【実施例1】
【0011】
<1>全体構成
図1は、本実施例に係る削孔装置の使用状態を示す概略図であり、
図2は、当該削孔装置の構成を示す概略図である。
本実施例に係る削孔装置Aは、被削孔体Xの削孔を行うための装置であり、先端に設けた削孔部10と、削孔部10の後端に接続する伝達部20とを少なくとも有する。
そして、
図1に示すように、送出部30を介して伝達部20を送り出し方向D1に送り出すことで、送り出し方向D1と異なる方向である、削孔方向D2に向かって削孔部10を進行させることで被削孔体Xを削進可能に構成する。
以下、各構成要素の詳細について説明する。
【0012】
<2>削孔部
削孔部10は、削孔機能を備えた部材である。
本実施例では、
図2に示すように、削孔部10を、ヘッド11と、ヘッド11を回転可能に接続するスイベル12と、を少なくとも備えた、いわゆるウォータージェット式の削孔機構を採用している。
よって、削孔部10の後端にはヘッド11へと高圧水を供給可能な高圧ホースBを接続している。
【0013】
<2.1>ヘッド
ヘッド11は、回転しながら高圧水を噴出することで被削孔体Xの削孔を行うための部材である。
ヘッド11は、先端に噴出孔111を有するとともにヘッド11の前後方向を回転軸として回転可能に構成し、ヘッド11を回転させながら高圧ホースBを介してポンプ(図示せず)から供給された高圧水を、前記噴出孔111から噴出することで、被削孔体Xの削孔を行うことができる。
【0014】
[ヘッド外周面の態様]
図1,2には図示しないが、ヘッド11の外周面には、ヘッド11の後方に向かって高圧水を噴出することで、破砕屑をヘッド11の後方へ排除するための排出促進用の噴出孔や、ヘッド11の側方に向かって高圧水を噴出することで、ヘッド11そのものに回転力を与える自回転用の噴出孔や、これらの機能を兼用した噴出孔を別途設けておいても良い。
【0015】
<3>伝達部
伝達部20は、送り出しによる力を削孔部10へ伝達するための部材である。
伝達部20は、送り出し方向D1と削孔方向D2が異なる状態であっても、送り出しによる力を削孔部10へ伝達可能な剛性を備えるものとする。
図2(a)に示すように、本実施例では、二重に配置してなる内側コイルスプリング21および外側コイルスプリング22でもって伝達部20を構成している。そして、内側コイルスプリング21の内部には、高圧ホースBを収容している。
【0016】
<3.1>コイルスプリング
内側コイルスプリング21および外側コイルスプリング22に用いるコイルスプリングは、コイル状に巻いてある鋼線が密着した状態で筒状を形成してある弾性部材である。
コイルスプリングは自然状態において直線状を呈し、一定の曲げ応力を与えることで長手方向に対して屈曲でき、曲げ応力を解除すれば、再び直線状に復元する性質を有する。
したがって、各コイルスプリングで構成した伝達部20は、該伝達部20に収容した可撓性を備えた高圧ホースBとともに、任意の部分で屈曲して、屈曲部20aを形成することができる。
【0017】
<3.2>巻き方向を異にした理由
伝達部20の剛性を高めるべく、伝達部20を構成するコイルスプリングの数を増やす場合、単に巻き方向が同じコイルスプリングを二重に配置してしまうと、屈曲部20aにおいて、一方のコイルスプリングを構成する鋼線が他方のコイルスプリングを構成する鋼線間に生じる隙間に入り込んでしまい、その後のコイルスプリングの復元動作に支障が生じることが考えられる。
そこで、本発明では、
図2(b)に示すように、内側コイルスプリング21と外側コイルスプリング22との間で巻き方向を異にした態様とした。
本態様によって、伝達部20の屈曲部20aでは、各コイルスプリングを構成する鋼線間に生じる隙間同士がクロスする形となるため、互いに鋼線が隙間に入り込むことは無い。よって、折曲に伴う各コイルスプリングの位置のズレを抑え、コイルスプリングの復元動作に支障も生じず、両者を整然に近接配置することができる。
【0018】
<3.3>弾性接着剤の塗布
その他、本発明では、内側コイルスプリング21および外側コイルスプリング22との間を弾性接着剤(図示せず)で接着してもよい。
弾性接着剤には、シリコンシーラントなど、弾性を有する公知の接着剤を用いればよい。
弾性接着剤で、内側コイルスプリング21および外側コイルスプリング22を接着することで、両者の一体性はより高まり、各コイルスプリングの捩れを抑制することもできる。
【0019】
<3.4>変形例(コイルスプリングの数)
なお、本実施例では、伝達部20を構成するコイルスプリングの数を2つとしているが、3つ以上のコイルプリングを用いてもよい。このとき、隣り合うコイルスプリング同士の巻き方向を異にしておくことに変わりはない。
【0020】
<4>その他の部材
図1に示すように、本実施例では、掘削装置Aの他に、さらに掘削装置Aを送り出しに用いる送出部30と、送り出し方向D1と削孔方向D2とのコーナー部D3に配置するガイド材40とを設けている。
以下、各部材の詳細について説明する。
【0021】
<4.1>送出部
送出部30は、伝達部20を介して削孔部10を送り出すための部材である。
本実施例では、送出部30として、被削孔体Xの壁面に反力を取りつつ、伝達部20を把持して送り出し方向D1にスライド可能な構造を採用する。
送出部30によって送り出し方向D1に送り出された伝達部20は、屈曲部20aで屈曲し、削孔方向D2へと押し出される。
なお、本発明において、送出部30を介した伝達部20の送り出し作業は機械に限らず、人力で行っても良い。
【0022】
<4.2>ガイド材
ガイド材40は、送り出し方向D1と削孔方向D2のコーナー部分に位置する伝達部20を屈曲した状態で保持するための部材である。
本実施例では、ガイド材40として伝達部20の外径に対応したエルボ管を用いている。その他には、ガイド材40を、例えば伝達部20を所定方向に案内するようにRを付けた鋼板などで構成してもよい。
なお、本発明において、ガイド材40は必須の構成要素ではないため、伝達部20の屈曲動作を、被削孔体Aの内壁を利用して行ってもよい。
【0023】
<5>使用方法
再度、
図1を参照しながら、本発明に係る削孔装置の使用方法について説明する。
図1では、RC構造物である被削孔体Xにおいて、壁面に対して直角方向に設けたコア孔H1の先端部分から、壁面に対して平行方向に平行孔H2を削孔する作業を想定している。
【0024】
<5.1>ガイド材の配置・送出部の固定
まず、被削孔体X内の送り出し方向D1から削孔方向D2へと折曲するコーナー部D3の出口側に、ヘッド11およびスイベル12を収容できるスペースを削孔等によって確保する。そして、このスペースにヘッド11とスイベル12を先端に配置した伝達部20を挿通させた状態のガイド材40を配置する。
ガイド材40の配置時または配置後、送出部30に連結した接続管41の先端にガイド材40を螺着する。この接続管41をコア孔H1内に差し入れて、ガイド材40の先端側の開口が平行孔H2の削孔方向D1を向くように位置合わせする。
その後、被削孔体Xの外壁面に送出部30をボルトなどで固定することで、ガイド材40とともに送出部30を位置決めする。
【0025】
<5.2>伝達部の送り出し
次に、送出部30でもって伝達部20を把持し、伝達部20を送り出し方向D1(コア孔H1の先端方向)へ送り出す。
伝達部20は、ガイド材40内で、ガイド材40の内部形状に合わせて弾性変形し、ガイド材40の先端から、平行孔H2の削孔方向D2へ直線状に突出する。
伝達部20の送り出しに伴い、スイベル12の後端は前方に押し出されて削孔部10を前進させる。
【0026】
<5.3>平行孔の削孔
その後、削孔部10のウォータージェットを稼働させ、削孔部10から高圧水を噴出させながら、所定の削進速度で伝達部20を送り出し方向D1へ押し込んで行く。
この押し込み作業により、被削孔体Xの内部が削孔部10によって削孔方向D2に向かって直線状に削進してゆく。
このとき、コーナー部から掘進方向に露出する伝達部の長さが長くなってきたとしても、伝達部20は十分な剛性を備えているため、削孔部10が通路内で傾斜しにくくなる。
【0027】
<5.4>屈曲角度について
本実施例では、削孔方向D1と送り出し方向D2との間の角度(屈曲角度)θを90°としているが、本発明では屈曲角度が本実施例に限定されるものではない。削孔装置1の用途に応じて屈曲角度θを(0°<θ<180°)の範囲で任意に設定することができる。
【0028】
<5.5>屈曲場所について
本実施例では、被削孔体Xの内部に伝達部20の屈曲部20aが位置する状況を想定しているが、本発明は、被削孔体Xの外部に伝達部20の屈曲部20aが位置するように使用してもよい。この場合、被削孔体Xの周囲空間が狭小で、削孔装置の取り回しに制限が生じる現場などにおいて好適である。