(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
金属と樹脂材料との接着方法であって、前記金属の表面に、請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属の表面処理液を接触させて化成皮膜を形成し、前記金属と前記樹脂材料とを前記化成皮膜を介して接着させることを特徴とする金属と樹脂材料との接着方法。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の金属の表面処理液(以下、単に「表面処理液」ともいう。)は、後述する化学式(I)で示されるアゾールシラン化合物の少なくとも1種と、後述する化学式(II)〜(XIV)で示されるアゾール化合物からなる群から選択される少なくとも1種を表面処理液の成分として含有する。
【0027】
(アゾールシラン化合物)
本発明の金属の表面処理液に含有するアゾールシラン化合物は下記化学式(I)で示されるアゾールシラン化合物(以下、「特定アゾールシラン化合物」ともいう。)である。この特定アゾールシラン化合物は、1種を単独で含有してもよく、2種以上を組み合わせて含有してもよい。
【0029】
(式(I)中、Xは水素原子、−CH
3、−NH
2、−SH又は−SCH
3を表す。Yは−NH−又は−S−を表す。Rは−CH
3又は−CH
2CH
3を表す。mは1〜12の整数を表し、nは0又は1〜3の整数を表す。)
【0030】
特定アゾールシラン化合物は、アゾール環を有する物質であるので、アゾール化合物の特徴である金属の防錆機能を有すると共に、シラン化合物の特徴である材質の異なる材料間の接着性を高める機能を有するため、金属と樹脂材料との接着機能を発揮する。
【0031】
化学式(I)で示されるアゾールシラン化合物(特定アゾールシラン化合物)は、化学式(I−1)〜(I−4)で示されるアゾールシラン化合物を包含する。
【0033】
(式(I−1)〜(I−4)中、X、Y、R及びmは、前記と同様である。)
【0034】
即ち、化学式(I−1)で示されるアゾールシラン化合物(以下、アゾールシラン化合物(I−1)ともいう。)は、前記の化学式(I)においてnが0である場合のアゾールシラン化合物(トリアルコキシ体)である。
同様に、化学式(I−2)で示されるアゾールシラン化合物(以下、アゾールシラン化合物(I−2)ともいう。)は、nが1である場合のアゾールシラン化合物であり、化学式(I−3)で示されるアゾールシラン化合物(以下、アゾールシラン化合物(I−3)ともいう。)は、nが2である場合のアゾールシラン化合物であり、化学式(I−4)で示されるアゾールシラン化合物(以下、アゾールシラン化合物(I−4)ともいう。)は、nが3である場合のアゾールシラン化合物である。
【0035】
アゾールシラン化合物(I−2)〜(I−4)は、表面処理液中に存在するアゾールシラン化合物(I−1)が、加水分解されて生成する種であり、これらは、トリアルコキシ体のアゾールシラン化合物(I−1)と共に、シランカップリング剤の成分として好適なものである。また、アゾールシラン化合物(I−2)〜(I−4)は、例えば、表面処理液から揮発分を除去することにより該表面処理液から抽出して用いることができる。
【0036】
本発明の実施においては、表面処理液を調製する際の原料として、アゾールシラン化合物(I−1)を用いることが好ましい。
このアゾールシラン化合物(I−1)の例としては、例えば、
3−トリメトキシシリルメチルチオ−1,2,4−トリアゾール、3−[3−(トリメトキシシリル)プロピルチオ]−1,2,4−トリアゾール、3−[3−(トリエトキシシリル)プロピルチオ]−1,2,4−トリアゾール、3−[6−(トリエトキシシリル)ヘキシルチオ]−1,2,4−トリアゾール、3−[12−(トリメトキシシリル)ドデシルチオ]−1,2,4−トリアゾール、3−メチル−5−[2−(トリエトキシシリル)エチルチオ]−1,2,4−トリアゾール、3−メチル−5−[4−(トリメトキシシリル)ブチルチオ]−1,2,4−トリアゾール、3−メチル−5−[10−(トリメトキシシリル)デシルチオ]−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−トリエトキシシリルメチルチオ−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−[3−(トリメトキシシリル)プロピルチオ]−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−[6−(トリメトキシシリル)ヘキシルチオ]−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−[12−(トリメトキシシリル)ドデシルチオ]−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−[3−(トリエトキシシリル)プロピルチオ]−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−5−[2−(トリメトキシシリル)エチルチオ]−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−5−[5−(トリメトキシシリル)ペンチルチオ]−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−5−[8−(トリメトキシシリル)オクチルチオ]−1,2,4−トリアゾール、3−メチルチオ−5−[3−(トリメトキシシリル)プロピルチオ]−1,2,4−トリアゾール、3−メチルチオ−5−[10−(トリメトキシシリル)デシルチオ]−1,2,4−トリアゾール、3−メチルチオ−5−[4−(トリエトキシシリル)ブチルチオ]−1,2,4−トリアゾール(以上、Yが−NH−の場合)や、
2−トリメトキシシリルメチルチオ−1,3,4−チアジアゾール、2−[6−(トリメトキシシリル)ヘキシルチオ]−1,3,4−チアジアゾール、2−[8−(トリエトキシシリル)オクチルチオ]−1,3,4−チアジアゾール、5−メチル−2−[3−(トリメトキシシリル)プロピルチオ]−1,3,4−チアジアゾール、5−メチル−2−[5−(トリメトキシシリル)ペンチルチオ]−1,3,4−チアジアゾール、5−メチル−2−[12−(トリエトキシシリル)ドデシルチオ]−1,3,4−チアジアゾール、2−アミノ−5−[3−(トリメトキシシリル)プロピルチオ]−1,3,4−チアジアゾール、2−アミノ−5−[8−(トリメトキシシリル)オクチルチオ]−1,3,4−チアジアゾール、2−アミノ−5−[2−(トリエトキシシリル)エチルチオ]−1,3,4−チアジアゾール、2−アミノ−5−[3−(トリエトキシシリル)プロピルチオ]−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5−[3−(トリメトキシシリル)プロピルチオ]−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5−[5−(トリメトキシシリル)ペンチルチオ]−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5−[3−(トリエトキシシリル)プロピルチオ]−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5−[10−(トリエトキシシリル)デシルチオ]−1,3,4−チアジアゾール、2−メチルチオ−5−[3−(トリメトキシシリル)プロピルチオ]−1,3,4−チアジアゾール、2−メチルチオ−5−[4−(トリメトキシシリル)ブチルチオ]−1,3,4−チアジアゾール、2−メチルチオ−5−[3−(トリエトキシシリル)プロピルチオ]−1,3,4−チアジアゾール、及び2−メチルチオ−5−[8−(トリエトキシシリル)オクチルチオ]−1,3,4−チアジアゾール(以上、Yが−S−の場合)
等を挙げることができる。
【0037】
アゾールシラン化合物(I−1)は、例えば、特開2016−56449号公報に記載の方法により合成することができる。
【0038】
本発明の実施において使用する特定アゾールシラン化合物は、上記した中でも、3−[3−(トリメトキシシリル)プロピルチオ]−1,2,4−トリアゾール、3−[3−(トリエトキシシリル)プロピルチオ]−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−[3−(トリメトキシシリル)プロピルチオ]−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−[3−(トリエトキシシリル)プロピルチオ]−1,2,4−トリアゾール、3−メチルチオ−5−[3−(トリメトキシシリル)プロピルチオ]−1,2,4−トリアゾールが好ましい。
【0039】
<アゾールシラン化合物の加水分解>
アゾールシラン化合物(I−1)は、前述のとおり、水と接触すると加水分解されるが、この加水分解の態様をスキーム(A)に示す。
このスキーム(A)においては、前記のアゾールシラン化合物(I−1)〜(I−3)の有するシリル基が加水分解される態様、即ち、トリアルコキシシリル基が、漸次、ジアルコキシヒドロキシシリル基、ジヒドロキシアルコキシシリル基、トリヒドロキシシリル基に変化する様が示される。なお、化学式(e)で示される基のXは繰り返し単位の数を表す整数である。
【0041】
一般に、分子中にアルコキシシリル基を有する物質は、シランカップリング剤として作用することが知られている。
例えば、銅と樹脂材料との接着を例に挙げると、本発明の実施において用いるアゾールシラン化合物は、分子中にアゾール環とアルコキシシリル基(−Si−OR)を有しており、アゾール環は、樹脂及び銅と相互作用し、化学結合を形成する。
また、アルコキシシリル基は加水分解を受けて、ヒドロキシシリル基(−Si−OH)に変換され、このヒドロキシシリル基は銅の表面に点在する酸化銅と化学結合する。
従って、銅と本発明の表面処理液を接触させることにより、該銅の表面にはアゾール環やヒドロキシシリル基との結合により、化学式(I)で示されるアゾールシラン化合物に由来する化成皮膜が形成されて、この化成皮膜の表面に樹脂材料からなる絶縁樹脂層を形成させた場合には、銅の表面に直に絶縁樹脂層を形成させる場合に比べて、銅と樹脂材料との接着性を高めることができる。
【0042】
本発明においては、表面処理液中における特定アゾールシラン化合物の濃度は、0.0001〜5質量%であることが好ましい。なお、特定アゾールシラン化合物の濃度はトリアルコキシ体のアゾールシラン化合物(I−1)の濃度に換算したものである。特定アゾールシラン化合物の濃度が0.0001質量%以上であると、金属と樹脂材料との接着性の向上効果が得られ、この濃度が5質量%を超える場合には、接着性の向上効果がほぼ頭打ちとなり、特定アゾールシラン化合物の使用量が増えるばかりで経済的ではないため、5質量%を上限とすることが好ましい。特定アゾールシラン化合物の含有量は、表面処理液中、0.001質量%以上であることがより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましく、また、4質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下が更に好ましい。
【0043】
(アゾール化合物)
本発明の金属の表面処理液に含有するアゾール化合物は下記化学式(II)〜(XIV)で示されるアゾール化合物(以下、「特定アゾール化合物」ともいう。)からなる群から選択される少なくとも1種のアゾール化合物である。この特定アゾール化合物は、1種を単独で含有してもよく、2種以上を組み合わせて含有してもよい。
【0045】
(式(II)〜(XIV)中、X
1〜X
43は、それぞれ独立して、水素原子、アミノ基、メルカプト基、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のアルキルチオ基を表す。)
【0046】
特定アゾール化合物は、アゾール環を有する物質であるため、特定アゾールシラン化合物と共に表面処理液中に含有させることで、該表面処理液により金属を処理した際に緻密な化成皮膜を形成することができ、これにより金属表面の防錆性が高まり、ハローイングを抑制できると共に、無粗化処理又は低粗化処理された金属であっても金属と樹脂材料(例えば、絶縁樹脂層)との接着性を高めることができる。
【0047】
化学式(II)〜(XIV)で示されるアゾール化合物について説明する。
<化学式(II)で示されるアゾール化合物(ピロール化合物)>
表題のピロール化合物としては、例えば、ピロール、1−メチルピロール、2−エチルピロール、3−プロピルピロール、2,4−ジメチルピロール、2,5−ジメチルピロール、1,3,5−トリメチルピロール、1−アミノピロール、2−アミノピロール、3−アミノピロール、2−メルカプトピロール、2−(メチルチオ)ピロール、3−(エチルチオ)ピロール、3−(イソプロピルチオ)ピロール等が挙げられる。
これらの中でも、ハローイング抑制効果の観点から、ピロール、1−アミノピロール、2−アミノピロール、3−アミノピロール、2−メルカプトピロールを用いることが好ましい。
【0048】
<化学式(III)で示されるアゾール化合物(ピラゾール化合物)>
表題のピラゾール化合物としては、例えば、ピラゾール、1−メチルピラゾール、1−エチルピラゾール、1−イソプロピルピラゾール、3−メチルピラゾール、4−エチルピラゾール、4−プロピルピラゾール、1,3−ジメチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、1−アミノピラゾール、3−アミノピラゾール、3−アミノ−5−メチルピラゾール、1,5−ジアミノピラゾール、3−アミノ−5−メチルピラゾール、3−メルカプト−1−メチルピラゾール、3−メルカプト−5−メチルピラゾール、3−アミノ−5−(メチルチオ)ピラゾール、4−メルカプトピラゾール、4−(メチルチオ)ピラゾール、4−(イソプロピルチオ)ピラゾール、4−メルカプト−1−プロピルピラゾール等が挙げられる。
これらの中でも、ハローイング抑制効果の観点から、ピラゾール、1−アミノピラゾール、3−アミノピラゾール、3−アミノ−5−メチルピラゾール、1,5−ジアミノピラゾール、3−アミノ−5−メチルピラゾール、3−メルカプト−1−メチルピラゾール、3−メルカプト−5−メチルピラゾールを用いることが好ましい。
【0049】
<化学式(IV)で示されるアゾール化合物(イミダゾール化合物)>
表題のイミダゾール化合物としては、例えば、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1−プロピルイミダゾール、1−イソプロピルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、4,5−ジメチルイミダゾール、2,4,5−トリメチルイミダゾール、1−アミノイミダゾール、2−アミノイミダゾール、2−アミノ−4−メチルイミダゾール、4−アミノイミダゾール、4−アミノ−2−エチルイミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−(メチルチオ)イミダゾール、2−(エチルチオ)イミダゾール、2−(プロピルチオ)イミダゾール、2−(イソプロピルチオ)イミダゾール、4−メルカプトイミダゾール、4−メルカプト−2−メチルイミダゾール、4−(メチルチオ)イミダゾール、4−アミノ−5−メルカプトイミダゾール等が挙げられる。
これらの中でも、ハローイング抑制効果の観点から、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、4−メルカプトイミダゾール、4−メルカプト−2−メチルイミダゾール、4−(メチルチオ)イミダゾール、4−アミノ−5−メルカプトイミダゾール、2−アミノイミダゾール、2−アミノ−4−メチルイミダゾール、4−アミノイミダゾールを用いることが好ましい。
【0050】
<化学式(V)又は化学式(VI)で示されるアゾール化合物(1,2,4−トリアゾール化合物)>
表題の1,2,4−トリアゾール化合物としては、例えば、1,2,4−トリアゾール、1−メチル−1,2,4−トリアゾール、1−エチル−1,2,4−トリアゾール、1−プロピル−1,2,4−トリアゾール、1−イソプロピル−1,2,4−トリアゾール、3−メチル−1,2,4−トリアゾール、3−エチル−1,2,4−トリアゾール、3−プロピル−1,2,4−トリアゾール、3−イソプロピル−1,2,4−トリアゾール、1,3−ジメチル−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾール、3−エチル−5−メチル−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジエチル−1,2,4−トリアゾール、3−メチル−5−プロピル−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジイソプロピル−1,2,4−トリアゾール、1−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−メチル−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−エチル−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−プロピル−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−イソプロピル−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジアミノ−1−メチル−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジアミノ−1−エチル−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジアミノ−1−プロピル−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジアミノ−1−イソプロピル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−5−メチル−1,2,4−トリアゾール、5−エチル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、5−プロピル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、5−イソプロピル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1−メチル−1,2,4−トリアゾール、1−エチル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−4−メチル−1,2,4−トリアゾール、4−エチル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−4−プロピル−1,2,4−トリアゾール、4−イソプロピル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジメルカプト−1−メチル−1,2,4−トリアゾール、3−(メチルチオ)−1,2,4−トリアゾール、3−(エチルチオ)−1,2,4−トリアゾール、3−(プロピルチオ)−1,2,4−トリアゾール、3−(イソプロピルチオ)−1,2,4−トリアゾール、1−メチル−3−(メチルチオ)−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−5−(メチルチオ)−1,2,4−トリアゾール、3,5−ビス(メチルチオ)−1,2,4−トリアゾール、3,5−ビス(エチルチオ)−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、5−アミノ−3−メルカプト−1−メチル−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−(メチルチオ)−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−(エチルチオ)−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−(プロピルチオ)−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−(イソプロピルチオ)−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1−メチル−5−(メチルチオ)−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−3−メルカプト−5−メチル−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−5−エチル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−3−(メチルチオ)−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−3−(エチルチオ)−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−3−メチル−5−(メチルチオ)−1,2,4−トリアゾール等が挙げられる。
これらの中でも、ハローイング抑制効果の観点から、1,2,4−トリアゾール、3−
アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジメルカプト−1,2,
4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1,2,
4−トリアゾール、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールを用いることが好まし
い。
【0051】
<化学式(VII)で示されるアゾール化合物(1,2,3−トリアゾール化合物)>
表題の1,2,3−トリアゾール化合物としては、例えば、1,2,3−トリアゾール、1−メチル−1,2,3−トリアゾール、1−エチル−1,2,3−トリアゾール、1−プロピル−1,2,3−トリアゾール、1−イソプロピル−1,2,3−トリアゾール、4−メチル−1,2,3−トリアゾール、4−エチル−1,2,3−トリアゾール、4−プロピル−1,2,3−トリアゾール、4−イソプロピル−1,2,3−トリアゾール、1,4−ジメチル−1,2,3−トリアゾール、4−エチル−1−メチル−1,2,3−トリアゾール、4,5−ジメチル−1,2,3−トリアゾール、4,5−ジエチル−1,2,3−トリアゾール、4−エチル−5−プロピル−1,2,3−トリアゾール、1−アミノ−1,2,3−トリアゾール、1−アミノ−5−メチル−1,2,3−トリアゾール、1−アミノ−5−エチル−1,2,3−トリアゾール、1−アミノ−5−プロピル−1,2,3−トリアゾール、1−アミノ−5−イソプロピル−1,2,3−トリアゾール、1−アミノ−4,5−ジメチル−1,2,3−トリアゾール、4−アミノ−1,2,3−トリアゾール、4−アミノ−5−メチル−1,2,3−トリアゾール、4−アミノ−1−メチル−1,2,3−トリアゾール、4−アミノ−1−エチル−1,2,3−トリアゾール、4−アミノ−1−プロピル−1,2,3−トリアゾール、4−アミノ−1−イソプロピル−1,2,3−トリアゾール、4−メルカプト−1,2,3−トリアゾール、5−メルカプト−4−メチル−1,2,3−トリアゾール、4−(メチルチオ)−1,2,3−トリアゾール、4−(エチルチオ)−1,2,3−トリアゾール、4−(プロピルチオ)−1,2,3−トリアゾール、4−(イソプロピルチオ)−1,2,3−トリアゾール、4−(エチルチオ)−5−メチル−1,2,3−トリアゾール、4−アミノ−5−メルカプト−1,2,3−トリアゾール等が挙げられる。
これらの中でも、ハローイング抑制効果の観点から、1,2,3−トリアゾール、4−
メルカプト−1,2,3−トリアゾールを用いることが好ましい。
【0052】
<化学式(VIII)で示されるアゾール化合物(1H−テトラゾール化合物)>
表題の1H−テトラゾール化合物としては、例えば、1H−テトラゾール、1−メチルテトラゾール、1−エチルテトラゾール、1−プロピルテトラゾール、1−イソプロピルテトラゾール、5−メチルテトラゾール、5−エチルテトラゾール、5−プロピルテトラゾール、5−イソプロピルテトラゾール、1,5−ジメチルテトラゾール、5−エチル−1−メチルテトラゾール、5−プロピル−1−メチルテトラゾール、5−イソプロピル−1−メチルテトラゾール、1,5−ジエチルテトラゾール、1−アミノテトラゾール、1−アミノ−5−メチルテトラゾール、1−アミノ−5−エチルテトラゾール、1−アミノ−5−プロピルテトラゾール、1−アミノ−5−イソプロピルテトラゾール、5−アミノテトラゾール、5−アミノ−1−メチルテトラゾール、5−アミノ−1−エチルテトラゾール、5−アミノ−1−プロピルテトラゾール、5−アミノ−1−イソプロピルテトラゾール、5−メルカプトテトラゾール、5−メルカプト−1−メチルテトラゾール、1−エチル−5−メルカプトテトラゾール、5−メルカプト−1−プロピルテトラゾール、1−イソプロピル−5−メルカプトテトラゾール、5−(メチルチオ)テトラゾール、5−(エチルチオ)テトラゾール、5−(プロピルチオ)テトラゾール、5−(イソプロピルチオ)テトラゾール、1−メチル−5−(メチルチオ)テトラゾール、1−メチル−5−(エチルチオ)テトラゾール、1−アミノ−5−メルカプトテトラゾール、2H−テトラゾール、2−メチルテトラゾール、2−エチルテトラゾール、2−イソプロピルテトラゾール、5−アミノ−2−メチルテトラゾール、5−アミノ−2−エチルテトラゾール、5−メルカプト−2−メチルテトラゾール等が挙げられる。
これらの中でも、ハローイング抑制効果の観点から、1H−テトラゾール、5−アミノ
テトラゾールを用いることが好ましい。
【0053】
<化学式(IX)で示されるアゾール化合物(インドール化合物)>
表題のインドール化合物としては、例えば、インドール、1−メチルインドール、1−エチルインドール、1−プロピルインドール、1−イソプロピルインドール、2−メチルインドール、3−メチルインドール、4−メチルインドール、5−メチルインドール、6−メチルインドール、1,2−ジメチルインドール、2,5−ジメチルインドール、1−アミノインドール、2−アミノインドール、3−アミノインドール、4−アミノインドール、6−アミノインドール、5−アミノ−2−メチルインドール、2−メルカプトインドール、2−(メチルチオ)インドール、2−(エチルチオ)インドール、2−(プロピルチオ)インドール、3−メルカプトインドール、3−(メチルチオ)インドール、3−(エチルチオ)インドール、4−メルカプトインドール、4−(メチルチオ)インドール、4−(エチルチオ)インドール等が挙げられる。
これらの中でも、ハローイング抑制効果の観点から、インドール、2−メルカプトインドール、3−メルカプトインドール、2−アミノインドール、3−アミノインドール、4−アミノインドール、1−アミノインドール、6−アミノインドール、5−アミノ−2−メチルインドールを用いることが好ましい。
【0054】
<化学式(X)で示されるアゾール化合物(イソインドール化合物)>
表題のイソインドール化合物としては、例えば、イソインドール、2−メチルイソインドール、2−エチルイソインドール、2−プロピルイソインドール、1,3−ジメチルイソインドール、1−アミノイソインドール、2−アミノイソインドール、1−(エチルチオ)−2−メチルイソインドール等が挙げられる。
これらの中でも、ハローイング抑制効果の観点から、イソインドール、1−アミノイソインドール、2−アミノイソインドールを用いることが好ましい。
【0055】
<化学式(XI)および化学式(XII)で示されるアゾール化合物(インダゾール化合物)>
表題のインダゾール化合物としては、例えば、インダゾール、1−メチルインダゾール、1−エチルインダゾール、1−プロピルインダゾール、1−イソプロピルインダゾール、2−メチルインダゾール、2−エチルインダゾール、2−プロピルインダゾール、2−イソプロピルインダゾール、4−メチルインダゾール、5−メチルインダゾール、7−メチルインダゾール、1−アミノインダゾール、3−アミノインダゾール、5−アミノインダゾール、6−アミノインダゾール、4−アミノ−1−メチルインダゾール、5−アミノ−6−メチルインダゾール、7−アミノ−4−メチルインダゾール、3−メルカプトインダゾール、5−メルカプトインダゾール、3−(メチルチオ)インダゾール、5−アミノ−6−メルカプトインダゾール、5−アミノ−6−(エチルチオ)インダゾール等が挙げられる。
これらの中でも、ハローイング抑制効果の観点から、インダゾール、1−アミノインダゾール、3−アミノインダゾール、5−アミノインダゾール、6−アミノインダゾール、4−アミノ−1−メチルインダゾール、5−アミノ−6−メチルインダゾール、7−アミノ−4−メチルインダゾール、3−メルカプトインダゾール、5−メルカプトインダゾールを用いることが好ましい。
【0056】
<化学式(XIII)で示されるアゾール化合物(ベンズイミダゾール化合物)>
表題のベンズイミダゾール化合物としては、例えば、ベンズイミダゾール、1−メチルベンズイミダゾール、1−エチルベンズイミダゾール、1−プロピルベンズイミダゾール、1−イソプロピルベンズイミダゾール、2−メチルベンズイミダゾール、2−エチルベンズイミダゾール、2−プロピルベンズイミダゾール、2−イソプロピルベンズイミダゾール、1,2−ジメチルベンズイミダゾール、5,6−ジメチルベンズイミダゾール、1−アミノベンズイミダゾール、2−アミノベンズイミダゾール、5−アミノベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−5−メチルベンズイミダゾール、2−(メチルチオ)ベンズイミダゾール、2−(エチルチオ)ベンズイミダゾール、2−(プロピルチオ)ベンズイミダゾール、2−(イソプロピルチオ)ベンズイミダゾール、5−アミノ−2−メルカプトベンズイミダゾール等が挙げられる。
これらの中でも、ハローイング抑制効果の観点から、ベンズイミダゾール、1−アミノベンズイミダゾール、2−アミノベンズイミダゾール、5−アミノベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−5−メチルベンズイミダゾール、5−アミノ−2−メルカプトベンズイミダゾールを用いることが好ましい。
【0057】
<化学式(XIV)で示されるアゾール化合物(ベンゾトリアゾール化合物)>
表題のベンゾトリアゾール化合物としては、例えば、ベンゾトリアゾール、1−メチルベンゾトリアゾール、1−エチルベンゾトリアゾール、1−プロピルベンゾトリアゾール、1−イソプロピルベンゾトリアゾール、2−メチルベンゾトリアゾール、2−エチルベンゾトリアゾール、2−プロピルベンゾトリアゾール、2−イソプロピルベンゾトリアゾール、4−メチルベンゾトリアゾール、5−メチルベンゾトリアゾール、5,6−ジメチルベンゾトリアゾール、1−アミノベンゾトリアゾール、2−アミノベンゾトリアゾール、4−アミノベンゾトリアゾール、5−アミノベンゾトリアゾール、5−メルカプトベンゾトリアゾール、5−(メチルチオ)ベンゾトリアゾール、5−(プロピルチオ)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
これらの中でも、ハローイング抑制効果の観点から、ベンゾトリアゾール、1−アミノベンゾトリアゾール、2−アミノベンゾトリアゾール、4−アミノベンゾトリアゾール、5−アミノベンゾトリアゾール、5−メルカプトベンゾトリアゾールを用いることが好ましい。
【0058】
化学式(II)で示されるアゾール化合物は、例えば、Science of Synthesis,9巻,441頁(2000年)に記載された方法に準拠して合成することができる。
化学式(III)で示されるアゾール化合物は、例えば、Science of Synthesis,12巻,15頁(2002年)に記載された方法に準拠して合成することができる。
化学式(IV)で示されるアゾール化合物は、例えば、Science of Synthesis,12巻,325頁(2002年)に記載された方法に準拠して合成することができる。
化学式(V)で示されるアゾール化合物は、例えば、国際公開第92/02853号に記載された方法に準拠して合成することができる。
化学式(VI)で示されるアゾール化合物は、例えば、Molecules,9巻,204頁(2004年)に記載された方法に準拠して合成することができる。
化学式(VII)で示されるアゾール化合物は、例えば、米国特許第7,550,601号明細書に記載された方法に準拠して合成することができる。
化学式(VIII)で示されるアゾール化合物は、例えば、Journal of the Chemical Society,Dalton Transactions,3373頁(2001年)に記載された方法に準拠して合成することができる。
化学式(IX)で示されるアゾール化合物は、例えば、Science of Synthesis,10巻,361頁(2000年)に記載された方法に準拠して合成することができる。
化学式(X)で示されるアゾール化合物は、例えば、Science of Synthesis,10巻,653頁(2000年)に記載された方法に準拠して合成することができる。
化学式(XI)及び(XII)で示されるアゾール化合物は、例えば、Science of Synthesis,12巻,227頁(2002年)に記載された方法に準拠して合成することができる。
化学式(XIII)で示されるアゾール化合物は、例えば、Science of Synthesis,12巻,529頁(2002年)に記載された方法に準拠して合成することができる。
化学式(XIV)で示されるアゾール化合物は、例えば、Science of Synthesis,13巻,540頁(2003年)に記載された方法に準拠して合成することができる。
また、市販のものを使用することもでき、例えば、化学式(V)に含まれる3−アミノ−1,2,4−トリアゾールとして和光純薬工業社製の試薬、化学式(VI)に含まれる4−アミノ−1,2,4−トリアゾールとして東京化成工業社製の試薬、化学式(VII)に含まれる1,2,3−トリアゾールとして東京化成工業社製の試薬、化学式(VIII)に含まれる1H−テトラゾールとして東京化成工業社製の試薬が挙げられる。
【0059】
本発明の実施において使用する特定アゾール化合物は、上記した中でも、化学式(IV)〜(VIII)、(XIII)、(XIV)で示される化合物が好ましく、具体的に、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−アミノイミダゾール、2−アミノ−4−メチルイミダゾール、1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾール、1,2,3−トリアゾール、4−メルカプト−1,2,3−トリアゾール、1H−テトラゾール、5−アミノテトラゾール、ベンズイミダゾール、2−アミノベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、5−アミノベンゾトリアゾール、5−メルカプトベンゾトリアゾールがより好ましい。
【0060】
本発明の表面処理液中の特定アゾール化合物の含有量は、0.0001〜5質量%であることが好ましい。特定アゾール化合物の含有量が0.0001質量%以上であると、本発明の表面処理液を金属表面に処理することにより、優れた防錆性(金属表面の酸化を防ぐ)が得られ、ハローイングを抑制することができる。また、5質量%を超えて含有しても防錆性の効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できないこと、含有量が多すぎると特定アゾール化合物が溶解しきれない惧れがあることから、5質量%を上限とすることが好ましい。特定アゾール化合物の含有量は、表面処理液中、0.01質量%以上であることがより好ましく、0.05質%以上が更に好ましく、また、3質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下が更に好ましい。
【0061】
本発明の表面処理液は、前記の特定アゾールシラン化合物と、前記の特定アゾール化合物と、水を混合することにより調製される。
表面処理液の調製に用いられる水としては、水道水、イオン交換水、蒸留水、精製水等が挙げられ、イオン交換水や蒸留水等の純水を用いることが好ましい。
【0062】
ところで、表面処理液中に生成したヒドロキシシリル基を有するアゾールシラン化合物(I−2)〜(I−4)は、徐々に、互いに反応して脱水縮合し、ヒドロキシシリル基がシロキサン結合(Si−O−Si)を形成し(上記スキーム(A)参照)、水に溶け難いシランオリゴマー(スキーム(A)中の化学式(e)で示される基を有するアゾールシラン化合物)に変換される。
【0063】
表面処理液中におけるシランオリゴマーの生成量が多くなると、不溶解分が析出して(表面処理液が白濁し)、処理槽や処理槽に接続された配管、表面処理液中に浸漬されて該処理液の温度や液面を検出するためのセンサー類に付着し、円滑な表面処理が阻害される惧れがある。
【0064】
これを避けるために、表面処理液の調製には、水に難溶性であるシランオリゴマーの可溶化剤として、有機溶剤を表面処理液中に含有させることが好ましい。また、表面処理液の調製においては、特定アゾールシラン化合物や特定アゾール化合物の溶解を促進させる為に、酸やアルカリを含有させることが好ましい。なお、前記の有機溶剤は、特定アゾールシラン化合物と特定アゾール化合物の溶解性を高める機能も有しているから、本発明の表面処理液には、可溶化剤として、酸、アルカリ、有機溶剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有させることが好ましい。
【0065】
前記の酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、グリコール酸、乳酸、グルコン酸、グリセリン酸、マロン酸、コハク酸、レブリン酸、安息香酸、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、アミノ酸等の有機酸等が挙げられる。これらの酸は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0066】
前記のアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物や、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アリルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、1−アミノ−2−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、2−アミノ−1−プロパノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、ピリジン等のアミン類等が挙げられる。これらのアルカリは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0067】
前記の有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、tert−ブチルアルコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフルフリルアルコール、フルフリルアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、2−ピロリドン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、炭酸ジメチル、エチレンカーボネート、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。これらの有機溶剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0068】
可溶化剤の含有量としては、表面処理液中0.1〜50質量%であることが好ましい。可溶化剤の含有量が0.1質量%以上であると、表面処理液中での特定アゾールシラン化合物と特定アゾール化合物の溶解性を高める作用が顕著である。また、50質量%を超えると経済的ではないため、50質量%を上限とすることが好ましい。可溶化剤の含有量は、表面処理液中、0.5質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、また、30質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。
【0069】
なお、表面処理液の調製に際しては、特定アゾールシラン化合物と特定アゾール化合物と水を混合した後に可溶化剤を加えてもよいし、特定アゾールシラン化合物と特定アゾール化合物に、水および可溶化剤の混合液を加えてもよいし、特定アゾールシラン化合物、特定アゾール化合物及び可溶化剤を混合した後に水を加えてもよい。
【0070】
また、表面処理液の安定性や形成される化成皮膜の均一性を高めるために、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン等のハロゲンイオンや銅イオン、鉄イオン、亜鉛イオンなどの金属イオンを生成する物質を含有させてもよい。
【0071】
また、本発明の効果を損なわない範囲において、公知のカップリング剤を表面処理液に含有させてもよい。公知のカップリング剤としては、チオール基(メルカプト基)、ビニル基、エポキシ基、(メタ)アクリル基、アミノ基、クロロプロピル基等を有するシラン系カップリング剤が挙げられる。
【0072】
このようなシラン系カップリング剤の例としては、例えば、
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、
3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のメルカプトシラン化合物、
ビニルトリクロルシラン、
ビニルトリメトキシシラン、
ビニルトリエトキシシラン等のビニルシラン化合物、
p−スチリルトリメトキシシラン等のスチリルシラン化合物、
2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、
3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、
3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン化合物、
3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリロキシシラン化合物、
メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、
メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、
メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、
メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロキシシラン化合物、
N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、
N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、
N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、
3−アミノプロピルトリメトキシシラン、
3−アミノプロピルトリエトキシシラン、
3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、
N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、
N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン化合物、
3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイドシラン化合物、
3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロロプロピルシラン化合物、
ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィドシラン化合物及び
3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン等のイソシアナトシラン化合物
等を挙げることができる。
その他、アルミニウム系カップリング剤、チタン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤等も挙げることができる。これらのカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0073】
(処理方法)
本発明の表面処理液を用いて金属を処理する方法としては、表面処理液と金属の表面を接触させることができれば特に制限はされない。表面処理液と金属の表面を接触させる方法としては、例えば、スプレー、浸漬や塗布等の手段を採用することができる。
【0074】
本発明の表面処理液と金属の表面を接触させる時間(処理時間)については、1秒〜10分とすることが好ましく、5秒〜3分とすることがより好ましい。処理時間が1秒以上であれば、金属表面に特定アゾールシラン化合物と特定アゾール化合物に由来する化成皮膜を十分に形成させることができ、所望の防錆効果を得ることができると共に、金属と絶縁樹脂層とを接着する場合の接着力も十分に得ることができる。また、処理時間を10分より長くしても、化成皮膜の膜厚に大差はないため接着力の増加が期待できず、生産性の観点からも10分以下で処理することが好ましい。
【0075】
表面処理液を金属の表面に接着させる際の表面処理液の温度については、5〜50℃とすることが好ましいが、前記の処理時間との関係において、適宜設定すればよい。
【0076】
金属の表面に表面処理液を接触させた後は、必要により水洗を行い、その後は金属の表面を乾燥させることが好ましい。
乾燥は、室温〜150℃の温度、好ましくは60〜120℃の温度で、1秒〜10分、好ましくは10秒〜3分程度の時間とすることが好ましい。
なお、水洗に用いる水としては、イオン交換水や蒸留水等の純水が好ましいが、水洗の方法や時間には特に制限なく、スプレーや浸漬等の手段による適宜の時間で構わない。
【0077】
本発明において、乾燥後の化成皮膜に対し、プラズマ、レーザー、イオンビーム、オゾン、加熱、加湿等の処理を行い、化成皮膜の表面を改質させてもよい。あるいは、プラズマ、レーザー、イオンビーム、パーミス・ブラシなどの機械研磨やドリル等加工方法を用いて、金属表面の樹脂・イオン残渣除去を目的とした洗浄を行ってもよい。
【0078】
なお、金属が銅又は銅合金である場合、表面処理液を銅又は銅合金の表面に接触させる前に、銅イオンを含有する水溶液を前記銅又は銅合金の表面に接触させてもよい。銅イオンを含有する水溶液の銅イオン源としては、水に溶解する銅塩であれば特に限定されず、硫酸銅、硝酸銅、塩化銅、ギ酸銅、酢酸銅などの銅塩が挙げられる。銅塩を水に可溶化するために、アンモニアや塩酸などを添加してもよい。
【0079】
表面処理液を銅又は銅合金の表面に接触させた後に、酸性あるいはアルカリ性の水溶液を前記銅又は銅合金の表面に接触させてもよい。酸性水溶液及びアルカリ性水溶液は、特に限定されないが、酸性水溶液としては、硫酸、硝酸、塩酸等の鉱酸を含有する水溶液や、ギ酸、酢酸、乳酸、グリコール酸、アミノ酸などの有機酸を含む水溶液等が挙げられる。アルカリ性水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物や、アンモニア、エタノールアミン、モノプロパノールアミン等のアミン類などを含有する水溶液が挙げられる。
【0080】
上記のように処理することにより、金属の表面に表面処理液中の特定アゾールシラン化合物と特定アゾール化合物に由来する化成皮膜を形成させることができ、特定アゾール化合物が金属表面に作用し、金属の酸化を抑制することができると共に、特定アゾールシラン化合物が金属表面と樹脂材料との接着性を高めることができる。よって、金属配線層と絶縁樹脂層とを備えたプリント配線板等において、特に粗化処理を行うことなく金属配線層(金属回路)と絶縁樹脂層(樹脂材料)との接着性を高めると共に、金属の酸化物の形成を低減させて、ハローイングを抑制することができる。
【0081】
本発明において、処理する金属としては、例えば、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、錫、鉄、銀、金及びこれらの合金等が挙げられる。
前記合金の具体例としては、銅合金では、銅を含む合金であれば特に限定されず、例えば、Cu−Ag系、Cu−Te系、Cu−Mg系、Cu−Sn系、Cu−Si系、Cu−Mn系、Cu−Be−Co系、Cu−Ti系、Cu−Ni−Si系、Cu−Zn−Ni系、Cu−Cr系、Cu−Zr系、Cu−Fe系、Cu−Al系、Cu−Zn系、Cu−Co系等の合金が挙げられる。
また、その他の合金では、アルミニウム合金(Al−Si合金)、ニッケル合金(Ni−Cr合金)、鉄合金(Fe−Ni合金、ステンレス)等が挙げられる。
これらの金属の中では、銅及び銅合金が好ましい。
【0082】
また、樹脂材料としては、例えば、アクリレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、マレイミド樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、オレフィン樹脂、フッ素含有樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶樹脂等が挙げられ、これらを混合したり、互いに変性したりして、組み合わせたものであってもよい。
これらの樹脂材料の中では、アクリレート樹脂、エポキシ樹脂及びポリイミド樹脂が好ましい。
【0083】
(接着方法)
金属と樹脂材料との接着方法としては、特に限定されず公知の方法により行うことができる。金属の表面に本発明の表面処理液を接触させて金属の表面に化成皮膜を形成し、次いで、該化成皮膜を介して、金属の表面に樹脂材料からなる基材を接着させるに当って、例えば、形成された化成皮膜の一部又は全体に、樹脂材料を塗布、圧着、混合等の手段や、接着剤、接着シート(フィルム)の利用あるいはこれらの手段を組合わせて接着することができる。
【0084】
(プリント配線板)
また、本発明は、上記接着方法を用いたプリント配線板の製造方法も提供するものである。すなわち、本発明のプリント配線板の製造方法は、金属の表面に、本発明の表面処理液を接触させて、化成皮膜を形成する工程を含む。
【0085】
本発明の表面処理液を用いて金属の表面に特定アゾールシラン化合物と特定アゾール化合物に由来する化成皮膜を形成することで、樹脂材料との接着性を高めることができるので、金属と樹脂材料が複合化された各種電気・電子部品やプリント配線板等を備えた電子デバイスに好適に利用することができる。
【0086】
なお、本発明において、特に銅又は銅合金から形成される基材に対して、本発明の表面処理液を好適に用いることができる。例えば、銅回路(銅配線層)と、プリプレグやソルダーレジスト(絶縁樹脂層)との間の接着性(密着性)を高めることを目的とする銅又は銅合金の表面処理に好適であり、銅配線層に接して絶縁樹脂層を有するプリント配線板において、銅配線層と絶縁樹脂層との間の接着性を高めることができる。
【0087】
具体的に、前記のプリント配線板は、本発明の表面処理液を銅配線層の表面に接触させて、その後必要により水洗し、続いて乾燥を行った後、銅配線層表面に絶縁樹脂層を形成させて、作製することができる。この接触の方法については、前述のとおりであり、表面処理液中への銅配線層の浸漬又は該処理液による銅配線層へのスプレー等が簡便かつ確実であり好ましい。
また、前記の水洗の方法についても特に制限はないが、洗浄水中への銅配線層の浸漬又は洗浄水による銅配線層表面へのスプレーが簡便かつ確実であり好ましい。
前記の絶縁樹脂層の形成には、公知の方法、例えば半硬化の樹脂材料を貼り付ける方法や溶剤を含む液状の樹脂材料を塗布する手段等を採用することができる。次いで、上下の配線を導通させる為に、ビアホールを形成する。このプロセスを繰り返すことにより、多層プリント配線板を作製できる。
【0088】
前記の銅配線層については、無電解メッキ法、電解メッキ法、蒸着法、スパッタ法、ダマシン法等どのような方法で作製されたものでもよく、インナービアホール、スルーホール、接続端子等を含んだものでもよい。
【0089】
また、本発明に係る「銅」とは、プリント配線板、リードフレーム等の電子デバイス、装飾品、建材等に用いられる箔(電解銅箔、圧延銅箔)、めっき膜(無電解銅めっき膜、電解銅めっき膜)、線、棒、管、板等の用途・形態において用いられるものである。なお、近年の高周波の電気信号が流れる銅配線層の場合には、銅の表面は平均粗さが0.1μm以下の平滑面であることが好ましい。
【0090】
(防錆処理液との併用)
本発明において、本発明の表面処理液により金属を処理する前又は処理した後に、防錆処理液により処理することもできる。
前記防錆処理液を、本発明の表面処理液により処理する前又は本発明の表面処理液により処理した後に金属の表面に接触させることで、金属と樹脂材料との接着性を損なうことなく、処理された金属の酸化が更に抑えられ、耐薬品性が向上するので、めっき工程でのハローイングの発生を更に抑制することができる。
【0091】
前記の好ましい防錆処理液は、有効成分として、下記化学式(V)〜(VIII)で示されるアゾール化合物からなる群から選択される少なくとも1種のアゾール化合物(以下、「アゾール化合物(V)〜(VIII)」ともいう。)を含有する。
【0093】
(式(V)〜(VIII)中、X
14〜X
24は、それぞれ独立して、水素原子、アミノ基、メルカプト基、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のアルキルチオ基を表す。)
【0094】
化学式(V)又は化学式(VI)で示されるアゾール化合物(1,2,4−トリアゾール化合物)としては、前記で例示した化合物が挙げられ、ハローイング抑制効果の観点から、1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールを用いることが好ましい。
【0095】
化学式(VII)で示されるアゾール化合物(1,2,3−トリアゾール化合物)としては、前記で例示した化合物が挙げられ、ハローイング抑制効果の観点から、1,2,3−トリアゾール、4−メルカプト−1,2,3−トリアゾールを用いることが好ましい。
【0096】
化学式(VIII)で示されるアゾール化合物(1H−テトラゾール化合物)としては、前記で例示した化合物が挙げられ、ハローイング抑制効果の観点から、1H−テトラゾール、5−アミノテトラゾールを用いることが好ましい。
【0097】
防錆処理液中のアゾール化合物(V)〜(VIII)の含有量は、0.0001〜5質量%であることが好ましい。アゾール化合物(V)〜(VIII)の含有量が0.0001質量%以上であると、本発明の表面処理液と併用して金属表面に処理することにより、優れた防錆性(金属表面の酸化を防ぐ)が得られ、ハローイングを抑制することができる。また、5質量%を超えて含有しても防錆性の効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できないこと、含有量が多すぎるとアゾール化合物(V)〜(VIII)が溶解しきれない惧れがあることから、5質量%を上限とすることが望ましい。アゾール化合物(V)〜(VIII)の含有量は、防錆処理液中、0.01質量%以上であることがより好ましく、0.05質%以上が更に好ましく、また、3質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下が更に好ましい。
【0098】
防錆処理液は、アゾール化合物(V)〜(VIII)を水に溶解させることにより調製される。
水としては、水道水、イオン交換水、蒸留水、精製水等が挙げられ、イオン交換水や蒸留水等の純水を用いることが好ましい。
【0099】
防錆処理液には、アゾール化合物(V)〜(VIII)の溶解性を高めるために可溶化剤を含有することができる。可溶化剤としては、例えば、酸、アルカリ、有機溶剤等が挙げられ、使用できる具体例は、前述の本発明の表面処理液に含有できるものと同様である。
【0100】
可溶化剤の含有量としては、防錆処理液中、0.1〜50質量%であることが好ましい。可溶化剤の含有量が0.1質量%以上であると、防錆処理液中でのアゾール化合物(V)〜(VIII)の溶解性を高める作用が顕著である。また、50質量%を超えると経済的ではないため、50質量%を上限とすることが好ましい。可溶化剤の含有量は、防錆処理液中、0.5質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、また、30質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。
【0101】
また、前記の防錆処理液には、該処理液の安定性や造膜性を制御するためにpH調整剤を含有させることができる。防錆膜(化成皮膜)の造膜性の観点から、防錆処理液のpHを2〜11とすることが好ましく、前記範囲のpHに調整するためにpH調整剤を用いる。
例えば、酸に溶解しやすいアゾール化合物(V)〜(VIII)を含有する防錆処理液については、可溶化剤として酸を用いて溶解させて水溶液にした後、アルカリ性のpH調整剤を用いて造膜性を調整することができる。また、アルカリに溶解しやすいアゾール化合物(V)〜(VIII)の場合については、可溶化剤としてアルカリを用いて溶解させて水溶液にした後、酸性のpH調整剤を用いて造膜性を調整することができる。酸性のpH調整剤としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸等の鉱酸や、ギ酸、酢酸、乳酸、グリコール酸、アミノ酸などの有機酸等が挙げられ、アルカリ性のpH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物や、アンモニア、エタノールアミン等のアミン類等が挙げられる。
【0102】
また、防錆処理液の安定性や形成される防錆膜の均一性を高めるために、塩素イオン、臭素イオン等のハロゲンイオンや銅イオン、鉄イオン、亜鉛イオン等の金属イオンを生成する物質を含有させることもできる。
【0103】
また、本発明の効果を損なわない範囲において、公知のカップリング剤を防錆処理液に含有させてもよい。この公知のカップリング剤としては、前述の公知のカップリング剤と同様である。
【0104】
防錆処理液の処理方法としては、本発明の表面処理液と併用し、金属の表面を処理できれば特に制限はされない。金属の表面を処理する方法としては、例えば、スプレー、浸漬や塗布等の手段により、防錆処理液と金属を接触させればよい。
【0105】
防錆処理液と金属の表面を接触させる時間(処理時間)については、1秒〜10分とすることが好ましく、5秒〜3分とすることがより好ましい。処理時間が1秒以上であれば、金属表面にアゾール化合物(V)〜(VIII)に由来する化成皮膜を十分に形成させることができ、所望の防錆効果を得ることができる。また、処理時間を10分より長くしても、化成皮膜の膜厚に大差はないため、生産性の観点から10分以下で処理することが好ましい。
【0106】
防錆処理液を金属の表面に接着させる際の防錆処理液の温度については、5〜50℃とすることが好ましいが、前記の処理時間との関係において、適宜設定すればよい。
【0107】
金属の表面に防錆処理液を接触させた後は、必要により水洗を行い、金属の表面を乾燥させることが好ましい。
乾燥は、室温〜150℃の温度、好ましくは60〜120℃の温度で、1秒〜10分、好ましくは10秒〜3分程度の時間とすることが好ましい。
なお、水洗に用いる水としては、イオン交換水や蒸留水等の純水が好ましいが、水洗の方法や時間には特に制限なく、スプレーや浸漬等の手段による適宜の時間で構わない。
【実施例】
【0108】
以下、本発明を実施例及び比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0109】
以下の実施例、比較例で使用したアゾールシラン化合物又はシラン化合物とアゾール化合物は、以下のとおりである。
<アゾールシラン化合物又はシラン化合物>
アゾールシラン化合物A:3−アミノ−5−[3−(トリメトキシシリル)プロピルチオ]−1,2,4−トリアゾール(特開2015−10079号公報に記載された方法に準拠して合成した。)
アゾールシラン化合物B:3−アミノ−5−[3−(トリエトキシシリル)プロピルチオ]−1,2,4−トリアゾール(同上)
アゾールシラン化合物C:3−アミノ−5−[3−(トリメトキシシリル)ヘキシルチオ]−1,2,4−トリアゾール(同上)
アゾールシラン化合物D:イミダゾールシラン化合物(特開平5−186479号公報に記載された方法に準拠して合成した。下記化学式(XV−1)〜(XV−3)の混合物である。
シラン化合物E:γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製、商品名「KBM−903」)
【0110】
【化10】
【0111】
<アゾール化合物>
アゾール化合物a:ピロール(和光純薬工業社製)
アゾール化合物b:ピラゾール(同上)
アゾール化合物c:イミダゾール(同上)
アゾール化合物d:3−アミノ−1,2,4−トリアゾール(同上)
アゾール化合物e:1,2,4−トリアゾール(東京化成工業社製)
アゾール化合物f:1,2,3−トリアゾール(同上)
アゾール化合物g:5−アミノテトラゾール(同上)
アゾール化合物h:インドール(和光純薬工業社製)
アゾール化合物i:イソインドール(Science of Synthesis,10巻,653頁(2000年)に記載された方法に準拠して合成した。)
アゾール化合物j:1−メチルインダゾール(和光純薬工業社製)
アゾール化合物k:2−メチルインダゾール(同上)
アゾール化合物l:ベンズイミダゾール(東京化成工業社製)
アゾール化合物m:ベンゾトリアゾール(和光純薬工業社製)
【0112】
(実施例1)
アゾールシラン化合物A 10g、アゾール化合物m 1gを測り取り、エチレングリコールモノブチルエーテル 200gを加え、続いて水 789gを加えて、室温にて2時間撹拌し、表面処理液を調製した。
この処理液について、アゾールシラン化合物のメトキシシリル基が、ヒドロキシシリル基に加水分解されていることを確認した。
【0113】
(実施例2〜15、比較例1〜19)
アゾールシラン化合物又はシラン化合物とアゾール化合物とを、表2、3に記載の組合せに変更した以外は実施例1と同様にして表面処理液を調製した。
これらの処理液について、当該アゾールシラン化合物又はシラン化合物のメトキシシリル基及びエトキシシリル基が、ヒドロキシシリル基に加水分解されていることを確認した。
【0114】
実施例、比較例で調製した表面処理液を用いて、下記の接着性の評価試験(a)〜(c)及びハローイングの評価試験(d)を行った。
【0115】
<接着性の評価試験>
[接着性の評価試験(a)]
(1)試験片
試験片として、電解銅箔(厚み:18μm)を用いた。
(2)試験片の処理
以下の工程i〜iiに従って試験片の処理を行った。ただし、比較例1については、表面処理液で処理を行わなかった。
i. 酸清浄/1分間(室温)、水洗、乾燥/1分(100℃)
ii. 表面処理液に浸漬/1分(室温)、水洗、乾燥/1分(100℃)
(3)試験片と樹脂の接着
処理した試験片のS面(光沢面)に、ガラス布エポキシ樹脂含浸プリプレグ(FR−4グレード)を積層プレスし、試験片と樹脂を接着してプリント配線板を作製した。
(4)接着性の評価
このプリント配線板から、「JIS C6481(1996)」に従って、幅10mmの試験片を作製し、プレッシャークッカー処理(121℃/湿度100%/100時間)した後、銅箔の引き剥がし強さ(kN/m)を測定した。
【0116】
[接着性の評価試験(b)]
試験片のS面(光沢面)に、「ガラス布エポキシ樹脂含浸プリプレグ(FR−4グレード)を積層プレス」する代わりに、「ビルドアップ配線板用樹脂(味の素ファインテクノ社製、品名「GX−13」)をラミネート」した以外は、評価試験(a)と同様の手順で、銅と樹脂の接着性を評価した。
【0117】
[接着性の評価試験(c)]
(1)試験片
プリント配線板の試験片として、電解銅メッキ(メッキ厚:20μm)を施した両面銅張積層板(基材:FR4,板厚:1.0mm,銅箔厚:18μm,縦120mm×横110mm)を用いた。
(2)試験片の処理
以下の工程i〜iiに従って試験片の処理を行った。ただし、比較例1については、表面処理液で処理を行わなかった。
i. 酸清浄/1分間(室温)、水洗、乾燥/1分(100℃)
ii. 表面処理液に浸漬/1分(室温)、水洗、乾燥/1分(100℃)
(3)試験片への絶縁樹脂層の形成
処理した試験片に、ソルダーレジスト(太陽インキ製造社製、商品名「PSR−4000AUS308」)を塗布した後、乾燥(80℃/30分)、ポストキュア(150℃/60分)を行って、13μm厚の絶縁樹脂層(塗膜)を形成させた。
(4)接着性の評価
「JIS K5400−8.5(1990)」に従って、試験片に形成した塗膜を1mm×1mmの碁盤目にクロスカット(100マス)し、プレッシャークッカー処理(121℃/湿度100%/100時間)した後、テープピールテストを行い、塗膜が剥離しないマス目の数を計測した。また、塗膜の傷み具合を目視にて観察した。
なお、接着性の判定基準は、表1に示したとおりである。
【0118】
【表1】
【0119】
<ハローイングの評価試験(d)>
(1)試験片
試験片として、銅張積層板(銅厚み35μm、板厚1.0mm)を用いた。
(2)試験片の処理
以下の工程i〜iiに従って試験片の処理を行った。ただし、比較例1については、表面処理液で処理を行わなかった。
i. 酸洗浄/1分間(室温)、水洗
ii. 表面処理液に浸漬/1分間(30℃)、水洗、乾燥/1分間(100℃)
(3)プリント配線板の作製
試験片の銅表面にソルダーレジスト(太陽インキ製造社製、商品名「PSR−4000AUS308」)を塗布した後、以下の工程iii〜ivを行って、銅開口部(開口径150μm、5穴)を有するソルダーレジストの硬化物と試験片(銅張積層板)が接着したプリント配線板を作製した。
iii.露光工程(420mJ/cm
2、オーク製作所社製HMW−680使用)、現像工程(1質量%炭酸ソーダ水溶液/90秒間(30℃))
iv. 乾燥(80℃/30分間)、ポストキュア(150℃/60分間)
(4)めっき処理
プリント配線板の銅開口部について、めっき液としてパラジウム触媒(奥野製薬工業社製、商品名「ICPニコロン アクセラ」、ニッケルめっき(奥野製薬工業社製、商品名「ICPニコロンGM」と金めっき(小島化学薬品社製、商品名「オーエルII」)を用いて、以下の工程vを行って、金めっき処理を行った。
v. ソフトエッチング/1分間(30℃)、水洗、パラジウム触媒/2分間(室温)、ニッケルめっき/35分間(75℃)、金めっき/5分間(80℃)
(5)ハローイング性の評価
得られたプリント配線板の金めっきした銅開口部(開口径150μm)について、薬液のもぐりこみによるハローイング(ソルダーレジスト剥がれ)の幅(単位:μm)を光学顕微鏡SZ−61(OLYMPUS社製)により測定した。なお測定は5穴について行い、それらの平均値を算出した。
【0120】
上記接着性の評価試験(a)〜(c)及びハローイングの評価試験(d)の結果を表2及び表3に示す。
【0121】
【表2】
【0122】
【表3】
【0123】
表2、3の結果より、本発明の表面処理液により金属表面を処理した実施例1〜15は、金属と樹脂材料との接着性が向上し、また、ハローイングの幅が比較例1〜19に比べて小さく、優れたハローイング抑制効果が発揮されていることがわかった。