(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6846986
(24)【登録日】2021年3月4日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】締付トルク管理具及び締付トルク管理具と締結具との組み合わせ
(51)【国際特許分類】
F16B 31/02 20060101AFI20210315BHJP
B25B 23/143 20060101ALI20210315BHJP
B25B 23/153 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
F16B31/02 Z
B25B23/143
B25B23/153
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-106785(P2017-106785)
(22)【出願日】2017年5月30日
(65)【公開番号】特開2018-204624(P2018-204624A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【弁理士】
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】小林 龍太
【審査官】
杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−113307(JP,A)
【文献】
実開昭59−167666(JP,U)
【文献】
特開昭55−054185(JP,A)
【文献】
実開昭59−168008(JP,U)
【文献】
実開昭61−016276(JP,U)
【文献】
特開平09−070762(JP,A)
【文献】
実開平04−060668(JP,U)
【文献】
特開2013−224680(JP,A)
【文献】
実公昭48−027912(JP,Y1)
【文献】
特開昭57−137707(JP,A)
【文献】
特開昭64−040282(JP,A)
【文献】
特開2001−140832(JP,A)
【文献】
特開2015−224781(JP,A)
【文献】
特開2018−008352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 31/02
B25B 23/143
B25B 23/153
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂から一体に形成された締結具収納部と締付トルク付加部とを含み、
該締結具収納部には自由端部が開口された収納穴が形成されており、該収納穴の内周面は締結具のトルク付加正多角形外周面に対応した正多角形内周面の各辺面の中間部に凹部を形成した形態であり、
該収納穴における隣接する凹部の近接する開口端を結ぶ直線によって規定される正多角形は、締結具のトルク付加正多角形外周面よりも大きく、
該締付トルク付加部に加えられ該締結具収納部を介して締結具に伝達される締付トルクが閾値を超えると、該収納穴の内周面が変形されて締結具に対して該締結具収納部が空転するようになり、かくして締結具の締付トルクが管理される、
ことを特徴とする締付トルク管理具。
【請求項2】
合成樹脂から一体に形成された締結具収納部と締付トルク付加部とを含み、
該締結具収納部には自由端部が開口された収納穴が形成されており、該収納穴の内周面は締結具のトルク付加正多角形外周面に対応した正多角形内周面の各辺面の中間部に凹部を形成した形態であり、
該凹部の少なくとも1個には締結具の進入を阻止する阻止突起が配設されており、
該締付トルク付加部に加えられ該締結具収納部を介して締結具に伝達される締付トルクが閾値を超えると、該収納穴の内周面が変形されて締結具に対して該締結具収納部が空転するようになり、かくして締結具の締付トルクが管理される、
ことを特徴とする締付トルク管理具。
【請求項3】
該阻止突起は該凹部の底面から突出する、請求項2記載の締付トルク管理具。
【請求項4】
該トルク付加多角形外周面は正六角形である、請求項1から3までのいずれかに記載の締付トルク管理具。
【請求項5】
該締付トルク付加部の外周面は締結具のトルク付加正多角形外周面に対応した正多角形である、請求項1から4までのいずれかに記載の締結トルク管理具。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれかに記載の締付トルク管理具と、該締付トルク管理具の該収納穴に少なくとも部分的に収納された締結具との組み合わせ。
【請求項7】
該締付トルク管理具の該収納穴の該辺面によって規定される正多角形内周面は締結具のトルク付加正多角形外周面よりも小さく、締結具は該収納穴内に圧入されている、請求項6記載の組み合わせ。
【請求項8】
該締結具は六角ナットである、請求項6又は7記載の組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナット又はボルトの如き締結具を所要トルクで締め付けるための締付トルク管理具及びかかる締付トルク管理具と締結具との組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば高速道路における遮音壁の取り付け、トンネル等の天井壁の取り付け或いは各種建造物における種々の部品の取り付けにおいては、周知の如くボルトとナットとの締結が多数使用されている。そして、かような締結においてはボルトに対してナット(通常は緩み止めナット)を、例えば呼び系M10の六角ナットの場合には17乃至24Nm程度である、比較的大きな所要トルクで締め付けることが重要である。下記特許文献1及び2には、ボルトに対してナットを或いはナットに対してボルトを所要トルクで締め付ける際に使用することができる締付トルク管理具が開示されている。かかる締付トルク管理具は、所要トルクで破断される接続部によって一体に接続されている締結具収納部と締付トルク付加部とを含んでいる。締結具収納部内にナット或いはボルトの頭部を収納し、そして締付トルク付加部にトルクを加えてナットをボルトに或いはボルトをナットに締め付ける。締付トルク付加部に加えられ締結部収納部を介してナット或いはボルトに加えられる締付トルクが閾値を超えると、接続部が破断されて締付トルク付加部が締結具収納部から分離され、かくしてボルトに対してナットが或いはナットに対してボルトが所要トルクで締め付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−140832公報
【特許文献2】特開2015−224781公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
而して、上記特許文献1及び2に開示されている締付トルク管理具には、特に比較的大きな締付トルクを必要とする場合、全体を鉄の如き強靭な金属から形成することが必要であり、それ故に製造コストが高価である、という解決すべき問題がある。製造コストを低減するために適宜の合成樹脂から形成すると、締結具収納部と締付トルク付加部とを接続している接続部が、締付トルク付加部に加えられる締付トルクが小さい時点で破断されてしまう。
【0005】
上記特許文献1及び2に開示されている締付トルク管理具における上記のとおりの問題を解決するために、本発明者等は、先に特願2016−139152の明細書において、従来の形態とは全く異なった独特な形態の締付トルク管理具を提案した。かかる締付トルク管理具は、合成樹脂から一体に形成された締結具収納部と締付トルク付加部とを含む。締結具収納部には自由端部が開口された収納穴が形成されており、この収納穴は締結具のトルク付加正多角形外周面に対応した正多角形内周面の各辺面の中間部に凹部を形成した形態である。凹部の両側面、即ち締結回転方向に見て上流側に位置する上流面及び下流側に位置する下流面、は辺面に対して垂直に延在している。締付トルク付加部に加えられ締結具収納部を介して締結具に伝達される締付トルクが閾値を超えると、収納穴の内周面が変形されて締結具に対して締結具収納部が空転するようになり、かくして締結具の締付トルクが管理される。
【0006】
本発明者等が提案した上記のとおりの締付トルク管理具は、ポリカーボネート及びアクリロニトリルブタジエンスチレンの如き適宜の合成樹脂から形成しても、収納穴の内周面の変形が開始される締付トルクを充分高い値にすることができ、従って適宜の合成樹脂から形成することによって製造コストを低減することが可能になる。
【0007】
しかしながら、本発明者等の経験によれば、本発明者等が提案した上記のとおりの締付トルク管理具も、未だ充分に満足し得るものではなく、次のとおりの問題を有することが判明した。即ち、締結具収納部の収納穴に締結具が所要とおりに収納、即ち締結具の正多角形外周面における各角部が収納穴の正多角形内周面における各角部に整合されて収納、されることなく、締結具の正多角形外周面における各角部が収納部の各凹部内に位置されて誤って締結具が収納穴に収納されてしまう事態が発生し、収納穴の内周面が変形されて締結具に対して締結具収納部が空転するようになるトルクの閾値が所期の閾値とは異なったものになってしまう虞がある。
【0008】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、本発明者等が先に提案した上記のとおりの締付トルク管理具に更に改良を加えて、締結具収納部の収納穴に締結具が所要とおりに確実に収納、即ち締結具の正多角形外周面における各角部が収納穴の仮想正多角形内周面における各角部に整合されて確実に収納、されると共に、締結具の正多角形外周面における各角部が収納穴の各凹部内に位置されて誤って締結具が収納穴に収納されてしまうことが充分に防止される、新規且つ改良された締付トルク管理具を提供すること、そしてまたかかる締付トルク管理具と締結具との新規且つ改良された組み合わせを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、鋭意検討及び実験の結果、収納穴における隣接する凹部の近接する開口端を結ぶ直線によって規定される正多角形を締結具のトルク付加正多角形外周面よりも大きくすることによって、或いは収納穴の内周面に存在する凹部の少なくとも1個に締結具の進入を阻止する阻止突起を配設することによって、上記主たる技術的課題を達成することができることを見出した。
【0010】
即ち、本発明の第一の局面によれば、上記主たる技術的課題を達成する締付トルク管理具として、合成樹脂から一体に形成された締結具収納部と締付トルク付加部とを含み、
該締結具収納部には自由端部が開口された収納穴が形成されており、該収納穴の内周面は締結具のトルク付加正多角形外周面に対応した正多角形内周面の各辺面の中間部に凹部を形成した形態であり、
該収納穴における隣接する凹部の近接する開口端を結ぶ直線によって規定される正多角形は、締結具のトルク付加正多角形外周面よりも大きく、
該締付トルク付加部に加えられ該締結具収納部を介して締結具に伝達される締付トルクが閾値を超えると、該収納穴の内周面が変形されて締結具に対して該締結具収納部が空転するようになり、かくして締結具の締付トルクが管理される、
ことを特徴とする締付トルク管理具が提供される。
【0011】
本発明の第二の局面によれば、上記主たる技術的課題を達成する締付トルク管理具として、合成樹脂から一体に形成された締結具収納部と締付トルク付加部とを含み、
該締結具収納部には自由端部が開口された収納穴が形成されており、該収納穴の内周面は締結具のトルク付加正多角形外周面に対応した正多角形内周面の各辺面の中間部に凹部を形成した形態であり、
該凹部の少なくとも1個には締結具の進入を阻止する阻止突起が配設されており、
該締付トルク付加部に加えられ該締結具収納部を介して締結具に伝達される締付トルクが閾値を超えると、該収納穴の内周面が変形されて締結具に対して該締結具収納部が空転するようになり、かくして締結具の締付トルクが管理される、
ことを特徴とする締付トルク管理具が提供される。
【0012】
該阻止突起は該凹部の底面から突出するのが好適である。該トルク付加多角形外周面は正六角形であるのが好都合である。好ましくは、該締付トルク付加部の外周面は締結具のトルク付加正多角形外周面に対応した正多角形である。
【0013】
本発明の第三の局面によれば、上記主たる技術的課題を達成する締付トルク管理具と締結具の組み合わせにして、本発明の第一の局面において提供される上述したとおりの締付トルク管理具と、該締付トルク管理具の該収納穴に少なくとも部分的に収納された締結具との組み合わせが提供される。
【0014】
該締付トルク管理具の該収納穴の該辺面によって規定される正多角形内周面は締結具のトルク付加正多角形よりも小さく、締結具は該収納穴内に圧入されているのが好適である。該締結具は六角ナットでよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第一の局面によって提供される締付トルク管理具においては、収納穴における隣接する凹部の近接する開口端を結ぶ直線によって規定される正多角形が締結具のトルク付加正多角形よりも大きい故に、締結具収納部の収納穴に締結具が所要とおりに確実に収納、即ち締結具の正多角形外周面における各角部が収納穴の仮想正多角形内周面における各角部に整合されて収納、されることなく、締結具の正多角形外周面における各角部が収納穴の各凹部内に位置されて誤って締結具が収納穴に収納されてしまうと、収納穴に対して所謂遊びを伴って締結具が収納されることになり、収納穴に対する締結具の整合が不適切であることが必然的に認識される。また、本発明の第二の局面によって提供される締付トルク管理具においては、凹部の少なくとも1個に形成されている阻止突起によって締結具の正多角形外周面における角部が凹部内に進入することが阻止され、かくして締結具収納部の収納穴に締結具が所要とおりに確実に収納、即ち締結具の正多角形外周面における各角部が収納穴の仮想正多角形内周面における各角部に整合されて収納、されることなく、締結具の正多角形外周面における各角部が収納穴の各凹部内に誤って位置されることが確実に防止される、従って、本発明の締付トルク管理具及び締付トルク管理具と締結具との組み合わせによれば、上記主たる技術的課題が解決される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に従って構成された締付トルク管理具の好適実施形態を上方から見た斜面図。
【
図2】
図1に示す締付トルク管理具を下方から見た斜面図。
【
図3】
図1に示す締付トルク管理具の、一部を断面で示す正面図。
【
図6】
図1に示す締付トルク管理具と締結具の典型例あるナットとの組み合わせの、一部を断面で示す正面図。
【
図8】
図6に示す組み合わせにおいて、ナットの締付トルクが閾値を超えてナットに対して締付トルク管理具が空転した状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に従って構成された締付トルク管理具の好適実施形態及びかかる実施形態と締結具の典型例であるナットとの組み合わせを示す添付図面を参照して、更に詳述する。
【0018】
図1乃至
図3を参照して説明すると、全体を番号2で示す締付トルク管理具は、適宜の合成樹脂、好ましくはポリカーボネート或いはアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)の如き比較的高強度の合成樹脂、から射出成形或いは圧縮成形によって一体に形成されている。かかる締付トルク管理具2は、その略下半部を構成している締結具収納部4とその略上半部を構成している締付トルク付加部6とを含んでいる。
【0019】
図1乃至
図3と共に
図4及び
図5を参照して説明を続けると、締結具収納部4は全体として筒形状であり、自由端部即ち下端が開放された収納穴8が形成されている。締結具収納部4の環状下面10は平坦であり、同様に環状上面12も平坦であり環状下面10と平行に延在している。締結具収納部4の外周面14は円筒形状である。
【0020】
上記収納穴8の内周面は、収納する締結具のトルク付加正多角形外周面に対応した仮想正多角形内周面の各辺面15の中間部に凹部16を形成した形態であることが重要である。図示の実施形態においては、後述するとおり締結具は六角ナットであり、従って締結具のトルク付加正多角形外周面は正六角形であり、収納穴8の内周面の一部である仮想正多角形内周面(
図5に二点鎖線で示す内周面)も正六角形である。凹部16の各々は底面16aと共に両側面、即ち締付回転方向(
図4において時計方向、
図5において反時計方向)に見て上流側に位置する上流面16b及び下流側に位置する下流面16cを有する。底面16aと上流面16bとが形成する角度αは、100乃至160度程度であるのが好ましい鈍角であるのが好適である。図示の実施形態においては、底面16aは外周面14と同心状の円の一部をなす円弧形状であり、上流面16bは辺面15に対して上記締付回転方向に傾斜して外方に傾斜して延在している。底面16aと上流面16bとは弧状境界面16dを介して滑らかに接続されているのが好適である。一方、下流面16cは辺面に対して垂直に延在している。上記締付回転方向において凹部16よりも下流側の辺面の周方向長さL1は凹部16よりも上流の辺面の周方向長さL2よりも長いのが好都合である(この場合には、後の説明から明確に理解される如く、締付トルクが閾値は凹部16よりも下流側の辺面の変形によって規定される)。
図3を参照することによって理解される如く、締結具収納部4の環状下面10に開口する収納穴8の内周面下端部には面取加工が施されている。図示の実施形態においては、締結具収納部4には上記収納穴8の上端に続く連通穴18も形成されている。
図5を参照することによって明確に理解される如く、連通穴18の横断面形状は円形であり、その直径は上記収納穴8における仮想正六角形に内接する円の直径よりも幾分小さく、収納穴8と連通穴18との境界には下方を向いた円環状肩面20が規定されている。
【0021】
本発明に従って構成された締付トルク管理具2においては、収納穴8が次のとおりの条件を満足することが重要である。即ち、収納穴8における隣接する凹部16の近接する開口端17a及び17bを結ぶ直線17によって規定される仮想の正多角形、図示の場合は正六角形、は締結具のトルク付加正多角形外周面よりも大きいことが重要である。後述するとおり、締結具は収納穴8内に圧入され保持される必要がある。従って、収納穴8の各辺面15によって規定される上記仮想正六角形内周面は締結具のトルク付加正六角形外周面よりも若干小さいが、上記直線17を結ぶことによって規定される仮想の正六角形は締結具のトルク付加正六角形外周面よりも幾分大きいのが好適である。
【0022】
図1乃至
図4を参照して説明を続けると、上記締結具収納部4の環状上面12から上方に延出する締付トルク付加部6も全体として筒形状であり、上下方向に延びる貫通穴22を有する。
図3から明確に理解される如く、貫通穴22は上記連通穴18を介して上記収納穴8に連通されている。貫通穴22の横断面形状は円形であり、その直径は上記連通穴18の直径よりも更に小さく、貫通穴22と連通穴18との境界には下方を向いた円環状肩面24が規定されている。締付トルク付加部6の外周面26及び上面28は、締結具収納部4内に収納される締結具の外周面及び上面に対応した形状及び寸法であるのが好適であり、図示の実施例においては締付トルク付加部6の外周面26は六角ナットの外周面に対応した正六角形状(従って締付トルク付加部6の外径は締結具収納部4の外径よりも小さい)であり、上面28の主部は平坦であるが角部外周部は面取りされている。締付トルク付加部6の貫通穴22の直径は六角ナットが締結されるボルトの軸部の外径よりも幾分大きく、後に更に言及する如く、締結具収納部4に収容された六角ナットをボルトに締結する際には、締結の進行に応じてボルトの軸部が締結具収納部4の連通穴18及び締付トルク付加部6の貫通穴22を挿通する。
【0023】
上述したとおりの締付トルク管理具2はそれ単独で市場に流通させることもできるが、
図6及び
図7(
図7においては図面の簡略化のため収納穴8の内周面下端における面取加工の図示を省略している)に示すとおり、締結具と組み合わせて市場に流通させるのが好都合である。
図6及び
図7に示す実施形態においては、締結具の典型例として六角ナット30が図示されている。かかる六角ナット30の外周面32は正六角形であり、締結具収納部4に形成されている収納穴8に関する上記仮想正六角形よりも若干大きい(換言すれば、締付トルク管理具2における締結具収納部4の収納穴8の仮想正六角形は六角ナット30の正六角形である外周面32よりも小さく設定される)。そして、六角ナット30の主部、即ち下端部を除く部分、が締結具収納部4の収納穴8内に圧入され、六角ナット30の上面外周縁部34の内側に形成されている円筒形突起36の上面が上記環状肩面24に当接される(締結具収納部4の収納穴8に収納される六角ナット30が円筒形突起36を有しない形態である場合には、六角ナット30の上面外周縁部34が上記環状肩面20に当接される)。
【0024】
締結部収納部4に形成されている収納穴8に六角ナット30を圧入する際に、誤って六角ナット30の正六角形外周面における各角部を収納穴8に形成されている各凹部16内に位置させた場合には、上述したとおり収納穴8における隣接する凹部16の近接する開口端17a及び17bを結ぶ直線17によって規定される仮想の正六角形は六角ナット30のトルク付加正六角形外周面よりも幾分大きく設定されている故に、収納穴8内に六角ナット30が所謂遊びを伴って収納されることになり、作業者は収納穴8に対して六角ナット30が適切に位置付けられることなく収納されてしまったことを必然的に認識することとなる。
【0025】
締結具収納部4に形成されている収納穴8に六角ナット30を圧入する際に、誤って六角ナット30の正六角形外周面における各角部を収納穴8に形成されている各凹部16内に位置させるのを防止するためには、収納穴8における隣接する凹部16の近接する開口端17a及び17bを結ぶ直線17によって規定される仮想の正六角形を六角ナット30のトルク付加正六角形外周面よりも幾分大きく設定することに加えて或いはこれに代えて、
図5に2点鎖線で図示する如く、凹部16の少なくとも1個に阻止突起29を形成することもできる。かかる阻止突起29は六角ナット30の正六角形外周面における角部が凹部16内に進入するのを阻止することができる適宜の形態よく、例えば凹部16の底面16aから突出する形態でよい。
【0026】
上述したとおりの締付トルク管理具2の使用様式について説明すると、締付トルク管理具2に六角ナット30が既に組み合わされている場合には、その六角ナット30を締結すべきボルトの軸部38(
図6)に被嵌する。締付トルク管理具2に六角ナット30が組み合わされていない場合には、ボルトに仮締結した六角ナット30を締付トルク管理具2の締結具収納部4に形成されている収納穴8に収納する(この場合には、収納穴8の仮想正六角形を六角ナット30の正六角形状の外周面と実質上同寸法或いはこれよい若干大きく設定し、充分容易に六角ナット30を収納穴8内に収納することができるようになすのが望ましい)。次いで、適宜の締付具(図示していない)を締付トルク付加部6の外周面に係合して締結方向(
図4において時計方向、
図5において反時計方向)に回転する。締結具から締付トルク付加部6に加えられるトルクは締結具収納部4を介して六角ナット30に伝えられ、これによって六角ナット30がボルトの軸部38に締め付けられる。ボルトの軸部38に対して六角ナット30が軸線方向に相対的に比較的長い距離に渡って進行する場合には、
図6に二点鎖線で図示する如く、ボルトの軸部38が締結具収納部4に形成されている連通穴18及び締付トルク付加部6に形成されている貫通穴22に進入し連通穴18及び貫通穴22を挿通する。
【0027】
六角ナット30に伝えられる締付トルクが所定閾値を超えると、
図8(
図8においても、
図7と同様に、図面の簡略化のため収納穴8の内周面下端における面取加工の図示を省略している)に図示する如く、締結具収納部4に形成されている収納穴8の内周面、特に締付回転方向に見て凹部16よりも下流側の部位(更に詳しくは締付回転方向に見て上流側の辺面15と下流側の辺面15との境界領域と上流側の辺面15の凹部16との間の部位)が締付回転方向とは反対側に向かって押圧されて変形され、六角ナット30に対して締付トルク管理具2が空転するようになり、かくしてボルトに対して六角ナット30が所要締締付トルクで締結される。六角ナット30に対して締付トルク管理具2が空転し始めた際には、六角ナット30の外周面角部が締結具収納部4に形成されている収納穴8の凹部16の上流面16bに激しく衝突することがあるが、本発明に従って構成された締付トルク管理具2においては凹部16の底面16aと上流面16bとが鈍角を形成している故に、六角ナット30の外周面角部から凹部16の上流面16bに加えられる力が適宜に緩衝乃至消失され、締結具収納部4に亀裂が生成され締結具収納部4が破損されてしまうことが可及的に回避される。六角ナット30に対して締付トルク管理具2が空転し始めた後においては、ボルトの軸部38に所要締付トルクで締め付けられ六角ナット30から締付トルク管理具2を充分容易に離脱することができる。
【符号の説明】
【0028】
2:締付トルク管理具
4:締結具収納部
6:締付トルク付加部
8:収納穴
15:辺面
16:凹部
16a:凹部の底面
16b:凹部の上流面
16c:凹部の下流面
18:連通穴
22:貫通穴
29:阻止突起
30:六角ナット
38:ボルトの軸部