【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は置換シンナムアミド誘導体の新規な使用に関する。
【0014】
具体的には、本発明は、抗不安薬の製造における置換シンナムアミド誘導体の使用を提供する。
【0015】
ここで、前記不安とは、慢性不安(全般性不安障害)または急性不安(パニック発作、パニック障害)を意味する。
【0016】
前記置換シンナムアミド誘導体は、式Iの構造の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を薬物活性成分としており、具体的には、以下の通りである。
【0017】
【化1】
【0018】
式中、
R
1は、−H、−OH、−F、−Cl、−Br、−I、−OCH
3、−OCF
3、−OCHF
2、−OCH
2F、−CF
3、−CHF
2、−CH
2F、−CH
3、−CH
3CH
2、−CF
3CH
2、−CN、−NO
2、−NH
2または−COOR
5であり、
R
2は、H、C
1−C
10直鎖炭化水素基、C
3−C
10分岐炭化水素基、C
3−C
10環状炭化水素基、C
1−C
10ヒドロキシアルキル基またはN−置換ピペラジン誘導基であるか、あるいは、R
2は、隣接するXとピロリジン基、ピペリジン基またはヘキサメチレンイミン基を形成する基であり、
R
3またはR
4は、それぞれ独立に、H、OH、OR
5、F、Cl、Br、I、C
1−C
10直鎖炭化水素基、C
3−C
10分岐炭化水素基、CF
3、CHF
2、CH
2F、NO
2、NH
2、OCF
3、OCHF
2、OCH
2F、OOCR
5またはCOOR
5であり、
あるいは、R
3とR
4は互いに結合して−OCH
2O−、−OCH
2CH
2O−を形成し、
ここで、R
5は、C
1−C
10直鎖炭化水素基、C
3−C
10分岐炭化水素基、C
3−C
10環状炭化水素基、C
1−C
10ヒドロキシアルキル基であり、
nは、1、2または3であり、−(C
2−C
3)
n−単位は、一つの炭素−炭素単結合または一つの炭素−炭素二重結合を少なくとも含んでおり、
Xは、=O、=S、H、SHまたはSR
6であり、
Yは、NもしくはNR
6、OまたはSであり、
R
6は、H、C
1−C
10直鎖炭化水素、C
3−C
10分岐炭化水素、C
3−C
10環状炭化水素またはC
6−C
10芳香族炭化水素である。
【0019】
好ましくは、前記置換シンナムアミド誘導体は式IIに表される。
【0020】
【化2】
【0021】
ここで、
R
1は、−H、−OH、−F、−Cl、−Br、−I、−OCH
3、−OCF
3、−OCHF
2、−OCH
2F、−CF
3、−CHF
2、−CH
2F、−CH
3、−CH
3CH
2、−CF
3CH
2、−CN、−NO
2、−NH
2または−COOR
5であり、
R
2は、H、C
1−C
10直鎖炭化水素、C
3−C
10分岐炭化水素、C
3−C
10環状炭化水素、C
6−C
10芳香族炭化水素、C
1−C
10アルキルアルコールまたはN−置換ピペラジン誘導体であるか、あるいは、R
2は、隣接するXとピロリジン基、ピペリジン基またはヘキサメチレンイミン基を形成する基であり、
R
5は、C
1−C
10直鎖炭化水素基、C
3−C
10分岐炭化水素基、C
3−C
10環状炭化水素基、C
1−C
10ヒドロキシアルキル基であり、
nは、1、2または3であり、−(C
2−C
3)
n−単位は、一つの炭素−炭素単結合または一つの炭素−炭素二重結合を少なくとも含んでおり、
Xは、=O、=S、H、SHまたはSR
6であり、
Yは、NもしくはNR
6、OまたはSであり、ここで、R
6は、H、C
1−C
10直鎖炭化水素、C
3−C
10分岐炭化水素、C
3−C
10環状炭化水素またはC
6−C
10芳香族炭化水素である。
【0022】
あるいは、好ましくは、前記置換シンナムアミド誘導体は、式IIIに表される。
【0023】
【化3】
【0024】
ここで、
R
3は、H、OH、OR
5、F、Cl、Br、I、C
1−C
10直鎖炭化水素基、C
3−C
10分岐炭化水素基、CF
3、CHF
2、CH
2F、NO
2、NH
2、OCF
3、OCHF
2、OCH
2F、OOCR
5またはCOOR
5であり、
R
4は、H、OH、OR
5、F、Cl、Br、I、C
1−C
10直鎖炭化水素基、C
3−C
10分岐炭化水素基、CF
3、CHF
2、CH
2F、NO
2、NH
2、OCF
3、OCHF
2、OCH
2F、OOCR
5またはCOOR
5であり、
R
5は、C
1−C
10直鎖炭化水素基、C
3−C
10分岐炭化水素基、C
3−C
10環状炭化水素基、C
1−C
10ヒドロキシアルキル基であり、
nは、1、2または3であり、−(C
2−C
3)
n−単位は、一つの炭素−炭素単結合または一つの炭素−炭素二重結合を少なくとも含んでおり、
Xは、NもしくはNHであり、
R
2は、H、C
1−C
10直鎖炭化水素、C
3−C
10分岐炭化水素、C
3−C
10環状炭化水素、C
6−C
10芳香族炭化水素、C
1−C
10アルキルアルコールまたはN−置換ピペラジン誘導体であるか、あるいは、R
2は、隣接するXとピロリジン基、ピペリジン基またはヘキサメチレンイミン基を形成する基である。
【0025】
本発明の化合物またはその薬学的に許容可能な酸付加塩は、特に好ましくは以下の化合物である。
【0026】
5’−ヨード−3’,4’−メチレンジオキシ桂皮酸イソブチルアミド(II−3)
【0027】
【化4】
【0028】
5’−クロロ−3’,4’−メチレンジオキシ桂皮酸イソブチルアミド(II−4)
【0029】
【化5】
【0030】
5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシ桂皮酸イソブチルアミド(II−5)
【0031】
【化6】
【0032】
5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシ桂皮酸ピペリジンアミド(II−10)
【0033】
【化7】
【0034】
3−(5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシフェニル)−プロピオン酸イソブチルアミド(II−11)
【0035】
【化8】
【0036】
5−トリフルオロメチル−3,4−メチレンジオキシ安息香酸イソブチルアミド(II−12)
【0037】
【化9】
【0038】
(E)−N−(4−メチルピペラジン)−5−(5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシフェニル)−1−ペンテンアミド塩酸塩(II−13)
【0039】
【化10】
【0040】
(2E,4E)−N−イソブチル−7−(5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシフェニル)−2,4−ヘプタジエンアミド(II−14)
【0041】
【化11】
【0042】
(2E,4E)−N−(4−メチルピペラジン)−7−(5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシフェニル)−2,4−ヘプタジエンアミド塩酸塩(II−15)
【0043】
【化12】
【0044】
N−メチル−(5’−トリフルオロメチル−3’,4’−メチレンジオキシ)−アンフェタミン塩酸塩(II−16)
【0045】
【化13】
【0046】
3’,4’−ジメトキシ−5’−トリフルオロメチル−桂皮酸イソブチルアミド(III−2)
【0047】
【化14】
【0048】
3’−ヒドロキシ−4’−メトキシ−5’−トリフルオロメチル−桂皮酸イソブチルアミド(III−4)
【0049】
【化15】
【0050】
3’,4’−ジヒドロキシ−5’−トリフルオロメチル−桂皮酸イソブチルアミド(III−7)
【0051】
【化16】
【0052】
3’,4’−ジヒドロキシ−5’−トリフルオロメチル−シンナミルピペリジン(III−9)
【0053】
【化17】
【0054】
3−(3’,4’−ジヒドロキシ−5’−トリフルオロメチルフェニル)−プロピオン酸イソブチルアミド(III−10)
【0055】
【化18】
【0056】
3,4−ジヒドロキシ−5−トリフルオロメチル−安息香酸イソブチルアミド(III−11)
【0057】
【化19】
【0058】
5−(5’−トリフルオロメチル−3’,4’−ジメトキシフェニル)ペンタジエン酸イソブチルアミド(III−13)
【0059】
【化20】
【0060】
本発明に係る使用において、前記薬物は、本発明の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を含有する薬物組成物であってもよく、いずれか一種の薬学的に許容可能な剤形に製造されてもよく、これらの剤形は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、丸剤、散剤、ペースト剤、ペレット、粉剤、溶液剤、注射剤、坐剤、噴霧剤、滴剤、貼布剤を含む。
【0061】
本発明の薬物組成物において、その経口投与の製剤は、通常用いられる賦形剤を含有してもよく、例えば、接着剤、充填剤、希釈剤、錠剤圧縮剤、潤滑剤、崩壊剤、着色剤、調味剤および湿潤剤である。適用される充填剤は、デンプン、スクロース、セルロース、マンニトール、ラクトースおよびその他の類似の充填剤を含む。好適な崩壊剤は、デンプン、ポリゼニルピロリドンおよびデンプン誘導体を含み、例えば、デンプングリコール酸ナトリウムである。好適な潤滑剤は、例えば、ステアリン酸マグネシウムを含む。混合、充填、打錠等の通常用いられる方法によって経口固形組成物を製造できる。繰り返し混合することで、大量の充填剤を使用するそれらの組成物全体に活性物質を分布させることができ、通常用いられる補助材料の成分は、マンニトール、ソルビトール、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、塩酸システイン、メルカプト酢酸、メチオニン、ビタミンC、EDTA二ナトリウム、EDTAカルシウムナトリウム、一価アルカリ金属の炭酸塩、酢酸塩、リン酸塩またはそれらの水溶液、塩酸、酢酸、硫酸、リン酸、アミノ酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、乳酸ナトリウム、キシリトール、マルトース、グルコース、フルクトース、デキストラン、グリシン、デンプン、スクロース、ラクトース、マンニトール、ケイ素誘導体、セルロースおよびそれらの誘導体、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリゼニルピロリドン、グリセリン、ツイーン80、寒天、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、界面活性剤、ポリエチレングリコール、シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、リン脂質系材料、カオリン、タルカムパウダー、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等を含む。
【0062】
本発明の製剤は、使用する際に、状況に応じて用法および用量を決定し、日につき1〜5回服用してもよい。
【0063】
本発明により提供される置換シンナムアミド誘導体の新規な使用は、以下の長所を有する。
【0064】
第一に、発明者は、本発明により提供される化合物が不安障害を改善できることを発見し、かつ該誘導体が血液脳関門を迅速に透過でき、薬効が早く表れるという特徴を有することを発見した。同時に、不安による睡眠障害に対しても比較的明らかな改善作用を有する。
【0065】
第二に、動物の自律活動評価により、本発明により提供される化合物の抗不安活性は、化合物による動物の活動度に対する抑制作用の派生的な結果でないことが実証された。また、5g/kgの剤量で該化合物を強制服用させても、動物に明らかな不良反応が見られないことから、その安全性が高く、耐性が良好であることを示した。
【0066】
第三に、従来の中枢ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、ジアゼパムのような鎮静、筋弛緩等の副作用を有するので、その臨床における使用が制限されていた。
【0067】
ウェスタン−ブロット技術を用いて関連する遺伝子の発現変化を測定することにより、本発明に係る17種類の化合物がマイトファジーに関連する遺伝子の発現を調整でき、末梢型ベンゾジアゼピン受容体の結合性配位子である可能性を発見した。末梢型ベンゾジアゼピン受容体と本発明に係る化合物の結合後に、ミトコンドリアを刺激してステロイドを分泌し、生物学的挙動を調整して、明らかな抗不安作用を表すことができ、かつ鎮静、筋肉弛緩等の副作用がない。
【0068】
したがって、従来の中枢ベンゾジアゼピン系抗不安薬に比べ、本発明に係る化合物は、薬効が早く現れ、副反応が少なく、かつ耐性が生じ難い等の利点を有し得る。