(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6847307
(24)【登録日】2021年3月4日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】ネットワークを設定する方法および装置ならびに通信ネットワーク
(51)【国際特許分類】
H04L 12/28 20060101AFI20210315BHJP
H04L 12/717 20130101ALI20210315BHJP
H04L 12/725 20130101ALI20210315BHJP
【FI】
H04L12/28 203
H04L12/717
H04L12/725
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-518640(P2020-518640)
(86)(22)【出願日】2017年10月5日
(65)【公表番号】特表2020-536437(P2020-536437A)
(43)【公表日】2020年12月10日
(86)【国際出願番号】EP2017075340
(87)【国際公開番号】WO2019068329
(87)【国際公開日】20190411
【審査請求日】2020年5月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517291346
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フリンポン アンザー
(72)【発明者】
【氏名】モハメド エル アミネ ホウユウ
【審査官】
安藤 一道
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2005/0086362(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0058083(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0071026(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/28
H04L 12/717
H04L 12/725
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の個数の送信器(1−i)と、第2の個数の受信器(2−i)とを有するネットワーク(10)を設定する方法において、
前記第1の個数の送信器(1−i)の各送信器(1−i)は、前記第2の個数の受信器(2−i)の、関連付けられた受信器(2−i)に、あらかじめ定めた量のデータを定期的に送信し、
定期的な前記送信は、前記送信器(1−i)毎に個別にあらかじめ定めた送信周期で行われ、かつ各前記送信器(1−i)と、関連付けられた前記受信器(2−i)との間では、あらかじめ定めた送信パスが使用され、
前記方法は、
あらかじめ定めたテスト周期内に、前記送信器(1−i)の送信毎に、送信器(1−i)によるデータの送信と、関連付けられた前記受信器(2−i)による前記データの受信との間の最大遅延量を計算するステップ(S1)と、
あらかじめ定めた前記テスト周期内に、前記送信器(1−i)の送信毎に、計算した前記最大遅延量が、あらかじめ定めた第1閾値を上回るか否かを判定するステップ(S2)と、
あらかじめ定めた前記テスト周期内に、あらかじめ定めた前記第1閾値を上回る、計算した前記最大遅延量の個数が、あらかじめ定めた第2閾値以下である場合には、あらかじめ定めた前記送信パスを適用するステップ(S3)と、
を含む
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
複数の前記送信器(1−i)の前記送信周期の最小公倍数に基づいて、前記テスト周期を計算する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
少なくとも2つの送信器(1−i)によるデータ送信が重なっている場合には、タイムスロット毎に前記最大遅延量を計算する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
それぞれの前記タイムスロットに送信されるデータ量の総和に基づいて、前記最大遅延量を計算する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
あらかじめ定めた前記テスト周期内に、あらかじめ定めた前記第1閾値を上回る、計算した前記最大遅延量の前記個数が、あらかじめ定めた前記第2閾値を上回る場合には、少なくとも1つの送信パスを適合させるステップを含む、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
あらかじめ定めた前記テスト周期内に、あらかじめ定めた前記第1閾値を上回る、計算した前記最大遅延量の前記個数が、あらかじめ定めた前記第2閾値を上回る場合には、少なくとも1つの送信器(1−i)と、関連付けられた前記受信器(2−i)との間で時分割多重化送信を適用するステップを含む、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
各前記送信器(1−i)と、関連付けられた前記受信器(2−i)との間の前記送信パスにおける、ネットワーク装置(3−i)の共通ポートによって、少なくとも2つの送信器(1−i)からのデータを処理する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記ネットワーク(10)の関連付けられた受信器(2−i)に、あらかじめ定めた量のデータを定期的に送信するように適合された別の送信器(1−i)を、前記ネットワーク(10)に加えるステップを含む、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
ネットワーク(10)を設定するネットワーク制御装置(4)であって、
前記ネットワーク(10)は、第1の個数の送信器(1−i)と、第2の個数の受信器(2−i)とを有し、前記第1の個数の送信器(1−i)の各送信器(1−i)は、前記第2の個数の受信器(2−i)の、関連付けられた受信器(2−i)に、あらかじめ定めた量のデータを定期的に送信し、
定期的な前記送信は、前記送信器(1−i)毎に個別にあらかじめ定めた送信周期で行われ、
各前記送信器(1−i)と、関連付けられた前記受信器(2−i)との間では、あらかじめ定めた送信パスが使用され、
前記ネットワーク制御装置(4)は、
あらかじめ定めたテスト周期内に、前記送信器(1−i)の送信毎に、送信器(1−i)によるデータの送信と、関連付けられた前記受信器(2−i)による前記データの受信との間の最大遅延量を計算するように適合された遅延計算器(41)と、
あらかじめ定めた前記テスト周期内に、前記送信器(1−i)の送信毎に、計算した前記最大遅延量が、あらかじめ定めた第1閾値を上回るか否かを判定するように適合されたコンパレータ(42)と、
あらかじめ定めた前記テスト周期内に、あらかじめ定めた前記第1閾値を上回る、計算した前記最大遅延量の個数が、あらかじめ定めた第2閾値以下である場合には、あらかじめ定めた前記送信パスを適用するように適合されたネットワークコンフィギュレータ(43)と、
を有する、
ネットワーク制御装置(4)。
【請求項10】
前記遅延計算器は、前記送信器(1−i)の前記送信周期の最小公倍数に基づいて、前記テスト周期を計算するように適合されている、請求項9記載の装置(4)。
【請求項11】
あらかじめ定めた前記テスト周期内に、あらかじめ定めた前記第1閾値を上回る、計算した前記最大遅延量の前記個数が、あらかじめ定めた前記第2閾値を上回る場合には、少なくとも1つの送信器(1−i)と、関連付けられた前記受信器(2−i)との間で時分割多重化送信を適用するように前記ネットワークコンフィギュレータ(43)が適合されている、請求項9または10記載の装置(4)。
【請求項12】
少なくとも2つの送信器(1−i)からのデータが、各前記送信器(1−i)と、関連付けられた前記受信器(2−i)との間の前記送信パスにおいて、ネットワーク装置(3−i)の共通ポートによって処理される、請求項9から11までのいずれか1項記載の装置(4)。
【請求項13】
前記ネットワーク(10)の関連付けられた受信器(2−i)にあらかじめ定めた量のデータを定期的に送信するように適合された別の送信器(1−i)が、前記ネットワーク(10)に加えられるように前記ネットワークコンフィギュレータ(43)が適合されている、請求項9から12までのいずれか1項記載の装置(4)。
【請求項14】
第1の個数の送信器(1−i)と、
第2の個数の受信器(2−i)と、
前記第1の個数の送信器(1−i)と、前記第2の個数の受信器(2−i)とを通信接続するように適合されたネットワークインフラストラクチャと、
を有する、通信ネットワーク(10)において、
前記第1の個数の送信器(1−i)の各送信器(1−i)は、前記第2の個数の、関連付けられた受信器(2−i)に、あらかじめ定めた量のデータを定期的に送信するように適合されており、定期的な前記送信は、前記送信器(1−i)毎に個別にあらかじめ定めた送信周期で行われ、
各前記送信器(1−i)と、関連付けられた前記受信器(2−i)との間では、前記ネットワークインフラストラクチャを通るあらかじめ定めた送信パスが使用され、
前記通信ネットワーク(10)は、さらに請求項9から11までのいずれか1項記載のネットワーク制御装置(4)を有する、
ことを特徴とする、通信ネットワーク(10)。
【請求項15】
前記ネットワークインフラストラクチャは、パケット交換網を有する、請求項14記載のネットワーク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークを設定する方法および装置に関する。本発明はさらに、通信ネットワークに関する。
【0002】
背景技術
米国特許出願公開第2005/086362号明細書には、ネットワーク上でパケットを送信する方法が開示されており、この方法には、パケット送達スケジュールを別々の異なるタイムスロットに分割することと、複数の試験パケットを、異なるタイムスロットを使用してネットワーク上の第1のエンドポイントからネットワークにおける意図された受信側に送信することと、ネットワークの信頼性を評価して複数の試験パケットを各タイムスロットに送信することと、送達スケジュールにおける1つまたは複数のタイムスロットを選択することと、が含まれている。
米国特許出願公開第2005/058083号明細書には、粗細試験期間を使用したネットワーク・パケットの経験的スケジューリングが開示されている。
米国特許出願公開第2007/071026号明細書には、ネットワークを介して圧縮ビデオ・パケットを送信する方法が開示されており、この方法には、送信区間を離散的タイムスロットへ区分することと、送信ノードから受信ノードへネットワークを介してスケジューリング・パケットを送ることと、受信ノードの応答を評価して異なるタイムスロットでのネットワークの信頼度を決定することと、圧縮ビデオ・パケットを配信するために1つまたは複数のタイムスロットを選択することと、が含まれている。
本発明およびその根底にある課題は、基本的に任意の通信ネットワークに適用可能であるが、以下では、工業環境においてマスタコントローラと周辺装置との間で更新が必要なアプリケーションを使用する自動化システムに関連して説明する。
【0003】
自動化システム、特に工業アプリケーションの自動化システムでは、マスタコントローラと複数の周辺装置との間で周期的な更新が必要なコントローラ一括管理アプリケーションが使用されることがある。このために、各周辺装置から、対応するマスタコントローラにデータが定期的に送信される。周辺装置とコントローラとの間でデータを送信するためには、工業用イーサネットまたは工業用バスシステムのような多種多様な技術を使用可能である。例えば、ロボットアームのような装置は、その状態、例えばロボットアームの位置などをコントローラに定期的に通知可能であり、コントローラは、受信データに基づいてその後の制御命令を計算可能である。
【0004】
このようなアプリケーションを高い信頼性で制御できるようにするために、コントローラは、周辺装置から定期的にかつ過度の遅延なしにデータを受信しなければならない。
【0005】
そのゆえに、新たなシステムを設計する場合または既存のシステムを拡張する場合には、周辺装置とコントローラとの間での適時かつ信頼性の高いデータ送信に対する要件が、確実に保証されるようにする必要がある。
【0006】
このような背景の下に、本発明によって扱われる課題は、データが定期的に送信されるネットワークにおいて、適時かつ信頼性の高いデータ送信を可能にする、ネットワーク用の設定を提供することである。
【0007】
要約
本発明によって提供されるのは、請求項1の特徴を有する、ネットワークを設定する方法と、請求項9の特徴的構成を有する、ネットワークを設定する装置と、請求項14の特徴的構成を有する通信ネットワークとである。
【0008】
第1の態様によれば、本発明により、ネットワークを設定する方法が提供される。このネットワークは、第1の個数の送信器と、第2の個数の受信器とを有する。第1の個数の送信器の各送信器は、第2の個数の受信器の、関連付けられた受信器に、あらかじめ定めた量のデータを定期的に送信する。特に、各送信器によって送信されるあらかじめ定めたデータ量は、異なっていてよい。ここでは、定期的な送信は、送信器毎に個別にあらかじめ定めた送信周期で行われる。各送信器と、それぞれの関連付けられた受信器との間では、あらかじめ定めた送信パスを使用する。この方法は、あらかじめ定めたテスト周期内に、送信器の送信毎に、送信器によるデータの送信と、それぞれの関連付けられた受信器によるデータの受信との間の最大遅延量を計算するステップを有する。この方法はさらに、あらかじめ定めたテスト周期内に、送信器の送信毎に、計算した遅延量が、あらかじめ定めた第1閾値を上回るか否かを判定するステップを有する。さらに、この方法は、あらかじめ定めたテスト周期内に、あらかじめ定めた第1閾値を上回る、計算した遅延量の個数が、あらかじめ定めた第2閾値以下である場合に、あらかじめ定めた送信パスを適用するステップを有する。
【0009】
第2の態様によれば、本発明により、ネットワークを設定するネットワーク制御装置が提供される。このネットワークは、第1の個数の送信器と、第2の個数の受信器とを有する。第1の個数の送信器の各送信器は、第2の個数の受信器の、関連付けられた受信器に、あらかじめ定めた量のデータを定期的に送信する。定期的な送信は、送信器毎に個別にあらかじめ定めた送信周期で行われる。各送信器と、それぞれの関連付けられた受信器との間では、あらかじめ定めた送信パスが使用される。この装置は、遅延計算器、コンパレータおよびネットワークコンフィギュレータを有する。遅延計算器は、あらかじめ定めたテスト周期内に、送信器の送信毎に、送信器によるデータの送信と、関連付けられた受信器によるデータの受信との間の最大遅延量を計算するように構成されている。コンパレータは、あらかじめ定めたテスト周期内に、送信器の送信毎に、計算した遅延量が、あらかじめ定めた第1閾値を上回るか否かを判定するように構成されている。ネットワークコンフィギュレータは、あらかじめ定めたテスト周期内に、あらかじめ定めた第1閾値を上回る、計算した遅延量の個数が、あらかじめ定めた第2閾値以下である場合に、あらかじめ定めた送信パスを適用するように適合されている。
【0010】
第3の態様によれば、通信ネットワークが提供される。この通信ネットワークは、第1の個数の送信器と、第2の個数の受信器と、ネットワークインフラストラクチャと、ネットワーク制御装置とを有する。ネットワークインフラストラクチャは、第1の個数の送信器と、第2の個数の受信器とを通信接続するように構成されている。第1の個数の送信器の各送信器は、第2の個数の受信器の、関連付けられた受信器に、あらかじめ定めた量のデータを定期的に送信する。定期的な送信は、送信器毎に個別にあらかじめ定めた送信周期で行われる。各送信器と、関連付けられた受信器との間では、ネットワークインフラストラクチャを介するあらかじめ定めた送信パスが使用される。ネットワーク制御装置は、ネットワークを設定するように適合されている。ネットワーク制御装置は、遅延計算器、コンパレータおよびネットワークコンフィギュレータを有する。遅延計算器は、あらかじめ定めたテスト周期内に、送信器の送信毎に、送信器によるデータの送信と、関連付けられた受信器によるデータの受信との間の最大遅延量を計算するように構成されている。コンパレータは、あらかじめ定めたテスト周期内に、送信器の送信毎に、計算した遅延量が、あらかじめ定めた第1閾値を上回るか否かを判定するように適合されている。ネットワークコンフィギュレータは、あらかじめ定めたテスト周期内に、あらかじめ定めた第1閾値を上回る、計算した遅延量の個数が、あらかじめ定めた第2閾値以下である場合に、あらかじめ定めた送信パスを適用するように適合されている。
【0011】
本発明は、ネットワークを介して同じ時点に複数のデータパケットを送信しようとする場合に、データの送信を遅延させることがあるという事実に基づいている。このような場合、個別のデータパケットを順次に送信しなければならない。それゆえに、キューに入れられるデータパケットは、後の時点に送信可能である。データパケットのこのような遅延は、アプリケーションの制御が、遅延して受信されるデータに基づく場合、なんらかの問題を引き起こすことがある。アプリケーションによっては、受信データを使用するために、あらかじめ定めた閾値よりも小さなわずかな遅延が、許容可能であることがある。しかしながら、受信データの遅延が、許容可能な閾値よりも大きい場合、このようなデータは廃棄しなければならない。
【0012】
アプリケーションによっては、受信データが、1回またはあらかじめ定めた回数よりも小さい回数だけ、廃棄される場合であっても、制御の実行も許容できることがある。しかしながら、より長い周期にわたって、信頼性の高いデータが利用できない場合には、信頼性の高い制御を行うことはできず、結果的に制御システムは、不安定または危険な状態に陥ってしまうことがある。
【0013】
したがって、本発明の一着想は、前もってこのようなシステムの構成を分析し、所望のデータ送信コンセプトに基づいて、信頼性の高い制御を行うことができるか否かを判定することである。遅延および廃棄されたデータパケットの個数が、要求に対する最悪ケースの考察を下回ることを保証できる場合にのみ、それぞれの構成が適用される。そうでない場合には択一的な解決手段を探し求めなければならない。したがって、本発明により、アプリケーションを制御するための、信頼性が高くかつ定期的なデータ送信を実現する解決手段が提供される。
【0014】
送信器は、あらかじめ定めた量のデータを定期的に送信する任意のタイプの送信器であってよい。例えば、送信器は、測定値、例えば、位置、角度、速度、温度、圧力、電圧、電流などを定期的に測定するセンサを有していてよい。しかしながら、任意の別の測定値も検出可能である。検出された測定値は、デジタル値として直接に測定可能であるか、またはアナログの測定値は、アナログ・デジタル変換器によってデジタル値に変換可能である。したがって、検出した測定値に対応するデジタルデータは、送信器から、関連付けられた受信器に定期的に送信可能である。システムの複雑さによっては、任意の個数の、すなわち1つ以上の送信器および受信器が可能である。特に、送信器の個数は、受信器の個数と異なっていてよい。
【0015】
共通の一空間位置おいて、または少なくとも共通の一ハードウェアによって複数の測定値を収集してもよいことはいうまでもない。この場合にこの共通のハードウェアは、収集したすべての測定値のデータを送信可能である。例えば、収集したすべての測定値のデータを共通の一データパケットに組み合わせ、組み合わせたこのデータパケットを、関連付けられた受信器に送信することが可能である。しかしながら、個別の測定値について、個別のデータパケットを生成可能であってもよい。この場合、送信器から2つ以上の受信器に別々のデータパケットを送信可能である。特に、タイプの異なる測定値について、異なる送信間隔を適用可能であってよい。したがって、データは共通のハードウェア装置によって送信されるのにもかかわらず、異なるデータの送信は、個別の送信器によって送信されるデータの送信とみなすことができる。というのは、送信周期および/または関連付けられた受信器データが異なり得るからである。
【0016】
送信器から受信器へのデータの送信は、任意の適切な通信ネットワークを介して行うことが可能である。例えば、送信は、スイッチ、ルータなどのような複数のホップを有する通信ネットワークによって行うことが可能である。したがって送信器から受信器への通信毎に、個別の送信パスを選択可能である。送信パスは、例えば、複数のホップを介する、あらかじめ定めた順序の、送信器から受信器へのルートを指定可能である。特に、特定の送信器から、関連付けられた受信器への送信毎に同じ送信パスが使用される。したがって送信器から受信器への送信パスは、明確に指定可能である。特に、送信器の出力ポート、受信器の入力ポート、および/または中間装置の入出力ポートは、既知である。
【0017】
送信パスおよび関連したハードウェア装置は既知であるため、あらかじめ定めた送信パスを介する、送信器から受信器へのデータ送信に要する時間も既知である。特に、送信器から、関連付けられた受信器に送信される、あらかじめ定めたデータの量は既知であるため、またさらに関連した装置も既知であるため、送信器から受信器にデータを送信するのに要する時間は、極めて正確に特定可能である。
【0018】
すでに上で説明したように、複数の送信器からのデータは、1つ以上の受信器に定期的に送信可能である。各送信器は、そのデータを定期的に送信するために異なる周期を有し得るため、それぞれの送信器によってデータを送信するために個別の時点を考慮しなければならない。例えば、1つの送信器だけがデータを送信しているいくつかの時点が存在し得る。しかしながら、2つ以上の送信器が、データを同時に送信したいといういくつかの時点も存在し得る。特に、このような状況では、送信パスの少なくともいくかの部分は、共通に使用され得る。ネットワークの各セグメントを介しては、1つのデータ送信だけが可能であるため、いくかのデータ送信を延期する、すなわちこれをキューに入れなければならないことがある。したがって、キューに入れられたデータ送信は、時間的に遅延して受信されることがある。
【0019】
最悪ケースのシナリオを評価するために、データ送信を延期する場合に、所望のデータ送信が、送信キューにおける最後の送信になり得ると、想定することができる。したがって、データのこのように遅延された受信がなお許容可能であり得るか否か、またはデータ送信の遅延があらかじめ定めた閾値を上回り、それゆえにこの受信した遅延データをもはや考慮できないか否かを評価可能である。
【0020】
この遅延データがもはや考慮されず、それゆえにこの遅延データが廃棄される場合、このようなデータの廃棄を許容できるか否かを評価しなければならない。例えば、特定の送信器からのデータは、あらかじめ定めた回数(あらかじめ定めた周期に対応する)の間は、廃棄可能であってよい。したがって、受信データが廃棄される場合、データのこのような廃棄を許容でき得るか否かを評価しなければならない。データが、許容可能な回数よりも多く廃棄される場合、すなわち、許容可能な周期よりも長く遅延されるデータの個数が、あらかじめ定めた個数を上回る場合、システムの所望の設定は、なんらかの問題を生じ得る。それゆえに、所望のシステムのこのような設定は、許容可能であることはなく、したがって択一的な設定を探し求めなければならない。
【0021】
しかしながら、データの遅延が、許容可能閾値を下回るか、または、少なくとも、送信中の長い遅延に起因してデータを廃棄しなければならないときの回数が所望の閾値を下回る場合、送信器および受信器を有するネットワークの所望の設定は、許容可能である。それゆえに、このような設定は、システムに適用可能である。
【0022】
送信データの最大遅延と、廃棄されるデータの個数を評価するために、特定のテスト周期の間、データ送信の分析を考慮しなければならない。このテスト周期は、複数の送信器によるデータ送信についての個別の周期に依存する。特に、このテスト周期は、個別の送信器によるデータ送信のすべての組み合わせを考慮に入れることが可能な、少なくとも1つの周期でなければならない。
【0023】
一実施形態によれば、複数の送信器の送信周期の最小公倍数に基づいて、テスト周期を計算する。
【0024】
関連したすべての送信器の個別の送信周期の最小公倍数を考慮する場合、関連したテスト周期は、関連した送信器によるデータ送信のすべての組み合わせを含む。例えば、個別の送信器は、あらかじめ定めた時間間隔を有するあらかじめ定めた時間グリッドに基づいて、データを送信可能である。したがってデータ送信についての周期は、あらかじめ定めたグリッドの時間間隔の倍数で特定可能である。この場合、テスト周期は、個別の送信器の時間間隔の最小公倍数の周期として選択可能である。このようにして、関連した送信器によるデータ送信のすべての組み合わせを考慮することができる。
【0025】
考えられ得る一実施形態において、少なくとも2つの送信器によるデータ送信が重なっている場合、タイムスロット毎に、すなわち時点毎に最大遅延量を計算する。
【0026】
特定の時点に1つの送信器だけがデータを送信している場合、それぞれのデータは、いかなる遅延もなしに直ちに送信可能である。特に、付加的なデータを送信しようとしていない場合、データ送信を延期する/キューに入れる必要はない。しかしながら、特定の時点に2つ以上の送信器が、データを送信しようとする場合、送信されるはずであるデータのうちのいくつかをキューに入れなければならないことがある。これにより、いくかのデータは、それぞれの受信器により、遅延を伴って受信可能である。それゆえに、それぞれのシステムにとってこのような遅延が許容可能か否かを判定するために、この遅延を評価しなければならない。
【0027】
考えられ得る一実施形態では、それぞれのタイムスロットにおいて、すなわちそれぞれの時点において送信されるデータ量の総和に基づいて、最大遅延量を計算する。
【0028】
送信されるはずであるデータ量が既知の場合、このデータ量を送信するのに必要な時間が計算可能である。特に、関連したネットワークの送信速度が既知の場合、データ送信に要する時間は、この送信速度に基づいて特定可能である。必要であれば、それぞれのデータの送信に要する時間を特定するときに、制御データまたは関連した別のデータに起因するオーバヘッドをデータに加えることが可能である。
【0029】
考えられ得る一実施形態では、あらかじめ定めたテスト周期内に、あらかじめ定めた第1閾値を上回る、計算した遅延量の個数が、あらかじめ定めた第2閾値を上回る場合に、少なくとも1つの送信パスを適合させる。
【0030】
したがって、所望の設定が、許容できない遅延および/または許容できない廃棄データ量に起因して問題を生じさせることが検出される場合、データ送信を最適化するために設定を変更しなければならないことになる。したがって、このような最適化は、送信器と受信器との間の少なくとも1つの送信パスを変更することによって実現可能である。例えば、別のホップ(スイッチ、ルータなど)を使用する送信パスを選択可能である。したがって、ネットワークにおける負荷を均すことができる。例えば、過負荷のホップの負担を減らすことできるように、択一的なホップを介していくつかのデータをルーティングすることが可能であってよい。これにより、このような過負荷のホップにおける最大遅延を減少可能であり、結果的に、最大遅延を減少させてそれぞれのデータを送信可能である。
【0031】
考えられ得る一実施形態において、あらかじめ定めたテスト周期内に、あらかじめ定めた第1閾値を上回る、計算した遅延量の個数が、あらかじめ定めた第2閾値を上回る場合に、少なくとも1つの送信器と、関連付けられた受信器との間で時分割多重化送信を適用する。
【0032】
時分割多重化送信により、ネットワークを介してデータを送信するのに要する、信頼性が高くかつ既知の送信時間が可能になり得る。したがって、ネットワークにおける、許容できない大きな遅延、または許容できない大きな廃棄データ量を回避するためにTDM送信を適用可能である。このようなTDM送信を特定の場合だけに制限することにより、このような複雑かつコストのかかる送信方式を計画および実現するための労力を最小化することができる。
【0033】
考えられ得る一実施形態では、少なくとも2つの送信器からのデータを、各送信器と、関連付けられた受信器との間の送信パスにおける、ネットワーク装置の共通のポートによって、処理する。
【0034】
ネットワークを介した送信を指定することにより、一般に、スイッチおよびルータのような関連したホップと、リンク、すなわちそれぞれのホップの間のケーブルとが関連付けられる。したがって、2つのホップの間の各リンクは、ネットワーク装置のそれぞれのポートに割り当て可能である。したがって、共通の一送信ライン(ケーブル)を介して、複数の送信器からデータを送信する場合、それぞれのネットワーク装置の共通の一ポートを使用可能である。
【0035】
考えられ得る一実施形態では、この方法はさらに、別の送信器をネットワークに加えるステップを有する。この別の送信器は、ネットワークの関連付けられた受信器に、あらかじめ定めた量のデータを定期的に送信するように適合可能である。
【0036】
したがって、この方法は、既存のネットワークを増強するために使用可能である。特に、この方法は、それぞれのデータ送信の遅延に起因する問題をなんら生じさせることなく、既存のネットワークに任意の別の送信器を加えることができるか否かを分析可能である。それゆえに、この方法が、なんらの問題もなく別の送信装置を加えることが可能であるという結論に達した場合、増強されたこの設定を受け入れることが可能である。そうでない場合、すなわち送信遅延において問題が検出される場合、この別の送信器を拒否することができるか、または択一的には、この別の送信器を加える前に送信システムの再構成が必要になる。
【0037】
考えられ得る一実施形態において、ネットワーク、特にネットワークインフラストラクチャは、パケット交換網を有する。
【0038】
パケット交換網は、例えば、イーサネットネットワーク、特に工業用イーサネットネットワーク、または任意の別のパケット交換式工業用バスネットワークであってよい。したがって送信器から受信器への定期的なデータの通知は、簡単かつコスト的に有利な仕方で適用可能である。
【0039】
したがって、複数の送信器から複数の受信器に定期的にデータを通知する場合に、本発明により、ネットワーク設定を調べることができる。特に、同じネットワークを介し、複数の送信器によってデータを同時に送信することによって生じる、データ送信における遅延に起因する問題を識別可能である。最大許容可能遅延についての閾値と、許容できないほどの大きな遅延データに起因する、許容可能廃棄データの最大個数についての別の閾値とを考慮することにより、所望の設定において、信頼性の高いデータの送信に対する最小要件が達成できるか否かを識別可能である。特に、所望の設定が、適切であるか否かを自動的に決定できる。それゆえに、不適切な設定は、自動的に拒絶され、そうでない場合、所望の設定の有効性を立証できるときには、この所望の設定を自動的に適用可能である。
【0040】
本発明およびその利点を一層完全に理解できるようにするために、添付の図面と共に取り上げられた以下の説明を参照する。以下では、図面の概略図に示した例示的な実施形態を使用して本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明による通信ネットワークの一実施形態のブロック図である。
【
図2】本発明によるネットワーク制御装置の一実施形態のブロック図である。
【
図3】複数の送信器による定期的な送信を説明する線図である。
【
図4】本発明による方法の一実施形態の流れ図である。
【0042】
添付の図面は、本発明の実施形態のさらなる理解を提供することを意図している。これらの実施形態は、以下の説明と共に、本発明の基本原理およびコンセプトを説明するのに役立つ。また言及される複数の実施形態および多くの利点は、図面を考慮すれば、明らかになる。
【0043】
複数の図面において、同様の、機能的に同等の、および同じ動作の要素、特徴およびコンポーネントには、特に指示のないかぎり、それぞれ同様の参照符号が付されている。
【0044】
図面の詳細な説明
図1には、通信ネットワーク10の一実施形態のブロック図が示されている。通信ネットワークには、複数の送信器1−iと、複数の受信器2−iとが含まれている。
図1では3つの送信器1−iと、2つの受信器2−iとが示されているが、この通信ネットワークは、任意の個数の、すなわち1つ以上の送信器1−iと、任意の個数の受信器2−iとを有していてよいことはいうまでもない。送信器1−iおよび受信器2−iは、複数のホップ3−iを有するネットワークインフラストラクチャによって通信接続されている。送信器1−i、ホップ3−iおよび受信器2−iは、リンクによって、例えばケーブルによって、特に光ファイバまたは銅ケーブルによって接続可能である。例えば、各送信器1−iは、出力ポートを有していてよく、この出力ポートは、それぞれのリンクによってホップ3−iのポートに接続されている。さらに、個々のホップ3−iは、個々のホップ3−iを互いに接続するための、またはホップ3−iと、受信器2−iの入力ポートとを接続するためのポートを有していてよい。これにより、各送信器1−iは、ネットワークインフラストラクチャを介し、あらかじめ定めた送信パスを介して受信器2−iにデータを送信可能である。例えば、送信パスは、関連したホップ3−iを指定することによって特定可能である。特に、送信器1−iから、関連したホップ3−iを介して、所望の受信器2−iにデータを送信するための順序を指定可能である。
【0045】
各送信器1−iは、ネットワークインフラストラクチャを介し、関連付けられた受信器2−iにデータを定期的に送信可能である。連続する2つのデータ送信の間の周期は、送信器1−i毎に個別に設定可能である。したがって各送信器1−iは、それぞれの周期に基づいて、既知の時点にデータを送信する。連続する2つのデータ送信の間の間隔は、所望のアプリケーションに依存してよい。例えば、連続する2つの送信の間の間隔は、ミリ秒、秒、分の範囲内に、またはさらに長い範囲内にあってよい。
【0046】
例えば、送信器1−iは、工業用アプリケーションの一部であってよい。特に、各送信器1−iは、状態情報、測定値、検知パラメータ、または任意の別のタイプの情報を通知可能である。例えば、収集装置(図示せず)によって特定される、例えば温度、圧力、湿度、電圧、電流、速度、位置、角度などの環境パラメータ、測定値、状態情報を特定可能である。収集したデータは、デジタル形式で収集可能であるか、またはアナログ値で収集可能でありかつアナログ・デジタル変換器によってデジタル値に変換可能である。したがってデジタル値は、送信器1−iにより、ネットワークインフラストラクチャを介して、関連付けられた受信器2−iに送信可能である。
【0047】
受信器2−iは、送信器1−iによって送信されたデータを受信し、受信データを分析し、受信データに基づいて処理を実行し、特にシステムを制御することができる。
【0048】
例えば、工業システムでは、複数のセンサにより、センサデータを収集可能であり、ネットワークインフラストラクチャを介して、送信器1−iから受信器2−iに、収集したセンサデータを定期的に通知可能である。受信データに基づき、工業システムを制御可能である。しかしながら、本発明は、工業システムのこのようなアプリケーションに限定されないことはいうまでもない。さらに、送信器1−iから受信器2−iに任意のタイプのデータを定期的に通知して、受信データに基づいて処理を行うことも可能である。
【0049】
受信器2−iによって受信したデータに基づいて、信頼性の高い処理を実行するためには、定期的に送信されるデータを適時に受信しなければならない。したがって受信器2−iは、送信器1−iによってデータが送信される時点と、受信器2−iによってそれぞれのデータが受信される時点との間の遅延を評価可能である。例えば、送信器1−iによってデータを送信するときに、データにタイムスタンプを含めることが可能である。このタイムスタンプに基づき、受信器2−iは、それぞれのタイムスタンプと、受信器2−iの現在のシステム時刻とを比較することによって遅延を特定可能である。特定した遅延が、最大許容遅延を下回る場合、受信データは受け入れ可能であり、引き続きの処理に、例えば技術システムの制御に使用可能である。しかしながら、送信データが、許容可能閾値を上回って遅延している場合、受信データを廃棄可能である。受信データが、許容可能閾値を上回って遅延している場合、受信データは、観察対象システムの現状を表していないことがあり、したがってこのようなデータをシステムの制御に使用してはならない。
【0050】
所望のアプリケーションによっては、いくつかのデータが、過度の遅延に起因して受信されないかまたは廃棄される場合であっても、処理、例えばシステムの制御を実行可能である。したがってデータのタイプ毎に、または送信器1−i毎に、データの廃棄を許容できるあらかじめ定めた回数を指定可能である。択一的には、有効なデータが受信されることなく、処理、特にシステムの制御の実行が許容可能になり得る最大期間を指定可能である。このような期間は、例えば「猶予期間」と称することが可能である。
【0051】
複数の送信器1−iが、共通のネットワークインフラストラクチャを介して1つ以上の受信器2−iに定期的にデータを送信する場合、2つ以上の送信器1−iが、同じ時点にデータを送信しようとしている可能性があり得る。2つ以上の送信器1−iが、同じ時点にデータを送信しようとしており、かつ複数の送信器1−iにより、関連付けられた受信器2−iにデータが送信されるそれぞれの送信パスが、少なくとも部分的に共通のネットワークインフラストラクチャを使用する場合、いくつかのデータ送信操作をキューに入れなければならない。
図1を参照すると、例えば送信器1−1および1−2が、同じ時点に受信器2−1にデータを送信しようとしている。この場合、2つの送信器1−1、1−2により、同じホップ3−1および3−2、ホップ3−1と3−2との間の通信リンク、ならびにホップ3−2と受信器2−1との間のリンクが使用される。したがって、一方の送信器1−1または1−2のデータは、他方の送信器1−2または1−1のデータが送信されるまでキューに入れられなければならない。送信が完了した後、キューに入れられたデータは、後の時点に送信可能である。したがってキューに入れられたデータは、付加的な遅延を伴って受信器2−1によって受信される。この場合、受信器2−1は、付加的な遅延が、それぞれのデータについての許容可能閾値よりも長いか否かを特定可能である。あらかじめ定めた閾値より遅延が短い場合、この遅延データは、受け入れられる。そうでない場合、この遅延データは、廃棄される。
【0052】
すべての送信器1−iが、データ送信について同じ周期を有している場合、複数の送信器1−iからのデータの同時の送信に対し、データを送信する毎にそのような衝突が発生し得る。しかしながらすでに上述したように、すべての送信器1−iが、定期的なデータ送信について同じ周期を有する必要はない。特に、送信器1−iの定期的なデータ送信についての周期が異なる場合、複数の送信器1−iのうちのただ1つだけが、またはいくつかだけがデータを送信しようとしているケースもあり得るが、複数の送信器1−iが、またはすべての送信器1−iさえもが同じ時点にデータを送信しようとしている時点もあり得る。したがって、複数の送信器からのデータの同時の送信に起因する遅延が、通信ネットワーク10においてなんらかの問題を起こし得るか否かを検出するために、送信方式を分析しなければならないことになる。
【0053】
したがって新たなシステムを設計するか、または既存のシステムに別の送信器1−iを追加するか、またはネットワークインフラストラクチャを変更する場合には、定期的に送信されるデータの最大遅延に関する要求を満たすことができるか否かを評価する必要がある。例えば、所望の設定を分析するネットワーク制御装置4を設けることできる。ネットワーク制御装置4は、ネットワークインフラストラクチャを介し、あらかじめ定めた送信パスに基づいて、送信器1−iから受信器2−iに定期的にデータを送信するための周期を考慮することができる。ネットワーク制御装置4は、独立した装置として、またはネットワークインフラストラクチャに含まれる装置として使用可能である。ネットワーク制御装置4を使用するための任意のタイプの設定も可能であることはいうまでもない。
【0054】
図2は、一実施形態によるネットワーク制御装置4のブロック図を示している。
【0055】
ネットワーク制御装置4は、例えば、処理装置のようなハードウェア要素を含んでいてよい。しかしながらネットワーク制御装置4はまた、少なくとも部分的にソフトウェアで実装されていてよい。したがって、例えば、命令は、例えばメモリバスを介して汎用プロセッサに接続されているメモリに格納可能である。プロセッサはさらに、命令を読み込んで実行するオペレーティングシステムを実行可能である。プロセッサは、例えば、命令を読み込んで実行する、WindowsまたはLinuxオペレーティングシステムのようなオペレーティングシステムを実行するIntelプロセッサであってよい。択一的にはプロセッサは、例えば、命令を読み込んで実行する組み込みオペレーティングシステムを動作させる、装置のプロセッサであってよい。
【0056】
ネットワーク制御装置4は、遅延計算器41、コンパレータ42およびネットワークコンフィギュレータ43を有していてよい。遅延計算器41は、あらかじめ定めたテスト周期内に、送信器1−iの送信毎に、送信器1−iによってデータが送信される時点と、関連付けられた受信器2−iによってそれぞれのデータが受信される時点との間の最大遅延量を計算可能である。この遅延は、送信されるはずであるデータ量に関連し、ネットワークインフラストラクチャの送信速度のような理論想定に基づいて計算可能である。さらに、送信器1−iと受信器2−iとの間の送信パスにおける個別のホップでのデータの処理によって生じる付加的な遅延も同様に考慮に入れることが可能である。さらに、送信器1−iから受信器2−iへの送信についての最大遅延を計算する場合、複数の送信器によるデータの同時送信に起因する付加的な遅延も同様に考慮に入れることが可能である。すでに上で説明したように、2つ以上の送信器1−iが同じ時点にデータを送信しようとしている場合、ただ1つの送信器のデータが直ちに送信可能であり、他の送信器1−iのデータはキューに入れなければならない。したがってそれぞれの送信器1−iのデータは、順次に送信される。この場合に想定できるのは、同時に送信されるはずである、複数の送信器からのデータをキューに入れる場合に、着目されているデータが、送信される最後のデータとしてスケジュールされることである。特に、ネットワークインフラストラクチャの送信パスにおける、関連したホップ3−i毎に、キューに入れられるデータの遅延のこのような考察を考慮に入れなければならない。この評価の結果として、送信されるはずであるデータの最大遅延についての最悪ケースの想定が得られる。この最大遅延は、あらかじめ定めたテスト周期内でデータの送信毎に特定しなければならない。関連したテスト周期の特定を、以下により詳細に説明する。
【0057】
送信データの特定した最大遅延に基づき、さらに特定できるのは、この最大遅延が、あらかじめ定めた閾値を上回るか否かである。あらかじめ定めたこの閾値は、送信中のデータの最大許容可能遅延についての制限時間を指定する。あらかじめ定めたこの閾値よりもデータが長く遅延する場合、それぞれのデータは、廃棄され、後続の処理に対して考慮に入れられない。そうでない場合、すなわち送信データの遅延が、あらかじめ定めた閾値を下回る場合、受信データは、受け入れられて、さらなる処理に使用される。このために、コンパレータ42によって特定できるのは、計算した最大遅延量が、あらかじめ定めた閾値を上回るか否かである。この特定は、あらかじめ定めたテスト周期内において、各送信器によるデータ送信毎に行われる。
【0058】
次に、あらかじめ定めた閾値を上回る遅延に起因して、何回、データが廃棄されるかが特定される。特に、考慮したテスト周期内に、過度の遅延に起因していくつのデータ送信が廃棄されるかが送信器1−i毎に特定される。廃棄されるデータ送信の個数が、別の閾値(猶予期間に対応する)を上回る場合、残りの受信データに基づいて、信頼性の高い処理を実行できないことが想定される。そうでない場合、すなわち過度の遅延に起因して廃棄されるデータの個数が別の閾値を下回る場合、受信データに基づいて、信頼性の高い処理を実行できることが想定される。後者の場合には、送信器1−iから、関連付けられた受信器2−iに定期的にデータを送信するこの送信方式を、ネットワークインフラストラクチャの所望のこの設定に適用可能である。特に、ネットワークコンフィギュレータ43は、上記の条件が満たされる場合、すなわち廃棄されるデータ送信の個数が、必要とされる閾値を下回る場合に、所望の設定を適用可能である。そうでない場合、択一的な設定を計算し、上記のようにテストしなければならない。このためには、送信器1−iと、関連付けられた受信器2−iとの間の、あらかじめ定めた送信パスのうちの少なくともいくつかを変更可能である。さらに、データを定期的に送信するための周期の変更、少なくともいくつかの送信器と、別のホップ3−iとの接続もしくはホップ3−iの別のポートとの接続の変更、または所望の設定の別の変更を行うことが可能である。設定を変更した後には、あらたに特定したこの設定を上記のようにテスト可能である。
【0059】
テストした設定が、上述の要求を満たす場合、送信器1−iから受信器2−iへのデータ送信は、ネットワークインフラストラクチャを介し、キュー方式のデータ送信に基づいて行うことが可能である。しかしながら、キュー方式のデータ送信に基づく、データ送信についての適切な解決手段が見つからない場合には、送信器から受信器への適時な送信を保証する時分割多重化送信(TDM送信)に基づいて、少なくともいくかのデータを送信可能である。
【0060】
図3には、3つの送信器1−i、2−i、3−iによる定期的なデータ送信のための送信方式が略示されている。すでに上述したように、本発明は、3つの送信器に限定されないことはいうまでもない。さらに、任意の別の個数の送信器も使用可能である。さらに、本発明は、
図3に示した送信方式にも限定されない。任意の別の送信方式、特に定期的にデータを送信するための任意の別の間隔も可能であってよい。
【0061】
図3に見られるように、第1送信器1−1は、第1周期で定期的にデータを送信可能である。この場合、第1送信器1−1は、時点1、2、3、4、5、6…にデータを送信する。第2送信器1−2は、異なる周期でデータを送信する。この場合、第2送信器1−2の周期は、第1送信器1−1の周期の2倍である。さらに、第3送信器1−3は、第3周期で定期的にデータを送信する。この場合、第3周期は、第1送信器1−1の周期の3倍である。したがって第1時点1では、第1送信器だけがデータを送信する。第2時点2では、第1送信器1−1と第2送信器1−2とが、同時にデータを送信しようとしている。それゆえに、一方の送信器(例えば1−2)のデータは、他方の送信器(例えば1−1)のデータが送信されるまで、キューに入れられる。第3時点では、第1送信器1−1と、第3送信器1−3とが、同時にデータを送信しようとしている。したがって、一方の送信器(例えば1−3)のデータは、他方の送信器(例えば1−1)のデータの送信が成功するまでキューに入れられる。この
図3にさらに見られるように、第6時点6には3つのすべての送信器1−1、1−2および1−3が、同時にデータを送信しようとしている。それゆえに、2つの送信器(例えば1−2、1−3)のデータをキューに入れなければならない。したがって1つの送信器(例えば1−1)のデータだけが直ちに送信可能であるのに対し、別の2つの送信器(例えば1−2、1−3)の、残りのデータをキューに入れなければならない。第1データの送信に成功した後、別の複数の送信器のうちの1つ(例えば1−2)のデータは送信可能であるが、残りのデータは引き続いてキューに入れられている。したがってこの時点6については、関連したデータが、通信ネットワークインフラストラクチャを介して送信されるはずである最後のデータであることを考慮することにより、最大遅延を計算可能である。このようにして、考えられ得るすべてのキューイングの組み合わせによって、最悪ケースの想定を考慮に入れることができる。
【0062】
この
図3に見られるように、送信パターンは、第6時点の後毎に繰り返される。それゆえに、考えられるすべての遅延を考慮する最小テスト周期により、少なくともこのような周期を評価可能である。この周期は、関連したすべての周期の最小公倍数によって容易に計算可能である。この例において、第1送信器1−1は、1の周期を有し、第2送信器1−2は、2の周期を有し、第3送信器1−3は、3の周期を有する。したがって1、2および3の最小公倍数は6であり、結果的に、最大遅延を考慮するテスト周期は、1、2および3の最小公倍数、すなわち6と考えることができる。
【0063】
上述のように、ネットワークインフラストラクチャを介して送信器1−iから受信器2−iに送信されるデータのなかに、最大許容遅延を上回る遅延を伴って受信され得るものがあるか否かを識別可能である。同様に上述したように、遅延が最大許容閾値を上回るデータは廃棄される。この場合、遅延を生じさせるデータを送信しない送信方式を適用することさえも可能であってよい。それゆえに、あらかじめ定めた許容可能閾値よりも大きな遅延伴って受信されるデータ、または同時に送信されることになっている別のデータの遅延を生じさせるデータの送信をしないことにより、ネットワークの負荷をさらに減少させることが可能である。
【0064】
したがって、他のデータを適時に受信できるようにするために、特定のデータの送信をやめることが可能であってよい。例えば、特定の送信器1−iから、関連付けられた受信器2−iへのデータが、別の送信器1−iによるデータの送信に起因して、過度の遅延伴って受信されることになる場合、この別の送信器1−iの送信を停止することができ、これにより、さもなければ遅延して受信されるデータを適時に受信できるようにする。
【0065】
図4には、ネットワークを設定する方法の流れ図が示されている。わかり易くするために、
図4に基づくこの方法の以下の説明では、この明細書において上で使用した参照符号をそのまま使用する。
【0066】
ネットワークを設定するこの方法は、すでに上で説明した通信ネットワーク10に適用可能である。したがって、上述の要素の動作は、以下で説明されるようにこの方法に適用される。したがって、以下で説明するネットワークを設定する方法のすべてのステップはまた、上述のネットワーク制御器4にも適用される。
【0067】
ネットワーク10を設定する方法は、第1の個数の送信器1−iと、第2の個数の受信器2−iとを有するネットワークに適用可能である。各送信器1−iは、関連付けられた受信器2−iに、あらかじめ定めた量のデータを定期的に送信する。この定期的な送信は、送信器1−i毎に個別にあらかじめ定めた送信周期で行われる。さらに、各送信器1−iと、関連付けられた受信器2−iとの間では、あらかじめ定めた送信パスが使用される。この方法は、送信器1−iによるデータの送信と、関連付けられた受信器2−iによるデータの受信との間の最大遅延量を計算するステップS1を有する。計算S1は、あらかじめ定めたテスト周期内に、送信器1−iの送信毎に行われる。
【0068】
この方法はさらに、計算した遅延量が、あらかじめ定めた第1閾値値を上回るか否かを判定するステップS2を有する。この判定は、あらかじめ定めたテスト周期に送信器1−iの送信毎に行われる。さらに、この方法は、あらかじめ定めたテスト周期内に、あらかじめ定めた第1閾値を上回る、計算した遅延量の個数が、少なくとも、あらかじめ定めた第2閾値以下の場合に、あらかじめ定めた送信パスを適用するステップS3を有する。
【0069】
テスト周期は、送信器1−iの送信周期の最小公倍数に基づいて計算可能である。
【0070】
最大遅延量は、タイムスロット毎に、すなわち、少なくとも2つの送信器1−iによるデータ送信が重なっている時点毎に計算可能である。
【0071】
最大遅延量は、それぞれのタイムスロットに送信されるデータ量の総和に基づいて計算可能である。
【0072】
この方法はさらに、あらかじめ定めたテスト周期内に、あらかじめ定めた第1閾値を上回る、計算した遅延量の個数が、あらかじめ定めた第2閾値を上回る場合に、少なくとも1つの送信パスを適合させるステップを有する。
【0073】
この方法はさらに、あらかじめ定めたテスト周期内に、あらかじめ定めた第1閾値を上回る、計算した遅延量の個数が、あらかじめ定めた第2閾値を上回る場合に、少なくとも1つの送信器1−iと、関連付けられた受信器2−iの間で時分割多重化送信を適用するステップを有していてよい。
【0074】
少なくとも2つの送信器からのデータは、各送信器1−iと、関連付けられた受信器2−iとの間の送信パスにおける、ネットワーク装置3−iの共通ポートによって処理可能である。
【0075】
この方法はさらに、ネットワークに別の送信器1−iを加えるステップを有していてよい。この別の送信器i−1は、ネットワークの関連付けられた受信器2−iに、あらかじめ定めた量のデータを定期的に送信するように適合させることが可能である。
【0076】
特に、ネットワーク10は、パケット交換網を有する、例えば工業用イーサネットまたは工業用バスシステムのようなイーサネットを有するネットワークインフラストラクチャを有していてよい。
【0077】
要約すると、本発明は、複数の送信器が、複数の受信器に定期的にデータを送信する通信ネットワークに関する。データは、キューを利用する送信方式によって送信可能である。通信ネットワークの信頼性を評価するために、キューに入れられた送信の遅延についての最悪ケースの想定が行われる。キューに入れられて遅延した送信が、あらかじめ定めた最大値を上回る場合、データは廃棄可能である。ネットワークは、過度の遅延に起因して廃棄されるデータの個数が、別の閾値を下回る場合に、受け入れ可能とみなすことができる。