特許第6847467号(P6847467)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6847467
(24)【登録日】2021年3月5日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】汚泥かき寄せ装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/18 20060101AFI20210315BHJP
【FI】
   B01D21/18 F
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-181898(P2019-181898)
(22)【出願日】2019年10月2日
(62)【分割の表示】特願2015-244943(P2015-244943)の分割
【原出願日】2015年12月16日
(65)【公開番号】特開2019-217503(P2019-217503A)
(43)【公開日】2019年12月26日
【審査請求日】2019年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】508165490
【氏名又は名称】アクアインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀幸
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】増田 智也
(72)【発明者】
【氏名】大塚 修史
(72)【発明者】
【氏名】藤原 康人
(72)【発明者】
【氏名】富永 暁
【審査官】 片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−180247(JP,A)
【文献】 特開2010−058005(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0318733(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/00−34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方側と他方側との間で往復移動するものであって、該一方側に面し沈殿池に沈殿した汚泥を該一方側にかき寄せるかき寄せ面を有したかき寄せ部材と、
前記かき寄せ部材よりも上方に配置された駆動部材と、
前記駆動部材に固定され下方に延在した延在部材と
前記かき寄せ部材を載置する載置部材と、
前記延在部材と前記載置部材とを固定するボルトおよびナットとを備え、
前記延在部材は、前記かき寄せ面よりも前記一方側に配置されたものであり、
前記かき寄せ部材は、前記駆動部材が駆動することで往復移動領域を往復移動し、前記ナットを緩めて前記ボルトを移動することでこのかき寄せ部材を該往復移動領域から前記他方側へ取り外し可能に該他方側が開放された状態で配置されたものであることを特徴とする汚泥かき寄せ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沈殿池の池底部に沈殿した汚泥をかき寄せる汚泥かき寄せ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
沈殿池の池底部に沈殿した汚泥を汚泥ピットにかき寄せる汚泥かき寄せ装置として、いわゆるレシプロ式のものが採用される場合がある。このレシプロ式の汚泥かき寄せ装置には、汚泥をかき寄せるかき寄せ面を有したかき寄せ部材と、このかき寄せ部材を、汚泥ピットに近づける方向(一方側)と、汚泥ピットから遠ざける方向(他方側)とに往復移動させる駆動部材とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
特許文献1に記載の汚泥かき寄せ装置では、駆動ロッド等の駆動部材にかき寄せ部材が溶接等により固定されており、リンク機構を介してモータの駆動力が駆動部材に伝達されると、駆動部材とともにかき寄せ部材が一方側と他方側との間で往復移動する。これにより、沈殿池の池底部に沈殿した汚泥は、汚泥ピットに向けて段階的にかき寄せられていく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−80008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された汚泥かき寄せ装置では、かき寄せ部材が溶接等により駆動部材に固定されているため、かき寄せ部材が破損等した場合の交換作業が難しい。また、金属板を折り曲げ加工等することで形成されたかき寄せ部材の場合には、このかき寄せ部材に挿通孔を形成するとともにナットを溶接し、これら挿通孔とナットにボルトを挿通することによってかき寄せ部材を駆動部材に固定する固定機構を採用することも考えられる。しかしながら、このような固定機構を採用した場合には、かき寄せ部材の長手方向における正確な位置に挿通孔を形成するとともにナットを溶接する、といった煩雑な作業が必要になる。さらに、溶接によってボルトが熱膨張し、いわゆるかじりが生じてしまう場合もある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、かき寄せ部材を駆動部材に容易に固定することができるとともに、かき寄せ部材の交換も容易に行うことができる汚泥かき寄せ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決する本発明の汚泥かき寄せ装置は、一方側と他方側との間で往復移動するものであって、該一方側に面し沈殿池に沈殿した汚泥を該一方側にかき寄せるかき寄せ面を有したかき寄せ部材と、
前記かき寄せ部材よりも上方に配置された駆動部材と、
前記駆動部材に固定され下方に延在した延在部材と
前記かき寄せ部材を載置する載置部材と、
前記延在部材と前記載置部材とを固定するボルトおよびナットとを備え、
前記延在部材は、前記かき寄せ面よりも前記一方側に配置されたものであり、
前記かき寄せ部材は、前記駆動部材が駆動することで往復移動領域を往復移動し、前記ナットを緩めて前記ボルトを移動することでこのかき寄せ部材を該往復移動領域から前記他方側へ取り外し可能に該他方側が開放された状態で配置されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の汚泥かき寄せ装置によれば、かき寄せ部材を駆動部材に容易に固定することができるとともに、かき寄せ部材の交換も容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態である汚泥かき寄せ装置が設置された沈殿池の側断面図である。
図2図1に示す沈殿池を上方からみた平面図である。
図3】(a)は、図2において円で囲んだA部を拡大して示す図であり、(b)は、図2のB−B断面図である。
図4図2のC−C断面図である。
図5図3および図4に示す汚泥かき寄せ装置の第1変形例について、図3(b)に対応した状態を示す図である。
図6図3および図4に示す汚泥かき寄せ装置の第2変形例について、図3(b)に対応した状態を示す図である。
図7図3および図4に示す汚泥かき寄せ装置の第3変形例について、図3(b)に対応した状態を示す図である。
図8図3および図4に示す汚泥かき寄せ装置とは全体の構成が異なる第4変形例が設置された沈殿池を上方からみた平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本実施形態の汚泥かき寄せ装置は、沈殿池の池底部に設けられたガイドレールに沿って往復移動するかき寄せ部材を備えた、いわゆるレシプロ式の汚泥かき寄せ装置である。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態である汚泥かき寄せ装置10が設置された沈殿池9の側断面図である。図2は、図1に示す沈殿池9を上方からみた平面図である。図1および図2では、沈殿池9の長手方向(図では左右方向)の中央部分を省略して示している。
【0012】
図1および図2に示す沈殿池9は、上流壁9aと、下流壁9cと、一対の側壁9dによって囲まれた、平面視で略長方形状をした池である。この沈殿池9は、図1では左側にある導水渠9eから汚水や雨水といった下水を受け入れ、受け入れた下水に含まれる汚泥を池底部9fに沈殿させ、図1では右側から排水する。
【0013】
図1および図2に示すように、この沈殿池9には、本実施形態の汚泥かき寄せ装置10と汚泥ピット91が設けられている。汚泥ピット91は、沈殿池9における、図1および図2では左側部分に設けられている。以下、図1および図2における左側を一方側と称し、図1および図2における右側を他方側と称することがある。また、図1において紙面に直交する方向、および図2における上下方向を池幅方向と称することがある。なお、沈殿池9の池底部9fは、一方側に向かうに従って沈殿池9の水深が増加するように少しだけ傾斜した傾斜面になっている。また、汚泥ピット91にかき寄せられた汚泥は、図示しない汚泥ポンプによって沈殿池9の外部に排出される。
【0014】
本実施形態の汚泥かき寄せ装置10は、池底部9fに固定されたガイドレール2と、複数のかき寄せ部材3と、複数のかき寄せ部材3を連結した連結部材4(図2参照)と、かき寄せ部材3を往復移動させる駆動ロッド5と、駆動ロッド5に駆動力を付与する駆動機構6と、かき寄せ部材3を駆動ロッド5や連結部材4に固定する固定機構7とを備えている。
【0015】
図1に示すように、駆動機構6は、モータ61と、モータ61の回転駆動力を往復動作に変換する変換機62と、変換機62の出力軸に一端が固定された往復ロッド63と、往復ロッド63の下端に取り付けられた三角形状リンク64と、三角形状リンク64を回転自在に支持したリンク支持体65と、三角形状リンク64と駆動ロッド5を連結する連結板66とを備えている。なお、図2では、連結板66以外の駆動機構6を構成する部材は図示省略している。
【0016】
図1に示すように、モータ61は、地上に配置されている。このモータ61は、両方向に回転可能なモータである。モータ61が所定方向に回転することで、往復ロッド63は池底側に向かう方向に進出移動する。また、モータ61が反対方向に回転することで、往復ロッド63は池底側から離間する方向に後退移動する。往復ロッド63が進退移動すると、三角形状リンク64は矢印Pの方向に揺動する。三角形状リンク64が揺動すると、連結板66によって三角形状リンク64に連結された駆動ロッド5が、池底部9fに固定されたガイドレール2に沿って一方側と他方側との間で往復移動する。駆動ロッド5には、複数のかき寄せ部材3が固定されている。駆動ロッド5が往復移動することで、各かき寄せ部材3は、ガイドレール2に沿って一方側と他方側との間で往復移動する。すなわち、変換機62、往復ロッド63および三角形状リンク64によって、モータ61の回転が、駆動ロッド5の往復運動に変換される。以下、かき寄せ部材3が往復移動する方向を、往復移動方向と称することがある。
【0017】
各かき寄せ部材3は、その往復移動方向に均等あるいは略均等の間隔で配置されている。かき寄せ部材3それぞれは、沈殿池9の池幅方向に延在したものである。かき寄せ部材3の往復移動のストロークは、かき寄せ部材3が配置された往復移動方向の間隔以上の距離に設定されている。沈殿池9に沈殿した汚泥は、かき寄せ部材3の往復移動により汚泥ピット91側に1ストロークづつ段階的にかき寄せられ、汚泥ピット91に送り込まれる。
【0018】
ガイドレール2は、例えば超高分子量ポリエチレン製のものであり、図2に示すように、沈殿池9の長手方向に延在している。本実施形態では、池幅方向中央部と池幅方向両端部の計3つのガイドレール2が沈殿池9の池底部9fに固定されている。駆動ロッド5は、池幅方向中央部に配置され、かき寄せ部材3の往復移動方向に延在している。また、連結部材4は、池幅方向両端部それぞれに1つずつ配置されている。駆動ロッド5および連結部材4は、中空四角柱形状のステンレス製のものである。また、連結部材4それぞれは、複数のかき寄せ部材3が配置された往復移動方向の全長にわたって延在し、固定機構7によって、複数のかき寄せ部材3それぞれが固定されている。これにより、連結部材4それぞれは、複数のかき寄せ部材3全てを連結している。各かき寄せ部材3が池幅方向両端側部分において連結部材4によって連結されているので、各かき寄せ部材3が池幅方向両側部分において一体化されてかき寄せ部材3全体として剛性が高まる。こうすることで、各かき寄せ部材3の池幅方向両端側部分が往復移動方向に撓んでしまったり、各かき寄せ部材3が池幅方向に対して傾斜してしまうことを抑制できる。かき寄せ部材3が撓んだり傾斜してしまうと、池幅方向端側に汚泥のかき残しが生じてしまう虞がある。
【0019】
さらに、駆動ロッド5と連結部材4は、複数の連結バー41,42で連結されている。これら複数の連結バーは、2つの第1連結バー41,41と、2つの第2連結バー42,42とから構成されている。2つの第1連結バー41,41は、池幅方向に延在し、駆動ロッド5と連結部材4とをそれぞれ連結するものである。2つの第2連結バー42,42は、池幅方向両端側部分に配置されたそれぞれの連結部材4から他方側に向かうに従い駆動ロッド5側に傾斜したものである。これら複数の連結バー41,42は、図2に示すように三角形状に配置されることで、駆動ロッド5と2つの連結部材4とを高い剛性をもって一体化している。さらに、駆動ロッド5の、連結板66が取り付けられた箇所の近傍に、2つの第2連結バー42,42を固定している。これらのため、駆動機構6から駆動ロッド5に伝達される駆動力が、効率的に連結部材4にも伝達され、駆動ロッド5が往復移動することで、2つの連結部材4も往復移動する。すなわち、2つの連結部材4は、かき寄せ部材3を往復移動させる機能も有する。
【0020】
図3(a)は、図2において円で囲んだA部を拡大して示す図であり、図3(b)は、図2のB−B断面図である。図4は、図2のC−C断面図である。
【0021】
図3(b)に示すように、かき寄せ部材3は、一方側に面し、池底部9fに沈殿した汚泥を一方側(図1および図2に示す汚泥ピット91側)にかき寄せるかき寄せ面31と、かき寄せ面31の上端部分31aから他方側に向けて下方に傾斜した傾斜面32と、かき寄せ面31の下端部分31bから他方側に折り返された一方側折返し部33と、傾斜面32の下端部分から一方側に折り返された他方側折返し部34とを有している。また、かき寄せ部材3は、かき寄せ面31と傾斜面32との境界部分が頂部3aになり、傾斜面32と他方側折返し部34との境界部分が他方側端部3bになる。
【0022】
かき寄せ面31は、その上端部分31aと下端部分31bが一方側に張り出し、中央部分が他方側に凹んだ円弧状に形成されている。かき寄せ部材3が一方側に移動する際には、そのかき寄せ面31が汚泥を一方側にかき寄せる。一方、傾斜面32は、他方側に向かってかき寄せ部材3が先細になるように、池底部9f側に傾斜している。かき寄せ部材3が他方側に移動する際には、その傾斜面32を汚泥が乗り越えることで、かき寄せ面31でかき寄せられた位置に汚泥の大部分を留まらせることができる。このかき寄せ部材3は、曲げ加工したステンレス製の板で構成されている。
【0023】
図3および図4に示すように、駆動ロッド5にかき寄せ部材3を固定する固定機構7は、一対のアングル71,71と、載置部材72と、押圧部材73とを有している。なお、連結部材4にかき寄せ部材3を固定する固定機構7は、駆動ロッド5にかき寄せ部材3を固定する固定機構7と同様の構成であるため説明を省略する。
【0024】
一対のアングル71それぞれは、ステンレス製のL形金具であり、上下方向に延在した姿勢で駆動ロッド5における池幅方向両側部分それぞれに溶接されている。なお、アングル71には、後述するボルト731を挿通する挿通孔71aが形成されている。
【0025】
図3(b)に示すように、載置部材72は、一方側部分に立ち上がった固定壁721と、この固定壁721の下端部分から他方側に延在しガイドレール2上に載置される摺接部722と、この摺接部722の他方側の端部から一方側の斜め上方に向けて突出した受部723とを有している。本実施形態の載置部材72は、いわゆるステンレス鋳物である。載置部材72の固定壁721は、図4に示すように、一対のアングル71,71にわたって池幅方向に拡がった形状のものであり、図3に示すように、アングル71の挿通孔71aに対応した位置に挿通孔721aが形成されている。
【0026】
図3(a)に示すように、摺接部722は、平面視略長方形状の部分であり、往復移動方向の長さが、かき寄せ部材3の往復移動方向の長さよりも長く形成されている。また、本実施形態では、摺接部722の池幅方向の長さは、駆動ロッド5の池幅方向の長さよりもやや長く形成されている。図3(b)に示すように、摺接部722は、かき寄せ部材3が載置される部分である。具体的には、摺接部722の上面には、かき寄せ部材3の、一方側折返し部33と他方側折返し部34が載置される。この摺接部722は、かき寄せ部材3が往復移動する際にその下面がガイドレール2と摺接し、ガイドレール2との摩耗を低減する機能も有するものである。このため、ガイドレールとの摩擦を低減する例えばシュー等の別部材を別途設ける必要がない。また、摺接部722には、上方に突出した第2受部722aが形成されており、この第2受部722aは、摺接部722に載置されたかき寄せ部材3の一方側折返し部33が係止する部分である。
【0027】
受部723は、摺接部722との間に、かき寄せ部材3の他方側端部3bを含む他方側の部分が挿入されるように、かき寄せ面31に対応した傾斜姿勢に設けられている。なお、受部723には、補強用のリブ723aが設けられている。
【0028】
図3(a)および図4に示すように、押圧部材73は、駆動ロッド5の池幅方向両側にそれぞれ設けられている。また、図3(a)に示すように、押圧部材73それぞれが、ボルト731と、3つのナット732と、キャップ733と、ワッシャ734とを有している。本実施形態では、ボルト731、ナット732およびワッシャ734は、ステンレス製のものであり、キャップ733は、合成樹脂製のものである。なお、キャップ733は、円盤状の当接部733aを有している。
【0029】
図3(a)および同図(b)に示すように、ボルト731は、ナット732とワッシャ734が取り付けられた状態で、一方側から他方側に向けて、アングル71の挿通孔71aと固定壁721の挿通孔721aとに挿通されている。挿通孔71a,721aに挿通されたボルト731における、固定壁721の他方側には、ナット732が2つ取り付けられている。なお、これら2つのナット732は、ボルト731の緩み止めとして機能するいわゆるダブルナット構造である。これらのナット732とボルト731とによって載置部材72がアングル71に固定されている。また、挿通孔71a,721aに挿通されたボルト731の他方側の端部には、キャップ733が取り付けられている。キャップ733は、その当接部733aがかき寄せ面31に当接し、一方側から他方側に向けてかき寄せ面31を押圧している。本実施形態の押圧部材73は、かき寄せ面31における高さ方向の中央側の部分、すなわちかき寄せ面31における上端部分31aと下端部分31bとの間の部分を押圧している。ここで、押圧部材73が、かき寄せ面31における上端部分31aまたは下端部分31bのいずれか一方を押圧する態様としてもよいし、かき寄せ面31における上端部分31aおよび下端部分31bそれぞれを押圧する態様としてもよい。
【0030】
押圧部材73によって押圧され他方側に向けて押されるかき寄せ部材3は、載置部材72の受部723によって他方側から受けられる。具体的には、かき寄せ部材3における他方側の部分が受部723に当接し、かき寄せ部材3の他方側への動きが阻止される。すなわち、かき寄せ部材3は、受部723によって他方側への動きが阻止された状態で押圧部材73によって他方側に押圧されることで載置部材72に固定される。これにより、かき寄せ部材3が、固定機構7によって駆動ロッド5に固定される。
【0031】
ここで、本実施形態のかき寄せ部材3は、ステンレス製の板材を曲げ加工して形成しているため変形しやすい。このような変形しやすい構成の場合には特に、かき寄せ面31が押圧されるとかき寄せ部材3が変形し、図3(b)において一点鎖線で示すようにかき寄せ面31の位置が他方側にずれてしまう。かき寄せ面31の位置が他方側にずれてしまうと、かき寄せ部材3の固定が不安定になってしまう場合がある。さらに、かき寄せ面31によって汚泥を一方側にかき寄せる際には、かき寄せ面31に対して一方側から他方側に向けて圧力がかかる。この結果、かき寄せ面31の位置が他方側にずれ、かき寄せ部材3全体の位置がずれたり載置部材72から外れてしまう虞がある。これらのため、本実施形態では、他方側に向けて押される一方側折返し部33を、他方側から受ける第2受部722aを摺接部722に設けている。この第2受部722aにより、かき寄せ面31の位置が他方側にずれてしまうことが防止され、かき寄せ部材3を安定して固定することができる。
【0032】
また、本実施形態では、ボルト731の先端に樹脂製のキャップ733を取り付けている。これにより、ステンレス製のボルト731が、同じくステンレス製のかき寄せ面31に接触することがなくなり、金属どうしが接触することで生じてしまう摩耗を防ぐことができる。なお、ボルト731とかき寄せ面31のうちの少なくとも一方を、金属以外の素材、例えば合成樹脂で構成すれば、キャップ733を省略しても、ボルト731とかき寄せ面31の摩耗を抑えることができる。
【0033】
さらに、図3(b)および図4に示すように、本実施形態では、頂部3aが駆動ロッド5に接触した状態で、かき寄せ部材3が固定機構7によって駆動ロッド5に固定されている。このため、かき寄せ部材3が一方側に移動し、かき寄せ面31によって汚泥を一方側にかき寄せる際に、かき寄せ部材3の上方への移動が駆動ロッド5によって規制される。この結果、図3(b)において太い円弧状の矢印で示すような曲げ応力の発生が抑えられ、駆動ロッド5とアングル71との溶接個所の破断やアングル71の損傷等を防ぐことができる。
【0034】
また、固定機構7では、ナット732を緩めボルト731を一方側に移動させることで、かき寄せ面31を押圧する押圧力が解除され、載置部材72からかき寄せ部材3を取り外すことができる。このため、かき寄せ部材が溶接等により駆動ロット等に固定されているような従来の汚泥かき寄せ装置と比べ、かき寄せ部材3の取り換え作業を容易に行うことができる。
【0035】
以上、説明したように、本実施形態の汚泥かき寄せ装置によれば、かき寄せ部材3を駆動ロッド5に容易に固定することができるとともに、かき寄せ部材3の交換も容易に行うことができる。
【0036】
次に、図3および図4に示す汚泥かき寄せ装置10の変形例について説明する。以下に説明する変形例においては、図3および図4に示す実施形態との相違点を中心に説明し、図3および図4に示す実施形態における構成要素の名称と同じ名称の構成要素には、これまで用いた符号を付して説明し、重複する説明は省略することがある。
【0037】
図5は、図3および図4に示す汚泥かき寄せ装置10の第1変形例について、図3(b)に対応した状態を示す図である。
【0038】
図5に示すように、第1変形例の汚泥かき寄せ装置11では、受部723および第2受部722aを、池幅方向に延在する溝によって構成している点が、図3(b)に示す汚泥かき寄せ装置10と相違している。受部723および第2受部722aを溝によって構成することで、かき寄せ部材3の他方側に向かう動きだけでなく、一方側に向かう動きも規制することができる。すなわち、本変形例における、受部723と第2受部722aは、かき寄せ面31の位置を拘束するものである。これにより、押圧部材73による押圧力が仮に弱まった場合であっても、かき寄せ部材3の一方側への動きを規制し、かき寄せ部材3のずれを抑えることができる。
【0039】
また、載置部材72の形状を簡略化することができるとともに、載置部材72の往復移動方向の長さを抑え、載置部材72の小型化を図ることも可能になる。さらに、摺接部722における、受部723や第2受部722aを形成した箇所の厚さT1はやや薄くなるものの、それ以外の箇所の厚さT2を維持しつつ、池底部9fからかき寄せ部材3の下端部までの高さHを低く抑えることができる。このため、第1変形例の汚泥かき寄せ装置11は、かき寄せ部材3の高さ位置を池底部9fに近づける態様として特に有効である。
【0040】
図6は、図3および図4に示す汚泥かき寄せ装置10の第2変形例について、図3(b)に対応した状態を示す図である。
【0041】
図6に示すように、第2変形例では、第2受部722aが、かき寄せ部材3の一方側折返し部33を一方側から挿入できるように鍵状に形成されている。本変形例によれば、第2受部722aによって一方側折返し部33の浮き上がりを抑えることができる。このため、図5に示すように、駆動ロッド5とかき寄せ部材3の頂部3aとの間に隙間を有する態様、すなわち、かき寄せ部材3が駆動ロッド5によって上方から規制されていない態様に特に有用である。なお、本変形例の押圧部材73は、載置部材72の固定壁721とナット732との間にコイルばね735を備えており、このコイルばね735によってボルト731が他方側に付勢されている。
【0042】
図7は、図3および図4に示す汚泥かき寄せ装置10の第3変形例について、図3(b)に対応した状態を示す図である。
【0043】
図7に示すように、第3変形例では、かき寄せ部材3の構成が異なり、図3(b)に示すかき寄せ部材3の、一方側折返し部33と他方側折返し部34を省略している。すなわち、かき寄せ面31と傾斜面32とによってかき寄せ部材3を構成している。また、載置部材72の第2受部722aを、往復移動方向の長さを受部723の近傍まで延長して設けた突部によって構成している。これにより、かき寄せ面31の下端部分31bが、第2受部722aの一方側の端部に係合し、傾斜面32の下端部分が、第2受部722aの他方側の端部と受部723とによって挟持されている。かき寄せ部材3は、本変形例のように、一方側折返し部33と他方側折返し部34の両方を省略する態様も、一方側折返し部33と他方側折返し部34のいずれか一方を省略する態様も採用することができる。なお、かき寄せ部材3の池幅方向において、載置部材72に載置する部分だけ、一方側折返し部33と他方側折返し部34を省略する態様としてもよい。
【0044】
さらに、本変形例では、キャップ733の当接部733aにおける、かき寄せ面31に当接する面を、かき寄せ面31に対応させて曲面状に形成している。こうすることで、キャップ733の当接部733aが、かき寄せ面31の上端部分31aから下端部分31bまで接触することで接触面積が増加し、かき寄せ面31をより安定して押圧することができる。また、この態様であれば、キャップ733とかき寄せ面31との摩耗が抑えられるため、キャップ733を、かき寄せ面31と同じく、ステンレス製としてもよい。
【0045】
図8は、図3および図4に示す汚泥かき寄せ装置10とは全体の構成が異なる第4変形例が設置された沈殿池を上方からみた平面図である。
【0046】
図8に示すように、第4変形例の汚泥かき寄せ装置14は、駆動ロッド5の一方側の部分に連結板66が連結され、三角形状に配置された連結バー41,42も一方側の部分に設けられている。また、図8では省略しているが、連結板66以外の駆動機構6を構成する部材も一方側に配置されている。このように、本発明は、かき寄せ部材を往復移動させる駆動機構の態様等は特に限定されるものではなく、いわゆるレシプロ式の汚泥かき寄せ装置に広く適用することができる。
【0047】
本発明は上述の実施の形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことが出来る。例えば、本実施形態では、載置部材72を、ステンレス鋳物で構成しているが、合成樹脂で構成してもよい。また、載置部材72をアングル71と一体に形成してもよいし、載置部材72の固定壁721を上方に延長し、この延長した固定壁721を駆動ロッド5に固定してもよい。また、本実施形態では、3つのガイドレール2を設けているが、ガイドレール2はいくつであっても構わない。また、本実施形態では、2つの連結部材4を設けているが、連結部材4はいくつであっても構わない。なお、以上説明した各変形例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を実施形態や他の変形例に適用してもよい。
【0048】
以上説明した汚泥かき寄せ装置は、一方側と他方側との間で往復移動するものであって、該一方側に面し沈殿池に沈殿した汚泥を該一方側にかき寄せるかき寄せ面を有したかき寄せ部材と、
前記かき寄せ部材を往復移動させる駆動部材と、
前記駆動部材に前記かき寄せ部材を固定する固定機構とを備え、
前記固定機構は、
前記一方側から前記他方側に向けて前記かき寄せ面を押圧する押圧部材と、
前記他方側に向けて押される前記かき寄せ部材を該他方側から受ける受部とを有するものであり、
前記押圧部材の押圧力を解除することで前記かき寄せ部材を前記駆動部材から取り外すことが可能なものであることを特徴としてもよい。
【0049】
ここで、前記かき寄せ部材は、前記かき寄せ面の上端部分から前記他方側に向けて下方に傾斜した傾斜面を有するものであってもよい。また、前記押圧部材が前記かき寄せ面を押圧する部分は特に限定されるものではなく、該かき寄せ面の高さ方向における、略中央部や中央の部分を押圧するものであってもよいし、該かき寄せ面の上端部分または下端部分のうちのいずれか一方、もしくは上端部分および下端部分それぞれを押圧するものであってもよい。
【0050】
この汚泥かき寄せ装置によれば、前記一方側から前記他方側に向けて前記かき寄せ面を押圧する押圧部材と、該他方側に向けて押されるかき寄せ部材を該他方側から受ける受部とを有する前記固定機構によって、該かき寄せ部材を前記駆動部材に固定することができる。このため、前記かき寄せ部材の所定位置に正確に挿通孔を形成する作業やナットを溶接する作業等も不要であり、該かき寄せ部材を前記駆動部材に固定する作業が容易になる。さらに、前記押圧部材の押圧力を解除することで前記かき寄せ部材を前記固定機構から取り外すことができ、該かき寄せ部材の交換作業も容易に行うことができる。
【0051】
また、この汚泥かき寄せ装置において、前記かき寄せ部材が往復移動する方向に延在したガイドレールを備え、
前記固定機構は、前記ガイドレールと前記かき寄せ部材との間に位置する摺接部を有するものであってもよい。
【0052】
ここで、前記摺接部は、前記かき寄せ部材が往復移動する際に前記ガイドレールと摺接し、該ガイドレールとの摩擦を低減する機能、例えばシューとしての機能を有するものである。
【0053】
前記固定機構が前記摺接部を有する態様を採用すれば、ガイドレールとの摩擦を低減する例えばシュー等の別部材を別途設ける必要がなくなる。
【0054】
さらに、この汚泥かき寄せ装置において、前記固定機構は、前記かき寄せ面と前記受部との間に設けられた第2受部を有するものであり、
前記第2受部は、前記他方側に向けて押される前記かき寄せ部材における前記一方側の部分を、該他方側から受けるものであってもよい。
【0055】
ここで、前記第2受部は、突起であってもよいし、溝や穴であってもよい。前記かき寄せ部材の前記一方側部分は、前記かき寄せ面の下端部分から前記他方側に折り返された折返し部であり、前記第2受部は、該折返し部を、他方側から受けるものであってもよい。さらに、前記第2受部は、前記押圧部材との間で前記かき寄せ部材の前記一方側部分を挟み込むものであってもよい。またさらに、前記第2受部は、前記押圧部材と前記受部との間における前記かき寄せ面の位置を拘束するものであってもよく、該押圧部材と該受部との間における該かき寄せ面の位置を該押圧部材とともに規制するものであってもよい。
【0056】
前記第2受部を有する構成とすれば、前記押圧部材と前記受部との間における前記かき寄せ面の位置が安定するため、該かき寄せ面の位置が他方側にずれて該かき寄せ面が押圧される力が弱まってしまうことが回避される。これにより、前記かき寄せ部材が不用意に外れてしまうことや位置がずれてしまうことを防ぐことができる。
【0057】
また、この汚泥かき寄せ装置において、前記押圧部材は、前記かき寄せ面との接触部分に緩衝用のキャップを有するものであってもよい。
【0058】
ここで、前記かき寄せ部材が金属(例えばステンレス)からなり、前記押圧部材は、金属(例えばステンレス)からなるボルトと、合成樹脂からなる前記キャップを有するものであってもよい。
【0059】
前記押圧部材が前記キャップを有する構成を採用することで、前記かき寄せ部材が金属製であり、前記押圧部材が金属製のボルトを有する態様であっても、前記キャップを合成樹脂等によって構成することで金属どうしの直接の接触が回避され、摩耗を抑えることができる。
以上説明した汚泥かき寄せ装置は、一方側と他方側との間で往復移動するものであって、該一方側に面し沈殿池に沈殿した汚泥を該一方側にかき寄せるかき寄せ面を有したかき寄せ部材と、
前記かき寄せ部材よりも上方に配置された駆動部材と、
前記駆動部材に固定され下方に延在した延在部材とを備え、
前記延在部材は、前記かき寄せ面よりも前記一方側に配置されたものであり、
前記かき寄せ部材は、前記駆動部材が駆動することで往復移動領域を往復移動し、このかき寄せ部材を該往復移動領域から前記他方側へ取り外し可能に該他方側が開放された状態で配置されたものであることを特徴としてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10,11,12,13,14 汚泥かき寄せ装置
2 ガイドレール
3 かき寄せ部材
31 かき寄せ面
32 傾斜面
4 連結部材
5 駆動ロッド
6 駆動機構
7 固定機構
71 アングル
72 載置部材
722a 第2受部
723 受部
73 押圧部材
9 沈殿池
9f 池底部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8