特許第6847090号(P6847090)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6847090
(24)【登録日】2021年3月4日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/00 20060101AFI20210315BHJP
   C08F 22/02 20060101ALI20210315BHJP
   C08F 8/14 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   C08F2/00 A
   C08F22/02
   C08F8/14
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-501597(P2018-501597)
(86)(22)【出願日】2017年2月13日
(86)【国際出願番号】JP2017005195
(87)【国際公開番号】WO2017145847
(87)【国際公開日】20170831
【審査請求日】2019年11月8日
(31)【優先権主張番号】特願2016-31769(P2016-31769)
(32)【優先日】2016年2月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(72)【発明者】
【氏名】木下 健宏
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 健
(72)【発明者】
【氏名】川口 恭章
(72)【発明者】
【氏名】柳 正義
(72)【発明者】
【氏名】倉本 拓樹
【審査官】 北田 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−141629(JP,A)
【文献】 特開2013−216829(JP,A)
【文献】 特開2011−168749(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/126140(WO,A1)
【文献】 特開2008−138033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08F 2/00−301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器にラジカル重合性モノマー及び熱ラジカル重合開始剤を添加すること、及び当該熱ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度よりも20〜70℃高い温度で当該ラジカル重合性モノマーを重合させる工程1と、
反応容器内の温度を前記熱ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度よりも20℃低い温度以上で20℃高い温度未満の間に設定して重合させる工程3と
を含む、樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記ラジカル重合性モノマー及び前記熱ラジカル重合開始剤を反応容器に滴下することで添加する、請求項1に記載の樹脂の製造方法。
【請求項3】
反応容器内を前記熱ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度よりも20〜70℃高い温度にした後にラジカル重合性モノマー及び熱ラジカル重合開始剤を添加する、請求項1又は2に記載の樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記ラジカル重合性モノマー及び前記熱ラジカル重合開始剤の添加終了後、30分〜300分反応させる工程2を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記熱ラジカル重合開始剤が過酸化物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記熱ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度が60〜110℃である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記ラジカル重合性モノマーの添加時間が30分〜300分である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記工程1が、熱ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度よりも30〜70℃高い温度でラジカル重合性モノマーを重合させる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記工程3において、重合時間が60分〜300分である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記工程3において、追加の熱ラジカル重合開始剤を添加する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の樹脂の製造方法。
【請求項11】
前記工程3において、追加のラジカル重合性モノマーを添加する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の樹脂の製造方法。
【請求項12】
前記ラジカル重合性モノマーが(メタ)アクリル酸を含有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の樹脂の製造方法。
【請求項13】
前記樹脂の(メタ)アクリル酸由来のカルボキシル基に、グリシジル(メタ)アクリレートを付加させて不飽和基を導入する、請求項12に記載の樹脂の製造方法。
【請求項14】
前記樹脂の酸価が10〜300KOHmg/gである、請求項12に記載の樹脂の製造方法。
【請求項15】
前記樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量が1,000〜50,000である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジカル重合により得られる樹脂の製造方法に関する。具体的には、熱ラジカル重合開始剤を用いてラジカル重合性モノマーを重合させる際に特定の温度下で行う、樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省資源や省エネルギーの観点から、各種コーティング、印刷、塗料、接着剤などの分野において、紫外線や電子線などの活性エネルギー線により硬化可能な感光性樹脂組成物が広く使用されている。また、プリント配線基板などの電子材料の分野においても、活性エネルギー線により硬化可能な感光性樹脂組成物がソルダーレジストやカラーフィルター、ブラックマトリックス、フォトスペーサー、保護膜等用レジストなどに使用されている。
【0003】
同分野ではラジカル重合により得られた樹脂を用いたものが知られており、一般的なラジカル重合により得られた樹脂の製造方法もこれまで種々提案されている(特許文献1、2)。ただし、従来のラジカル重合により得られた樹脂の製造方法では分子量の再現性や量産性が十分でない、残存モノマー量が多いなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−265390号公報
【特許文献2】特開2008−266555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、従来のラジカル重合を用いた樹脂の製造方法は、分子量の再現性がない場合や残存モノマー量が多い場合があり、工業的に量産することが困難である。
従って、本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、分子量の十分な再現性が得られ残存モノマー量が少ない、ラジカル重合を用いた樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記のような課題を解決すべく鋭意検討した結果、熱ラジカル重合開始剤を用いてラジカル重合性モノマーの重合を行う際に、当該熱ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度よりも20〜70℃高い温度に設定することで上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)反応容器にラジカル重合性モノマー及び熱ラジカル重合開始剤を添加すること、及び当該熱ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度よりも20〜70℃高い温度で当該ラジカル重合性モノマーを重合させる工程1と、反応容器内の温度を前記熱ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度よりも20℃低い温度以上で20℃高い温度未満の間に設定して重合させる工程3とを含む、樹脂の製造方法、
(2)前記ラジカル重合性モノマー及び前記熱ラジカル重合開始剤を反応容器に滴下することで添加する、(1)の樹脂の製造方法、
(3)反応容器内を前記熱ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度よりも20〜70℃高い温度にした後にラジカル重合性モノマー及び熱ラジカル重合開始剤を添加する、(1)又は(2)の樹脂の製造方法、
(4)前記ラジカル重合性モノマーの添加終了後、0.5〜3時間反応させる工程2を含む、(1)〜(3)のいずれかの樹脂の製造方法、
(5)前記熱ラジカル重合開始剤が、過酸化物である(1)〜(4)のいずれかの樹脂の
製造方法、
(6)前記熱ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度が60〜110℃である、(1)〜(5)のいずれかの樹脂の製造方法、
(7)前記ラジカル重合性モノマーの添加時間が60分〜300分である、(1)〜(6)のいずれかの樹脂の製造方法、
(8)前記工程1が、熱ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度よりも30〜70℃高い温度でラジカル重合性モノマーを重合させる、(1)〜(7)のいずれかの樹脂の製造方法、
(9)前記工程3において、重合時間が60分〜300分である、(1)〜(8)のいずれかの樹脂の製造方法、
(10)前記工程3において、追加の熱ラジカル重合開始剤を添加する、(1)〜(9)のいずれかの樹脂の製造方法、
(11)前記工程3において、追加のラジカル重合性モノマーを添加する、(1)〜(10)のいずれかの樹脂の製造方法、
(12)前記ラジカル重合性モノマーが(メタ)アクリル酸を含有する、(1)〜(11)のいずれかの樹脂の製造方法、
(13)前記樹脂の(メタ)アクリル酸由来のカルボキシル基に、グリシジル(メタ)アクリレートを付加させて不飽和基を導入する、(12)の樹脂の製造方法、
(14)前記樹脂の酸価が10〜300KOHmg/gである、(12)の樹脂の製造方法、及び
(15)前記樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量が1,000〜50,000である、(1)〜(14)のいずれかの樹脂の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法により、分子量の十分な再現性が得られ、残存モノマーが少ない樹脂を得ることができる。従って、本発明の製造方法は、良好な再現性のため、樹脂の工業的な量産に使用可能である。さらに、本発明の製造方法は、残存モノマーが少ないため樹脂を使用する塗料などにおいて加熱時に残存モノマーの揮散が少なく製造装置等を汚染することを抑えることができるという利点も有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明のラジカル重合性モノマーの重合は反応容器内で回分操作にて行うことができる。
この発明で使用する反応容器は、工業的にラジカル重合性モノマーを重合させるために使用する反応容器であれば特に限定されない。例えば、混合機能、温度調節機能を備え、原料の供給と反応液の取り出しが行える供給口と取り出し口を有する反応容器が挙げられる。
【0010】
本発明に用いる熱ラジカル重合開始剤としては、通常、熱によって熱ラジカルを発生する熱ラジカル重合開始剤が用いられ、有機過酸化物系開始剤、アゾ系開始剤のいずれも使用できる。有機過酸化物系開始剤としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシカーボネート、パーオキシジカーボネート等が好ましく、その中でもハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエテルが好ましく、パーオキシエステルが特に好ましい。アゾ系開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソ酪酸メチル等が好ましい。これらは単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。
【0011】
本発明に用いられる熱ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度は、60〜110℃が好ましく、70〜100℃がより好ましい。
なお、10時間半減期温度とは、溶媒に溶解したときの、熱ラジカル重合開始剤の濃度が初期値の半分に減少するまでの時間(半減期)が10時間となる温度のことをいう。10時間半減期は公知の方法を利用して、又は公知文献に記載の方法で算出することが可能である。さらに、市販品を使用する場合はそのカタログや仕様書に記載の値を利用することもできる。
【0012】
熱ラジカル重合開始剤の使用量は特に制限されないが、重合性モノマーの全仕込み量を100質量部とした場合に、一般に0.5〜20質量部、好ましくは1〜10質量部である。
【0013】
<工程1>
本発明では、反応容器にラジカル重合性モノマー及び熱ラジカル重合開始剤を添加してラジカル重合性モノマーを反応容器内で重合反応させる。
重合反応は、当該技術分野において公知のラジカル重合方法に従って溶剤の存在下又は不存在下で行うことができる。例えば、ラジカル重合性モノマーを所望により溶剤に添加して溶解し熱ラジカル重合開始剤と共に、当該重合開始剤の10時間半減期温度より20〜70℃高い温度で重合反応を行えばよい。
【0014】
ラジカル重合性モノマー及び熱ラジカル重合開始剤を反応容器に添加する方法は特に限定されないが、添加量、添加速度や添加時間を制御することが容易であること等から、これらを滴下して反応容器に添加することが好ましい。また、これらを混合して混合物として添加してもよく、別々に添加してもよい。
【0015】
ラジカル重合性モノマー及び熱ラジカル重合開始剤を反応容器に添加する場合に、いずれか一方もしくは両方を溶剤に溶解して添加することができる。このとき、ラジカル重合性モノマー100質量部に対し、溶剤を0質量部〜100質量部、好ましくは0質量部〜50質量部で混合して、反応容器に添加する。また、熱ラジカル重合開始剤100質量部に対し、溶剤を100質量部〜10000質量部、好ましくは150質量部〜5000質量部で混合して、反応容器に添加する。さらに、ラジカル重合性モノマーと熱ラジカル重合開始剤を混合した混合物で反応容器に添加する場合は、当該混合物100質量部に対し、溶剤を0質量部〜100質量部、好ましくは0質量部〜50質量部で混合して、反応容器に添加する。
【0016】
ラジカル重合性モノマーを添加するための時間は特に制限されないが、通常、反応容器に30分〜300分、好ましくは60分〜250分かけて添加する。また、熱ラジカル重合開始剤も同様に反応容器に添加するための時間は特に制限されないが、通常、30分〜300分、好ましくは60分〜250分かけて添加する。なお、作業の効率性の観点等から、ラジカル重合性モノマーと熱ラジカル重合開始剤の添加時間が同じになるように調整してもよい。
さらに、ラジカル重合性モノマー及び熱ラジカル重合開始剤の混合物を反応容器に添加する場合も添加するための時間は制限されないが、通常、反応容器に30分〜300分、好ましくは60分〜250分かけて添加する。
【0017】
ラジカル重合性モノマー及び熱ラジカル重合開始剤を溶剤に溶解して滴下により反応容器に添加する場合、滴下速度は特に制限されないが、ラジカル重合性モノマーの滴下速度はラジカル重合性モノマー及び溶剤の総量を100mlとした場合、通常、0.1ml/分〜5ml/分、好ましくは0.2ml/分〜4ml/分である。また、熱ラジカル重合開始剤の滴下速度は、熱ラジカル重合開始剤及び溶剤の総量を100mlとした場合、通常、0.1ml/分〜5ml/分、好ましくは0.2ml/分〜4ml/分である。さらに、ラジカル重合性モノマー及び熱ラジカル重合開始剤を混合物で溶剤に溶解して反応容器に添加するときの滴下速度は、ラジカル重合性モノマー、熱ラジカル重合開始剤及び溶剤の総量を100mlとした場合、通常、0.1ml/分〜5ml/分、好ましくは0.2ml/分〜4ml/分である。
【0018】
重合反応を行う際に、使用する熱ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度よりも20〜70℃、好ましくは30〜60℃高い温度に反応容器内の温度を設定し、反応させる。この温度範囲内で反応させると残存モノマー量を十分低減でき、樹脂の製造の再現性も優れる。重合反応中にこの温度範囲内であれば温度の変動も可能であるが、作業効率の観点から一定の温度で反応させることが好ましい。2種以上の熱ラジカル重合開始剤を用いる場合は、全ての熱ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度よりも20〜70℃高い温度を選択して重合反応を行う。
さらに、重合反応を効率的に行う観点から、反応容器内の温度を、ラジカル重合性モノマー及び/又は熱ラジカル重合開始剤を添加する前に予め熱ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度よりも20〜70℃高い温度に調整しておくことが好ましい。
【0019】
<工程2>
ラジカル重合性モノマー及び熱ラジカル重合開始剤を反応容器に添加終了後、熱ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度よりも20〜70℃高い温度で重合反応を行う。この重合反応の時間は特に制限されないが、通常、30分〜300分、好ましくは30分〜180分である。ここでの重合反応は撹拌しながら行うのが好ましい。
【0020】
<工程3>
10時間半減期温度より20〜70℃高い温度で重合反応を行った後に、10時間半減期温度より20℃低い温度以上で20℃高い温度未満の範囲の温度で追加の重合反応を行ってもよい。さらにこの重合反応を行うことで残存モノマーの量をより低減することができる。
【0021】
工程3において、熱ラジカル重合開始剤やラジカル重合性モノマーをさらに添加してもよい。この追加の重合反応の際に添加する熱ラジカル重合開始剤種は工程1の重合反応時と同じであってもよく、異なっていてもよい。
工程1及び工程3において添加する熱ラジカル重合開始剤が異なる場合は、全ての熱ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度より20℃低い温度以上で20℃高い温度未満の範囲を選択して重合反応を行う。
また、この場合に、熱ラジカル重合開始剤を任意に溶剤に溶解して、滴下等により反応容器に添加することができる。樹脂の製造時間を短縮し、製造効率を上げる観点からは、追加の重合反応の際に添加する熱ラジカル重合開始剤は、反応容器に一度に投入することが望ましい。
工程3において、さらに熱ラジカル重合開始剤を添加する場合は、使用量は特に制限されないが、重合性モノマーの全仕込み量を100質量部とした場合に、一般に0.5〜20質量部、好ましくは1〜10質量部である。
【0022】
工程3において、さらにラジカル重合性モノマーを添加する場合は、最初の重合反応で用いたラジカル重合性モノマーと同種であっても異種であってもよい。また、2種以上のラジカル重合性モノマーを使用することができる。
また、この場合に、ラジカル重合性モノマーを任意に溶剤に溶解して、滴下によりもしくは一度に投入して反応容器に添加することができる。樹脂の製造時間を短縮し、製造効率を上げる観点からは、工程3において添加するラジカル重合性モノマーは、反応容器に一度に投入することが望ましい。
【0023】
上記工程3の反応時間は特に制限されないが、通常、60分〜300分、好ましくは、120分〜240分である。熱ラジカル重合開始剤及び/またはラジカル重合性モノマーを滴下により反応容器に添加する場合には、これらを滴下終了後に、通常、60〜300分、好ましくは120〜240分反応させればよい。なお、工程3終了後に熱ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度よりも20〜70℃高い温度で30分〜600分処理することが好ましい。
【0024】
本発明の重合反応に用いるラジカル重合性モノマーは特に制限はなく、ノルボルネンおよびジシクロペンタジエンやスチレン、α−メチルスチレン、o−ビニルトルエン、m−ビニルトルエン、p−ビニルトルエン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、p−ニトロスチレン、p−シアノスチレン、p−アセチルアミノスチレンなどの芳香族ビニル化合物;
ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどの共役ジエン化合物;
【0025】
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、i−プロピルメタクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、イソ−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ロジン(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、1,1,1−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロ−n−プロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロ−イソ−プロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、トリフェニルメチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、クミル(メタ)アクリレート、4−フェノキシフェニル(メタ)アクリレート、ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ナフタレン(メタ)アクリレート、アントラセン(メタ)アクリレート、n−ペンチルメタクリレート、イソアミルアクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、メトキシ−トリエチレングリコールアクリレート、エトキシ−ジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(商品名:AM−90G、新中村化学工業社製)、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシ−ポリエチレングリコールアクリレート(商品名:ライトアクリレートP−200A、共栄化学社製)、o−フェノキシベンジルアクリレート、m−フェノキシベンジルアクリレート、p−フェノキシベンジルアクリレート、(メタ)アクロイルオキシエチルイソシアネート(すなわち2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート)とε−カプロラクタムとの反応生成物、(メタ)アクロイルオキシエチルイソシアネートとプロピレングリコールモノメチルエーテルとの反応生成物、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2−グリシジルオキシエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートおよびそのラクトン付加物(例えば、ダイセル化学工業(株)製サイクロマーA200、M100)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3´,4´−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートのモノ(メタ)アクリル酸エステル、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートのエポキシ化物、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートのエポキシ化物などの(メタ)アクリル酸エステル化合物;
(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、マレイン酸などのカルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物およびその置換体;
【0026】
(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジプロピルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジ−イソプロピルアミド、(メタ)アクリル酸アントラセニルアミドなどの(メタ)アクリル酸アミド;
(メタ)アクリル酸アニリド、(メタ)アクリロニトリル、アクロレイン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、酢酸ビニル、ビニルトルエンなどのビニル化合物;
シトラコン酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチルなどの不飽和ジカルボン酸ジエステル化合物;
N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミドなどのモノマレイミド化合物;
などが挙げられる。これらのラジカル重合性モノマーは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。これらの中でも、樹脂を各種レジストに適用する観点から、少なくともカルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物を用いることが好ましく、(メタ)アクリル酸を用いることがより好ましい。
【0027】
この重合反応に用いることが可能な溶剤としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル化合物;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート化合物;
【0028】
ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル化合物;
メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン化合物;
2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸メチル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸n−アミル、酢酸i−アミル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸i−プロピル、酪酸n−ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n−プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソ酪酸エチル等のエステル化合物;
トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物;
N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド化合物;等を挙げることができる。これらの溶剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0029】
これらの中でも、(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル化合物および(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート化合物などの(ポリ)アルキレングリコールエーテル系溶剤が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコール系溶剤がより好ましい。
【0030】
本発明の重合反応のための溶剤の総使用量は、特に限定されないが、ラジカル重合性モノマーの仕込み量の合計を100質量部としたとき、一般に30〜1,000質量部、好ましくは50〜800質量部である。特に、溶剤の使用量を1,000質量部以下とすることで、連鎖移動作用による重合体の分子量の低下を抑制し、且つ重合体の粘度を適切な範囲に制御することができる。また、溶剤の配合量を30質量部以上とすることで、異常な重合反応を防止し、重合反応を安定して行うことができると共に、重合体の着色やゲル化を防止することもできる。
【0031】
本発明品を各種レジスト材料に適用する場合、側鎖に酸基や重合性不飽和結合を有することが好ましい。酸基は、ラジカル重合性モノマーとして少なくともカルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物を用いることにより導入できる。また、下記(I)の変性方法によっても得られる。重合性不飽和結合は例えば、下記(II)の変性反応を行うことによって得られる。
【0032】
(I)の変性方法:
ラジカル重合性モノマーとして、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有エチレン性不飽和化合物を使用する。ラジカル重合で得られた樹脂の分子中に含まれるエポキシ基を、(メタ)アクリル酸等の重合性不飽和一塩基酸により開裂し、その開裂により生成したヒドロキシ基と多塩基酸またはその無水物とを反応させる。
【0033】
上述の(I)の変性方法を用いる場合、本発明の方法で得られた樹脂と付加物との反応は、常法に従って実施することができる。重合反応が終了した後に溶剤を除去することなく変性反応を行うことができ、例えば、前記樹脂を含む反応溶媒中に重合性不飽和一塩基酸を加え、さらに重合禁止剤及び触媒を添加し、例えば、50〜150℃、好ましくは80〜130℃で反応させた後、さらに多塩基酸またはその無水物を添加して50〜150℃、好ましくは80〜130℃で反応を行えばよい。多塩基酸またはその無水物としてはテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸などが挙げられる。
【0034】
(II)の変性方法:
ラジカル重合性モノマーとして、少なくともカルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物を使用する。ラジカル重合で得られた樹脂の分子中に含まれるカルボキシル基と、エポキシ基やヒドロキシル基など該カルボキシル基と反応性の官能基を有する(メタ)アクリレートモノマーを反応させる。
【0035】
(II)の変性方法の場合、(I)の変性方法の場合と同様に、本発明の製造方法における重合反応が終了した後に溶剤を除去することなく変性反応を行うことができ、本発明の方法で得られた樹脂を含む反応溶媒中にカルボキシ基と反応性の官能基を有する(メタ)アクリレートモノマーと触媒を添加し、必要に応じて、ゲル化防止のために重合禁止剤を添加して、50〜150℃、好ましくは80〜130℃で反応を行えばよい。
【0036】
本発明の製造方法で得られる樹脂が酸基を有する場合、その酸価(JIS K6901 5.3)は、適宜選択できるが、感光性重合体として使用する場合には、通常、10〜300KOHmg/g、好ましくは20〜200KOHmg/gの範囲である。
【0037】
また、本発明で得られる樹脂の重量平均分子量は用途に合わせて調整することができるが、各種レジスト材料に用いる場合、耐熱黄変性向上及び現像性向上の点から、1000〜50000であることが好ましく、3000〜40000であることがより好ましい。
なお、本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、下記条件にて測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
カラム:ショウデックス(登録商標)LF−804+LF−804(昭和電工株式会社製)
カラム温度:40℃
試料:共重合体の0.2質量%テトラヒドロフラン溶液
展開溶媒:テトラヒドロフラン
検出器:示差屈折計(ショウデックス(登録商標)RI−71S)(昭和電工株式会社製)
流速:1mL/min
【0038】
本発明において製造される樹脂から得られた重合性樹脂を含有する感光性樹脂組成物は、各種レジスト、特に、有機ELディスプレイ、液晶表示装置、固体撮像素子に組み込まれるカラーフィルター、ブラックマトリックス、フォトスペーサー、保護膜、オーバーコートを製造するために用いられるレジストとして用いるのに適している。
【実施例】
【0039】
以下に実施例及び比較例を示して、本発明を具体的に説明する。
以下の実施例及び比較例における残存モノマー量の測定は、重量平均分子量の測定と同様に、GPCを用いて上述の条件にて測定した。
なお、重量平均分子量の再現性は以下の基準で判断した。
再現性の判定基準
○:同様の重合反応を2回繰り返し、2回目の重量平均分子量の変化率((2回目の重量平均分子量−1回目の重量平均分子量)/1回目の重量平均分子量×100)が±10%以内
×:同様の重合反応を2回繰り返し、2回目の重量平均分子量の変化率が±10%の範囲から外れる
【0040】
<実施例1>
攪拌装置、滴下ロート、コンデンサー、温度計及びガス導入管を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート128.8gを加え、窒素置換しながら攪拌し、120℃に昇温した。
次いで、メタクリル酸38.7g、トリシクロデカニルメタクリレート22.0g及び、ベンジルメタクリレート79.2gからなるラジカル重合性モノマーと、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート79.3g及び2.0gのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(熱ラジカル重合開始剤、日油社製、パーブチル(登録商標)O:10時間半減期温度72℃)を混合したものとを、滴下ロートから別々に2時間にわたって前記フラスコ中に滴下した。滴下終了後、120℃でさらに2時間攪拌して重合反応を行い、重量平均分子量17,500、固形分酸価180KOHmg/gのカルボキシル基含有樹脂溶液を得た。
【0041】
残存モノマーの総量を測定したところ0.8質量%であった。また、同様の反応を再度行ったところ、重量平均分子量は18,000で分子量の再現性は良好であった。
【0042】
<実施例2>
熱ラジカル重合開始剤を1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油社製、パーオクタ(登録商標)O:10時間半減期温度65℃)に変更し、反応温度を109℃にした以外は同様に反応を行い、重量平均分子量18,500、固形分酸価180KOHmg/gのカルボキシル基含有樹脂溶液を得た。残存モノマーの総量を測定したところ0.7質量%であった。また、同様の反応を再度行ったところ、重量平均分子量は19,300で分子量の再現性は良好であった。
【0043】
<実施例3>
熱ラジカル重合開始剤をt−ブチルパーオキシベンゾエート(日本化薬社製、カヤブチルB(登録商標):10時間半減期温度105℃)に変更し、反応温度を127℃にした以外は同様に反応を行い、重量平均分子量14,800、固形分酸価180KOHmg/gのカルボキシル基含有樹脂溶液を得た。残存モノマーの総量を測定したところ0.6質量%であった。また、同様の反応を再度行ったところ、重量平均分子量は15,100で分子量の再現性は良好であった。
【0044】
<実施例4>
実施例1の溶液にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2.8gと0.7gのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(熱ラジカル重合開始剤、日油社製、パーブチル(登録商標)O:10時間半減期温度72℃)を添加したものをフラスコに投入し、90℃で3時間反応を行い(工程3)、重量平均分子量17,300、固形分酸価180KOHmg/gのカルボキシル基含有樹脂溶液を得た。
【0045】
<実施例5>
メタクリル酸を37.0gにした以外は実施例1と同様に反応を行い、重量平均分子量17,300、固形分酸価180KOHmg/gのカルボキシル基含有樹脂溶液を得た。
更にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2.8gと0.7gのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(熱ラジカル重合開始剤、日油社製、パーブチル(登録商標)O:10時間半減期温度72℃)、1.7gのメタクリル酸を添加したものをフラスコに投入し、90℃で3時間反応を行い重量平均分子量17,100、固形分酸価180KOHmg/gのカルボキシル基含有樹脂溶液を得た。
【0046】
<実施例6>
実施例4の溶液にグリシジルメタクリレート21.3g、重合禁止剤としてハイドロキノン0.5g、触媒としてトリフェニルホスフィン0.5gを仕込み、酸素濃度が4質量%〜6質量%となるように窒素ガスを注入した低酸素エアーを吹き込みながら110℃で10時間加熱し、重量平均分子量25,300、固形分酸価103KOHmg/gのカルボキシル基、不飽和基含有樹脂を得た。
【0047】
<実施例7>
攪拌装置、滴下ロート、コンデンサー、温度計及びガス導入管を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート159.1gを加え、窒素置換しながら攪拌し、120℃に昇温した。次いで、グリシジルメタクリレート85.2g、トリシクロデカニルメタクリレート66.0g、及びスチレン10.4gからなるラジカル重合性モノマー及び、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート46.9gに17.8gのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(重合開始剤、日油社製、パーブチル(登録商標)O)を添加したものを、滴下ロートから別々に2時間にわたって前記フラスコ中に滴下した。滴下終了後、120℃でさらに2時間攪拌して共重合反応を行い、重量平均分子量4,000のエポキシ基含有共重合体溶液を生成させた。残存モノマーの総量を測定したところ0.5質量%であった。また、同様の反応を再度行ったところ、重量平均分子量は4,200で分子量の再現性は良好であった。そこにアクリル酸43.2g、重合禁止剤としてハイドロキノン0.6g、触媒としてトリフェニルホスフィンを0.6gを仕込み、酸素濃度が4質量%〜6質量%となるように窒素ガスを注入した低酸素エアーを吹き込みながら110℃で10時間加熱した。
その後、酸価が1.0KOHmg/g以下であることを確認して、テトラヒドロフタル酸無水物を59.3g仕込み110℃で2時間反応させ、重量平均分子量8,000、固形分酸価80KOHmg/gのカルボキシル基、不飽和基含有樹脂を得た。
【0048】
<比較例1>
反応温度を90℃、熱ラジカル重合開始剤量を7.0gにした以外は実施例1と同様にして重量平均分子量20,000、固形分酸価180KOHmg/gのカルボキシル基含有樹脂溶液を得た。同様の反応を再度行ったところ、重量平均分子量は16,000で分子量の再現性は無かった。
【0049】
<比較例2>
重合温度を144℃、熱ラジカル重合開始剤量を0.7gにした以外は実施例1と同様にして重量平均分子量15,000、固形分酸価180KOHmg/gのカルボキシル基含有樹脂溶液を得た。重合体溶液の残存モノマーの総量を測定したところ2.5質量%で多かった。
【0050】
<比較例3>
反応温度を70℃、重合開始剤をt−ブチルパーオキシピバレート(重合開始剤、日油社製、パーブチル(登録商標)PV:10時間半減期温度55℃)で量を8.4gに変更した以外は、実施例1と同様に反応を行い、重量平均分子量15,000、固形分酸価180KOHmg/gのカルボキシル基含有樹脂重合体溶液を得た。同様の反応を再度行ったところ、重量平均分子量は20,000で分子量の再現性は無かった。
なお、上記実施例1〜3及び7は参考例である。
【0051】
以上の実施例及び比較例の結果を表に示す。
【表1】