(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軸線回りに回転する回転軸と、該回転軸から放射状に延びる複数の動翼を有する動翼列が前記軸線方向に間隔をあけて配置されてなる動翼列群と、を有するロータを有する回転機械の翼監視装置であって、
前記ロータに設けられ、前記動翼の異常によって放出されるAE信号を検出する3つ以上のAEセンサを有する検出部を備え、
前記検出部の前記AEセンサの少なくとも一部は、前記回転軸に前記軸線方向に間隔をあけて配置された軸方向AEセンサであって、
前記AEセンサの少なくとも1つは、前記動翼列群における前記動翼列の間に設けられ、
前記AEセンサの少なくとも2つは、前記動翼列群を前記軸線方向から挟むように、前記動翼列群の外側に設けられ、
複数の前記軸方向AEセンサからそれぞれ入力される複数の前記AE信号の時間差に基づいて、異常が発生した前記動翼を有する前記動翼列を特定する翼列特定部を有する翼監視装置本体を備える翼監視装置。
軸線回りに回転する回転軸と、該回転軸から放射状に延びる複数の動翼を有する動翼列が前記軸線方向に間隔をあけて配置されてなる動翼列群と、を有するロータを有する回転機械の翼監視装置であって、
前記ロータに設けられ、前記動翼の異常によって放出されるAE信号を検出する複数のAEセンサを有する検出部を備え、
前記検出部の前記AEセンサの少なくとも一部は、前記回転軸に前記軸線方向に間隔をあけて配置された軸方向AEセンサであって、
複数の前記軸方向AEセンサからそれぞれ入力される複数の前記AE信号の時間差に基づいて、異常が発生した前記動翼を有する前記動翼列を特定する翼列特定部を有する翼監視装置本体を備え、
前記ロータは、それぞれ前記動翼列を支持する複数のディスクを前記軸線方向に積層させることで構成されており、
前記検出部の前記AEセンサの少なくとも一部は、同一の前記ディスクに周方向に間隔をあけて配置された周方向AEセンサであって、
前記翼監視装置本体は、
前記複数の前記周方向AEセンサからそれぞれ入力される複数の前記AE信号の時間差に基づいて、異常が発生した前記動翼を特定する動翼特定部を有する翼監視装置。
軸線回りに回転する回転軸と、該回転軸から放射状に延びる複数の動翼を有する動翼列が前記軸線方向に間隔をあけて配置されてなる動翼列群と、を有するロータを有する回転機械の翼監視装置であって、
前記ロータは、それぞれ前記動翼列を支持する複数のディスクを前記軸線方向に積層させることで構成されており、
前記ロータに設けられ、前記動翼の異常によって放出されるAE信号を検出する複数のAEセンサを有する検出部を備え、
前記検出部の前記AEセンサの少なくとも一部は、同一の前記ディスクに周方向に間隔をあけて配置された周方向AEセンサであって、
複数の前記周方向AEセンサからそれぞれ入力される複数の前記AE信号の時間差に基づいて、異常が発生した前記動翼を特定する動翼特定部を有する翼監視装置本体を備える翼監視装置。
【背景技術】
【0002】
例えば蒸気タービン、ガスタービン等の回転機械は、回転軸と、該回転軸の外周に設けられた複数の動翼列からなる動翼列群とを有している。回転機械の運転時には、回転する動翼列の振動を計測している。このような計測を行うことにより、動翼列の振動特性が設計計画通りであるか否かを検証することができる。また、運転条件の変化による動翼の振動特性の変化を確認し、タービン製品の信頼性の向上を図ることができる。
【0003】
例えば特許文献1には、動翼に接触しない静止部に変位センサを設け、該変位センサによって動翼の振動を監視する技術が開示されている。
特に、動翼の翼高さが大きい低圧段では、静止側から各動翼の通過時間を計測し、その結果を演算して動翼の振動形態および振動量を算出する非接触モニタが適用されることが多い。
【0004】
また特許文献2には、ロータに摺動接触する静止部に振動検出部を設ける技術が開示されている。例えば振動検出部としての加速度計を軸受箱に設置することで、該軸受箱に伝達される翼列群からの振動を該加速度計によって検出する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1に記載の技術では、特に動翼の翼高さが小さい高圧段では、変位センサの設置環境が悪く、さらに動翼の振動振幅が小さいため、適切に振動を監視することができない。また、蒸気や燃焼ガス等の作動流体の性状によっては、変位センサの検出値に誤差が生じ、適切に振動を検出できない場合がある。
【0007】
また、上記特許文献2に記載の技術では、動翼列群から軸受箱まで振動が伝達するために、軸受油膜、軸受、軸受ハウジング等の振動減衰要素を経由する必要がある。そのため、信号自体の品質が悪化し、また、暗振動により信号がマスキングされる可能性が高い。
よって、いずれの技術であっても動翼の異常を容易に検出することは困難である。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、動翼の異常を容易に把握することができる翼監視装置及び回転機械システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用している。
即ち、本発明の第一態様に係る翼監視装置は、軸線回りに回転する回転軸と、該回転軸から放射状に延びる複数の動翼を有する動翼列が前記軸線方向に間隔をあけて配置されてなる動翼列群と、を有するロータを有する回転機械の翼監視装置であって、前記ロータに設けられ、前記動翼の異常によって放出されるAE信号を検出する
3つ以上のAEセンサを有する検出部を備え、前記検出部の前記AEセンサの少なくとも一部は、前記回転軸に前記軸線方向に間隔をあけて配置された軸方向AEセンサであって、
前記AEセンサの少なくとも1つは、前記動翼列群における前記動翼列の間に設けられ、前記AEセンサの少なくとも2つは、前記動翼列群を前記軸線方向から挟むように、前記動翼列群の外側に設けられ、複数の前記軸方向AEセンサからそれぞれ入力される複数の前記AE信号の時間差に基づいて、異常が発生した前記動翼を有する前記動翼列を特定する翼列特定部を有する翼監視装置本体を備える。
【0010】
いずれかの動翼列の動翼に異常が生じた場合、即ち、例えば動翼に変形が発生し、又はき裂が発生した場合には、動翼自体が内部に蓄えていた歪みエネルギーが弾性波として放出される。当該弾性波がAE(アコースティックエミッション)信号である。このようなAE信号は、異常が発生した動翼を有する動翼列を基点として回転軸の軸方向にも伝搬する。
本態様では、このAE信号を複数の軸方向AEセンサで検出する。各軸方向AEセンサは、配置された箇所に応じてAE信号を受信するタイミングが異なる。この軸方向各AEセンサによるAE信号受信の時間差に基づいて翼列特定部が演算を行うことで、AE信号の発生箇所の軸線方向位置、即ち、異常が発生した動翼を有する動翼列を特定することができる。
【0011】
上記翼監視装置では、前記ロータは、それぞれ前記動翼列を支持する複数のディスクを前記軸線方向に積層させることで構成されており、前記検出部の前記AEセンサの少なくとも一部は、同一の前記ディスクに周方向に間隔をあけて配置された周方向AEセンサであって、前記翼監視装置本体は、前記複数の前記周方向AEセンサからそれぞれ入力される複数の前記AE信号の時間差に基づいて、異常が発生した前記動翼を特定する動翼特定部を有していてもよい。
【0012】
特定のディスクに設けられた複数の動翼のうちのいずれかに異常が発生した場合には、当該動翼を基点としてディスク内にAE信号が伝搬していく。本態様では、当該AE信号を複数の周方向AEセンサで検出する。各周方向AE信号は配置された箇所によるAE信号受信のタイミングが異なる。そのため、各周方向AEセンサによるAE信号受信の時間差に基づいて動翼特定部が演算を行うことで、異常が発生した動翼を特定することができる。
本発明の第二態様に係る翼監視装置は、軸線回りに回転する回転軸と、該回転軸から放射状に延びる複数の動翼を有する動翼列が前記軸線方向に間隔をあけて配置されてなる動翼列群と、を有するロータを有する回転機械の翼監視装置であって、前記ロータに設けられ、前記動翼の異常によって放出されるAE信号を検出する複数のAEセンサを有する検出部を備え、前記検出部の前記AEセンサの少なくとも一部は、前記回転軸に前記軸線方向に間隔をあけて配置された軸方向AEセンサであって、複数の前記軸方向AEセンサからそれぞれ入力される複数の前記AE信号の時間差に基づいて、異常が発生した前記動翼を有する前記動翼列を特定する翼列特定部を有する翼監視装置本体を備え、前記ロータは、それぞれ前記動翼列を支持する複数のディスクを前記軸線方向に積層させることで構成されており、前記検出部の前記AEセンサの少なくとも一部は、同一の前記ディスクに周方向に間隔をあけて配置された周方向AEセンサであって、前記翼監視装置本体は、前記複数の前記周方向AEセンサからそれぞれ入力される複数の前記AE信号の時間差に基づいて、異常が発生した前記動翼を特定する動翼特定部を有する。
いずれかの動翼列の動翼に異常が生じた場合、即ち、例えば動翼に変形が発生し、又はき裂が発生した場合には、動翼自体が内部に蓄えていた歪みエネルギーが弾性波として放出される。当該弾性波がAE(アコースティックエミッション)信号である。このようなAE信号は、異常が発生した動翼を有する動翼列を基点として回転軸の軸方向にも伝搬する。
本態様では、このAE信号を複数の軸方向AEセンサで検出する。各軸方向AEセンサは、配置された箇所に応じてA E 信号を受信するタイミングが異なる。この軸方向各AEセンサによるAE信号受信の時間差に基づいて翼列特定部が演算を行うことで、AE信号の発生箇所の軸線方向位置、即ち、異常が発生した動翼を有する動翼列を特定することができる。
また、特定のディスクに設けられた複数の動翼のうちのいずれかに異常が発生した場合には、当該動翼を基点としてディスク内にAE信号が伝搬していく。本態様では、当該AE信号を複数の周方向AEセンサで検出する。各周方向AE信号は配置された箇所によるAE信号受信のタイミングが異なる。そのため、各周方向AEセンサによるAE信号受信の時間差に基づいて動翼特定部が演算を行うことで、異常が発生した動翼を特定することができる。
【0013】
上記翼監視
装置では、前記ロータに設けられて、前記AEセンサが検出したAE信号を無線送信する送信機を備え、前記翼監視装置本体は、前記送信機から送信された前記AE信号を受信する受信機を有することが好ましい。
【0014】
これによって、回転するロータに取り付けられたAEセンサが受信するAE信号を、翼監視装置本体に容易に入力することができる。
【0015】
本発明の
第三態様に係る翼監視装置は、軸線回りに回転する回転軸と、該回転軸から放射状に延びる複数の動翼を有する動翼列が前記軸線方向に間隔をあけて配置されてなる動翼列群と、を有するロータを有する回転機械の翼監視装置であって、前記ロータは、それぞれ前記動翼列を支持する複数のディスクを前記軸線方向に積層させることで構成されており、前記ロータに設けられ、前記動翼の異常によって放出されるAE信号を検出する複数のAEセンサを有する検出部を備え、前記検出部の前記AEセンサの少なくとも一部は、同一の前記ディスクに周方向に間隔をあけて配置された周方向AEセンサであって、複数の前記周方向AEセンサからそれぞれ入力される複数の前記AE信号の時間差に基づいて、異常が発生した前記動翼を特定する動翼特定部を有する翼監視装置本体を備えていてもよい。
【0016】
これによって上記同様、特定のディスクに取り付けられた動翼のうちいずれの動翼に異常が発生したかを容易に検出することができる。
【0017】
本発明の
第四態様に係る回転機械システムは、前記回転機械と、上記いずれかの翼監視
装置と、を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明の翼監視装置及び回転機械システムによれば、動翼列群の振動を容易に監視することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る蒸気タービンシステム(回転機械システム)について
図1〜
図6を参照して説明する。
図1に示すように、蒸気タービンシステム1は、蒸気タービン2(回転機械)及び翼監視装置30を備える。
【0021】
蒸気タービン2は、蒸気のエネルギーを回転動力として取り出す外燃機関であって、発電所における発電機等に用いられるものである。蒸気タービン2は、ロータ3、スラスト軸受8、ジャーナル軸受9及びステータ20を備えている。
【0022】
ロータ3は、回転軸4と動翼列群5とを備えている。
回転軸4は、水平方向に沿う軸線Oを中心として延びる円柱形状をなしている。回転軸4の一部には、スラストカラー4aが形成されている。スラストカラー4aは、軸線Oを中心として円板形状をなしており、フランジ状をなすように回転軸4の本体から回転軸4の径方向外側に一体的に張り出している。
【0023】
動翼列群5は、
図1及び
図2に示すように、回転軸4の外周に軸線O方向に間隔をあけて設けられた複数の動翼列6によって構成されている。各動翼列6は、回転軸4の外周面から径方向外側に向かって延びる動翼7が周方向に間隔をあけて複数配列されることで構成されている。即ち、各動翼列6は、回転軸4の同一の軸線O方向位置に放射状に設けられた複数の動翼7によって構成されている。
【0024】
スラスト軸受8は、スラストカラー4aを軸線O方向両側から摺動可能に支持している。これによって、回転軸4の軸線O方向の移動を規制している。
ジャーナル軸受9は、回転軸4の両端側で該回転軸4を軸線O回りに回転可能に下方から支持するように一対が設けられている。
【0025】
ステータ20は、ケーシング21及び静翼列群22を備えている。
ケーシング21は、ロータ3の一部と外周側から囲うように設けられている。ロータ3の回転軸4は、ケーシング21を軸線O方向に貫通している。回転軸4の両端は、ケーシング21外に位置しており、該ケーシング21の外側でスラスト軸受8及びジャーナル軸受9に支持されている。ロータ3の動翼列群5は、ケーシング21の内側に配置されている。
【0026】
静翼列群22は、ケーシング21の内周に軸線O方向に間隔をあけて設けられた複数の静翼列23によって構成されている。各静翼列23は、ケーシング21の内周面から径方向内側に向かって延びる静翼24が周方向に間隔をあけて複数配列されることで構成されている。即ち、各静翼列23は、回転軸4の同一の軸線O方向位置に放射状に設けられた複数の静翼24によって構成されている。静翼列23は、ロータ3の動翼列6と軸線O方向に交互に配置されている。
【0027】
このような蒸気タービン2では、ケーシング21内に導入される蒸気が静翼列23及び動翼列6の間の流路を通過する。この際、蒸気が動翼7を回転させることで該動翼7に伴って回転軸4が回転し、該回転軸4に接続された発電機等の機械に動力(回転エネルギー)が伝達される。
【0028】
次に翼監視装置30について説明する。
翼監視装置30は、
図2に示すように、複数のAEセンサユニット40(検出部)及び翼監視装置本体60を備えている。
AEセンサユニット40は、ロータ3における回転軸4の外周面に、軸線O方向に間隔をあけて複数取り付けられている。AEセンサユニット40は、例えばロータ3の外周面から窪む凹部内に配置されていてもよい。
【0029】
本実施形態では、3つのAEセンサユニット40が取り付けられている。これらAEセンサユニット40の一つは、動翼列群5における動翼列6の間に設けられている。残りの二つのAEセンサユニット40は、動翼列群5を軸線O方向から挟むように、動翼列群5の軸線O方向の外側に設けられている。なお、AEセンサユニット40は、4つ以上の複数が設けられていてもよい。複数のAEセンサユニット40が軸線O方向に離間して配置されている限り、これらAEセンサユニット40を任意に配置することができる。
【0030】
各AEセンサユニット40は、AEセンサ41(軸方向AEセンサ)、送信機42及びバッテリー43が一体とされることで構成されている。
AEセンサ41は、動翼7に変形や亀裂が生じた際に放出される弾性波をAE信号として検出する。AE(アコースティックエミッション)信号は、数10kHz〜数MHzといった非常に高い周波数成分を有している。周波数の高い信号は空気中では大きく減衰するため、主としてロータ3中を伝搬していく。AEセンサ41では、上記周波数帯域の振動を検出可能な圧電素子を有している。圧電素子としては、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等のセラミック製圧電素子が用いられる。
【0031】
本実施形態のAEセンサ41は、特に動翼7の材料及び形状を踏まえた上で当該動翼7に変形・亀裂が生じた際に放出される弾性波が検出可能となるようにチューニングされている。AEセンサ41の検出面は、回転軸4の表面に接触している。なお、AEセンサ41の検出面とロータ3の表面との間に、シリコングリース等の音響カップランとが介在されていてもよい。
【0032】
送信機42は、AEセンサ41に接続されており、AEセンサ41が受信するAE信号が入力される。送信機42は当該AE信号を外部に無線送信する。
【0033】
バッテリー43は、AEセンサ41及び送信機42に電力を供給する役割を有する。バッテリー43としては、例えばリチウム電池等の二次電池を採用することができる。
なお、本実施形態では、各AEセンサユニット40に対応してバッテリー43及び送信機42を有しているが、例えば、複数のAEセンサ41を回転軸4に対して軸線O方向に間隔をあけて配置し、これら複数のAEセンサ41が検出したAE信号を一括して外部に無線送信する一の送信機42、及び各AEセンサ41に電力を供給するともに一の送信機42に電力を送信する一のバッテリー43を備えた構成としてもよい。この場合、複数のAEセンサ41、一の送信機42及び一のバッテリー43を互いにケーブルで接続する必要がある。
【0034】
翼監視装置本体60は、
図4に示すように、CPU61(Central Processing Unit)、ROM62(Read Only Memory)、RAM63(Random Access Memory)、HDD64(Hard Disk Drive)、信号受信モジュール65(受信機)を備えるコンピュータである。信号受信モジュール65は、送信機42を介して無線送信される各AEセンサ41からのAE信号を受信する。なお、送信機42が無線送信するAE信号を増幅器で受信・増幅して、信号受信モジュール65に入力される構成であってもよい。
【0035】
図5に示すように、翼監視装置本体60のCPU61は予め自装置で記憶するプログラムを実行することにより、制御部71、翼列特定部72、警報部73の各構成を備える。
制御部71は解析装置に備わる他の機能部を制御する。
【0036】
翼列特定部72は、複数のAEセンサ41からそれぞれ入力される複数のAE信号の時間差に基づいて、異常が発生した動翼7を有する動翼列6を特定する。即ち、複数の動翼列6のうちいずれかの動翼列6における動翼7で異常が発生した場合には、当該動翼列6を基点として弾性波が伝搬していく。当該弾性波は回転軸4の延在方向に従って、当該回転軸4の軸線O方向に伝搬する。この際、互いに軸線O方向に間隔をあけて配置されたAEセンサ41では、弾性波を検出するタイミング、即ち、AE信号を受信するタイミングが異なる。例えば、
図6に示すように、3つのAEセンサ41のうち、センサAでは先にAE信号を受信し、次いで、センサB、Cが順次AE信号を受信することになる。
【0037】
翼列特定部72では、このように複数のAE信号の受信の時間差に基づいて、弾性波の基点となる軸線O方向位置、即ち、弾性波が放出された動翼7を有する動翼列6を特定する延在を行う。より具体的には、翼列特定部72は、予め記憶された各AE信号の位置と、各AEセンサ41が受信したAE信号のタイミングに基づいて、弾性波が放出された動翼列6を特定する演算を行う。
【0038】
なお、翼列特定部72は、予め定めた閾値以上の振幅のAE信号が入力された際にのみ上記動翼列6を特定する演算を行ってもよい。また、各AEセンサ41が受信するAE信号の強度を用いて、異常が発生した動翼列6を特定する演算を行ってもよい。異常が発生した動翼7を有する動翼列6から離れる程、AE信号の信号強度は小さくなる。したがって、AE信号の信号強度を用いることで、より正確に異常が生じた動翼列6を特定することができる。
【0039】
警報部73は、翼列特定部72の演算結果に基づいて警報を出力する。即ち、警報部73は、翼列特定部72が動翼列6を特定した場合には、異常が発生した旨及び異常が発生した動翼列6を特定する警報を出力する処理を行う。警報部73は、警報情報をモニタに表示する処理を行ってもよいし、警報としてのアラームを鳴らす処理を行ってもよい。
【0040】
次に本実施形態の蒸気タービンシステム1の作用効果について説明する。
蒸気タービンシステム1の各動翼7に異常・損傷等が発生していない正常時であれば、動翼7から特定の周波数の弾性波が放出されることはないため、警報が出力されることはない。
一方で、いずれかの動翼列6の動翼7に変形が生じたりき裂が発生したりした場合には、動翼7自体が内部に蓄えていた歪みエネルギーが弾性波(AE信号)として放出される。このAE信号は、異常が発生した動翼7を有する動翼列6を基点として回転軸4の軸線O方向に伝搬し、各AEセンサユニット40のAEセンサ41によって検出される。各AEセンサ41が受信したAE信号は、送信機42を介して翼監視装置本体60に無線送信される。翼監視装置本体60では、翼列特定部72が各AEセンサ41からのAE信号受信の時間差に基づいて異常が発生した動翼列6を特定する。そして、警報部73が当該情報を警報として出力する。
【0041】
以上のように本実施形態では、異常が発生した動翼7から放出されるAE信号を、回転軸4の軸線O方向に離間して配置された複数のAEセンサ41で検出することで、当該動翼7を有する動翼列6を容易に特定することができる。
【0042】
動翼7の異常により放出される弾性波は、他の振動に比べて周波数が非常に大きいため、当該弾性波が他の振動によってマスキングされることもない。また、異常時の動翼7自体の振幅が小さい場合であっても、異常発生時の弾性波を検出することで容易に動翼7の異常を検出することができる。さらに、蒸気タービンの作動流体である蒸気の性状によらず、安定して動翼7の異常を検出することができる。
また、各AEセンサ41が検出する信号は、送信機42を介して無線送信されることで翼監視装置本体60に入力されるため、回転側と静止側との間で複雑な配線構成を採用する必要はない。
【0043】
次に本発明の第二実施形態について
図7及び
図8を参照して詳細な説明を省略する。第二実施形態では、第一実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0044】
第二実施形態では、ロータ3を構成する回転軸4は、軸線Oを中心とした円盤状のディスク4bを軸線O方向に複数積層されることで構成されている。各ディスク4bには、複数の動翼7が放射状に固定されている。即ち、各動翼7は、ディスク4bに基端が固定されており該ディスク4bの外周側に延びるように、互いに周方向に間隔をあけて配置されている。
【0045】
第二実施形態の翼監視装置30Aは、複数のAEセンサユニット40A(検出部)と翼監視装置本体60Aとを備えている。
AEセンサユニット40Aは、複数のディスク4bのうちの特定のディスク4bに、周方向に間隔をあけて複数(本実施形態では3つ)が設けられている。これらAEセンサユニット40Aは、例えばディスク4bにおける軸線O方向を向く面に形成された凹部に埋め込まれることによってディスク4bに固定されていてもよい。AEセンサユニット40Aは、4つ以上の複数が周方向に間隔をあけて設けられていてもよい。複数のAEセンサユニット40Aは、同一の径方向位置に設けられていることが好ましい。複数のAEセンサユニット40Aは互いに異なる径方向位置に設けられていてもよい。
【0046】
第二実施形態のAEセンサユニット40Aは、AEセンサ41A(周方向AEセンサ)、送信機42及びバッテリー43を有している。第二実施形態のAEセンサ41Aは、第一実施形態のAEセンサ41と同様の構成であって、ディスク4b内を周方向に伝搬する弾性波を検出する。
【0047】
第二実施形態の翼監視装置本体60Aは、制御部71、動翼特定部72A及び警報部73を有する。
動翼特定部72Aは、複数のAEセンサ41からそれぞれ入力される複数のAE信号の時間差に基づいて、損傷が発生した動翼7を特定する。
【0048】
特定の動翼列6のうちのいずれかの動翼7が損傷した際に放出される弾性波は、動翼7の基端を介してディスク4b内を伝搬する。当該ディスク4bに設けられたAEセンサ41は、弾性波を検出するが、当該弾性波の検出タイミングはAEセンサ41の配置箇所によって異なる。動翼特定部72Aは、AE信号の検出タイミング及び各AEセンサ41の配置箇所の情報に基づいて、弾性波の発生源となった動翼7、即ち、異常が生じた動翼7を特定する。これによって、異常が発生した動翼7を容易に特定し、警報として出力することができる。
【0049】
なお、本実施形態では、特定のディスク4bに複数のAEセンサ41を設けたが、全てのディスク4bにAEセンサ41を複数設けて各ディスク4bで異常が生じた動翼7を特定できる構成としてもよい。また、任意に選択された複数のディスク4bにAEセンサ41を設けてもよい。
【0050】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0051】
第一実施形態では、回転軸4の軸線O方向に離間してAEセンサ41を取り付けて、異常が生じた動翼列6を特定する構成を説明し、第二実施形態では、ディスク4bに周方向に離間してAEセンサ41を取り付けて異常が生じた動翼7を特定する構成とした。
例えば、これら第一実施形態及び第二実施形態を組み合わせて、動翼列6の特定、動翼7の特定を段階的に行う構成としてもよい。また、動翼列6の特定と動翼7の特定とを個別に行う構成としてもよい。
【0052】
また、例えば実施形態では本発明を蒸気タービン2に適用した例について説明したが、例えばガスタービン等の他の回転機械に適用してもよい。