特許第6847009号(P6847009)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6847009サツマイモ用農業機械、及びサツマイモの栽培処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6847009
(24)【登録日】2021年3月4日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】サツマイモ用農業機械、及びサツマイモの栽培処理方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 22/25 20180101AFI20210315BHJP
   A01D 23/02 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   A01G22/25 Z
   A01D23/02 A
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-179681(P2017-179681)
(22)【出願日】2017年9月20日
(65)【公開番号】特開2019-54737(P2019-54737A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2020年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】517329694
【氏名又は名称】荒井 利夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106404
【弁理士】
【氏名又は名称】江森 健二
(72)【発明者】
【氏名】荒井利夫
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−013041(JP,A)
【文献】 実開昭58−091228(JP,U)
【文献】 特開2002−330610(JP,A)
【文献】 特開2015−006146(JP,A)
【文献】 特開2001−238510(JP,A)
【文献】 実開昭61−146116(JP,U)
【文献】 英国特許第01095510(GB,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 22/25
A01D 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サツマイモを栽培する畝を跨いで、あるいは隣接する畝の間を移動動作するサツマイモ用農業機械であって、
前記サツマイモ用農業機械に対して、当該サツマイモ用農業機械の移動動作に同期して移動する水平保持具が取り付けてあり、かつ、当該水平保持具の所定場所に、隣接する畝の間に張り出した、少なくともサツマイモの蔓及び小根を切断するための切断冶具が、鉛直方向に沿って、設けてあることを特徴とするサツマイモ用農業機械。
【請求項2】
前記切断冶具が、動作方向に沿って、地面から、鉛直方向に対して、10〜70°の傾斜角度を有していることを特徴とする請求項1に記載のサツマイモ用農業機械。
【請求項3】
前記切断冶具の水平位置を、前記水平保持具に対して、固定、変更するための位置調整部材が設けてあることを特徴とする請求項1又は2に記載のサツマイモ用農業機械。
【請求項4】
前記切断冶具の先端部の位置を、上下動させるための位置調整部材が、設けてあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のサツマイモ用農業機械。
【請求項5】
前記切断冶具の一部に、手動で上下動する第2の切断冶具が、設けてあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のサツマイモ用農業機械。
【請求項6】
前記切断冶具が、前記水平保持具に対して、長尺部材を介して取り付けてあり、前記切断冶具が、前記水平保持具あるいは前記長尺部材に対して、脱着可能に取り付けてあることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のサツマイモ用農業機械。
【請求項7】
前記サツマイモ用農業機械が、乗用農業機械であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のサツマイモ用農業機械。
【請求項8】
サツマイモを栽培する畝を跨いで、あるいは隣接する畝の間を移動動作するサツマイモ用農業機械を用いてなる、サツマイモの栽培処理方法であって、
前記サツマイモ用農業機械に対して、当該サツマイモ用農業機械の移動動作に同期して移動する水平保持具が取り付けてあり、
当該水平保持具の所定場所に、前記隣接する畝の間に張り出した、サツマイモの少なくとも蔓及び小根を切断するための切断冶具が、鉛直方向に沿って、設けてあり、
前記サツマイモ用農業機械を動作させ、前記サツマイモの少なくとも蔓及び小根を切断することを特徴とするサツマイモの栽培処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サツマイモ用農業機械、及びサツマイモの栽培処理方法に関する。
特に、サツマイモの蔓返しと同様の効果が、極めて迅速かつ正確に得られるサツマイモ用農業機械、及び、それを用いたサツマイモの栽培処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サツマイモの収穫量を増加等させるための目的で、各種栽培方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3参照)。
すなわち、特許文献1によれば、30〜60cmの高さ畝に、イモ類を植えつけて栽培することにより、収穫されたカロテロイド類の含有量を増加させられるイモ類(サツマイモ)の栽培方法が提案されている。
【0003】
また、特許文献2によれば、図7(a)〜(b)に示すように、サツマイモ苗植え用の穿穴を容易にできるように加工した穿穴部と、安定版によって、未熟者であっても常に所定の角度と深さで、サツマイモ苗植え用穴を穿つことができ、かつ、穿穴部の側面に設けた複数の放水孔から、穿穴周辺の土に必要量の潅水をし、その穴へサツマイモ苗を植えつけるように構成したサツマイモ苗の植え付け方法が提案されている。
【0004】
また、特許文献3によれば、サツマイモの種芋を栽培土壌中に植え付ける植え付け工程を包含し、サツマイモの種芋は、その肥大を物理的に抑制するための資材としての、育苗用培土又は土壌が充填された栽培容器内に収容されており、当該栽培容器は、サツマイモの種芋から出芽する芽を外部に出すことが可能な開口部を有しており、更に、植え付け工程の前に、サツマイモの種芋を栽培容器内において、出芽させる出芽工程を更に包含するサツマイモの栽培方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−217314号(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2008−67602号(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2011−217611号(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜3は、それぞれサツマイモを含むイモ類の栽培方法に関する発明であるものの、収穫されるサツマイモが小ぶりになるのを防止し、収穫量を増やす栽培処理として、蔓返しまでは考慮していないという問題点が見られた。
すなわち、図8に概略を示すように、人力によって、栽培地の地中に生えた小根(不定根という場合がある。以下、同様である。)を切り出すとともに、蔓を浮かせて、それをサツマイモが植えてある畝の上方に乗せるという、いわゆる蔓返しを行う必要があった。
よって、このようにサツマイモの蔓返しを行い、サツマイモの蔓が畝から延びて、小根を張ることを防止するには、従前と変わらず人力に頼らざるを得ず、しかも、熱い環境条件下での手作業(7〜8月)となって、かつ、作業時間が過度にかかる(2日程度/1アール)という問題が見られた。
【0007】
そこで、サツマイモ用農業機械に、当該サツマイモ用農業機械の移動動作に同期して移動する水平保持具が取り付けてあり、かつ、当該水平保持具の所定場所に、隣接する畝の間に張り出した、サツマイモの少なくとも蔓及び小根を切断するための切断冶具が、鉛直方向等に沿って、設けてあることにより、極めて迅速かつ正確に、サツマイモの蔓返しと同様の効果が得られることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明によれば、サツマイモの蔓返しと同様の効果が得られるサツマイモ用農業機械(蔓返し装置付きサツマイモ用農業機械と称する場合がある。)、及びそのようなサツマイモ用農業機械を用いた、効果的なサツマイモの栽培処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、サツマイモを栽培する畝を跨いで、あるいは隣接する畝の間を移動動作するサツマイモ用農業機械であって、サツマイモ用農業機械に対して、当該サツマイモ用農業機械の移動動作に同期して移動する水平保持具が取り付けてあり、かつ、当該水平保持具の所定場所に、隣接する畝の間に張り出した、サツマイモの少なくとも蔓及び小根(不定根)を切断するための切断冶具が、鉛直方向に沿って(鉛直方向に傾斜している場合を含む。)、設けてあることを特徴とするサツマイモ用農業機械が提供され、上述した問題点を解決することができる。
【0009】
すなわち、本発明のサツマイモ用農業機械によれば、その動力や操作性等を利用して、鉛直方向または概ね鉛直方向に沿って、下方に向いて設けてある切断冶具によって、サツマイモの少なくとも蔓及び小根(不定根)を切断し、サツマイモの蔓返しと同様の効果が得られる処理方法を、極めて短時間(例えば、30分未満/1アール)、かつ正確に行うことができるようになった。
そのため、本発明のサツマイモ用農業機械によれば、サツマイモの蔓及び小根の生え具合によって、所定期間内に、当該蔓返しを、複数回であっても、容易かつ繰り返して実施できるようになった。
その上、サツマイモの蔓及び小根等を切断することによって、左右に張り出したサツマイモの蔓及び小根等の阻害物がなくなるため、サツマイモの収穫後に、サツマイモを栽培する畝等に敷設してあるマルチシート(防草シート等)の回収や、サツマイモを回収した後の蔓自体の除去についても、極めて容易かつ短時間になった。
【0010】
本発明のサツマイモ用農業機械を構成するにあたり、切断冶具が、動作方向に沿って、地面(水平方向)から、鉛直方向に対して、10〜70°の傾斜角度(θ1)を有していることが好ましい。
このように鉛直方向に沿って設けてある切断冶具が、動作方向等に対して、所定角(θ1)でもって傾斜していることにより、比較的少ない動力でもって、サツマイモの少なくとも蔓及び小根を確実に切断することができる。
【0011】
本発明のサツマイモ用農業機械を構成するにあたり、切断冶具の、水平保持具に対する水平位置を固定、変更するための位置調整部材が、設けてあることが好ましい。
このように切断冶具の水平位置を、固定、変更するための位置調整部材(第1の位置調整部材と称する場合がある。)が、設けてあることにより、畝の幅、サツマイモの蔓の伸び、サツマイモの種類等の差異に、きめ細かく対応し、同時に、複数個所のサツマイモの蔓及び小根等を切断することができる。
また、複数の切断冶具を、水平保持具に対して、直接的又は間接的に設けたとしても、畝の幅や高さ、あるいは畝の相対位置等を考慮して、これら複数の切断冶具の位置関係(間隔)を、最適状態とすることができる。
【0012】
本発明のサツマイモ用農業機械を構成するにあたり、切断冶具の先端部の位置を、上下動させるための位置調整部材(第2の位置調整部材と称する場合がある。)が、設けてあることが好ましい。
このように切断冶具の先端部の位置を、上下動させるための位置調整部材が設けてあることにより、畝の高さ、サツマイモの蔓の伸び、サツマイモの種類等の差異に、きめ細かく対応し、サツマイモの蔓及び小根等を切断することができる。
【0013】
本発明のサツマイモ用農業機械を構成するにあたり、上述した切断冶具を第1の切断冶具としたときに、当該第1の切断冶具の一部に、手動で上下動する第2の切断冶具が、設けてあることが好ましい。
このように切断冶具の一部に、手動で上下動する第2の切断冶具が、設けてあることにより、第1の切断冶具によって切断できない蔓や小根等があった場合であっても、第2の切断冶具を利用して、確実に、切断できない蔓や小根等であっても切断することができる。特に、サツマイモ用農業機械が乗用型の場合、第1の切断冶具によって切断できない蔓や小根等があり、それが絡まったような場合、サツマイモ用農業機械の乗用席から降りて、かま等によって、別途切断する必要があったが、手動で上下動する第2の切断冶具があれば、そのような動作を省略することができる。
【0014】
本発明のサツマイモ用農業機械を構成するにあたり、切断冶具が、水平保持具に対して、長尺部材を介して取り付けてあり、切断冶具が、水平保持具あるいは長尺部材に対して、脱着可能に取り付けてあることが好ましい。
このように切断冶具が、水平保持具に対して、長尺部材を介して取り付けてあり、切断冶具が、水平保持具あるいは長尺部材に対して、脱着可能に取り付けてあることにより、切断冶具が劣化したような場合であっても、簡易的に交換することができる。
【0015】
本発明のサツマイモ用農業機械を構成するにあたり、サツマイモ用農業機械が、乗用農業機械であることが好ましい。
このようにサツマイモ用農業機械が、乗用農業機械であることにより、熱い環境条件下での作業であっても、作業負担を減らすことができ、かつ、作業時間についても確実に減らすことができる。なお、田植え機や耕運機、あるいはその他の農業機械であっても、乗用型が多数あることから、それらを所定改良することによって、サツマイモ用農業機械として併用することができる。
【0016】
本発明の別の態様は、サツマイモを栽培する畝を跨いで、あるいは隣接する畝の間を移動動作するサツマイモ用農業機械を用いてなる、サツマイモの栽培処理方法であって、サツマイモ用農業機械に対して、当該サツマイモ用農業機械の移動動作に同期して移動する水平保持具が取り付けてあり、当該水平保持具の所定場所に、隣接する畝の間に張り出した、サツマイモの少なくとも蔓及び小根を切断するための切断冶具が、鉛直方向に沿って、設けてあり、サツマイモ用農業機械を動作させ、サツマイモの少なくとも蔓及び小根を切断することを特徴とするサツマイモの栽培処理方法である。
【0017】
すなわち、本発明のサツマイモの栽培処理方法によれば、サツマイモ用農業機械の動力等を利用して、サツマイモの蔓返しと同等の効果が得られる栽培処理方法を、極めて短時間(例えば、30分未満/1アール)、かつ正確に行うことができるようになった。
また、本発明のサツマイモ用農業機械によれば、サツマイモの蔓及び小根の生え具合によって、所定期間内に、当該蔓返しを、複数回行うこともできるようになった。
その上、サツマイモの蔓及び小根等を切断することによって、左右に張り出したサツマイモの蔓及び小根等の阻害物がなくなるため、サツマイモの収穫後に、サツマイモを栽培する畝等に敷設してあるマルチシート(防草シート等)や蔓の回収についても、極めて容易になった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、市販の田植え機を改良してなる、サツマイモ用農業機械を説明するために供する図(側方写真、倍率:約25)である。
図2図2は、市販の田植え機を改良してなる、サツマイモ用農業機械の切断冶具が取り付けられた水平保持具を説明するために供する図(後方写真、倍率:約45)である。
図3図3は、サツマイモ用農業機械の切断冶具及びそれを取り付ける水平保持具を説明するために供する図である。
図4図4は、サツマイモ用農業機械の切断冶具及び長尺部材を説明するために供する図である。
図5図5は、サツマイモ用農業機械の切断冶具の垂直方向の位置調整方法を説明するために供する図である。
図6図6(a)〜(b)は、サツマイモ用農業機械の第2の切断冶具を説明するために供する図である。
図7図7(a)〜(b)は、従来のサツマイモの栽培用装置の一例を説明するために供する図である。
図8図8は、サツマイモの蔓返しを説明するために供する概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、図1及び図2に、その外形写真を示すように、サツマイモを栽培する畝を跨いで、あるいは隣接する畝の間を移動動作するサツマイモ用農業機械であって、サツマイモ用農業機械に対して、当該サツマイモ用農業機械の移動動作に同期して移動する水平保持具が取り付けてあり、かつ、当該水平保持具の所定場所に、隣接する畝の間に張り出した、サツマイモの少なくとも蔓及び小根を切断するための切断冶具が、鉛直方向に沿って、設けてあることを特徴とするサツマイモ用農業機械である。 以下、第1の実施形態のサツマイモ用農業機械を、構成要件等に分けて、具体的に説明する。
【0020】
1.サツマイモ用農業機械の基本形態
サツマイモ用農業機械としては、図1の側方写真及び図2の背面写真(後方写真)に示すように、基本的に、乗用型であれば、切断冶具を取り付けた水平保持具を含む作業部、エンジンを含む動力部、車輪等を含む駆動部、作業者が乗る乗用部等から構成されている。
したがって、作業者は、乗用部に乗ったまま、サツマイモ用農業機械の移動操作を行い、サツマイモを栽培する畝を跨いで、あるいは隣接する畝の間を、切断冶具がほぼ直線的に、移動するようにして、隣接する畝の間に張り出した、サツマイモの少なくとも蔓及び小根を切断することができる。
すなわち、図1及び図2に示すように、例えば、市販の田植え機を改良し、その後部の苗植装置を交換して、水平保持具及び切断冶具を取り付けてサツマイモ用農業機械とすることができる。
【0021】
なお、図示しないものの、市販の田植え機のかわりに、市販の非乗用型のマメトラック等であっても、所定場所に、水平保持具及び切断冶具を取り付けるだけで、小型かつ操作容易なサツマイモ用農業機械とすることができる。
したがって、作業者は、マメトラックを改造したサツマイモ用農業機械の移動方向を、ハンドルで制御するだけで、サツマイモ用農業機械の動力を利用して、隣接する畝の間等に張り出した、サツマイモの少なくとも蔓及び小根を、きめ細かく切断することができる。
【0022】
その他、サツマイモ用農業機械の栽培対象となるサツマイモの種類に関して特に制限はなく、例えば、シルクスイート、クイックスイート、安納芋、安納もみじ、灯篭蜜いも、紅はるか、紅あずま、紅天使、紅まさり、鳴門金時、あいこまち等の公知のサツマイモの少なくとも一種が挙げられる。
【0023】
2.水平保持具
(1)基本形態 水平保持具は、サツマイモの蔓及び小根等を切断し、蔓返しの効果を発揮するための切断冶具の保持具であって、サツマイモを栽培する畝を含む栽培地に対して、1つ又は2つ以上の切断冶具を、水平方向に保持するためのフレーム部材である。
すなわち、図3に示されるように、水平保持具20は、横棒パイプ20a、20bや鉄枠20c、20d等によって、正面視した場合に、概ね四角形状に構成されていることが好ましい。
【0024】
そして、水平保持具20の横棒パイプ20a、20bに対して、例えば、平行する2つの長尺部材12を介して、それぞれ切断冶具10を、ボルト/ナット等の接合手段10aにより取り付けてあり、サツマイモの蔓及び小根等を切断可能な、切断冶具10を備えた水平保持具20とすることができる。
【0025】
したがって、図1図2に示すように、かかる切断冶具10を備えた水平保持具20を、後方部に備えたサツマイモ用農業機械1の移動操作を行い、サツマイモを栽培する畝を跨いで、あるいは隣接する畝の間を、切断冶具10がほぼ直線的に移動させた場合に、当該切断冶具10、特に、その先端部(刃先)が、地面を這うサツマイモの蔓及び小根等に対して、ほぼ水平方向に移動して、それらを切断することができる。
【0026】
(2)変形例
また、図示しないものの、水平保持具は、サツマイモを栽培する畝等が、傾斜地等に設けてある場合や、複数の切断冶具の一部のみを使用するような場合を考慮して、水平保持具を、正面視した場合に、左右方向に所定角度に傾斜させられる構造であることが好ましい。
例えば、水平保持具が回転軸を有しており、それを中心として、水平保持具が左右方向に傾斜する構造であることが好ましい。
【0027】
すなわち、サツマイモ用農業機械の移動操作を傾斜地等で行い、サツマイモを栽培する畝を跨いで、あるいは隣接する畝の間を、切断冶具がほぼ直線的に移動した場合であっても、水平保持具に取り付けられた複数の切断冶具も、傾斜地等の表面に対して、等距離となるように傾斜させることができる。
したがって、このように水平保持具が左右方向に所定角度に傾斜させられる構造であれば、当該切断冶具の先端部(刃先)が、常に、サツマイモの蔓及び小根等を切断すべく、水平方向に移動させることができる。
【0028】
3.切断冶具
(1)鉛直方向
サツマイモ用農業機械における切断冶具は、少なくとも鉛直方向に設けてあることが好ましい。
すなわち、水平保持具を介して、サツマイモの栽培地に対して、垂直となるように、切断冶具が鉛直方向に設けてあることが好ましい。
この理由は、このように切断冶具が、栽培地の地面に向かって、鉛直方向に設けてあることによって、サツマイモ用農業機械の動力を利用して、隣接する畝の間に張り出した、サツマイモの少なくとも蔓及び小根を、上方から切断することができるためである。
【0029】
(2)傾斜角度
但し、図4に示すように、サツマイモ用農業機械1における切断冶具10が、矢印Aで示される動作方向に沿って、栽培地である水平方向の地面13から、鉛直方向に対して、10〜70°傾斜している、すなわち、かかる切断冶具10の傾斜角度(θ1)を10〜70°の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このように切断冶具10が、動作方向等に対して、所定角度に傾斜していることにより、鉛直方向(90°)に設けられた切断冶具の場合と比較して、例えば、1/5〜1/2の比較的少ない動力でもって、少なくともサツマイモの蔓及び小根等を切断することができるためである。
したがって、このように切断冶具10が、動作方向に沿って、地面(水平方向)13から、鉛直方向に対して、所定角度(θ1)で傾斜していれば、サツマイモの蔓及び小根等の切断速度を、更に速めることも可能である。
【0030】
より具体的には、かかる切断冶具10の傾斜角度(θ1)が、10°未満の傾斜では、動力の低減効果や切断の確実性があまり向上しない場合がある。
一方、切断冶具10の傾斜角度(θ1)が、70°を超えると、逆に、切断動力が増加したり、切断の確実性が低下したりする場合がある。
したがって、切断冶具10の傾斜角度(θ1)を30〜65°の範囲内の値とすることがより好ましく、45〜60°の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0031】
また、切断冶具10の配置位置は、基本的に、水平保持具20の下方であって、かつ、それに固定された長尺部材12の先端部に設けてあれば良い。
但し、図3に示すように、水平保持具20の下方に、2本の長尺部材12を固定、配置するとともに、それぞれの先端部の両側面又は片側面に、切断冶具10を配置すればよい。
したがって、長尺部材12の先端部の両側面に、長尺部材12を挟み込むように、切断冶具10を配置すれば、より広範囲において、少なくともサツマイモの蔓及び小根等を切断することができる。
一方、長尺部材12の先端部の片側面に、切断冶具10を配置すれば、所定位置におけるサツマイモの蔓及び小根等を、選択的に切断することができる。
【0032】
(3)水平方向の位置調整部材(第1の位置調整部材)
図3に示すように、水平保持具20の水平方向における切断冶具10の位置を、水平保持具20に対して、固定及び変更するための位置調整部材(第1の位置調整部材)14が、直接的又は間接的に設けてあることが好ましい。
この理由は、このように切断冶具10の水平位置を、固定、変更するための位置調整部材14が、水平保持具20に対して、設けてあることにより、畝の幅、サツマイモの蔓の伸び、サツマイモの種類等の差異に、きめ細かく対応し、同時に、複数個所のサツマイモの蔓及び小根等を切断することができるためである。
また、複数の切断冶具10を、水平保持具20に対して、直接的又は間接的に設けたとしても、畝の幅や高さ、あるいは畝の相対位置等を考慮して、これら複数の切断冶具の位置関係(間隔)を、最適状態とすることができるためである。
【0033】
なお、切断冶具10の水平位置を、固定及び変更するための位置調整部材(第1の位置調整部材)14の態様としては特に制限されるものではないが、例えば、図3に示すように、水平保持具20の一部を構成する、下方の横棒パイプ20bに対して、まずは、かかる横棒パイプ20bが貫通するような円筒部材(第1の円筒部材)14´を設けることが好ましい。
とすれば、横棒パイプ20bに対する、第1の円筒部材14´の位置をずらしながら、畝の幅等を考慮して、容易かつ任意に決定することができる。
【0034】
そして、かかる第1の円筒部材14´の背面等に対して、溶接や接着等によって切断冶具10を取り付けた長尺部材12を固定することにより、それをもって第1の位置調整部材14として用いることができる。
しかも、図3に示すように、水平保持具20の一部を構成する、上方の別の横棒パイプ20aに対しても、かかる横棒パイプ20aが貫通する円筒部材(第2の円筒部材)16´を設け、それに対して、溶接や接着等によって切断冶具10を取り付けた長尺部材12を固定することにより、複数個所でもって強固かつ正確に位置決めすることができる。
【0035】
その他、図3に示すように、位置調整部材14、16、すなわち、第1の円筒部材14´及び第2の円筒部材16´によって、その位置を固定、変更等される切断冶具10の個数は、通常、2つである。
しかしながら、予備的な切断冶具を含めて、3個以上とすることもできるし、あるいは、サツマイモを栽培する畝の大きさや形状等を考慮して、1つの切断冶具であっても良い。
【0036】
(4)先端部の位置調整部材(第2の位置調整部材)
図5に示すように、サツマイモ用農業機械1の切断冶具10の垂直位置を固定又は変更すべく、矢印の方向に、上下動させてなる位置調整部材(第2の位置調整部材)30が設けてあることが好ましい。
すなわち、このように切断冶具10の位置、すなわち、サツマイモの蔓等との距離を調整するための位置調整部材30が設けてあることにより、水平保持具20の垂直位置、切断冶具10の垂直位置、更には、長尺部材12の先端部12aの垂直位置(栽培面までの高さや、栽培面からの深さ位置)を、任意かつ最適条件に定めることができる。
【0037】
よって、サツマイモ用農業機械1を円滑に進行させながら、畝の高さ、サツマイモの蔓の伸び、サツマイモの種類等の差異にきめ細かく対応し、最終的には、切断冶具10によって、少なくともサツマイモの蔓及び小根等を、確実かつ正確に切断することができる。
【0038】
なお、切断冶具10の垂直位置を固定及び変更するための位置調整部材(第2の位置調整部材)30の機構としては特に制限されるものではないが、例えば、ねじ式調整部材、シリンダー式調整部材、油圧式調整部材、ばね式調整部材、モーター式調整部材等の垂直移動設備を備えて、それを第2の位置調整部材30として用いることが簡便かつ確実である。
【0039】
したがって、図5に示される位置調整部材(第2の位置調整部材)30の場合、周囲に設けてあり、内面に溝を切ってあるシリンダー30bと、そのシリンダー30bの内部に設けたねじ式駆動部30aと、から構成されている。
【0040】
その他、位置調整部材(第2の位置調整部材)30は、切断冶具10の個数に対応して、それぞれ設けても良い。
しかしながら、簡易構造とするため、図5に示すように、切断冶具10が、長尺部材12を介して、取り付けてある水平保持具20を直接的に上下動させ、間接的に、切断冶具10の垂直位置を固定又は変更する機構であっても良い。
【0041】
(5)切断冶具の種類
サツマイモ用農業機械1の切断冶具(第1の切断冶具)10の種類は、少なくともサツマイモの蔓及び小根等を、容易に切断できる冶具であれば、特に制限されるものではない。
したがって、例えば、カッター、ナイフ、かま、はさみ、包丁、のこぎり等の少なくとも一種を用いても良いが、安価かつ、耐久性等が良好な観点から、図示しないものの、鉄製アングルの角部を切断加工し、その切断箇所をグラインダーで研磨して、それをもって切断冶具とすることが好ましい。
その上、このような鉄製アングルに由来した切断冶具(第1の切断冶具)10であれば、後述するように、手動で上下動する切断冶具(第2の切断冶具)を取り付けることも更に容易となる。
【0042】
(6)第2の切断冶具
サツマイモ用農業機械等に直接的に取り付けてある切断冶具を第1の切断冶具10としたときに、図6(a)〜(b)に示すような、当該第1の切断冶具10の一部に、手動で上下動する第2の切断冶具15が、設けてあることが好ましい。
この理由は、このように第1の切断冶具の一部あるいは、独立して、手動で上下動する第2の切断冶具15が、設けてあることにより、仮に、第1の切断冶具10によって切断できない蔓や小根等があったような場合であっても、第2の切断冶具15を利用して、確実に、それらを切断できるためである。
【0043】
特に、サツマイモ用農業機械が乗用型の場合、第1の切断冶具10によって切断できない蔓や小根等があった場合、所定場所の席から降りて、かま等によって、別途切断する必要があり、煩雑であった。
したがって、図6(a)〜(b)に示すような、手動等で、第2の切断冶具15のつまみをもって、レール状空間15aに沿って、スライド可能な第2の切断冶具15があれば、第1の切断冶具10にからまった蔓や小根等を切断、除去することができ、ひいては、所定場所の席から降りて、人的に切断するという、煩雑動作を省略することができる。
【0044】
(7)脱着性
図3に示すように、切断冶具10が、水平保持具20あるいは、後述する長尺部材12に対して、脱着可能に取り付けてあることが好ましい。
この理由は、切断冶具が劣化したような場合であっても、切断冶具が脱着可能であれば、簡易かつ短時間で、新品と交換することができるためである。
【0045】
したがって、切断冶具10の脱着可能な取り付け方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、図3に示すように、ボルト/ナット等の接合手段10aであっても良く、あるいは、はめ込み構造、面ファスナー、脱着カバー等の少なくとも一つの脱着部材を用いることが好ましい。
【0046】
(8)長尺部材
図3に示すように、切断冶具10が、水平保持具20に対して、長尺部材12を介して取り付けてあることが好ましい。
この理由は、このように切断冶具10が、水平保持具20に対して、長尺部材12を介して取り付けてあることにより、切断冶具10が劣化したり、破損等したりしたような場合であっても、長尺部材12を介して、簡易的に交換することができるためである。
【0047】
そして、このように長尺部材12を用いる場合、例えば、金属棒、金属パイプ、金属製アングル、樹脂棒、樹脂パイプ、樹脂製アングル、セラミック棒、セラミックパイプ、セラミック製アングル、木製棒、木製パイプの少なくとも一つであることが好ましい。
そして、長尺部材12の長さは、ほぼ直線状と仮定して、通常、30cm〜2mの範囲内の値であることが好ましく、50cm〜1.5mの範囲内の値であることがより好ましく、80cm〜1.2mの範囲内の値であることが更に好ましい。
【0048】
また、長尺部材12の形態に関して、内部に空間がない円柱、角柱、あるいは、内部に空間のある円柱、角柱等が好適であるが、円相当径として、2cm〜10cmの範囲内の値であることが好ましく、2.5cm〜8cmの範囲内の値であることがより好ましく、3cm〜6cmの範囲内の値であることが更に好ましい。
【0049】
また、図4に示すように、長尺部材12の途中に屈曲部12dを設けることが好ましい。
うなわち、このように屈曲部12dを有することによって、強固な弾力性が得られ、サツマイモの蔓等を切断しながら、過度な負荷がかかった場合であっても、それを吸収して折れにくいという効果を発揮することができる。
また、かかる屈曲部12dがあることによって、長尺部材12の先端部12aが、サツマイモの栽培面である土壌に対して、比較的わずかな力で進入しやすく、かつ、サツマイモの栽培面の所定深さ位置を、円滑に進行することができる。
【0050】
したがって、長尺部材12の全体長さを100としたときに、屈曲部12dより下方部位12bの長さを55〜75とし、屈曲部12dより上方部位12cの長さを25〜45とすることが好ましく、屈曲部12dより下方部位12bの長さを60〜70とし、屈曲部12dより上方部位12cの長さを30〜40とすることがより好ましい。
【0051】
更に言えば、長尺部材12の途中に設けた屈曲部12dにおける折り曲げ角度、すなわち、屈曲部12dより下方部位12bと、上方部位12cとがなす角度(θ2)を100〜170°の範囲内の値とすることが好ましく、120〜165°の範囲内の値とすることが好ましく、130〜160°の範囲内の値とすることが更に好ましい。
この理由は、このような角度(θ2)の屈曲部12dであれば、強固な弾力性が得られ、サツマイモの蔓等を切断しながら、過度な負荷がかかった場合であっても、それを吸収しやすいとともに、製造等する際に、かかる角度(θ2)の維持形成も容易になるためである。
【0052】
その他、図4に示すように、長尺部材12の先端部12aは、角度10〜60°の鋭利な三角断面形状であって、水平方向に存する栽培地の表面に対して、侵入しやすい形態としてあることが好ましい。
この理由は、サツマイモ用農業機械を動作させた場合、まずは、長尺部材12の先端部12aが、栽培地の表面から1〜15cm程度まで容易に侵入して、次いで、その上方に位置する切断冶具10が、隣接する畝の間に張り出した、少なくともサツマイモの蔓及び小根を切断することができるためである。
【0053】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、サツマイモを栽培する畝を跨いで、あるいは隣接する畝の間を移動動作するサツマイモ用農業機械を用いてなる、サツマイモの栽培処理方法であって、サツマイモ用農業機械に対して、当該サツマイモ用農業機械の移動動作に同期して移動する水平保持具が取り付けてあり、当該水平保持具の所定場所に、隣接する畝の間に張り出した、サツマイモの少なくとも蔓及び小根を切断するための切断冶具が、鉛直方向に沿って、設けてあり、サツマイモ用農業機械を動作させ、サツマイモの少なくとも蔓及び小根を切断することを特徴とするサツマイモの栽培処理方法である。
したがって、第2の実施形態のサツマイモの栽培処理方法を実施するに際して、下記工程(1)〜(3)あるいは、下記工程(1)〜(3)+(3´)を順次行うことが好ましい。
【0054】
1.工程(1) 工程(1)は、サツマイモの栽培予定地に、一例で、長さ50m、幅40cm、高さ30cm、隣接畝の間隔1mである畝列を作り、そこに、サツマイモの苗を植えて、サツマイモの栽培地とする工程である。
栽培するサツマイモの種類等にもよるが、例えば、関東地域では、例年、4〜5月ころ行われることが多い。
【0055】
2.工程(2)
工程(2)は、サツマイモ用農業機械の準備工程であって、図1及び図2に示すような、乗用のサツマイモ用農業機械を準備する。
すなわち、サツマイモを栽培する畝を跨いで、あるいは隣接する畝の間を移動動作するサツマイモ用農業機械であって、サツマイモ用農業機械に対して、当該サツマイモ用農業機械の移動動作に同期して移動する水平保持具が取り付けてあり、かつ、当該水平保持具の所定場所に、隣接する畝の間に張り出した、サツマイモの少なくとも蔓及び小根を切断するための切断冶具(例えば、2つ)が、地面(水平方向)から、鉛直方向に対して、55°の傾斜角度(θ1)を有するサツマイモ用農業機械を準備した。
なお、サツマイモ用農業機械の態様は、第1の実施形態で説明したとおりである。
【0056】
3.工程(3) 工程(3)は、準備したサツマイモ用農業機械を動作させ、蔓返しと同様の効果を発揮させる作業である。
すなわち、サツマイモを栽培する畝を跨いで、サツマイモ用農業機械を移動動作させ、所定の切断冶具によって、隣接する畝の間に張り出した、少なくともサツマイモの蔓及び小根を切断することを特徴とする。
その際、サツマイモ用農業機械の動作速度を、通常、1m/分〜20m/分の範囲内の速度とすることが好ましい。
【0057】
4.工程(3´) 工程(3´)は、サツマイモ用農業機械の動作工程(蔓返し)を、所定期間内に複数行う工程である。
すなわち、工程(3)を実施した後、例えば、1日〜10日後に、2回目の工程(3)を行い、準備したサツマイモ用農業機械を、サツマイモを栽培する畝を跨いで移動動作させ、隣接する畝の間に張り出した、少なくともサツマイモの蔓及び小根を切断することが好ましい。
この理由は、短期間において、サツマイモの蔓及び小根が発生する場合があるが、工程(3´)として、工程(3)を繰り返し行うことによって、サツマイモの蔓及び小根等を、より完全に切断し、蔓返しの効果を高めることができるためである。
なお、工程(3´)は、2回目以降の蔓返し相当作業であることから、サツマイモ用農業機械の動作速度を、1回目の動作速度より速くし、通常、5m/分〜30m/分の範囲内の値とすることが好ましい。
【実施例】
【0058】
以下、本発明につき、実施例をもとに更に具体的に説明する。但し、特段の理由もなく、かかる実施例の記載によって、本発明の範囲が制限されないことは言うまでもない。
【0059】
[実施例1]
1.サツマイモ用農業機械の準備 工程(1)として、サツマイモ(品種:シルクスイート)の栽培予定地(合計:3アール)に、一例で、長さ50m、幅40cm、高さ30cm、隣接畝の間隔1mである畝列を作り、そこに、サツマイモの苗を植えて、サツマイモの栽培地とした。
【0060】
次いで、工程(2)として、図1及び図2に示すような、乗用のサツマイモ用農業機械を準備した。
すなわち、サツマイモを栽培する畝を跨いで、あるいは隣接する畝の間を移動動作するサツマイモ用農業機械であって、サツマイモ用農業機械に対して、当該サツマイモ用農業機械の移動動作に同期して移動する水平保持具が取り付けてある。
【0061】
そして、当該水平保持具の所定場所に、サツマイモの蔓及び小根等を切断するための切断冶具(左右2箇所に設置)が、それぞれ水平方向から鉛直方向に対して、55°の傾斜角度(θ1)でもって、長尺部材を介して、取り付けてあるサツマイモ用農業機械を準備した。
【0062】
なお、長尺部材は、その長尺部材の全体長さを100としたときに、屈曲部より下方部位の長さを65とし、屈曲部より上方部位の長さを35の割合としてあり、かつ、屈曲部より下方部位と、上方部位とがなす角度(狭角、θ2)を150°としてある。
【0063】
2.サツマイモ用農業機械の動作(蔓返し相当処理)
次いで、工程(3)として、準備したサツマイモ用農業機械の動作工程を行った。
すなわち、準備したサツマイモ用農業機械を用いて、サツマイモを栽培する畝を跨いで移動動作させ、隣接する畝の間に張り出した、サツマイモの蔓及び小根を切断した。その際、サツマイモ用農業機械の動作速度を10m/分とした。
【0064】
3.評価
(1)評価1(迅速性)
10アールの広さのサツマイモの栽培地において、サツマイモ用農業機械を用いて、栽培する畝を跨いで移動動作させ、隣接する畝の間に張り出した、サツマイモの蔓及び小根を切断した。そして、1アールごとの平均処理時間を測定し、以下の基準で迅速性を評価した。
◎:30分以内/1アールである
〇:60分以内/1アールである
△:120分以内/1アールである
×:120分超/1アールである
【0065】
(2)評価2(正確性)
10アールの広さのサツマイモの栽培地において、サツマイモ用農業機械を用いて、栽培する畝を跨いで移動動作させ、隣接する畝の間に張り出した、サツマイモの蔓及び小根を切断した。その状態を100か所で目視観察し、以下の基準で正確性を評価した。
◎:サツマイモの蔓及び小根が90%以上、切断されている。
〇:サツマイモの蔓及び小根が80%以上、切断されている。
△:サツマイモの蔓及び小根が50%以上、切断されている。
×:サツマイモの蔓及び小根が50%を超えて、残存している。
【0066】
(3)評価3(サツマイモの収穫性)
サツマイモの苗を植えてから、4月経過後の10アールの広さのサツマイモの栽培地において、サツマイモ堀り機械を用いて、サツマイモ堀りを行い、1アールあたりの500g以上/1個のサツマイモを対象として、その平均収穫量(kg/アール)を測定し、以下の基準でサツマイモの収穫性を評価した。
◎:平均収穫量が300kg/1アール以上である。
〇:平均収穫量が200kg/1アール以上である。
△:平均収穫量が100kg/1アール以上である。
×:平均収穫量が100kg未満/1アールである。
【0067】
(4)評価4(マルチシートの除去性)
サツマイモの苗を収穫した後、畝表面を被覆していたマルチシートを除去し、その除去時間から、下記基準に沿ってマルチシートの除去性を評価した。
◎:マルチシートの除去時間が20分/1アール以下である。
〇:マルチシートの除去時間が40分/1アール以下である。
△:マルチシートの除去時間が60分/1アール以下である。
×:マルチシートの除去時間が60分/1アールを越える。
【0068】
[実施例2]
実施例2では、サツマイモ用農業機械の動作工程の動作速度を20m/分とした以外、実施例1と同様にサツマイモを栽培し、その収穫性等を評価した。
【0069】
[実施例3] 実施例3では、工程(1)で準備したサツマイモ用農業機械における切断冶具(2つ)の傾斜角度、すなわち、それぞれ動作方向に沿って、地面(水平方向)から鉛直方向への傾斜角度(θ1)を30°とした以外、実施例1と同様に、迅速性等を評価した。
【0070】
[実施例4]
実施例4では、工程(1)で準備したサツマイモ用農業機械における切断冶具(2つ)の傾斜角度、すなわち、それぞれ動作方向に沿って、地面(水平方向)から鉛直方向への傾斜角度(θ1)を45°とした以外、実施例1と同様にサツマイモを栽培し、その収穫性等を評価した。
【0071】
[実施例5] 実施例5では、工程(3´)として、工程(3)を再度実施した以外、実施例1と同様に、迅速性等を評価した。
すなわち、サツマイモ用農業機械の動作工程の1回目の1週間後に、工程(3)を再び行い、準備したサツマイモ用農業機械を、サツマイモを栽培する畝を跨いで移動動作させ、隣接する畝の間に張り出した、サツマイモの蔓及び小根を切断した。
【0072】
[比較例1]
比較例1では、実施例1で用いたサツマイモ用農業機を用いず、従来どおり、人力でサツマイモの蔓返しを行って栽培を行った以外、実施例1と同様に、実施例1と同様にサツマイモを栽培し、その収穫性等を評価した。
【0073】
[比較例2]
比較例2では、実施例1で用いたサツマイモ用農業機を用いず、かつ、人力によるサツマイモの蔓返しを1週間の間隔で2回実施した以外、実施例1と同様にサツマイモを栽培し、その収穫性等を評価した。
【0074】
[比較例3]
比較例3では、実施例1で用いたサツマイモ用農業機を用いず、かつ、人力によるサツマイモの蔓返しも実施せず、サツマイモを栽培した以外、実施例1と同様に、サツマイモの収穫性等を評価した。
【0075】
【表1】
評価1:迅速性
評価2:正確性
評価3:収穫性
評価4:マルチシートの除去性
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上の説明から明らかなように、本発明のサツマイモ用農業機械によれば、所定の水平保持具及び切断冶具が取り付けてあることより、隣接する畝の間に張り出した、サツマイモの少なくとも蔓及び小根を切断することができるようになった。
したがって、当該サツマイモ用農業機械等を用いた場合、サツマイモの蔓返しと同等の効果が得られるとともに、作業が極めて短時間かつ正確化され、その上、得られるサツマイモの収穫量も多くなった。
【0077】
また、本発明のサツマイモの栽培処理方法によれば、所定のサツマイモ用農業機械を用いて、隣接する畝の間に張り出した、サツマイモの少なくとも蔓及び小根を切断する切断処理等を行うことより、サツマイモの蔓返しと同等の効果が得られるとともに、作業が極めて短時間かつ正確化され、その上、得られるサツマイモの収穫量も多くなった。
【0078】
その上、本発明のサツマイモ用農業機械やサツマイモの栽培処理方法によれば、サツマイモの少なくとも蔓及び小根(不定根)が切断してあることから、いわゆる阻害物が少なくなったため、防草や日照効率のために、サツマイモの畝等に施設してあるマルチシートの除去作業についても、極めて迅速かつ楽になった。より具体的には、従来、2時間/1アールほどかかっていた処理時間が、15分/1アールほどでできるようになった。 さらに言えば、サツマイモを収穫した後の、蔓の片づけ自体も迅速かつ容易になり、従来、3時間/1アールほどかかっていた処理時間が、30分/1アールほどでできるようになった。
【0079】
その他、本発明のサツマイモ用農業機械やサツマイモの栽培処理方法によれば、サツマイモの栽培地である畝から広がった箇所の蔓の小根のみならず、蔓自体も、一部又は相当切断することになる。
しかしながら、本発明に基づいて得られるサツマイモの収穫量や単位重量/個が、単に、人的にサツマイモの蔓返しをした場合よりも、サツマイモの種類や栽培条件にもよるが、少なくとも30%以上、多くなったり、重くなったりするという、予想できない効果が得られるようになった。
【符号の説明】
【0080】
1:サツマイモ用農業機械
10:切断冶具(第1の切断冶具)
10a:接合手段
12:長尺部材
12a:先端部
12b:上方部位
12c:下方部位
12d:屈曲部
13:サツマイモ栽培地(地面/水平面)
14、16:位置調整部材(第1の位置調整部材)15:第2の切断冶具
15a:レール状溝
20:水平保持具
20a、20b:横棒パイプ
20c、20d:鉄枠
30:位置調整部材(第2の位置調整部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8