(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリオレフィン樹脂(A)10〜80質量部、JIS K6253に準拠するタイプA硬度(瞬間値)が96以下であるスチレン系熱可塑性エラストマー(B)10〜80質量部、及び少なくとも一部が架橋されたゴム(C)1〜15質量部(成分(A)、(B)及び(C)の合計量は100質量部である)を含み、更に成分(A)、(B)及び(C)の合計量100質量部に対して、可塑剤(D)を0質量部以上、10質量部以下含む組成物であり、JIS K6253に準拠するタイプD硬度(瞬間値)が35以上かつ70以下である熱可塑性エラストマー組成物であって、(a)スチレン又はその誘導体の重合体ブロックと、(b)イソプレン重合体ブロック又はイソプレン・ブタジエン共重合体ブロックであって、全イソプレン単位に対する1,2−位及び3,4−位で結合しているイソプレン単位含有量が40%以上である重合体又は共重合体ブロックとからなる水素添加されていてもよいブロック共重合体を含有しない熱可塑性エラストマー組成物。
前記ゴム(C)がエチレン・α−オレフィン共重合体ゴム及び/又はエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体ゴムを含む請求項1又は2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
成形時の樹脂流動方向に直交する向きの成形体厚みの最も厚い部分(L1)と最も薄い部分(L2)との比率(L1/L2)が2以上、50以下である請求項4又は5記載の熱可塑性エラストマー成形体。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の熱可塑性エラストマー組成物について具体的に説明する。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、ポリオレフィン樹脂(A)、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)、及び少なくとも一部が架橋されたゴム(C)を含有している。
【0015】
[ポリオレフィン樹脂(A)]
本発明に用いるポリオレフィン樹脂(A)としては、好ましくはオレフィン系プラスチックが挙げられ、架橋剤として有機ペルオキシドを用いる場合は、特にペルオキシド分解型オレフィン系プラスチックが好ましい。
【0016】
ペルオキシド分解型オレフィン系プラスチックとは、ペルオキシドと混合し、加熱下で混練することにより熱分解して分子量を減じ、樹脂の流動性が増加するオレフィン系のプラスチックをいい、例えばアイソタクチックポリプロピレンや、プロピレンと他の少量のα−オレフィンとの共重合体、例えばプロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ヘキセン共重合体、プロピレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体等を挙げることができる。
【0017】
前記ペルオキシド分解型オレフィン系プラスチックとしては、炭素数2〜20のα−オレフィンの単独重合体又は共重合体が挙げられる。
【0018】
前記のα−オレフィンとしては、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等が挙げられる。
【0019】
前記(b)ペルオキシド分解型オレフィン系プラスチックの具体的な例としては、以下のような(共)重合体が挙げられる。
(1)プロピレン単独重合体
(2)プロピレンと10モル%以下の他のα−オレフィンとのランダム共重合体
(3)プロピレンと30モル%以下の他のα−オレフィンとのブロック共重合体
(4)1−ブテン単独重合体
(5)1−ブテンと10モル%以下の他のα−オレフィンとのランダム共重合体
(6)4−メチル−1−ペンテン単独重合体
(7)4−メチル−1−ペンテンと20モル%以下の他のα−オレフィンとのランダム共重合体
【0020】
本発明に用いるポリオレフィン樹脂(A)は、230℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFR:ISO1133,230℃、荷重2.16kg)が通常5〜150g/10分であり、好ましくは30〜100g/10分の範囲内である。
【0021】
架橋剤としてフェノール樹脂系架橋剤を用いる場合にも、ペルオキシド分解型オレフィン系プラスチックとして前記したオレフィン系プラスチックと同様のものを用いることができる。
【0022】
本発明に用いるポリオレフィン樹脂(A)としては、α−オレフィンと少量の例えば10モル%以下の他の重合性単量体との共重合体、例えばエチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体等を用いてもよい。
本発明に用いるポリオレフィン樹脂(A)としては、ポリプロピレンが特に好ましい。
【0023】
本発明に用いるポリオレフィン樹脂の市販品としては、例えば、プライムポリプロ((株)プライムポリマー製)、ミラソン((株)プライムポリマー製)、サンテック(旭化成ケミカルズ(株)製)、ノバテック(日本ポリプロ(株)製)、住友ノーブレン(住友化学(株)製)、エボリュー((株)プライムポリマー製)、ハイゼックス((株)プライムポリマー製)、ポリメチルペンテン樹脂(TPX)(三井化学(株)製)が挙げられる。
【0024】
[スチレン系熱可塑性エラストマー(B)]
本発明に用いるスチレン系熱可塑性エラストマー(B)としては、好ましくは、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンを主体としたエチレン・α−オレフィン系共重合体であり、スチレン/エチレン・α−オレフィン比(質量比)は通常5/95〜75/25、好ましくは10/90〜70/30の範囲である。
【0025】
本発明に用いるスチレン系熱可塑性エラストマー(B)の230℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFR:ISO1133)は通常0.1〜50g/10分、好ましくは1〜40g/10分の範囲内である。
【0026】
本発明に用いるスチレン系熱可塑性エラストマー(B)としては、具体的には、スチレン・イソプレンブロック共重合体、スチレン・イソプレンブロック共重合体の水添物(SEP)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体の水添物(SEPS;ポリスチレン・ポリエチレン/プロピレン・ポリスチレンブロック共重合体)、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエンブロック共重合体の水添物(SEBS;ポリスチレン・ポリエチレン/ブチレン・ポリスチレンブロック共重合体)等が挙げられ、より具体的には、セプトン[クラレ(株)製]、EARNESTON[クラレプラスチック(株)製]、ハイブラー(HYBRAR)[クラレ(株)製]、クレイトン(KRATON)、クレイトンG[Kraton Polymer社製]、ユーロプレンSOLT[Versalis社製]、JSR−TR、JSR−SIS[JSR(株)製]、クインタック[日本ゼオン(株)製]、タフテック[旭化成工業(株)製](以上商品名)等が挙げられる。
【0027】
本発明に用いるスチレン系熱可塑性エラストマー(B)は、JIS K6253に準拠するタイプA硬度(瞬間値)が96以下であることが好ましい。前記タイプA硬度(瞬間値)は、更に好ましくは1〜80である。
【0028】
[架橋ゴム(C)]
本発明に用いる少なくとも一部が架橋されたゴム(C)としては、特に制限はないが、好ましくは、ペルオキシド架橋型オレフィン系共重合体ゴム及びフェノール樹脂架橋型オレフィン系共重合体ゴムが挙げられる。
【0029】
前記ペルオキシド架橋型オレフィン系共重合体ゴムとは、例えばエチレン・プロピレン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・非共役ジエンゴム、エチレン・ブタジエン共重合体ゴム等のオレフィンを主成分とする無定形ランダムな弾性共重合体であって、ペルオキシドと混合し、加熱下に混練することにより架橋して流動性が低下するか又は流動しなくなるゴムをいう。
【0030】
前記ペルオキシド架橋型オレフィン系共重合体ゴムの具体的な例としては、以下のようなゴムが挙げられる。
(1)エチレン・α−オレフィン共重合体ゴム
[エチレン/α−オレフィン(モル比)=約95/5〜50/50]
(2)エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(好ましくは、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム)
[エチレン/α−オレフィン(モル比)=約95/5〜50/50]
【0031】
前記のα−オレフィンとしては、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等が挙げられる。
【0032】
前記非共役ジエンとしては、具体的には、ジシクロペンタジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン(例えば、5−メチレン−2−ノルボルネン)、エチリデンノルボルネン(例えば、5−エチリデン−2−ノルボルネン)、メチルテトラヒドロインデン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、ノルボルナジエン等の環状ジエン;1,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4,5−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、6−メチル−1,6−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、6−エチル−1,6−オクタジエン、6−プロピル−1,6−オクタジエン、6−ブチル−1,6−オクタジエン、6−メチル−1,6−ノナジエン、7−メチル−1,6−ノナジエン、6−エチル−1,6−ノナジエン、7−エチル−1,6−ノナジエン、6−メチル−1,6−デカジエン、7−メチル−1,6−デカジエン、6−メチル−1,6−ウンデカジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等の鎖状ジエンが挙げられる。
【0033】
これらの共重合体ゴムのムーニー粘度ML
1+4(100℃)は、通常10〜300、好ましくは30〜250である。また、前記非共役ジエンが共重合している場合のヨウ素価は、25以下が好ましい。
【0034】
本発明に用いるゴムとしては、前記オレフィン系共重合体ゴムのほかに、他のゴム、例えばスチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、天然ゴム(NR)、ブチルゴム(IIR)等のジエン系ゴム、SEBS、ポリイソブチレンなどが挙げられる。
【0035】
[可塑剤(D)]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、必要に応じて、可塑剤(軟化剤)(D)を含むことができる。
【0036】
可塑剤(D)としては、通常ゴムに使用される可塑剤を用いることができる。具体的には、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン油、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系可塑剤;コールタール、コールタールピッチ等のコールタール系可塑剤;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油等の脂肪油系可塑剤;トール油;サブ(ファクチス);蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛等の脂肪酸及び脂肪酸塩;ナフテン酸;パイン油、ロジン又はその誘導体;テルペン樹脂、石油樹脂、アタクチックポリプロピレン、クマロンインデン樹脂等の合成高分子物質;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート等のエステル系可塑剤;マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジン、液状チオコール、炭化水素系合成潤滑油等が挙げられる。中でも石油系可塑剤、特にプロセスオイルが好ましく用いられる。
【0037】
可塑剤の配合量は、ブリード抑制及び塗装密着性の点から、0質量部以上、10質量部以下であることが好ましい。
【0038】
[オレフィン系熱可塑性エラストマー]
前記のポリオレフィン樹脂(A)及び少なくとも一部が架橋されたゴム(C)は、ポリオレフィン系の完全又は部分架橋熱可塑性エラストマーに存在してもよい。
【0039】
このようなポリオレフィン系の完全又は部分架橋熱可塑性エラストマーのうち、部分架橋熱可塑性エラストマーとしては、例えば、
(1)(a)ペルオキシド架橋型オレフィン系共重合体ゴムと、(b)ペルオキシド分解型オレフィン系プラスチック(ポリオレフィン樹脂(A))とからなる混合物、又は(a)ペルオキシド架橋型オレフィン系共重合体ゴムと、(b)ペルオキシド分解型オレフィン系プラスチック(ポリオレフィン樹脂(A))と、(c)ペルオキシド非架橋型ゴム状物質及び/又は(d)鉱物油系軟化剤とからなる混合物を、有機ペルオキシドの存在下に動的に熱処理して得られた、部分的に架橋された熱可塑性エラストマー、
(2)(a)ペルオキシド架橋型オレフィン系共重合体ゴムと、(b)ペルオキシド分解型オレフィン系プラスチック(ポリオレフィン樹脂(A))と、(c)ペルオキシド非架橋型ゴム状物質及び/又は(d)鉱物油系軟化剤とからなる混合物を、有機ペルオキシド(もしくはフェノール樹脂系架橋剤)の存在下に動的に熱処理して得られた架橋されたゴム組成物に、(e)ポリオレフィン樹脂(A)を均一に配合せしめた、部分的に架橋された熱可塑性エラストマー(及び完全に架橋された熱可塑性エラストマー)等が挙げられる。
【0040】
前記の(c)ペルオキシド非架橋型ゴム状物質とは、例えばポリイソブチレン、ブチルゴム、アタクチックポリプロピレン、プロピレン含量が50モル%以上のプロピレン・α−オレフィン共重合体ゴム等のように、ペルオキシドと混合し、加熱下に混練しても架橋せず、流動性が低下しない炭化水素系のゴム状物質をいう。
【0041】
前記の(d)鉱物油系軟化剤とは、通常ゴムをロール加工する際、ゴムの分子間作用力を弱め、加工を容易にするとともに、カーボンブラック、ホワイトカーボン等の分散を助けたり、あるいは加硫ゴムの硬さを低下せしめて柔軟性、弾性を増す目的で使用されている高沸点の石油留分で、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系等に区別されている。鉱物油系軟化剤としては、例えばパラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル等が挙げられる。
【0042】
本発明で好ましく用いられるオレフィン系熱可塑性エラストマーにおいて、(b)オレフィン系プラスチックと(a)オレフィン系共重合体ゴムとの質量配合比((b)/(a))は、通常90/10〜10/90、好ましくは70/30〜15/85の範囲である。
【0043】
また、ゴムとして、オレフィン系共重合体ゴムとその他のゴムを組合わせて用いる場合には、その他のゴムは、ペルオキシド分解型オレフィン系プラスチックとゴムとの合計量100質量部に対して、通常40質量部以下、好ましくは5〜20質量部の割合で配合する。
【0044】
本発明で好ましく用いられるオレフィン系熱可塑性エラストマーは、結晶性ポリプロピレンと、エチレン・α−オレフィン共重合体ゴム又はエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムとからなり、オレフィン系熱可塑性エラストマー中においてこれらが部分架橋された状態で存在し、かつ、結晶性ポリプロピレンとゴムとの質量配合比(結晶性ポリプロピレン/ゴム)が70/30〜10/90の範囲内にあるオレフィン系熱可塑性エラストマーである。
【0045】
本発明で好ましく用いられるオレフィン系熱可塑性エラストマーのより具体的な例としては、エチレン・プロピレン共重合体ゴム又はエチレン・プロピレン・ジエン共重合体ゴムからなるゴム(a−1)30〜90質量部と結晶性ポリプロピレン(b−1)70〜10質量部[成分(a−1)及び(b−1)の合計量は、100質量部とする]と、前記ゴム(a−1)以外のゴム(c)及び/又は鉱物油系軟化剤(d)5〜150質量部とからなる混合物を、有機ペルオキシドの存在下で動的に熱処理して得られる、前記ゴム(a−1)が部分的に架橋された熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0046】
前記有機ペルオキシドとしては、具体的には、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルクミルペルオキシド等が挙げられる。
【0047】
これらのうち、臭気性、スコーチ安定性の点で、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレートが好ましく、なかでも、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンが最も好ましい。
【0048】
有機ペルオキシドは、結晶性ポリオレフィンとゴムとの合計量100質量部に対して、通常0.01〜5質量部、好ましくは0.05〜3質量部の割合で用いられる。
【0049】
前記有機ペルオキシドによる架橋処理に際し、イオウ、p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム、N−メチル−N,4−ジニトロソアニリン、ニトロソベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン、N,N’−m−フェニレンジマレイミド、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートのような架橋助剤、あるいはエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレートのような多官能性メタクリレートモノマー、ビニルブチラート、ビニルステアレートのような多官能性ビニルモノマーを配合することができる。
【0050】
前記のような化合物を用いることにより、均一かつ緩和な架橋反応が期待できる。特に、本発明においては、ジビニルベンゼンが最も好ましい。ジビニルベンゼンは、取扱い易く、前記の被架橋処理物の主成分である結晶性ポリオレフィン及びゴムとの相溶性が良好であり、かつ、有機ペルオキシドを可溶化する作用を有し、有機ペルオキシドの分散剤として働くため、熱処理による架橋効果が均質で、流動性と物性とのバランスのとれたオレフィン系熱可塑性エラストマーが得られる。
【0051】
本発明に用いるオレフィン系熱可塑性エラストマーを、架橋剤としてフェノール樹脂系架橋剤を用いて製造する場合は、ポリオレフィン樹脂(A)及び未架橋のゴム(C)、例えばエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体をフェノール樹脂系架橋剤により動的架橋することが好ましい。なお、本発明において、「動的架橋」とは、前記混合物にせん断力を加えながら架橋することをいう。
【0052】
フェノール樹脂系架橋剤としては、ハロゲン化フェノール樹脂系架橋剤が挙げられる。 フェノール樹脂系架橋剤としては、レゾール樹脂でありアルキル置換フェノール又は非置換フェノールのアルカリ媒体中のアルデヒドでの縮合、好ましくはホルムアルデヒドでの縮合、又は二官能性フェノールジアルコール類の縮合により製造されることも好ましい。アルキル置換フェノールは1乃至約10の炭素原子のアルキル基置換体が好ましい。更にはp−位において1乃至約10の炭素原子を有するアルキル基で置換されたジメチロールフェノール類又はフェノール樹脂が好ましい。フェノール樹脂系硬化樹脂は、典型的には、熱架橋性樹脂であり、フェノール樹脂系架橋剤又はフェノール樹脂とも呼ばれる。
【0053】
フェノール樹脂系硬化樹脂(フェノール樹脂系架橋剤)の例としては、下記一般式(I)で示される化合物を挙げることができる。
【化1】
(式中、Qは、−CH
2−及び−CH
2−O−CH
2−から成る群から選ばれる二価の基であり、mは0又は1乃至20の正の整数であり、R’は有機基である。)
【0054】
好ましくは、Qは、二価基−CH
2−O−CH
2−であり、mは0又は1乃至10の正の整数であり、R’は20未満の炭素原子を有する有機基である。より好ましくは、mは0又は1乃至5の正の整数であり、R’は4乃至12の炭素原子を有する有機基である。具体的にはアルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、メチロール化アルキルフェノール樹脂、ハロゲン化アルキルフェノール樹脂等があげられ、好ましくはハロゲン化アルキルフェノール樹脂であり、更に好ましくは、末端の水酸基を臭素化したものである。
【0055】
【化2】
(式中、nは0〜10の整数、Rは炭素数1〜15の飽和炭化水素基である。)
【0056】
前記フェノール系硬化樹脂の製品例としては、タッキロール(登録商標)201(アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業(株)社製)、タッキロール(登録商標)250−I(臭素化率4%の臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業(株)社製)、タッキロール(登録商標)250−III(臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業(株)社製)、PR−4507(群栄化学工業(株)社製)、Vulkaresat510E(Hoechst社製)、Vulkaresat532E(Hoechst社製)、Vulkaresen E(Hoechst社製)、Vulkaresen105E(Hoechst社製)、Vulkaresen130E(Hoechst社製)、Vulkaresol315E(Hoechst社製)、Amberol ST 137X(Rohm&Haas社製)、スミライトレジン(登録商標)PR−22193(住友デュレズ(株)社製)、Symphorm−C−100(Anchor Chem.社製)、Symphorm−C−1001(Anchor Chem.社製)、タマノル(登録商標)531(荒川化学(株)社製)、Schenectady SP1059(Schenectady Chem.社製)、Schenectady SP1045(SchenectadyChem.社製)、CRR−0803(U.C.C社製)、Schenectady SP1055F(Schenectady Chem.社製、臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂)、Schenectady SP1056(Schenectady Chem.社製)、CRM−0803(昭和ユニオン合成(株)社製)、Vulkadur A(Bayer社製)が挙げられる。その中でも、ハロゲン化フェノール樹脂系架橋剤が好ましく、タッキロール(登録商標)250−I、タッキロール(登録商標)250−III、Schenectady SP1055Fなどの臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂がより好ましく使用できる。
【0057】
また、熱可塑性加硫ゴムのフェノール樹脂による架橋の具体的な例としては、米国特許第4,311,628号、米国特許第2,972,600号及び米国特許第3,287,440号に記載され、これらの技術も本発明で用いることができる。
【0058】
米国特許第4,311,628号には、フェノール系硬化性樹脂(phenolic curing resin)及び加硫活性剤(cure activator)からなるフェノール系加硫剤系(phenolic curative system)が開示されている。該系の基本成分は、アルカリ媒体中における置換フェノール(例えば、ハロゲン置換フェノール、C
1−C
2アルキル置換フェノール)又は非置換フェノールとアルデヒド、好ましくはホルムアルデヒドとの縮合によるか、あるいは二官能性フェノールジアルコール類(好ましくは、パラ位がC
5−C
10アルキル基で置換されたジメチロールフェノール類)の縮合により製造されるフェノール樹脂系架橋剤である。アルキル置換フェノール樹脂系架橋剤のハロゲン化により製造されるハロゲン化されたアルキル置換フェノール樹脂系架橋剤が、特に適している。メチロールフェノール硬化性樹脂、ハロゲン供与体及び金属化合物からなるフェノール樹脂系架橋剤が特に推奨でき、その詳細は米国特許第3,287,440号及び同第3,709,840号各明細書に記載されている。非ハロゲン化フェノール樹脂系架橋剤は、ハロゲン供与体と同時に、好ましくはハロゲン化水素スカベンジャーとともに使用される。通常、ハロゲン化フェノール樹脂系架橋剤、好ましくは、2〜10質量%の臭素を含有している臭素化フェノール樹脂系架橋剤はハロゲン供与体を必要としないが、例えば酸化鉄、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、二酸化ケイ素及び酸化亜鉛、好ましくは酸化亜鉛のような金属酸化物のごときハロゲン化水素スカベンジャーと同時に使用される。これら酸化亜鉛などのハロゲン化水素スカベンジャーは、フェノール樹脂系架橋剤100質量部に対して、通常1〜20質量部用いられる。このようなスカベンジャーの存在はフェノール系樹脂系架橋剤の架橋作用を促進するが、フェノール樹脂系架橋剤で容易に加硫されないゴムの場合には、ハロゲン供与体及び酸化亜鉛を共用することが望ましい。ハロゲン化フェノール系硬化性樹脂の製法及び酸化亜鉛を使用する加硫剤系におけるこれらの利用は米国特許第2,972,600号及び同第3,093,613号各明細書に記載されており、その開示は前記米国特許第3,287,440号及び同第3,709,840号明細書の開示とともに参考として本明細書にとり入れるものとする。適当なハロゲン供与体の例としては、例えば、塩化第一錫、塩化第二鉄、又は塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン及びポリクロロブタジエン(ネオプレンゴム)のようなハロゲン供与性重合体が挙げられる。本明細書で使用されている「加硫促進剤」なる用語はフェノール系樹脂系架橋剤の架橋効率を実質上増加させるあらゆる物質を意味し、そして金属酸化物及びハロゲン供与体を包含し、これらは単独で、又は組み合わせて使用される。フェノール系加硫剤系のより詳細に関しては、「Vulcanization and Vulcanizing Agents」(W. Hoffman, Palmerton Publishing Company)を参照されたい。適当なフェノール系樹脂系架橋剤及び臭素化フェノール系樹脂系架橋剤は商業的に入手することができ、例えばかかる架橋剤はSchenectady Chemicals, Inc.から商品名「SP−1045」、「CRJ−352」、「SP−1055F」及び「SP−1056」として購入されうる。同様の作用上等価のフェノール系樹脂系架橋剤は、また他の供給者から得ることができる。
【0059】
フェノール系樹脂系架橋剤は、分解物の発生が少ないため、フォギング防止の観点から好適な加硫剤である。フェノール系樹脂系架橋剤は、ゴムの本質的に完全な加硫を達成させるに充分な量で使用される。
【0060】
フェノール樹脂系架橋剤は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体100質量部に対して、通常0.1〜20質量部、好ましくは1〜10質量部となるような量で用いられる。フェノール樹脂系架橋剤の配合量を前記範囲にすることにより、成形性に優れる組成物が得られ、また、得られる成形体は、高強度であって、優れた耐油性を有し、十分な耐熱性及び機械物性を有する。
【0061】
本発明においては、フェノール樹脂系架橋剤による動的架橋に際し、硫黄、p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム、N−メチル−N,4−ジニトロソアニリン、ニトロソベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン−N,N’−m−フェニレンジマレイミドのようなペルオキシ架橋助剤、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレートなどの多官能性メタクリレートモノマー、ビニルブチラート、ビニルステアレートなどの多官能性ビニルモノマー等の助剤を配合することができる。
【0062】
前記助剤を用いることにより、均一かつ穏やかな架橋反応が期待できる。前記助剤としては、ジビニルベンゼンが好ましい。ジビニルベンゼンは、取扱い易く、熱可塑性エラストマー組成物に主成分として含まれる結晶性オレフィン系重合体及びエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体との相溶性が良好であり、かつ、フェノール樹脂系架橋剤を可溶化する作用を有し、フェノール樹脂系架橋剤の分散剤として働くため、熱処理による架橋効果が均質で、流動性と物性とのバランスのとれた熱可塑性エラストマー組成物が得られる。
【0063】
前記助剤は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体100質量部に対して、通常2質量部以下、好ましくは0.3〜1質量部となるような量で用いられる。
【0064】
また、フェノール樹脂系架橋剤の分解を促進するために、分散促進剤を用いてもよい。分解促進剤としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、2,4,6−トリ(ジメチルアミノ)フェノールなどの三級アミン;アルミニウム、コバルト、バナジウム、銅、カルシウム、ジルコニウム、マンガン、マグネシウム、鉛、水銀等、ナフテン酸と種々の金属(例えば、Pb、Co、Mn、Ca、Cu、Ni、Fe、Zn、希土類)とのナフテン酸塩等が挙げられる。
【0065】
前記のような架橋助剤又は多官能性ビニルモノマーは、前記の被架橋処理物全体100質量部に対して、0.01〜5質量部、特に0.05〜3質量部の割合で用いるのが好ましい。架橋助剤又は多官能性ビニルモノマーの配合割合が5質量部を超えると、有機ペルオキシドの配合量が多い場合には、架橋反応が速く進行し過ぎるため、得られる熱可塑性エラストマーは、流動性に劣り、一方、有機ペルオキシドの配合量が少ない場合には、架橋助剤及び多官能性ビニルモノマーが、熱可塑性エラストマー中に未反応のモノマーとして残存し、熱可塑性エラストマーは、加工成形の際に熱履歴による物性の変化が生じたりする。したがって、架橋助剤及び多官能性ビニルモノマーは、過剰に配合すべきではない。
【0066】
前記の「動的に熱処理する」とは、前記のような各成分を融解状態で混練することをいう。混練装置としては、従来公知の混練装置、例えば開放型のミキシングロール、非開放型のバンバリーミキサー、押出機、ニーダー、連続ミキサー等が用いられる。これらのうちでは、非開放型の混練装置が好ましく、混練は、窒素ガス、炭酸ガス等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。
【0067】
また、混練は、使用する有機ペルオキシドの半減期が1分未満となる温度で行うのが望ましい。混練温度は、通常150〜280℃、好ましくは170〜270℃であり、混練時間は、通常0.5〜20分間、好ましくは1〜10分間である。また、加えられる剪断力は、剪断速度として通常、10〜50,000sec
−1、好ましくは100〜10,000sec
−1の範囲内で決定される。
【0068】
なお、完全に架橋されたオレフィン系熱可塑性エラストマーは、前記(1)、(2)のオレフィン系熱可塑性エラストマーの調製方法に準じて有機ペルオキシドの使用量、混練時間等の条件を変えることによって調製することができる。
【0069】
本発明に用いるオレフィン系熱可塑性エラストマーは、JIS K6253に準拠するタイプA硬度(瞬間値)が60以上であることが好ましい。前記タイプA硬度(瞬間値)は、通常1〜98、好ましくは60〜98、更に好ましくは70〜98、特に好ましくは80〜98である。
【0070】
本発明に用いるオレフィン系熱可塑性エラストマーは、230℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFR:ISO1133,230℃、荷重2.16kg)が通常0.1〜100g/10分、好ましくは1〜100g/10分の範囲内である。
【0071】
[熱可塑性エラストマー組成物]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、ポリオレフィン樹脂(A)10〜80質量部、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)10〜80質量部、及び少なくとも一部が架橋されたゴム(C)1〜20質量部(成分(A)、(B)及び(C)の合計量は100質量部である)を含み、好ましくはポリオレフィン樹
脂(A)20〜70質量部、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)20〜70質量部、及び少なくとも一部が架橋されたゴム(C)1〜15質量部(成分(A)、(B)及び(C)の合計量は100質量部である)を含み、更に好ましくはポリオレフィン樹脂(A)30〜60質量部、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)30〜60質量部、及び少なくとも一部が架橋されたゴム(C)1〜10質量部(成分(A)、(B)及び(C)の合計量は100質量部である)を含む。前記の割合で成分(A)、(B)及び(C)を配合することにより、エアバッグカバーのような厚肉部と薄肉部が存在する成形体を射出成形で製造する場合でも、薄肉部の厚さを変えずに外観を向上させることができる。例えば、成形時の樹脂流動方向に直交する向きの成形体厚みの最も厚い部分(L1)と最も薄い部分(L2)との比率(L1/L2)が通常2以上、50以下(下限値が好ましくは3以上、より好ましくは5以上、上限値が好ましくは20以下、より好ましくは10以下)である成形体を射出成形で製造する場合でも、薄肉部の厚さを変えずに外観を向上させることができる。
【0072】
ポリオレフィン樹脂(A)の前記割合が10質量部未満であると、十分な剛性が得られず成形が困難になり、一方、80質量部を超えると、表面光沢が上がり得られる外観改良効果が小さくなる。スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の前記割合が10質量部未満であると、表面光沢が著しく向上し期待される外観改良効果が小さくなり、一方、80質量部を超えると、十分な剛性が得られず成形が困難になる。架橋ゴム(C)の前記割合が1質量部未満又は20質量部を超えると、厚肉部と薄肉部の外観の差異が目立ちやすくなり、得られる外観改良効果が小さくなる。
【0073】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、JIS K6253に準拠するタイプD硬度(瞬間値)が35以上かつ70以下である。前記タイプD硬度(瞬間値)が35未満であると、成形品としての十分な剛性が得られず成形が困難になり、一方、70を超えると、表面光沢が著しく向上し期待される外観改良効果が小さくなる。
【0074】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の前記タイプD硬度(瞬間値)は35〜70、好ましくは40〜70、更に好ましくは45〜70である。
【0075】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成形性の観点から、JIS K6253に準拠するタイプA硬度(瞬間値)が60以上であることが好ましく、70〜98であることがより好ましく、85〜98であることが更に好ましい。
【0076】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、ポリオレフィン樹脂(A)、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)及び少なくとも一部が架橋されたゴム(C)、必要に応じて、ゴム用軟化剤(例えば、前記の(d)鉱物油系軟化剤)、エチレン・α−オレフィン共重合体、更にその他の成分を溶融混練後、造粒あるいは粉砕する方法を採用して製造することができる。
【0077】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、流動性調整の観点から、ポリオレフィン樹脂(A)の一部と、未架橋のゴム(C)と、有機ペルオキシドと、必要に応じて、その他の成分を含有する混合物を動的に熱処理して、部分的又は完全に架橋されたゴム(C)を含むオレフィン系熱可塑性エラストマーを作成した後、残りのポリオレフィン樹脂(A)と、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)と、必要に応じて、その他の成分を溶融混練後、造粒あるいは粉砕する方法により製造することが好ましい。
【0078】
混練装置としては、ミキシングロール及びインテンシブミキサー(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー)、一軸又は二軸押出機等を用いることができるが、非開放型の装置が好ましい。
【0079】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、流動性が高いため、射出成形方法より成形体を成形するのが好ましい。更に、射出成形用金型が型閉状態のキャビティ内に熱可塑性エラストマー組成物を射出して、射出が完了した後、発泡ガスによる樹脂の膨脹で金型壁面との接触を維持しながら移動型を移動させ、移動型を予め設定した基準肉厚位置で停止させて成形する。該金型の冷却が完了した後、移動型を後退させて製品を取り出すことにより得られる、コアバックによる射出発泡成形が可能である。射出時の樹脂温度は160〜260℃の範囲が好ましい。
【0080】
本発明の成形体は、以下の実施形態1〜3に従って、オレフィン系樹脂基材と積層してもよい。
【0081】
<実施形態1>
成形方法:カレンダー成形又はTダイからの押出成形
積層方法:ポリオレフィン系基材層からなるシートを発泡成形した後に表面層を基材層に積層する逐次法、又は、Tダイ押出成形の場合は同時多層押出成形を行う。
【0082】
<実施形態2>
成形方法:多層押出成形
積層方法:ポリオレフィン系基材層と表面層の同時多層押出成形を行う。
【0083】
<実施形態3>
成形方法:逐次又は同時射出成形
積層方法:ポリオレフィン系基材層を射出発泡した後に、表面層である熱可塑性エラストマー組成物を射出し、金型内で積層する逐次射出成形、又は、いわゆるサンドウィッチ成形により基材層と表面層を同時に射出し、積層部品を成形する同時法を行う。
【0084】
[熱可塑性エラストマー組成物の用途]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、種々公知の成形方法、具体的には、例えば、押出成形、プレス成形、射出成形、カレンダー成形、中空成形棟の各種の成形方法により、熱可塑性エラストマー成形体とすることができる。更に、前記成形方法で得られたシートなど成形体を熱成形などで二次加工することができる。
【0085】
本発明の熱可塑性エラストマー成形体は特にその使用用途を限定されるものではないが、例えば、自動車用部品、土木・建材用品、電気・電子部品、衛生用品、フィルム・シートなど種々公知の用途に好適である。
【0086】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、厚肉部と薄肉部が存在する成形体を射出成形で製造する場合でも、薄肉部の厚さを変えずに外観を向上させることができるので、エアバッグカバーのような厚肉部と薄肉部が存在する成形体を射出成形で製造するのに最適である。
【0087】
<自動車部品>
本発明の熱可塑性エラストマー成形体の使用しえる自動車部品としては、自動車内装部品、自動車外装部品があり、例えば、ウェザーストリップ材、バンパーモール、サイドモール、エアスポイラー、エアダクトホース、ワイヤーハーネスグロメット、ラックアンドピニオンブーツ、サスペンションカバーブーツ、ガラスガイド、インナーベルトラインシール、コーナーモールディング、グラスエンキャプシュレーション、フードシール、グラスランチャンネル、セカンダリーシール、各種パッキン類、ホース、エアバッグカバー等を例示でき、中でも本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、射出成形や射出発泡成形性に優れるため、射出成形や射出発泡成形で得られる成形品が特に好ましい。
【0088】
<土木・建材用品>
本発明の熱可塑性エラストマー成形体の使用しえる土木・建材用品としては、例えば、地盤改良用シート、上水板、騒音防止等の土木資材や建材、土木・建築用各種ガスケット及びシート、止水材、目地材、建築用窓枠などを例示できる。中でも本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、射出成形や射出発泡成形性に優れるため、射出成形や射出発泡成形で得られる成形品が特に好ましい。
【0089】
<電気・電子部品>
本発明の熱可塑性エラストマー成形体の使用しえる電気・電子部品としては、例えば、電線被覆材、コネクター、キャップ、プラグ等の電気・電子部品などを例示でき、中でも本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、射出成形や射出発泡成形性に優れるため、射出成形や射出発泡成形で得られる成形品が特に好ましい。
【0090】
<衛生用品>
本発明の熱可塑性エラストマー成形体の使用しえる衛生用品としては、例えば生理用品、使い捨ておむつ、歯ブラシ用グリップ等の衛生用品などを例示でき、中でも本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、射出成形や射出発泡成形性に優れるため、射出成形や射出発泡成形で得られる成形品が特に好ましい。
【0091】
<フィルム・シート>
本発明の熱可塑性エラストマー成形体の使用しえるフィルム・シートとしては、例えば、輸液バッグ、医療容器、自動車内外装材、飲料ボトル、衣装ケース、食品包材、食品容器、レトルト容器、パイプ、透明基盤、シーラントなどを例示でき、中でも本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、射出成形や射出発泡成形性に優れるため、射出成形や射出発泡成形で得られる成形品が特に好ましい。
【0092】
<その他>
本発明の熱可塑性エラストマー成形体の使用しえるその他用途としては、例えば、靴底、サンダル等の履物、水泳用フィン、水中メガネ、ゴルフクラブグリップ、野球バットグリップ等のレジャー用品、ガスケット、防水布、ベルト、ガーデンホース、階段用滑り止めテープ、物流用パレットの滑り止めテープなどを例示できる。
【0093】
本発明の熱可塑性エラストマー成形体の使用しえる用途として、前記用途に限らず、種々の用途に使用しえる。
【0094】
本明細書は、本願の優先権の基礎である特願2017−066222の明細書及び図面に記載される内容を包含する。
【実施例】
【0095】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0096】
以下において実施した物性の測定方法及び評価方法は次のとおりである。
(1)引張強度試験
JIS K6251に準拠して、射出成形にて試験片(JIS 3号ダンベル、厚み2mm)を作成し、引張強さ(TB)(単位:MPa)と破断伸び(EB)(単位:%)を23℃又は−35℃の雰囲気下にて引張速度500mm/分にて測定した。
(2)メルトフローレート(MFR)
ISO1133(又はASTM D1238)に準拠し、230℃、2.16kg荷重で測定した。
(3)ショアー硬度測定
(a)ショアーD硬度
ISO7619(JIS K6253)に準拠して、厚さ3mmの射出成形角板を用い、厚み6mm(厚み3mm片の2枚重ね)の積層されたシートを用いてショアーD硬度計により測定した。ショアーD硬度については、瞬間値を求めた。
(b)ショアーA硬度
JIS K6253に準拠して、厚さ2mmの射出成形角板を用い、厚み6mm(厚み2mm片の3枚重ね)の積層されたシートを用いてショアーA硬度計により測定した。ショアーA硬度については、瞬間値を求めた。
(4)外観
射出成形により、
図1に示すような厚肉部(3mm)と薄肉部(0.5mm)が存在する成形体を作成し、成形後に肉厚差がある部分に発生するティアライン(エアバッグ動作時にカバーが裂ける線)部のグロス変化を肉眼により観察し、下記の基準で評価した。
1.差が顕著である、2.わずかだか差がある、3.差が見分けられない
【0097】
[実施例1〜2及び比較例1]
<使用材料>
(A)ポリオレフィン樹脂としては以下のものを使用した。
・ブロックポリプロピレン(PP−1)
メルトフローレート10g/10分(230℃、2.16kg荷重)
エチレン単位含量14モル%
・ブロックポリプロピレン(PP−2)
メルトフローレート(ISO1133、230℃、2.16kg荷重)50g/10分
密度(ISO1183)0.90g/cm
3
引張弾性率(ISO527)1450MPa
シャルピー衝撃強さ(ISO179、23℃)10kJ/m
2
荷重たわみ温度(ISO75、1.8MPa)55℃
【0098】
(B)スチレン系熱可塑性エラストマーとしては以下のものを使用した。
スチレン/エチレン・ブチレン共重合体(B−1)
メルトフローレート(ISO1133,230℃、2.16kg荷重)20g/10分
A硬度(ISO7619)70
密度(ISO1183)0.89g/cm
3
スチレン/エチレン・ブチレン比(質量比)=20/80
【0099】
(C)ゴムとしては以下のものを使用した。
油展エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム(C−1)エチレン単位含量78モル%
ヨウ素価13
極限粘度[η]3.4dl/g
油展量:ゴム100質量部に対して、可塑剤(ダイアナプロセスオイルPW−380、出光興産製)を40質量部配合
【0100】
(実施例1)
油展エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム(C−1)50質量部と、ブロックポリプロピレン(PP−1)50質量部と、架橋剤として有機ペルオキシド(パーヘキサ25B、日本油脂(株)製)0.3質量部と、架橋助剤としてジビニルベンゼン0.3質量部と、酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010、BASF(株)製)0.1質量部とをヘンシェルミキサーで充分に混合し、下記条件下で押出混練した。
押出機(品番 KTX−46、神戸製鋼(株)製、シリンダー温度:C1〜C2 120℃、C3〜C4 140℃、C5〜C14 200℃、ダイス温度:200℃、スクリュー回転数:400rpm、押出量:80kg/h)
【0101】
前記工程により得られた、部分的又は完全に架橋された熱可塑性エラストマー組成物(α)(メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)25g/10分、デュロメータ硬度D39)100質量部に対し、ブロックポリプロピレン(PP−2)600質量部と、スチレン/エチレン・ブチレン共重合体(B−1)550質量部と、フェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010、BASF(株)製)0.1質量部とを、ヘンシェルミキサーで充分に混合した後、押出機を用いて下記条件下で混練した。
【0102】
これにより、ポリオレフィン樹脂(A)/スチレン系熱可塑性エラストマー(B)/ゴム(C)の質量比が52.6/44.5/2.9である組成物を得て物性を評価した。
【0103】
(混練条件)
押出機:品番 KTX−46、神戸製鋼(株)製
シリンダー温度:C1〜C2 120℃、C3〜C4 140℃、C5〜C14 200℃
ダイス温度:200℃
スクリュー回転数:400rpm
押出量:80kg/h
【0104】
(実施例2)
ポリオレフィン樹脂(A)(ブロックポリプロピレン(PP−1)、ブロックポリプロピレン(PP−2))、スチレン/エチレン・ブチレン共重合体(B−1)及びエチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム(C−1)の質量比を表1に示すように変更する以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物を得た。
【0105】
(比較例1)
ゴム成分(エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム(C−1))を配合せず、ポリオレフィン樹脂(A)(ブロックポリプロピレン(PP−1)、ブロックポリプロピレン(PP−2))及びスチレン/エチレン・ブチレン共重合体(B−1)の質量比を表1に示すように変更する以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物を得た。
実施例1〜2及び比較例1の物性評価の結果を表2に示す。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
本発明により、成形後に肉厚差がある部分に発生するティアライン(エアバッグ動作時にカバーが裂ける線)部のグロス変化が目立たなくなった。流動性の異なる複数種類の樹脂をブレンドすることで成形体の形状変化に伴う樹脂の流動特性の変動が緩和されたほか、成形品表面のモルフォロジーの変化に伴い、乱反射を引き起こすようになったためである。
【0109】
本明細書中で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書中にとり入れるものとする。