特許第6847285号(P6847285)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本碍子株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6847285-分離膜構造体 図000003
  • 特許6847285-分離膜構造体 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6847285
(24)【登録日】2021年3月4日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】分離膜構造体
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/02 20060101AFI20210315BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20210315BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20210315BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   B01D71/02 500
   B01D69/12
   B01D69/10
   B01D69/00
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-31495(P2020-31495)
(22)【出願日】2020年2月27日
(62)【分割の表示】特願2016-572156(P2016-572156)の分割
【原出願日】2016年1月28日
(65)【公開番号】特開2020-78803(P2020-78803A)
(43)【公開日】2020年5月28日
【審査請求日】2020年2月28日
(31)【優先権主張番号】特願2015-17579(P2015-17579)
(32)【優先日】2015年1月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】野田 憲一
【審査官】 松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−083375(JP,A)
【文献】 特開2014−111258(JP,A)
【文献】 特開2004−105942(JP,A)
【文献】 特開2012−236189(JP,A)
【文献】 特表2001−526109(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/080670(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/091937(WO,A1)
【文献】 特開2013−126649(JP,A)
【文献】 特開2000−312824(JP,A)
【文献】 特開平6−170188(JP,A)
【文献】 特開2002−292261(JP,A)
【文献】 特開2002−128512(JP,A)
【文献】 特開2014−205138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00− 71/82
C02F 1/44
B01J 20/00− 20/28
B01J 20/30− 20/34
C01B 15/00− 23/00
C01B 33/20− 39/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともメタンと窒素を含有する混合ガス中の窒素を選択的に透過させる分離膜構造体であって、
多孔質支持体と、
前記多孔質支持体上に形成され、0.32nm以上かつ0.44nm以下の平均細孔径を有する分離膜と、
を備え、
前記分離膜は、金属カチオンを含有し、
前記分離膜の細孔径の標準偏差を前記平均細孔径で割った変動係数は、0.4以下である、
分離膜構造体。
【請求項2】
前記分離膜に添加される前記金属カチオンは、Sr、Mg、Li、Ba、Ca、Cu、Feから選択される少なくとも1種である、
請求項1に記載の分離膜構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタンと窒素を分離するための分離膜構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メタンと窒素を分離することを目的とする様々な手法が提案されている。
【0003】
例えば、分子篩活性炭を用いた圧力スイング吸着法によって窒素を吸着除去する手法(特許文献1参照)や、カチオンをバリウム交換したETS−4を用いた圧力スイング吸着法によって窒素を吸着除去する手法(特許文献2参照)が提案されている。
【0004】
また、CHA型ゼオライト膜、DDR型ゼオライト膜及び有機膜それぞれを用いた膜分離法によって窒素を分離する手法(非特許文献1〜3参照)も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−312824号公報
【特許文献2】特表2001−526109号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Ting Wuほか6名、“Influence of propane on CO2/CH4 and N2/CH4 separations in CHA zeolite membranes”、Jornal of Membrane Science 473 (2015) 201−209
【非特許文献2】J. van den Berghほか4名、“Separation and permiation characteristics of a DD3R zeolite membrane”、Jornal of Membrane Science 316 (2008) 35−45
【非特許文献3】Lloyd M. Robeson、“The upper bound revisited”、Jornal of Membrane Science 320 (2008) 390−400
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、メタンの分子径と窒素の分子径が近似しているため上述の手法では十分な分離性能を達成するに至っていない。
【0008】
本発明は、上述の状況に鑑みてなされたものであり、メタンと窒素を効率的に分離可能な分離膜構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る分離膜構造体は、多孔質支持体と、多孔質支持体上に形成された分離膜とを備える。分離膜は、0.32nm以上かつ0.44nm以下の平均細孔径を有する。分離膜は、金属カチオンを含有する。分離膜の細孔径の標準偏差を平均細孔径で割った変動係数は、0.4以下である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、メタンと窒素を効率的に分離可能な分離膜構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】分離膜構造体の断面図
図2】分離膜の拡大平面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なっている場合がある。
【0013】
(分離膜構造体10の構成)
図1は、分離膜構造体10の構成を示す断面図である。分離膜構造体10は、少なくともメタン分子(以下、「メタン」と略称する。)と窒素分子(以下、「窒素」と略称する。)を含有する混合ガス中の窒素を選択的に透過させる。分離膜構造体10は、多孔質支持体20及び分離膜30を備える。
【0014】
多孔質支持体20は、分離膜30を支持する。多孔質支持体20は、表面に分離膜30を膜状に形成(結晶化、塗布、或いは析出)できるような化学的安定性を有する。
【0015】
多孔質支持体20は、少なくともメタンと窒素を含有する混合ガスを分離膜30に供給できるような形状であればよい。多孔質支持体20の形状としては、例えばハニカム状、モノリス状、平板状、管状、円筒状、円柱状、及び角柱状などが挙げられる。
【0016】
本実施形態に係る多孔質支持体20は、基体21と中間層22と表層23を有する。
【0017】
基体21は、多孔質材料によって構成される。多孔質材料としては、例えば、セラミックス焼結体、金属、有機高分子、ガラス、或いはカーボンなどを用いることができる。セラミックス焼結体としては、アルミナ、シリカ、ムライト、ジルコニア、チタニア、イットリア、窒化ケイ素、炭化ケイ素などが挙げられる。金属としては、アルミニウム、鉄、ブロンズ、ステンレスなどが挙げられる。有機高分子としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリイミドなどが挙げられる。
【0018】
基体21は、無機結合材を含んでいてもよい。無機結合材としては、チタニア、ムライト、易焼結性アルミナ、シリカ、ガラスフリット、粘土鉱物、易焼結性コージェライトのうち少なくとも一つを用いることができる。
【0019】
基体21の平均細孔径は、例えば5μm〜25μmとすることができる。基体21の平均細孔径は、水銀ポロシメーターによって測定できる。基体21の気孔率は、例えば25%〜50%とすることができる。基体21を構成する多孔質材料の平均粒径は、例えば5μm〜100μmとすることができる。本実施形態において、「平均粒径」とは、SEM(Scanning Electron Microscope)を用いた断面微構造観察によって測定される30個の測定対象粒子の最大直径を算術平均した値である。
【0020】
中間層22は、基体21上に形成される。中間層22は、基体21に用いることのできる上記多孔質材料によって構成することができる。中間層22の平均細孔径は、基体21の平均細孔径より小さくてもよく、例えば0.005μm〜2μmとすることができる。中間層22の平均細孔径は、パームポロメーターによって測定することができる。中間層22の気孔率は、例えば20%〜60%とすることができる。中間層22の厚みは、例えば30μm〜300μmとすることができる。
【0021】
表層23は、中間層22上に形成される。表層23は、基体21に用いることのできる上記多孔質材料によって構成することができる。表層23の平均細孔径は、中間層22の平均細孔径より小さくてもよく、例えば0.001μm〜1μmとすることができる。表層23の平均細孔径は、パームポロメーターによって測定することができる。表層23の気孔率は、例えば20%〜60%とすることができる。表層23の厚みは、例えば1μm〜50μmとすることができる。
【0022】
分離膜30は、多孔質支持体20(具体的には、表層23)上に形成される。分離膜30は、無機材料、有機材料、金属材料、或いはこれらの複合材料によって構成することができる。耐熱性や耐有機溶媒性を考慮すると、ゼオライト膜、シリカ膜及び炭素膜などの無機膜が分離膜30として好適であり、細孔径の分布を狭くしやすいことからゼオライト膜がより好適である。なお、シリカ膜には、シリカに有機官能基が結合している有機シリカ膜を含む。
【0023】
分離膜30の平均細孔径は、0.32nm以上かつ0.44nm以下である。そのため、分離膜30は、少なくともメタンと窒素を含有する混合ガス中の窒素(動的分子径:約0.36nm)の透過を許容しつつメタン(動的分子径:約0.38nm)の透過を抑制する。分離膜30の平均細孔径は、分離性能と透過速度の両立を考慮すると、0.33nm以上であることが好ましく、また、0.43以下であることが好ましい。
【0024】
また、分離膜30の細孔径の分布は狭いことが好ましい。すなわち、分離膜30の細孔径のバラツキは小さいことが好ましい。これによって、分離膜構造体10の窒素分離性能をより向上させることができる。具体的に、分離膜30の細孔径の標準偏差を平均細孔径で割ることで求められる変動係数は、0.4以下であることが好ましく、0.2以下であることがより好ましい。細孔径の変動係数とは、細孔径の分布のバラツキ具合を示す代表値である。変動係数を0.4以下とすることによって、径が大きい細孔の割合が減少するため、メタンの膜透過を抑制することができる。
【0025】
なお、分離膜30の厚みは特に制限されるものではないが、例えば0.1μm〜10μmとすることができる。分離膜30を厚くすると窒素の分離性能が向上する傾向があり、分離膜30を薄くすると窒素の透過速度が増大する傾向がある。
【0026】
分離膜30がゼオライト膜である場合、ゼオライトの骨格構造(型)は特に制限されるものではなく、例えばABW、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFV、AFX、APC、ATN、ATT、ATV、AVL、AWO、AWW、BIK、BRE、CAS、CDO、CGF、CGS、CHA、DAC、DDR、DFT、EAB、EEI、EPI、ERI、ESV、GIS、GOO、HEU、IFY、IHW、IRN、ITE、ITW、JBW、JOZ、JSN、KFI、LEV、LTA、LTJ、MER、MON、MTF、MVY、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTE、RTH、RWR、SAS、SAT、SAV、SBN、SFW、SIV、TSC、UEI、UFI、VNI、WEI、WEN、YUG、ZONなどが挙げられる。特に、ゼオライトが結晶化しやすいAEI、AFX、CHA、DDR、HEU、LEV、LTA、RHOが好ましい。
【0027】
ゼオライトの細孔を形成する骨格が酸素n員環以下の環からなる場合、酸素n員環細孔の短径と長径の算術平均をゼオライトの平均細孔径とする。酸素n員環とは、単にn員環とも称し、細孔を形成する骨格を構成する酸素原子の数がn個であって、Si原子、Al原子、P原子の少なくとも1種を含み、各酸素原子がSi原子、Al原子またはP原子などと結合して環状構造をなす部分のことである。例えば、ゼオライトが、酸素8員環、酸素6員環、酸素5員環、酸素4員環からなる細孔を有する(つまり、酸素8員環以下の環からなる細孔のみを有する)場合、酸素8員環細孔の短径と長径の算術平均を平均細孔径とする。
【0028】
また、ゼオライトが、nが等しい複数の酸素n員環細孔を有する場合には、全ての酸素n員環細孔の短径と長径の算術平均をゼオライトの平均細孔径とする。例えば、ゼオライトが、酸素8員環以下の環からなる細孔のみを有し、かつ、複数種の酸素8員環細孔を有する場合、全ての酸素8員環細孔の短径と長径の算術平均をゼオライトの平均細孔径とする。
【0029】
このように、ゼオライト膜の平均細孔径は、骨格構造によって一義的に決定される。骨格構造ごとの平均細孔径は、The International Zeolite Association (IZA) “Database of Zeolite Structures” [online]、[平成27年1月22日検索]、インターネット<URL:http://www.iza-structure.org/databases/>に開示されている値から求めることができる。
【0030】
また、ゼオライト膜の細孔径の変動係数は、ゼオライトの細孔を形成する骨格が酸素n員環以下の環からなる場合、酸素n員環細孔の短径と長径を母集団として求めた標準偏差を用いて算出する。なお、ゼオライトが、nが等しい複数の酸素n員環細孔を有する場合には、全ての酸素n員環細孔の短径と長径を母集団として求めた標準偏差を用いて変動係数を算出する。例えば、ゼオライトが、酸素8員環、酸素6員環、酸素5員環、酸素4員環からなる細孔を有する(つまり、酸素8員環以下の環からなる細孔のみを有する)場合、全ての酸素8員環細孔の短径と長径を母集団として求めた標準偏差を用いて変動係数を算出する。
【0031】
分離膜30がシリカ膜である場合、膜原料の種類、膜原料の加水分解条件、焼成温度、焼成時間などを制御することによって平均細孔径と変動係数を調整可能である。シリカ膜の平均細孔径は、以下の式(1)に基づいて求めることができる。式(1)において、dはシリカ膜の平均細孔径、fは正規化されたクヌーセン型パーミアンス、dk,iはクヌーセン拡散試験に用いられる分子の直径、dk,Heはヘリウム分子の直径である。
【0032】
f=(1−dk,i/d/(1−dk,He/d ・・・(1)
【0033】
クヌーセン拡散試験や平均細孔径の求め方の詳細は、Hye Ryeon Leeほか4名、“Evaluation and fabrication of pore−size−tuned silica membranes with tetraethoxydimethyl disiloxane for gas separation”、AIChE Journal volume57、Issue10、2755−2765、October 2011に開示されている。
【0034】
また、シリカ膜の変動係数は、ナノパームポロメーターによって測定した細孔径分布より求めることができる。
【0035】
分離膜30が炭素膜である場合、膜原料の種類、焼成温度、焼成時間、焼成雰囲気などを制御することによって平均細孔径と変動係数を調整可能である。炭素膜の平均細孔径は、上記式(1)に基づいて求めることができる。炭素膜の変動係数は、ナノパームポロメーターによって測定した細孔径分布より求めることができる。
【0036】
ここで、図2は、分離膜30の拡大平面図である。分離膜30には、メタンに比べて窒素を吸着しやすい金属カチオン(以下、「窒素吸着性金属カチオン」という。)及び金属錯体(以下、「窒素吸着性金属錯体」という。)の少なくとも一方が添加されている。図2に示すように、窒素吸着性金属カチオンや窒素吸着性金属錯体は、分離膜30の表面上や細孔内に配置(又は、露出)されている。少なくともメタンと窒素を含有する混合ガス中の窒素は、窒素吸着性金属カチオンや窒素吸着性金属錯体に引き寄せられて細孔内に入った後、細孔内に次々に入ってくる窒素に押されることによって、窒素吸着性金属カチオンや窒素吸着性金属錯体に次々に吸着しながら多孔質支持体20側に移動する。窒素吸着性金属カチオンとしては、Sr、Mg、Li、Ba、Ca、Cu、Feから選択される少なくとも1種を用いることができる。窒素吸着性金属錯体としては、Ti、Fe、Ru、Mo、Co、Smから選択される少なくとも1種を含む錯体を用いることができる。分離膜30における窒素吸着性金属カチオンや窒素吸着性金属錯体の種類と添加量(濃度)は、EDX(Energy dispersive X−ray spectrometry:エネルギー分散型X線分析)によって測定することができる。窒素吸着性金属カチオン及び窒素吸着性金属錯体の総濃度は特に限定されるものではないが、例えば0.01〜60%とすることができ、窒素の吸着性を考慮すると0.03%以上が好ましく、過剰な窒素吸着性金属カチオン及び窒素吸着性金属錯体による細孔閉塞を抑制する観点から50%以下がより好ましい。
【0037】
ここで、本実施形態において「メタンに比べて窒素を吸着しやすい」とは、窒素とメタンを1:1で含有する混合ガスに暴露された直後の窒素の吸着量がメタンの吸着量よりも大きい状態、すなわち窒素の吸着比が大きい状態を意味する。吸着比は、分離膜30を構成する物質の粉末を用いて、窒素とメタンの吸着量を測定することによって得ることができる。吸着比の測定方法は特に限定されないが、例えばガス吸着測定装置を用いて、分離膜30を構成する物質の粉末10gに窒素とメタンを1:1で含有する混合ガスを10ml/minで供給した際、初期(例えば、約10分)に粉末が吸着する窒素とメタンのモル比を所定条件下(室温、0.1MPa)で測定すればよい。
【0038】
なお、分離膜30に含まれる窒素吸着性金属カチオンや窒素吸着性金属錯体の一部は、分離膜30の表面上や細孔内に露出していなくてもよい。
【0039】
(分離膜構造体の製造方法)
分離膜構造体10の製造方法について説明する。
【0040】
(1)多孔質支持体20の形成
まず、押出成形法、プレス成形法あるいは鋳込み成形法などを用いて、基体21の原料を所望の形状に成形することによって基体21の成形体を形成する。次に、基体21の成形体を焼成(例えば、900℃〜1450℃)して基体21を形成する。
【0041】
次に、所望の粒径のセラミックス原料を用いて中間層用スラリーを調整し、基体21の表面に中間層用スラリーを成膜することによって中間層22の成形体を形成する。次に、中間層22の成形体を焼成(例えば、900℃〜1450℃)して中間層22を形成する。
【0042】
次に、所望の粒径のセラミックス原料を用いて表層用スラリーを調整し、中間層22の表面に表層用スラリーを成膜することによって表層23の成形体を形成する。次に、表層23の成形体を焼成(例えば、900℃〜1450℃)して表層23を形成する。
【0043】
以上によって多孔質支持体20が形成される。
【0044】
(2)分離膜30の形成
多孔質支持体20の表面に分離膜30を形成する。分離膜30は、膜種に応じた従来既知の手法で形成することができる。以下、分離膜30の形成手法の一例としてゼオライト膜、シリカ膜及び炭素膜それぞれの形成方法を順次説明する。
【0045】
・ゼオライト膜
まず、種結晶としてのゼオライトを予め表層23の表面に塗布した後、シリカ源、アルミナ源、有機テンプレート、アルカリ源及び水に窒素吸着性金属カチオン及び窒素吸着性金属錯体の少なくとも一方が添加された原料溶液の入った耐圧容器に多孔質支持体20を浸漬する。この際、窒素吸着性金属カチオンや窒素吸着性金属錯体の添加量を調整することによって、分離膜30の窒素吸着性を制御することができる。
【0046】
次に、耐圧容器を乾燥器に入れ、100〜200℃で1〜240時間ほど加熱処理(水熱合成)を行うことによってゼオライト膜を形成する。次に、ゼオライト膜が形成された多孔質支持体20を洗浄して、80〜100℃で乾燥する。
【0047】
次に、原料溶液中に有機テンプレートが含まれる場合には、多孔質支持体20を電気炉に入れ、大気中にて400〜800℃で1〜200時間ほど加熱することによって有機テンプレートを燃焼除去する。
【0048】
なお、窒素吸着性金属カチオンや窒素吸着性金属錯体は、あらかじめ原料溶液に添加せずに、イオン交換や含浸などの方法によって、成膜後にゼオライト膜中へ導入してもよい。また、窒素吸着性金属カチオンや窒素吸着性金属錯体は、あらかじめ原料溶液に添加した上で、イオン交換や含浸などの方法によって成膜後にゼオライト膜中へ導入してもよい。この際、窒素吸着性金属カチオンや窒素吸着性金属錯体の導入量を調整することによって、分離膜30の窒素吸着性を制御することができる。
【0049】
以上のように形成されるゼオライト膜の平均細孔径と変動係数は、ゼオライトの骨格構造によって一義的に決定される。
【0050】
・シリカ膜
まず、テトラエトシキシランなどのアルコキシシラン、メチルトリメトキシシランなどの有機アルコキシシラン、又はカルボキシエチルシラントリオールナトリウム塩などの有機ヒドロキシシランを硝酸や塩酸等の触媒の存在下で加水分解や縮合させてゾル液とし、窒素吸着性金属カチオン及び窒素吸着性金属錯体の少なくとも一方が添加されたエタノール又は水で希釈することによって前駆体溶液(シリカゾル液)を調製する。この際、窒素吸着性金属カチオンの添加量を調整することによって、分離膜30の窒素吸着性を制御することができる。
【0051】
次に、表層23の表面に前駆体溶液を接触させ、100℃/hrにて400〜700℃まで昇温して1時間保持した後に100℃/hrで降温する。以上の工程を3〜5回繰り返すことによってシリカ膜を形成する。
【0052】
なお、窒素吸着性金属カチオンや窒素吸着性金属錯体は、あらかじめ前駆体溶液に添加せずに、イオン交換や含浸などの方法によって、成膜後にシリカ膜中へ導入してもよい。また、窒素吸着性金属カチオンや窒素吸着性金属錯体は、あらかじめ前駆体溶液に添加した上で、イオン交換や含浸などの方法によって成膜後にシリカ膜中へ導入してもよい。この際、窒素吸着性金属カチオンや窒素吸着性金属錯体の導入量を調整することによって、分離膜30の窒素吸着性を制御することができる。
【0053】
以上のように形成されるシリカ膜の平均細孔径や変動係数は、加水分解条件、焼成温度、焼成時間などを制御することによって調整可能である。
【0054】
・炭素膜
まず、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂、セルロース系樹脂、又はこれらの前駆体物質を、窒素吸着性金属カチオン及び窒素吸着性金属錯体の少なくとも一方が添加されたメタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、NMP、トルエン等の有機溶媒や水に溶解することによって前駆体溶液を調製する。この際、窒素吸着性金属カチオンの添加量を調整することによって、分離膜30の窒素吸着性を制御することができる。
【0055】
次に、前駆体溶液を表層23の表面に接触させ、前駆体溶液に含まれる樹脂の種類に応じた熱処理(例えば、500℃〜1000℃)を施すことによって炭素膜を形成する。
【0056】
なお、窒素吸着性金属カチオンや窒素吸着性金属錯体は、あらかじめ前駆体溶液に添加せずに、イオン交換や含浸などの方法によって、成膜後に炭素膜中へ導入してもよい。また、窒素吸着性金属カチオンや窒素吸着性金属錯体は、あらかじめ前駆体溶液に添加した上で、イオン交換や含浸などの方法によって成膜後に炭素膜中へ導入してもよい。この際、窒素吸着性金属カチオンや窒素吸着性金属錯体の導入量を調整することによって、分離膜30の窒素吸着性を制御することができる。
【0057】
以上のように形成される炭素膜の平均細孔径や変動係数は、樹脂の種類、熱処理温度、熱処理時間、熱処理雰囲気などを制御することによって調整可能である。
【0058】
(作用及び効果)
本実施形態に係る分離膜構造体10は、多孔質支持体20と、多孔質支持体20上に形成された分離膜30とを備える。分離膜30は、0.32nm以上かつ0.44nm以下の平均細孔径を有する。分離膜30は、メタンに比べて窒素を吸着しやすい金属カチオン及び金属錯体の少なくとも一方を含有する。
【0059】
従って、金属カチオンや金属錯体による吸着効果によって窒素を引き寄せるとともに細孔における分子篩効果によって窒素を選択的に透過させることができる。そのため、窒素の分離性と透過性を両立できるため、メタンと窒素を効率的に分離することができる。
【0060】
(その他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0061】
例えば、多孔質支持体20は、基体21と中間層22と表層23を有することとしたが、中間層22と表層23の何れか一方もしくは両方を有していなくてもよい。
【0062】
また、分離膜構造体10は、多孔質支持体20上に積層された分離膜30を備えることとしたが、分離膜30上に積層された機能膜や保護膜をさらに備えていてもよい。このような機能膜や保護膜は、ゼオライト膜や炭素膜やシリカ膜などの無機膜やポリイミド膜やシリコーン膜などの有機膜であってもよい。また、分離膜30上に積層された機能膜や保護膜には、メタンに比べて窒素を吸着しやすい金属カチオンや金属錯体が添加されていてもよい。
【実施例】
【0063】
以下、本発明にかかる分離膜構造体の実施例について説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0064】
(サンプルNo.1の作製)
以下のようにして、サンプルNo.1に係る分離膜構造体を作製した。
【0065】
まず、直径10mm、長さ30mmのチューブ形状の多孔質アルミナ基材を準備した。多孔質アルミナ基材の外表面に開口する細孔径は、0.1μmであった。
【0066】
次に、多孔質アルミナ基材の外表面に分離膜として、Si/Al原子比が40のローシリカDDR型ゼオライト膜を形成した。具体的には、ローシリカDDR型ゼオライト種結晶(Si/Al原子比=40)をエタノールで希釈し、濃度0.1質量%になるように調製した種付け用スラリー液を多孔質アルミナ基材のセル内に流し込んで、セル内を所定条件(室温、風速5m/s、10分)で通風乾燥させた。次に、フッ素樹脂製の広口瓶に蒸留水152.4gを入れた後、1−アダマンタンアミン(アルドリッチ製)1.32gと水酸化ナトリウム(シグマアルドリッチ製)0.35gと30重量%シリカゾル(商品名:スノーテックスS、日産化学製)52.6gとアルミン酸ナトリウム(和光純薬製)0.36gを加えた。次に、ステンレス製耐圧容器のフッ素樹脂製内筒(内容積300ml)内にDDR型ゼオライト種結晶を付着させた多孔質アルミナ基材を配置した後、調合した原料溶液を入れて加熱処理(水熱合成:160℃、48時間)することによって、ローシリカDDR型ゼオライト膜を形成した。次に、多孔質アルミナ基材を洗浄して80℃で12時間以上乾燥させた。そして、多孔質アルミナ基材を電気炉で450℃まで昇温して50時間保持することによって、ローシリカDDR型ゼオライト膜の1−アダマンタンアミンを燃焼除去した。ローシリカDDR型ゼオライト膜の平均細孔径は0.40nmであり、変動係数は0.14であった。
【0067】
次に、塩化リチウム(関東化学製)を水に添加して0.1mol/Lになるように調製したLiイオン交換用液を分離膜に接触させた状態で24時間保持することによって、分離膜に金属カチオンとしてLiを導入した。その後、分離膜を水ですすいで乾燥(70℃、12時間)させた。
【0068】
次に、多孔質アルミナ基材の一端にエポキシ樹脂でガラス板を接着することによって、多孔質アルミナ基材の一端を封止した。続いて、多孔質アルミナ基材の他端にエポキシ樹脂でガラス管を接続した。
【0069】
(サンプルNo.2の作製)
まず、サンプルNo.1と同じ多孔質アルミナ基材を作製した。
【0070】
次に、多孔質アルミナ基材の外表面に分離膜としてサンプルNo.1と同じローシリカDDR型ゼオライト膜を形成した。
【0071】
次に、硝酸ストロンチウム(和光純薬工業製)を水に添加して0.1mol/Lになるように調製したSrイオン交換用液を分離膜に接触させた状態で24時間保持することによって、分離膜に金属カチオンとしてSrを導入した。その後、分離膜を水ですすいで乾燥(70℃、12時間)させた。
【0072】
次に、多孔質アルミナ基材の一端にエポキシ樹脂でガラス板を接着することによって、多孔質アルミナ基材の一端を封止した。続いて、多孔質アルミナ基材の他端にエポキシ樹脂でガラス管を接続した。
【0073】
(サンプルNo.3の作製)
まず、サンプルNo.1と同じ多孔質アルミナ基材を作製した。
【0074】
次に、多孔質アルミナ基材の外表面に分離膜としてサンプルNo.1と同じローシリカDDR型ゼオライト膜を形成した。
【0075】
次に、塩化バリウム二水和物(和光純薬工業製)を水に添加して0.1mol/Lになるように調製したBaイオン交換用液を分離膜に接触させた状態で24時間保持することによって、分離膜に金属カチオンとしてBaを導入した。その後、分離膜を水ですすいで乾燥(70℃、12時間)させた。
【0076】
次に、多孔質アルミナ基材の一端にエポキシ樹脂でガラス板を接着することによって、多孔質アルミナ基材の一端を封止した。続いて、多孔質アルミナ基材の他端にエポキシ樹脂でガラス管を接続した。
【0077】
(サンプルNo.4の作製)
まず、サンプルNo.1と同じ多孔質アルミナ基材を作製した。
【0078】
次に、多孔質アルミナ基材の外表面に分離膜としてサンプルNo.1と同じローシリカDDR型ゼオライト膜を形成した。
【0079】
次に、塩化銅(和光純薬工業製)を水に添加して0.1mol/Lになるように調製したCuイオン交換用液を分離膜に接触させた状態で24時間保持することによって、分離膜に金属カチオンとしてCuを導入した。その後、分離膜を水ですすいで乾燥(70℃、12時間)させた後、真空中で加熱して、Cuを1価に還元させた。
【0080】
次に、多孔質アルミナ基材の一端にエポキシ樹脂でガラス板を接着することによって、多孔質アルミナ基材の一端を封止した。続いて、多孔質アルミナ基材の他端にエポキシ樹脂でガラス管を接続した。
【0081】
(サンプルNo.5の作製)
まず、サンプルNo.1と同じ多孔質アルミナ基材を作製した。
【0082】
次に、多孔質アルミナ基材の外表面に分離膜として有機シリカ膜を形成した。具体的には、カルボキシエチルシラントリオールナトリウム塩25%水溶液24.0gと蒸留水73.0gと60%硝酸3.0gとを加えてマグネチックスターラーで攪拌(60℃、6時間)することによってコーティング液とした。コーティング液を多孔質アルミナ基材の外表面に塗布乾燥した後、200℃で2時間大気焼成することによって、有機シリカ膜を形成した。分離膜の細孔径は0.33nm、変動係数は0.50であった。
【0083】
次に、サンプルNo.1と同様に、分離膜に金属カチオンとしてLiを導入した。
【0084】
次に、多孔質アルミナ基材の一端にエポキシ樹脂でガラス板を接着することによって、多孔質アルミナ基材の一端を封止した。続いて、多孔質アルミナ基材の他端にエポキシ樹脂でガラス管を接続した。
【0085】
(サンプルNo.6の作製)
まず、サンプルNo.1と同じ多孔質アルミナ基材を作製した。
【0086】
次に、多孔質アルミナ基材の外表面に分離膜としてサンプルNo.5と同じ有機シリカ膜を形成した。
【0087】
次に、サンプルNo.2と同様に、分離膜に金属カチオンとしてSrを導入した。
【0088】
次に、多孔質アルミナ基材の一端にエポキシ樹脂でガラス板を接着することによって、多孔質アルミナ基材の一端を封止した。続いて、多孔質アルミナ基材の他端にエポキシ樹脂でガラス管を接続した。
【0089】
(サンプルNo.7の作製)
まず、サンプルNo.1と同じ多孔質アルミナ基材を作製した。
【0090】
次に、多孔質アルミナ基材の外表面に分離膜としてサンプルNo.5と同じ有機シリカ膜を形成した。
【0091】
次に、Fe錯体として[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]鉄ジクロリドをテトラヒドロフラン(THF)に溶解したFe錯体溶液を分離膜に接触させた状態で24時間保持することによって、分離膜にFe錯体を導入した。その後、分離膜を水ですすいで乾燥(70℃、12時間)させた。
【0092】
次に、多孔質アルミナ基材の一端にエポキシ樹脂でガラス板を接着することによって、多孔質アルミナ基材の一端を封止した。続いて、多孔質アルミナ基材の他端にエポキシ樹脂でガラス管を接続した。
【0093】
(サンプルNo.8の作製)
まず、サンプルNo.1と同じ多孔質アルミナ基材を作製した。
【0094】
次に、多孔質アルミナ基材の外表面に分離膜としてサンプルNo.5と同じ有機シリカ膜を形成した。
【0095】
次に、Mn錯体として(シクロペンタジエニル)マンガントリカルボニルをベンゼンに溶解したMn錯体溶液を分離膜に接触させた状態で24時間保持することによって、分離膜にMn錯体を導入した。その後、分離膜を水ですすいで乾燥(70℃、12時間)させた後、紫外線を照射して、Mn錯体をジカルボニル化した。
【0096】
次に、多孔質アルミナ基材の一端にエポキシ樹脂でガラス板を接着することによって、多孔質アルミナ基材の一端を封止した。続いて、多孔質アルミナ基材の他端にエポキシ樹脂でガラス管を接続した。
【0097】
(サンプルNo.9の作製)
まず、サンプルNo.1と同じ多孔質アルミナ基材を作製した。
【0098】
次に、多孔質アルミナ基材の外表面に分離膜として、特開2013−126649号公報を参照してSi/Al原子比が5.2のローシリカCHA型ゼオライト膜を形成した。ローシリカCHA型ゼオライト膜の平均細孔径は0.38nmであり、変動係数は0.00であった。
【0099】
次に、サンプルNo.1と同様に、分離膜に金属カチオンとしてLiを導入した。
【0100】
次に、多孔質アルミナ基材の一端にエポキシ樹脂でガラス板を接着することによって、多孔質アルミナ基材の一端を封止した。続いて、多孔質アルミナ基材の他端にエポキシ樹脂でガラス管を接続した。
【0101】
(サンプルNo.10の作製)
まず、サンプルNo.1と同じ多孔質アルミナ基材を作製した。
【0102】
次に、多孔質アルミナ基材の外表面に分離膜として、AFX型ゼオライト膜を形成した。具体的には、Chemistry of Materials, 8(10), 2409-2411 (1996)を参照してAFX型ゼオライト粉末を合成し、多孔質アルミナ基材の外表面に塗布した。そして、ゼオライト粉末の合成に用いたものと同様の合成ゾル中に多孔質アルミナ基材を浸漬して、水熱合成によってAFX型ゼオライト膜を成膜した。AFX型ゼオライト膜の平均細孔径は0.35nmであり、変動係数は0.04であった。
【0103】
次に、サンプルNo.1と同様に、分離膜に金属カチオンとしてLiを導入した。
【0104】
次に、多孔質アルミナ基材の一端にエポキシ樹脂でガラス板を接着することによって、多孔質アルミナ基材の一端を封止した。続いて、多孔質アルミナ基材の他端にエポキシ樹脂でガラス管を接続した。
【0105】
(サンプルNo.11の作製)
まず、サンプルNo.1と同じ多孔質アルミナ基材を作製した。
【0106】
次に、多孔質アルミナ基材の外表面に分離膜として、HEU型ゼオライト膜を形成した。具体的には、特開2000−237584号公報を参照してHEU型ゼオライト粉末を合成し、多孔質アルミナ基材の外表面に塗布した。そして、ゼオライト粉末の合成に用いたものと同様の合成ゾル中に多孔質アルミナ基材を浸漬して、水熱合成によってHEU型ゼオライト膜を成膜した。HEU型ゼオライト膜の平均細孔径は0.43nmであり、変動係数は0.39であった。
【0107】
次に、サンプルNo.1と同様に、分離膜に金属カチオンとしてLiを導入した。
【0108】
次に、多孔質アルミナ基材の一端にエポキシ樹脂でガラス板を接着することによって、多孔質アルミナ基材の一端を封止した。続いて、多孔質アルミナ基材の他端にエポキシ樹脂でガラス管を接続した。
【0109】
(サンプルNo.12の作製)
まず、サンプルNo.1と同じ多孔質アルミナ基材を作製した。
【0110】
次に、多孔質アルミナ基材の外表面に分離膜として、ANA型ゼオライト膜を形成した。具体的には、特開昭54−146300公報を参照してANA型ゼオライト粉末を合成し、多孔質アルミナ基材の外表面に塗布した。そして、ゼオライト粉末の合成に用いたものと同様の合成ゾル中に多孔質アルミナ基材を浸漬して、水熱合成によってANA型ゼオライト膜を成膜した。ANA型ゼオライト膜の平均細孔径は0.29nmであり、変動係数は0.63であった。
【0111】
次に、サンプルNo.1と同様に、分離膜に金属カチオンとしてLiを導入した。
【0112】
次に、多孔質アルミナ基材の一端にエポキシ樹脂でガラス板を接着することによって、多孔質アルミナ基材の一端を封止した。続いて、多孔質アルミナ基材の他端にエポキシ樹脂でガラス管を接続した。
【0113】
(サンプルNo.13の作製)
まず、サンプルNo.1と同じ多孔質アルミナ基材を作製した。
【0114】
次に、多孔質アルミナ基材の外表面に分離膜として、Si/Al原子比が20のローシリカMFI型ゼオライト膜を形成した。具体的には、まず、ローシリカMFIゼオライト種結晶(Si/Al原子比=20)をエタノールで希釈し、濃度0.1質量%になるように調製した種付け用スラリー液を多孔質アルミナ基材のセル内に流し込んで、セル内を所定条件(室温、風速5m/s、10分)で通風乾燥させた。次に、40質量%テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド溶液(SACHEM製)6.28gとテトラプロピルアンモニウムブロミド(和光純薬工業製)4.97gと水酸化ナトリウム(シグマアルドリッチ製)26.3gと硫酸アルミニウム(和光純薬製)0.54gを混合した後、蒸留水147.1gと約30質量%シリカゾル(商品名:スノーテックスS、日産化学製)14.8gとを加えてマグネチックスターラーで撹拌(室温、30分)することによって膜形成用ゾルを調製した。得られた膜形成用ゾルをステンレス製耐圧容器のフッ素樹脂製内筒(内容積300ml)に入れた後、ゼオライト種結晶を付着させた多孔質アルミナ基材を浸漬して、160℃の熱風乾燥機中で32時間反応させることによって、ローシリカMFI型ゼオライト膜を形成した。次に、多孔質アルミナ基材を洗浄して80℃で12時間以上乾燥させた。次に、多孔質アルミナ基材を電気炉で500℃まで昇温して4時間保持することによって、ローシリカMFI型ゼオライト膜からテトラプロピルアンモニウムを除去した。ローシリカMFI型ゼオライト膜の平均細孔径は0.54nmであり、変動係数は0.04であった。
【0115】
次に、サンプルNo.1と同様に、分離膜に金属カチオンとしてLiを導入した。
【0116】
次に、多孔質アルミナ基材の一端にエポキシ樹脂でガラス板を接着することによって、多孔質アルミナ基材の一端を封止した。続いて、多孔質アルミナ基材の他端にエポキシ樹脂でガラス管を接続した。
【0117】
(ガス分離試験)
サンプルNo.1〜13に係る分離膜構造体を用いてガス分離試験を行った。
【0118】
まず、分離膜構造体を十分に乾燥させた後、窒素とメタンの混合ガス(モル比で1:1)を温度23℃、圧力0.3MPaで分離膜構造体の外側に供給した。
【0119】
次に、ゼオライト膜を透過してガラス管から流出する透過ガスの流量と組成を分析した。透過ガスの流量は、マスフローメーターで測定した。透過ガスの組成は、ガスクロマトグラフィーで測定した。そして、透過ガスの流量と組成に基づいて、単位膜面積・単位圧力差・単位膜厚あたりの窒素とメタンの透過速度を算出し、(窒素透過速度)/(メタン透過速度)を窒素分離性能とした。表1では、窒素分離性能が高い順にA、B、Cと評価され、窒素透過速度が高い順にA、B、Cと評価されている。
【0120】
【表1】
【0121】
表1に示されるように、分離膜の平均細孔径が0.32nm以上かつ0.44nm以下であり、メタンに比べて窒素を吸着しやすい金属カチオン及び金属錯体の少なくとも一方が添加された分離膜を有するサンプルNo.1〜11では、窒素分離性能と窒素透過速度の両方を向上させることができた。
【0122】
また、分離膜の平均細孔径が0.32nm以上かつ0.44nm以下であるサンプルNo.1〜11のうち、変動係数が0.4以下であるサンプルNo.1〜4、9〜11では窒素分離性能をより向上させることができた。
【符号の説明】
【0123】
10 分離膜構造体
20 多孔質支持体
21 基体
22 中間層
23 表層
30 分離膜
図1
図2