【実施例】
【0026】
次に、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0027】
飲食品の嚥下後に鼻孔から排出された呼気を、揮発性有機化合物を検出することができるプロトン移動反応質量分析計PTR‐MS(IONICON Analytik)に導入し、指定したイオンの絶対濃度を得た。反応チャンバ及び導入部に対するPTR−MSパラメータを表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
[実施例1]
コーヒーに含有される香料化合物で構成されたモデル配合処方に基づきコーヒー用基本調合香料組成物(参考品1)を調合した。参考品1の配合処方を表2に示す。
【0030】
【表2】
参考品1を水に0.1%添加し、試料とした。この試料を5℃に冷却し、試料を10ml飲んだ後の鼻孔から放出される香料化合物をPTR−MSによって測定した。測定時間は喫飲後およそ1分間とした。
【0031】
計測結果として得られた連続的に変化する濃度を呼吸ごとの濃度積算値として解析し、その値を累乗関数(C=a*t
-b)で近似した。同測定を複数回行い、係数(a,b)を測定回数で平均化した。参考品1の構成香料化合物に関する、呼吸数(t)に対するレトロネーザルアロマ濃度積算値(C)の関係を導く累乗関数の係数(a,b)を表3に示す。
【0032】
【表3】
【0033】
参考品1を構成する各香料化合物7成分のそれぞれを水に添加し、試料とした。添加濃度を1%から10倍刻みに希釈し多段階調製した。検知できない低濃度の試料から順に評価を行い、10ml飲み込んだときに検知できた添加濃度を閾値濃度とした。その閾値濃度となる添加量の時に鼻孔から放出されていると考えられる初期量、つまりレトロネーザル閾値濃度積算値(C
T)を算出した。参考品1の構成香料化合物の閾値濃度とレトロネーザル閾値濃度積算値(C
T)を表4に示す。
【0034】
【表4】
【0035】
参考品1に関して、表3に示した関数から1呼吸目と10呼吸目のレトロネーザルアロマ濃度積算値(C
R)を算出し、レトロネーザル閾値濃度積算値(C
T)で除することで得られる貢献度の値を表5に示す。
【0036】
【表5】
【0037】
貢献度が1.0より大きい、つまりC
R/C
T>1.0となる場合、閾値以上の濃度が鼻孔から放出されていることを示し、人がその香料化合物を知覚することができていると考えられ、その数値が大きい程より貢献度が高いと位置づけられる。貢献度が1.0より小さい、つまりC
R/C
T<1.0となる場合、閾値未満の濃度が鼻孔から放出されていることを示し、人がその香料化合物を知覚できていないと位置づけられる。この貢献度は香料組成物の処方中の配合量と飲料への添加濃度を調整する事で変更することができる。
【0038】
[実施例2]
グレープに含有される香料化合物で構成されたモデル配合処方に基づきグレープ用基本調合香料組成物(参考品2)を調合した。参考品2の配合処方を表6に示す。
【0039】
【表6】
【0040】
グラニュー糖15g、果糖ぶどう糖液糖8g、ゼラチン2g、クエン酸0.25gを含む水溶液100mlを80℃に加熱し、参考品2をそのゼリー生地に0.2%添加し、冷却して試料のゼリーとした。この試料を5℃に冷却し、試料10gを咀嚼し飲みこんだ後の鼻孔から放出される香料化合物をPTR−MSによって測定した。測定時間は喫食後およそ1分間とした。
【0041】
計測結果として得られた連続的に変化する濃度を呼吸ごとの濃度積算値として解析し、その値を累乗関数(C=a*t
-b)で近似した。同測定を複数回行い、係数(a,b)を測定回数で平均化した。参考品2の構成香料化合物に関する、呼吸数(t)に対するレトロネーザルアロマ濃度積算値(C)の関係を導く累乗関数の係数(a,b)を表7に示す。
【0042】
【表7】
【0043】
参考品2を構成する各香料化合物5成分のそれぞれを水に添加し、試料とした。添加濃度を1%から10倍刻みに希釈し多段階調製した。検知できない低濃度の試料から順に評価を行い、10ml飲み込んだときに検知できた添加濃度を閾値濃度とした。その閾値濃度となる添加量の時に鼻孔から放出されていると考えられる初期量、つまりレトロネーザル閾値濃度積算値(C
T)を算出した。参考品2の構成香料化合物の閾値濃度とレトロネーザル閾値濃度積算値(C
T)を表8に示す。
【0044】
【表8】
【0045】
参考品2に関して、表7に示した関数から1呼吸目と10呼吸目のレトロネーザルアロマ濃度積算値(C
R)を算出し、レトロネーザル閾値濃度積算値(C
T)で除することで得られる貢献度の値を表9に示す。
【0046】
【表9】
【0047】
[実施例3]
レトロネーザル香気貢献度の有効性を検証するために以下の試験を行った。
コーヒーに含有される香料化合物で構成されたモデル配合処方に基づきコーヒー用基本調合香料組成物(参考品3)を調合した。参考品3の配合処方及び代表的な香調表現を表10に示す。
【0048】
【表10】
【0049】
参考品3を構成する各香料化合物中の香気貢献度の高い11成分については、その香りの質を表す代表的な香調表現を併記した。尚、上記11成分以外の香料化合物をフレーバーベースAとしてまとめて示した。
【0050】
[参考例1]
(経時的な香りバランス予測)
コーヒー用基本調合香料組成物を調整し、その香料を0.1%賦香した水を飲んだ後に被験者が感じると推測される1呼吸目及び10呼吸目の香りバランスの予測を行った。ここで1呼吸目は嚥下直後にあたり、10呼吸目は嚥下してから約30秒後を想定している。賦香した水を飲んだ時に鼻から出てくると予測される1呼吸目及び10呼吸目のレトロネーザルアロマ濃度積算値(C
R)は、各香料化合物の添加量と累乗関数より導き出した。更に各香料化合物のレトロネーザル閾値濃度積算値(C
T)より、レトロネーザル香気貢献度(C
R/C
T)を算出した。各香料化合物のレトロネーザル香気貢献度の値と香調ごとに数値を合算した値を表11に示す。
【0051】
【表11】
【0052】
(官能評価)
上記の予測結果と感覚との関係性を明らかにするために官能評価を行った。
上記コーヒー用基本調合香料組成物(参考品3)を0.1%配合した水を飲んだ後の香気について、7名の熟練したパネリストが官能評価を行った。評価項目は、発酵様、バター様、ナッツ様、ロースト、生豆様、黒糖様、スモーキーの7項目で、各項目の強度を7段階で評価した。その評価基準を以下に示す。
評価基準
点数
6点:とても強く感じる
5点:強く感じる
4点:やや強く感じる
3点:やや弱く感じる
2点:弱く感じる
1点:とても弱く感じる
0点:全く感じない
評価するタイミングは、嚥下直後及び30秒後とし、用意された評価用紙に0〜6点で記入する方式をとった。評価者7名の単純平均値を表12に示した。
【0053】
【表12】
【0054】
(香りバランス予測と官能評価の比較)
表11に示した各香調のレトロネーザル香気貢献度の値は数値の幅が大きい為、対数化処理を行った値を用いた。得られた香調ごとの貢献度予測と官能評価の結果を比較したところ、嚥下直後の関係性を示す散布図(
図1)において、高い相関が見られた。また30秒後の関係性を示す散布図(
図2)においても、相関が見られた。この事から、本評価方法によって得られたレトロネーザルアロマにおける貢献度が香りバランスを予測する方法として有用である事が示された。