(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記取付部は、前記治具本体板部に設けられている取付穴に環状形状が通されているカラビナである、請求項1に記載のエレベーターロープ交換作業用のロープ送り支援治具。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を用いて本開示に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、エレベーターとして、機械室レス方式のエレベーターを述べるが、これは、エレベーターロープである主ロープが長くその質量が大きく、ロープ送り出しに案内綱が用いられる一例である。機械室レス方式でなくても、エレベーターの主ロープを旧ロープから新ロープに交換する保守作業において旧ロープを回収する場合に、本開示が適用できる。以下では、新ロープの送り出しと旧ロープの引出し回収とを最下階乗場で行うものとしたが、これは説明のための例示であって、最下階乗場以外の最上階乗場等において新ロープの送り出しと旧ロープの引出し回収とを行ってもよい。以下では、エレベーターロープの交換として、主ロープが3本で構成され、旧ロープの3本をまとめて新ロープの3本に交換する例を述べるが、これは説明のための例示である。ロープの本数、まとめ方は、エレベーターの仕様、エレベーターの保守手順仕様等に応じ、適宜変更が可能である。
【0015】
以下で述べる形状、寸法、材質、個数等は、説明のための一例であって、エレベーターの仕様、エレベーターロープ交換作業用のロープ送り支援治具の仕様等に応じ、適宜変更が可能である。また、以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1から
図4は、エレベーターロープ40の交換作業の対象としての機械室レス方式のエレベーター10の構成図である。
図1は、交換作業前のエレベーター10の状態を示す図であり、
図4は、エレベーターロープ40を旧ロープ42から新ロープ44への交換作業において、旧ロープ42に新ロープ44を接続した後、旧ロープ42を回収する回収作業状態を示す図である。
図2と
図3は、
図1の交換作業前の状態から
図4の回収作業状態に移る途中の作業状態を示す図である。エレベーターロープ40の交換作業は、
図1の状態から
図2の状態、
図3の状態を経て、
図4の状態に移る。
【0017】
ここで、エレベーター10において、乗りかご30と釣合おもり36とに懸架されるロープを、広義のエレベーターロープ40と呼ぶ。エレベーター10が通常運行の場合におけるエレベーターロープ40は、主ロープ41と呼ばれる。エレベーターロープ40の交換作業は、主ロープ41を旧ロープ42と言い換えて、旧ロープ42を新ロープ44に交換する作業である。旧ロープ42が新ロープ44に完全に置き換わった状態のエレベーター10では、新ロープ44が新しい主ロープ41となる。
【0018】
図1に従って、交換作業前のエレベーター10の構成を述べる。エレベーター10は、建物12を縦貫して設けられる昇降路14内において、乗りかご30に乗客を乗せ、乗客の要求に応じて昇降路14内で乗りかご30を昇降させる乗客運搬装置である。昇降路14は、建物12の上下方向に縦貫する空間で、建物12の各階乗場に対応する乗降口を有する。
図1では、各階乗場として、最下階乗場16と、最上階乗場18とを示す。昇降路14の底面はピット20であり、ピット20へは、最下階乗場16から降りる。乗りかご30の上部には、保守作業用のかご上手摺32が設けられる。かご上手摺32で囲まれた乗りかご30の上部の領域は、かご上作業領域33である。
【0019】
エレベーター10は、乗りかご30の他に、巻上機34、釣合おもり36、エレベーターロープ40としての主ロープ41を含む。巻上機34は、ピット20に配置される回転機械で、その出力軸に設けられる駆動シーブ35に主ロープ41が懸架され、図示しない制御装置の制御の下で主ロープ41の移動駆動を行う昇降用モータである。釣合おもり36は、巻上機34の負荷を軽減するために、乗りかご30の質量と釣り合う質量を有するおもりで、巻上機34を挟んで乗りかご30と反対側で主ロープ41に接続される。
【0020】
図1以下において、直交する3方向として上下方向、幅方向、奥行方向を示す。上下方向は、昇降路14の上下方向で、上層階方向が上方側、下層階方向が下方側である。幅方向は、昇降路14の幅方向で、例えば最上階乗場18において、乗りかご30に向かって右方向が右側であり、左方向が左側である。奥行方向は、昇降路14の奥行方向で、例えば最上階乗場18において、昇降路14に向かう方向が昇降路側であり、反対に昇降路14側から最上階乗場18に向かう方向が乗場側である。
【0021】
ピット20に設けられるおもり側ダンパ22及びかご側ダンパ24は、釣合おもり360及び乗りかご30のそれぞれについて、下方側の行き過ぎを受け止める緩衝装置である。
【0022】
昇降路14内の上下方向に渡って設けられるガイドレール26,28は、乗りかご30の昇降路14内の昇降を案内する案内部材である。
【0023】
昇降路14の最上方側である天井側において、釣合おもり36側に設けられる綱止板50は、一方端取付ソケット51を介して主ロープ41の一方端を固定する張出板である。乗りかご30側に設けられる綱止板52は、他方端取付ソケット53を介して主ロープ41の他方端49を固定する張出板である。
【0024】
昇降路14の天井側に設けられる返し車58,60、及び、釣合おもり36の上方側端部に設けられるおもり吊り車62、乗りかご30の床面側に設けられるかご吊り車64,66は、綱止板50,52の間に張り渡される主ロープ41が懸架される滑車である。
【0025】
主ロープ41は、巻上機34の昇降モータの駆動制御によって駆動されるエレベーター昇降用ロープで、その移動によって乗りかご30及び釣合おもり36が昇降路14内を昇降する。主ロープ41は、一方端取付ソケット51への取付端を一方端48とし、おもり吊り車62、返し車58、駆動シーブ35、返し車60、かご吊り車64,66に懸架されて、他方端取付ソケット53への取付端を他方端49として、張り渡される。
【0026】
かかる主ロープ41には、複数の鋼線を撚線とした鋼ロープが用いられる。主ロープ41の全長は、駆動シーブ35から返し車58または返し車60までの長さを乗りかご30の昇降ストロークとして、昇降ストロークの約4倍の長さである。主ロープ41の外径寸法と本数は、乗りかご30の質量や、エレベーター10の昇降ストローク、昇降速度等の仕様によって定められる。以下では、外径寸法が約10mm、本数を3本とする。これは説明のための例示であって、これ以外の外径寸法、本数であっても構わない。
【0027】
次に、
図2から
図4を用いて、エレベーター10における主ロープ41の交換作業の手順の一例を述べる。以下で述べる交換作業の手順は、説明のための例示であって、エレベーター10のメンテナンスの仕様等に応じて適宜変更が可能である。
図4は、旧ロープ回収作業の状態を示す図で、
図2と
図3は、
図1の交換作業前の状態から、
図4の旧ロープ回収作業の状態へ移行する途中の工程について、エレベーター10の乗りかご30が最上階に配置されている部分を抜き出して示す図である。
図2は、新ロープ44を最上階乗場18付近まで引っ張り上げた状態を示し、
図3は、新旧ロープの接続状態を示す図である。
【0028】
以下では、
図1で述べた主ロープ41を交換対象として、これを旧ロープ42と言い換え、
図2から
図4において太い破線で示す。旧ロープ42と交換されるエレベーターロープ40を新ロープ44と呼び、
図2から
図4において太い実線で示す。
図2から4において、保守作業員6,8は、旧ロープ42を新ロープ44に交換する交換作業を分担して行う要員である。保守作業員6は最下階乗場16に、保守作業員8は乗りかご30のかご上手摺32で囲まれたかご上作業領域33に配置される。必要に応じ保守作業員の数を3人以上としてもよい。
【0029】
主ロープ41の交換作業は、最下階乗場16、ピット20、及び、乗りかご30のかご上作業領域33で行われるので、主ロープ41の交換作業に必要な治具、滑車等を、最下階乗場16の交換作業領域と、かご上作業領域33とに予め準備する。交換作業に必要な治具、滑車等の主なものは、ロープ送り出し治具70、ロープ回収容器72、新ロープ送り出しガイド車74、チェーンブロック76,78、パイプサポート80、おもり側追加滑車82、かご側追加滑車84等である。これ以外に、新ロープクリート86、案内綱90、旧ロープクリート100、旧ロープ吊下クリップ104、案内シャックル108等、及び、エレベーターロープ交換作業用のロープ送り支援治具110がある。以下では、特に断らない限り、エレベーターロープ交換作業用のロープ送り支援治具110を、ロープ送り支援治具110と呼ぶ。
図4には、これらが配置された状態が示される。
【0030】
図1の交換作業前の状態から、
図2に示す新ロープ44を最上階乗場18付近まで引張り上げた
図2の状態にする手順(新ロープ引っ張り上げ工程)は、以下のように進められる。
【0031】
まず、新ロープ44が巻かれたロープ送り出し治具70が交換作業領域である最下階乗場16に置かれる。ロープ送り出し治具70は、中心軸71の回りに回転可能な円筒状のロープ巻きドラムである。ロープ送り出し治具70の上部には、回収した旧ロープ42を適当な長さに切断して収容するためのロープ回収容器72が配置される。
【0032】
次に、新ロープ送り出しガイド車74をガイドレール26に回転可能として取り付ける。新ロープ送り出しガイド車74の上下方向の配置高さ位置は、ピット20の床面を基準として、ロープ送り出し治具70の配置高さ位置とほぼ同じに設定される。
【0033】
そして、保守作業員6は、ロープ送り出し治具70から新ロープ44の3本をそれぞれ引き出す(
図4参照)。そして、新ロープ44の一方端46について、新ロープ送り出しガイド車74を通した後に、新ロープ44の3本のそれぞれを区別して新ロープクリート86で保持する。新ロープクリート86は、新ロープ44の一方端46から測って、後述する新旧ロープの接続に必要な長さとなる位置で新ロープ44の一方端46側を保持する。例えば、新ロープ44の一方端46から約2m程度離れた位置で、新ロープ44の一方端46側を新ロープクリート86で保持する。
【0034】
乗りかご30のかご上作業領域33には、予め案内綱90が持ち込まれている。案内綱90としては、保守作業員6,8が引っ張りやすいように、適当な強度と柔軟性を有する天然繊維または樹脂繊維を撚った綱を用いることがよい。案内綱90は、最上階乗場18の位置にある乗りかご30のかご上作業領域33からピット20までの距離以上の長さを有する。そして、乗りかご30を最下階乗場16の位置まで降下させ、保守作業員8は、案内綱90の他方端92を持ったまま、案内綱90の一方端91をピット20に下ろす。
【0035】
ピット20において、新ロープクリート86には図示しない綱取付穴が設けられているので、保守作業員6は、かご上作業領域33から垂らされた案内綱90の一方端91を、新ロープクリート86の綱取付穴に取り付け、新ロープ44と案内綱90を一体化する。そして、かご上作業領域33の保守作業員8は、案内綱90の他方端92側から案内綱90を手繰り寄せて、新ロープクリート86をかご上作業領域33に上げ、かご上手摺32に新ロープクリート86を固定する。その状態で、乗りかご30を最上階乗場18の位置まで上昇させる。
【0036】
図2は、乗りかご30が最上階乗場18の位置まで上昇し、新ロープ44は、かご上手摺32に固定された新ロープクリート86と共に、ロープ送り出し治具70から新ロープ送り出しガイド車74を経由して、最上階乗場18付近まで引張り上げられた状態を示す。
【0037】
新ロープ引っ張り上げ工程が終わった
図2の状態から、
図3に示す新旧ロープの接続状態とする手順(新旧ロープ接続工程)は、以下のように進められる。
【0038】
まず、おもり側ダンパ22の上方側に所定の長さのパイプサポート80を配置して、釣合おもり36が下降してきた場合の最下位置をかさ上げする(
図4参照)。
【0039】
次に、乗りかご30を適当に吊り上げて固定するためのチェーンブロック76,78の上方端を昇降路14の天井壁において乗りかご30の上方に対応する箇所に固定し、下方端を乗りかご30のかご上手摺32に固定する。そして、チェーンブロック76,78を適当に操作し、乗りかご30を適当な高さに吊り上げて固定する。吊り上げ量の一例を挙げると、約50mm程度である。
【0040】
そして、旧ロープ42の一方端48側について、綱止板50に取り付けられる一方端取付ソケット51の下方側の適当な位置で、旧ロープ42の3本のそれぞれを区別して旧ロープクリート100で保持する。そして、旧ロープ42を一方端48で切断しても旧ロープ42が落下しないように、旧ロープクリート100を、適当なミニチェーンブロック等(図示せず)で昇降路14の天井壁に対して固定する。旧ロープクリート100は、旧ロープ42の一方端48における一方端取付ソケット51から測って、後述する新旧ロープの接続に必要な長さとなる位置を保持する。例えば、旧ロープ42の一方端取付ソケット51から約1m程度離れた位置で、旧ロープクリート100は旧ロープ42を保持する。
【0041】
そして、保守作業員8は、かご上作業領域33において、綱止板50に取り付けられる一方端取付ソケット51の下方側で旧ロープ42を切断する。
図3において、旧ロープ42の一方端48側の切断位置をXマークで示す。切断された旧ロープ42の一方端48の先端部102は、おもり側追加滑車82に懸架されて乗りかご30側に出される。乗りかご30のかご上作業領域33にある新ロープ44の一方端46は、おもり側追加滑車82側に引き出され、旧ロープ42の一方端46の先端部102と所定の接続方法で接続される。
【0042】
図3は、かご上作業領域33の保守作業員8が、おもり側追加滑車82の乗りかご30側において、旧ロープ42の一方端48の先端部102と、新ロープ44の一方端46とを接続する様子を示す図である。接続作業は、旧ロープ42の一方端48について旧ロープクリート100でそれぞれ区別されている3本と、新ロープ44の一方端46について新ロープクリート86でそれぞれ区別されている3本を、予め定めた接続手順で結合することで行われる。新旧ロープの接続後、新ロープクリート86は新ロープ44から外される。
【0043】
旧ロープ42と新ロープ44とが接続されると、次に、旧ロープ42の回収が行われる(旧ロープ回収工程)。
図4は、旧ロープ回収作業の状態の内で、特に、旧ロープ42を引っ張り出すために、旧ロープ42の他方端49側を切断し、切断された先端部106と案内綱90とを接続する作業を示す図である。
図3の状態から
図4の状態へは、以下の手順によって進められる。
【0044】
旧ロープ42を回収するために、まず、旧ロープ吊下クリップ104をかご上手摺32に固定して取り付ける。そして、旧ロープ42の他方端49側について、綱止板52に取り付けられる他方端取付ソケット53の下方側の適当な位置を、旧ロープ吊下クリップ104で保持する。これによって、旧ロープ42を他方端49側で切断しても旧ロープ42が落下しなくなる。旧ロープ吊下クリップ104は、旧ロープ42の他方端取付ソケット53から測って、ロープ送り支援治具110に固定するために必要な長さとなる位置を保持する。例えば、旧ロープ42の他方端取付ソケット53から約1m程度離れた位置で、旧ロープ吊下クリップ104は旧ロープ42を保持する。
【0045】
次に、昇降路14の天井壁において、綱止板52に対応する位置から下方側にかご側追加滑車84を吊り下げる。そして、綱止板52に取り付けられる他方端取付ソケット53の下方側で旧ロープ42の他方端49が切断される。
図4で、旧ロープ42の他方端49側の切断位置をXマークで示す。切断された旧ロープ42の他方端49の先端部106は、かご側追加滑車84に懸架されて、かご上作業領域33側に出される。旧ロープ42の先端部106は、ロープ送り支援治具110を介して、かご上作業領域33に置かれている案内綱90の他方端92と接続される。
【0046】
図5は、
図4のV部の拡大図で、ロープ送り支援治具110の構成と、ロープ送り支援治具110を介して、旧ロープ42の他方端49の先端部106と、案内綱90の他方端92との接続関係を示す図である。ロープ送り支援治具110は、治具本体板部112、固定具114、及び取付部116を含む。
【0047】
治具本体板部112は、矩形形状の板部材で、端部に張出部113を備える。張出部113は、矩形形状部分と一体として成形してもよく、
図5の例のように、矩形形状部分と別体で張出部113を成形し、その後に矩形形状部分と溶接やねじ止等の固定手段で一体化してもよい。
【0048】
固定具114は、旧ロープ42の先端部106を治具本体板部112に着脱自在に固定する固定手段である。ここで、旧ロープ42は3本で構成されているので、3本のそれぞれを旧ロープ42a,42b,42cとすると、旧ロープ42a,42b,42cの先端部106も3つある。3つある先端部106を、先端部106a,106b,106cとすると、固定具114は、3つの先端部106a,106b,106cを1つずつ、治具本体板部112に着脱自在に固定する3つのロープクリップ114a,114b,114cである。ロープクリップ114a,114b,114cとしては、ボルト押えクリップを用いることができる。この場合、治具本体板部112に複数のめねじ穴を設け、ボルト通し穴を有する押さえ板で先端部106を押さえ、ボルト通し穴にボルトを通して、治具本体板部112のめねじと締結する。
【0049】
このように、旧ロープ42が複数本で構成される場合でも、1本ずつ治具本体板部112に複数の固定具114で固定できるので、作業者の個人差をなくして、旧ロープ42の切断された先端部106を、治具本体板部112に容易且つ確実に接続できる。
【0050】
取付部116は、案内綱90を治具本体板部112に着脱自在に取り付ける部材である。取付部116としては、治具本体板部112の張出部113に設けられている取付穴115に環状形状が通されたカラビナを用いることが出来る。カラビナは、登山道具等として用いられることもある部材で、開閉できるゲート部117がついた金属リングである。例えば、ゲート部117を開放した状態で、環状部分を張出部113の取付穴115に通し、さらに案内綱90の他方端92も環状部分に通した後にゲート部117を閉じることで、治具本体板部112と案内綱90とを素早く確実に、着脱自在に繋ぐことができる。カラビナの材質としては、ジュラルミンが用いられる。
【0051】
このように、旧ロープ42の先端部106が固定された治具本体板部112について着脱自在な取付部116を用いることで、例えば、旧ロープ42の回収が済めば、旧ロープ42と案内綱90を容易に分離でき、案内綱90の再利用が可能である。また、ロープ送り支援治具110は、治具本体板部112と、治具本体板部112に着脱自在な固定具114及び取付部116で構成されるので、旧ロープ42を案内綱90に接続する際に、作業者の個人差をなくして容易且つ確実に接続できる。
【0052】
図4に戻り、ロープ送り支援治具110を介して旧ロープ42の先端部106に他方端92が接続された案内綱90の一方端91は、かご上手摺32に設けられた案内シャックル108を通してかご上手摺32の外に出されて、ピット20に垂らされる。保守作業員6は、ピット20に垂らされた案内綱90の一方端91を持ち、最下階乗場16において、案内綱90を乗場側に引っ張る(新ロープ送り出し工程)。案内綱90の引っ張りによって、旧ロープ42の先端部106が接続されたロープ送り支援治具110は、案内シャックル108を経て、最下階乗場16側にたぐり寄せられる。ロープ送り支援治具110が最下階乗場16までたぐり寄せられたら、ロープ送り支援治具110の取付部116であるカラビナのゲート部117を開放して案内綱90の他方端92を取り外す。以後は、旧ロープ42の他方端49側を引っ張る。
【0053】
これを進めることで、旧ロープ42は、最下階乗場16側に順次たぐり寄せられる。これによって、旧ロープ42の一方端46の先端部102は、おもり側追加滑車82、おもり吊り車62、返し車58、駆動シーブ35、返し車60、かご吊り車66,64、かご側追加滑車84を経て、かご上作業領域33を経由して、最下階乗場16に順次送られる。最下階乗場16に送られてきた旧ロープ42は、順次適当な長さに切断して、ロープ回収容器72に収容され、回収される。
【0054】
旧ロープ42の一方端48の先端部102に接続された新ロープ44の一方端46も、同じ経路で、かご上作業領域33に向かって順次引っ張り込まれる。つまり、案内綱90を最下階乗場16に向かって引っ張ると、新ロープ44は、ロープ送り出し治具70から引き出され、新ロープ送り出しガイド車74を経由して、同じ経路で、かご上作業領域33に向かって順次送り込まれる。
【0055】
これを進めてゆき、旧ロープ42の一方端48の先端部102がかご側追加滑車84まで送られると、おもり側追加滑車82からかご側追加滑車84までの経路が全て新ロープ44に置き換わったことになる。そして、綱止板50に設けられた一方端取付ソケット51、及び、綱止板52に設けられた他方端取付ソケット53のそれぞれの間に張り渡されるのに十分な長さまで、さらに新ロープ44を引っ張る。その後、予め定めた固定方法に従って、張り渡された新ロープ44の釣合おもり36側の端部を一方端として綱止板50に設けられた一方端取付ソケット51に固定する。また、乗りかご30側の端部を他方端として綱止板52に設けられた他方端取付ソケット53に取り付ける(新ロープの一方端及び他方端の取付工程)。これで、主ロープ41は新ロープ44に交換されたことになる。
【0056】
最後に、ロープ送り出し治具70、ロープ回収容器72、新ロープ送り出しガイド車74、チェーンブロック76,78、パイプサポート80、おもり側追加滑車82、かご側追加滑車84等を撤去する(交換作業用治具等の撤去工程)。
【0057】
上記のエレベーターロープ交換作業用のロープ送り支援治具110を用いることで、治具本体板部112に固定具114で旧ロープ42の先端部106を固定し、治具本体板部112に取り付けた取付部116に案内綱90を取り付けることができる。これにより、旧ロープ42を案内綱90に接続する際に、作業者の個人差をなくして容易且つ確実に接続できる。また、旧ロープ42が複数本で構成される場合でも1本ずつ治具本体板部112にロープクリップ等の固定具114で固定できるので、作業者の個人差をなくして容易且つ確実に接続できる。さらに、旧ロープ42の回収が済めば、旧ロープ42と案内綱90を容易に分離でき、案内綱90の再利用が可能となる。
エレベーターロープ交換作業用のロープ送り支援治具(110)は、エレベーターの主ロープを旧ロープ(42)から新ロープに交換する保守作業において、旧ロープ(42)を回収するためのロープ送り支援治具(110)である。ロープ送り支援治具(110)は、治具本体板部(112)と、回収用の旧ロープ(42)の先端部(106)を治具本体板部(112)に着脱自在に固定する固定具(114)と、ロープ送りのための案内綱(90)を治具本体板部(112)に着脱自在に取り付ける取付部(116)と、を備える。