(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記切断冶具の水平位置を、前記水平保持具に対して、固定、変更するための位置調整部材が設けてあることを特徴とする請求項1又は2に記載のサツマイモ用農業機械。
前記切断冶具が、前記水平保持具に対して、長尺部材を介して取り付けてあり、前記切断冶具が、前記水平保持具あるいは前記長尺部材に対して、脱着可能に取り付けてあることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のサツマイモ用農業機械。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、
図1及び
図2に、その外形写真を示すように、サツマイモを栽培する畝を跨いで、あるいは隣接する畝の間を移動動作するサツマイモ用農業機械であって、サツマイモ用農業機械に対して、当該サツマイモ用農業機械の移動動作に同期して移動する水平保持具が取り付けてあり、かつ、当該水平保持具の所定場所に、隣接する畝の間に張り出した、サツマイモの少なくとも蔓及び小根を切断するための切断冶具が、鉛直方向に沿って、設けてあることを特徴とするサツマイモ用農業機械である。 以下、第1の実施形態のサツマイモ用農業機械を、構成要件等に分けて、具体的に説明する。
【0020】
1.サツマイモ用農業機械の基本形態
サツマイモ用農業機械としては、
図1の側方写真及び
図2の背面写真(後方写真)に示すように、基本的に、乗用型であれば、切断冶具を取り付けた水平保持具を含む作業部、エンジンを含む動力部、車輪等を含む駆動部、作業者が乗る乗用部等から構成されている。
したがって、作業者は、乗用部に乗ったまま、サツマイモ用農業機械の移動操作を行い、サツマイモを栽培する畝を跨いで、あるいは隣接する畝の間を、切断冶具がほぼ直線的に、移動するようにして、隣接する畝の間に張り出した、サツマイモの少なくとも蔓及び小根を切断することができる。
すなわち、
図1及び
図2に示すように、例えば、市販の田植え機を改良し、その後部の苗植装置を交換して、水平保持具及び切断冶具を取り付けてサツマイモ用農業機械とすることができる。
【0021】
なお、図示しないものの、市販の田植え機のかわりに、市販の非乗用型のマメトラック等であっても、所定場所に、水平保持具及び切断冶具を取り付けるだけで、小型かつ操作容易なサツマイモ用農業機械とすることができる。
したがって、作業者は、マメトラックを改造したサツマイモ用農業機械の移動方向を、ハンドルで制御するだけで、サツマイモ用農業機械の動力を利用して、隣接する畝の間等に張り出した、サツマイモの少なくとも蔓及び小根を、きめ細かく切断することができる。
【0022】
その他、サツマイモ用農業機械の栽培対象となるサツマイモの種類に関して特に制限はなく、例えば、シルクスイート、クイックスイート、安納芋、安納もみじ、灯篭蜜いも、紅はるか、紅あずま、紅天使、紅まさり、鳴門金時、あいこまち等の公知のサツマイモの少なくとも一種が挙げられる。
【0023】
2.水平保持具
(1)基本形態 水平保持具は、サツマイモの蔓及び小根等を切断し、蔓返しの効果を発揮するための切断冶具の保持具であって、サツマイモを栽培する畝を含む栽培地に対して、1つ又は2つ以上の切断冶具を、水平方向に保持するためのフレーム部材である。
すなわち、
図3に示されるように、水平保持具20は、横棒パイプ20a、20bや鉄枠20c、20d等によって、正面視した場合に、概ね四角形状に構成されていることが好ましい。
【0024】
そして、水平保持具20の横棒パイプ20a、20bに対して、例えば、平行する2つの長尺部材12を介して、それぞれ切断冶具10を、ボルト/ナット等の接合手段10aにより取り付けてあり、サツマイモの蔓及び小根等を切断可能な、切断冶具10を備えた水平保持具20とすることができる。
【0025】
したがって、
図1や
図2に示すように、かかる切断冶具10を備えた水平保持具20を、後方部に備えたサツマイモ用農業機械1の移動操作を行い、サツマイモを栽培する畝を跨いで、あるいは隣接する畝の間を、切断冶具10がほぼ直線的に移動させた場合に、当該切断冶具10、特に、その先端部(刃先)が、地面を這うサツマイモの蔓及び小根等に対して、ほぼ水平方向に移動して、それらを切断することができる。
【0026】
(2)変形例
また、図示しないものの、水平保持具は、サツマイモを栽培する畝等が、傾斜地等に設けてある場合や、複数の切断冶具の一部のみを使用するような場合を考慮して、水平保持具を、正面視した場合に、左右方向に所定角度に傾斜させられる構造であることが好ましい。
例えば、水平保持具が回転軸を有しており、それを中心として、水平保持具が左右方向に傾斜する構造であることが好ましい。
【0027】
すなわち、サツマイモ用農業機械の移動操作を傾斜地等で行い、サツマイモを栽培する畝を跨いで、あるいは隣接する畝の間を、切断冶具がほぼ直線的に移動した場合であっても、水平保持具に取り付けられた複数の切断冶具も、傾斜地等の表面に対して、等距離となるように傾斜させることができる。
したがって、このように水平保持具が左右方向に所定角度に傾斜させられる構造であれば、当該切断冶具の先端部(刃先)が、常に、サツマイモの蔓及び小根等を切断すべく、水平方向に移動させることができる。
【0028】
3.切断冶具
(1)鉛直方向
サツマイモ用農業機械における切断冶具は、少なくとも鉛直方向に設けてあることが好ましい。
すなわち、水平保持具を介して、サツマイモの栽培地に対して、垂直となるように、切断冶具が鉛直方向に設けてあることが好ましい。
この理由は、このように切断冶具が、栽培地の地面に向かって、鉛直方向に設けてあることによって、サツマイモ用農業機械の動力を利用して、隣接する畝の間に張り出した、サツマイモの少なくとも蔓及び小根を、上方から切断することができるためである。
【0029】
(2)傾斜角度
但し、
図4に示すように、サツマイモ用農業機械1における切断冶具10が、矢印Aで示される動作方向に沿って、栽培地である水平方向の地面13から、鉛直方向に対して、10〜70°傾斜している、すなわち、かかる切断冶具10の傾斜角度(θ1)を10〜70°の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このように切断冶具10が、動作方向等に対して、所定角度に傾斜していることにより、鉛直方向(90°)に設けられた切断冶具の場合と比較して、例えば、1/5〜1/2の比較的少ない動力でもって、少なくともサツマイモの蔓及び小根等を切断することができるためである。
したがって、このように切断冶具10が、動作方向に沿って、地面(水平方向)13から、鉛直方向に対して、所定角度(θ1)で傾斜していれば、サツマイモの蔓及び小根等の切断速度を、更に速めることも可能である。
【0030】
より具体的には、かかる切断冶具10の傾斜角度(θ1)が、10°未満の傾斜では、動力の低減効果や切断の確実性があまり向上しない場合がある。
一方、切断冶具10の傾斜角度(θ1)が、70°を超えると、逆に、切断動力が増加したり、切断の確実性が低下したりする場合がある。
したがって、切断冶具10の傾斜角度(θ1)を30〜65°の範囲内の値とすることがより好ましく、45〜60°の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0031】
また、切断冶具10の配置位置は、基本的に、水平保持具20の下方であって、かつ、それに固定された長尺部材12の先端部に設けてあれば良い。
但し、
図3に示すように、水平保持具20の下方に、2本の長尺部材12を固定、配置するとともに、それぞれの先端部の両側面又は片側面に、切断冶具10を配置すればよい。
したがって、長尺部材12の先端部の両側面に、長尺部材12を挟み込むように、切断冶具10を配置すれば、より広範囲において、少なくともサツマイモの蔓及び小根等を切断することができる。
一方、長尺部材12の先端部の片側面に、切断冶具10を配置すれば、所定位置におけるサツマイモの蔓及び小根等を、選択的に切断することができる。
【0032】
(3)水平方向の位置調整部材(第1の位置調整部材)
図3に示すように、水平保持具20の水平方向における切断冶具10の位置を、水平保持具20に対して、固定及び変更するための位置調整部材(第1の位置調整部材)14が、直接的又は間接的に設けてあることが好ましい。
この理由は、このように切断冶具10の水平位置を、固定、変更するための位置調整部材14が、水平保持具20に対して、設けてあることにより、畝の幅、サツマイモの蔓の伸び、サツマイモの種類等の差異に、きめ細かく対応し、同時に、複数個所のサツマイモの蔓及び小根等を切断することができるためである。
また、複数の切断冶具10を、水平保持具20に対して、直接的又は間接的に設けたとしても、畝の幅や高さ、あるいは畝の相対位置等を考慮して、これら複数の切断冶具の位置関係(間隔)を、最適状態とすることができるためである。
【0033】
なお、切断冶具10の水平位置を、固定及び変更するための位置調整部材(第1の位置調整部材)14の態様としては特に制限されるものではないが、例えば、
図3に示すように、水平保持具20の一部を構成する、下方の横棒パイプ20bに対して、まずは、かかる横棒パイプ20bが貫通するような円筒部材(第1の円筒部材)14´を設けることが好ましい。
とすれば、横棒パイプ20bに対する、第1の円筒部材14´の位置をずらしながら、畝の幅等を考慮して、容易かつ任意に決定することができる。
【0034】
そして、かかる第1の円筒部材14´の背面等に対して、溶接や接着等によって切断冶具10を取り付けた長尺部材12を固定することにより、それをもって第1の位置調整部材14として用いることができる。
しかも、
図3に示すように、水平保持具20の一部を構成する、上方の別の横棒パイプ20aに対しても、かかる横棒パイプ20aが貫通する円筒部材(第2の円筒部材)16´を設け、それに対して、溶接や接着等によって切断冶具10を取り付けた長尺部材12を固定することにより、複数個所でもって強固かつ正確に位置決めすることができる。
【0035】
その他、
図3に示すように、位置調整部材14、16、すなわち、第1の円筒部材14´及び第2の円筒部材16´によって、その位置を固定、変更等される切断冶具10の個数は、通常、2つである。
しかしながら、予備的な切断冶具を含めて、3個以上とすることもできるし、あるいは、サツマイモを栽培する畝の大きさや形状等を考慮して、1つの切断冶具であっても良い。
【0036】
(4)先端部の位置調整部材(第2の位置調整部材)
図5に示すように、サツマイモ用農業機械1の切断冶具10の垂直位置を固定又は変更すべく、矢印の方向に、上下動させてなる位置調整部材(第2の位置調整部材)30が設けてあることが好ましい。
すなわち、このように切断冶具10の位置、すなわち、サツマイモの蔓等との距離を調整するための位置調整部材30が設けてあることにより、水平保持具20の垂直位置、切断冶具10の垂直位置、更には、長尺部材12の先端部12aの垂直位置(栽培面までの高さや、栽培面からの深さ位置)を、任意かつ最適条件に定めることができる。
【0037】
よって、サツマイモ用農業機械1を円滑に進行させながら、畝の高さ、サツマイモの蔓の伸び、サツマイモの種類等の差異にきめ細かく対応し、最終的には、切断冶具10によって、少なくともサツマイモの蔓及び小根等を、確実かつ正確に切断することができる。
【0038】
なお、切断冶具10の垂直位置を固定及び変更するための位置調整部材(第2の位置調整部材)30の機構としては特に制限されるものではないが、例えば、ねじ式調整部材、シリンダー式調整部材、油圧式調整部材、ばね式調整部材、モーター式調整部材等の垂直移動設備を備えて、それを第2の位置調整部材30として用いることが簡便かつ確実である。
【0039】
したがって、
図5に示される位置調整部材(第2の位置調整部材)30の場合、周囲に設けてあり、内面に溝を切ってあるシリンダー30bと、そのシリンダー30bの内部に設けたねじ式駆動部30aと、から構成されている。
【0040】
その他、位置調整部材(第2の位置調整部材)30は、切断冶具10の個数に対応して、それぞれ設けても良い。
しかしながら、簡易構造とするため、
図5に示すように、切断冶具10が、長尺部材12を介して、取り付けてある水平保持具20を直接的に上下動させ、間接的に、切断冶具10の垂直位置を固定又は変更する機構であっても良い。
【0041】
(5)切断冶具の種類
サツマイモ用農業機械1の切断冶具(第1の切断冶具)10の種類は、少なくともサツマイモの蔓及び小根等を、容易に切断できる冶具であれば、特に制限されるものではない。
したがって、例えば、カッター、ナイフ、かま、はさみ、包丁、のこぎり等の少なくとも一種を用いても良いが、安価かつ、耐久性等が良好な観点から、図示しないものの、鉄製アングルの角部を切断加工し、その切断箇所をグラインダーで研磨して、それをもって切断冶具とすることが好ましい。
その上、このような鉄製アングルに由来した切断冶具(第1の切断冶具)10であれば、後述するように、手動で上下動する切断冶具(第2の切断冶具)を取り付けることも更に容易となる。
【0042】
(6)第2の切断冶具
サツマイモ用農業機械等に直接的に取り付けてある切断冶具を第1の切断冶具10としたときに、
図6(a)〜(b)に示すような、当該第1の切断冶具10の一部に、手動で上下動する第2の切断冶具15が、設けてあることが好ましい。
この理由は、このように第1の切断冶具の一部あるいは、独立して、手動で上下動する第2の切断冶具15が、設けてあることにより、仮に、第1の切断冶具10によって切断できない蔓や小根等があったような場合であっても、第2の切断冶具15を利用して、確実に、それらを切断できるためである。
【0043】
特に、サツマイモ用農業機械が乗用型の場合、第1の切断冶具10によって切断できない蔓や小根等があった場合、所定場所の席から降りて、かま等によって、別途切断する必要があり、煩雑であった。
したがって、
図6(a)〜(b)に示すような、手動等で、第2の切断冶具15のつまみをもって、レール状空間15aに沿って、スライド可能な第2の切断冶具15があれば、第1の切断冶具10にからまった蔓や小根等を切断、除去することができ、ひいては、所定場所の席から降りて、人的に切断するという、煩雑動作を省略することができる。
【0044】
(7)脱着性
図3に示すように、切断冶具10が、水平保持具20あるいは、後述する長尺部材12に対して、脱着可能に取り付けてあることが好ましい。
この理由は、切断冶具が劣化したような場合であっても、切断冶具が脱着可能であれば、簡易かつ短時間で、新品と交換することができるためである。
【0045】
したがって、切断冶具10の脱着可能な取り付け方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、
図3に示すように、ボルト/ナット等の接合手段10aであっても良く、あるいは、はめ込み構造、面ファスナー、脱着カバー等の少なくとも一つの脱着部材を用いることが好ましい。
【0046】
(8)長尺部材
図3に示すように、切断冶具10が、水平保持具20に対して、長尺部材12を介して取り付けてあることが好ましい。
この理由は、このように切断冶具10が、水平保持具20に対して、長尺部材12を介して取り付けてあることにより、切断冶具10が劣化したり、破損等したりしたような場合であっても、長尺部材12を介して、簡易的に交換することができるためである。
【0047】
そして、このように長尺部材12を用いる場合、例えば、金属棒、金属パイプ、金属製アングル、樹脂棒、樹脂パイプ、樹脂製アングル、セラミック棒、セラミックパイプ、セラミック製アングル、木製棒、木製パイプの少なくとも一つであることが好ましい。
そして、長尺部材12の長さは、ほぼ直線状と仮定して、通常、30cm〜2mの範囲内の値であることが好ましく、50cm〜1.5mの範囲内の値であることがより好ましく、80cm〜1.2mの範囲内の値であることが更に好ましい。
【0048】
また、長尺部材12の形態に関して、内部に空間がない円柱、角柱、あるいは、内部に空間のある円柱、角柱等が好適であるが、円相当径として、2cm〜10cmの範囲内の値であることが好ましく、2.5cm〜8cmの範囲内の値であることがより好ましく、3cm〜6cmの範囲内の値であることが更に好ましい。
【0049】
また、
図4に示すように、長尺部材12の途中に屈曲部12dを設けることが好ましい。
うなわち、このように屈曲部12dを有することによって、強固な弾力性が得られ、サツマイモの蔓等を切断しながら、過度な負荷がかかった場合であっても、それを吸収して折れにくいという効果を発揮することができる。
また、かかる屈曲部12dがあることによって、長尺部材12の先端部12aが、サツマイモの栽培面である土壌に対して、比較的わずかな力で進入しやすく、かつ、サツマイモの栽培面の所定深さ位置を、円滑に進行することができる。
【0050】
したがって、長尺部材12の全体長さを100としたときに、屈曲部12dより下方部位12bの長さを55〜75とし、屈曲部12dより上方部位12cの長さを25〜45とすることが好ましく、屈曲部12dより下方部位12bの長さを60〜70とし、屈曲部12dより上方部位12cの長さを30〜40とすることがより好ましい。
【0051】
更に言えば、長尺部材12の途中に設けた屈曲部12dにおける折り曲げ角度、すなわち、屈曲部12dより下方部位12bと、上方部位12cとがなす角度(θ2)を100〜170°の範囲内の値とすることが好ましく、120〜165°の範囲内の値とすることが好ましく、130〜160°の範囲内の値とすることが更に好ましい。
この理由は、このような角度(θ2)の屈曲部12dであれば、強固な弾力性が得られ、サツマイモの蔓等を切断しながら、過度な負荷がかかった場合であっても、それを吸収しやすいとともに、製造等する際に、かかる角度(θ2)の維持形成も容易になるためである。
【0052】
その他、
図4に示すように、長尺部材12の先端部12aは、角度10〜60°の鋭利な三角断面形状であって、水平方向に存する栽培地の表面に対して、侵入しやすい形態としてあることが好ましい。
この理由は、サツマイモ用農業機械を動作させた場合、まずは、長尺部材12の先端部12aが、栽培地の表面から1〜15cm程度まで容易に侵入して、次いで、その上方に位置する切断冶具10が、隣接する畝の間に張り出した、少なくともサツマイモの蔓及び小根を切断することができるためである。
【0053】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、サツマイモを栽培する畝を跨いで、あるいは隣接する畝の間を移動動作するサツマイモ用農業機械を用いてなる、サツマイモの栽培処理方法であって、サツマイモ用農業機械に対して、当該サツマイモ用農業機械の移動動作に同期して移動する水平保持具が取り付けてあり、当該水平保持具の所定場所に、隣接する畝の間に張り出した、サツマイモの少なくとも蔓及び小根を切断するための切断冶具が、鉛直方向に沿って、設けてあり、サツマイモ用農業機械を動作させ、サツマイモの少なくとも蔓及び小根を切断することを特徴とするサツマイモの栽培処理方法である。
したがって、第2の実施形態のサツマイモの栽培処理方法を実施するに際して、下記工程(1)〜(3)あるいは、下記工程(1)〜(3)+(3´)を順次行うことが好ましい。
【0054】
1.工程(1) 工程(1)は、サツマイモの栽培予定地に、一例で、長さ50m、幅40cm、高さ30cm、隣接畝の間隔1mである畝列を作り、そこに、サツマイモの苗を植えて、サツマイモの栽培地とする工程である。
栽培するサツマイモの種類等にもよるが、例えば、関東地域では、例年、4〜5月ころ行われることが多い。
【0055】
2.工程(2)
工程(2)は、サツマイモ用農業機械の準備工程であって、
図1及び
図2に示すような、乗用のサツマイモ用農業機械を準備する。
すなわち、サツマイモを栽培する畝を跨いで、あるいは隣接する畝の間を移動動作するサツマイモ用農業機械であって、サツマイモ用農業機械に対して、当該サツマイモ用農業機械の移動動作に同期して移動する水平保持具が取り付けてあり、かつ、当該水平保持具の所定場所に、隣接する畝の間に張り出した、サツマイモの少なくとも蔓及び小根を切断するための切断冶具(例えば、2つ)が、地面(水平方向)から、鉛直方向に対して、55°の傾斜角度(θ1)を有するサツマイモ用農業機械を準備した。
なお、サツマイモ用農業機械の態様は、第1の実施形態で説明したとおりである。
【0056】
3.工程(3) 工程(3)は、準備したサツマイモ用農業機械を動作させ、蔓返しと同様の効果を発揮させる作業である。
すなわち、サツマイモを栽培する畝を跨いで、サツマイモ用農業機械を移動動作させ、所定の切断冶具によって、隣接する畝の間に張り出した、少なくともサツマイモの蔓及び小根を切断することを特徴とする。
その際、サツマイモ用農業機械の動作速度を、通常、1m/分〜20m/分の範囲内の速度とすることが好ましい。
【0057】
4.工程(3´) 工程(3´)は、サツマイモ用農業機械の動作工程(蔓返し)を、所定期間内に複数行う工程である。
すなわち、工程(3)を実施した後、例えば、1日〜10日後に、2回目の工程(3)を行い、準備したサツマイモ用農業機械を、サツマイモを栽培する畝を跨いで移動動作させ、隣接する畝の間に張り出した、少なくともサツマイモの蔓及び小根を切断することが好ましい。
この理由は、短期間において、サツマイモの蔓及び小根が発生する場合があるが、工程(3´)として、工程(3)を繰り返し行うことによって、サツマイモの蔓及び小根等を、より完全に切断し、蔓返しの効果を高めることができるためである。
なお、工程(3´)は、2回目以降の蔓返し相当作業であることから、サツマイモ用農業機械の動作速度を、1回目の動作速度より速くし、通常、5m/分〜30m/分の範囲内の値とすることが好ましい。
【実施例】
【0058】
以下、本発明につき、実施例をもとに更に具体的に説明する。但し、特段の理由もなく、かかる実施例の記載によって、本発明の範囲が制限されないことは言うまでもない。
【0059】
[実施例1]
1.サツマイモ用農業機械の準備 工程(1)として、サツマイモ(品種:シルクスイート)の栽培予定地(合計:3アール)に、一例で、長さ50m、幅40cm、高さ30cm、隣接畝の間隔1mである畝列を作り、そこに、サツマイモの苗を植えて、サツマイモの栽培地とした。
【0060】
次いで、工程(2)として、
図1及び
図2に示すような、乗用のサツマイモ用農業機械を準備した。
すなわち、サツマイモを栽培する畝を跨いで、あるいは隣接する畝の間を移動動作するサツマイモ用農業機械であって、サツマイモ用農業機械に対して、当該サツマイモ用農業機械の移動動作に同期して移動する水平保持具が取り付けてある。
【0061】
そして、当該水平保持具の所定場所に、サツマイモの蔓及び小根等を切断するための切断冶具(左右2箇所に設置)が、それぞれ水平方向から鉛直方向に対して、55°の傾斜角度(θ1)でもって、長尺部材を介して、取り付けてあるサツマイモ用農業機械を準備した。
【0062】
なお、長尺部材は、その長尺部材の全体長さを100としたときに、屈曲部より下方部位の長さを65とし、屈曲部より上方部位の長さを35の割合としてあり、かつ、屈曲部より下方部位と、上方部位とがなす角度(狭角、θ2)を150°としてある。
【0063】
2.サツマイモ用農業機械の動作(蔓返し相当処理)
次いで、工程(3)として、準備したサツマイモ用農業機械の動作工程を行った。
すなわち、準備したサツマイモ用農業機械を用いて、サツマイモを栽培する畝を跨いで移動動作させ、隣接する畝の間に張り出した、サツマイモの蔓及び小根を切断した。その際、サツマイモ用農業機械の動作速度を10m/分とした。
【0064】
3.評価
(1)評価1(迅速性)
10アールの広さのサツマイモの栽培地において、サツマイモ用農業機械を用いて、栽培する畝を跨いで移動動作させ、隣接する畝の間に張り出した、サツマイモの蔓及び小根を切断した。そして、1アールごとの平均処理時間を測定し、以下の基準で迅速性を評価した。
◎:30分以内/1アールである
〇:60分以内/1アールである
△:120分以内/1アールである
×:120分超/1アールである
【0065】
(2)評価2(正確性)
10アールの広さのサツマイモの栽培地において、サツマイモ用農業機械を用いて、栽培する畝を跨いで移動動作させ、隣接する畝の間に張り出した、サツマイモの蔓及び小根を切断した。その状態を100か所で目視観察し、以下の基準で正確性を評価した。
◎:サツマイモの蔓及び小根が90%以上、切断されている。
〇:サツマイモの蔓及び小根が80%以上、切断されている。
△:サツマイモの蔓及び小根が50%以上、切断されている。
×:サツマイモの蔓及び小根が50%を超えて、残存している。
【0066】
(3)評価3(サツマイモの収穫性)
サツマイモの苗を植えてから、4月経過後の10アールの広さのサツマイモの栽培地において、サツマイモ堀り機械を用いて、サツマイモ堀りを行い、1アールあたりの500g以上/1個のサツマイモを対象として、その平均収穫量(kg/アール)を測定し、以下の基準でサツマイモの収穫性を評価した。
◎:平均収穫量が300kg/1アール以上である。
〇:平均収穫量が200kg/1アール以上である。
△:平均収穫量が100kg/1アール以上である。
×:平均収穫量が100kg未満/1アールである。
【0067】
(4)評価4(マルチシートの除去性)
サツマイモの苗を収穫した後、畝表面を被覆していたマルチシートを除去し、その除去時間から、下記基準に沿ってマルチシートの除去性を評価した。
◎:マルチシートの除去時間が20分/1アール以下である。
〇:マルチシートの除去時間が40分/1アール以下である。
△:マルチシートの除去時間が60分/1アール以下である。
×:マルチシートの除去時間が60分/1アールを越える。
【0068】
[実施例2]
実施例2では、サツマイモ用農業機械の動作工程の動作速度を20m/分とした以外、実施例1と同様にサツマイモを栽培し、その収穫性等を評価した。
【0069】
[実施例3] 実施例3では、工程(1)で準備したサツマイモ用農業機械における切断冶具(2つ)の傾斜角度、すなわち、それぞれ動作方向に沿って、地面(水平方向)から鉛直方向への傾斜角度(θ1)を30°とした以外、実施例1と同様に、迅速性等を評価した。
【0070】
[実施例4]
実施例4では、工程(1)で準備したサツマイモ用農業機械における切断冶具(2つ)の傾斜角度、すなわち、それぞれ動作方向に沿って、地面(水平方向)から鉛直方向への傾斜角度(θ1)を45°とした以外、実施例1と同様にサツマイモを栽培し、その収穫性等を評価した。
【0071】
[実施例5] 実施例5では、工程(3´)として、工程(3)を再度実施した以外、実施例1と同様に、迅速性等を評価した。
すなわち、サツマイモ用農業機械の動作工程の1回目の1週間後に、工程(3)を再び行い、準備したサツマイモ用農業機械を、サツマイモを栽培する畝を跨いで移動動作させ、隣接する畝の間に張り出した、サツマイモの蔓及び小根を切断した。
【0072】
[比較例1]
比較例1では、実施例1で用いたサツマイモ用農業機を用いず、従来どおり、人力でサツマイモの蔓返しを行って栽培を行った以外、実施例1と同様に、実施例1と同様にサツマイモを栽培し、その収穫性等を評価した。
【0073】
[比較例2]
比較例2では、実施例1で用いたサツマイモ用農業機を用いず、かつ、人力によるサツマイモの蔓返しを1週間の間隔で2回実施した以外、実施例1と同様にサツマイモを栽培し、その収穫性等を評価した。
【0074】
[比較例3]
比較例3では、実施例1で用いたサツマイモ用農業機を用いず、かつ、人力によるサツマイモの蔓返しも実施せず、サツマイモを栽培した以外、実施例1と同様に、サツマイモの収穫性等を評価した。
【0075】
【表1】
評価1:迅速性
評価2:正確性
評価3:収穫性
評価4:マルチシートの除去性