(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6847507
(24)【登録日】2021年3月5日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】負荷保護システム
(51)【国際特許分類】
H02B 1/40 20060101AFI20210315BHJP
【FI】
H02B1/40 A
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-115166(P2016-115166)
(22)【出願日】2016年6月9日
(65)【公開番号】特開2017-221053(P2017-221053A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2019年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】特許業務法人なじま特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】松尾 昌幸
【審査官】
関 信之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−223841(JP,A)
【文献】
特開2005−245190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周辺地域の雷情報を取得する雷情報取得手段と、分電盤が設置されている位置を特定する位置特定手段と、電源回路を遮断可能な制御手段と、分電盤に誘導雷の侵入を検出する避雷器ユニットを備え、前記制御手段は、前記分電盤が設置されている位置に雷が接近していることを判定する判定手段によって、雷が接近していると判定された場合に、特定の負荷に接続された電源回路を遮断し、前記避雷器ユニットが検出した雷情報を雷情報取得手段が取得した場合に、制御手段が特定の負荷に接続された電源回路を遮断するように制御し、かつ、特定の負荷に接続された接地回路も遮断する負荷保護システム。
【請求項2】
周辺地域の雷情報を取得する雷情報取得手段と、分電盤が設置されている位置を特定する位置特定手段と、電源回路と接地回路を遮断可能な制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記分電盤が設置されている位置に雷が接近していることを判定する判定手段によって、雷が接近していると判定された場合に、特定の負荷に接続された電源回路と特定の負荷に接続された接地回路を遮断するように制御する負荷保護システム。
【請求項3】
補助電源と、前記補助電源と特定の負荷との間に設けられた切り替え手段を備え、
特定の負荷の回路を遮断したとき、制御手段が、前記切り替え手段を切り替えて特定の負荷に補助電源を接続することで、補助電源から特定の負荷に電力を供給する請求項1又は2に記載の負荷保護システム。
【請求項4】
前記分電盤はネットワークでサーバと接続され、分電盤に誘導雷の侵入を検出する避雷器ユニットを備え、前記避雷器ユニットが誘導雷を検出したとき、雷情報取得手段の雷情報をサーバへ出力する請求項1乃至3の何れかに記載の負荷保護システム。
【請求項5】
周辺地域の雷情報を取得する雷情報取得手段と、分電盤が設置されている位置を特定する位置特定手段と、電源回路を遮断可能な制御手段と、分電盤に誘導雷の侵入を検出する避雷器ユニットを備え、前記制御手段は、前記分電盤が設置されている位置に雷が接近していることを判定する判定手段によって、雷が接近していると判定された場合に、特定の負荷に接続された電源回路を遮断し、前記避雷器ユニットが検出した雷情報を雷情報取得手段が取得した場合に、制御手段が特定の負荷に接続された電源回路を遮断するように制御し、前記分電盤はネットワークでサーバと接続され、分電盤に誘導雷の侵入を検出する避雷器ユニットを備え、前記避雷器ユニットが誘導雷を検出したとき、雷情報取得手段の雷情報をサーバへ出力する負荷保護システム。
【請求項6】
補助電源と、前記補助電源と特定の負荷との間に設けられた切り替え手段を備え、
特定の負荷の回路を遮断したとき、制御手段が、前記切り替え手段を切り替えて特定の負荷に補助電源を接続することで、補助電源から特定の負荷に電力を供給する請求項5に記載の負荷保護システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷保護システムに関するものである。より詳しくは、雷サージから負荷を保護する負荷保護システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、分電盤に接続された負荷(機器)を雷から保護することがなされている。従来では分電盤は避雷器(SPD)を用いて落雷から保護されており、分電盤を経由して負荷に落雷の影響が生じることを防止している。例えば、特許文献1には、分電盤の避雷器の配置を工夫して落雷から負荷を保護する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−53873号公報
【0004】
ところで、避雷器の性能以上の雷サージが分電盤内に侵入すると、避雷器で分電盤を保護することは困難となる。このため、分電盤に接続された負荷が破損する虞があった。また、避雷器に対して繰り返し雷サージが加えられると避雷器は劣化してしまう。このようなことが原因で避雷器が破損してしまった場合には、雷サージから負荷を保護することができなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件の発明者は、この点について鋭意検討することにより、解決を試みた。本発明の課題は、雷が直撃する前に特定負荷の電気回路を遮断し、特定の負荷を雷による破壊から保護することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、次のような手段を採用する。第一の手段は、周辺地域の雷情報を取得する雷情報取得手段と、分電盤が設置されている位置を特定する位置特定手段と、電源回路を遮断可能な制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記分電盤が設置されている位置に雷が接近していることを判定する判定手段によって、雷が接近していると判定された場合に、特定の負荷に接続された電源回路を遮断するように制御する負荷保護システムである。
【0007】
第一の手段において、分電盤に誘導雷の侵入を検出する避雷器ユニットを備え、前記避雷器ユニットが検出した雷情報を雷情報取得手段が取得した場合に、制御手段が特定の負荷に接続された電源回路を遮断する構成とする第二の手段が好ましい。
【0008】
第一又は二の手段において、制御手段が特定の負荷に接続された接地回路も遮断する構成とする第三の手段が好ましい。
【0009】
第一乃至第三の手段において、補助電源と、前記補助電源と特定の負荷との間に設けられた切り替え手段を備え、特定の負荷の回路を遮断したとき、制御手段が、前記切り替え手段を切り替えて特定の負荷に補助電源を接続することで、補助電源から特定の負荷に電力を供給する第四の手段が好ましい。
【0010】
第二乃至第四の手段において、分電盤に誘導雷の侵入を検出する避雷器ユニットを備え、前記避雷器ユニットが誘導雷を検出したとき、雷情報取得手段の雷情報をサーバへ出力する構成とする第五の手段が好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の負荷保護システムによれば、周辺地域の雷情報を利用し、分電盤に雷が接近していることを判定することで、雷が直撃する前に、特定の負荷につながる電気回路を遮断することができる。したがって、特定の負荷を雷による破壊から保護することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第一の実施の形態の負荷保護システムの概略図である。
【
図2】第二の実施の形態の負荷保護システムの概略図である。
【
図3】第三の実施の形態の負荷保護システムの概略図である。
【
図4】第四の実施の形態の負荷保護システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に発明を実施するための形態を示す。
図1は第一の実施の形態の負荷保護システム1の概略図である。本実施の形態の負荷保護システム1は、負荷が接続される分電盤4の内部に雷情報取得手段6が備えられており、この雷情報取得手段6は、ネットワーク2を介してサーバ3に接続されている。この雷情報取得手段6はネットワーク2を介してサーバ3から雷情報を取得することが可能であり、また、ネットワーク2を介して、雷情報をサーバ3に出力することも可能である。
【0014】
サーバ3には周辺地域の雷情報が格納されている。サーバ3に格納される雷情報には、各分電盤4に備えられた雷情報取得手段6から出力された情報があるが、これに限らず、インターネット上の落雷情報や落雷予測情報などから、各種雷情報を取り入れることが可能である。この雷情報は、雷の発生情報として周辺地域での落雷の発生の有無や、雷の発生した地点までの距離、雷の発生頻度などの情報が取得できるものである。
【0015】
本実施の形態の分電盤4の内部には、分電盤4が設置されている位置を特定するために利用される位置特定手段7が備えられている。この位置特定手段7はGPS(Global Positioning System)などを用いて分電盤4が設置されている場所を特定するために利用される。なお、位置特定手段7をサーバ3に備えてもよい。この場合、外部入力手段などによって入力された分電盤4の位置情報をサーバ3に記憶させ、分電盤4の通信機器に割り当てられたIPアドレスやMACアドレス等と、分電盤4の位置情報とをサーバ3上で関連付けることによって、分電盤4の位置情報を特定することができる。
【0016】
本実施の形態の分電盤4の内部には、分電盤4が設置されている位置に雷が接近していることを判定する判定手段8を備えている。この判定手段8は、サーバ3の雷情報から雷の接近を判定するために利用される。この判定手段8の判定条件はどのようなものでもよいが、例えば、一定の範囲内(周囲10km)で、一定時間(10分間)に複数回の落雷が発生した場合に雷が接近していると判定するように設定することができる。
【0017】
本実施の形態の分電盤4の内部には、判定手段8が、雷の接近を判定した場合に特定の負荷5の回路を遮断することが可能な制御手段9を備えている。より詳しくは、制御手段9は、判定手段8によって雷が接近していると判定された場合に、特定の負荷5と分電盤4を繋ぐ電源回路51に備えられた電源回路解除手段52を操作することにより、分電盤4と特定の負荷5とが電気的に切り離されている状態とすることが可能なものである。本実施の形態の負荷保護システム1は、このような構成であるため、特定の負荷5と分電盤4を繋ぐ電気回路を遮断することが可能となっている。
【0018】
このように構成された負荷保護システム1は、周辺地域の雷情報を利用し、分電盤4に雷が接近していることを判定することで、雷が直撃する前に、特定の負荷5につながる電源回路51を遮断することができる。したがって、特定の負荷5を雷による破壊から保護することができる。
【0019】
また、本実施の形態の特定の負荷5には接地回路55が接続されている。この接地回路55に備えられた接地回路解除手段56を制御手段9により操作することにより、接地個所と特定の負荷5とが電気的に切り離されている状態とすることが可能である。本実施の形態の負荷保護システム1は、このような構成であるため、特定の負荷5に接続された接地回路55を遮断することが可能となっている。したがって、特定の負荷5は電源回路51からも接地回路55からも電気的に切り離された状態とすることが可能となり、落雷の影響を抑制することが可能となる。ここで、特定の付加としては例えば、制御機器や制御用コンピュータなどである。特に、農業や畜産業用の施設で使用され、施設の温湿度などの環境を制御する制御機器などである。
【0020】
次に第二の実施の形態について説明する。
図2は第二の実施の形態の負荷保護システム1の概略図である。第二の実施の形態では、第一の実施の形態と異なり、分電盤4内に避雷器ユニット13を備えている。避雷器は誘導雷を大地に逃がすことにより分電盤の負荷を保護するものであるが、この避雷器ユニット13は誘導雷の侵入を検出することが可能である。避雷器ユニット13が検出した雷情報を雷情報取得手段6が取得した場合に、制御手段9が特定の負荷5に接続された電源回路51を遮断することが可能なように構成している。なお、避雷器ユニット13が誘導雷の侵入を検出した場合に、制御手段9に直接信号を出力し、電源回路51を遮断するようにしてもよい。この雷情報取得手段6は避雷器ユニット13が誘導雷を検出すると、ネットワーク2を介して雷情報をサーバ3に出力し、雷情報を他所の分電盤4に接続された負荷の保護に利用することが可能である。また、避雷器ユニット13は変流器(CT)を設け、大地に逃がす電流を測定するような形態とすることも可能である。
【0021】
次に第三の実施の形態について説明する。
図3は第三の実施の形態の負荷保護システム1の概略図である。第三の実施の形態では、第一又は第二の実施の形態とは、特定の負荷5が補助電源15と接続可能なように構成している点について異なる。補助電源15と特定の負荷5の間には補助電源用回路16が接続されており、補助電源用回路16には切り替え手段17が設けられている。この切り替え手段17は制御手段9により操作可能である。
【0022】
本実施の形態の負荷保護システム1は、電源回路51が遮断される状態の際に、通常時は特定の負荷5と接続されていない補助電源15を、特定の負荷5と接続させるよう制御手段9により操作可能な構成している。したがって、特定の負荷5に接続された電源回路51を遮断しても、補助電源15から特定の負荷5に電力を供給することが可能となる。
【0023】
次に第四の実施の形態について説明する。
図4は第四の実施の形態の負荷保護システム1の概略図である。第四の実施の形態では、雷情報取得手段6、位置特定手段7、判定手段8をサーバ3が備えている。サーバ3には、ネットワーク2を介して複数の分電盤4が接続されており、それぞれの分電盤4には雷情報取得手段6、制御手段9を備え、サーバ3には雷情報取得手段6、位置特定手段7、判定手段8を備えている。サーバ3上の雷情報取得手段6は、外部ネットワークから提供される各種雷情報や各所の分電盤から提供される雷情報を取得し、位置特定手段7は、各分電盤4の位置情報をサーバ3上で特定する。その結果、サーバ3上で、判定手段8が雷の接近を判定し、雷が接近していると判定された分電盤4の制御手段9に対して信号を送信することで、該分電盤4に接続される特定の負荷につながる電源回路51、接地回路55が遮断される。なお、制御手段9はサーバから提供される信号に対しての遮断動作を行うかを個別に設定できるようにしてもよい。分電盤4上の雷情報取得手段6については、避雷器ユニット13が検出した誘導雷の情報を取得し、サーバ3へ雷情報を出力する。
【0024】
以上、四つの実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。例えば、雷情報取得手段や位置特定手段、判定手段や制御手段、避雷器ユニットなどは分電盤の内と外のどちらに設置しても良い。
【0025】
雷情報取得手段とサーバとの間に情報伝達用の機器を各種介在させることも可能である。
【0026】
また、雷情報は周辺地域の地図上に表示されるようにすることも可能である。
【0027】
電源回路が遮断される負荷は、分電盤に接続される全ての負荷であっても良く、一部の重要な負荷のみであっても良い。
【符号の説明】
【0028】
1 負荷保護システム
3 サーバ
4 分電盤
5 特定の負荷
6 雷情報取得手段
7 位置特定手段
8 判定手段
9 制御手段
13 避雷器ユニット
15 補助電源
51 電源回路
55 接地回路