドが、フェノールに対して、アリールのオルト位で置換され、かつ、前記アルキル化工程が、アリールのパラ位で、フェノールのヒドロキシル基に置換基を導入する、上記項4記載の方法。
(項14)
出発サリチルアルデヒドが、フェノールに対して、アリールのパラ位で置換され、かつ、前記アルキル化工程が、アリールのオルト位で、フェノールのヒドロキシル基に置換基を導入する、上記項4記載の方法。
(項15)
上記項4記載の工程(a)で形成されるアンヒドロ二量体が、次に示す構造を有する、上記項4記載の方法:
【化31】

(式中、
、R、RおよびRのうちの少なくとも1つは、‐Hであり、残部はそれぞれ、独立して、ハロゲン、‐NO、‐CN、‐Si(R、‐SR、‐S(O)R、‐S(O)、‐NRC(O)R、‐OC(O)R、‐CO、‐NCO、‐N、‐OR、‐OC(O)N(R2、‐N(R2、‐NRC(O)R、‐NRC(O)ORからなる群より選択されるか;または、C1‐20脂肪族;C1‐20ヘテロ脂肪族;フェニル;飽和されているか、もしくは部分的に不飽和の単環式炭素環、7個から14個の炭素の、飽和されているか、部分的に不飽和の、もしくは芳香族の多環式炭素環;窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択された1個から4個のヘテロ原子を有する、5員から6員単環式ヘテロアリール環;窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択された1個から3個のヘテロ原子を有する、3員から8員の、飽和されているか、もしくは部分的に不飽和の複素環;窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択された1個から5個のヘテロ原子を有する、飽和されているか、もしくは部分的に不飽和の6員から12員多環式複素環;または、窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択された1個から5個のヘテロ原子を有する、8員から10員二環式ヘテロアリール環からなる群より選択された、任意に置換される基であり、Rの発生はそれぞれ、独立して、‐H、または、C1‐6脂肪族、3員から7員複素環、フェニル、および8員から10員アリールからなる群より選択された、任意に置換される基であり、かつ、2以上の隣接するR基は、一緒になって、0個から4個のヘテロ原子を有した、任意に置換される、飽和されているか、もしくは部分的に不飽和の、または芳香族の5員から12員環を形成する。)。
(項16)
が、前記脱水工程(a)におけるHである、上記項15記載の方法。
(項17)
前記脱水工程(a)におけるRが、任意に置換されるC1‐20脂肪族、および、任意に置換されるアリールからなる群より選択される、上記項16記載の方法。
(項18)
前記脱水工程(a)におけるRが、メチル、エチル、n‐プロピル、イソプロピル、n‐ブチル、sec‐ブチル、t‐ブチル、イソアミル、tert‐アミル、および置換されたフェニルからなる群より選択される、上記項17記載の方法。
(項19)
前記工程(b)におけるアルキル化が、Rを、‐Hから任意に置換される脂肪族基に変化させる、上記項15から18のいずれか一項に記載の方法。
(項20)
において導入された、任意に置換される脂肪族基が、任意に置換されるC1‐20脂肪族、および、任意に置換されるアリールからなる群より選択される、上記項19記載の方法。
(項21)
上記項1から20に記載のサリチルアルデヒドのアンヒドロ二量体。
(項22)
化合物が、次に示すものから選択される、上記項21記載のアンヒドロ二量体。
【化32】