特許第6847364号(P6847364)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6847364オリゴカチオン複合プライマー配列を使用する等温増幅
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6847364
(24)【登録日】2021年3月5日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】オリゴカチオン複合プライマー配列を使用する等温増幅
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20210315BHJP
   C12Q 1/6853 20180101ALI20210315BHJP
【FI】
   C12N15/09 ZZNA
   C12Q1/6853 Z
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-542064(P2016-542064)
(86)(22)【出願日】2014年9月10日
(65)【公表番号】特表2016-529915(P2016-529915A)
(43)【公表日】2016年9月29日
(86)【国際出願番号】US2014054944
(87)【国際公開番号】WO2015038609
(87)【国際公開日】20150319
【審査請求日】2017年9月6日
【審判番号】不服2019-10559(P2019-10559/J1)
【審判請求日】2019年8月8日
(31)【優先権主張番号】14/027,947
(32)【優先日】2013年9月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520481714
【氏名又は名称】グローバル・ライフ・サイエンシズ・ソリューションズ・オペレーションズ・ユーケー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】ヘラー,ライアン・チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン,ジョン・リチャード
【合議体】
【審判長】 田村 聖子
【審判官】 小暮 道明
【審判官】 大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−507542(JP,A)
【文献】 特表2013−518598(JP,A)
【文献】 特表2004−526432(JP,A)
【文献】 Nucleic Acids Res.(2009)vol.37,e130(p.1/14−14/14)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
C12N 15/
CAPlus/MEDLINE/WPIDS/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的DNAに基づく1以上のアンプリコンを作製する方法であって、当該方法が、
(a)標的DNAを用意するステップと、
(b)オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマー、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼ及びdNTP混合物を含むDNA増幅反応混合物を用意するステップと、
(c)ステップ(b)のDNA増幅反応混合物及び鎖置換活性を使用して標的DNAの少なくとも一部を増幅して、1以上のアンプリコンを作製するステップと
を含んでおり、
オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーがオリゴヌクレオチド配列の5’末端に共有結合したオリゴカチオン部分を含んでおり、
ステップ(c)における増幅が、等温条件下で多換増幅又はローリングサークル増幅によって実施され
DNAポリメラーゼがPhi29ポリメラーゼであり、オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーが1以上のスペルミン単位を含む、方法。
【請求項2】
オリゴヌクレオチド配列がヌクレオチド類似体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
オリゴヌクレオチド配列が、3’末端ヌクレオチドと3’末端ヌクレオチドに隣接するヌクレオチドとの間にホスホロチオエート連結を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
オリゴヌクレオチド配列がNNNNNNであり、ここでNはランダムヌクレオシドを表し、Nはホスホロチオエート修飾ランダムヌクレオチドを表す、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーが次の構造Iの一般構造(式中、nの整数値は1〜5である)有する、請求項1に記載の方法。
【化1】
【請求項6】
標的DNAに基づく1以上のアンプリコンを作製する方法であって、当該方法が、
(a)標的DNAを用意するステップと、
(b)1以上のオリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーを標的DNAとアニーリングして、標的DNA:プライマーハイブリッドを作製するステップと、
(c)標的DNA:プライマーハイブリッド中のオリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーを等温核酸増幅反応により伸長して、標的DNAの少なくとも一部に相補的な1以上のアンプリコンを作製するステップと
を含んでおり、オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーがオリゴヌクレオチド配列の5’末端に共有結合したオリゴカチオン部分を含み、
等温核酸増幅が、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼによる多置換増幅又はローリングサークル増幅であり、
オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーが、ランダムペンタマー配列又はランダムヘキサマー配列を含み、
オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーが1以上のスペルミン単位を含み、
DNAポリメラーゼがPhi29ポリメラーゼである、方法。
【請求項7】
オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーが、nの整数値が2である構造IVの一般構造を有する、請求項6に記載の方法。
【化2】
構造IVの式中、Nはランダムヌクレオシドを表し、Nはホスホロチオエート修飾ランダムヌクレオチドを表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全般に、オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーを用いる等温増幅を実施するための方法及びキットに関する。このオリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーは、オリゴヌクレオチド配列の5’末端に共有結合したオリゴカチオン部分を含む。
【背景技術】
【0002】
DNAの増幅は、標的二本鎖DNA(dsDNA)を複製して複数のコピーを作製する過程である。dsDNAの個別の鎖は逆平行及び相補的であるため、各鎖はその相補鎖を作製するための鋳型鎖として機能し得る。鋳型鎖は全体又は切断部分として保存され、相補鎖はDNAポリメラーゼによりデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)から組み立てられる。相補鎖の合成は、鋳型鎖にハイブリダイズされるプライマー配列の3’末端から開始され、5’→3’方向に進行する。さまざまな効率の良い核酸増幅技術、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、自家持続配列複製法(3SR)、核酸配列ベース増幅(NASBA)、鎖置換増幅(SDA)、多置換増幅(MDA)又はローリングサークル増幅(RCA)などが、現在利用可能である。これらの技術の多くは、短期間で多数の増幅産物を作製する。
【0003】
全ゲノム増幅(WGA)は、標的DNAの非特異的増幅を伴う。WGAは多くの場合、標的DNAの複数位置においてDNA合成をプライミングするためのランダムなオリゴヌクレオチドプライマー(例えば、NNNNN*N)を、鎖置換活性(strand displacing activity)を有するハイフィデリティDNAポリメラーゼ(例えばPhi29ポリメラーゼ)と共に用いるMDAにより達成される。現在利用可能な市販のWGA系、例えばGenomiPhi(GE Healthcare社(米国))及びRepliG(Qiagen社)キットは1ナノグラム以上のDNAのインプットにより最適な結果を提供するが、これらの系の性能は、利用可能な標的DNAが少量しかない場合、又はDNA増幅が数個もしくは単一の細胞から実施される場合にはあまりよくない。
【0004】
従来の方法を使用する微量の標的DNAの増幅は、多くの場合、配列包括度に「ドロップアウト」を残したままのDNA配列の不完全な増幅及びDNA配列が不均等に増幅された増幅バイアスをもたらす。さらに、増幅反応の産物(アンプリコン)は、多くの場合それ自体の中でアニーリングして、望ましくないキメラ産物の作製をもたらし得る。したがって、微量の標的DNAの非特異的増幅の効率的な方法が強く望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2012/151560号
【発明の概要】
【0006】
いくつかの実施形態では、標的核酸を増幅してアンプリコンを作製するための、オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーを使用する核酸増幅が提供される。
【0007】
いくつかの実施形態では、標的DNAに基づく1以上のアンプリコンを作製する等温増幅法が提供される。この方法は、標的DNAを用意するステップと、オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマー、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼ及びdNTP混合物を含むDNA増幅反応混合物を用意するステップと、DNA増幅混合物を使用して標的DNAの少なくとも一部を増幅して、1以上のアンプリコンを作製するステップとを含む。増幅反応に使用されるオリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーは、オリゴヌクレオチド配列の5’末端に共有結合したオリゴカチオン部分を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、標的DNAに基づく1以上のアンプリコンを作製する方法であって、標的DNAを用意するステップと、1以上のオリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーを標的DNAとアニーリングして、標的DNA:プライマーハイブリッドを作製するステップと、標的DNA:プライマーハイブリッド中のオリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーを等温核酸増幅反応により伸長して、標的DNAの少なくとも一部に相補的な1以上のアンプリコンを作製するステップとを含む方法が提供される。この方法に使用されるオリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーは、オリゴヌクレオチド配列の5’末端に共有結合したオリゴカチオン部分を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、等温DNA増幅のためのキットが提供される。このキットは鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼ及びオリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーを含み、オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーはオリゴヌクレオチド配列の5’末端に共有結合したオリゴカチオン部分を含む。
【0010】
本発明のこれら及び他の特色、態様及び有利性は、下記の詳細な説明を、添付の図面を参照しながら読むことでさらによく理解されると思われる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】MDA反応の反応速度及び感度を上げるための、スペルミン修飾ランダムヘキサマープライマーの有効性を例示する図である。
図2】DNA増幅反応の配列包括度及び増幅バランスを上げるための、スペルミン修飾ランダムヘキサマープライマーの有効性を例示する図である。
図3】スペルミン修飾ランダムヘキサマープライマーを使用する、単一細菌細胞からのDNA増幅を例示する図である
【発明を実施するための形態】
【0012】
特許請求する発明の主題をより明確及び簡潔に記述及び指摘するために、特定の用語に下記の定義を提供し、この定義は下記の説明及び添付の特許請求の範囲において使用される。
【0013】
本明細書において、「標的DNA」という用語は、DNA増幅反応で増幅されることが望まれる天然起源又は合成起源いずれかのDNA配列を指す。標的DNAはDNA増幅反応の鋳型として機能する。標的DNAの一部分又は標的DNAの全領域のいずれかは、DNA増幅反応においてDNAポリメラーゼにより増幅され、増幅産物又はアンプリコンを作製することができる。アンプリコンは、標的DNAの複数のコピー又は標的DNAに相補的な配列の複数のコピーを含み得る。標的DNAは、インビボ又はインビトロで生体試料から得ることができる。例えば、標的DNAは、体液(例えば、血液、血漿、血清又は尿)、臓器、組織、細胞、臓器もしくは組織の薄片部、生体から単離された細胞(例えば、罹患細胞を含有する領域又は循環腫瘍細胞)、法医学試料又は古代試料から得ることができる。標的DNAを含有する、又は含有すると疑われる生体試料は、真核生物起源、原核生物起源、ウイルス起源又はバクテリオファージ起源であってもよい。例えば標的DNAは、昆虫、原虫、トリ、サカナ、爬虫類、哺乳動物(例えばラット、マウス、ウシ、イヌ、モルモット又はウサギ)又は霊長類(チンパンジー又はヒト)から得ることができる。標的DNAは、RNA鋳型(例えば、mRNA、リボソームRNA)から逆転写酵素を使用して作製された相補的DNA(cDNA)であってもよい。別の反応、例えば連結反応、PCR反応により作製されたDNA産物又は合成DNAもまた、適切な標的DNAとして機能し得る。標的DNAは溶液中に分散されても、又は固体支持体、例えばブロット、アレイ、スライドグラス、マイクロタイタ―プレート、ビーズもしくはELISAプレートに固定されてもよい。
【0014】
本明細書において、「オリゴヌクレオチド」という用語はヌクレオチドのオリゴマーを指す。ヌクレオチドは、そのヌクレオシドに対応するアルファベット文字を使用した文字名称により表すことができる。例えば、Aはアデノシンを表し、Cはシチジンを表し、Gはグアノシンを表し、Uはウリジンを表し、及びTはチミジン(5−メチルウリジン)を表す。WはA又はT/Uを表し、SはG又はCのいずれかを表す。Nはランダムヌクレオシドを表し、A、C、G又はT/Uのどれであってもよい。文字名称の前の星印(*)記号は、その文字により指定されるヌクレオチドがホスホロチオエート修飾ヌクレオチドであることを表す。例えば、*Nはホスホロチオエート修飾ランダムヌクレオチドを表す。文字名称の前のプラス(+)記号は、その文字により指定されるヌクレオチドがロックド核酸(LNA)ヌクレオチドであることを表す。例えば、+AはアデノシンLNAヌクレオチドを表し、+Nはロックドランダムヌクレオチドを表す。オリゴヌクレオチドは、DNAオリゴヌクレオチド、RNAオリゴヌクレオチド又はDNA−RNAキメラ配列であってもよい。オリゴヌクレオチドが文字の配列で表される場合は常に、ヌクレオチドは左から右に5’→3’である。例えば、文字配列(W)x(N)y(S)z(式中x=2、y=3及びz=1)により表されるオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド配列WWNNNSを表し、Wは5’末端ヌクレオチドであり、Sは3’末端ヌクレオチドである(「末端ヌクレオチド」はオリゴヌクレオチド配列の末端位置に位置づけられるヌクレオチドを指す。3’末端位置に位置づけられる末端ヌクレオチドは3’末端ヌクレオチドと称され、5’末端位置に位置づけられる末端ヌクレオチドは5’末端ヌクレオチドと称される)。
【0015】
本明細書において、「ヌクレオチド類似体」という用語は、天然に存在するヌクレオチドの構造類似体である化合物を指す。ヌクレオチド類似体は、改変されたホスフェート骨格、糖部分、核酸塩基又はこれらの組合せを有し得る。ヌクレオチド類似体は、合成ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド又は代替置換部分例えばイノシン)を有し得る。概して、改変核酸塩基を含むヌクレオチド類似体は、とりわけ異なる塩基対合及び塩基スタッキング特性をもたらす。
【0016】
本明細書において、「プライマー」又は「プライマー配列」という用語は、標的DNA鋳型とハイブリダイズして、標的DNA:プライマーハイブリッドを作製し、DNA合成反応をプライミングする線形オリゴヌクレオチドを指す。プライマーの長さの上限及び下限は両方とも経験的に決定される。プライマーの長さの下限は、核酸増幅反応条件下で標的核酸とのハイブリダイゼーションで安定な二重鎖を形成するために必要とされる最小の長さである。非常に短いプライマー(通常3ヌクレオチド長未満)は、このようなハイブリダイゼーション条件下で標的核酸と熱力学的に安定な二重鎖を形成しない。上限は、多くの場合標的核酸中の所定の核酸配列以外の領域において二重鎖形成を有する可能性により決定される。概して、適切なプライマー長は、約3〜約40ヌクレオチド長の範囲内である。プライマーは、RNAオリゴヌクレオチド、DNAオリゴヌクレオチド又はキメラ配列であってもよい。
【0017】
本明細書において、「ランダムオリゴヌクレオチド」という用語は、所与の位置がいずれのヌクレオチド候補又はそれら類似体からなっていてもよいような方法で、オリゴヌクレオチド配列中のすべての所与の位置においてヌクレオチドがランダム化されることによって作製される(完全なランダム化)、オリゴヌクレオチド配列の混合物を指す。ランダムプライマーとして使用する場合、ランダムオリゴヌクレオチドは、配列内のヌクレオチドのすべての組合せ候補からなる、オリゴヌクレオチドのランダムな混合物を表す。例えば、ヘキサマーランダムプライマーは、配列NNNNNN又は(N)6で表すことができる。ヘキサマーランダムDNAプライマーは、4つのDNAヌクレオチドであるA、C、G及びTのすべてのヘキサマーの組合せ候補からなり、46(4096)の固有なヘキサマーDNAオリゴヌクレオチド配列を含むランダム混合物をもたらす。ランダムプライマーは、標的核酸の配列が未知である場合核酸合成反応のプライミングのために、又は全ゲノム増幅反応のために有効に使用され得る。
【0018】
本明細書に記載のように、「部分的拘束性オリゴヌクレオチド」は、オリゴヌクレオチド配列のヌクレオチドのいくつか(例えば、ヌクレオチドはA、T/U、C、G又はこれらの類似体のいずれかであってよい)は完全にランダム化されるが、いくつかの他のヌクレオチドの完全なランダム化が制限される(例えば、特定の位置においてヌクレオチドのランダム化はA、T/U、C、G又はこれらの類似体の組合せ候補より少ない)ことによって作製されるオリゴヌクレオチド配列の混合物を指す。部分的拘束性オリゴヌクレオチドはプライマー配列として使用することができる。例えば、WNNNNNで表される部分的拘束性DNAヘキサマープライマーは、混合物中のすべての5’末端ヌクレオチドがA又はTのいずれかであるプライマー配列の混合物を表す。ここで、5’末端ヌクレオチドは、完全なランダムDNAプライマー(NNNNNN)の最大4つの組合せ候補(A、T、G又はC)とは異なり2つの組合せ候補(A又はT)に拘束される。部分的拘束性プライマーの適切なプライマー長は、約3〜約15ヌクレオチド長の範囲内である。
【0019】
本明細書において、「オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマー」という用語は、線形オリゴヌクレオチドがオリゴカチオンと共有結合したプライマー配列を指す。オリゴカチオンは1以上のカチオン性部分を含む。多くの場合、オリゴカチオンはカチオン性部分のオリゴマーである。オリゴカチオン複合ランダムプライマーは、ランダムな配列を有する、正電荷により修飾されたプライマーである。
【0020】
本明細書において、dNTP混合物は、NがA、C、G又はT/Uのいずれかを含むランダムヌクレオチドである、デオキシリボヌクレオシド三リン酸を指す。
【0021】
本明細書において、「鎖置換核酸ポリメラーゼ」又は「鎖置換活性を有するポリメラーゼ」は、鎖置換活性をその核酸合成活性とは別に有する核酸ポリメラーゼを指す。鎖置換核酸ポリメラーゼは、鋳型鎖にアニーリングされている相補鎖を置換しながら、鋳型鎖を読み取ることによって核酸の鋳型鎖の配列に基づき核酸合成を続けることができる。
【0022】
本明細書において、多置換増幅(MDA)は、増幅が、プライマーを変性核酸二アニーリングして、その後連続合成を遮断する下流二本鎖DNA領域を、これらの領域の間を鎖置換核酸合成により解離させるDNA合成ステップを伴う核酸増幅方法を指す。核酸が鎖置換により合成される場合、一本鎖DNAが鎖置換により作製され、結果として、プライミング事象の数が徐々に増え、超分枝型核酸構造のネットワークが形成される。MDAは、少量のゲノムDNA試料から限られた配列バイアスで高分子量DNAを作製する、全ゲノム増幅に高度に有用である。鎖置換活性をその核酸合成活性とは別に有する任意の鎖置換核酸ポリメラーゼ(例えば、Phi29 DNAポリメラーゼ又はBst DNAポリメラーゼの大型断片)がMDAに使用可能である。MDAは多くの場合、等温反応条件下で、配列バイアスが限られた増幅を達成するためにランダムプライマーを使用して実施される。
【0023】
本明細書において、「ローリングサークル増幅(RCA)」は、環状核酸鋳型(例えば、一本鎖環状DNA)をローリングサークル機序により増幅する核酸増幅反応を指す。RCAは、プライマーと、環状の多くの場合一本鎖の核酸鋳型とのハイブリダイゼーションにより開始される。核酸ポリメラーゼは次いで、環状核酸鋳型にハイブリダイズされたプライマーを環状核酸鋳型の周りに連続して進めることによって伸長し、核酸鋳型の配列を何度も繰り返して複製する(ローリングサークル機序)。RCAは通常、環状核酸鋳型配列の相補体の直列反復単位を含むコンカテマーを作製する。
【0024】
いくつかの実施形態では、標的核酸を増幅してアンプリコンを作製するための、オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーを用いる方法が提供される。オリゴカチオン−オリゴヌクレオチドプライマーは、オリゴヌクレオチドプライマー配列の5’末端に共有結合されたオリゴカチオン部分を含む。例えば、1以上のカチオン性スペルミン単位(例えば、スペルミンのモノマー単位又はダイマー単位)を含む化学部分は、オリゴヌクレオチドプライマー配列(例えばランダムヘキサマー配列)の5’末端に共有結合され得る。正に帯電した、カチオン性スペルミン誘導体のランダムプライマー配列の5’末端への共有結合は、オリゴヌクレオチドプライマー配列の標的核酸(例えば標的DNA)へのハイブリダイゼーションにおいて負に帯電したリン酸ジエステル結合からの静電反発力を軽減することができる。
【0025】
核酸増幅反応におけるオリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーの使用は、プライマーの標的認識を強化し、さらにプライマーと標的核酸とのハイブリダイゼーション効率を上げる。さらに、オリゴカチオン−オリゴヌクレオチドプライマーを核酸増幅反応に用いた場合、標的核酸−プライマーハイブリッドの融解温度は上昇する。したがって、高ストリンジェントハイブリダイゼーション条件を核酸増幅反応に用いて、望ましくない増幅産物及び人工物減らすことができる。高ストリンジェントハイブリダイゼーション条件は、核酸増幅反応に一般に使用される条件により提供されるストリンジェンシーより高いストリンジェンシーをオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション事象にもたらす反応条件を指す。例えば、高ストリンジェントハイブリダイゼーション条件は、反応温度の上昇又は塩濃度の低下により核酸増幅反応において達成され得る。核酸増幅反応は多くの場合、約75mMの塩濃度において実施される。対照的に、核酸増幅反応が塩濃度約15mMにおいて実施される場合、高ストリンジェントハイブリダイゼーション条件が提供され得る。高ストリンジェントハイブリダイゼーション条件は、温度を、多くの場合使用される約30℃から上昇させることによってin−vitroの等温核酸増幅反応に提供され得る。例えば、オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーを使用する等温核酸増幅反応は、約35℃〜約45℃において実施され、高ストリンジェントハイブリダイゼーション条件が提供され得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、標的DNAに基づく1以上のアンプリコンを作製する等温増幅法が提供される。この方法は、標的DNAを用意するステップと、オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマー、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼ及びdNTP混合物を含むDNA増幅反応混合物を用意するステップと、DNA増幅混合物を使用して標的DNAの少なくとも一部を増幅して、1以上のアンプリコンを作製するステップとを含む。
【0027】
増幅反応に使用されるオリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーは、オリゴヌクレオチド配列の5’末端に共有結合したオリゴカチオン部分を含む。オリゴカチオン部分は、複合体化に使用される合成方法のいずれか(例えば、ホスホラミダイト合成)を使用して、オリゴヌクレオチド配列の5’末端に共有結合し得る。オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーが標的核酸に高効率でハイブリダイズしたとしても、このようなプライマーは鎖置換増幅を阻害はしない。さらに、オリゴヌクレオチド(プライマー)配列の5’末端に共有結合したオリゴカチオンは、DNAポリメラーゼの結合及びプライマー伸長反応に干渉はしない。
【0028】
オリゴカチオン部分の結合により、オリゴヌクレオチド配列全体の負の電荷が減少する。この電荷の減少は、電荷の静電反発力を低下させ、オリゴヌクレオチド配列の溶融温度を上昇させ、このことがハイブリダイゼーション特性をさらに改善する。オリゴヌクレオチド配列の5’末端におけるオリゴカチオン部分の結合は、オリゴヌクレオチド構造及びDNAポリメラーゼなどのDNAプロセシング酵素に対する基質として作用するその能力を維持する。
【0029】
オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマー中のオリゴヌクレオチド配列は、特異的なプライマー配列、ランダムプライマー配列又は部分的拘束性ランダムプライマー配列であってよい。特異的プライマー配列は、ワトソン−クッリク的な意味で、標的DNA鋳型中に存在する特定の配列に相補的である。特異的オリゴヌクレオチド配列は、例えば、混合物中のミトコンドリアDNA、混合物中の特定のプラスミド又は特定のゲノム領域を特異的に増幅するために、オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーに用いることが可能である。いくつかの実施形態では、オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマー中のオリゴヌクレオチド配列は、ランダムプライマー配列である。例えば、オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマー中のオリゴヌクレオチド配列は、NN(N)mNN(式中、mの整数値は0〜36である)である。いくつかの実施形態では、mの整数値は0〜20である。いくつかの他の実施形態では、mの整数値は0〜10である。いくつかの例示的実施形態では、オリゴヌクレオチド配列は、ランダムテトラマー、ランダムペンタマー、ランダムヘキサマー、ランダムヘプタマー又はランダムオクタマ―である。オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーは、天然、合成もしくは修飾されたヌクレオチド又はヌクレオチド類似体を含み得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーは、安定性及び/又は他の有利性(例えば、二次構造の形成)をプライマー(例えば、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸)にもたらす合成骨格もしくはヌクレオチド類似体を含むか、又は修飾糖部分(例えば、キシロース核酸又はこの類似体)を含み得る。いくつかの実施形態では、オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマー中のオリゴヌクレオチド配列は1以上のLNAヌクレオチドを含む。LNAヌクレオチドは、リボ核酸模倣糖立体構造中にロックされた二環式フラノース糖単位を含有する。デオキシリボヌクレオチド(又はリボヌクレオチド)からLNAヌクレオチドへの構造変化は、化学的観点、例えば、2’位及び4’位の炭素原子間のさらなる連結(例えば、2’−C、4’−C−オキシメチレン連結)の導入により限定され得る。LNAヌクレオチド中のフラノース単位の2’及び4’位は、O−メチレン(例えば、オキシ−LNA:2’−O、4’−C−メチレン−β−D−リボフラノシルフラノヌクレオチド)、S−メチレン(チオ−LNA)又はNH−メチレン部分(アミノ−LNA)などにより連結され得る。このような連結は、フラノース環の立体構造の自由を制限する。1以上のLNAオリゴヌクレオチドを含むオリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーは、相補性一本鎖RNA、一本鎖DNA又は二本鎖DNAに対するハイブリダイゼーション親和性の強化を表す。さらに、オリゴヌクレオチド中のLNA包含は、A型(RNA様)二重立体構造を誘導し得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、DNA増幅反応のために用いられるオリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーは、ヌクレアーゼ、例えばエキソヌクレアーゼに対して耐性である。例えば、オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマー中のオリゴヌクレオチド配列は、1以上のホスフェート修飾連結(例えば、ホスホロチオエート連結)を含み、該複合体プライマーにエキソヌクレアーゼ耐性をもたらす。いくつかの実施形態では、オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーはエキソヌクレアーゼ耐性ランダムオリゴヌクレオチド配列を含む。例えば、該複合体プライマーのオリゴヌクレオチドは、NNNNN*N又はNNNN**Nのようなランダム配列を有し得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマー中のオリゴカチオン部分は、限定するものではないが、カチオン性ポリアミン(例えば、スペルミジン、スペルミン又はプトレシン、1以上のNH単位又はNC(NH22単位を含む化学部分)又はカチオン性側鎖を含有するペプチド(例えば、リジン残基を含むペプチド)を含む。例えば、1以上のスペルミン部分を含むオリゴカチオン部分は、オリゴヌクレオチドプライマー配列の5’末端に共有結合し、オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーを作製し得る。いくつかの他の実施形態では、カチオン性ポリアミンは、カチオン性スペルミン部分に由来する化学部分である。いくつかの実施形態では、オリゴカチオン部分は、1以上のアニオン性基と併せてカチオン性ポリアミンを含み得る。しかし、オリゴカチオン部分の正味の電荷は、DNA増幅反応のために用いられる条件下で少なくとも+1であるとする。例えば、スペルミン中の窒素原子は、位置に依存して、約8.5〜11.5の範囲のpKaを有する。したがって、スペルミン含有プライマーを使用するDNA増幅反応は、1以上の窒素が反応条件下でプロトン化されるようなpH値を有する緩衝液中で実施することができる。例えば、室温において約8.0未満のpH及び30℃において7.8のpHを有する緩衝液がDNA増幅反応に使用され得る。得られたオリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーの溶解度係数に悪影響を与えずにオリゴヌクレオチドプライマー配列の5’末端に結合できるカチオン性基の数は、限定するものではないが、各カチオン性基の正味電荷、オリゴヌクレオチドプライマー配列の長さ及び/又はオリゴカチオン部分の長さを含むさまざまな因子に依存すると思われる。
【0033】
いくつかの例示的実施形態では、オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーは、構造Iに表す一般化学構造を有する。構造I中のnの整数値は、オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマー中のスペルミン単位の数を表す。nの整数値は1〜5である。構造I中のオリゴヌクレオチド配列の長さは、6〜20mer配列である。いくつかの実施形態では、単一のスペルミン単位(n=1)は、得られたオリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーの溶解度を損なうことなく、ヘキサマー(6mer)配列の5’末端ヌクレオチドに共有結合し得る。いくつかの他の実施形態では、2又は3つのスペルミン部分を含むオリゴカチオンは、8〜15merの範囲のオリゴヌクレオチドの5’末端ヌクレオチドに共有結合し得る。4又は5つのスペルミン部分を含むオリゴカチオンの共有結合は、得られたオリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーの溶解度係数に悪影響を与えずに、それぞれ16又は20merオリゴヌクレオチドにおいて実施され得る。オリゴヌクレオチドプライマー配列にオリゴカチオン部分を共有結合させることによって、オリゴヌクレオチドプライマー配列の全電荷が変わる。構造I中の各スペルミン単位は、式3n−(m−1)(式中、nはスペルミン単位の数に等しく、mはオリゴヌクレオチド中の塩基の数に等しい)により計算されるオリゴヌクレオチド配列の全電荷を+3増加する。例えば、構造Iにおいてn=3の場合、オリゴヌクレオチド配列の全電荷は+9(+3n)に変わる。
【0034】
【化1】
いくつかの実施形態では、DNA増幅反応に用いられるオリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーは、スペルミン単位含有カチオン性ポリアミンに共有結合されたランダムオリゴヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーは構造IIに表される式を有する。構造IIにおいて、nの整数値は1〜5であり、mの整数値は0〜36である。
【0035】
【化2】
いくつかの実施形態では、DNA増幅反応に用いられるオリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーは、ヌクレアーゼ耐性プライマーである。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼ耐性オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーは、構造IIIの一般構造を有する。nの整数値は1〜5であり、mの整数値は0〜36である。
【0036】
【化3】
いくつかの実施形態では、DNA増幅反応に用いられるオリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーは、構造IVを有するヌクレアーゼ耐性ヘキサマープライマーである。nの整数値は構造IVにおいて1又は2である。
【0037】
【化4】
いくつかの実施形態では、DNA増幅反応に用いられるオリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーは、構造Vにより表されるヌクレアーゼ耐性ランダムヘキサマープライマーである。このランダムプライマーは、2つのスペルミン単位を含むポリアミンを含み、該ポリアミンは、ランダムヘキサマーの5’末端ヌクレオチドに共有結合している。ランダムヘキサマープライマーは、その3’末端ヌクレオチドと3’末端ヌクレオチドに隣接するヌクレオチドとの間にホスホロチオエート連結をさらに含む。
【0038】
【化5】
いくつかの実施形態では、1以上のリジン部分を含むポリアミンは、オリゴヌクレオチドプライマー配列の5’末端に共有結合し、オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーを作製し得る。いくつかの実施形態では、分子量640Daを有する、5つのリジンモノマー単位からなるポリリジン部分(ペンタマー)を含むポリアミンは、オリゴヌクレオチド配列の5’末端に共有結合されている。リジン含有オリゴヌクレオチド複合体プライマーは、当該技術分野において承認されているプロトコルのいずれか(例えば、Nucleic Acid Research 1998、26、3136−3145)により合成され得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、標的DNAに基づく1以上のアンプリコンを作製する方法は、標的DNAを用意するステップと、1以上のオリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーを標的DNAとアニーリングして、標的DNA:プライマーハイブリッドを作製するステップと、該オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーを等温核酸増幅反応により伸長して、標的DNAの少なくとも一部に相補的な1以上のアンプリコンを作製するステップとを含む。この方法に使用されるオリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーは、オリゴヌクレオチド配列の5’末端に共有結合したオリゴカチオン部分を含む。
【0040】
標的DNAは、線形鋳型、ニックが入った鋳型又は環状鋳型であってよい。標的DNAは、天然DNAであっても、又は合成DNAであってもよい。標的DNAは、cDNAであっても、又はゲノムDNAであってもよい。DNA鋳型は合成鋳型(例えば、酵素的/化学的反応によって環状化された線形又はニックの入ったDNA)であってもよく、又はプラスミドDNAであってもよい。
【0041】
構造Iで表されるオリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーは、本方法に使用可能である。複合体プライマー中のオリゴヌクレオチド部分は、特異的配列、ランダム配列又は部分的拘束性ランダム配列であってよい。例えば、オリゴヌクレオチドはランダムペンタマー配列又はランダムヘキサマー配列であってよい。さらに、このランダム配列は、1以上の修飾ヌクレオチドを含んでも、1以上のホスホロチオエート連結を含んでもよい。
【0042】
いくつかの実施形態では、構造Iのオリゴヌクレオチド配列は、部分的拘束性プライマー配列である。末端ヌクレオチドにおいてのみランダム化が制限されている部分的拘束性プライマー配列の限定されない例としては、W(N)yS、S(N)yW、D(N)yG、G(N)yD、C(N)yA又はA(N)yCが挙げられるが、これらに限定されない。yの整数値は2〜13である。いくつかの実施形態では、yの値は2、3、4又は5である。いくつかの例示的実施形態では、部分的拘束性プライマー配列、(W)x(N)y(S)z(式中、x、y及びzは互いに独立した整数値であり、xの値は2又は3であり、yの値は2、3、4又は5であり、並びにzの値は1又は2である)は、構造I中のオリゴヌクレオチド配列として用いることができる。この部分的拘束性プライマー配列は、1以上のヌクレオチド類似体を含み得る。いくつかの実施形態では、部分的拘束性プライマー配列は、末端がミスマッチであるプライマー−ダイマー構造を有し得る。例えば、WはSと塩基対合できないので、陥凹末端が全くないプライマー−ダイマー構造が分子間ハイブリダイゼーションにより形成される場合、両方の3’末端ヌクレオチドには末端ミスマッチが存在すると思われる。いくつかの実施形態では、構造Iのオリゴヌクレオチド配列は、ヌクレアーゼ耐性の、修飾ヌクレオチドを含む部分的拘束性プライマー配列であり、末端ミスマッチプライマーダイマー構造を有する。構造Iの一部となり得る適切なオリゴヌクレオチド配列としては、限定するものではないが、+W+WNNS、W+W+NNS、+W+WNNNS、W+W+NNNS、W+W+NN*S、+W+WNN*S、W+W+NNN*S、+W+WNNN*S、W+W+N**S、+W+WN**S、W+W+NN**S又は+W+WNN**Sが挙げられる。
【0043】
いくつかの実施形態では、構造II〜Vのいずれかで表されるオリゴヌクレオチド−オリゴカチオンプライマーは、鎖置換DNAポリメラーゼを使用する等温DNA増幅反応のために用いることができる。いくつかの例示的実施形態では、このDNA増幅方法は、構造IVの一般構造であるがnの整数値が2である構造Vの構造を有するオリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーを用いる。
【0044】
【化6】
等温増幅方法に使用される核酸ポリメラーゼは、校正型核酸ポリメラーゼであっても、又は非校正型核酸ポリメラーゼであってもよい。核酸ポリメラーゼは、高熱性又は中温性の核酸ポリメラーゼであってよい。この方法に使用される適切なDNAポリメラーゼの例としては、限定するものではないが、Phi29DNAポリメラーゼ、ハイフィデリティ・フュージョンDNAポリメラーゼ(例えば、処理能力強化ドメインを有するパイロコッカス(Pyrococcus)様酵素、New England Biolabs社(米国マサチューセッツ州))、パイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)由来のPfu DNAポリメラーゼ(Strategene社(米国カリフォルニア州ラホヤ))、バチルス・ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)由来のBst DNAポリメラーゼ(New England Biolabs社(米国マサチューセッツ州))、T7 DNAポリメラーゼの変異体であるSequenase(商標)、exo(−)VentR(商標)DNAポリメラーゼ(New England Biolabs社(米国マサチューセッツ州))、大腸菌(E.coli)のDNAポリメラーゼI由来のKlenow断片、T7 DNAポリメラーゼ、T4 DNAポリメラーゼ、パイロコッカス属(Pyrococcus species)GB−D由来のDNAポリメラーゼ(New England Biolabs社(米国マサチューセッツ州))又はサーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)由来のDNA ポリメラーゼ(New England Biolabs社(米国マサチューセッツ州))が挙げられる。
【0045】
いくつかの実施形態では、等温増幅に使用される核酸ポリメラーゼは、鎖置換核酸ポリメラーゼである。この方法は、処理能力の高い、鎖置換ポリメラーゼを用い、ハイフィデリティな塩基組み込みのための条件下で標的DNAを増幅することができる。ハイフィデリティDNAポリメラーゼは、適切な条件下で、Vent DNAポリメラーゼ又はT7 DNAポリメラーゼなどの一般的に使用される熱安定性PCRポリメラーゼに伴うエラー組み込み率と同等又はそれより低いエラー組み込み率(約1.5×10-5〜約5.7×10-5)を有するDNAポリメラーゼを指す。いくつかの実施形態では、Phi29 DNAポリメラーゼ又はPhi29様ポリメラーゼがDNA鋳型の増幅に使用され得る。いくつかの実施形態では、Phi29 DNAポリメラーゼ及びTaq DNAポリメラーゼの組合せが、環状DNA増幅に使用され得る。
【0046】
さらなる酵素を等温増幅反応混合物に含めることにより、誤組み込み事象を最小にすることができる。例えば、タンパク質媒介性エラー訂正酵素、例えばMutSを加えて、DNAポリメラーゼ反応の間又はその後のいずれかにおけるDNAポリメラーゼのフィデリティの改善が可能である。
【0047】
いくつかの実施形態では、1以上のアンプリコンが、環状の標的DNAの鋳型からローリングサークル増幅により作製される。DNAポリメラーゼ、オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマー及びdNTPを含む増幅試薬を標的DNAに加えて、RCA反応を開始するための増幅反応混合物を調製することができる。増幅反応混合物は、一本鎖DNA結合タンパク質及び/又は適切な増幅反応緩衝液などの試薬をさらに含み得る。増幅反応後又は反応の間に、DNA検出に関する現在公知の方法のいずれかによりアンプリコンを検出可能である。RCAは線形増幅反応速度を示す線形RCA(LRCA)(例えば、単一の特異的プライマーを使用するRCA)であってもよく、又は指数関数的増幅反応速度を示す指数関数的RCA(ERCA)であってもよい。RCAはまた、超分枝型コンカテマーをもたらす複数のオリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーを使用して実施してもよい(多重プライミングローリングサークル増幅(MPRCA))。例えば、二重プライミングRCAにおいて、線形RCAの場合、1つのプライマーが環状核酸鋳型に対して相補的であり、他方のプライマーがRCA産物の直列反復単位の核酸配列に相補的である。結論として、二重プライミングRCAは、多重ハイブリダイゼーションの分岐型カスケード、プライマー伸長及び両方のプライマーが関与する鎖置換事象を特徴とする指数関数的(幾何学的)増幅反応速度を有する連鎖反応として進行し得る。これは多くの場合、鎖状体の二本鎖核酸増幅産物の不連続なセットを作製する。いくつかの例示的実施形態では、RCAは、Phi29DNAポリメラーゼなどの適切な核酸ポリメラーゼを使用する等温条件下でインビトロで実施される。
【0048】
いくつかの他の実施形態では、線形DNA鋳型はMDAを使用して増幅され得る。MDAの従来の方法は多くの場合、増幅速度の低下、配列のバイアスが高い増幅をもたらす。対照的に、MDA反応におけるオリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーの使用は、より速いDNA増幅反応速度を促進し、DNA配列の包括度及びバランスを改善した。さらに、オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーを使用した場合、標的DNA:プライマーハイブリッドのTmの増加が、よりストリンジェントな条件下、例えばより高温において、もしくはより低い塩濃度(例えば、他の標準的条件下では75mMであるのに相対して15mMのKCl)により実施されるMDA反応を可能にするか、又は高ストリンジェントハイブリダイゼーション条件のためのよりストリンジェントな緩衝液の使用を可能にする。このようなストリンジェントな反応は、望ましくない反応中間体及び産物、例えば、自己ハイブリダイゼーションによるキメラ産物をさらに減少させる。
【0049】
さらに、増幅反応におけるオリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーの使用は、さまざまな条件下において、限定するものではないが、循環血漿DNA、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)試料から単離されたDNA、環境条件に曝露された法医学的DNA試料又は古代DNA試料を含む、微量のDNA試料の着実な増幅を可能にする。アンプリコンを含む増幅ライブラリは、qPCR又はシーケンシンによる増幅配列のを標的とする検出にも使用可能である。
【0050】
いくつかの実施形態では、等温DNA増幅のためのキットが提供される。このキットは鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼ及びオリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーを含み、オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーはオリゴヌクレオチド配列の5’末端に共有結合したオリゴカチオン部分を含む。いくつかの実施形態では、このオリゴヌクレオチド配列はランダムオリゴヌクレオチド配列である。
【0051】
いくつかの実施形態では、キットはPhi29 DNAポリメラーゼを含む。キットは、構造I〜Vで表される化学構造を有するオリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーを含み得る。構造I〜IIIにおけるnの整数値は1〜5であり、オリゴヌクレオチド配列は6mer〜20merの配列である。いくつかの実施形態では、キットは単一のスペルミン単位(n=1)がヘキサマー(6mer)配列の5’末端ヌクレオチドに共有結合したオリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーを含む。いくつかの他の実施形態では、キットは、2又は3つのスペルミン部分を含むオリゴカチオンが、8〜15merの範囲のオリゴヌクレオチドの5’末端ヌクレオチドに共有結合したオリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーを含む。いくつかの他の実施形態では、キットは、4又は5つのスペルミン部分を含むオリゴカチオンが、それぞれ16merのオリゴヌクレオチド又は20merのオリゴヌクレオチドにカップリングされたオリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーを含む。いくつかの実施形態では、キットは、nの整数値は1又は2である構造IVの一般構造を有するオリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーを含む。いくつかの実施形態では、キットは、構造Vを有するオリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーを含む。
【0052】
本明細書に記載の方法及びキットは、DNA試料の増幅及び分析、例えば法医学的分析、生物学的脅威の同定又は医学的分析に使用可能である。この方法の感度は、下流の試験及び分析のための全ゲノム増幅のための、単一の細菌細胞及び真核細胞の全ゲノム増幅を可能にする。さらに、オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーの使用は、より速いDNA増幅反応速度、インプット量の少ないDNAに対する高感度及びバイアスがより少なく、よりバランスのとれた増幅を促進する。さらに、より強力に結合するこれらの修飾プライマーは、増幅反応条件の改変を可能にし、DNA合成の自己ハイブリダイゼーション事象の安定性を低減させる。
【0053】
下記の実施例は単なる例示として本明細書に開示され、本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。実施例の項で使用されるいくつかの略語は下記のように広がる:「mg」:ミリグラム;「ng」:ナノグラム;「pg」:ピコグラム;「fg」:フェムトグラム;「mL」:ミリリットル;「mg/mL」:ミリグラム/ミリリットル;「mM」:ミリモル濃度;「mmol」:ミリモル;「pM」:ピコモル濃度;「pmol」:ピコモル;「μL」:マイクロリットル;「min.」:分及び「h.」:時間。
【実施例】
【0054】
実施例1:スペルミン修飾ランダムヘキサマープライマーを利用するMDA反応の反応速度及び感度
増幅反応を、10μMのランダムプライマー又はオリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーを使用して実施し、オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーのMDA反応に対する効果を決定した。配列NNNN**Nを有する、エキソヌクレアーゼ耐性の標準ランダムヘキサマープライマーを、ランダムプライマーとして使用した。ダイマースペルミン部分を含むオリゴカチオン部分が、エキソヌクレアーゼ耐性のランダムヘキサマー配列、NNNNN*Nの5’末端に共有結合した2−SP−修飾ヘキサマープライマー配列である5’SP2−NNNNN*N(metabion international AG、Germany)(「SP2」はn=2の構造IV;DNA配列の5’末端に結合された2単位のスペルミン修飾を表す)、を、オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーとして使用した。枯草菌(Bacillus subtilis)の染色体DNA(標的DNAの鋳型)のリアルタイム増幅を、1ng〜1fgの範囲の段階希釈液を使用して実施した。DNAを、等量の溶解緩衝液(0.4M KOH、100mM DTT、0.02% Tween−20)を添加することによって変性させ、5分間インキュベートし、一体積の中和緩衝液(0.4M HCl、0.6M Tris、pH7.5)で中和した。反応液(12μL)は、50mM HEPES、pH8.0、20mM MgCl2、0.01% Tween−20、1mM TCEP、2.5% PEG−8000、5mM KCl、10μMランダムヘキサマー又は10μM SP2−NNNNN*N、20μg/ml Phi29ポリメラーゼ、1:20000希釈のSYBR Green I色素(Invitrogen)及び表示濃度の枯草菌(B.subtilis)のゲノムDNA含有液1μLを含有した。30℃において5時間インキュベートした。Tecanプレートリーダー(Tecan SNiPer、Amersham−Pharmacia Biotech社)で蛍光の増加を継時的にモニターすることによって増幅反応をリアルタイムにモニターした
図1は、標準ランダムヘキサマープライマー(NNNN**N)及びスペルミン修飾ランダムヘキサマープライマー(SP2−NNNNN*N)の増幅速度を例示する。各段階希釈液の増幅速度を、各段階希釈液において検出可能なレベルのアンプリコン産物の作製にかかる時間をモニターすることによって評価した。NTCは、増幅反応が標的DNA鋳型の添加なしに実施された「鋳型非含有対照」を表す。図1は、スペルミン修飾ランダムプライマーを増幅反応に使用した場合のMDA反応の反応速度及び感度の上昇を示す。標準ランダムヘキサマーを5’−SP2−NNNNN*Nヘキサマー(2SP修飾ヘキサマー)に置き換えると、増幅速度の上昇(およそ3倍)がもたらされ、フェトグラム量のDNAが効率的に増幅された。想定外に、短鎖プライマーの5’末端における荷電種の存在が、DNAポリメラーゼによる結合及び伸長を阻害しなかった。さらに、荷電種は、等温鎖置換増幅の間にDNAポリメラーゼによるプライマーの鎖置換を阻害しなかった。上流アンプリコン作製は、MDA反応において下流のプライミング及び伸長セクションにより進行するので、修飾プライマーの鎖置換が必要とされる。プライマー修飾がDNAポリメラーゼによる伸長の開始又はDNAポリメラーゼによる鎖置換を阻害された場合、反応速度は低くなり収率も下がるものと思われる。
【0055】
実施例2:スペルミン修飾ランダムヘキサマープライマーを利用する増幅反応の配列包括度及び増幅バランス
100fgの枯草菌(Bacillus subtilis)染色体DNAを、エキソヌクレアーゼ耐性標準ランダムヘキサマープライマー配列NNNN**Nを使用するか、又はダイマースペルミン部分を含むオリゴカチオン部分(SP2)が配列NNNNN*Nの5’末端に共有結合したエキソヌクレアーゼ耐性ランダムヘキサマープライマー配列、SP2−NNNNN*N(構造IV)を使用するかのいずれかで増幅させ、4種の異なる細菌遺伝子座の相対増幅レベルを決定した。全増幅レベルは約2500万倍であった。次いで、それぞれの増幅反応由来のこの増幅ライブラリ10ngを、4つの異なるゲノム遺伝子座(LytD、YdcQ、DnaK及びMenF)を標的とする特異的プライマーセットを使用する標準SYBR Green−1に基づく定量的PCR(qPCR)を使用して分析し、感度が高くバランスのとれたDNA増幅を促進するためのオリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマーの有効性をサンプリングした。反応を三連に実施し、それぞれのアンプリコンライブラリ中のこれらの4種のゲノム遺伝子座の絶対Ct値を、非増幅細菌DNA由来の値と比較して、相対発現レベルを求めた。図2は、log2比としてプロットしたデータを例示しており、0値は非増幅細菌DNA対照と比較して同等の遺伝子座の発現が同等であることを示す。図2に表すように、オリゴカチオン−オリゴヌクレオチド複合体プライマー、SP2−NNNNN*Nはランダムプライマー、NNNN**Nと比較してより優れた配列包括度及び増幅バランスを表した。スペルミン修飾ヘキサマーを使用して増幅された産物は、比較的均等な4種の遺伝子座の包括度を保持し、一方、標準ヘキサマーから増幅された産物は、いくつかの配列の増幅不足及び喪失を示した。
【0056】
実施例3:スペルミン修飾ランダムヘキサマープライマーを使用した単一細菌細胞からのDNAの増幅
大腸菌(E.coli)細胞を希釈により単離し、FM 1−43 FX膜色素(Molecular Probes社)で染色し、倒立型蛍光顕微鏡を使用して計数した。細胞を、等量の溶解緩衝液(0.4M KOH、100mM DTT、0.02% Tween−20)を添加することによって溶解し、5分間インキュベートし、一体積の中和緩衝液(0.4M HCl、0.6M Tris、pH7.5)で中和した。
【0057】
スペルミン修飾ヘキサマーを利用するMDA反応を、1〜5個の単離大腸菌細胞を用いて実施した。反応液(20μL)は、50mM HEPES、pH8.0、20mM MgCl2、0.01% Tween−20、1mM TCEP、2.5% PEG−8000、15μM SP2−NNNNN*N、20μg/ml Phi29ポリメラーゼ、1:20000希釈のSYBR Green I色素(Invitrogen社)及び3μLの大腸菌(E.coli)溶解液を含有した。30℃において5時間インキュベートした。単一細胞反応における合計増幅はおよそ、400000000倍である。増幅DNAをライブラリに処理し、Illumina GA(Illumina社(米国カリフォルニア州サンディエゴ))全ゲノムシーケンシングに100ヌクレオチドリード長で供した。各試料に関して八(8)百万のリードを大腸菌参照ゲノムに対してマッピングし、マッピングされたリードのパーセント及び1以上のオーバーマッピングリードを含むゲノム包括度のパーセントを決定した。スペルミン修飾ランダムヘキサマーを利用するMDA反応は、数個及びたとえ単一の細菌細胞からであってもDNAの増幅を可能にするほど強固であり、十分な感度を有した。図3に表すように、約75%(75−90%)を超えるリードが、細菌の単一細胞からのDNA増幅において大腸菌(E.coli)参照ゲノムにマッピングされた。さらに、リードは、スペルミン修飾ランダムヘキサマープライマーを使用する単一細胞DNA増幅において、約53%(53−80%)を超えるゲノムを発現した。
【0058】
上記の詳細な説明は例示であり、本出願の発明及び本発明の使用を限定する意図のものではない。本明細書を通して、特定の用語の例示は限定されない例と考えるべきである。単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、複数の支持対象を含む。本明細書及び特許請求の範囲を通じてこの中で使用される近似の言い回し(Approximating language)は、関連する基本的な機能に変化を生じさせることなく変えることができると考えられる任意の量的表現を修飾するために適用することができる。したがって、「約」のような用語により修飾される値は、指定された正確な値に限定されるものではない。特に他のことが示されない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用される、原料の量、分子量などの特性、反応条件を表すすべての数字は、「約」という用語によりすべての事例において修飾されていると理解すべきである。したがって、逆のことが示されない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲において記された数値パラメーターは、本発明により得ることが探求される所望の特性に依存して変動し得る近似値である。少なくとも、特許請求の範囲の範囲と等価の原理の適用を限定する試みとしてではなく、各数値パラメーターは、報告された有効数字の数値を考慮して、通常の四捨五入技術を適用することによって解釈されるべきである。必要に応じて範囲が与えられるが、それらの範囲はその間のすべての部分範囲を含んでいる。
【0059】
本発明は、本発明の精神又は基本的特徴を逸脱することなく他のいろいろな形態で具現化することができる。前述の実施形態は、多種多様な実施形態又は実施例のすべての候補から選択された実施形態又は実施例である。したがって前述の実施形態は、あらゆる点において本発明を限定するものではなく例示として考えるべきである。本発明のわずかな特定の特色を本明細書に例示及び記載しているが、この開示から利益を受ける当業者が、本発明の原理に従って本方法を使用するための適切な条件/パラメーターを、これら及び他のタイプの応用に適切に、特定、選択、最適化又は改変できることを理解すべきである。試薬の正確な使用及び選択、濃度、体積、インキュベーション時間などの変数の選択は、意図される具体的適用に大いに依存すると思われる。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の精神の範囲内ですべての変形及び変更を包括する意図のものであると理解すべきである。さらに、特許請求の範囲と同等の意味及び範囲に属するすべての変更は本発明の範囲内であることを意図している。
図1
図2
図3