(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両が許可速度を超過した状態から制動が始まる制動タイミングまでの制動遅れ期間に発生する前記車両の力行区間の位置に応じた速度を示す力行パターンと、前記制動遅れ期間に発生する前記力行区間の後の惰行区間の位置に応じた速度を示す惰行パターンとの算出を、前記惰行区間に続く走行区間であって前記制動タイミングにおける車両の位置から当該車両が所定の制限速度以下に制御される目標位置との間の制動区間における速度を示す制動パターンを算出した後に当該制動パターンを基準に行う許可速度パターン算出部を備え、
前記許可速度パターン算出部は、少なくとも前記力行パターンの算出において前記車両の速度に応じたモータの加速度特性であって前記モータの回転数が高回転数となることに基づいて前記トルクが維持または低減する前記モータの加速度特性を用いる車両制御装置。
前記許可速度パターン算出部は、前記力行パターンの開始位置が前記車両の現在位置よりも前方となる場合の、前記惰行パターンから前記制動パターンへの切替位置とその位置における速度と、前記力行パターンから前記惰行パターンへの切替位置とその位置における速度とを、前記惰行区間における既知の惰行期間と当該惰行期間における既知の前記車両に加わる加速度と、前記力行区間における既知の力行期間と当該力行期間における既知の前記車両に加わる速度に応じた加速度とに基づいて反復計算により算出する
請求項1または請求項2に記載の車両制御装置。
前記許可速度パターン算出部は、前記制動パターンが前記制動タイミングより前の前記車両の現在位置から続いていたと仮定した場合の前記現在位置における仮定速度に基づいて、前記力行区間と前記惰行区間の距離を算出し、当該力行区間と惰行区間とに基づいて、前記惰行パターンから前記制動パターンへの切替位置とその位置における速度と、前記力行パターンから前記惰行パターンへの切替位置とその位置における速度と、前記現在位置における速度とを算出する
請求項1または請求項2に記載の車両制御装置。
車両制御装置の許可速度パターン算出部が、車両が許可速度を超過した状態から制動が始まる制動タイミングまでの制動遅れ期間に発生する前記車両の力行区間の位置に応じた速度を示す力行パターンと、前記制動遅れ期間に発生する前記力行区間の後の惰行区間の位置に応じた速度を示す惰行パターンとの算出を、前記惰行区間に続く走行区間であって前記制動タイミングにおける車両の位置から当該車両が所定の制限速度以下に制御される目標位置との間の制動区間における速度を示す制動パターンを算出した後に当該制動パターンを基準に行い、
前記許可速度パターン算出部は、少なくとも前記力行パターンの算出において前記車両の速度に応じたモータの加速度特性であって前記モータの回転数が高回転数となることに基づいて前記トルクが維持または低減する前記モータの加速度特性を用いる
車両制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
軌道を走行する列車等の車両の制御においては上述のIEEE1474においてworst-caseとして示される状況においても走行が許可される区間内で停止する制御が求められている。
【0005】
そこでこの発明は、上述の課題を解決することのできる車両制御装置、車両制御方法、プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、車両制御装置は、車両が許可速度を超過した状態から制動が始まる制動タイミングまでの制動遅れ期間に発生する前記車両の力行区間の位置に応じた速度を示す力行パターンと、前記制動遅れ期間に発生する前記力行区間の後の惰行区間の位置に応じた速度を示す惰行パターンとの算出を、前記惰行区間に続く走行区間であって前記制動タイミングにおける車両の位置から当該車両が所定の制限速度以下に制御される目標位置との間の制動区間における速度を示す制動パターンを算出した後に当該制動パターンを基準に行う許可速度パターン算出部を備え、前記許可速度パターン算出部は、少なくとも前記力行パターンの算出において前記車両の速度に応じた
モータの加速度特性
であって前記モータの回転数が高回転数となることに基づいて前記トルクが維持または低減する前記モータの加速度特性を用いることを特徴とする。
【0007】
上述の車両制御装置によれば、前記許可速度パターン算出部は、さらに、前記惰行パターンと前記制動パターンの少なくとも一方の算出において前記車両の速度に応じた加速度特性を用いてよい。
【0008】
上述の車両制御装置によれば、前記許可速度パターン算出部は、前記力行パターンの開始位置が前記車両の現在位置よりも前方となる場合の、前記惰行パターンから前記制動パターンへの切替位置とその位置における速度と、前記力行パターンから前記惰行パターンへの切替位置とその位置における速度とを、前記惰行区間における既知の惰行期間と当該惰行期間における既知の前記車両に加わる加速度と、前記力行区間における既知の力行期間と当該力行期間における既知の前記車両に加わる速度に応じた加速度とに基づいて反復計算により算出してよい。
【0009】
上述の車両制御装置によれば、前記許可速度パターン算出部は、前記制動パターンが前記制動タイミングより前の前記車両の現在位置から続いていたと仮定した場合の前記現在位置における仮定速度に基づいて、前記力行区間と前記惰行区間の距離を算出し、当該力行区間と惰行区間とに基づいて、前記惰行パターンから前記制動パターンへの切替位置とその位置における速度と、前記力行パターンから前記惰行パターンへの切替位置とその位置における速度と、前記現在位置における速度とを算出してよい。
【0010】
上述の車両制御装置によれば、前記許可速度パターン算出部は、前記現在位置の高度と前記目標位置の高度とに基づいて、許可速度を算出してよい。
【0011】
上述の車両制御装置によれば、前記許可速度パターン算出部は前記車両の重量に応じた前記加速度特性を用いてよい。
【0012】
本発明の第2の態様によれば、車両制御方法は、車両制御装置の許可速度パターン算出部が、車両が許可速度を超過した状態から制動が始まる制動タイミングまでの制動遅れ期間に発生する前記車両の力行区間の位置に応じた速度を示す力行パターンと、前記制動遅れ期間に発生する前記力行区間の後の惰行区間の位置に応じた速度を示す惰行パターンとの算出を、前記惰行区間に続く走行区間であって前記制動タイミングにおける車両の位置から当該車両が所定の制限速度以下に制御される目標位置との間の制動区間における速度を示す制動パターンを算出した後に当該制動パターンを基準に行い、前記許可速度パターン算出部は、少なくとも前記力行パターンの算出において前記車両の速度に応じた
モータの加速度特性
であって前記モータの回転数が高回転数となることに基づいて前記トルクが維持または低減する前記モータの加速度特性を用いることを特徴とする。
【0013】
本発明の第3の態様によれば、プログラムは、車両制御装置のコンピュータを、車両が許可速度を超過した状態から制動が始まる制動タイミングまでの制動遅れ期間に発生する前記車両の力行区間の位置に応じた速度を示す力行パターンと、前記制動遅れ期間に発生する前記力行区間の後の惰行区間の位置に応じた速度を示す惰行パターンとの算出を、前記惰行区間に続く走行区間であって前記制動タイミングにおける車両の位置から当該車両が所定の制限速度以下に制御される目標位置との間の制動区間における速度を示す制動パターンを算出した後に当該制動パターンを基準に行い、少なくとも前記力行パターンの算出において前記車両の速度に応じた
モータの加速度特性
であって前記モータの回転数が高回転数となることに基づいて前記トルクが維持または低減する前記モータの加速度特性を用いる許可速度パターン算出手段、として機能させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、許可速度を精度よく算出可能であり、IEEE1474においてworst-caseとして示される状況においても走行が許可される区間内で停止する制御を行う車両制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第一の実施形態>
以下、本発明の第一実施形態による車両制御装置を図面を参照して説明する。
図1は同実施形態による車両制御装置を備えた車両制御システムを示す図である。
この図で示すように車両制御システム100は、列車10と、当該列車10に備わる車両制御装置1とを備える。車両制御装置1は、列車10が上位装置等から指示される走行限界位置(走行が許可される区間の境界)を超えないように列車の速度制御を行う。また車両制御装置1は、上位装置等からの指示に基づいて列車10が目標位置において所定の制限速度以下となるよう速度制御を行う。
【0017】
図2は列車の位置に応じた速度パターンを示す図である。
図2においては列車10が力行しない場合の速度パターン21と、IEEE1474においてworst-caseとして示されるワーストパターン22を示している。速度パターン21は位置x
Oにおいて列車10は制動されず、その後、制動タイミングまでの間、制動遅れ期間として列車10が惰行している惰行区間211が生じる場合の各位置における速度を示している。また速度パターン21では惰行区間211が終了すると制動区間212となり列車10が制動され速度が減少することを示している。他方、ワーストパターン22は加速中の列車10が位置x
Oにおいて許可速度を超過し、その後制動タイミングまでの間に制動遅れ期間が生じる場合の位置に応じた速度を示している。ワーストパターン22は、この制動遅れ期間において列車10の加速中の速度の増加が継続する力行区間221と、惰行区間222とにおける各位置の速度を示す。ワーストパターン22における制動区間223の減速度は、速度パターン21における制動区間212の減速度と同様である。速度パターン21とワーストパターン22とでは
図2で示すように、加速が遮断できない力行区間が継続される分、列車10が制限速度で走行すると停車位置が距離Dだけ延びてしまう。車両制御装置1はワーストパターン22のような状況が発生しても、走行限界位置などの指示された目標位置において停止や所定の速度まで減速することが求められる。
【0018】
図3は第一実施形態による車両制御装置のハードウェア構成を示す図である。
図3で示すように車両制御装置1は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、信号入出力モジュール104等を備えるコンピュータである。信号入出力モジュール104は車両制御装置1が処理に利用する位置情報などの所定の情報を他装置から受信する。車両制御装置1は、受信した情報から処理に利用する加速度などを算出し、また、ROM等に記憶したデータと合わせて高度などを算出する。
【0019】
図4は第一実施形態による車両制御装置の機能ブロック図である。
車両制御装置1のCPU101は予め自装置で記憶するプログラムを実行することにより、制御部111、許可速度パターン算出部112の機能を備える。
制御部111は車両制御装置1の処理を制御する。
許可速度パターン算出部112は列車10の力行区間221の位置に応じた速度を示す力行パターンと、惰行区間222の位置に応じた速度を示す惰行パターンと、制動区間223における速度を示す制動パターンの算出を行う。許可速度パターン算出部112は、少なくとも力行パターンの算出において列車10
の速度に応じた加速度特性(モータトルクの回転数特性)を用いる。許可速度パターン算出部112は、さらに、惰行パターンと制動パターンの少なくとも一方の算出においても列車10の速度に応じた加速度特性を用いてよい。許可速度パターン算出部112は軌道の勾配に応じた加速度を用いて速度パターンにおける各位置の速度を算出してもよい。また許可速度パターン算出部112は、軌道の勾配の代わりに車両の現在位置、目標位置における高度を用いて速度パターンにおける各位置の速度を算出してもよい。
【0020】
図5は第一実施形態による車両制御装置の処理フローを示す図である。
図6は第一実施形態による車両制御装置の算出する速度パターンを示す図である。
次に
図5、
図6を用いて車両制御装置の処理フローを順を追って説明する。
以下の説明において、x
Oを列車10の現在位置とする。また速度の単位はkm(キロメートル)/h(時)、加速度の単位はkm/h/s、長さの単位はm(メートル)、時間の単位をs(秒)として表す。
【0021】
制御部111は目標位置で列車10が所定の制限速度以下の速度となるよう制御するための許可速度パターンの算出処理の開始を許可速度パターン算出部112へ指示する。本実施形態においては、許可速度パターン算出部112は、目標位置x
Eにおいて列車10を所定の目標速度v
L以下に制御するための、現在位置x
Oにおける許可速度を算出する。
【0022】
列車10が加速している状況において位置x
Oにおいて、現在位置x
O=0から位置x
1の力行区間、位置x
1から位置x
2の惰行区間、位置x
2から位置x
Eの制動区間が発生することがある。列車10が加速している際に制動制御をした場合の列車10の各位置における速度を示す速度パターンは、力行区間に対応する力行パターンと、惰行区間に対応する惰行パターンと、制動区間に対応する制動パターンとで表される。
【0023】
力行パターンは、現在位置x
Oから実際に制動が始まる制動タイミングまでの制動遅れ期間における列車10の力行区間の位置に応じた速度を示すパターンである。
惰行パターンは、制動遅れ期間における力行区間の後の惰行区間の位置に応じた速度を示すパターンである。
制動パターンは、制動タイミングにおける列車10の位置から当該列車10が所定の制限速度以下に制御される目標位置x
Eとの間の制動区間における速度を示すパターンである。
【0024】
列車10は、規格(IEEE1474)でworst-caseとして力行、惰行、制動の各状態が発生して制動距離が最長になることを想定している。
【0025】
ここで所定の制限速度v
L以下に列車10を制御する目標位置をx
E、目標位置x
Eにおける制限速度をv
L、惰行パターンから制動パターンへの切替位置を位置x
2とする。この場合、惰行パターンから制動パターンへの切替位置x
2における速度v
2は、式(1)のように表すことができる。式(1)において制動パターンでの減速度をβ
0とする。なお制限速度v
L>0とすることにより目標位置x
Eにおいて制限速度が0(停車)ではなく所定の速度(>0)とする場合の速度パターンの式が得られる。式(1)においてa(x)は位置xにおける高度を示し、gは重力加速度を示す。また式(1)においてx
Eは位置x
Oから目標位置x
Eまでの距離を示す。
【0027】
また力行パターンから惰行パターンへの切替位置を位置x
1とし、当該位置x
1における列車10の速度をv
1とする。この場合、速度v
1と位置x
1は以下の式(2)、式(3)のように表すことができる。
【0030】
式(2)、式(3)においてT
cは列車が惰行する既知の最大時間を示している。x(t)は惰行パターンから制動パターンへの切替位置x
2に達する時刻より時間t前の列車位置を示す。また位置xでの軌道Lの勾配の割合をk(x)とする。勾配の割合は下りを正として表し、例えば100m進んだ際に1m下がる場合にはk(x)=0.1となる。位置xでの加速度α
c(x)は、α
c(x)=k(x)g+α
sで表すことができる。α
sは追い風などの制動距離を増加させる要因による加速度である。
【0031】
また力行パターンを開始する位置とその位置x
O’における列車10の速度v
O’を、以下の式(4)、式(5)のように表すことができる。
【0034】
なお、速度vに対応するモータの回転数において当該モータが出力可能なトルクに対応する列車10の加速度をα
m(v)とすると、列車10が位置x、速度vの場合の加速度α
r(x,v)は、α
r(x,v)=α
m(v)+k(x)gで表すことができる。時間T
r加速した後に力行パターンから惰行パターンへの切替位置において(x
1,v
1)となるためには位置x
Oにおいてv
O’,x
O’である必要がある。式(4)、式(5)においてx(t)、v(t)はそれぞれ、力行パターンから惰行パターンへの切替位置x
1から時間t前の列車10の位置と速度を示す。
【0035】
許可速度パターン算出部112は、任意の位置x
2を設定する(ステップS101)。上述の式(1)を用いて任意の位置x
2における速度v
2を算出する(ステップS102)。許可速度パターン算出部112は、その速度v
2と位置x
2と、式(2)、式(3)とを用いて、力行パターンから惰行パターンへの切替位置の位置x
1とその位置での速度v
1とを算出する(ステップS103)。
【0036】
また許可速度パターン算出部112は算出した位置x
1と速度v
1とを用いて、式(4)、式(5)により位置x
O’とその位置における速度v
O’を算出する(ステップS104)。
【0037】
そして許可速度パターン算出部112は、任意に位置x
2を設定した場合の、位置x
Oについて算出したx
O’により、x
O’の値が0以上かを判定する(ステップS105)。許可速度パターン算出部112は、x
O’の値が所定の値以上であるかを判定し(ステップS106)、所定の値以上である場合には、任意に設定した位置x
2の値から所定の値γを減じて(ステップS107)、再度ステップS102からの処理を繰り返してもよい。任意に設定した位置x
2の値から所定の値γを減じると、位置x
2の位置をより位置x
Oの位置に近づくように設定することとなる。許可速度パターン算出部112は、位置x
Oについて算出したx
O’の値が0以上でありステップS106でNoの場合には列車10の位置x
O’が位置x
Oと同じか、または位置x
1側に算出された位置であることを示しているため、式(1)〜式(5)によって算出した各値を採用した許可速度パターンを確定する(ステップS108)。許可速度パターンは上記の力行パターン、惰行パターン、制動パターンを表す式と、位置x
O’及びその位置x
O’での速度v
O’と、位置x
1及びその位置x
1での速度v
1と、位置x
2及びその位置x
2での速度v
2と、位置x
E及びその位置x
Eでの速度v
Lとによって表される情報であってよい。制御部111は確定された許可速度パターンに基づく各位置の速度を列車10の速度が超過したと判定した場合には制動指令を出力する。
【0038】
他方、許可速度パターン算出部112は、位置x
Oについて算出したx
O’の値が0未満である場合には列車10の位置が位置x
Oよりも過去に走行した位置と算出されてしまうため、そのような式(1)〜式(5)によって算出した各値を採用して位置x
Oより先の許可速度パターンを算出することはできない。したがって、任意に設定した位置x
2の値に所定の値γを加えて(ステップS109)、再度同様の処理を繰り返し、位置x
Oにおけるx
O’の値が0以上となる、任意のx
2およびx
2の時の式(1)〜式(5)によって算出した値を含む許可速度パターンを算出する。任意に設定した位置x
2の値から所定の値γを加えると、位置x
2の位置がより位置x
Oの位置から遠ざかるように設定することとなる。なお位置x
Oにおけるx
O’の値が0となる場合の位置x
2の設定が最適値であるが、位置x
Oについて算出したx
O’の値が0以上となったとしても、そのような許可速度パターンは、位置x
Eで停車可能、または目標位置x
Eにおいて制限速度以下となるパターンであるため、安全上問題はない。
【0039】
上述の許可速度パターン算出部112の処理においては、力行パターンにおいてのみモータトルクの回転数(速度)特定を考慮して、列車10の速度に応じた加速度を式に設定することとしたが、制動パターンや、惰行パターンにおいても同様に列車10の速度に応じた加速度を式に設定してもよい。
【0040】
制動パターンにモータトルクの回転数特性を利用する場合を以下に示す。モータが出力可能な減速トルクに対応する列車10の減速度β
m(v)とすると、(位置,速度)=(x,v)での減速度β
bは、β
b(x,v)=β
m(v)−k(x)g−α
sとなる。このとき制動パターンの開始位置x
2における速度v
2と、当該位置x
2は、以下の式(6)、式(7)のように表すことができる。
【0043】
式(6)、式(7)は、位置x
Eまで到達するまでの時刻tを媒介変数として制動パターンを表す式である。また上述の惰行パターンから制動パターンへの切替位置x
2の設定において、式(6)、式(7)を用いた場合、ある時刻tを仮定し、その時刻tにおける列車10の位置x
2を惰行パターンから制動パターンへの切替位置と仮定することに相当する。
【0044】
また惰行パターンにモータトルクの回転数特性を利用する場合を以下に示す。モータの減速トルクに対応する列車10の減速度をβ
n(v)とすると、(位置,速度)=(x,v)である場合の加速度は、α
c(x,v)=k(x)g+α
s−β
n(v)と表すことができる。このとき惰行パターンは式(8)、式(9)により表すことができる。
【0047】
上述の許可速度パターン算出部112の処理によれば、モータが高回転数(列車10の速度が高速)である場合にトルク(車両加速度)は低減するというモータの特性を利用することにより、制動距離の過大評価や、許可速度を小さく推定することを低減することができる。
【0048】
上述の処理によれば車両制御装置1は、回転数(速度)に応じて出力可能なトルク、及びそのトルクにより生じる加速度を用いて、力行パターン、惰行パターン、制動パターンを算出し、各位置における列車10の許可速度を算出する。これにより、モータが高回転して速度の高い速度状態において列車10に生じるトルク(車両加速度)が低減するというモータの特性を利用した許可速度パターンに基づいて列車10を制御することができる。そして、このような制御により車両制御装置1は許可速度を小さく見積もって列車10を制御することを低減することができる。
【0049】
<第二実施形態>
図7は第二実施形態による車両制御装置の算出する許可速度パターンを示す図である。
第一実施形態においては、式(5)により算出したx
O’が0以上となるかどうかによって位置x
2の値を変更して、x
O’が0以上となる場合の位置x
2や、位置x
1を算出している。しかしながらこのような算出を行う場合、許可速度パターン算出部112は反復して計算を行う必要があり、位置x
Oを基準とした目標位置x
Eまでの許可速度パターンの算出時間が長くなってしまう。そこで、第二実施形態においては許可速度パターン算出部112がより短時間で許可速度パターンの算出を行うことのできる手法を以下に説明する。
【0050】
第二実施形態において許可速度パターン算出部112は、力行区間、惰行区間の速度上限を算出し、その速度上限に基づく各区間の長さを算出する。列車10の力行遮断遅れによる力行区間や制動遅れによる惰行区間の発生は既知の値であるため、速度上限を用いることにより各区間の長さを算出することができる。また第二実施形態において許可速度パターン算出部112は、軌道の勾配ではなく高度差を用いた式により許可速度パターンを求める。なお以下の説明において、速度の単位は[km/h]、加速度の単位は[km/h/s]、長さの単位は[m]、時間の単位は[s]とした。
【0051】
具体的には、許可速度パターン算出部112は式(10)により制動パターンが位置x
2における制動タイミングより前の現在位置x
Oでの仮定上限速度v
Bを算出する。式(10)においてβ
0は減速度、a(x)は位置xでの高度、gは重力加速度を示す。
【0053】
また許可速度パターン算出部112は力行区間、惰行区間の速度上限を式(10)により算出したv
Bとし、その速度上限v
Bに基づく力行区間の長さの上限値x
rと、惰行区間の長さの上限値x
cとを算出する。惰行区間の長さの上限値x
cはx
c=v
b×T
c÷3.6により表される。T
cは惰行時間を示す。力行区間の長さの上限値x
rはx
r=vb×T
r÷3.6で表される。T
rは力行時間を示す。惰行時間T
cと力行時間T
rは既知の値である。
【0054】
許可速度パターン算出部112は、惰行区間が終了し制動区間へ移行する際の速度v
2を式(11)により算出する。
【0056】
次に許可速度パターン算出部112は、力行区間が終了し惰行区間へ移行する際の速度v
1を式(12)により算出する。式(12)においてβ
wは風の影響による加速度を示す。
【0058】
そして許可速度パターン算出部112は、列車10の現在位置x
Oにおける速度v
Oを、式(13)により算出する。
【0060】
ここで式(13)においてα
r(v)はモータ特性から定まる速度vで生じる最大加速度を示す。また式(13)においてα
maxは軌道勾配の影響も含む軌道中で生じうる最大の加速度である。したがって、式(13)において「v
1−α
max・T
r」は、速度v
1から時刻T
rでとり得る最小の速度となり、「α
r(v
1−α
max・T
r)」は速度v
1の時点から力行時間T
r内で列車10のモータが発生し得る最大の加速度となる。モータ特性より速度が増加したとき、生じうる加速度が増加することはない。
【0061】
上述の処理によれば、仮定上限速度v
Bを算出し、その速度v
Bに基づく力行区間の長さの上限値x
rと、惰行区間の長さの上限値x
cとにより、列車10の現在位置x
Oにおける速度v
Oを算出している。したがって、反復計算することなく短時間で許可速度パターンを算出することができる。
【0062】
<第三実施形態>
上述の第一実施形態および第二実施形態は共に、列車10のモータが発生しうる加速度を算出する際に車両重量を考慮していない。本実施形態においてはさらに、列車10の重量を考慮した減速度を用いる点で他の実施形態と異なっている。
【0063】
速度が定まれば列車10のモータが発生することができる牽引力は一意に定まる。しかし加速度は列車10の重量にも依存する。空車と想定して加速度を算出すれば加速度が大きくなりその加速度に応じた許可速度パターンを算出できるが、その分過剰に許可速度を抑制することとなる。そこで車両制御装置1の制御部111は、発生させたモータの牽引力Fを検出する。また実際に列車10に生じた加速度αを計測する。制御部111は、列車重量m
e=F÷αにより、列車重量m
eを推定する。制御部111は、推定した列車重量m
eを用いて、モータが発生する最大の加速度α
maxを、α
max=F
max÷m
eにより算出する。F
maxは列車10のモータが発生する最大の牽引力である。許可速度パターン算出部112は、上記第一実施形態や第二実施形態の処理において制御部111の算出した加速度α
maxを用いて制動パターン、惰行パターン、力行パターンの算出を行う。
【0064】
第三実施形態の処理によれば、過剰に許可速度を抑制することを防止することができる。
【0065】
上述の各実施形態においては車両が列車である場合について説明したが、列車は例えばATC(Automatic Train Control)によって制御される車両を含む。また列車でなくとも自動車などの他の車両に上記技術を適用してもよい。
【0066】
上述の車両制御装置1は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、車両制御装置1に上述した各処理を行わせるためのプログラムは、当該車両制御装置1のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムを車両制御装置1のコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0067】
また、上記プログラムは、前述した各処理部の機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。