(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1の実施の形態>
以下、本発明の光源装置及び車両用灯具としての第1の実施の形態を説明する。
図1は電流供給装置2及び光源装置3を有して構成される光源駆動装置を車両用灯具1とする場合を示した回路図である。
この車両用灯具1は、例えば車両の前照灯、ターンシグナルランプ、バックライトなど、各種の灯具に好適に適用できる。
【0017】
電流供給装置2は、例えば電流供給基板2Kに配置された各種電子部品により構成される。
また光源装置3は、上記の電流供給基板2Kとは別の基板である光源基板3Kに配置された1又は複数の発光素子を有して形成されている。ここでは発光素子としてLED31を用いる例とする。但し、発光素子はLED31に限らず、レーザダイオードなども想定される。また発光素子が直列や並列に複数接続された構成も考えられる。
【0018】
電流供給装置2は、電流供給基板2Kに設けられた端子41,42間に対して、車両のバッテリ90から電源供給を受ける構成とされる。
バッテリ90の正極端子と電流供給装置2の端子41との間にはスイッチ91が挿入され、当該スイッチ91のON/OFFにより車両用灯具1の点灯/消灯が制御される。電流供給基板2Kの端子42は接地点を介してバッテリ90の負極側に接続されている。
なお図示していないが、電流供給装置2は、車両側で電気的な制御を行うECU(電子制御ユニット:Electronic Control Unit)と通信可能に接続される構成とされてもよい。その場合、バッテリ90からの電源電圧ライン及びグランドラインが、ECUを介して端子41,42に接続されるようにし、ECUが電流供給装置2への電源供給を制御できるようにする構成も考えられる。
【0019】
車両用灯具1における光源装置3は、光源基板3Kに設けられた端子53,54間にLED31が接続されている。そしてLED31に対しては、電流供給装置2から定電流制御された駆動電流Idrが供給されて発光駆動される。
【0020】
また光源基板3K上の光源装置3には温度センサとしてのサーミスタ(温度検出抵抗)Rthが例えばLED31の近傍に配置されている。
さらに光源装置3には、ディレーティング制御信号Stdを生成する信号生成部32や、コーディング抵抗Rcが搭載されている。
これらの回路に関する端子として、光源基板3Kには端子55,56,57が設けられている。
【0021】
電流供給装置2は、DC/DCコンバータ21、電圧生成部22、制御部23を有する。
ここでは制御部23は、DC/DCコンバータ21に対する出力電流の定電流制御を行うとともに、ディレーティング制御信号Stdに応じて温度ディレーティング機能のための電流制限を行う回路系として示している。
【0022】
電圧生成部22は入力電圧から制御部23等の回路系で用いる基準電圧Vccを生成し、各部に供給する。
【0023】
DC/DCコンバータ21は、光源装置3のLED31に駆動電流Idrを供給する電圧変換部である。
DC/DCコンバータ21はバッテリ90からの直流電圧を受けて電圧変換を行い、電流供給基板2Kに設けられた端子43,44間に出力電圧Vdrを生成する。
端子43と端子53、端子44と端子54は第1ハーネスWH1により接続されている。従ってDC/DCコンバータ21の出力側に現れる出力電圧Vdrに基づく駆動電流Idrは端子43→端子53→LED31→端子54→端子44というように流れる。
DC/DCコンバータ21は例えばスイッチングレギュレータとされる。光源装置3の光源構成(順方向効果電圧等)とバッテリ90による電源電圧の関係にもよるが、昇圧型、降圧型、昇降圧型のいずれも考えられる。
【0024】
図1では一例として昇圧型スイッチングレギュレータとしてのDC/DCコンバータの例を示している。
DC/DCコンバータ21は、インダクタL1、スイッチSW1、ショットキーダイオードによる整流ダイオードD1、コンデンサC1,C2、電流検出抵抗Rsを備えている。
【0025】
図のようにコンデンサC1が入力側フィルタとして端子41,42間に接続される。
インダクタL1の一端は正極入力側の端子41に接続され、インダクタL1の他端は整流ダイオードD1のアノードに接続され、これらインダクタL1と整流ダイオードD1との直列接続回路はバッテリ90に対して直列の関係となるように接続されている。
スイッチSW1は、インダクタL1と整流ダイオードD1との接続点と接地ラインとの間に挿入され、従ってバッテリ90に対して並列の関係となるように接続されている。このスイッチSW1は、例えばMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)などのスイッチング素子で構成されている。
また、出力側の平滑用のコンデンサC2は整流ダイオードD1のカソードと接地ラインの間に接続されており、スイッチSW1に対して並列となるように接続されている。
電流検出抵抗Rsは、一端が整流ダイオードD1のカソードとコンデンサC2の接続点に接続され、他端が端子43と接続されている。
【0026】
DC/DCコンバータ21は例えばこのような昇圧型スイッチングレギュレータとして構成され、スイッチSW1のスイッチング制御に応じて出力電圧Vdrを端子43,44間に発生させる。
【0027】
制御部23はDC/DCコンバータ21の電圧変換動作を実行させるとともに駆動電流Idrの定電流制御を行う。
例えば制御部23は、電流検出抵抗Rsの一端と他端の電位差を二つの入力端子を介して検出した結果に基づき駆動電流Idrの電流値を検出する。そして検出した駆動電流Idrの電流値と目標電流値を比較し、その差分に応じたPWM制御信号Spwmを生成する。このPWM制御信号SpwmをDC/DCコンバータ21のスイッチSW1に供給して電圧変換動作を制御し、定電流出力を実現する。
【0028】
また制御部23に対しては、信号生成部32によるディレーティング制御信号Stdが供給されている。制御部23が、ディレーティング制御信号Stdに基づいて目標電流値を増減することで温度ディレーティングを実現する。
【0029】
光源基板3K側に設けられた信号生成部32は、サーミスタRthによって検出されたLED31の温度の検出値に応じてディレーティング制御信号Stdを生成する。
【0030】
電流供給基板2K側には、信号生成部32に対応して端子45,46,47が設けられ、これら端子45,46,47と、光源基板3K側の端子55,56,57は第1ハーネスWH1により接続されている。
端子45,55のラインは、電流供給基板2K側から信号生成部32への基準電圧Vccの供給ラインとして用いられる。
端子46,56のラインは、信号生成部32によるディレーティング制御信号Stdを電流供給装置2に供給する制御信号ラインとして用いられる。
端子47,57のラインはグランドラインとして用いられる。
なお、端子43,44,45,46,47と端子53,54,55,56,57は第1ハーネスWH1で接続される例としているが、接続形態は多様に考えられる。例えば端子43,44と端子53,54を接続するハーネスと、端子45,46,47と端子55,56,57を接続する別のハーネスが用いられるなどでもよい。
【0031】
信号生成部32は、抵抗R31,R32、NPN型バイポーラトランジスタであるトランジスタ33、PNP型バイポーラトランジスタであるトランジスタ34を有して構成されている。
トランジスタ33のコレクタには基準電圧Vccが印加され、ベースには抵抗R31とサーミスタRthによって分圧された電圧に基づくベース電流が供給される。エミッタは抵抗R32を介して接地されている。なおサーミスタRthはトランジスタ33のベースとグランド間に挿入されている。
トランジスタ34のコレクタは接地され、ベースはトランジスタ33のエミッタに接続されている。エミッタは端子56と接続される。
【0032】
サーミスタRthはNTC(negative temperature coefficient)サーミスタとしており、温度上昇に従って抵抗値が下がる素子である。従って高温になるほどトランジスタ33のベース電圧が低下することになる。
この信号生成部32は、トランジスタ33のコレクタ−エミッタを流れる電流に応じてトランジスタ34のエミッタ−コレクタを流れる電流値が制御される。
ここで基準電圧Vccライン−グランド間には電流供給基板2K側に設けられた制御抵抗R10と光源基板3K側のコーディング抵抗Rcが直列に接続されていることになり、またコーディング抵抗Rcとトランジスタ34が並列接続される関係にある。
ディレーティング制御信号Stdは、トランジスタ34がOFFの期間は、基準電圧Vccラインを制御抵抗R10とコーディング抵抗Rcで分圧した電圧値とされる。一方、トランジスタ34が導通している場合は、そのトランジスタ33を流れる電流値に応じて、ディレーティング制御信号Stdとしての電圧値が低下することになる。
【0033】
ここでディレーティング制御特性について
図2で説明する。
まず制御部23は、ディレーティング制御信号Stdとしての電圧値に応じて、駆動電流Idrを
図2Aのように制御する。
図2Aは横軸をディレーティング制御信号Stdとしての電圧値、縦軸を駆動電流Idrの電流値としている。
ディレーティング制御信号Stdが電圧V1以上であれば通常温度であるとして、基本設定の駆動電流Idr=I1とするようにDC/DCコンバータ21の駆動制御を行う。一方、ディレーティング制御信号Stdが電圧V1以下の場合は、高温状態となっているとして、そのディレーティング制御信号Stdの電圧値に応じて駆動電流Idrを低下させるように制御する。つまり定電流制御の目標値を下げる。
【0034】
このような制御部23の動作を利用して
図2Bのようなディレーティング制御を実行させる。
図2Bは横軸をLED31の検出温度、縦軸を駆動電流Idrの電流値としている。
即ち通常温度の状態では駆動電流Idrの電流値を或る電流値I1に定電流制御する。検出温度が或る開始温度T1を越えたら温度ディレーティング機能を働かせ、検出温度に応じて駆動電流Idrを減少させることになる。
従って、開始温度T1以上となったら、その温度に応じて、ディレーティング制御信号Stdとしての電圧値を下げるように信号生成部32が機能すればよい。
このため、サーミスタRthによる検出温度が開始温度T1未満の場合、トランジスタ34がOFFとなり、ディレーティング制御信号Stdが、基準電圧Vccラインを制御抵抗R10とコーディング抵抗Rcで分圧した電圧値(例えば電圧値V1)とされる。一方、高温になると、トランジスタ34が導通し、トランジスタ34を流れる電流値に応じて、ディレーティング制御信号Stdとしての電圧値を低下させる。これにより
図2Bのようなディレーティング制御が実行される。
【0035】
信号生成部32の動作について具体例を挙げる。例えば次の値を想定する。
・制御抵抗R10・・・39kΩ
・コーディング抵抗Rc・・・15kΩ
・抵抗R31・・・24kΩ
・基準電圧Vcc・・・7V
・ディレーティング開始温度T1・・・100℃
【0036】
検出温度が25℃の場合の代表値は次のようになる。
・サーミスタRthの抵抗値・・・100kΩ
・サーミスタRthに流れる電流・・・49μA
・端子45,55のラインに流れる電流・・・4.1mA
・制御信号Stdの電圧値・・・1.94V
・トランジスタ33のコレクタ−エミッタに流れる電流・・・4mA
・トランジスタ34のエミッタ−コレクタに流れる電流・・・0(OFF)
・端子46,56のラインに流れる電流・・・129μA(=1.94V/15kΩ)
【0037】
検出温度が120℃の場合の代表値は次のようになる。
・サーミスタRthの抵抗値・・・2.9kΩ
・サーミスタRthに流れる電流・・・260μA
・端子45,55のラインに流れる電流・・・313μA
・制御信号Stdの電圧値・・・0.77V
・トランジスタ33のコレクタ−エミッタに流れる電流・・・53μA
・トランジスタ34のエミッタ−コレクタに流れる電流・・・108μA
・端子46,56のラインに流れる電流・・・159μA
【0038】
以上の例のように、温度に応じたサーミスタRthの抵抗値に基づいて結果的にトランジスタ34のエミッタ−コレクタに流れる電流が制御され、これにより制御信号Stdの電圧値が変化する。この動作により温度ディレーティング制御が実現される。
またこの構成の場合、サーミスタRthの温度特性とともに、抵抗R31,R32の抵抗値、トランジスタ33、34の特性によって、ディレーティング制御の仕様(開始温度や制御特性の傾き)が設定されることが理解される。
【0039】
本実施の形態の車両用灯具1は、上記のように信号生成部32が光源装置3側に搭載されている。
なお、コーディング抵抗Rcは、発光素子に応じて設けられる駆動電流調整用の抵抗である。光源の種類や発光素子数、或いは光束ランクに応じて駆動電流Idrの定常値が異なるようにされる。そこで、コーディング抵抗Rcは、その光源装置3における光源構成に応じて適切な駆動電流値が得られるように調整素子として配置されるものである。
そしてコーディング抵抗Rcは、発光素子構成によるものであるため光源装置3側に搭載されることが通常である。
このコーディング抵抗Rcはディレーティング制御信号Stdの通常温度時の電圧値を設定する分圧用の抵抗とすることで、コーディング抵抗Rcの抵抗値により、定常の駆動電流値が設定可能となる。
【0040】
ここで
図3に、比較例としての車両用灯具100を例示する。この
図3において回路構成は
図1とほぼ同様である。同一部分には
図1と同一符号を付し、個々の説明は省略する。
この比較例の車両用灯具100は、電流供給装置200と光源装置300から成るが、信号生成部32が電流供給装置200(電流供給基板200K)側に配置されていることが
図1の実施の形態の車両用灯具1とは異なる。
【0041】
光源装置300(光源基板300K)には、サーミスタRthとコーディング抵抗Rcが搭載されている。
コーディング抵抗Rcは端子155,156間に接続される。
サーミスタRthは端子157とグランド(端子156)の間に接続される。
端子145,155のラインは、基準電圧Vccとグランド間に制御抵抗R10とコーディング抵抗Rcを挿入するためのラインとして用いられる。
端子146,156のラインはグランドラインとなる。
端子147,157のラインは、サーミスタRthをトランジスタ33のベースに接続するためのラインとなる。
端子43,44,145,146,147と端子53,54,155,156,157は第2ハーネスWH2で接続される。
【0042】
この
図3の車両用灯具100の場合も、
図1の車両用灯具1と回路構成は同様であり、上記同様に温度ディレーティング制御が行われる。
図4A、
図4Bは
図1の実施の形態の車両用灯具1と
図3の比較例の車両用灯具100をそれぞれブロック図として比較して示している。
【0043】
信号生成部32は、上述のように温度ディレーティング特性を設定する回路となる。すると、光源装置側の発光素子の特性や構成に応じて異なる温度ディレーティング仕様が求められる。このため比較例とした
図4Bの電流供給装置200の場合、各種の光源装置300に適応できるとは限らず、標準化された電流供給装置となりにくい。
それに対し
図4Aの実施の形態の電流供給装置2は、信号生成部32を有していないので、各種の光源装置3に対応できる。換言すれば、光源装置3が自己の光源構成に応じた信号生成部32を有することで、標準化された電流供給装置2によって発光駆動されるものとし、かつ適切な温度ディレーティング機能が発揮できることになる。また適切な温度ディレーティング機能が実行されることで、光源装置3は過分なヒートシンク機構を搭載するなどの必要はなくなる。
【0044】
その上で
図4A、
図4Bを比較してわかるように、電流供給装置2と光源装置3の間の第1ハーネスWH1による接続線路数は、電流供給装置200と光源装置300の間の第2ハーネスWH2による接続線路数と変わらない。
つまり本実施の形態の車両用灯具1は、コーディング抵抗Rcを用いる場合の配線構成を利用することで、基板間配線数を増加させずに、信号生成部32を光源基板3K側に配置すること可能にしている。これにより配線増によるコストアップや構成の複雑化は生じない。
【0045】
また先に信号生成部32の動作例として25℃の場合を示したが、比較例の車両用灯具100の場合、第2ハーネスWH2における端子147,157間の電流はサーミスタRthに流れる電流であるため49μAとなる。
これに対して実施の形態の車両用灯具1の場合、第1ハーネスWH1における端子46,56間の電流は129μAとなる。
即ち実施の形態の車両用灯具1では、低温時において第1ハーネスWH1に流れる電流が大きくなり、比較例に比べ電磁ノイズに対して強くなっているという利点もある。
【0046】
続いて
図5に第1の実施の形態の変形例を示す。
これはコーディング抵抗Rcを用いない場合の例である。
図1(
図4A)と同一部分は同一符号を付して重複説明を避ける。
この場合、電流供給装置2側で制御抵抗R10に加えて抵抗R11を配置し、基準電圧Vcc−グランド間を制御抵抗R10、抵抗R11で分圧してディレーティング制御信号Stdとして
の通常温度時の電圧値を生成しているものである。
コーディング抵抗Rcを用いない場合には、このような構成で
図1の車両用灯具1と同様に、光源装置3側の信号生成部32からのディレーティング制御信号Stdで適切な温度ディレーティング機能を発揮することができる。
【0047】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態の車両用灯具1Aの構成を
図6に示す。なお
図1と同一部分は同一符号を付して重複説明を避ける。
この
図6の車両用灯具1Aは、マイクロコンピュータ60を用いて温度ディレーティング制御を行う例としている。
なお、
図6では、第1の実施の形態における電流供給装置2と光源装置3のようには、電流供給装置と光源装置を明確に分けて示していない。
この第2の実施の形態では、電流供給装置と光源装置は、共通の基板などで一体の構成とされてもよいし、第1の実施の形態と同様に別の基板に形成されるものでもよい。
基板が別体構成とされる場合、例えば発光素子であるLED31と温度検出回路50は光源装置側に配置されることが考えられる。その場合、LED31、温度検出回路50、及びマイクロコンピュータ60(或いは少なくとも信号生成部61の機能)を搭載した基板が第1の実施の形態の光源装置3に相当することになる。
【0048】
この第2の実施の形態は、温度検出回路50におけるサーミスタRthの異常検出を適切に行うことができるようにするものである。
温度検出回路50として抵抗R20とサーミスタRthが設けられている。
即ち基準電圧Vcc−グランド間を抵抗R20とサーミスタRthが直列接続される。この抵抗R20とサーミスタRthによる分圧電圧が、温度検出値(検出電圧Vth)としてマイクロコンピュータ60に入力される。
【0049】
マイクロコンピュータ60は、この例では、信号生成部61、異常検出部62としての機能構成をソフトウエアプログラムにより有するものとしている。
信号生成部61は、第1の実施の形態における信号生成部32としての動作を演算により実行する機能である。即ち検出電圧Vthに応じて、ディレーティング制御信号Stdを生成する演算を行う。制御部23はディレーティング制御信号Stdに応じて駆動電流Idrを制御することになる。
【0050】
異常検出部62は、サーミスタRthの異常を検知するための演算を行う機能である。異常検出部62は、温度取得部62aとしての処理機能と判定部62bとしての処理機能を有する。
温度取得部62aは、発光素子であるLED31の点灯開始時の温度検出情報を取得する第1処理と、点灯開始時から所定時間経過時点での温度検出情報を取得する第2処理とを行う。
判定部62bは、上記の第1処理で取得した温度検出情報と上記の第2処理で取得した検出情報の変化を判定して、温度センサであるサーミスタRthの異常判定を行う。
【0051】
なお、マイクロコンピュータ60は端子49を介して車両側のECU500と通信可能である。これにより、例えば異常検出時に異常発生を車両側に通知できる。
【0052】
サーミスタRthの異常について説明する。
温度検出回路50は、図示のように温度センサとしてサーミスタRthを用い、抵抗R20とサーミスタRthによる分圧電圧を温度の検出値(検出電圧Vth)としている。
そしてサーミスタRthとしてはNTCサーミスタを用いることで、検出電圧Vthは次のようになる。
低温時:検出電圧Vthは基準電圧Vcc相当
高温時:検出電圧Vthはグランド電位相当
【0053】
このような温度検出回路50が故障すると、制御部23は駆動電流Idrの低減制御ができずLED31が破壊に至る恐れが生ずる。
一方、温度検出回路50もしくはその部品が故障しても、個体や特性ばらつきにより、故障を判定することが困難である。
これは、もしサーミスタRthがオープン故障すると検出電圧Vthが基準電圧Vcc電位となり、サーミスタRthがショート故障すると検出電圧Vthがグランド電位となることで、オープン故障と低温検出の区別、或いはショート故障と高温検出の区別がつかないことによる。
【0054】
そこで本実施の形態では、LED31の点灯時の自己発熱による温度変化を利用して故障判定を行うようにする。
図7に正常時と異常時の検出電圧Vthの変化を示している。縦軸は検出電圧Vthの値である。横軸の点灯時間とはLED31の点灯開始からの経過時間のことである。
【0055】
正常時はLED31の自己発熱により、サーミスタRthの検出温度が上がるため検出電圧Vthは低下していく。ある程度の時間ΔTMを経過した時点TM1では、検出電圧Vthとして、電圧差ΔVth以上の電圧変化が生ずる。時間ΔTMとは、例えば15分程度とすることができるがもちろんそれに限らない。
一方、サーミスタRthにオープン異常が生じている場合、点灯開始から時間ΔTMを経過しても、依然として検出電圧Vthは基準電圧Vcc電位のままである。つまりLED31及びDC/DCコンバータ21の自己発熱による温度変化を検出していない状態である。
【0056】
このような事象を利用して、異常判定を行うようにする。つまり概略的には次の(1)〜(3)の手順で異常判定を行う。
(1)第1処理:LED31を点灯させ、その際の検出電圧Vthを取得する。
(2)第2処理:点灯開始後、時間ΔTMを経過した際の検出電圧Vthを取得する。
(3)判定処理:第1処理、第2処理で取得した検出電圧Vthの差分により異常発生の判定を行う。
【0057】
マイクロコンピュータ60(異常検出部62)による具体的な処理例を
図8に示す。
図8は、制御部23がDC/DCコンバータ21による駆動電流Idrの出力を開始させ、LED31を点灯開始させた際に行う異常検出処理となる。
【0058】
LED31の点灯開始の際に、マイクロコンピュータ60はステップS101でタイムカウントをスタートさせる。点灯開始からの経過時間を計数するためである。
ステップS102でマイクロコンピュータ60は点灯開始時点の検出電圧Vthを取得し記憶する。
ステップS103でマイクロコンピュータ60は検出電圧Vthのレベルにより処理を分岐する。即ち基準電圧Vccレベルか、グランドレベルか、それ以外の正常レベルかを判定する。
【0059】
正常レベルであるときはステップS104に進み、温度センサは正常と判定として、そのままステップS102に戻って異常判定処理を継続する。
【0060】
ステップS103でグランドレベルと判定した場合、マイクロコンピュータ60はステップS110で高温判定し、ステップS111でLED保護制御を行う。具体的にはDC/DCコンバータ21の停止制御を行うことが考えられる。即ち制御部23に対してDC/DCコンバータ21の駆動停止指示を出力する。
このLED保護制御によってDC/DCコンバータ21を停止させた場合、その後、検出温度が正常レベルに戻れば、DC/DCコンバータ21の駆動を再開させることが考えられる。
なお、ここではグランドレベルは、LED31の発光停止が必要な温度において検出される検出電圧としており、すでに温度ディレーティングによる駆動電流Idrの低減では足りない温度状況となったと判定する例としている。またグランドレベルは、サーミスタRthがショート故障した可能性もあるが、その場合も考慮して、DC/DCコンバータ21の駆動停止を行うことが好適である。もし、ショート故障でなければ、その後、検出電圧Vthが正常レベルとなることで点灯が再開される。
【0061】
ステップS103で検出電圧Vthが基準電圧Vccレベルと判定した場合は、マイクロコンピュータ60はステップS105に進み、現在が点灯開始から時間ΔTMだけ経過した時点か否かを判断する。
当該時点でなければ、検出電圧Vthにより低温状態が判定されているとしてステップS104に進み、処理を継続する。つまり特に異常発生とは判定しない。
【0062】
一方、ステップS105に進んだ時点で、点灯開始から時間ΔTMだけ経過していたら、マイクロコンピュータ60はステップS107に進み、検出電圧Vthの変化判定を行う。
ここで、点灯開始時の検出電圧Vth(VthSとする)と、今回取得した検出電圧Vth(VthCとする)の差分(VthS−VthC)を算出し、その差分(VthS−VthC)が、所定の差分値ΔVth以上となっているか否かを判定する。
【0063】
(VthS−VthC)≧ΔVthであれば、サーミスタRthがLED31の自己発熱による温度変化を検出していることになる。その場合はステップS108からS104に進み、正常判定とする。
一方、(VthS−VthC)<ΔVthであれば、サーミスタRthがLED31の自己発熱による温度変化を検出していないことになる。その場合はサーミスタRthのオープン故障と判定できる。そこでマイクロコンピュータ60はステップS108からS109に進み、異常判定とし対応処理を行う。例えば故障検出信号をECU500に通知するなどの対応処理を行うことになる。
【0064】
なお、以上の処理例では、点灯開始時点とΔTM経過時点での検出電圧Vthの差分で判断したが、点灯開始時点からΔTM経過時点まで、継続して検出電圧Vthの差分がΔVth以上となっていないことを異常判定の条件としてもよい。
【0065】
<実施の形態の効果及び変形例>
以上の第1,第2の実施の形態として説明した車両用灯具1、1Aに搭載される電流供給装置によれば以下の効果が得られる。
第1の実施の形態の車両用灯具1における光源装置3は、電流供給装置2から駆動電流Idrの供給をうけて発光するLED31(発光素子)と、電流供給装置2よりもLED31に近い位置で温度検出を行うサーミスタRth(温度センサ)と、サーミスタRthが配置された光源基板3Kに配置され、サーミスタRthの検出値に応じて駆動電流Idrの制御信号としてのディレーティング制御信号Stdを電流供給装置2に出力する信号生成部32を備えている。
この場合、LED31等の発光素子を配置した光源基板3K上に温度センサとしてのサーミスタRthと信号生成部32を配置するものとしている。
例えば高温時にLED31に対する駆動電流Idrを低減させてLED31を熱的に保護する温度ディレーティングでは、駆動電流Idrを下げ始める温度(開始温度)や傾きが適切に設定される必要がある。そこで信号生成部32では、回路定数により開始温度や傾きが設定され、その上で検出温度に応じたディレーティング制御信号Stdを生成している。
この温度ディレーティングの設定として要求される開始温度や傾きは、光源仕様によって異なる。例えば発光素子の灯数、駆動電流値範囲、放熱構造であったり、周囲温度環境などによって温度ディレーティングの設定仕様は異なる。
実施の形態の光源装置3は、LED31とサーミスタRthと信号生成部32を含む構成となっているため、信号生成部32の回路定数は光源仕様に応じて設計されれば良い。
従って、電流供給装置2側で光源仕様に応じた設計変更が不要となり、電流供給装置2の共用、標準化が実現できる。
また逆に、電流供給装置2に信号生成部32を配置した場合の温度ディレーティング設定に応じて光源装置3側の放熱構造の大型化等を必要とするものでもなくなる。
これらにより光源装置3、電流供給装置2の双方のコストダウンを実現し、また汎用性を拡大することができる。
さらには光源装置3側にLED31とサーミスタRthと信号生成部32を含む構成とすることによれば、車両用灯具の種類ごとのディレーティング回路の設計工数、調整工数を低減することもできる。
【0066】
第1の実施の形態では、信号生成部32は、サーミスタRthにより検出された温度が所定温度以上の場合に、駆動電流Idrを温度に応じ低減させるディレーティング制御信号Stdを生成するようにしている。
信号生成部32は、温度ディレーティングとしての開始温度とディレーティング特性の傾きを設定する回路であるが、電流供給装置2からの駆動電流Idrが、高温時において基本電流値から下げられるようにしている。これにより所定温度以上の高温下でLED31を熱的に保護する温度ディレーティングが実現される。
【0067】
第1の実施の形態では、信号生成部32は、電流供給装置2へディレーティング制御信号Stdを出力する制御信号ラインを含む。そしてディレーティング制御信号Stdの値を調整する調整素子としてコーディング抵抗Rcが接続されている。
調整素子としての抵抗器等を制御信号ラインとグランドラインの間に接続することで、制御信号値の調整が可能である。例えばLED31の電流値が異なる場合やLED31の光束ランクに応じて調整が必要な場合、コーディング抵抗Rcを用いている。
この場合、従来の車両用灯具100では
図4Bのように、光源基板300Kと光源駆動基板200Kの間では、コーディング抵抗Rcの両端に接続する電源ラインとグランドラインが必要になり、さらにサーミスタRthからの温度検出値を得るためのラインが必要になる。
実施の形態では、信号生成部32を光源装置3側に設けたが、調整素子としてのコーディング抵抗Rcは制御信号ラインとグランドラインの間に接続すれば良いため、ハーネス接続線路の本数は増加しない。つまり信号生成部32を光源装置3側に設けたとしても、コーディング抵抗Rcの接続を工夫することで、ハーネス接続線路の本数の増加を生じさせないようにすることができる。
【0068】
第1の実施の形態では、電流供給装置2は、基準電圧Vccに一端が接続された制御抵抗R10を有し、制御抵抗R10の他端に制御信号Stdを出力するように構成されている。また信号生成部32は、所定温度以上の場合に、制御抵抗R10の他端に対し制御信号ラインを介して制御電流をシンクすると共に、温度が高くなるに従って制御電流の量を増加させる構成としている。即ち制御抵抗R10の他端側に基準電圧Vccに基づく制御信号Stdが得られ、またこの他端側の電流量が増加されることで制御信号Stdが変化されるようにしている。
これにより簡易な構成で制御信号Stdの生成、特に所定の温度以上の場合に制御信号Stdの電圧値を温度に応じて変化させる構成を実現できる。つまり低温時は制御抵抗R10とコーディング抵抗Rcの分圧電圧が制御信号Stdとなるため、低温時において安定した電圧の制御信号Stdを生成でき、また高温時は例えばトランジスタ34のエミッタ−コレクタ電流に応じて電圧低下された制御信号Stdを生成できる。
【0069】
第2の実施の形態では、発光素子であるLED31の点灯開始時の温度センサの検出情報を取得する第1処理と、前記点灯開始時から所定時間経過時点での前記温度センサの検出情報を取得する第2処理とを行う温度取得部62aと、第1処理で取得した検出情報と第2処理で取得した検出情報の変化を判定して前記温度センサの異常判定を行う判定部62bと、を備えた異常検出部62について説明した。
そしてこの処理によれば、サーミスタRthのオープン故障と低温状態とを判別でき、オープン故障の場合は適切に対処(駆動電流低減等)することが可能となる。
【0070】
なお、実施の形態では車両用灯具1における光源装置3としての例を挙げたが、本発明の光源装置は、各種の灯具の光源装置として適用できる。
例えば道路照明用の灯具、屋外照明用の灯具、室内照明用の灯具などにも本発明の光源装置は用いることができ、それらの場合も適切な温度ディレーティングによる信頼性の向上を実現できる。
また本発明の異常検出装置も、例えば道路照明用の灯具、屋外照明用の灯具、室内照明用の灯具などの各種の灯具に適用できる。