(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記生産グループは、前記母豚ステータスに応じて作成される、種付母豚グループ、哺乳母豚グループ、離乳母豚グループの少なくともいずれか1つである、請求項2に記載の畜産情報管理システム。
前記母豚抽出部は、前記生産グループに所属させる母豚の候補として、ユーザが候補の中から選択可能であるように、抽出した候補を選択画面として表示するよう構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の畜産情報管理システム。
前記情報記憶部は、前記生産グループ識別子と紐づけられた、前記生産グループに属する母豚から出産された子豚群を識別するための産子グループ識別子と、前記産子グループ識別子と紐づけられた、前記産子グループ識別子によって識別される子豚群に対して飼養イベントを実施することで遷移する前記子豚群の飼養状態である産子グループステータスをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の畜産情報管理システム。
前記母豚ステータス情報と、前記生産グループ識別子を用いて、複数の前記生産グループについて、複数の任意のタイミングにおける所属頭数の実績値を算出し、前記所属頭数の時系列を前記生産グループ毎に表示する、生産グループ動態表示部を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の畜産情報管理システム。
前記情報記憶部は、過去の母豚の繁殖成果である、種付タイミングと、産次及び/又は産歴と、異常ステータス遷移の履歴が紐づけられた繁殖情報をさらに含み、前記繁殖情報を用いて、前記生産グループに所属する母豚の、種付タイミングと、産次及び/又は産歴に応じて、複数の任意のタイミングにおける前記生産グループの所属頭数の予測値を予測する、予測部を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の畜産情報管理システム。
前記母豚ステータス情報と、前記生産グループ識別子を用いて、複数の前記生産グループについて、複数の任意のタイミングにおける所属頭数の実績値を算出し、前記所属頭数の時系列を前記生産グループ毎に表示し、前記複数の任意のタイミングにおける所属頭数の実績値が存在しない部分を、前記予測部が予測した予測値で表示する生産グループ動態表示部を備える、請求項11に記載の畜産情報管理システム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、各実施形態について図面を用いて説明する。
【0015】
なお、以下で説明する実施形態は、管理対象家畜として豚を例に説明を行う。豚は畜産において、1つの農場で飼育する数が数百から数千となる場合があり、膨大な数の家畜の管理負荷が大きく、また、豚に実施するイベント等が誤って実施される可能性があるものである。特に、母豚は出荷し換金するための子豚を生む養豚農家にとって重要な経営資源であり、大規模農家では多頭数を飼育しており、実施するイベントの誤実施は経営に直接的なマイナスインパクトをもたらすものである。
【0016】
はじめに、本開示を用いて実施される、豚の繁殖経営における生産グループ管理の有用性について説明する。比較として従来のように母豚を一頭ずつ個別に管理する場合を例に挙げる。個々の母豚は、耳標、ICタグや入墨などの物理的な母豚識別子と、データベースに記憶されている電子的な母豚識別子とが対応するという前提で管理されている。個々の母豚が動物生理に従い自然に発情し、それに従って種付をするといった飼養を行うと、母豚の分娩が集中したり、母豚より産まれた産子である肥育豚群が出荷適正体重になるタイミングが集中したりと、養豚の成果物が得られる時期を平準化することができない。農場のリソースとしての施設と作業者は限られており、それらを制約条件としながら母豚の出産の平準化および最適化するように豚の繁殖が行われなければ、短い期間に必要な作業が集中したり、離乳豚舎のキャパシティを大きく超えて子豚が生まれるなどして、畜産経営の不安定化を招きかねない。一方で畜産物は生き物であるので、工場で生産される部品や在庫のように管理することはできず、近年のアニマルウェルフェアの観点からも動物生理を尊重して飼養管理しなければならない。当然ながら農家の都合だけで飼養イベントスケジュールをこなすことはできず、家畜の体調や状態を考慮しながら畜産業を運営していく必要がある。そのため母豚の集合管理としては、同時期に繁殖イベントを実施すべき母豚の集合として、同一の飼養状態(ステータス)にある母豚だけをまとめて管理することが効率的である。畜産情報管理システムとしては、そのように複数の生産グループが互いに繁殖イベントを実施する時期を調整できるように、どの生産グループにどれだけの母豚が所属し、どのような状態にあるか可視化され、ユーザが望む任意のタイミングでそれらの情報を入手し意思決定できることが好ましい。特に豚の場合は、日本の畜産統計によれば、1戸あたり飼養頭数が牛と比較して1桁以上多く、妊娠期間が短く多頭出産であることで繁殖サイクルが短く産子の数も多い。例えば牛では妊娠期間が280〜285日で一度に基本的に1頭ずつ出産するので、1繁殖サイクルも1年近くになり、家畜に対して長期的で個別的な管理が適している。これに対し、豚の妊娠期間は114〜116日で、かつ一度に10頭超の出産を行い、種付から次の種付までの1繁殖サイクルも150日前後と短い。しかも、異なる繁殖サイクルの母豚が同時に多数存在すると、短期的、集団的で管理が非常に複雑である。したがって、母豚を牛のように個別に管理することは効率的ではない。本開示に示される畜産情報管理システム1は、農家の作業負担の低減や出荷時期の安定化及び予測可能性を高め、農場全体としてリソースを有効活用しながら成果をより多くし且つ安定的に得られるように、畜産経営を補助できるものである。
【0017】
図1は、本開示の実施形態に係る畜産情報管理サーバ101を含む畜産情報管理システム1を示すシステム構成図である。
図1で示すように、本開示の実施形態に係る畜産情報管理システム1は、畜産情報管理サーバ101と、ユーザが使用する端末装置201とが、ネットワークNWを介して通信可能に接続されている。ネットワークNWは、例えばインターネット、VPN(Virtual Private Network)等のネットワークである。説明の簡略化のため
図1では1人のユーザを想定して端末装置201のみを示しているが、畜産情報管理サーバ101はネットワークNWを介して2以上の端末装置、2人以上のユーザと接続可能である。また、一台の端末装置を複数のユーザが使用しても構わない。
【0018】
畜産情報管理システム1は、主に農家が、家畜情報の管理を支援するためのシステムである。畜産情報管理システム1の運営業者は、当該システムを用いて農家に家畜情報の管理を支援するサービスを提供する。運営者は、複数の農家に対してサービスを提供することができる。畜産情報管理サーバ101は、畜産情報管理システム1の運営者が管理を行い、農家が端末装置201を使用するものである。なお、畜産情報管理サーバ101は、農家自身が管理を行っても構わない。
【0019】
端末装置201は、例えばPCや、スマートフォン、タブレットPC、及び携帯電話のような装置である。端末装置201は、端末にインストールされた専用のアプリケーションソフトウェアによって畜産情報管理サーバ101にアクセスしてもよい。また、畜産情報管理サーバ101が提供する動作環境(API(アプリケーションプログラミングインタフェース)、プラットフォーム等)を利用して畜産情報管理サーバ101にアクセスしてもよい。
【0020】
入力部211は、例えば、キーボードや、マウス、タッチパッド等のユーザが操作することにより情報の入力や選択が可能な装置である。情報の入力と選択とは、例えば数値や文字や記号の記入による入力、項目の選択、処理を決定する入力などである。また、スマートフォンやタブレット、PCにおける液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示部212と一体であるタッチパネルでもよい。また、入力部211は、音声入力装置であっても構わない。
【0021】
表示部212は、情報等をユーザに表示するディスプレイ装置等である。端末装置201と独立したディスプレイ装置であっても構わないし、スマートフォンやタブレットにおける液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示装置であっても構わない。
【0022】
なお端末装置201は、畜産情報管理サーバ101とネットワークNWを介さず、サーバと一体として構成されていても構わない。
【0023】
畜産情報管理サーバ101は、母豚抽出部111、生産グループ管理部112、生産グループ登録部113、イベント結果登録部114、生産グループ動態表示部115、予測部116、通知部117を備える。これらの詳細については各実施形態の説明において詳述する。
【0024】
情報記憶部121は、畜産情報管理システム1による管理を実行するのに用いる情報を記憶する記憶装置である。情報は、家畜又は家畜群に関する情報、農場や畜舎など施設に関する情報、従業員の人数や能力に関する情報、餌や薬品など資材に関する情報、後述するイベントやステータスなど畜産業の運営に関する諸情報を記憶している。
図1では畜産情報管理サーバ101と一体に記載しているが、畜産情報管理サーバ101と物理的に独立した記憶装置であっても構わない。以下、情報記憶部121に記憶されている情報について説明する。
【0025】
情報記憶部121は、母豚の個別情報として母豚識別子D11と、母豚ステータス情報D12を記憶している。また、生産グループに関する情報として、生産グループ識別子D21と、生産グループステータス情報D22を記憶している。また産子グループの情報として、産子グループ識別子D31と、産子グループステータス情報D32とが含まれている。また、過去の繁殖成績を示す繁殖情報D41を記憶している。また、所定の条件を満たす場合にユーザに通知を行うための所定の条件であるアラートマスタ情報D51を記憶している。
【0026】
母豚とは、養豚業において繁殖のために飼養される雌豚であり、繁殖母豚、繁殖雌豚ともいう。基本的に子豚を出産(分娩)し、哺乳を実施するために飼養される。母豚識別子D11は、個々の母豚を識別するための情報であり、母豚の名称、番号、IDなどの種々の方式で、現実に存在する個々の母豚にユニークに割り当てられる電子的な識別子である。現実に存在する個々の母豚には、耳標、ICタグや入墨などの物理的な識別子が付与されて管理されており、情報記憶部121に記憶されている電子的な母豚識別子と対応するという前提で管理されている。
【0027】
母豚識別子D11に対しては、母豚ステータス情報D12、履歴情報、年齢、産次、産暦、品種、親情報、種豚情報、出産実績などその他各種情報が紐づけられて情報記憶部121に記憶されている。母豚ステータス情報は、個々の母豚の飼養状態を示す母豚ステータスを含む情報である。母豚ステータスの詳細については、後述する。履歴情報は、母豚ステータスが遷移した時間、日付であるタイミングについて示す情報である。
【0028】
産次とは、過去に正常分娩された時にその実績としてカウントされた数である。産暦は、受胎後の流産等の異常を含む出産暦を示すものであり、過去の種付時にカウントされる数である。
【0029】
母豚ステータス情報D12には、母豚ステータスの情報が含まれている。母豚ステータスは、飼養者の所望の飼養状態に遷移する正常ステータスとして種付済、受胎中、哺乳中、離乳中、発情中等が含まれ記憶されている。また、飼養者にとって好ましくない飼養状態に遷移する異常ステータスとして、再発情、妊娠鑑定遅延、不受胎、流産、分娩遅延、離乳遅延、未発情・体調不良、種付遅延、死亡、廃用等が含まれ記憶されている。
【0030】
生産グループとは、複数の母豚の集合であり、同時期に同じ繁殖イベントを実施すべきグループとして規定するものである。生産グループは、豚の繁殖において全てのイベントを一貫して実施するもの、つまり繁殖サイクルにおいて常にイベントを一緒に実施する母豚の集団としてもよい。または、母豚ステータスに応じて、イベント毎にグループを形成、再編するものとしてもよい。
【0031】
イベント毎に形成、再編する生産グループは、例えば、種付済の母豚ステータスに応じて形成する種付(母豚)グループ、哺乳中の母豚ステータスに応じて形成する哺乳(母豚)グループ、離乳中の母豚ステータスに応じて形成する離乳(母豚)グループ、等として形成することができる。
【0032】
生産グループ識別子D21は、生産グループを識別するための情報であり、生産グループの名称、番号、IDなどの種々の方式で、個々の生産グループにユニークに割り当てられる電子的な識別子である。
【0033】
生産グループ識別子D21には、その生産グループに属する母豚識別子D11、生産グループステータス情報D22、履歴情報、その他各種情報が紐づけられて情報記憶部121に記憶されている。
【0034】
生産グループステータス情報D22は、生産グループに属する個々の母豚に共通する飼養状態を示す生産グループステータスを含む情報である。したがって、ステータスの種類としては母豚ステータス情報D12と同様のステータスとなる。履歴情報は、生産グループステータスが遷移した時間、日付であるタイミングについて示す情報である。
【0035】
生産グループステータス情報D22には、母豚ステータス情報D12と同様に、飼養者の所望の飼養状態に遷移する正常ステータスとして種付済、受胎中、哺乳中、離乳中、発情中等が含まれている。また、飼養者にとって好ましくない飼養状態に遷移する異常ステータスとして、再発情、妊娠鑑定遅延、不受胎、流産、分娩遅延、離乳遅延、未発情・体調不良、種付遅延、死亡等が含まれている。
【0036】
図2に、情報記憶部121に記憶されている母豚の情報の一例を示す。例えば母豚識別子D11として母豚IDに対し、母豚の年齢、産次、産暦、ステータス、種付日、分娩日、離乳日、所属する生産グループの生産グループ識別子D21としてグループIDが紐づけられて記憶されている。種付日、分娩日、離乳日は産次、産暦に応じて複数記憶されうる。
【0037】
産子グループとは、基本的には所定の生産グループに属する母豚のみから産まれた子豚群が属する集合を主に形成される子豚群である。そのため、生産グループと産子グループは紐づけられて登録され記憶されている。すなわち、生産グループと産子グループは複数の母豚と複数の産子が紐づけられて登録され記憶されているグループの関係にある。産子グループに属する子豚群は、実際の飼養の状況に鑑みてイベント毎に常に再編されうる。産子グループ識別子D31は、個々の産子グループを識別するための情報であり、産子グループの名称、番号、IDなどの種々の方式で、現実に存在する個々の母豚にユニークに割り当てられる電子的な識別子である。
【0038】
産子グループ識別子D31に対しては、産子グループステータス情報D32、履歴情報、その他各種情報が紐づけられて情報記憶部121に記憶されている。
【0039】
図3に生産グループと産子グループの関係を示す。上記したように、生産グループは母豚の集合であり、産子グループとは、所定の生産グループに属する母豚から産まれた子豚を主に形成される子豚群である。生産グループは複数形成される。図に示すように生産グループG1と生産グループG2は基本的にイベントを実施する時期を調整できるようにグループ分けされ、スケジュール管理されうる。グループは流動的であり、体調に問題があるなど異常ステータスに遷移した母豚がグループ内にいる場合は、基本的にユーザの指示によりグループの加入、脱退が決定され、その指示を受けたシステムがこれを記憶更新する。同様に産子グループに所属する子豚も、ステータス遷移に応じてユーザの指示により流動的に加入、脱退が行われる。
【0040】
産子グループステータス情報D32は、産子グループに属する子豚群に共通する飼養状態を示す産子グループステータスを含む情報である。履歴情報は、産子グループステータスが遷移した時間、日付であるタイミングについて示す情報である。
【0041】
繁殖情報D41は、過去に行われた母豚の出産等の繁殖実績に関する情報である。例えば、各母豚の過去の繁殖実績(分娩日、雄豚、出産頭数、その他ステータス遷移の履歴)、とその母豚の特徴(品種、年齢、産次、産暦、種付日(種付タイミング))、産子の実績(産子の離乳時期、産子の出荷時期、産子の出荷頭数等)が情報として含まれている。
【0042】
アラートマスタ情報D51は、畜産情報管理システム1より生成される様々な数値、状態、予測、成績等の情報について通知部117を用いてユーザにアラートとして通知すべき条件が設定され記憶されている情報である。
【0043】
本実施形態においてイベントとは、生産グループに属する母豚、又は産子グループに属する子豚に対して飼養のために実施する作業である。
【0044】
イベントは、例えば、以下のものをあげることができる。種付(交配、人工授精(AI:Artificial Insemination)、受精卵移植(ET:Embryo Transfer)を含む)は、母豚を妊娠させるために実施される作業である。なお、人工授精によらない雄豚と雌豚による直接交配のことを本交配ともいう。受入は、繁殖候補豚などの豚を受け入れるイベントである。馴致は、新規に導入された豚や、豚舎を移動するなど環境が変わった豚を環境に慣らすイベントである。給餌は、個体豚又は群(生産グループ又は産子グループ)に対して、給餌を実施するイベントである。投薬は、対象の個体豚又は群(生産グループ又は産子グループ)に対して、薬品を投与するイベントである。移動は、対象の個体豚又は群(生産グループ又は産子グループ)に対して、畜舎・部屋・畜房(豚舎・部屋・豚房)の移動を行うイベントである。ホルモン・体調措置は、母豚に対して発情を促すためホルモンを投与するイベントである。妊娠鑑定は、母豚に対して交配を行った後、診断装置等を用いて妊娠しているかどうかを獣医が鑑定するイベントである。ワクチン投与は、対象の個体豚又は群(生産グループ又は産子グループ)に対して、ワクチンを投与するイベントである。哺乳開始は、分娩後に母豚が産子に対して、哺乳を開始するイベントである。里子(哺乳頭数調整)は、分娩後の母豚から授乳を受ける子豚の数を調整するイベントであり、子豚を里子として受け入れたり他の母豚で哺乳させたりするための移動を行うイベントである。離乳は、母豚が哺乳期間を終えて、子豚を離乳舎へ移動するイベントである。精液採取は、雄豚から精液を採取するイベントである。死亡判定は、対象の家畜又は家畜群(生産グループ又は産子グループ)に対して、死亡したことを判定するイベントである。出荷は、対象の個体豚又は群(生産グループ又は産子グループ)に対して、出荷を行うイベントである。廃用は、対象の個体豚又は群(生産グループ又は産子グループ)に対して、飼養する価値がなくなった豚を廃棄するイベントである。オールアウトは、出荷の後に空となった豚舎等の施設の洗浄・消毒をするイベントである。候補豚選別は、母豚候補となる育成豚を子豚の中から選別するイベントである。
【0045】
なお、イベントは上記した作業に限られるものではなく、他の項目を含んでいても構わない。
【0046】
本実施形態においてステータスとは、イベントの実施の結果によって遷移する、家畜の飼養状態を示すものである。ステータスはイベントの実施の結果であり、複数通りの異なる結果となりうる。どのステータスに遷移するか、イベントの結果自体を畜産情報管理システム1が判断するものではなく、ユーザの選択、入力した情報の結果に応じて、イベント予定マスタ情報に規定された、イベントを実施すべき順序に従い、ステータス遷移は決定される。イベントの実施については、
図1に示される端末装置201の入力部211を用いてユーザが選択、入力を行う事で情報記憶部121に記憶される。イベントの実施の登録がされると、選択、入力された情報に応じて、その結果としてステータスが遷移する。ステータス遷移とそのタイミングについては、ステータス情報、及びその履歴情報として情報記憶部121に記憶される。
【0047】
ステータスのうち、特に家畜を飼養する上で予定されている状態を正常ステータスという。一方で、家畜を飼養する上で、想定されてはいるが農家として好ましくない状態を異常ステータスという。各ステータスは質的データとして情報記憶部121の母豚ステータス情報D12、生産グループステータス情報D22、産子グループステータス情報D32に含まれて記憶されている。
【0048】
正常ステータスは、カテゴリが繁殖家畜のめすである家畜の状態を示すものであれば、例えば、種付済、哺乳中、離乳中、受胎中、発情中の状態を示すものである。
【0049】
異常ステータスは、カテゴリが繁殖家畜のめすである家畜の状態を示すものであれば、例えば、分娩遅延、離乳遅延、種付遅延、再発情、流産、疾病、死亡、妊娠鑑定遅延、不受胎、未発情・体調不良の状態を示すものである。
【0050】
以下、各ステータスについて説明する。種付済は、母豚に対して種付すなわち交配が済んだ状態である。受胎中は、受精卵が着床し、妊娠鑑定によってそれを確認した状態である。哺乳中は、分娩後に母豚が産子に対して、哺乳を行っている状態である。離乳中は、母豚が哺乳期間を終えた状態から、発情回帰を確認するまでの状態である。発情中は、離乳期間が終了し、発情・体調確認により、正常に発情回帰したのを確認した状態である。再発情は、母豚が交配に失敗し、再発情行動が行われている状態である。妊娠鑑定遅延は、妊娠鑑定が遅延している状態である。不受胎は、妊娠鑑定によって母豚が受胎していないことが確認された状態である。流産は、母豚が妊娠していたが出産できずに流産した状態である。疾病は、飼養している豚が疾病に罹患している状態である。分娩遅延は、受胎している母豚の分娩が遅れている状態である。離乳遅延は、離乳が遅れている状態である。種付遅延は、種付が遅延している状態である。死亡は、その家畜が死亡した状態である。
【0051】
なお、ステータスは上記した状態に限られるものではなく、他の項目を含んでいても構わない。
【0052】
イベント情報は、上記した家畜を飼養するために実施される作業であるイベントについての情報を含んでいる。
【0053】
イベント予定マスタ情報は、あるイベントを実施した後、どのステータスにある家畜が、次にどのイベントに進むべきかの順序、経路を示す家畜ステータス遷移フローを含んでいる。特に家畜を飼養する上で予定されている正常ステータスに遷移していく経路を示す正常ステータス遷移フローと、家畜を飼養する上で想定されてはいるが好ましくない状態である、異常ステータスに遷移していく経路、及び、異常ステータスから正常ステータスに戻る経路を示す異常ステータス遷移フローを含んでいる。
【0054】
さらに、イベント予定マスタ情報は、あるイベントを実施した後に、次のイベントを実施すべきタイミングについて規定した情報を含んでいる。より具体的にはイベント間の間隔を示すイベント間隔情報を含んでいる。
【0055】
<生産グループ管理機能>
(第1の実施形態)
以下では第1の実施形態について説明する。
図1に示した母豚抽出部111は、母豚ステータス情報を用いて、同一の母豚ステータスにある複数の母豚を抽出する機能を有する。
【0056】
生産グループ登録部113は、母豚抽出部111が抽出した母豚識別子に紐づけて、同時期に同じ繁殖イベントを実施すべき生産グループとして識別するための生産グループ識別子を付与する機能を有する。
【0057】
イベント結果登録部114は、母豚や子豚に対してユーザが実施したイベントの結果の情報を受け付けて登録する機能を有する。登録された情報に基づき母豚や子豚、これらの集合であるグループのステータスは遷移する。
【0058】
また、母豚抽出部111は、前記生産グループに所属させる母豚の候補として、ユーザが候補の中から選択可能であるように、抽出した候補を選択画面として表示してもよい。
【0059】
また、母豚抽出部111は、履歴情報を用いて母豚ステータスが遷移したタイミングが所定の条件にある母豚をグループ候補として抽出してもよい。
【0060】
生産グループ管理部112は、母豚ステータス情報を用いて、母豚ステータスが異常ステータスに遷移した母豚が存在する場合に、その母豚を所属する生産グループか除外する機能を有する。
【0061】
第1の実施形態の処理の流れについて説明する。
図4は、第1の実施形態の処理の流れを説明するフローチャートである。
【0062】
ステップS101において、母豚抽出部111は、生産グループに所属させる母豚の候補となる母豚について、情報記憶部121に記憶されている母豚識別子D11を参照し、所定の条件に応じて、該当する母豚の母豚識別子を抽出する。
【0063】
図5は、生産グループに所属させる母豚の候補として抽出された母豚について表示部212に表示させる画面の一例である。また、後述するように、生産グループに所属させる母豚をユーザが決定するための選択肢を表示している画面の一例でもある。
【0064】
例えば、この図において、種付グループ登録とあるように、イベント毎に生産グループを登録するようにしてもよい。この画面は種付(母豚)グループの登録画面例である。母豚抽出部111は、情報記憶部121に記憶されている母豚ステータス情報を参照し、所定の母豚ステータス(この図においては種付済)である母豚の母豚識別子を抽出する。そして、抽出された母豚の母豚識別子をユーザに提示する。母豚識別子に併せて、それに紐づけられたステータス遷移日(この図においては種付日)、産次などの関連情報を合わせてユーザに提示するようにしてもよい。ユーザへの提示は、端末装置201の表示部212を用いて行うことができる。
【0065】
母豚抽出部111は、生産グループに所属させる母豚の候補の抽出を、母豚ステータスが遷移したタイミングに関する履歴を参照して、所定のステータス遷移タイミングを条件として抽出してもよい。例えば、この図において端末画面に表示されているように、種付日を起点として種付グループを作成する場合である。ユーザが種付日の始点と終点である日付を、端末装置201の入力部211より入力して、所定の種付期間に種付中の母豚ステータスに遷移した母豚を候補として抽出することができる。
【0066】
ステップS102において、母豚抽出部111が抽出した生産グループに所属させる母豚の候補の中から、どの母豚を生産グループに所属させるかの選択受付、又は決定を行う。
【0067】
図5において示したように、母豚抽出部111が表示部212を介して示した母豚候補は選択可能に提示されており、これに対して、ユーザはいずれの母豚候補を生産グループに所属させるのか入力部211を用いて決定することができる。例えば、ユーザは所属させる母豚に対応する欄のチェックボックスをチェック状態にして登録ボタンをクリック、又はタップする。
【0068】
または、母豚抽出部111が予め定められた抽出条件(例えば所定の種付期間内に種付された母豚)に基づいて、自動的に生産グループに所属させる母豚を決定してもよい。いずれにしろ、ステップS102において、いずれの母豚を生産グループに所属させるかが決定される。
【0069】
ステップS103において、生産グループ登録部113が、ステップS102において、決定/選択された母豚を生産グループに登録する。具体的には、情報記憶部121に記憶されている母豚識別子に紐づけて生産グループ識別子を記憶する。
【0070】
このように、同時期に同じ繁殖イベントを実施すべき複数の母豚の集合としての生産グループを登録することができる。生産グループとして登録された母豚群は、今後のイベント実施の結果をユーザが畜産情報管理システム1に情報を入力する際に、イベント結果登録部114を用いて、生産グループ識別子をもとにその生産グループに属する全ての母豚の母豚識別子を呼び出して、全ての母豚識別子に対して一括してイベント実施結果を入力し、記憶させることができるので、ユーザの入力負担を減らすことができる。
【0071】
また、登録されている生産グループの情報を用いて様々な状況把握を行うことができる。これについては後述する。
【0072】
登録した生産グループの情報は、生産グループ管理部112によって都度編集することができる。例えば、所定の生産グループに所属する母豚のうちの一匹が疾病に罹患することにより、同時期に同じ繁殖イベントを実施できない場合、その疾病に罹患した母豚に対応する母豚識別子を所定の生産グループより除外することができる。具体的には、生産グループより除外される母豚の情報から生産グループ識別子を削除する、所属なしに更新するなどして除外することができる。生産グループ管理部112は、ユーザによる編集指示を受け付けて、生産グループ情報を編集することができる。
【0073】
または、生産グループ管理部112が、異常ステータスに遷移した母豚を抽出して自動的に生産グループから除外する処理を行ってもよい。例えば、生産グループ管理部112は、予め定められた除外条件に従って、所定の生産グループに属する母豚の母豚ステータス情報を参照する。そして、条件に該当する異常ステータスにある母豚を抽出し、生産グループより除外する処理を行ってもよい。自動的に除外する前に、生産グループ管理部112は、ユーザに除外するか否かの確認を求める画面を端末装置201の表示部212に表示し、ユーザが入力部211を用いて除外を承諾した場合に除外する処理を行うようにしてもよい。
【0074】
以上説明したように本開示の第1の実施形態に係る畜産情報管理システムでは、母豚ステータス情報を用いて、同一の母豚ステータスにある複数の母豚を抽出する母豚抽出部111と、母豚抽出部111が抽出した母豚識別子に紐づけて、同時期に同じ繁殖イベントを実施すべき生産グループとして識別するための生産グループ識別子を付与する生産グループ登録部113を備えることにより、同時期に同じ繁殖イベントを実施すべき複数の母豚の集合としての生産グループを登録することができる。生産グループとして登録された母豚群は、今後のイベント実施の結果をユーザが畜産情報管理システム1に入力する際に、イベント結果登録部114を用いて、生産グループ識別子をもとにその生産グループに属する母豚全てに一括してイベント実施結果を入力することができるので、ユーザの入力負担を減らすことができる。また、生産グループとして登録された母豚群の情報については、逐次その状況を把握することができる。すなわち、畜産経営において重要な母豚群の飼養について、逐次その状況を把握しながら管理することができる。
【0075】
また、母豚抽出部111は、生産グループに所属させる母豚の候補として、ユーザが候補の中から選択可能であるように、抽出した候補を選択画面として表示するよう構成することで、生産グループの作成に関してユーザの負担を低減することができる。
【0076】
また、母豚抽出部111は、履歴情報を用いて母豚ステータスが遷移したタイミングが所定の条件にある母豚をグループ候補として抽出することで、生産グループの作成に関してユーザの負担を低減することができる。
【0077】
<産子グループ管理機能>
(第2の実施形態)
以下では第2の実施形態について説明する。
図1に示した生産グループ登録部113は、母豚の集合である生産グループと紐づける産子グループを登録し、情報記憶部121に記憶する機能を有する。
【0078】
第2の実施形態の処理の流れについて説明する。
図7は、第2の実施形態の処理の流れを説明するフローチャートである。
【0079】
ステップS201において、生産グループ登録部113は、産子グループに紐づける生産グループを、ユーザの選定の指示を受けて決定する。
【0080】
ステップS202において、生産グループ登録部113は、産子グループに所属させる産子を決定する。所属させる子豚の候補となるのは、例えば、産まれたばかりでグループ未登録の子豚群である。なお、子豚群に登録されている子豚数は1頭であってもよい。
【0081】
ステップS203において、産子グループに所属させることをユーザの指示により決定された子豚群に対して、産子グループ識別子を付与して情報記憶部121に記憶する。
【0082】
図6に、画面例を示す。この画面は、新規離乳子豚グループ登録として、産子グループの1つである離乳子豚グループを登録する画面である。ユーザは、新規離乳子豚グループと紐づける生産グループ(この画面では離乳母豚グループ)を選択し、その離乳母豚グループから実際に産まれた子豚14頭の中から4頭を選択して新規離乳子豚グループとして登録するように構成されている。
【0083】
以上説明したように、本開示の第2の実施形態に係る畜産情報管理システムでは、生産グループ登録部113は、母豚の集合である生産グループと紐づける産子グループを登録し、情報記憶部121に記憶するように構成されていることにより、親豚と子豚を関連付けて把握することができる。さらに、後述するように、この紐づけられたデータを用いて、子豚が出荷されるまでのステータスの遷移を把握することができる。
【0084】
<動態表示機能>
(第3の実施形態)
以下では第3の実施形態について説明する。
図1に示した生産グループ動態表示部115は、母豚ステータス情報と、生産グループ識別子を用いて、複数の生産グループについて、複数の任意のタイミングにおける所属頭数の実績値を算出し、所属頭数の時系列を前記生産グループ毎に表示する機能を有する。
【0085】
さらに、生産グループ動態表示部115は、母豚ステータス情報と、生産グループ識別子を用いて、複数の生産グループについて、複数の任意のタイミングにおける異常ステータスに遷移した母豚数を算出し、母豚数の時系列を前記生産グループ毎に表示する機能を有する。
【0086】
また、予測部116は、繁殖情報を用いて、生産グループに所属する母豚の、種付タイミングと、産次及び/又は産歴に応じて、複数の任意のタイミングにおける生産グループの所属頭数の予測値を予測する機能を有する。
【0087】
さらに、予測部116は、繁殖情報を用いて、生産グループに所属する母豚の、種付タイミングと、産次及び/又は産歴に応じて、前記生産グループの出産頭数の予測値又は分娩予定日を予測する機能を有する。
【0088】
生産グループ動態表示部115は、母豚ステータス情報と、生産グループ識別子を用いて、複数の生産グループについて、複数の任意のタイミングにおける所属頭数の実績値を算出し、所属頭数の時系列を前記生産グループ毎に表示し、複数の任意のタイミングにおける所属頭数の実績値が存在しない部分を、予測部116が予測した予測値で表示する機能を有する。
【0089】
第3の実施形態の処理の流れについて説明する。
図8は、第3の実施形態の処理の流れを説明するフローチャートである。
【0090】
ステップS301において、生産グループ動態表示部115は、複数の生産グループの動態をユーザに視覚的に提示するために、母豚識別子D11と、母豚ステータス情報D12を参照して、所定の生産グループの複数の任意のタイミングにおける頭数実績値を算出する。具体的には、1週間おき、10日間おきなどの定期的な時系列、又は任意の時系列を設け、その時系列の各タイミングにおいて種付済など所定のステータスにあって母豚としてその生産グループに所属している母豚の数を算出する。なお、以下では簡便のために、この「複数の任意のタイミングにおける生産グループに所属している母豚の頭数の時系列」を「動態」とも呼ぶ。特に、種付済などの正常ステータスを維持して繁殖活動を継続できている母豚の集合である生産グループの、複数の任意のタイミングにおける生産グループに所属している母豚の頭数の時系列を、生産動態と呼び、流産などの異常ステータスに遷移して繁殖活動から脱落、除外された母豚の複数の任意のタイミングにおける頭数を、異常動態とも呼ぶ。
【0091】
ステップS302において、算出したこの複数の任意のタイミングにおける稼働している母豚の頭数の実績値の時系列を、例えば端末装置201の表示部212により表示する。
【0092】
図9は、生産グループ動態表示部115が、端末装置201の表示部212に表示している画面の一例である。この図において示されているように、複数の各生産グループについて、種付日を基準にして1週間おきの生産動態を示している。生産グループ動態表示部115が示す生産動態は、種付期間の異なる8つの生産グループ(種付(母豚)グループ)について、各グループ内の先頭種付日(最も種付日が早い日付)を起点とした経過日数ごとの稼働頭数を示している。また、各グループについて、編成当時の編成頭数を示している。経過日数が増えるに従い、何頭かの母豚が、再発情、不受胎鑑定、流産、などの異常ステータスに遷移したことで、初期の編成頭数から稼働頭数が減少していく様子が示されている。このように稼働している母豚数について、ユーザは視覚化された情報を通じて認識できるので、畜産経営の効率化を支援することができる。
【0093】
また同様に、異常ステータスに遷移した母豚についても、異常動態として、各異常ステータスの内訳とともに、異常ステータスに遷移した母豚数が時系列で示されている。これにより、どの時期に異常が発生しているかをユーザは視覚化された情報を通じて認識できるので、畜産経営の効率化を支援することができる。
【0094】
異常ステータスの遷移については、上記したようにユーザによるステータス遷移の入力結果に応じて、記憶されている情報が更新され、生産グループ動態表示部115が表示する内容に反映される。
【0095】
このように、生産グループ動態表示部115は、ステータス遷移の実績値に基づき、各生産グループの稼働母豚数の実績値を生産動態として表示することができる。さらに以下では、実績となるイベント結果、ステータス遷移が発生していない将来の事象について、予測部116が予測し、さらに動態として表示する処理の流れについて説明する。
【0096】
ステップS303において、予測部116が、過去の母豚の繁殖情報D41に基づき、複数の任意のタイミングにおける各生産グループの所属頭数の予測値を予測する。予測される予測値は例えば、各タイミングにおける稼働頭数に加えて、分娩予定日や出産頭数(分娩頭数)である。なお、出産頭数は、数値の範囲として予測されるものを含む。同じく、分娩予定日は、その一日に限定された日付のみでなく、範囲をもった日付の期間として予測されるものも含む。
【0097】
繁殖情報D41には、上記した通り過去の母豚の繁殖実績(分娩日、出産頭数、その他ステータス遷移の履歴)と、その母豚の特徴(品種、年齢、産次、産暦、種付日(種付タイミング))が記憶されており、それらの情報をもとに、現在編成されている生産グループに所属する母豚の数(編成頭数)と特徴に応じて、予測部116が各生産グループについて各タイミングにおける稼働頭数、分娩予定日、出産頭数等を予測する。例えば豚の受胎率は暑熱ストレスなど季節変動に応じて変化するため、種付日など種付タイミングは重要な説明変数となる。また、初産母豚であるか、経産母豚であるか、産次/産暦も受胎率を左右する大きな要因であり重要な説明変数となる。これら生産グループに所属する母豚の特徴に基づいて予測部116が予測を行う。この目的に用いられる予測モデルとしては、決定木、回帰モデル、ディープニューラルネットワーク、又はこれらのアンサンブル学習を用いることができる。
【0098】
予測部116が予測した予測値については、後述する生産グループ動態表示部115に時系列で表示する用途に限られず、単独で有用な情報として、ユーザに対して表示又は通知を行ってもよい。所定の任意のタイミングにおける生産グループの所属頭数の予測値を予測することで、ユーザは将来の母豚の稼働状況を認識することができる。また、生産グループの出産頭数の予測値又は分娩予定日を予測することで、ユーザは将来得られる畜産成果物、及び将来発生する作業の認識やリソースプランニングに係る検討を実施することができる。
【0099】
ステップS304において、生産グループ動態表示部115は、表示部212を用いて示す生産動態の実績値が存在しない空白部分(空白タイミング)に代えて、予測部116が予測した上記の予測値等を表示する。
【0100】
図10は、
図9に示した生産動態の実績値に加え、予測部116による予測値等を、実績値が存在しない空白部分に代えて表示した場合の画面の一例である。この図において、
図9との差分として予測値等が表示されている部分については太字及び下線の数字、記号で示している。例えば、「190825種付」として示されている種付(母豚)グループは、先頭種付日から17日経過以降の実績値が存在しないが、予測部116により予測された数値が表示されている。これにより、将来どの程度の母豚が稼働しているか見積もることができる。また、分娩予定日についても予測部116により予測された予測分娩日が表示されている。これにより、いつごろ分娩の作業が発生するか見積もることができる。さらに、「合計」の欄に、実績値と予測値の混合による仮想の合計頭数が示されている。この仮想の合計頭数により、将来稼働している母豚の数を見積もることができる。仮想の合計頭数は、将来における豚舎など施設の有効利用率、肉豚の出荷頭数について見積もるのに有効である。このように、将来の稼働している母豚数についても、ユーザは視覚化された情報を通じて認識できるので、将来の見通しをたてることができ、畜産経営の効率化を支援することができる。
【0101】
以上説明したように本開示の第3の実施形態に係る畜産情報管理システムでは、生産グループ動態表示部115は、母豚ステータス情報と、生産グループ識別子を用いて、複数の生産グループについて、複数の任意のタイミングにおける所属頭数の実績値を算出し、所属頭数の時系列を前記生産グループ毎に表示することにより、稼働している母豚数について、ユーザは視覚化された情報を通じて認識できるので、畜産経営の効率化を支援することができる。
【0102】
また、生産グループ動態表示部115は、母豚ステータス情報と、生産グループ識別子を用いて、複数の生産グループについて、複数の任意のタイミングにおける異常ステータスに遷移した母豚数を算出し、母豚数の時系列を前記生産グループ毎に表示することにより、どの時期に異常が発生しているかをユーザは視覚化された情報を通じて認識できるので、畜産経営の効率化を支援することができる。
【0103】
予測部116は、繁殖情報を用いて、生産グループに所属する母豚の、種付タイミングと、産次及び/又は産歴に応じて、複数の任意のタイミングにおける生産グループの所属頭数の予測値を予測することにより、ユーザは将来の母豚の稼働状況を認識することができる。
【0104】
予測部116は、繁殖情報を用いて、生産グループに所属する母豚の、種付タイミングと、産次及び/又は産歴に応じて、前記生産グループの出産頭数の予測値又は分娩予定日を予測することにより、ユーザは将来得られる畜産成果物、及び将来発生する作業を認識することができる。
【0105】
生産グループ動態表示部115は、母豚ステータス情報と、生産グループ識別子を用いて、複数の生産グループについて、複数の任意のタイミングにおける所属頭数の実績値を算出し、所属頭数の時系列を前記生産グループ毎に表示し、複数の任意のタイミングにおける所属頭数の実績値が存在しない部分を、予測部116が予測した予測値で表示することにより、ユーザは視覚化された情報を通じて認識できるので、将来の見通しをたてることができ、畜産経営の効率化を支援することができる。
【0106】
<アラート通知機能>
(第4の実施形態)
以下では第4の実施形態について説明する。
図1に示した通知部117は、母豚ステータス情報と、生産グループ識別子を用いて、複数の生産グループについて、任意のタイミングにおける異常ステータスに遷移した母豚数を算出し、母豚数が所定の条件に合致した場合に、ユーザに通知を行う機能を有する。
【0107】
また、通知部117は、所属頭数の予測値が所定の条件に合致した場合に、ユーザに通知を行う機能を有する。
【0108】
また、通知部117は、出産頭数の予測値が所定の条件に合致した場合に、ユーザに通知を行う機能を有する。
【0109】
第4の実施形態の処理の流れについて説明する。
図11は、第4の実施形態の処理の流れを説明するフローチャートである。
【0110】
ステップS401において、通知部117は、予め設定された所定の対象指標の取得を行う。所定の対象指標とは、具体的には、母豚の異常ステータス遷移の有無、異常ステータス遷移した母豚の数、所定の生産グループに所属する母豚の頭数、所定のタイミングで所定の生産グループが所属しているであろうと予測部116が予測した予測所属頭数、所定のタイミングで所定の生産グループに所属している母豚が出産するであろうと予測部116が予測した予測出産頭数などである。この他にも、情報記憶部121に記憶されている情報や、予測部116が予測した予測値等を組合わせて対象指標を設定することができる。
【0111】
ステップS402において、通知部117は、取得した対象指標についてユーザに通知するか否かを、対象指標とアラート条件とを比較することで決定する。アラート条件については、情報記憶部121のアラートマスタ情報D51に記憶されている。アラート条件は、対象指標が基準となる数値を上回った場合、下回った場合、同じ場合、又はこれらの複数の組合せ等、柔軟に設定することができる。
【0112】
ステップS403において、対象指標がアラート条件に合致している場合(yes)は、通知部117がユーザに通知を行い、処理は終了する。対象指標がアラート条件に合致していない場合(no)は、通知は行わない。
【0113】
具体的な通知手段としては、端末装置201の表示部212を用いて画面でアラートを表示してもよいし、ユーザに対して電子メールを送信するなど、その他の手段により通知してもよい。
【0114】
以上説明したように本開示の第4の実施形態に係る畜産情報管理システムでは、通知部117は、母豚ステータス情報と、生産グループ識別子を用いて、複数の生産グループについて、任意のタイミングにおける異常ステータスに遷移した母豚数を算出し、母豚数が所定の条件に合致した場合に、ユーザに通知を行う機能を有することにより、ユーザが早期に状況を認識し、畜産の経営を早期に改善することを検討することができる。
【0115】
また、通知部117は、所属頭数の予測値が所定の条件に合致した場合に、ユーザが早期に状況を認識し、畜産の経営を早期に改善することを検討することができる。
【0116】
また、通知部117は、前記出産頭数の予測値が所定の条件に合致した場合に、ユーザが早期に状況を認識し、畜産の経営を早期に改善することを検討することができる。
【0117】
(プログラム)
図12は、コンピュータ801の構成を示す概略ブロック図である。コンピュータ801は、CPU802、主記憶装置803、補助記憶装置804、インタフェース805を備える。
【0118】
ここで、各実施形態に係る畜産情報管理サーバ101を構成する各機能を実現するためのプログラムの詳細について説明する。
【0119】
畜産情報管理サーバ101は、コンピュータ801に実装される。そして、畜産情報管理サーバ101の各構成要素の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置804に記憶されている。CPU802は、プログラムを補助記憶装置804から読みだして主記憶装置803に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU802は、プログラムに従って、上記した記憶部に対応する記憶領域を主記憶装置803に確保する。
【0120】
当該プログラムは、具体的には、コンピュータ801において、母豚抽出部111が、母豚に対して繁殖イベントを実施することで遷移する母豚の飼養状態を示す母豚ステータスと、母豚ステータスが遷移したタイミングに関する履歴を用いて、同一の母豚ステータスにある複数の母豚を抽出する母豚抽出ステップと、生産グループ登録部113が、抽出された母豚を、同時期に同じ繁殖イベントを実施すべき生産グループとして識別するための生産グループ識別子を付与する生産グループ登録ステップ、を実現するプログラムである。
【0121】
なお、補助記憶装置804は、一時的でない有形の媒体の一例である。一時的でない有形の媒体の他の例としては、インタフェース805を介して接続される磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等が挙げられる。また、このプログラムがネットワークNWを介してコンピュータ801に配信される場合、配信を受けたコンピュータ801が当該プログラムを主記憶装置803に展開し、上記処理を実行してもよい。
【0122】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能を補助記憶装置804に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0123】
以上、本開示のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本開示の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものとする。
【解決手段】複数の母豚の繁殖を管理する畜産情報管理システム1であって、個々の母豚を識別する母豚識別子D11と、母豚識別子によって識別される母豚に対して繁殖イベントを実施することで遷移する母豚の飼養状態を示す母豚ステータス、母豚ステータスが遷移したタイミングに関する履歴を含む母豚ステータス情報D12とを紐づけて記憶する情報記憶部121と、母豚ステータス情報を用いて、同一の母豚ステータスにある複数の母豚を抽出する母豚抽出部111と、母豚抽出部が抽出した母豚識別子に紐づけて、同時期に同じ繁殖イベントを実施すべき生産グループとして識別するための生産グループ識別子D21を付与する生産グループ登録部113と、を備える。