(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジンを動力源とする鞍乗型ハイブリッド車両のパフォーマンスは、エンジンに依存することが多い。しかし、エンジンを動力源とする鞍乗型ハイブリッド車両であっても、車両走行用モータによるハイブリッド動作は、バッテリの種類にも影響を受ける。即ち、鞍乗型ハイブリッド車両のパフォーマンスは、バッテリの種類によって異なる。
【0005】
鞍乗型車両のエンジンを交換することは困難である。これに対し、鞍乗型車両のバッテリを交換することは比較的容易である。特に現在、鞍乗型車両に搭載するバッテリとして、様々な種類及び容量のバッテリが発売されており、各バッテリの性能も進化している。ここで、エンジンを含めた鞍乗型車両の車体は、例えば搭載されるバッテリの種類に関わらず共通設計とすることが望まれている。そのような要望に応えるためには、当該鞍乗型ハイブリッド車両は、様々な種類のバッテリを使用できるように設計される必要が生じる。従って、鞍乗型ハイブリッド車両は、様々な種類のバッテリが搭載されたとしても、搭載されたバッテリの種類に応じた動作が可能であることが望まれる。
本発明の目的は、搭載されたバッテリの種類に応じた動作が可能な鞍乗型車両を提供することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鞍乗型車両に、今まで当該鞍乗型車両に搭載されていたバッテリと異なる種類のバッテリを搭載することについて詳細に検討した。この結果、本発明者らは、次のことが分かった。
例えば、鞍乗型車両に新たな種類のバッテリを追加の副バッテリとして搭載することが考えられる。副バッテリを搭載する場合、鞍乗型車両に副バッテリを搭載する追加スペースを設けることが必要となる。しかし、鞍乗型車両は小型化及び軽量化されることが望ましい。従って、1つの小型バッテリが搭載された鞍乗型車両において、当該小型バッテリと種類の異なる別のバッテリが搭載される場合には、当該小型バッテリと当該別のバッテリとが交換されることが好ましい。
【0007】
鞍乗型車両に搭載可能なバッテリは、小型であるため寿命が短くなりやすい。特に、ハイブリッド動作が可能な鞍乗型車両においては、ハイブリッド動作はバッテリを消耗させやすい。このため、種類の異なる交換後のバッテリを交換前のバッテリと同じ方法で使用した場合、急速にバッテリを劣化させてしまう場合がある。そこで、鞍乗型車両に搭載するバッテリを種類の異なるバッテリに交換する場合でも、バッテリを長寿命化させることが望まれる。
【0008】
本発明者らは、鞍乗型車両のバッテリを交換した場合のバッテリの使用について詳細に検討した。この検討の中で、本発明者らは、鞍乗型車両のバッテリの識別情報をバッテリから受信し、受信したバッテリの識別情報と、鞍乗型車両に予め記憶されたバッテリの識別に関する内部情報との関係が所定の関係を満たすか否かにより、ハイブリッド動作を制御することを検討した。具体的な一実施形態では、鞍乗型車両のハイブリッド制御装置が、バッテリの識別情報を受信の可否、及び/又は受信したバッテリの識別情報と、鞍乗型車両に予め記憶されバッテリの識別に関する内部情報との一致の可否に応じて、バッテリに対する負担を変更するように、ハイブリッド動作を制御する。これにより、交換したバッテリを劣化させることなく、バッテリの種類に応じたハイブリッド動作が可能になることが分かった。
以上の知見に基づいて完成した本発明の鞍乗型車両は、次の構成を備える。
【0009】
(1) 鞍乗型車両であって、
前記鞍乗型車両は、
回転するクランクシャフトを有し、ガスの燃焼によって生じるパワーを前記クランクシャフトを介して出力するエンジンと、
前記クランクシャフトと連動するように設けられ、前記クランクシャフトに駆動され発電及び回生をするとともに、電力の供給を受けて前記クランクシャフトを介してパワーを出力する回転電機と、
前記回転電機との間で電力を伝送する電力線が接続され、前記クランクシャフトによって前記回転電機が駆動される場合に前記回転電機で発電された電力を蓄え、蓄えた電力を前記回転電機によって前記クランクシャフトが駆動される場合に回転電機に供給するバッテリと、
前記エンジンの前記クランクシャフトと機械的に接続され、少なくとも前記エンジンから出力されたパワーによって駆動される駆動輪と、
前記バッテリから前記バッテリの識別情報を受信する、前記電力線とは異なる情報伝送線と接続され、
前記バッテリの識別に関する内部情報を記憶する記憶部を備え、
前記識別情報と前記内部情報との関係に応じて、下記(a)から(c)までの動作のうち少なくとも一つの動作での前記バッテリに対する負担を変更するように、前記エンジン及び前記回転電機を制御し、
前記動作の各々は、
(a)前記鞍乗型車両の走行中に前記バッテリに蓄えた電力を前記回転電機に供給することによって前記回転電機に、前記エンジンからのパワーが出力された前記クランクシャフトを介してパワーを追加させる走行アシスト動作、
(b)前記鞍乗型車両の走行中に前記回転電機が前記クランクシャフトを介して前記駆動輪に駆動されることによって発電された電力を、前記バッテリに蓄える回生動作、及び、
(c)前記鞍乗型車両の走行中且つ前記エンジンの燃焼動作が停止中に前記バッテリに蓄えた電力を前記回転電機に供給することによって前記回転電機に前記クランクシャフトを介してパワーを追加させる電気走行動作である、
ハイブリッド制御装置と
を備える。
【0010】
(1)の鞍乗型車両によれば、鞍乗型車両に搭載されたバッテリの種類に応じて、バッテリに対する負担を変更しながら、走行アシスト動作、回生動作、及び電気走行動作の少なくとも一つの動作でのエンジン及び回転電機を制御できる。従って、鞍乗型車両は、バッテリを交換した場合においても、バッテリの劣化を抑制しつつ、搭載されたバッテリの種類に応じたハイブリッド動作が可能になる。
【0011】
本発明の一つの観点によれば、鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(2) (1)の鞍乗型車両であって、
前記ハイブリッド制御装置は、前記識別情報が検出されない場合、又は前記識別情報が前記内部情報に適合しない場合に、前記識別情報が前記内部情報に適合した場合と比べて、前記(a)から(c)までの動作のうち少なくとも一つの動作での前記バッテリに対する負担を減少させるように、前記エンジン及び前記回転電機を制御する。
【0012】
(2)の鞍乗型車両によれば、ハイブリッド制御装置は、識別情報が検出されない場合、又は識別情報が内部情報に適合しない場合に、識別情報が内部情報に適合した場合と比べて、バッテリに対する負担を減少させるようにハイブリッド動作を制御する。これにより、鞍乗型車両のハイブリッド制御装置は、搭載されたバッテリの劣化を抑制しながら、バッテリの種類に応じたハイブリッド動作が可能となる。
【0013】
本発明の一つの観点によれば、鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(3) (2)の鞍乗型車両であって、
前記ハイブリッド制御装置は、前記識別情報が検出されない場合、又は前記識別情報が前記内部情報に適合しない場合に、前記識別情報が前記内部情報に適合した場合と比べて、前記(a)から(c)までの動作のうち少なくとも一つの動作中に前記電力線から検出される電流を減少させるように、前記エンジン及び前記回転電機を制御する。
【0014】
(3)の鞍乗型車両によれば、ハイブリッド制御装置は、識別情報が検出されない場合、又は識別情報が内部情報に適合しない場合に、識別情報が内部情報に適合した場合よりも、電力線から検出される電流を減少させるようにハイブリッド動作を制御する。これにより、鞍乗型車両のハイブリッド制御装置は、搭載されたバッテリに対する負担を減少させることができ、バッテリの劣化を抑制することができる。
【0015】
本発明の一つの観点によれば、鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(4) (2)の鞍乗型車両であって、
前記ハイブリッド制御装置は、前記識別情報が検出されない場合、又は前記識別情報が前記内部情報に適合しない場合に、前記識別情報が前記内部情報に適合した場合と比べて、前記(a)から(c)までの動作のうち少なくとも一つの動作中に前記電力線から検出される電圧の範囲が狭くなるように、前記エンジン及び前記回転電機を制御する。
【0016】
(4)の鞍乗型車両によれば、ハイブリッド制御装置は、前記識別情報が検出されない場合、又は識別情報が内部情報に適合しない場合に、識別情報が内部情報に適合した場合よりも、電力線から検出される電圧の範囲を狭くするようにハイブリッド動作を制御する。これにより、鞍乗型車両のハイブリッド制御装置は、搭載されたバッテリに対する負担を減少させることができ、バッテリの劣化を抑制することができる。
【0017】
本発明の一つの観点によれば、鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(5) (2)の鞍乗型車両であって、
前記ハイブリッド制御装置は、前記識別情報が検出されない場合、又は前記識別情報が前記内部情報に適合しない場合に、前記識別情報が前記内部情報に適合した場合と比べて、前記(a)から(c)までの動作のうち少なくとも一つの動作に起因するバッテリ温度の変化が小さくなるように前記エンジン及び前記回転電機を制御する。
【0018】
(5)の鞍乗型車両によれば、ハイブリッド制御装置は、識別情報が検出されない場合、又は識別情報が内部情報に適合しない場合に、識別情報が内部情報に適合した場合よりも、バッテリから検出される温度の範囲が狭くなるようにハイブリッド動作を制御する。これにより、鞍乗型車両のハイブリッド制御装置は、搭載されたバッテリに対する負担を減少させることができ、バッテリの劣化を抑制することができる。
【0019】
本発明の一つの観点によれば、鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(6) (1)の鞍乗型車両であって、
前記ハイブリッド制御装置は、前記識別情報が前記内部情報に適合した場合に、前記バッテリを標準バッテリと判別し、前記(a)から(c)までの動作のうち少なくとも一つの動作での前記エンジン及び前記回転電機を制御する。
【0020】
(6)のハイブリッド制御装置は、識別情報が前記内部情報に適合した場合に、バッテリを標準バッテリと判別する。詳細には、ハイブリッド制御装置は、例えば鞍乗型車両の標準仕様のバッテリとしてリチウムイオンバッテリを識別する。そして、ハイブリッド制御装置は、標準仕様のバッテリとしてのリチウムイオンバッテリの充電容量に対応した、(a)から(c)までの動作のうち少なくとも一つの動作でのエンジン及び回転電機を制御することができる。リチウムイオンバッテリは、例えば同じ体積の鉛バッテリよりも充電容量が大きい。このため、鞍乗型ハイブリッド車両は、例えば、リチウムイオンバッテリを標準仕様のバッテリとすることにより、鞍乗型ハイブリッド車両のパフォーマンスを向上させることができる。鞍乗型ハイブリッド車両は、エンジンのパワーのみで走行する車両よりも、頻繁にバッテリの電力を使用及び貯蔵するからである。これに対し、ハイブリッド制御装置は、識別情報が検出されない場合、及び識別情報が前記内部情報に適合しない場合でも、バッテリに対する負担を減少させるように、(a)から(c)までのハイブリッド動作のうち少なくとも一つの動作でのエンジン及び回転電機を制御できる。従って、(6)の鞍乗型車両は、リチウムイオンバッテリを含む複数種類のバッテリに応じた機能を発揮することができる。
【0021】
本発明の一つの観点によれば、鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(7) (6)の鞍乗型車両であって、
前記ハイブリッド制御装置は、前記識別情報が前記内部情報に適合した場合に、前記バッテリの満充電に対応する満充電量を4つの充電領域に等分割した場合における最も高い充電領域に対応する第1の充電領域から数えて第2の充電領域及び第3の充電領域を充電量の目標として前記バッテリを充電する。
【0022】
リチウムイオンバッテリは、満充電状態を避けて充電することによって長寿命化する。(7)の鞍乗型車両では、識別情報が内部情報に適合した場合に、ハイブリッド制御装置が、第2の充電領域及び第3の充電領域を充電量の目標として搭載されたバッテリを充電する。従って、リチウムイオンバッテリを長寿命化することができる。
【0023】
本発明の一つの観点によれば、鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(8) (2)の鞍乗型車両であって、
前記ハイブリッド制御装置は、前記識別情報が検出されない場合、又は前記識別情報が前記内部情報に適合しない場合に、前記バッテリの充電電圧の目標値を一定の値として、前記バッテリを充電する。
【0024】
(8)の鞍乗型車両では、識別情報が検出されない場合、又は識別情報が内部情報に適合しない場合に、ハイブリッド制御装置が、充電電圧の目標値を一定の値として、搭載されたバッテリを充電する。例えば鉛バッテリは、満充電状態で充電することによって容量を有効活用することができる。またリチウムイオンバッテリであっても、鉛バッテリの満充電に対応する満充電電圧で充電することは可能である。従って、(8)の鞍乗型車両では、識別情報が検出されない場合、又は識別情報が内部情報に適合しない場合に、例えば一定の値を鉛バッテリの満充電電圧を充電電圧の目標値と設定して、搭載されたバッテリを充電する。従って、例えば鉛バッテリであっても容量を有効活用することができる。
【0025】
本発明の一つの観点によれば、鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(9) (1)乃至(8)のいずれか1つの鞍乗型車両であって、
前記ハイブリッド制御装置は、前記情報伝送線を介し前記バッテリとデータ通信を行うことによって、前記バッテリの前記識別情報を受信する。
【0026】
(9)の鞍乗型車両では、バッテリの識別情報の受信をより精密に行うことができる。従って、(9)の鞍乗型車両は、バッテリの種類により精密に適したバッテリの制御を行うことができる。
【0027】
本発明の一つの観点によれば、鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(10) (1)乃至(8)のいずれか1つの鞍乗型車両であって、
前記バッテリに対し、前記情報伝送線の電気的な接続を行う電気コネクタをさらに備え、
前記バッテリは、前記鞍乗型車両に対し交換可能に設けられている。
【0028】
(10)の鞍乗型車両では、バッテリが交換可能に設けられており、前記情報伝送線の電気的な接続を行う電気コネクタも備えられている。従って、バッテリを容易に交換することができる。バッテリが、異なる種類のバッテリに交換された場合でも、鞍乗型車両はバッテリの種類にバッテリに応じた機能を発揮することができる。
【0029】
本発明の一つの観点によれば、鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
(11) (10)の鞍乗型車両であって、
前記鞍乗型車両に対し交換可能なバッテリは、前記鞍乗型車両に搭載された前記バッテリと定格電圧が同一である。
【0030】
(11)の鞍乗型車両は、バッテリが、異なる種類のバッテリに交換された場合でも、バッテリの種類に応じた機能を発揮することができる。
【0031】
本明細書にて使用される専門用語は特定の実施例のみを定義する目的であって発明を制限する意図を有しない。本明細書にて使用される用語「及び/又は」は一つの、又は複数の関連した列挙された構成物のあらゆる又は全ての組み合わせを含む。本明細書中で使用される場合、用語「含む、備える(including)」「含む、備える(comprising)」又は「有する(having)」及びその変形の使用は、記載された特徴、工程、操作、要素、成分及び/又はそれらの等価物の存在を特定するが、ステップ、動作、要素、コンポーネント、及び/又はそれらのグループのうちの1つ又は複数を含むことができる。本明細書中で使用される場合、用語「取り付けられた」、「接続された」、「結合された」及び/又はそれらの等価物は広く使用され、直接的及び間接的な取り付け、接続及び結合の両方を包含する。さらに、「接続された」及び「結合された」は、物理的又は機械的な接続又は結合に限定されず、直接的又は間接的な電気的接続又は結合を含むことができる。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書に定義された用語のような用語は、関連する技術及び本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想的又は過度に形式的な意味で解釈されることはない。本発明の説明においては、多数の技術及び工程が開示されていると理解される。これらの各々は個別の利益を有し、それぞれは、他の開示された技術の1つ以上、又は、場合によっては全てと共に使用することもできる。従って、明確にするために、この説明は、不要に個々のステップの可能な組み合わせを全て繰り返すことを控える。それにもかかわらず、明細書及び特許請求の範囲は、そのような組み合わせが全て本発明及び請求項の範囲内にあることを理解して読まれるべきである。
本明細書では、新しい鞍乗型車両について説明する。以下の説明では、説明の目的で、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な詳細を述べる。しかしながら、当業者には、これらの特定の詳細なしに本発明を実施できることが明らかである。本開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面又は説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【0032】
エンジンは、例えば、単気筒エンジン及び2以上の気筒を有するエンジンを含む。
【0033】
回転電機は、磁石式でもよく、また巻線界磁式でもよい。回転電機は、アウターロータ型でもよく、インナーロータ型でもよい。また、回転電機は、ラジアルギャップ型でもよく、アキシャルギャップ型でもよい。
【0034】
「クランクシャフトと連動する」とは、クランクシャフトが回転する場合常に回転することを意味する。クランクシャフトと回転電機の回転速度は同一であることに限られない。例えば、クランクシャフトと回転電機の回転軸とは、ギアや巻掛伝動体を介して接続されてもよい。「クランクシャフトと連動する」ことは、クラッチを介することなく接続されていることを意味する。
【0035】
標準仕様のバッテリ(以下、標準バッテリ)とは、鞍乗型車両の製造者により、当該鞍乗型車両への使用に適しているとして、当該鞍乗型車両に使用することが指定されたバッテリである。標準バッテリでないバッテリは、標準仕様でないバッテリ(以下、標準外バッテリ)である。標準外バッテリとは、搭載する車両への使用が指定されていないバッテリである。
【0036】
バッテリの識別情報とは、バッテリを区別するための情報である。バッテリの識別情報は、例えば、バッテリの種類によって異なる。バッテリの識別情報は、例えば、搭載される車両での使用に適するバッテリ(標準バッテリ)と、搭載される車両での使用に適さないバッテリ(標準外バッテリ)とで異なる。また、バッテリの識別情報は、例えば、バッテリの型番により異なっていてもよい。バッテリの種類とは、例えば、バッテリの化学反応の種類、バッテリの定格電圧の種類、バッテリの容量の種類及びバッテリの内部構造の種類である。バッテリの識別情報は、必ずしも、バッテリの個体を識別するために各バッテリに割り振られる固有の識別情報(例えばシリアルナンバー)に限定されないが、当該固有の識別情報が、バッテリの識別情報として用いられてもよい。
【0037】
バッテリの識別に関する内部情報とは、例えば、車両に搭載されたバッテリが、その車両への使用に適しているバッテリであるかを照合するためのデータである。具体的な一例として、ある車両に搭載されたバッテリの識別情報と、その車両のバッテリの識別に関する内部情報とが、予め定められた条件を満たす場合に、そのバッテリは標準バッテリであると判断される。例えば、当該識別情報と当該内部情報とが一致する場合、ハイブリッド制御装置は、そのバッテリが標準バッテリであると判断する。また、バッテリの識別に関する内部情報とは、例えば、車両の制御装置に内蔵されたプログラムの一部である。より詳細には、バッテリの識別に関する内部情報とは、バッテリの識別情報の内容を分岐としたプログラム処理の分岐である。バッテリの識別の関する内部情報は、鞍乗型車両に搭載された記憶部に予め記憶されている。ここでいう「予め」とは、バッテリから取得された識別情報と当該内部情報との関係がハイブリッド制御装置によって判定される時点よりも前の時間をいう。内部情報は、外部から入力される指示に基づいて変更又は更新等されてもよい。
【0038】
識別情報が内部情報に適合するとは、例えば、識別情報と内部情報とが一致することである。また、識別情報が内部情報に適合するとは、例えば、識別情報が、内部情報に含まれることである。また、識別情報が内部情報に適合するとは、例えば、内部情報を使用して識別情報を判別した時に、識別情報が車両への使用に適していると判断されることである。
【0039】
識別情報が検出されない場合とは、バッテリがBMS(バッテリマネージメントシステム)を有していない場合である。また、識別情報が検出されない場合とは、ハイブリッド制御装置のコントロールユニットがバッテリのBMSと特定の通信プロトコルによりデータ通信を行った時に、BMSに記憶されたバッテリの識別情報を、情報伝送線を介してコントロールユニットで読み取るこができないことをいう。識別情報が内部情報に適合しないとは、例えば、車両の制御装置が、識別情報と内部情報とが一致しないことである。また、識別情報が内部情報に適合しないとは、例えば、識別情報が、内部情報に含まれないことである。また、識別情報が内部情報に適合しないとは、例えば、内部情報を使用して識別情報を判別した時に、識別情報が車両への使用に適していないと判断されることである。
【0040】
識別情報の受信は、例えば、ハイブリッド制御装置のコントロールユニットが特定の通信プロトコルを使用してバッテリのBMSとデータ通信を行い、BMSからの情報を、情報伝送線を介してコントロールユニットで読み取ることにより実施される。また、識別情報の受信は、バッテリに設けられたピンにより、バッテリのセル電圧を検出することにより行ってもよい。
【0041】
バッテリ状態は、バッテリ自身の充電状態に関連する情報である。バッテリ状態は、鞍乗型車両の走行に伴って変化し得る情報である。バッテリ状態はバッテリの制御に用いられる情報である。より詳細には、バッテリ状態は、例えば、バッテリの電圧、電流、温度及び充電状態である。なお、識別情報は、鞍乗型車両の走行に伴って変化し得る情報ではなく、バッテリ状態と区別される。バッテリ状態の検出は、例えば、ハイブリッド制御装置のコントロールユニットが特定の通信プロトコルを使用してバッテリのBMSとデータ通信を行い、BMSからの情報を、情報伝送線を介してコントロールユニットで読み取ることにより実施される。バッテリ状態の検出は、これに限られず、ハイブリッド制御装置が接続コネクタを介してバッテリと接続された場合に、ハイブリッド制御装置が端子の電圧を検出することによって、バッテリ状態を検出する。
【0042】
バッテリに対する負担(Burden for Battery)とは、例えば、バッテリへの充電及びバッテリからの放電を示す。バッテリに対する負担が増加すると、バッテリの劣化を早める。例えば、バッテリに対する頻繁な充放電、広範囲なバッテリ温度での使用、広範囲なバッテリ電圧での使用、及び、入出力可能電流を超えた範囲による使用によりバッテリに対する負担が増加する。
【0043】
鞍乗型車両(straddle vehicle)とは、運転者がサドルに跨って着座する形式の車両をいう。鞍乗型車両としては、例えば、スクータ型、モペット型、オフロード型、オンロード型の自動二輪車が挙げられる。また、鞍乗型車両としては、自動二輪車に限定されず、例えば、自動三輪車であってもよい。自動三輪車は、2つの前輪と1つの後輪とを備えていてもよく、1つの前輪と2つの後輪とを備えていてもよい。
駆動輪は、後輪であってもよく、前輪であってもよい。また、駆動輪は、後輪及び前輪の双方であってもよい。
【0044】
ハイブリッド制御装置は、プログラムを実行するプロセッサを有していてもよく、また、電子回路でもよい。
【0045】
発電とは、エンジンから出力されるパワーにより回転電機を駆動して、電力を得ることである。回生とは、駆動輪によりクランクシャフトを介して回転電機が駆動されて生じる発電によるバッテリの充電である。
【発明の効果】
【0046】
本発明の鞍乗型車両によれば、鞍乗型車両に搭載されたバッテリの種類に応じて、バッテリに対する負担を変更しながら、ハイブリッド動作を制御できる。従って、鞍乗型車両は、バッテリを交換した場合においても、バッテリの劣化を抑制しつつ、搭載されたバッテリの種類に応じたハイブリッド動作が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明を、好ましい実施形態に基づいて図面を参照しつつ説明する。
【0049】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る鞍乗型車両1(以降、単に車両とも称する)を示す外観図である。車両1は、例えば、鞍乗型ハイブリッド車両である。車両1は、さらに詳細には、例えば、自動2輪車である。
図1に示す車両1は、
図1のパート(a)に示す通り、車体2と、ステアリングハンドル8と、前輪3aと、後輪3bとを備える。ステアリングハンドル8は、車体2に回転可能に取り付けられている。ステアリングハンドル8は、アクセルグリップ8aを備えている。前輪3a及び後輪3bは、車体2に回転可能に取り付けられている。後輪3bは、駆動輪である。
【0050】
車両1は、エンジンユニットEUと、バッテリ4と、クラッチ9とを備える。エンジンユニットEUは、車体2に搭載されている。エンジンユニットEUは、エンジン10と、回転電機20と、変速装置30と、ハイブリッド制御装置60とを備える。エンジン10は、回転するクランクシャフト15を有する。エンジン10は、ガスの燃焼によって生じるパワーをクランクシャフト15のトルク及び回転速度として出力する。回転電機20は、クランクシャフト15と連動するよう設けられる。回転電機20は、クランクシャフト15に駆動され発電及び回生するとともに、電力の供給を受けてクランクシャフト15を介してパワーを出力する。
【0051】
バッテリ4は、回転電機20とインバータ61を介して電力線51により接続されている。すなわち、バッテリ4は回転電機20と電力線51により接続されている。電力線51は、バッテリ4と回転電機20との間で電力を伝送する。バッテリ4は、クランクシャフト15によって回転電機20が駆動される場合に、回転電機20で発電及び回生された電力を蓄える。また、バッテリ4は、回転電機20によってクランクシャフト15が駆動される場合に、蓄えた電力を回転電機20に供給する。
【0052】
バッテリ4は、車体2に着脱可能に取り付けられている。バッテリ4は、他のバッテリ(本実施形態では交換用バッテリ5)と交換可能である。バッテリ4は、交換前のバッテリである。バッテリ4は、車両1の標準バッテリである。
バッテリ4は、BMS(バッテリマネージメントシステム)4aを備える。BMS4aは、バッテリ4の識別情報を有している。BMS4aは、バッテリ4の電圧、電流、温度及び充電状態等のバッテリ状態を取得する。BMS4aは、バッテリ4のバッテリ状態に基づいてバッテリ4を監視し、過充電及び過放電を抑制する。BMS4aは、ハイブリッド制御装置60に、バッテリ4の識別情報及びバッテリ状態を送信する。
【0053】
クラッチ9は、変速装置30を介してエンジン10が有するクランクシャフト15の回転力を後輪3bへ伝達する伝達状態と、回転力を遮断する遮断状態とを切り替える。
車両1は、メインスイッチ6aを備えている。メインスイッチ6aは、車両1の各部に電力を供給するためのスイッチである。車両1は、スタータスイッチ6bを備えている。スタータスイッチ6bは、エンジン10を始動するためのスイッチである。
【0054】
車両1は、エンジン10、及び必要に応じて回転電機20によって駆動される。すなわち、車両1は、エンジン10からのパワーに、回転電機20からのパワーを追加させる走行アシスト動作を行う、パラレル方式のハイブリッド車両である。具体的には、車両1は、変速装置30及びクラッチ9を介してエンジン10及び回転電機20の回転パワーを後輪3bが受けることによって駆動される。駆動輪である後輪3bは、エンジン10のクランクシャフト15と機械的に接続され、少なくともエンジン10から出力されたパワーによって駆動される。エンジン10及び回転電機20の回転パワーは、車両1の運転者の手によってアクセルグリップ8aを操作することにより、調整される。
【0055】
アクセルグリップ8aは、車両1の加速及び制動を指示するためのアクセル操作子である。すなわち、アクセルグリップ8aは、エンジン及び回転電機駆動用アクセルグリップである。アクセルグリップ8aは、回転角度センサにより構成される検出部8bを有している。
【0056】
ハイブリッド制御装置60は、下記(i)及び(ii)の動作のうち少なくとも一つの動作でのエンジン10及び回転電機20を制御する。
(i)車両1の走行中に、バッテリ4に蓄えた電力を回転電機20に供給することによって、回転電機20に、エンジン10からのパワーが出力されたクランクシャフト15を介してパワーを追加させる、走行アシスト動作。
(ii)車両1の走行中に、回転電機20がクランクシャフト15を介して後輪3bにより駆動されることによって発電された電力を、バッテリ4に蓄える回生動作。
【0057】
ハイブリッド制御装置60は、コントロールユニットを有している。ハイブリッド制御装置60は、バッテリ4のBMS4aから、バッテリ4の識別情報及びバッテリ状態を受信するための情報伝送線52を備えている。情報伝送線52は、ハイブリッド制御装置60とバッテリ4とを接続する。ハイブリッド制御装置60のコントロールユニットは、バッテリ4のBMS4aから情報伝送線52を介してバッテリ4の識別情報及びバッテリ状態を受信する。
【0058】
ハイブリッド制御装置60は、バッテリの識別に関する内部情報を記憶する記憶部を備える。ハイブリッド制御装置60は、バッテリ4のBMS4aから受信したバッテリ4の識別情報と内部情報との照合を行う。バッテリ4の識別情報と内部情報との照合の結果、バッテリ4の識別情報が内部情報に適合している場合、ハイブリッド制御装置60は、バッテリ4を車両1の標準バッテリと認識する。
【0059】
図1のパート(b)は、車両1のバッテリ制御装置、バッテリ、インバータ、及び回転電機の構成を示すブロック図である。
図1のパート(b)には、バッテリ交換前の構成と交換後の構成が並んで示されている。
本実施形態において、上述した通り、車両1に備えられたバッテリ4は、交換用バッテリ5と交換可能である。交換用バッテリ5は、バッテリ4と同じ種類のバッテリ、又は異なる種類のバッテリである。交換用バッテリ5は、標準バッテリでない場合がある。交換用バッテリ5は、BMS5aを有している場合及び有していない場合がある。交換用の交換用バッテリ5がBMS5aを有していない場合、ハイブリッド制御装置60は、交換用バッテリ5から、交換用バッテリ5の識別情報を受信できない。交換用バッテリ5がBMS5aを有し、ハイブリッド制御装置60が交換用バッテリ5の識別情報を受信できる場合でも、交換用バッテリ5から受信した識別情報がバッテリの識別に関する内部情報に適合する場合及びしない場合がある。交換用バッテリ5がBMS5aを有しており、交換用バッテリ5の識別情報がバッテリの識別に関する内部情報に適合する場合、交換用バッテリ5は、標準バッテリである。交換用バッテリ5がBMS5aを有していない場合、交換用バッテリ5は、標準外バッテリである。ハイブリッド制御装置60のコントロールユニットが交換用バッテリ5の識別情報をデータ通信により受け取ることができない場合、交換用バッテリ5は、標準外バッテリである。また、ハイブリッド制御装置60のコントロールユニットが交換用バッテリ5の識別情報をデータ通信により受け取ったとしても、交換用バッテリ5の識別情報がバッテリの識別に関する内部情報に適合しない場合、交換用バッテリ5は、標準外バッテリである。
【0060】
ハイブリッド制御装置60は、交換用バッテリ5の識別情報と、車両1のバッテリに関する内部情報との関係に応じて、ハイブリッド動作での交換用バッテリ5に対する負担を変更するように、エンジン10及び回転電機20を制御する。本実施形態において、ハイブリッド動作は、上記(i)(アシスト)及び(ii)(回生)の動作のうち少なくとも一つの動作をいう。詳細には、交換用バッテリ5の識別情報と内部情報との照合の結果、交換用バッテリ5の識別情報が内部情報に適合した場合、ハイブリッド制御装置60は、交換用バッテリ5を車両1の標準バッテリであると認識する。交換用バッテリ5の識別情報と内部情報との照合の結果、交換用バッテリ5の識別情報が内部情報に適合しない場合、ハイブリッド制御装置60は、交換用バッテリ5を車両1の標準外バッテリであると認識する。
【0061】
図2は、
図1に示すエンジンユニットEUの概略構成を模式的に示す部分断面図である。
エンジン10は、クランクケース11と、シリンダ12と、ピストン13と、コネクティングロッド14と、クランクシャフト15とを備えている。ピストン13は、シリンダ12内に往復移動自在に設けられている。
【0062】
クランクシャフト15は、クランクケース11内に回転可能に設けられている。コネクティングロッド14は、ピストン13とクランクシャフト15とを接続している。シリンダ12の上部には、シリンダヘッド16が取り付けられている。シリンダ12とシリンダヘッド16とピストン13とは、燃焼室を形成する。クランクシャフト15は、クランクケース11に、一対のベアリング17を介して、回転自在な態様で支持されている。クランクシャフト15の第1の端部15aには、回転電機20が取り付けられている。クランクシャフト15の第2の端部15bには、変速装置30が取り付けられている。変速装置30は、例えば無段変速機(CVT)である。
【0063】
エンジン10には、スロットル弁SVと、燃料噴射装置18と、点火プラグ19とが設けられている。スロットル弁SVは、燃焼室に供給される空気の量を調整する。燃料噴射装置18は、燃料を噴射することによって、スロットル弁SVにより燃焼室に供給される空気に燃料を供給する。スロットル弁SVの開度及び燃料噴射装置18による燃料噴射量は、アクセルグリップ8a(
図1参照)の操作に応じて調整される。点火プラグ19は、燃焼室に供給される空気と燃料の混合気を燃焼させる。
【0064】
エンジン10は、内燃機関である。エンジン10は、燃料の供給を受ける。エンジン10は、燃料を燃焼する燃焼動作によって回転パワーを出力する。スロットル弁SVと燃料噴射装置18とは、供給される空気及び燃料の量を調整することによって、エンジン10から出力される回転パワーを調節する。スロットル弁SVと燃料噴射装置18とは、エンジン10から出力される回転パワーを調整する回転パワー調整装置として機能する。
【0065】
エンジン10は、クランクシャフト15を介して回転パワーを出力する。クランクシャフト15の回転パワーは、変速装置30及びクラッチ9(
図1参照)を介して、後輪3bに伝達される。車両1は、クランクシャフト15を介してエンジン10から出力される回転パワーを受ける後輪3bによって駆動される。
【0066】
図3は、
図2に示す回転電機20の回転軸線に垂直な断面を示す断面図である。
図2及び
図3を参照して回転電機20を説明する。
回転電機20は、モータ及び発電機として機能するモータ発電機である。
【0067】
回転電機20は、ロータ21と、ステータ22とを有する。本実施形態の回転電機20は、ラジアルギャップ型である。回転電機20は、アウターロータ型である。即ち、ロータ21はアウターロータである。ステータ22はインナーステータである。ロータ21は、ロータ本体部211を有する。ロータ本体部211は、例えば強磁性材料からなる。ロータ本体部211は、有底筒状を有する。ロータ本体部211は、筒状ボス部212と、円板状の底壁部213と、筒状のバックヨーク部214とを有する。底壁部213及びバックヨーク部214は一体的に形成されている。なお、底壁部213とバックヨーク部214とは別体に構成されていてもよい。底壁部213及びバックヨーク部214は筒状ボス部212を介してクランクシャフト15に固定されている。ロータ21には、電流が供給される巻線が設けられていない。
【0068】
ロータ21は、永久磁石部215を有する。ロータ21は、複数の磁極部216を有する。複数の磁極部216は永久磁石部215により形成されている。複数の磁極部216は、バックヨーク部214の内周面に、設けられている。本実施形態において、永久磁石部215は、複数の永久磁石を有する。複数の磁極部216は、複数の永久磁石のそれぞれに設けられている。
なお、永久磁石部215は、1つの環状の永久磁石によって形成されることも可能である。この場合、1つの永久磁石は、複数の磁極部216が内周面に並ぶように着磁される。
【0069】
複数の磁極部216は、回転電機20の周方向にN極とS極とが交互に配置されるように設けられている。本実施形態では、ステータ22と対向するロータ21の磁極数が24個である。ロータ21の磁極数とは、ステータ22と対向する磁極数をいう。磁極部216とステータ22との間には磁性体が設けられていない。
【0070】
ステータ22は、ステータコア221と複数のステータ巻線222とを有する。ステータコア221は、周方向に間隔を空けて設けられた複数の歯部223を有する。複数の歯部223は、ステータコア221から径方向に放射状に一体的に延びている。本実施形態においては、合計18個の歯部223が周方向に間隔を空けて設けられている。換言すると、ステータコア221は、周方向に間隔を空けて形成された合計18個のスロット224を有する。歯部223は周方向に等間隔で配置されている。
【0071】
ロータ21の外面には、ロータ21の回転位置を検出させるための複数の被検出部217が備えられている。複数の被検出部217は、磁気作用によって検出される。複数の被検出部217は、周方向に間隔を空けてロータ21の外面に設けられている。被検出部217は、強磁性体で形成されている。
ロータ位置検出装置218は、ロータ21の位置を検出する装置である。ロータ位置検出装置218は、複数の被検出部217と対向する位置に設けられている。
【0072】
回転電機20は、エンジン10のクランクシャフト15と接続されている。詳細には、ロータ21が、クランクシャフト15に対し固定された速度比で回転するようクランクシャフト15と接続されている。
【0073】
本実施形態では、ロータ21が、クランクシャフト15に、動力伝達機構(例えば、ベルト、チェーン、ギア、減速機、増速機等)を介さずに取り付けられている。ロータ21は、クランクシャフト15に対し1:1の速度比で回転する。回転電機20が、エンジン10の正回転によりクランクシャフト15を正回転させるように構成されている。
【0074】
なお、回転電機20は、クランクシャフト15に、動力伝達機構を介して取り付けられていてもよい。ただし、回転電機20は、速度比可変の変速機又はクラッチのいずれも介することなく、クランクシャフト15に接続される。即ち、回転電機20は、入出力の速度比が可変の装置を介することなく、クランクシャフト15に接続される。
【0075】
回転電機20は、エンジン始動時には、クランクシャフト15を正回転させてエンジン10を始動させる。また、回転電機20は、クランクシャフト15に駆動されて発電及び回生する。即ち、回転電機20は、クランクシャフト15を正回転させてエンジン10を始動させる機能と、クランクシャフト15に駆動されて発電及び回生する機能の双方を兼ね備えている。回転電機20は、エンジン10の始動後の期間の少なくとも一部には、クランクシャフト15により正回転されてジェネレータとして機能する。即ち、回転電機20がジェネレータとして機能する場合において、回転電機20は、エンジン10の燃焼開始後、必ずしも、常にジェネレータとして機能する必要はない。また、エンジン10の燃焼開始後に、回転電機20がジェネレータとして機能する期間と回転電機20が車両駆動用モータとして機能する期間とが含まれていてもよい。
【0076】
本実施形態の車両1において、エンジン10から後輪3bに回転パワーを伝達する部材には、後輪3bの駆動に関わる回転パワーと電力との間の変換を行う機器として、回転電機20のみが備えられている。
【0077】
図4は、
図1に示す車両1の全体の電気的な概略構成を示すブロック図である。車両1は、インバータ61を備える。ハイブリッド制御装置60は、インバータ61を含む車両1の各部を制御する。
インバータ61には、回転電機20とバッテリ4とが接続されている。バッテリ4は、回転電機20に対し電流の授受を行う。インバータ61及びバッテリ4には、前照灯等の車両負荷7も接続されている。
【0078】
バッテリ4は、インバータ61及び前照灯7車両負荷7と接続されている。バッテリ4とインバータ61とを接続する電力線51には、電流・電圧センサ66が設けられている。電流・電圧センサ66は、バッテリ4に流れる電流、及びバッテリ4とインバータ61との間の電圧を検出する。電流・電圧センサ66は、バッテリ4とインバータ61とを接続する電力線51のうち、前照灯7車両負荷7への分岐点とバッテリ4との間に設けられている。
【0079】
インバータ61は、複数のスイッチング部611〜616を備えている。本実施形態のインバータ61は、6個のスイッチング部611〜616を有する。スイッチング部611〜616は、三相ブリッジインバータを構成している。複数のスイッチング部611〜616は、複数相のステータ巻線222(
図3参照)の各相と接続されている。
【0080】
より詳細には、複数のスイッチング部611〜616のうち、直列に接続された2つのスイッチング部がハーフブリッジを構成している。各相のハーフブリッジを構成するスイッチング部611〜616は、複数相のステータ巻線222の各相とそれぞれ接続されている。スイッチング部611〜616は、複数相のステータ巻線222とバッテリ4との間の電流の通過/遮断を切替える。
詳細には、回転電機20がモータとして機能する場合、スイッチング部611〜616のオン・オフ動作によって複数相のステータ巻線222のそれぞれに対する通電及び通電停止が切替えられる。
【0081】
また、回転電機20が発電機として機能する場合、スイッチング部611〜616のオン・オフ動作によって、ステータ巻線222のそれぞれとバッテリ4との間の電流の通過/遮断が切替えられる。スイッチング部611〜616のオン・オフが順次切替えられることによって、回転電機20から出力される三相交流の整流及び電圧の制御が行われる。
【0082】
スイッチング部611〜616のそれぞれは、スイッチング素子を有する。スイッチング素子は、例えばトランジスタであり、より詳細にはFET(Field Effect Transistor)である。ただし、スイッチング部611〜616には、FET以外に、例えばサイリスタ及びIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)も採用可能である。
【0083】
インバータ61とステータ巻線222とを接続するラインには、電流センサ(不図示)が設けられている。電流センサは、回転電機20における2相の電流を検出する。電流センサは、ハイブリッド制御装置60に接続されている。
【0084】
ハイブリッド制御装置60には、アクセルグリップ8aの検出部8bと、スロットル弁SVと、燃料噴射装置18と、点火プラグ19と、バッテリ4とが接続されている。ハイブリッド制御装置60は、エンジン制御部62と、回転電機制御部63と、BMS通信部64と、電流・電圧取得部65とを備えている。
【0085】
エンジン制御部62は、スロットル弁SVと、燃料噴射装置18と、点火プラグ19とを制御することによって、エンジン10の燃焼動作を制御する。エンジン制御部62は、点火プラグ19及び燃料噴射装置18を制御することによって、エンジン10の回転パワーを制御する。回転電機制御部63は、スイッチング部611〜616のそれぞれのオン・オフ動作を制御することによって、回転電機20の動作を制御する。BMS通信部64は、バッテリ4のBMS4aから、バッテリ4のバッテリ状態の情報を取得する。電流・電圧取得部65は、電流・電圧センサ66から、電力線51を流れる電流の電流値、及び電力線51に係る電圧の電圧値を取得する。
【0086】
ハイブリッド制御装置60は、図示しない中央処理装置と、図示しない記憶装置とを有するコンピュータで構成されている。中央処理装置は、制御プログラムに基づいて演算処理を行う。記憶装置は、プログラム及び演算に関するデータを記憶する。エンジン制御部62と、回転電機制御部63と、BMS通信部64と、電流・電圧取得部65とは、図示しないコンピュータとコンピュータで実行される制御プログラムとによって実現される。従って、以降説明する、エンジン制御部62と、回転電機制御部63と、BMS通信部64と、電流・電圧取得部65とのそれぞれによる動作は、ハイブリッド制御装置60の動作と言うことができる。なお、エンジン制御部62と、回転電機制御部63と、BMS通信部64と、電流・電圧取得部65とは、例えば互いに異なる装置として互いに離れた位置に構成されてもよく、また、一体に構成されるものであってもよい。
【0087】
ハイブリッド制御装置60には、スタータスイッチ6bが接続されている。スタータスイッチ6bは、エンジン10の始動の際、運転者によって操作される。メインスイッチ6aは、操作に応じてハイブリッド制御装置60に電力を供給する。
【0088】
本実施形態において、車両1に備えられたバッテリ4は、車両1の標準バッテリである。本実施形態において、車両1の標準バッテリは、例えば、リチウムイオンバッテリであり、車両1のハイブリッド制御装置60と通信可能なBMS4aを備える。車両1のハイブリッド制御装置60は、BMS4aからバッテリ状態を取得して、適切なバッテリの充放電制御ができる。
【0089】
これに対し、車両1は、搭載されたバッテリ4を、標準バッテリであるバッテリ4と同一種類のバッテリ又は異なる種類のバッテリである交換用バッテリ5(
図1参照)と交換可能である。バッテリ4と同一種類のバッテリは、例えば標準バッテリである。バッテリ4と異なる種類のバッテリは、例えば、標準外バッテリである。より詳細には、標準外バッテリは、例えば鉛バッテリである。また、標準外バッテリは、例えば、車両1に標準で使用することが指定されていないリチウムイオンバッテリである。車両1に使用することが指定されていないリチウムイオンバッテリには、例えば鉛バッテリの置き換え用に設計されたリチウムイオンバッテリが含まれる。また、標準外バッテリは、例えば鉛バッテリ及びリチウムイオンバッテリ以外の化学反応の種類を有するバッテリである。鉛バッテリ及びリチウムイオンバッテリ以外の化学反応の種類を有するバッテリは、例えばニッケル水素バッテリが含まれる。
【0090】
ここで、バッテリ4及び5の種類の例として、リチウムイオンバッテリ及び鉛バッテリについて説明する。
図5は、車両1に搭載可能なリチウムイオンバッテリ70の構成の一例を示す模式図である。
図5のリチウムイオンバッテリ70は、1又は複数のセル71−1〜71−nと、電力線72−1〜72−n+1と、正極端子73と、負極端子74とを備えている(nは自然数)。正極端子73は、車両1のインバータ61と電力線51により接続されている。負極端子74は、接地されている。セル71−1の正極と正極端子73とは、電力線72−1により接続されている。セル71−nの負極と負極端子74とは、電力線72−n+1により接続されている。複数のセル71−1〜71−nは、直列に接続されている。例えば、セル71−1の負極とセル71−2の正極とは、電力線72−2によりに接続され、セル71−n−1の負極とセル71−nの正極とは、電力線72−nにより接続されている。例えば、車両1の定格電圧は12Vである。これに対し、リチウムイオンバッテリ70は、1つのセルの電圧が3.6V〜4.2Vのセルを4つ有していれば、全体として14.4〜16.8Vの電圧を出力する。
【0091】
また、
図5のリチウムイオンバッテリ70は、BMS(バッテリマネージメントシステム)75を備えている。BMS75は、電力検出線77−1〜77−n+1を備える。電力検出線77−1は、電力線72−1に接続され、電力検出線77−2は、電力線72−2に接続され、電力検出線77−nは、電力線72−nに接続され、電力検出線77−n+1は、電力線72−n+1に接続される。リチウムイオンバッテリ70は、電気コネクタ76を備える。電気コネクタ76は、情報伝送線52を介して、車両1のハイブリッド制御装置60と、BMS75とを接続する。BMS75は、リチウムイオンバッテリ70を監視し、過充電及び過放電を抑制する。また、BMS75は、複数のセル71−1〜71−nのセルの電圧、電流、充電状態及び温度等を監視する。バッテリ4として使用されるリチウムイオンバッテリ70のBMS75は、ハイブリッド制御装置60と通信可能である。
なお、リチウムイオンバッテリ70は、BMS75を有していない場合もある。
【0092】
次に、ハイブリッド制御装置60による、リチウムイオンバッテリ70の充放電制御について、
図6を使用して説明する。
図6は、
図5のリチウムイオンバッテリ70の充放電制御の2つの方法について説明する図である。ハイブリッド制御装置60によるリチウムイオンバッテリ70の充放電制御とは、充電制御及び放電制御である。充電制御は、回転電機20からリチウムイオンバッテリ70に供給する電力の制御である。放電制御は、リチウムイオンバッテリ70から回転電機20に供給する電力の制御である放電制御である。より詳細には、ハイブリッド制御装置60による、リチウムイオンバッテリ70の充放電制御とは、上記(i)及び(ii)の動作の制御をいう。充電制御は、上記(ii)の回生動作の制御である。回生動作の制御は、車両1の走行中に、クランクシャフト15を介した後輪3bからの駆動によって回転電機を回転させることによって生じた電力を、バッテリ4(70)に蓄える制御である。放電制御は、上記(i)の走行アシスト動作の制御である。放電制御は、車両1の走行中に、バッテリ4(70)に蓄えた電力を回転電機20に供給することによって、回転電機20に、エンジン10からのパワーが出力されたクランクシャフト15を介してパワーを追加させる制御である。
【0093】
第1の充放電制御は、可変電圧制御である。
図6のパート(a)は、リチウムイオンバッテリ70の可変電圧制御を説明する図である。可変電圧制御は、目標とする充電量を、所望の充電量としてバッテリの充電及び放電を制御する制御方法である。リチウムイオンバッテリ70は、例えば、目標とする充電量を、リチウムイオンバッテリ70の50%の充電量を目標として充電される。充電量が、目標の充電量であるリチウムイオンバッテリ70の50%の充電量を超えると、ハイブリッド制御装置60は、リチウムイオンバッテリ70の充電を抑える。また、充電量が、目標の充電量であるリチウムイオンバッテリ70の50%の充電量を下回ると、ハイブリッド制御装置60は、リチウムイオンバッテリ70の充電を行う。すなわち、ハイブリッド制御装置60は、
図6のパート(a)の充電領域X1及びX3を避け、充電領域X2においてリチウムイオンバッテリ70の充放電制御をする。
【0094】
リチウムイオンバッテリ70の劣化を抑制するための使用領域は、充電量が50%の領域が基準となる。従って、リチウムイオンバッテリの充電及び放電は、リチウムイオンバッテリ70の充電量の50%を目安に行うことにより、リチウムイオンバッテリの劣化を抑制することができる。
【0095】
ハイブリッド制御装置60は、BMS75からの情報により、リチウムイオンバッテリ70の充電量を認識する。BMS75からの情報は、リチウムイオンバッテリ70の各セル71−1〜71−nの電圧、電流、充電状態及び温度等が含まれる。すなわち、ハイブリッド制御装置60は、BMS75からのリチウムイオンバッテリ70の各セル71−1〜71−nの電圧、電流、充電状態及び温度等の情報をもとに、リチウムイオンバッテリ70の充放電制御を行う。BMS75は、情報伝送線52を介して、車両1のハイブリッド制御装置60と情報の通信を行う。
【0096】
ここで、情報伝送線52による情報の通信は、通信プロトコルを使用したデータ通信により行う。通信プロトコルは、車両又はバッテリの製品ごとに決められている。従って、リチウムイオンバッテリ70が車両1に対する標準バッテリであれば、車両1のハイブリッド制御装置60と情報の通信を行うことができる。しかし、リチウムイオンバッテリ70が車両1に対する標準バッテリでない場合、車両1のハイブリッド制御装置60と情報の通信を行うことができない。通信を行うことができないリチウムイオンバッテリ70は、例えば、車両1に標準で使用することが指定されていないリチウムイオンバッテリ、又は鉛バッテリの置き換え用に設計されたリチウムイオンバッテリである。
リチウムイオンバッテリ70の充電量が満充電量の50%になることにより、リチウムイオンバッテリの劣化を抑制しつつ、車両1の走行アシスト動作及び回生動作の双方に対応できるようになる。
【0097】
第2の充放電制御は、定電圧制御である。
図6のパート(b)は、リチウムイオンバッテリ70の定電圧制御を説明する図である。定電圧制御は、目標とする充電電圧を、所望の電圧に定めて、定めた電圧値を目標としてリチウムイオンバッテリの充電及び放電を制御する制御方法である。例えば、目標とする充電電圧を、リチウムイオンバッテリ70の80%の充電量に対する充電電圧YCを目標として、リチウムイオンバッテリ70を充電する。充電電圧が、目標の充電電圧であるリチウムイオンバッテリ70の80%の充電量に対する充電電圧YCに近づくと、ハイブリッド制御装置60は、リチウムイオンバッテリ70の充電を抑える。すなわち、ハイブリッド制御装置60は、
図6のパート(b)の充電領域Y1及びY3を避け、充電領域Y2においてリチウムイオンバッテリ70の充放電制御をする。ハイブリッド制御装置60は、電流・電圧センサ66からの情報により、リチウムイオンバッテリ70の充電電圧を認識する。
【0098】
第2の充放電制御で、リチウムイオンバッテリ70は、満充電電圧に対し余裕を見込んだ電圧を目標として充電される。このため、リチウムイオンバッテリ70が長寿命化する。
【0099】
リチウムイオンバッテリ70の定電圧制御による充放電制御は、例えば、ハイブリッド制御装置60が、リチウムイオンバッテリ70のBMS75と通信できないような場合に実施される。ハイブリッド制御装置60は、リチウムイオンバッテリ70のBMS75と通信できない場合、リチウムイオンバッテリ70の充電量を把握することができない。従って、ハイブリッド制御装置60は、可変電圧制御を行うことが不可能である。例えば、リチウムイオンバッテリ70が、サードパーティー仕様のリチウムイオンバッテリ又は鉛バッテリ置き換え用のリチウムイオンバッテリである場合、ハイブリッド制御装置60は、リチウムイオンバッテリ70のBMS75と通信できない。従って、リチウムイオンバッテリ70が、車両1に標準で使用することが指定されていないリチウムイオンバッテリである場合、ハイブリッド制御装置60は、定電圧制御により、リチウムイオンバッテリ70の充放電制御を行う。また、リチウムイオンバッテリ70が、鉛バッテリの置き換え用のリチウムイオンバッテリである場合にも、ハイブリッド制御装置60は、定電圧制御により、リチウムイオンバッテリ70の充放電制御を行う。
【0100】
図7は、車両1に搭載されるバッテリの他の例である鉛バッテリ80の構成の一例を示す模式図である。
図7の鉛バッテリ80は、1又は複数のセル81−1〜81−nと、電力線82−1〜82−n+1と、正極端子83と、負極端子84とを備えている(nは自然数)。正極端子83は、車両1のインバータ61と電力線51により接続されている。負極端子84は、接地されている。複数のセル81−1〜81−nのそれぞれには、正極85−1〜85−n及び負極86−1〜86−nが1つずつ配置されている。セル81−1〜81−nのそれぞれは、希硫酸87に満たされている。1つのセルに配置された負極と、隣り合うセルに配置された正極とは、電力線により接続されている。例えば、セル81−1に配置された負極86−1と、隣り合うセル81−2に配置された正極85−2とは、電力線82−2により接続されている。また、セル81−n−1に配置された負極86−n−1と、隣り合うセル81−nに配置された正極85−nとは、電力線82−nにより接続されている。また、セル81−1に配置された正極85−1と正極端子83とは、電力線82−1により接続され、セル81−nに配置された負極86−nと負極端子84とは、電力線82−n+1により接続されている。従って、鉛バッテリ80は、複数のセル81−1〜81−nが、直列に接続されているといえる。ただし、複数のセル81−1〜81−nは、直列の接続に限定されることはなく、並列に接続されていてもよい。
【0101】
次に、ハイブリッド制御装置60による、鉛バッテリ80の充放電制御について、
図8を使用して説明する。
図8は、鉛バッテリ80の充放電制御について説明する図である。鉛バッテリ80の充放電制御は、定電圧制御により行う。鉛バッテリ80は、目標とする充電電圧を、鉛バッテリ80の100%の充電量に対する充電電圧ZFを目標として、鉛バッテリ80を充電する。充電中に、充電電圧が目標の充電電圧である鉛バッテリ80の100%の充電量に対する充電電圧ZFに近づくと、ハイブリッド制御装置60は、鉛バッテリ80の充電を抑える。すなわち、ハイブリッド制御装置60は、
図8の充電領域Z2を避け、充電領域Z1において鉛バッテリ80の充放電制御をする。鉛バッテリ80の劣化を抑制するための使用領域は、充電量が100%の領域が基準となる。すなわち、鉛バッテリ80は、充電量の100%を目安に充放電制御されることにより、劣化を抑制することができる。
【0102】
車両1のバッテリ4を、交換用バッテリ5に交換した場合について、
図9を使用して説明する。
図9は、車両1のバッテリ4を、交換用バッテリ5に交換した場合について説明する図である。バッテリ4の交換手順を説明する。まず、回転電機20とバッテリ4とを接続する電力線51を、バッテリ4から取り外す。次に、ハイブリッド制御装置60とバッテリとを接続する情報伝送線52を、バッテリ4から取り外す。そして、バッテリ4を車体2から取り外す。交換用バッテリ5を車両1に搭載する場合は先ず、交換用バッテリ5を車体2に取り付ける。次に、交換用バッテリ5に、交換前のバッテリ4から取り外した情報伝送線52を接続する。最後に、交換用バッテリ5に、交換前のバッテリ4から取り外した電力線51を接続する。ここで、情報伝送線52については、交換用バッテリ5が情報伝送線52の電気コネクタ76(
図5参照)を有している場合は、電気コネクタ76介してハイブリッド制御装置60と交換用バッテリ5が接続される。交換用バッテリ5が情報伝送線52の電気コネクタ76を有していない場合は、交換用バッテリ5は、ハイブリッド制御装置60と情報伝送線52により接続されない。
【0103】
交換用バッテリ5が取り付けられた場合、ハイブリッド制御装置60は、次のようにエンジン10及び回転電機20を制御する。ハイブリッド制御装置60は、交換用バッテリ5の識別情報とバッテリの識別に関する内部情報との関係に応じて、交換用バッテリ5に対する負担を変更するように、エンジン10及び回転電機20を制御する。制御方法は、交換用バッテリ5のバッテリ状態の検出の結果に応じて、以下の2つに分かれる。
【0104】
1.交換用バッテリ5の識別情報が、車両1のバッテリの識別に関する内部情報に適合した場合(
図9のパート(a))
交換用バッテリ5の識別情報が、バッテリの識別に関する内部情報に適合した場合、ハイブリッド制御装置60は、交換用バッテリ5を、標準バッテリであると判別する。より詳細には、ハイブリッド制御装置60は、交換用バッテリ5を、標準のリチウムイオンバッテリと判別する。例えば、車両1のハイブリッド制御装置60と交換用バッテリ5とが、特定の通信プロトコルにより通信可能である場合、ハイブリッド制御装置60は、交換用バッテリ5を、標準のリチウムイオンバッテリと判別する。
【0105】
この時、ハイブリッド制御装置60は、リチウムイオンバッテリに対する負担を考慮に入れて、上述した(i)及び(ii)の動作のうち少なくとも一つの動作でのエンジン10及び回転電機20を制御する。リチウムイオンバッテリは、満充電状態を避けて充電することによって長寿命化する。従って、交換用バッテリ5のバッテリ状態を検出した場合に、ハイブリッド制御装置60が、交換用バッテリ5の50%の充電量を目標とした可変電圧制御を行うことにより、交換用バッテリ5を長寿命化することができる。
【0106】
交換用バッテリ5の50%の充電量を目標とした可変電圧制御は、例えば以下のようにして行う。交換用バッテリ5の満充電に対応する満充電量を4つに等分割した4つの充電領域が設定される。満充電量に対応する第1の充電領域から数えて第2の充電領域及び第3の充電領域を充電量の目標として交換用バッテリ5が充電される。可変電圧制御は、交換用バッテリ5のBMS5aからの複数のセルの電圧、電流、充電状態及び温度等の情報をもとに行う。
【0107】
2.交換用バッテリ5の識別情報が検出されない場合、及び交換用バッテリ5の識別情報が、車両1のバッテリの識別に関する内部情報に適合しない場合(
図9のパート(b))
交換用バッテリ5の識別情報が検出されない場合、ハイブリッド制御装置60は、交換用バッテリ5の種類を判別できない。例えば、交換用バッテリ5が、情報伝送線52の電気的な接続を行う電気コネクタを備えていない場合、交換用バッテリ5の種類を判別できない。車両1のハイブリッド制御装置60と交換用バッテリ5とが、データ通信できないからである。また、交換用バッテリ5が、電気コネクタを備えている場合であっても、車両1のハイブリッド制御装置60と交換用バッテリ5とが、特定の通信プロトコルによりデータ通信できない場合、ハイブリッド制御装置60は、交換用バッテリ5の種類を判別できない。また、交換用バッテリ5の識別情報が、車両1のバッテリの識別に関する内部情報に適合しない場合、ハイブリッド制御装置60は、交換用バッテリ5の種類を判別できない。例えば、交換用バッテリ5の識別情報が、車両1のバッテリの識別に関する内部情報に一致しない場合、ハイブリッド制御装置60は、交換用バッテリ5の種類を判別できない。また、例えば、交換用バッテリ5の識別情報が、車両1のバッテリの識別に関する内部情報に含まれない場合、ハイブリッド制御装置60は、交換用バッテリ5の種類を判別できない。また、例えば、車両1のバッテリに関する内部情報を使用して交換用バッテリ5の識別情報を判別した時に、交換用バッテリ5の識別情報が車両への使用に適していないと判断される場合、ハイブリッド制御装置60は、交換用バッテリ5の種類を判別できない。
【0108】
ハイブリッド制御装置60が、交換用バッテリ5のバッテリの種類を判別できない場合、ハイブリッド制御装置60は、交換用バッテリ5の種類に合わせた充放電制御を行うことができない。この時、ハイブリッド制御装置60は、上述した1.の場合と比べて、交換用バッテリ5に対する負担を減少させるように、上述した(i)及び(ii)の動作のうち少なくとも一つの動作でのエンジン及び回転電機を制御する。詳細には、ハイブリッド制御装置60は、識別情報が検出されない場合、又は識別情報が内部情報に適合しない場合に、バッテリの充電電圧の目標値を一定の値に設定して、バッテリ5を充電する制御を行う。この時、バッテリの充電電圧の目標値を、例えば鉛バッテリの満充電電圧程度の電圧値で、且つ一般的なリチウムイオンバッテリの満充電以下の電圧であると予測される電圧値に設定する。これにより、交換したバッテリが鉛バッテリである場合、ハイブリッド制御装置60は、交換用バッテリ5を鉛バッテリとして、鉛バッテリの充放電制御方法である、バッテリの満充電に対応する満充電電圧を目標とした定電圧制御を行うことができる。そうすると、交換用バッテリ5が鉛バッテリである場合において、交換用バッテリ5に対する負担を軽くして、交換用バッテリ5の劣化を抑制することができる。鉛バッテリは、バッテリの満充電に対応する満充電電圧を目標とした定電圧制御により、バッテリの劣化を抑制することができるからである。
【0109】
これに対し、交換用バッテリ5がリチウムイオンバッテリである場合は、バッテリの劣化を抑制する制御方法は、満充電状態を避けた可変電圧制御を行うのが最適である。しかし、リチウムイオンバッテリに対し、鉛バッテリの場合と同じ定電圧制御を行うと、上述した1.の場合ほどではないが、バッテリの劣化を抑制することができる。これは、定格電圧が、鉛バッテリとリチウムイオンバッテリとで同一の場合、一般的には鉛バッテリの満充電電圧よりもリチウムイオンバッテリの満充電電圧が高いからである。特に、鉛バッテリを置き換え用に設計されたリチウムイオンバッテリは、鉛バッテリよりも満充電電圧が高く設定されている。例えば、定格電圧が12Vの鉛バッテリは、満充電電圧が約14V〜14.5Vに設定されている。これに対して、リチウムイオンバッテリは、一般的には満充電電圧が約14.4V〜16.8Vに設定されている。特に、鉛バッテリ置き換え用のリチウムイオンバッテリは、約16Vに設定されていることが多い。従って、リチウムイオンバッテリに対して鉛バッテリの満充電に対応する満充電電圧である14Vを目標とした定電圧制御を行ったとしても、リチウムイオンバッテリは、完全な満充電状態とはならない。従って、ハイブリッド制御装置60は、バッテリの充電電圧の目標値を、鉛バッテリの満充電電圧程度の電圧値で、且つ一般的なリチウムイオンバッテリの満充電以下の電圧であると予測される電圧値に設定して、回転電機20を制御する。これにより、交換用バッテリがリチウムイオンバッテリであった場合であっても、鉛バッテリと同一の制御方法により、バッテリの劣化を抑制することができる。
【0110】
また、バッテリの充電電圧の目標値を一定の値に設定して、バッテリ5を充電する制御は、例えば交換用バッテリ5が、ニッケル水素バッテリであっても、バッテリの劣化を抑制することができる。本制御によれば、バッテリの過放電を防止することができるため、ニッケル水素バッテリの劣化も防ぐことができるからである。
【0111】
バッテリの満充電に対応する満充電電圧を目標とした定電圧制御は、電力線に接続された電流・電圧センサ66により行う。すなわち、ハイブリッド制御装置60は、電流・電圧センサ66によりバッテリの端子電圧を監視し、バッテリの端子電圧の目標値が一定の値(例えば、鉛バッテリの満充電電圧)となるように、エンジン10及び回転電機20を制御する。
【0112】
また、ハイブリッド制御装置60は、以下の制御方法により、上述した1.の場合と比べて、交換用バッテリ5に対する負担を減少させるように、交換用バッテリ5の充放電制御を行うことができる。以下、それぞれの制御方法について説明する。
【0113】
第1の制御方法として、ハイブリッド制御装置60は、上述した1.の場合と比べて、上述した(i)及び(ii)の動作のうち少なくとも一つの動作中に電力線51から検出される電流を減少させるように、エンジン10及び回転電機20を制御する。より詳細には、ハイブリッド制御装置60は、交換用バッテリ5から回転電機20に流れる電流及び回転電機20から交換用バッテリ5へ流れる電流を、上述した1.の場合よりも制限する。
【0114】
例えば、(i)の動作の場合、ハイブリッド制御装置60は、車両1の走行中に交換用バッテリ5から回転電機20に流れる電流を、1.の場合と比べて、少なくする。そうすると、車両1が、エンジン10からクランクシャフト15に供給されるパワーの割合が、回転電機20からクランクシャフト15に供給されるパワーの割合より大きくなる。または、ハイブリッド制御装置60は、車両1の走行中に、交換用バッテリ5から回転電機20に電流が流れないようにする。すなわち、車両1は、エンジンのみで走行する状態になる。鉛バッテリである場合及びリチウムイオンバッテリである場合の双方において、頻繁な充放電を行うことは、バッテリ劣化の原因となる。従って、交換用バッテリ5の充放電を抑えることにより、1.の場合と比べて、交換用バッテリ5の劣化を抑制することができる。
【0115】
(ii)の動作の場合、ハイブリッド制御装置60は、車両1の走行中にクランクシャフト15を介した後輪3bからの駆動によって回転電機20から交換用バッテリ5に流れる回生電流を、1.の場合と比べて、少なくする。又は、車両1の走行中に回転電機20から交換用バッテリ5に回生による電流が流れないようにする。ハイブリッド制御装置60は、バッテリの満充電に対する満充電電圧を目標に充放電を行っているため、バッテリの空き容量が少ない。従って、回転電機20から交換用バッテリ5に供給する電力を少なくすることにより、交換用バッテリ5の過充電を防ぐ。これにより、交換用バッテリ5の負担を少なくする。
【0116】
第2の制御方法として、ハイブリッド制御装置60は、上述した1.の場合と比べて、上述した(i)及び(ii)の動作のうち少なくとも一つの動作中に電力線51から検出される電圧の範囲が狭くなるように、エンジン10及び回転電機20を制御する。より詳細には、ハイブリッド制御装置60は、交換用バッテリ5と回転電機20との間の電圧値の変動を、上述した1.の場合よりも制限する。
【0117】
例えば、(i)の動作の場合、ハイブリッド制御装置60は、車両1の走行中に交換用バッテリ5と回転電機20との間で検出された電圧の変動を、1.の場合と比べて、少なくする。そうすると、1.の場合と比べて、回転電機20に供給される電力が減少する。これにより、エンジン10からクランクシャフト15に供給されるパワーの割合が、回転電機20からクランクシャフト15に供給されるパワーの割合より大きくなる。また、ハイブリッド制御装置60は、車両1の走行中に、交換用バッテリ5と回転電機20との間の電圧が、変動しないようにする。この時、回転電機20には電力が供給されず、車両1は、エンジンのみで走行する状態になる。
【0118】
(ii)の動作の場合、ハイブリッド制御装置60は、車両1の走行中にクランクシャフト15を介した駆動輪3bからの駆動によって回転電機20と交換用バッテリ5との間の電圧の変動を制限して、蓄える回生の電力を、1.の場合と比べて、少なくする。又は、車両1の走行中に回転電機20と交換用バッテリ5との間の電力が変動しないようにして、交換用バッテリ5に回転電機20による回生電力を供給しないようにする。
【0119】
第3の制御方法として、ハイブリッド制御装置60は、上述した1.の場合と比べて、上述した(i)及び(ii)の動作のうち少なくとも一つの動作に起因するバッテリ温度の変化が小さくなるように、エンジン10及び回転電機20を制御する。温度は、車両1の車体2の交換用バッテリ5を取り付ける部分に設置された温度センサによって検出することができる。
【0120】
例えば、(i)の動作の場合、ハイブリッド制御装置60は、車両1の走行中において、1.の場合と比べて交換用バッテリ5の温度変化が少なくなるように、交換用バッテリ5から回転電機20に供給される電力を制御する。又は、ハイブリッド制御装置60は、車両1の走行中において、交換用バッテリ5の温度変化がなくなるように、交換用バッテリ5から回転電機20に供給される電力を制御する。そうすると、回転電機20に供給される電流が、1.の場合と比べて、減少する。これにより、エンジン10からクランクシャフト15に供給されるパワーの割合が、回転電機20からクランクシャフト15に供給されるパワーの割合より大きくなる。バッテリの頻繁な充放電を行うことは、バッテリの劣化の原因となる。従って、交換用バッテリ5の温度変化を抑えることにより、1.の場合と比べて、交換用バッテリ5の充放電を抑えることができ、交換用バッテリ5の劣化を抑制することができる。
【0121】
(ii)の動作の場合、ハイブリッド制御装置60は、1.の場合と比べて交換用バッテリ5の温度変化が少なくなるように、クランクシャフト15を介した後輪3bからの駆動によって回転電機20から交換用バッテリ5に供給される回生電力を、1.の場合と比べて、少なくする。又は、ハイブリッド制御装置60は、交換用バッテリ5の温度変化がなくなるように、クランクシャフト15を介した後輪3bからの駆動によって回転電機20から交換用バッテリ5に供給される回生電力を少なくする。ハイブリッド制御装置60は、バッテリの満充電に対する満充電電圧を目標に充放電を行っているため、バッテリの空き容量が少ない。従って、回転電機20から交換用バッテリ5に供給する電力を少なくすることにより、交換用バッテリ5の過充電を防ぐ。これにより、交換用バッテリ5の負担を少なくする。
【0122】
[第2の実施形態]
図10は、本発明の第2の実施形態にかかる車両100の主要な構成を示す概念図である。車両100は、エンジン110と、バッテリ120と、回転電機130及び140と、駆動輪150とを備える。車両100は、エンジン10により直接駆動輪150を駆動するエンジン走行を行う(矢印111参照)。また、車両100は、エンジン110により回転電機130を駆動して発電をし(矢印112参照)、発電した電力により回転電機140で駆動輪150を駆動するモータ走行を行う(矢印131及び141参照)。すなわち、車両100は、シリーズ・パラレル方式のハイブリッド車両である。
【0123】
ここで、回転電機130は、発電用の回転電機である。回転電機130は、エンジン110に駆動されることにより発電を行い、発電した電力を、バッテリ120及び/又は回転電機140に供給する(矢印131及び132参照)。回転電機140は、駆動輪150を駆動するための回転電機、及び回生を行うための回転電機である。回転電機140は、バッテリ120及び/又は回転電機130から供給された電力(矢印131又は121参照)により、駆動輪150を駆動する(矢印141参照)。また、回転電機140は、駆動輪150により駆動されて回生し(矢印142参照)、回生した電力をバッテリ120に充電する(矢印143参照)。
【0124】
車両100は、ハイブリッド制御装置160を備える。ハイブリッド制御装置160は、下記(iii)から(v)までの動作のうち少なくとも一つの動作でのエンジン110と、回転電機130及び140とを制御する。
(iii)車両100の走行中に、バッテリ120に蓄えた電力を回転電機140に供給することによって、回転電機130にエンジン110からのパワーが出力されたクランクシャフトを介してパワーを追加させる走行アシスト動作。
(iv)車両100の走行中に、回転電機140がクランクシャフトを介して駆動輪により駆動されることによって発電された電力を、バッテリ120に蓄える回生動作。
(v)車両100の走行中且つエンジン110の燃焼動作が停止中に、バッテリ120に蓄えた電力を回転電機140に供給することによって、回転電機140にクランクシャフトを介してパワーを追加させる電気走行動作。
【0125】
車両100は、搭載されたバッテリ120を、標準バッテリであるバッテリ120と同一のバッテリ又は異なるバッテリである交換用バッテリ170と交換可能である(矢印171参照)。ただし、車両100に対し交換可能な交換用バッテリ170は、車両1に搭載されたバッテリ120と定格電圧が同一である。バッテリ120と異なるバッテリは、例えば鉛バッテリ、サードパーティーの仕様リチウムイオンバッテリ、及び鉛バッテリ置き換え用のリチウムイオンバッテリである。バッテリ120はBMS120aを備える。交換用バッテリ170は、BMS170aを備える場合及び備えない場合がある。BMS120a及び170aは、それぞれバッテリ120及び170を監視し、過充電及び過放電を抑制する。また、BMS120a及び170aは、それぞれバッテリ120及び170の電圧、電流、充電状態及び温度等を監視する。ハイブリッド制御装置160は、情報伝送線122を介して、BMS120a及び170aからバッテリ120のバッテリ状態の検出を行う。ただし、ハイブリッド制御装置160は、交換用バッテリ170のBMS170aからバッテリ120又は交換用バッテリ170のバッテリ状態を検出できない場合がある。ハイブリッド制御装置160は、検出したバッテリ120又は170のバッテリ状態の結果に応じて、バッテリに対する負担を変更するように、上記(iii)から(v)までの動作のうち少なくとも一つの動作でのエンジン110及び回転電機140を制御する。
【0126】
交換用バッテリ170が取り付けられた場合、ハイブリッド制御装置160は、交換用バッテリ170のバッテリ状態の検出の結果に応じて、交換用バッテリ170に対する負担を変更するように、エンジン110及び回転電機140を制御する。(iii)の動作に関する制御方法は、第1の実施形態の(i)の動作と同一である。また、(iv)の動作に関する制御方法は、第1の実施形態の(ii)の動作と同一である。この時、第1の実施形態における回転電機20は、本実施形態における回転電機140に対応している。(v)の動作に関しては、以下のとおりである。
【0127】
1.交換用バッテリ170の識別情報が、車両100のバッテリに関する内部情報に適合した場合
交換用バッテリ170の識別情報が、車両100のバッテリに関する内部情報に適合した場合、ハイブリッド制御装置60は、リチウムイオンバッテリに対する負担を考慮に入れて、(e)の動作でのエンジン110及び回転電機140を制御する。詳細には、ハイブリッド制御装置160が、交換用バッテリ170の50%の充電量を目標とした可変電圧制御を行うことにより、交換用バッテリ170を長寿命化することができる。
【0128】
2.交換用バッテリ170の識別情報が検出されない場合、及び交換用バッテリ170の識別情報が、車両100のバッテリに関する内部情報と適合しない場合
交換用バッテリ170の識別情報が検出されない場合、及び交換用バッテリ170の識別情報が、車両100のバッテリに関する内部情報と適合しない場合、ハイブリッド制御装置160は、(v)の動作でのエンジン110及び回転電機140を、以下のように制御する。ハイブリッド制御装置60は、上述した1.の場合と比べて、交換用バッテリ170に対する負担を減少させるように、(v)の動作でのエンジン110及び回転電機140を制御する。より詳細には、ハイブリッド制御装置160は、交換用バッテリ170を鉛バッテリとして、鉛バッテリの充放電制御方法である、交換用バッテリ170の満充電に対応する満充電電圧を目標とした定電圧制御を行う。また、ハイブリッド制御装置160は、以下の制御方法により、上述した1.の場合と比べて、交換用バッテリ170に対する負担を減少させるように、交換用バッテリ170の充放電制御を行うことができる。以下、それぞれの制御方法について説明する。
【0129】
第1の制御方法として、ハイブリッド制御装置160は、上述した1.の場合と比べて、交換用バッテリ170と回転電機140との間に接続された電力線から検出される電流を減少させるように、(v)の動作でのエンジン110及び回転電機140を制御する。より詳細には、ハイブリッド制御装置160は、車両100の走行中且つエンジン110の燃焼動作が停止中に、交換用バッテリ170から回転電機140に流れる電流を、上述した1.の場合よりも制限する。そうすると、回転電機140に供給される電流が、1.の場合と比べて、減少する。
【0130】
これにより、エンジン110からのパワーを変換して回転電機130により出力された電力が回転電機140に供給される割合が、交換用バッテリ170から回転電機140に供給される電力の割合よりも多くなる。又は、エンジン110からクランクシャフトに供給されるパワーの割合が、回転電機140からクランクシャフトに供給されるパワーの割合より大きくなる。バッテリは、頻繁な充放電を行うと、劣化の原因となる。従って、交換用バッテリ170の充放電を抑えることにより、1.の場合と比べて、交換用バッテリ170の劣化を抑制することができる。
【0131】
また、ハイブリッド制御装置160は、車両100の走行中且つエンジン110の燃焼動作の停止中に、交換用バッテリ170から回転電機140に電流が流れないようにする。これにより、回転電機140には、エンジン110からのパワーを変換して回転電機130により出力された電力のみが供給される。又は、クランクシャフトには、エンジン110のみからパワーが供給される。従って、交換用バッテリ170の充放電は、さらに抑えられる。
【0132】
第2の制御方法として、ハイブリッド制御装置60は、上述した1.の場合と比べて、交換用バッテリ170と回転電機140との間に接続された電力線から検出される電圧の範囲が狭くなるように、(v)の動作でのエンジン110及び回転電機140を制御する。より詳細には、ハイブリッド制御装置160は、車両100の走行中且つエンジン110の燃焼動作が停止中に、交換用バッテリ170と回転電機140との間の電圧値の変動を、上述した1.の場合よりも制限する。そうすると、回転電機140に供給される電力が、1.の場合と比べて、減少する。また、ハイブリッド制御装置160は、車両100の走行中且つエンジン110の燃焼動作が停止中に、交換用バッテリ170と回転電機140との間の電圧値が変動しないようにする。これにより、ハイブリッド制御装置160は、交換用バッテリ170から回転電機140に電流が流れないようにする。
【0133】
第3の制御方法として、ハイブリッド制御装置60は、上述した1.の場合と比べて、交換用バッテリ170から検出される温度の範囲が狭くなるように、(v)の動作でのエンジン110及び回転電機140を制御する。この場合、車両100の交換用バッテリ170を取り付ける部分に、温度センサを設置させることが必要となる。
【0134】
より詳細には、ハイブリッド制御装置60は、車両100の走行中且つエンジン110の燃焼動作が停止中に、1.の場合と比べて交換用バッテリ170の温度変化が少なくなるように、交換用バッテリ170から回転電機140に供給される電力を制御する。又は、ハイブリッド制御装置60は、車両100の走行中且つエンジン110の燃焼動作が停止中に、交換用バッテリ170の温度変化がなくなるように、交換用バッテリ170から回転電機140に供給される電力を制御する。そうすると、回転電機140に供給される電流が、1.の場合と比べて、減少する。これにより、エンジン110からのパワーを変換して回転電機130により出力された電力が回転電機140に供給される割合が、交換用バッテリ170から回転電機140に供給される電力の割合よりも多くなる。又は、エンジン110からクランクシャフトに供給されるパワーの割合が、回転電機140からクランクシャフトに供給されるパワーの割合より大きくなる。
【0135】
なお、本実施形態における、上述した(iv)及び(v)の動作の制御は、シリーズ方式のハイブリッド車両においても適用できる。シリーズ方式のハイブリッド車両は、エンジンにより回転電機を駆動して発電をし、発電した電力により回転電機で駆動輪150を駆動するモータ走行を行う車両である。