(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
芯材と、前記芯材の両面に積層された繊維補強材と、前記両面の繊維補強材の少なくとも一方の繊維補強材の表面に積層された面材とからなる炭素繊維複合化粧板において、
前記芯材は、連続気泡を有するメラミン樹脂発泡体にフェノール樹脂が含浸して前記メラミン樹脂発泡体の圧縮状態で前記フェノール樹脂が硬化したものであり、
前記メラミン樹脂発泡体は、圧縮前の厚みが3〜50mm、圧縮前の密度が5〜15kg/m3であり、
前記繊維補強材は、炭素繊維織物にフェノール樹脂が含浸硬化したものからなり、
前記面材は、フッ素樹脂で被覆された耐熱性長繊維糸からなる織布であり、
前記芯材は一つの層を形成しており、
前記芯材と前記繊維補強材と前記面材は、前記芯材のメラミン樹脂発泡体に含浸したフェノール樹脂と、前記繊維補強材の炭素繊維織物に含浸したフェノール樹脂の硬化によって接着しており、
樹脂比率={(メラミン樹脂発泡体の重量+炭素繊維複合化粧板中のフェノール樹脂の重量)÷(面材の重量を除く炭素繊維複合化粧板の重量)}×100で規定される樹脂比率が40〜70%であり、
前記炭素繊維複合化粧板には三次元的に賦形された賦形部を有することを特徴とする炭素繊維複合化粧板。
前記炭素繊維複合化粧板の破壊荷重(JIS K7074準拠)は100N以上850N以下であり、比重(JIS K7112準拠)は0.50〜1.10である請求項1または2に記載の炭素繊維複合化粧板
前記炭素繊維複合化粧板には三次元的に賦形された賦形部を有し、前記賦形部の凸部又は凹部の頂部における曲率半径が3mm以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の炭素繊維複合化粧板。
連続気泡を有するメラミン樹脂発泡体にフェノール樹脂が含浸し、前記メラミン樹脂発泡体が圧縮された状態で前記フェノール樹脂が硬化した芯材と、炭素繊維織物にフェノール樹脂が含浸硬化した繊維補強材と、フッ素樹脂で被覆された耐熱性長繊維糸からなる織布で構成された面材とよりなって、前記芯材の両面には前記繊維補強材が一枚以上積層され、前記両面の繊維補強材の少なくとも一方の繊維補強材の表面には前記面材が積層され、前記芯材と前記繊維補強材と前記面材が積層一体化している炭素繊維複合化粧板の製造方法であって、
連続気泡を有し、圧縮前の厚みが3〜50mm、圧縮前の密度が5〜15kg/m3であるメラミン樹脂発泡体と炭素繊維織物の何れか一方または両方にフェノール樹脂を、樹脂比率={(メラミン樹脂発泡体の重量+炭素繊維複合化粧板中のフェノール樹脂の重量)÷(面材の重量を除く炭素繊維複合化粧板の重量)}×100で規定される樹脂比率が40〜70%の範囲となるように含浸させる含浸工程と、
前記含浸工程後に前記メラミン樹脂発泡体の両面に、それぞれ前記炭素繊維織物を複数積層配置し、前記メラミン樹脂発泡体の両面に積層配置された炭素繊維織物の少なくとも一方の炭素繊維織物に面材を積層する積層工程と、
前記積層工程で得られた積層体を金型で深絞り成形して三次元的に賦形すると共に、前記積層体を圧縮状態で加熱して前記フェノール樹脂を硬化させ、前記フェノール樹脂の硬化によって前記メラミン樹脂発泡体と前記炭素繊維織物と前記面材を一体化させる深絞り成形工程と、
を行うことを特徴とする炭素繊維複合化粧板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の炭素繊維複合化粧板及びその製造方法について図面を用いて説明する。
図1に示す本発明の第1実施形態に係る炭素繊維複合化粧板10Aは、
図3に示すように芯材11と、前記芯材11の両面に積層一体化された2層の繊維補強材21、21と、最外層の繊維補強材21の表面に積層一体化された面材31とよりなり、三次元的に賦形された賦形部11Aを有する。前記賦形部11Aは、凸形状側が意匠面側(
図1参照)とされ、反対の凹形状側が裏面側となっている。
【0018】
図2に示す本発明の第2実施形態に係る炭素繊維複合化粧板10Bは、
図3に示すように芯材11と、前記芯材11の両面に積層一体化された2層の繊維補強材21、21と、最外層の繊維補強材21の表面に積層一体化された面材31とよりなり、三次元的に賦形された賦形部11Bを有する。前記賦形部11Bは、凹形状側が意匠面(
図2参照)とされ、反対の凸形状側が裏面となっている。
【0019】
前記第1実施形態の炭素繊維複合化粧板10A及び第2実施形態の炭素繊維複合化粧板10Bは、鉄道車両用の部材として好適なものである。鉄道車両用の部材としては、天井材、内張り材(壁材等)、窓枠材等が挙げられる。
【0020】
前記芯材11は、一層で構成されており、連続気泡を有するメラミン樹脂発泡体にフェノール樹脂が含浸して前記メラミン樹脂発泡体の圧縮状態でフェノール樹脂が硬化したものである。前記芯材11は、一枚でもよく、複数枚の連続気泡を有するメラミン樹脂発泡体を積層して一層を構成しても良い。前記メラミン樹脂発泡体は樹脂単体が良好な難燃性を有するため、前記芯材11の構成材として好適なものである。前記メラミン樹脂発泡体の圧縮前の元厚みは、前記炭素繊維複合化粧板10A、10Bの厚みにより異なるが、例えば3〜50mmを挙げる。また、前記メラミン樹脂発泡体は、圧縮容易性、含浸性、軽量性、剛性の点から、圧縮前の密度が5〜15kg/m
3のものが好ましい。
【0021】
前記繊維補強材21は、炭素繊維織物にフェノール樹脂が含浸して硬化したものからなる。
前記炭素繊維織物は、軽量及び強度、高剛性に優れるものであり、特に、繊維が一方向のみではない織り方のものが好ましく、例えば、縦糸と横糸で構成される平織、綾織、朱子織及び3方向の糸で構成される三軸織および開繊糸を織って得られる上記織物などが好適である。また、前記炭素繊維織物は、フェノール樹脂の含浸及び剛性、強度の点から、繊維重さが90〜400g/m
2のものが好ましい。前記繊維補強材21を構成する炭素繊維織物は、前記芯材11の両面にそれぞれ1層以上積層されていればよい。積層数を多くし過ぎると炭素繊維複合化粧板が重くなったり、三次元形状の良好な成形が難しくなったりするため、より好ましい積層数は2層から10層である。また、積層数は前記芯材11の両面で等しくするのが、前記炭素繊維複合化粧板10の剛性、強度向上、難燃性、成形後の経時的な変形を防止する点で好ましい。
【0022】
前記メラミン樹脂発泡体及び前記炭素繊維織物に含浸するフェノール樹脂は、含浸後の硬化によって前記炭素繊維複合化粧板10の剛性及び強度、難燃性を高める。
【0023】
前記面材31は、フッ素樹脂で被覆された耐熱性長繊維糸からなる織布で構成される。
耐熱性長繊維糸は、耐熱性長繊維が糸状とされたものである。また耐熱性長繊維としては、ポリイミド繊維、芳香族系ポリアミド繊維、炭素繊維、グラファイト化繊維、耐炎化繊維などを挙げることができる。なお、耐熱性長繊維は一種類に限られず、複数種類が組み合わされてもよい。
フッ素樹脂は、ポリテトラフロロエチレン樹脂、テトラフロロエチレン−ヘキサフロロプロピレン共重合体、テトラフロロエチレン−パーフロロビニルエーテル共重合体、ポリフッ化ビニリデン、エチレン−テトラフロロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフロロエチレン共重合体などを挙げることができる。
【0024】
実施例として、炭素繊維複合化粧板の両側に、前記面材31が設けられる実施形態を示したが、筐体もしくは車両等の内装材等に用いられる場合、炭素繊維複合化粧板の片側のみに設けられる実施形態(図示せず)も多くある。また、前記面材31が炭素繊維複合化粧板の片側のみに設ける場合は、意匠面側に設けられる。
【0025】
前記芯材11と前記繊維補強材21と前記面材31は、前記芯材11のメラミン樹脂発泡体に含浸したフェノール樹脂と、前記繊維補強材21の炭素繊維織物に含浸したフェノール樹脂の硬化によって接着している。
【0026】
前記炭素繊維複合化粧板10A、10Bに含まれるフェノール樹脂は、前記炭素繊維複合化粧板10A、10Bの剛性増加、前記芯材11と前記繊維補強材21と前記面材31の接着一体化、及び不燃性付与の作用がある。前記フェノール樹脂の量は、少なすぎると、剛性、接着一体性が低下するようになり、一方、多すぎると、不燃性試験に合格できないこともあり、前記面材31の織目からフェノール樹脂が浸み出し外観不良ともなる。
フェノール樹脂は、面材を除いた前記芯材11及び積層される前記繊維補強材21からなる積層部分における樹脂比率が、40〜70%となる量が好ましい。
この樹脂比率は、以下の式で示される。樹脂比率={(メラミン樹脂発泡体の重量+炭素繊維複合化粧板中のフェノール樹脂の重量)÷(面材の重量を除く炭素繊維複合化粧板の重量)}×100。
【0027】
前記三次元的に賦形された賦形部11A、11Bは、深絞り成形により三次元的に凸形状(炭素繊維複合化粧板10Aの場合)あるいは凹形状(炭素繊維複合化粧板10Bの場合)に賦形されたものであり、凸部の頂部11Aaあるいは凹部の頂部11Bbにおける曲率半径が3mm以上で構成されている。曲率半径を3mm以上とすることにより、前記面材31の前記賦形部11A、11Bの部分に、皺や亀裂などの美観を損なう不具合を生じないようにできる。
【0028】
実施形態の前記炭素繊維複合化粧板10A、10Bは、一面が開口した箱状からなり、そのコーナー部(角部)が前記三次元的に賦形された賦形部11A、11Bで構成されている。前記三次元的に賦形された賦形部11A、11Bは、コーナー部の形状に限られず、前記炭素繊維複合化粧板で構成する部材に応じた形状とされる。例えば、平面の一部に形成した半球状の凸部や凹部などでもよい。
【0029】
前記炭素繊維複合化粧板10A、10Bは、鉄道車両用材料燃焼性試験(鉄道車両用非金属材料)に不燃合格するものである。本発明は、鉄道車両用材料燃焼性試験のうち、省令83条、2.旅客車、客室内張に該当し、一般旅客車、地下鉄等旅客車及び新幹線旅客車、特殊鉄道に使用できる。
また、前記炭素繊維複合化粧板10A、10Bは、鉄道車両用部材としての強度を保持させるため、弾性率(JIS K7074−1988 A法)が10GPa以上、破壊荷重(JIS K7074準拠)が100N以上850N以下であるのが好ましい。かつ軽量性のために比重(JIS K7112準拠)は0.50〜1.10程度が好ましい。すなわち、比重に対する破壊荷重である比強度を、[比強度=破壊荷重÷比重]で計算した。比強度は、100〜1015が好ましい。
【0030】
本発明の炭素繊維複合化粧板の製造方法について説明する。炭素繊維複合化粧板の製造方法は、含浸工程、積層工程、深絞り成形工程とからなる。
含浸工程では、連続気泡を有するメラミン樹脂発泡体と炭素繊維織物の何れか一方または両方にフェノール樹脂を含浸させる。フェノール樹脂を、芯材及び繊維補強材の全体に効率的に含浸させるには、メラミン樹脂発泡体と炭素繊維織物の両方にフェノール樹脂を含浸させるのが好ましい。以下の例では、メラミン樹脂発泡体と炭素繊維織物の両方にフェノール樹脂を含浸させる場合について示す。また、使用するメラミン樹脂発泡体は、圧縮容易性、含浸性、軽量性、剛性の点から、厚み(圧縮する前の厚み)が3〜50mm、密度(圧縮前の密度)が5〜15kg/m
3のものが好ましい。
【0031】
図4に示す(4−1)のように、含浸工程は含浸工程Aと含浸工程Bの2種類からなる。
含浸工程Aでは、連続気泡を有するメラミン樹脂発泡体110Aにフェノール樹脂110Bを含浸させ、含浸済みメラミン樹脂発泡体110Cを得る。
一方、含浸工程Bでは、炭素繊維織物210Aにフェノール樹脂210Bを含浸させ、含浸済み炭素繊維織物210Cを形成する。
【0032】
前記炭繊維織物210Aへのフェノール樹脂210Bの含浸作業は、前記芯材110Aの両面に積層する炭素繊維織物の数に応じた枚数の炭素繊維織物に対して行う。前記含浸時のフェノール樹脂110B、210Bは、未硬化の液状からなる。また、含浸を容易にするため、前記フェノール樹脂110B、210Bは溶剤に溶かしたものが好ましく、含浸後に、含浸済みメラミン樹脂発泡体110C及び含浸済み炭素繊維織物210Cを、前記フェノール樹脂の硬化反応を生じない温度で乾燥させることにより、前記含浸済みメラミン樹脂発泡体110C及び前記含浸済み炭素繊維織物210Cから溶剤を除去する。含浸手段は、液状のフェノール樹脂を収容した槽に前記メラミン樹脂発泡体あるいは炭素繊維織物を浸ける方法、スプレーにより行う方法、ロールコータにより行う方法等、適宜の方法により行う。また、フェノール樹脂の含浸量の調節は隙間を適宜調整した二本の絞りローラーに通すことにより行う。隙間を適宜調整した二本の絞りローラーに、フェノール樹脂を含浸した連続気泡を有するメラミン樹脂発泡体及びフェノール樹脂を含浸した炭素繊維織物を通すことにより、余分なフェノール樹脂を絞り取ることができ、更に、フェノール樹脂を、連続気泡を有するメラミン樹脂発泡体及び炭素繊維織物に均一に分散させることができる。
なお、本実施例では、フェノール樹脂を溶剤に溶かした溶剤系で行ったが、フェノール樹脂を水に溶かした水溶系で行ってもよい。
【0033】
前記メラミン樹脂発泡体110Aへのフェノール樹脂110Bの含浸と、前記炭素繊維織物210Aへのフェノール樹脂210Bの含浸は、樹脂比率={(メラミン樹脂発泡体の重量+炭素繊維複合化粧板中のフェノール樹脂の重量)÷(面材の重量を除く炭素繊維複合化粧板の重量)}×100で規定される樹脂比率が、40〜70%となるように行われる。具体的には、含浸前のメラミン樹脂発泡体の重量、含浸前の炭素繊維織物全体(全積層数)の重量、含浸後(乾燥後)のメラミン樹脂発泡体の重量、含浸後(乾燥後)の炭素繊維織物全体(全積層数)の重量、及び面材の重量を測定し、測定値を用いて前記の樹脂比率を算出し、前記樹脂比率が40〜70%となるように調整して炭素繊維複合化粧板の製造を行う。なお、樹脂比率の式における炭素繊維複合化粧板中のフェノール樹脂の重量は、[面材の目付量から換算できる面材の重量を除いた含浸後(乾燥後)の炭素繊維織物全体(全積層数)重量−含浸前の炭素繊維織物全体(全積層数)の重量]によって算出することができ、また、炭素繊維複合化粧板の重量は、炭素繊維複合化粧板を計測後、面材の目付量から換算できる面材の重量を除いた重量である。
【0034】
図4に示す(4−2)の積層工程では、前記含浸済みメラミン樹脂発泡体110Cの両面に、前記含浸済み炭素繊維織物210Cを複数枚積層配置し、さらに最外層の前記含浸済み炭素繊維織物210Cの表面に面材310Cを積層して積層体100Cとする。前記含浸済み炭素繊維織物210Cの積層枚数は、前記含浸済みメラミン樹脂発泡体110Cの両面で等しくされる。また、前記面材310Cは、フッ素樹脂で被覆された耐熱性長繊維糸からなる織布で構成されている。前記面材310Cを、片面のみに設ける場合には、前記含浸済みメラミン樹脂発泡体110Cの片面側の含浸済み炭素繊維織物210Cの最外層の表面のみに面材310Cを積層する。前記含浸済みメラミン樹脂発泡体110Cと前記含浸済み炭素繊維織物210C及び前記面材310Cは、平面サイズが同サイズのものが好ましいが、異なっていている場合には、後述の深絞り成形工程後、最終的にトリミングする。
【0035】
図4に示す(4−3)の深絞り成形工程では、前記積層体100Cをプレス成形用金型の下型41と上型43により、深絞り成形して三次元的に賦形すると共に、圧縮して加熱する。前記下型41には、深絞り成形用凹部42が形成されている。また、前記上型43には、前記下型41の深絞り成形用凹部42と対向する深絞り成形用凸部44が形成されている。なお、前記下型41の型面で賦形される面が意匠面となる場合(第1実施形態の炭素繊維複合化粧板10Aの場合)には、前記下型41の深絞り成形用凹部42は、頂部の曲率半径が3mm以上に設定される。一方、前記上型43の型面で賦形される面が意匠面となる場合(第2実施形態の炭素繊維複合化粧板10Bの場合)には、前記上型43の深絞り成形用凸部44は、頂部の曲率半径が3mm以上に設定される。
【0036】
前記深絞り成形工程における圧縮率は、200〜1500%、特に好ましくは300〜1000%となるようにする。なお、圧縮率は、{(圧縮前のメラミン樹脂発泡体の厚み−芯材の厚み)÷芯材の厚み}×100で規定される。芯材の厚みは、製造された炭素繊維複合化粧板における芯材の厚みである。
なお、前記下型41と上型43間の間隔を変化させて炭素繊維複合化粧板を実際に製造し、得られた炭素繊維複合化粧板から圧縮率を計算して目的の圧縮率となる前記下型41と上型43間の間隔を見つけておく。前記深絞り成形工程時、前記下型41と上型43間には適宜の位置にスペーサを設置して、前記下型41と上型43間が所定間隔(積層体の所定圧縮厚み)となるようにする。
また、加熱方法は特に限定されないが、前記下型41と上型43にヒーター等の加熱手段を設けて、前記下型41と上型43を介して行うのが簡単である。加熱温度は、含浸しているフェノール樹脂の硬化反応温度以上とされる。
【0037】
前記深絞り成形工程における圧縮により、前記含浸済み炭素繊維織物210Cのフェノール樹脂と前記含浸済みメラミン樹脂発泡体110Cのフェノール樹脂が確実に接触する。そして前記深絞り成形工程における加熱により、前記含浸済みメラミン樹脂発泡体110Cのフェノール樹脂と前記含浸済み炭素繊維織物210Cのフェノール樹脂がそれぞれ硬化反応を開始し、前記積層体100Cの圧縮状態、すなわち前記含浸済みメラミン樹脂発泡体110Cが圧縮された状態で硬化する。それにより、前記含浸済みメラミン樹脂発泡体110Cから前記芯材110が形成され、また、前記含浸済み炭素繊維織物210Cから前記繊維補強材210が形成され、前記芯材11と前記繊維補強材21と面材31が前記フェノール樹脂の硬化により一体化する。その後、加熱圧縮を解除して前記炭素繊維複合化粧板10を得る。
【0038】
さらに本発明は、その課題について、面材を織布とする三次元的な曲げ形状の賦形が良好で、かつ軽量な炭素繊維複合化粧板の提供とする場合、以下のようにも表現される。すなわち、本発明の別の態様は、少なくとも一面に加飾可能な面材が積層された繊維強化成形体において、フッ素樹脂で被覆された耐熱性長繊維糸からなる織布の面材と、前記面材の片面に積層され炭素繊維織布からなる第一の繊維補強材と、前記繊維補強材の前記面材が積層されていない面に積層される発泡体が圧縮賦形されて気泡がないメラミン樹脂層からなる芯材と、前記芯材の前記繊維補強材が積層されていない面に積層され、炭素繊維織布からなる第二の繊維補強材とからなり、
前記面材と前記第一の繊維補強材と前記芯材と前記第二の繊維補強材は、フェノール樹脂接着剤により含浸硬化されている炭素繊維複合化粧板である。
さらに、前記フェノール樹脂接着剤は、前記面材に浸みだすことなく、前記第一の繊維補強材と前記面材との間で接着層を形成する上記炭素繊維複合化粧板である。また、上記炭素繊維複合化粧板には、面材により覆われた、少なくとも3平面から形成される頂部もしくは凹部が、少なくとも一つ備えている炭素繊維複合化粧板である。
【実施例】
【0039】
フェノール樹脂は、住友ベークライト株式会社製、品名;PR−55791B、樹脂濃度60wt%エタノール溶液を用いた。このフェノール樹脂に平織の炭素繊維織物(東邦テックス株式会社製、品名;W−3101、繊維重さ200g/m
2)を漬け、取り出した後に25℃の室温にて2時間自然乾燥し、更に60℃の雰囲気下にて1時間乾燥させて含浸済み炭素繊維織物を、
図5の表に示す各実施例及び各比較例の繊維補強材の積層枚数に応じて形成した。なお、
図5の表における[繊維補強材の積層枚数]は、表裏均等に配列した、成形体の総積層枚数である。炭素繊維織物は、200×300mmの平面サイズに裁断したもの(重量12g/枚、厚み0.23mm)を使用した。乾燥後の含浸済み炭素繊維織物は、1枚当たり22gであった。なお、含浸量の調節は、フェノール樹脂から取り出した炭素繊維織物を、隙間を調整した二本の絞りローラーに通すことにより行った。
【0040】
また、厚みを5mmとした連続気泡を有するメラミン樹脂発泡体(BASF社製、品名:バソテクトG、密度9kg/m
3)を、平面サイズ200×300mmに切り出し、前記炭素繊維織物と同様にしてフェノール樹脂溶液に漬け、取り出した後に25℃の室温にて2時間自然乾燥し、更に60℃の雰囲気下にて1時間乾燥させて含浸済みメラミン樹脂発泡体を形成した。
フッ素樹脂で被覆された耐熱性長繊維糸からなる織布からなる面材として、株式会社I.S.T製、イストフロン不燃クロスを用いた。
含浸前のメラミン樹脂発泡体の重量、含浸前の炭素繊維織物全体(全積層数)の重量、含浸後(乾燥後)のメラミン樹脂発泡体の重量、含浸後(乾燥後)の炭素繊維織物全体(全積層数)の重量、及び面材の重量を測定し、測定値を用いて計算した樹脂比率を
図5の表に示す。
【0041】
次に、予め離型剤を表面に塗布した鉄製のプレス成形用の金型として、頂部の曲率半径が3mm(比較例4では曲率半径1.5mm)からなる三次元形状の深絞り成形用凹部を四隅に有する凹形状の型面を有する下型と、該下型に対応した上型を用い、含浸後(乾燥後)のメラミン樹脂発泡体と、含浸後(乾燥後)炭素繊維織物と、面材とを、
図4の(4−3)のように積層した状態で、下型と上型により深絞り成形した。深絞り成形は、前記積層体を下型と上型により、150℃で10分間、10MPaの面圧をかけて押圧し、圧縮して三次元的に賦形すると共に加熱を行ない、前記圧縮状態でフェノール樹脂を反応硬化させた。その際の加熱は、下型及び上型に取り付けられた鋳込みヒーターにより行なった。また、下型と上型間には、
図5の表に示す[製品板厚]と等しい厚みの鉄製スペーサを介在させて下型と上型間の間隔、すなわち積層体の圧縮厚みを調整した。その後、下型と上型を開き、芯材の両面に繊維補強材と面材が積層一体化した各実施例及び各比較例の炭素繊維複合化粧板を得た。得られた炭素繊維複合化粧板は、一面が開口した箱状(深さ10mm×縦150×横250mm)であり、四隅に三次元的に賦形された賦形部(深絞り成形部)を有する。
【0042】
各実施例及び各比較例について、繊維補強材比率(%)と前記圧縮率(%)を計算した。補強材比率(%)は、前記炭素繊維複合化粧板に対する繊維補強材全体の厚みの割合(%)である。
各実施例及び各比較例の炭素繊維複合化粧板について、金型の曲率半径3.0mmで賦形された賦形部(深絞り成形部)の外観の目視観察、厚み(製品板厚)、比重(JIS K7112準拠)、曲げ弾性率(JIS K7074−1988 A法)、破壊荷重(JIS K7074準拠)の測定、鉄道車両用材料燃焼性試験を行った。測定結果は
図5の表に示す。
【0043】
外観の目視観察では、炭素繊維複合化粧板の賦形部(深絞り成形部)を含む外面及び内面の外観に対して、皺、亀裂、フェノール樹脂の染み出しの有無を判断した。
炭素繊維複合化粧板の厚み(製品板厚)は平面部の厚みをデジタルマイクロメーターにより測定した。炭素繊維複合化粧板の厚み(製品板厚)は、前記プレス成形用下型と上型間の間隔と等しかった。
鉄道車両用材料燃焼性試験は、平成28年度新方式に従って行った。
【0044】
実施例1は、炭素繊維複合化粧板の板厚が2mm、芯材両面各々の繊維補強材の積層枚数が2枚、表裏合計4枚、繊維補強材比率が46.0%、圧縮率363%、樹脂比率60.0%、金型の曲率半径が3.0mmであり、賦形部(深絞り成形部)の外観問題無し、弾性率20GPa、破壊荷重210N、燃焼性試験が不燃合格、比重が0.81であった。
【0045】
実施例2は、樹脂比率が68.0%である点を除き、他は実施例1と同様の製造条件であり、測定結果は賦形部(深絞り成形部)の外観問題無し、弾性率24GPa、破壊荷重230N、燃焼性試験が不燃合格、比重が1.08であった。
【0046】
実施例3は、樹脂比率が42.9%である点を除き、他は実施例1と同様の製造条件であり、測定結果は賦形部(絞り部深絞り成形部)の外観問題無し、弾性率15GPa、破壊荷重170N、燃焼性試験が不燃合格、比重が0.60であった。
【0047】
実施例4は、炭素繊維複合化粧板の板厚が3mm、芯材両面各々の繊維補強材の積層枚数が2枚、表裏合計4枚、繊維補強材比率30.7%、圧縮率381%、樹脂比率66.7%、金型の曲率半径が3.0mmであり、測定結果は賦形部(深絞り成形部)の外観問題無し、弾性率17GPa、破壊荷重180N、燃焼性試験が不燃合格、比重が0.65であった。
【0048】
実施例5は、炭素繊維複合化粧板の板厚が3mm、芯材両面各々の繊維補強材の積層枚数が5枚、表裏合計10枚、繊維補強材比率76.7%、圧縮率614%、樹脂比率44.4%、金型の曲率半径が3.0mmであり、測定結果は賦形部(深絞り成形部)の外観問題無し、弾性率25GPa、破壊荷重520N、燃焼性試験が不燃合格、比重が0.98であった。
【0049】
実施例6は、炭素繊維複合化粧板の板厚が3mm、芯材両面各々の繊維補強材の積層枚数が3枚、表裏合計6枚、繊維補強材比率46.0%、圧縮率209%、樹脂比率60.0%、金型の曲率半径が3.0mmであり、測定結果は賦形部(深絞り成形部)の外観問題無し、弾性率18GPa、破壊荷重300N、燃焼性試験が不燃合格、比重が0.81であった。
【0050】
実施例7は、炭素繊維複合化粧板の板厚が5mm、芯材両面各々の繊維補強材の積層枚数が5枚、表裏合計10枚、繊維補強材比率46.0%、圧縮率270%、樹脂比率60.0%、金型の曲率半径が3.0mmであり、測定結果は賦形部(深絞り成形部)の外観問題無し、弾性率20GPa、破壊荷重840N、燃焼性試験が不燃合格、比重が0.83であった。
【0051】
実施例8は、炭素繊維複合化粧板の板厚が1mm、芯材両面各々の繊維補強材の積層枚数が1枚、表裏合計2枚、繊維補強材比率46.0%、圧縮率826%、樹脂比率66.7%、金型の曲率半径が3.0mmであり、測定結果は賦形部(深絞り成形部)の外観問題無し、弾性率20GPa、破壊荷重110N、燃焼性試験が不燃合格、比重が1.06であった。
【0052】
このように、実施例1〜8の炭素繊維複合化粧板は、何れも不燃試験に合格し、かつ賦形部(深絞り成形部)において外観が良好であると共に、比重が0.60〜1.08で軽量なものであった。なお、金型の曲率半径が3mmより大の場合の例については示していないが、金型の曲率半径が大になれば、皺や破れなどが生じ難くなるのは周知であり、実施例1〜8において、金型の曲率半径を3mm以上としても得られる炭素繊維複合化粧板は、賦形部(深絞り成形部)において外観が良好なものになる。
【0053】
比較例1は、樹脂比率が71.4%である以外は、実施例1と同様の条件で製造されたものであり、測定結果は賦形部(深絞り成形部)で面材に樹脂が染み出しており、外観不良であった。なお外観不良であったため、他の試験項目については試験を行わなかった。
【0054】
比較例2は、樹脂比率が38.4%である以外は、実施例1と同様の条件で製造されたものであり、測定結果は賦形部(深絞り成形部)で面材に樹脂が染み出しており、外観不良であった。なお外観不良であったため、他の試験項目については試験を行わなかった。
【0055】
比較例3は、炭素繊維複合化粧板の板厚が2mm、芯材両面各々の繊維補強材の積層枚数が1枚、表裏合計2枚、繊維補強材比率が23.0%、圧縮率225%、樹脂比率71.4%、金型の曲率半径が3.0mmであり、賦形部(深絞り成形部)で面材に樹脂が染み出しており、外観不良であった。なお外観不良であったため、他の試験項目については試験を行わなかった。
【0056】
比較例1〜3は、樹脂比率が本発明の範囲を外れるものであるため、賦形部(深絞り成形部)で面材に樹脂が染み出した外観不良のものであり、車両用部材において美観が求められる部材には適さないものである。
【0057】
このように、本発明の炭素繊維複合化粧板は、鉄道車両用材料燃焼性試験に不燃合格でき、かつ三次元的な曲げ形状の賦形が良好で、軽量なものである。