特許第6847552号(P6847552)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6847552
(24)【登録日】2021年3月5日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】トラスの組立て構造および組立て方法
(51)【国際特許分類】
   E04C 3/07 20060101AFI20210315BHJP
【FI】
   E04C3/07
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-104400(P2019-104400)
(22)【出願日】2019年6月4日
(65)【公開番号】特開2020-66988(P2020-66988A)
(43)【公開日】2020年4月30日
【審査請求日】2020年8月3日
(31)【優先権主張番号】特願2018-199863(P2018-199863)
(32)【優先日】2018年10月24日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000153616
【氏名又は名称】株式会社巴コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】向山 洋一
(72)【発明者】
【氏名】岡本 哲美
(72)【発明者】
【氏名】石津 治男
【審査官】 松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−206818(JP,A)
【文献】 特開2011−149224(JP,A)
【文献】 特開平09−273216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C3/00−3/46
E04B1/00−1/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複層立体トラス架構の任意の隣接2節点間を繋ぐトラス構面を構成する2本の弦材が同一平面内にない場合であって、
(i)節点束材に接続されるラチス材のラチス取付けプレート(5)の面は、前記節点束材の部材軸と、その節点束材の一端または中間部に接続される前記ラチス材の部材軸と、前記節点束材の他方の端部に接続される前記2本の弦材どちらか一方の部材軸と、を3辺とする三角形で決定される平面に対して前記ラチス材の部材軸を共有しかつ前記トラス構面の捩じり回転軸(X)に直交する平面(F)と直交交差する平面(F)に含まれている。
(ii)前記節点束材に接続される前記ラチス材のラチス取付けプレート(5)とは反対側のラチス取付けプレート(6)は、その面を前記三角形で決定される平面に対して直交もしくは略直交するようにして、前記2本の弦材どちらか一方の部材中間部に取付けられている。
(iii)前記2本の弦材の内少なくとも1本の弦材は、その弦材の部材軸回りに捩られて、もしくは予め捩り加工されて、前記節点束材の端部に接合されている。
以上の構成を含むトラスの組立て構造。
【請求項2】
複層立体トラス架構の任意の隣接2節点間を繋ぐトラス構面を構成する2本の弦材が同一平面内にない場合であって、
(i)節点束材の端部または中間部に接続されるラチス材のラチス取付けプレート(5)の面は、前記節点束材の部材軸と、前記トラス構面の捩じり回転軸(X)と、の交差軸で決定される平面に含まれており、かつ、前記ラチス取付けプレート(5)と前記ラチス材の端部とを連結する連結プレート(5a)が、前記ラチス取付けプレート(5)に直交もしくは略直交して設けられている。
(ii)前記節点束材に接続される前記ラチス取付けプレート(5)とは反対側のラチス取付けプレート(6)は、その面を、前記節点束材の部材軸と、その節点束材の一端または中間部に接続されるラチス材の部材軸と、前記節点束材の他方の端部に接続される前記2本の弦材どちらか一方の部材軸と、を3辺とする三角形で決定される平面に対して直交もしくは略直交するようにして、前記2本の弦材どちらか一方の部材中間部に取付けられている。
(iii)前記(ii)記載の部材中間部にラチス取付けプレート(6)が取付けられた前記弦材の端部と、前記節点束材の他方の端部と、を接合する弦材ウェブ取付けプレート(8c)の面が、前記(i)記載の前記交差軸で決定される平面に含まれている。
(iv)前記2本の内少なくとも1本の弦材は、その弦材の部材軸回りに捩られて、もしくは予め捩り加工されて、前記節点束材の端部に接合されている。
以上の構成を含むトラスの組立て構造。
【請求項3】
複層立体トラス架構の任意の隣接2節点間を繋ぐトラス構面を構成する2本の弦材が同一平面内になくかつ長さが異なる場合において、節点材の中間部に複数のラチス材のラチス取付けプレート(5)が集まって接続されるトラスの組立て構造であって、
(i)複数の前記ラチス取付けプレート(5)のそれぞれの面は、前記節点束材の部材軸と、その節点束材の中間部に接続される前記各ラチス材の部材軸と、前記節点束材の端部に接続される前記2本の弦材どちらか一方の部材軸と、を3辺とする三角形で決定される平面に対して前記各ラチス材の部材軸をそれぞれ共有し、かつ前記トラス構面の捩じり回転軸(X)に直交する平面(F1)と直交交差する平面(F2)に含まれている。
(ii)前記節点束材の中間部に接続された隣接の前記ラチス取付けプレート(5)は、それらの間に設けられた仕切りプレート(5b)を介して接合されている。
(iii)前記節点束材の中間部に接続される前記ラチス材のラチス取付けプレート(5)とは反対側のラチス取付けプレート(6)は、その面を前記三角形で決定される平面に対して直交もしくは略直交するようにして、前記2本の弦材どちらか一方の部材中間部に取付けられている。
以上の構成を特徴とするトラスの組立て構造。
【請求項4】
請求項記載のトラスの組立て構造において、弦材がT形やL形等の開断面部材の時、前記ラチス材の少なくとも片方の端部が、前記節点束材に接続される前記ラチス取付けプレート(5)もしくは前記弦材の部材中間部のウェブ(2´)と重なる位置まで伸ばして接合される場合であって、前記ラチス材の端部側面と前記節点束材に接続される前記ラチス取付けプレート(5)面もしくは前記弦材の部材中間部のウェブ(2´)面との干渉を避けるための隙間が設けられた状態にて、前記ラチス材の少なくとも片方の端部が、前記連結プレート(5a)もしくは前記2本の弦材どちらか一方の部材中間部に取付けられた前記ラチス取付けプレート(6)に接合されること、を特徴とするトラスの組立構造。
【請求項5】
請求項1乃至2もしくは4記載のトラスの組立て構造において、前記弦材は断面がT形のT形部材であり、そのT形部材は、
(i)2本のT形部材のフランジ同士を背合わせした状態、もしくはそのウェブの縁端同士が相対する状態で一対のT形部材とし、その両端部近傍を、一定の距離を置いて2箇所に設置された固定装置で掴み、
(ii)捩り装置を用いて、前記一対のT形部材の両端部を相対的に逆方向に回転させることにより、前記一対のT形部材に所定の角度まで捩り変形を与え、その後、捩り力を解除して捩り変形を残留させ、
(iii)その残留捩り角度を測定し、
(iv)残留捩り角度が所定残留角度の許容範囲に収まったことを確認する。
以上の部材加工工程を含む方法により予め作製されることを特徴とする、トラスの組立て構造の組立て方法。
【請求項6】
請求項1乃至2もしくは4記載のトラスの組立て構造において、前記弦材は断面がT形のT形部材であり、そのT形部材を、断面がH形であるH形部材を切断して作製する方法であって、
(i)前記H形部材の両端部近傍を、一定の距離を置いて2箇所に設置された固定装置で掴み、
(ii)捩り装置を用いて、前記H形部材の両端部を相対的に逆方向に回転させることにより、前記H形部材に所定の角度まで捩り変形を与え、その後、捩り力を解除して捩り変形を残留させ、
(iii)その残留捩り角度を測定し、
(iv)残留捩り角度が所定残留角度の許容範囲に加工されたH形部材を、強制的に捩じり角度を0°まで変形を戻し、
(v)その状態にて、前記H形部材のウェブを部材軸方向に、切断装置を用いて切断して、2本のT形部材に分割する。
以上の部材加工工程を含む方法により予め作製されることを特徴とする、トラスの組立て構造の組立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対する2本の弦材に、T形やL形等の開断面の鉄骨部材(以下、T形部材等と称す)を用いたトラス梁あるいはトラス柱(以下、トラス構造と称する)において、前記2本の弦材が同一平面内にない場合、即ち、相対的に捩れた位置関係にある場合であっても、ラチス材を前記弦材の中間部に無理なく容易に接合できるようにした、トラスの組立て構造および組立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、ドーム屋根などの曲面を有する屋根に用いられる複層立体トラス架構の一例を図示したものであり、上弦材1と下弦材2、当該上弦材1と下弦材2との間に配設された複数のラチス材3および束材4とから構成されている。
【0003】
これらのトラス構成部材は、H形鋼やL形鋼、CT形鋼などの形鋼、或いは円形鋼管等より形成され、ガセットプレート等の接合プレートを介して互いに接合されてトラス梁を構成し、更に複数のトラス梁が各節点部で互いに交差し、かつ互いに接合されることにより複層立体トラス架構を構成している。なお、図1に図示した複層立体トラス架構は、各トラス構成部材がH形鋼の場合を示している。
【0004】
ところで、上記のような複層立体トラス架構において、各トラス梁の上弦材1と下弦材2が同一平面内に設置されている場合、例えば図2(a)の複層トラス梁の一構面のトラスWについて説明すれば、図2(b)に示すように、ラチス材3も上弦材1や下弦材2と同じ平面内に設置されるため、これらの両端部は上弦材1と下弦材2の中間部にガセットプレート5、5を介して無理なく容易に接合することができる。
【0005】
しかし、ドーム屋根などの曲面を有する屋根に用いられる複層立体トラス架構の場合、図2(a)に図示するように、屋根面の形状によってはトラス梁がその軸芯X軸回りにφだけ捩じられて架設されることがある。この場合、上弦材1と下弦材2は相互に捩じれた位置関係に配設され、更に上弦材1と下弦材2もそれぞれ材軸回りに捩られた状態で架設される場合もある。
【0006】
このような捩れた位置関係にある上弦材1と下弦材2間に複数のラチス材3を配設する場合の問題について、図3を参照して説明する。図3は、図2(a)のトラス梁をX軸回りにφの捩り角度を与えた状態を軸芯のみで表示したものである。
【0007】
図3(a)、(b)に図示するように、ラチス材3を捩れたトラス構面に沿って湾曲させる必要があるが(太い破線で図示)、直線材であるべきラチス材3を曲げることはできないため、上弦材1と下弦材2に取り付けられたラチス取付けプレート5、5の方を、ラチス材3の軸方向に合わせると共に、ラチス材3の端部接合面との肌すきをなくすようにする必要がある。
【0008】
このため、従来、ドーム屋根などの曲面を有する屋根を複層立体トラスによって構築する場合は、特にトラス梁が捩られて配設される位置でラチス材3の端部を上弦材1および下弦材2にガセットプレートを介して接合するには、図3(c)に図示するように、直線材であるラチス材3の軸方向およびその両端接合面に合うように、複雑で手間のかかるラチス取付けプレート5、5の曲げ加工が必要であった。
【0009】
しかも、そのようなラチス取付けプレート5は、ラチス材3の取付け位置によって形状や大きさ、更には取付け角度が異なることが多いため、ガセットプレート5をラチス材3の位置ごとに一枚一枚製作する必要があり、そのために非常に多くの手間とコストがかかり、また、材軸回りに捩られた上弦材1もしくは下弦材2のフランジ面またはウェブ面に精度よく取り付けることは現実問題として極めて困難であった。
【0010】
この問題に関連する特許文献1では、上記課題を回避することにより、ラチス材の両端部を無理なく容易に接合する接合構造を開示している。特許文献1の発明は、ラチス材を弦材の中間部には接合せず、隣接する2節点の一方の上弦節点と他方の下弦節点とを直接連結するようにし、トラス構面に略直交しかつ前記ラチス材の部材軸を含む平面を想定し、両節点側のラチス接合用の接合プレートとラチス材の両端接合面をその平面に合せるように設けることにより、そのラチス材の両端接合面を肌すきなく前記接合プレートに接合できるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2017−206818号公報
【特許文献2】特許第3418659号特許公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、この特許文献1の発明は、上弦材の中間部に荷重が作用することを想定して、H形鋼のような曲げ力に強い部材を用いることを前提にしているので、弦材として曲げ力に弱いT形部材等を用いる場合には適さない。T形部材等を用いるトラス梁の弦材の中間部に荷重が作用する場合は、その荷重作用点にラチス材や束材を接合して、弦材に曲げ応力が発生しないようにする必要がある。
【0013】
そこで本発明は、トラス構面を構成する2本の弦材が同一平面内にないトラス構造において、前記特許文献1の発明では回避された課題であった、弦材の中間部にもラチス材を無理なく容易に接合できるようにすることを目的とし、H形鋼に限らずT形部材等を弦材に用いたトラスの組立て構造と、前記弦材がT形部材の場合に予め捩り加工する工程を含むトラスの組立て方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための本発明の手段は、複層立体トラス架構の任意の隣接2節点間を繋ぐトラス構面を構成する2本の弦材が同一平面内にない場合であって、以下の構成を含むトラスの組立て構造である。
【0015】
(i)節点束材に接続されるラチス材のラチス取付けプレートの面は、前記節点束材の部材軸と、その節点束材の一端または中間部に接続される前記ラチス材の部材軸と、前記節点束材の他方の端部に接続される前記2本の弦材どちらか一方の部材軸と、を3辺とする三角形で決定される平面に対して前記ラチス材の部材軸を共有し、かつ前記トラス構面の捩じり回転軸に直交する平面と直交交差する平面に含まれている。
【0016】
(ii) 前記節点束材に接続される前記ラチス材のラチス取付けプレートとは反対側のラチス取付けプレートは、その面を前記三角形で決定される平面に対して直交もしくは略直交するようにして、前記2本の弦材どちらか一方の部材中間部に取付けられている。
【0017】
(iii)前記節点束材の少なくとも一方の端部に、節点コア部材が設けられている。
(iv)前記2本の弦材の端部は、その内少なくとも1本の弦材の端部接合面と、その端部接合面に相対する前記節点コア部材に連続した弦材取付け部の接合面とが同一平面になるように、その弦材の部材軸回りに捩られて接合されている。
【0018】
また、本発明は、複層立体トラス架構の任意の隣接2節点間を繋ぐトラス構面を構成する2本の弦材が同一平面内にない場合であって、以下の構成を含む、トラスの組立て構造である。
【0019】
(i)節点束材の端部または中間部に接続されるラチス材のラチス取付けプレートの面は、前記節点束材の部材軸と、前記トラス構面の捩じり回転軸と、の交差軸で決定される平面に含まれており、かつ、前記ラチス取付けプレートと前記ラチス材との端部とを連結する連結プレートが、前記ラチス取付けプレートに直交もしくは略直交して設けられている。
【0020】
(ii)前記節点束材に接続される前記ラチス取付けプレートとは反対側のラチス取付けプレートは、その面を、前記節点束材の部材軸と、その節点束材の一端または中間部に接続されるラチス材の部材軸と、前記節点束材の他方の端部に接続される前記2本の弦材どちらか一方の部材軸と、を3辺とする三角形で決定される平面に対して直交もしくは略直交するようにして、前記2本の弦材どちらか一方の部材中間部に取付けられている。
【0021】
(iii)前記(ii)記載の部材中間部にラチス取付けプレートが取付けられた前記弦材の端部と、前記節点束材の他方の端部と、を接合する弦材ウェブ取付けプレートの面が、前記(i)記載の前記交差軸で決定される平面に含まれている。
【0022】
(iv)前記節点束材の両端部に節点コアプレートが設けられている。
(v)前記2本の弦材の端部は、その内少なくとも1本の弦材の端部接合面と、前記弦材の端部接合面に相対する前記節点コアプレートに連続した弦材フランジ取付けプレートの接合面、および前記節点束材に接続される前記ラチス材の前記ラチス取付けプレートもしくは前記弦材ウェブ取付けプレートの接合面と、がそれぞれ同一平面になるように、その弦材の部材軸回りに捩られて接合されている。
【0023】
また、本発明は、複層立体トラス架構の任意の隣接2節点間を繋ぐトラス構面を構成する2本の弦材が同一平面内になくかつ長さが異なる場合において、特に、節点材の中間部に複数のラチス材のラチス取付けプレートが集まって接続されるトラスの組立て構造であって、以下の構成を含むトラスの組立て構造である。
【0024】
(i)複数の前記ラチス取付けプレートのそれぞれの面は、前記節点束材の部材軸と、その節点束材の中間部に接続される前記各ラチス材の部材軸と、前記節点束材の端部に接続される前記2本の弦材どちらか一方の部材軸と、を3辺とする三角形で決定される平面に対して前記各ラチス材の部材軸をそれぞれ共有し、かつ前記トラス構面の捩じり回転軸に直交する平面と直交交差する平面に含まれている。
【0025】
(ii)前記節点束材の中間部に集まって接続された相隣接する前記ラチス取付けプレートは、それらの間に設けられた仕切りプレートを介して接合されている。
(iii)前記節点束材の中間部に接続される前記ラチス材のラチス取付けプレートとは反対側のラチス取付けプレートは、その面を前記三角形で決定される平面に対して直交もしくは略直交するようにして、前記2本の弦材どちらか一方の部材中間部に取付けられている。
【0026】
上記のように、トラス構面を構成する2本の弦材が同一平面内になくかつ長さが異なる場合の単純な形態として、例えば、上弦面と下弦面が平行な山形屋根架構の棟線上の節点に接合されかつ前記棟線に斜交するトラス構面があり、その上弦材と下弦材の部材軸は非平行でありかつ上弦材の方が下弦材よりも長い。自由曲面のトラス架構では、一般的に、トラス構面を構成する2本の弦材が同一平面内になくかつ長さが異なる。
【0027】
また、本発明は、トラスの組立て構造において、弦材がT形部材等の時、前記ラチス材の少なくとも片方の端部が、前記節点束材に接続される前記ラチス取付けプレートもしくは前記弦材の部材中間部のウェブと重なる位置まで伸ばして接合される場合であって、前記ラチス材の端部側面と前記節点束材に接続される前記ラチス取付けプレート面もしくは前記弦材の部材中間部のウェブ面との干渉を避けるための隙間が設けられた状態にて、前記ラチス材の少なくとも片方の端部が、前記連結プレートもしくは前記2本の弦材どちらか一方の部材中間部に取付けられた前記ラチス取付けプレートに接合されること、を特徴とするトラスの組立て構造である。
【0028】
上記のような隙間を予め考慮しておけば、前記ラチス材の端部が、前記節点束材に接続される前記ラチス取付けプレートもしくは前記弦材の部材中間部のウェブと重なる位置まで伸ばして接合される場合において、製作精度があまり高くない場合でも、前記ラチス材と前記ラチス取付けプレートもしくは前記弦材の部材中間部のウェブとの干渉を避けることができる。
【0029】
なお、本発明に係るトラスの組立て構造が対象とする形態は、例えば図15のタイプa〜gが考えられる。タイプ符号(例:a1とa2)の数字の違いは、ラチス材の向きが逆パターンであることを示す。図中の▽印はトラス構造への中間荷重作用点であり、2箇所以下に限定した場合である。また、弦材とラチス材(もしくは束材)との接合点(○印)近傍の数字は、その弦材に接合される部材数である。
【0030】
ラチス材と束材は、非平行な2本の弦材に接合され、なお且つ軸回りに捩られる弦材に接合されることもあるので、その弦材に接合される部材総数(=n)は少ない方が、トラス製作の加工時間短縮に繋がり望ましい。例えば、タイプaとbはn=4、タイプcとdはn=6、タイプeとfはn=8、タイプgはn=10となるので、トラス構造への中間荷重作用点が中央1箇所の場合、トラス製作上、タイプc、d2よりもタイプaまたはbが好ましいと言える。
【0031】
次に、本発明に係るトラスの組立て構造の組立て方法は、弦材がT形部材の場合において、
(i)2本のT形部材のフランジ同士を背合わせした状態、もしくはそのウェブの縁端同士が相対する状態で一対のT形部材とし、その両端部近傍を、一定の距離を置いて2箇所に設置された固定装置で掴み、
(ii)捩り装置を用いて、前記一対のT形部材の両端部を相対的に逆方向に回転させることにより、前記一対のT形部材に所定の角度まで捩り変形を与え、その後、捩り力を解除して捩り変形を残留させ、
(iii)その残留捩り角度を測定し、所定残留角度の許容範囲になるまで前工程(2)を繰り返す。
【0032】
(iv)残留捩り角度が所定残留角度の許容範囲に収まったことを確認して、固定装置から前記一対のT形部材を取外して終了する。
以上の部材加工工程を含む方法により予め作製されることを特徴とする、トラスの組立て構造の組立て方法である。
【0033】
また、本発明に係る別のトラスの組立て構造の組立て方法は、H形鋼等のH形断面部材(以下、H形部材と称す)からT形部材を製作する方法であって、
(i)H形部材の両端部近傍を、一定の距離を置いて2箇所に設置された固定装置で掴み、
(ii)捩り装置を用いて、前記H形部材の両端部を相対的に逆方向に回転させることにより、前記H形部材に所定の角度まで捩り変形を与え、その後、捩り力を解除して捩り変形を残留させ、
(iii)その残留捩り角度を測定し、所定残留角度の許容範囲になるまで前工程 (ii)を繰り返す。
【0034】
(iv)残留捩り角度が所定残留角度の許容範囲に加工されたH形部材を、加圧装置等を用いて強制的に捩り角度を0°まで変形を戻し、
(v)その状態にて、前記H形鋼部材のウェブを部材軸方向に、切断装置を用いて切断して、2本のT形部材に分割する。
以上の部材加工工程を含む方法により予め作製されることを特徴とする、トラスの組立て構造の組立て方法である。
【発明の効果】
【0035】
以上のように本発明は、前記特許文献1の発明では回避された課題を解決して、トラス構面を構成する2本の弦材が同一平面内にないトラス構造であっても、更には捩られた弦材の中間部であっても、ラチス材を無理なく容易に接合することを可能とするので、次のような効果が得られる。
【0036】
(1)節点束材に接続されるラチス材のラチス接合プレートが、そのラチス材の部材軸を共有し前記三角形で決定される平面と交差する平面に含まれている、もしくは、ラチス材を前記ラチス接合プレートに接続するための接続プレートが、前記ラチス接合プレートに直交もしくは略直交する平面内に設けられており、かつ、前記ラチス材が弦材中間部に接続されるもう一方のラチス接合プレートの面も前記三角形で決定される平面と直交もしくは略直交する平面内にあるため、トラス構面の捩り角度に応じて節点束材の部材軸と中間束材の部材軸との相対的な傾斜角度差が増減しても、前記三角形で決定される平面と前記ラチス接合プレートや接続プレートとの交差角度には影響しないので、実際のラチス材の部材軸方向を前記弦材中間部に接続される前記ラチス接合プレートの面内で決定すれば、例えば、L形鋼をラチス材に用いても、そのラチス材両端部の接合面と各ラチス接合プレートもしくは接続プレートとの接合面は肌すきなく接合することができる。
【0037】
(2)捩られた弦材と、ラチス材もしくは中間束材との接合部の納まりが単純化するので、製作の加工時間短縮とコストダウンに繋がる。
【0038】
(3)捩れたトラス構造であっても、ラチス材をその弦材の中間部に無理なく接合できるので、その接合位置で中間荷重を受ければ、弦材に曲げ応力が作用するのを回避でき、H形鋼に限定されることなくL形鋼やCT形鋼のような曲げ力に弱い部材でも弦材に使用し易くなる。
【0039】
(4)従って、弦材に中間荷重による曲げ応力が作用しないため弦材の部材サイズを小さくでき、トラス構造の本来の特性が発揮されるので、軽量化に繋がり大規模屋根架構等のコストダウンに大いに寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】ドーム屋根などの曲面を有する屋根に用いられる複層立体トラス架構の一例を示す部分斜視図である。
図2】従来のトラス梁の1例であり、(a)は側面図、(b)は図2(a)のイ−イ線断面矢視図である。
図3図2(a)のトラス梁をX軸回りにφの捩り角度を与えた状態を軸芯のみで表示したものであり、(a)は図2(a)のロ−ロ線断面矢視図、(b)は図2(a)のハ−ハ線断面矢視図に対応する。(c)は図3(b)の状態におけるラチス材3軸芯(湾曲した太い破線)とラチス取付けプレート5、5が一直線上に配設された状態を表示したものである。
図4】本発明に係るトラスの組立て構造の第1実施例を説明する図であり、(a)は側面図、(b)は図4(a)のニ−ニ線断面矢視図、(c)は図4(a)のホ−ホ線断面矢視図である。
図5図4(c)を補足説明する図であり、ラチス取付けプレート5を含む平面F2を説明する図である。
図6】本発明に係るトラスの組立て構造の第2実施例を説明する図であり、(a)は側面図、(b)は図6(a)のニ−ニ線断面矢視図、(c)は図6(a)のホ−ホ線断面矢視図である。
図7】本発明に係るトラスの組立て構造の第3実施例を説明する図であり、(a)は第3実施例を適用する図15に図示したタイプcと同類のトラス軸組図、(b)は図7(a)のZ部詳細図、(c)は図7(b)のト−ト線矢視図である。
図8】本発明に係るトラスの組立て構造の第4実施例を説明する図であり、(a)は部分詳細側面図、(b)は図8(a)のヘ−ヘ線矢視図である。
図9】弦材フランジ取付けプレート7bとラチス取付けプレート5とに上弦材1を接合する時に、上弦材1端部に捩り力(捩りモーメント)Mを加えることを説明した模式図(弦材がT形部材の場合)である。
図10】本発明に係るトラス構造の弦材としてT形部材を用いた場合に、仮ボルト締付けにより弦材端部に捩り力を与える方法の具体例を示した図である。(a)は、弦材端部に捩り角度φの変形を与える捩りモーメントMに対応するフランジ締付力P(ボルト軸力)を試算した断面モデルであり、(b)は、捩り長さLと捩り角度φおよび比捩り角度θの関係を示した図である。
図11】2本のT形部材をフランジ同士が背合せの状態で捩り加工する捩り装置のイメージ図であり、(a)は、T形部材の端部固定装置を含む回転機、および捩り方法の説明図であり、図11(b)におけるチ−チ線もしくはリ−リ線断面矢視図である。(b)は、捩り装置の側面略図である。
図12】2本のT形部材をウェブ縁端同士が相対する状態で捩り加工する捩り装置のイメージ図であり、(a)は、T形部材の端部固定装置を含む回転機、および捩り方法の説明図であり、図12(b)におけるチ−チ線もしくはリ−リ線断面矢視図である。(b)は、捩り装置の側面略図である。
図13】本発明に係る部材捩り加工方法の実施例に対するフローチャートである。
図14】本発明に係る部材捩り加工方法の別実施例に対するフローチャートである。
図15】a〜gは本発明に係るトラスの組立て構造が対象とするトラス形態の例である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の第1実施例を、図4および図5に図示したトラス梁の場合にて説明する。
トラス構面を構成する上弦材1と下弦材2はT形部材であり、両部材は同一平面内になく(捩じれた位置関係であり)、節点束材4の上下端部に設けられた節点コア部材である上節点部材J1および下節点部材J2に連続した、弦材取付け部J1a、J2aに、上弦材1と下弦材2がそれぞれ接続されている。ラチス材3、中間束材3aはL形鋼、節点束材4は鋼管を用いている。
【0042】
また、節点束材4の部材軸と上節点部材J1および下節点部材J2の部材軸の方向(図4(a)、図4(b)の角度α1とα2、β1とβ2表示参照)は、必ずしも一致していなくてもよい。
第1実施例はこのようなトラス梁であって、以下のような組立て構造を有する。
【0043】
(i)節点束材4に接続されるラチス材3のラチス取付けプレート5の面は、上弦節点Aと下弦節点Bとを結ぶ直線ABと、その直線ABに部材軸を合わされた節点束材4の上端部に接続されるラチス材3の部材軸ACと、節点束材4でラチス材3の接続がない下端部に接続される下弦材2の部材軸BCと、を3辺とする三角形ABCで決定される平面に対して、ラチス材3の部材軸ACを共有しかつ前記トラス構面の捩じり回転軸Xに直交する平面F1と直交交差する平面F2に含まれている(図5参照)。
【0044】
(ii)ラチス材3の下端側のラチス取付けプレート6は、その面を三角形ABCで決定される平面に対して直交もしくは略直交するようにして、即ち、下弦材2の断面の傾きに無関係に、下弦材2の中間部に取付けられている。図4(a)では、下弦材2の中央点Cにラチス材3の部材軸を引付けており、この点には中間束材3aの部材軸も引付けられている。
【0045】
ここで、図4(c)において、φは一つのトラス構面の全捩れ角度であり、中間束材3aの位置は、そのトラス構面の長さの中央部(1/2点)にあるので、節点束材4の部材軸ABと中間束材3aの部材軸CDとの相対的な傾斜角度差はφ/2となる。従って、ラチス材3のラチス取付けプレート5の面は、図5を参照して、ラチス材3の部材軸ACを共有し三角形ABCで決定される平面に対してラチス材3の部材軸ACを共有し、かつ前記トラス構面の捩じり回転軸Xに直交する平面F1と直交交差する平面F2に含まれ、節点束材4の部材軸AB(もしくは中間束材3aの部材軸CD)に対してφ/2の角度を持つことになる。
【0046】
(iii)上下弦材1、2の端部接合面と、弦材取付け部J1a、J2aの接合面とが同一平面になるように、その弦材の部材軸回りに捩られて、ボルト等にて接合されている。
【0047】
なお、上弦材1の中間部で荷重を受ける場合は、図4(a)に図示のように、上弦材1に接続された中間束材3aの直上に、取付けピース10aを介して取付けられた二次部材10にて、その荷重を受ければ、弦材1に曲げ応力が発生することを回避できる。
【0048】
また図4では、上下弦材1、2が共にT形部材の場合を図示したが、H形部材にも適用可能である。即ち、第1実施例の場合、弦材取付け部J1aにおいて、弦材ウェブ取付けプレート7cの下端に、弦材フランジ取付けプレート7bと平行な補剛プレート7dが設けられているので、上弦材1がH形部材の場合でもその下フランジと補剛プレート7dとを接合させることが可能である。弦材取付け部J2aについても同様にすれば、下弦材2にH形部材を用いることも可能になる。従って、第1実施例は、部材選択の幅が、後述の第2実施例よりも広いという利点を有する。
【0049】
図6は、本発明の第2実施例である。
トラス構面を構成する上弦材1と下弦材2はT形部材であり、両部材は同一平面内になく(捩じれた位置関係であり)、節点束材4の上下端部に設けられた節点コアプレートである上節点プレート7aおよび下節点プレート8aに連続した弦材フランジ取付けプレート7b、8b、およびラチス取付けプレート5もしくは弦材ウェブ取付けプレート8cに、上弦材1と下弦材2がそれぞれ接続されている。ラチス材3、中間束材3aはL形鋼、節点束材4は鋼管を用いている。
第2実施例はこのようなトラス梁であって、以下のような組立て構造を有する。
【0050】
(i)節点束材4に接続されるラチス材3のラチス取付けプレート5の面は、節点束材4の部材軸(上弦節点Aと下弦節点Bとを結ぶ直線ABに一致)と、前記トラス構面の捩じり回転軸Xと、の交差軸で決定される平面に含まれており、かつ、ラチス取付けプレート5とラチス材3とを連結する連結プレート5aが、ラチス取付けプレート5に直交もしくは略直交して設けられている。
【0051】
(ii)節点束材4に接続されるラチス取付けプレート5とは反対側のラチス取付けプレート6は、その面を、節点束材4の部材軸(直線AB)と、その節点束材4の上端部に接続されるラチス材3の部材軸(直線AC)と、節点束材4でラチス材3の接続がない下端部に接続される下弦材2の部材軸(直線BC)と、を3辺とする三角形ABCで決定される平面に対して直交もしくは略直交するようにして、即ち、下弦材2の断面の傾きに無関係に、下弦材2の部材中間部に取付けられている。図6(a)では、下弦材2の中央点Cにラチス3の部材軸を引付けており、この点には中間束材3aの部材軸も引付けられている。
【0052】
(iii)ラチス取付けプレート6によりラチス材3が接続された下弦材2の端部と、節点束材4でラチス材3の接続がない下端部と、を接合する弦材ウェブ取付けプレート8cの面が、前記交差軸で決定される平面に含まれている。
【0053】
(iv)節点束材4の両端部に設けられた節点コアプレートである上下節点プレート7a、8aに連続した弦材フランジ取付けプレート7b、8bは、ラチス取付けプレート5および弦材ウェブ取付けプレート8cとそれぞれ直交もしくは略直交している。
【0054】
(v)上下弦材1、2の端部接合面と、弦材フランジ取付けプレート7b、8bおよびラチス取付けプレート5もしくは弦材ウェブ取付けプレート8cの接合面とが同一平面になるように、その弦材の部材軸回りに捩られて、ボルト等にて接合されている。
【0055】
図7は、本発明の第3実施例であり、図15に図示したタイプcと同類のトラス形態の場合を示し、例えば、上弦面と下弦面が平行な山形の複層立体トラスの屋根架構であって、その棟線に斜めに交差するトラス構面の一対(上弦材と下弦材)の部材軸が非平行である場合である。この場合、上弦材と下弦材の長さは異なる。
【0056】
そのトラス構面において、節点材4の中間部(点A´近傍)に複数のラチス材3、3を取り付けるラチス取付けプレート5、5が集まって接続されており、以下のような組立て構造を有する。なお、自由曲面のトラス架構でも、トラス構面を構成する2本の弦材が同一平面内になくかつ長さが異なる点で同じだが、ここでは最も単純な架構形態の場合で説明する。
【0057】
(i)2枚のラチス取付けプレート5、5のそれぞれの面は、節点束材4の部材軸ABと、その節点束材4の中間部A´に接続されるラチス材3、3の部材軸A´C(A´D)と、節点束材4の端部(A、B)に接続される2本の弦材(1、2)どちらか一方の部材軸BC(AD)と、を3辺とする三角形で決定される平面A´BC(A´AD)に対して各ラチス材3、3の部材軸A´C(A´D)をそれぞれ共有し、かつ前記トラス構面の捩じり回転軸Xに直交する直線O2C(O1D)を含む平面f1と直交交差する平面f2(f1、f2は、図5のF1、F2に相当)に含まれている。
【0058】
ここで、図7(a)において、L1≠L2の場合、上下弦材を結ぶ直線CD(中間部材3a)は、トラス構面の捩じり回転軸Xと直交しないので、点O1と点O2は一致せず、前記2枚のラチス取付けプレート5、5(図7(b)、(c)参照)がそれぞれ含まれる平面f2は一致しない。
【0059】
(ii)節点束材4の中間部A´に接続されるラチス材3、3のラチス取付けプレート5、5とは反対側のラチス取付けプレート6、6は、その面を三角形で決定される平面A´BC(A´AD)に対して直交もしくは略直交するようにして、2本の弦材(1、2)どちらか一方の部材中間部(点C、D近傍)に取付けられている。
(iii)2本の弦材(1、2)は、その部材軸回りに捩られることなく、節点束材4の両端部(A、B)に接合されている。
【0060】
上記(i)に記載の通り、点O1とO2が一致しない(直線CDが前記回転軸Xに直交しない)時、図7(a)のZ部分の納まり詳細を示す図7(b)および(c)に図示のように、節点束材4の中間部A´に接続されるラチス材3、3のラチス取付けプレート5、5は同一平面にない。即ち、これらラチス取付けプレート5、5同士が接する縁端は一致せず、ずれ(目違い)を起こすので、それらの間に挿入された仕切りプレート5bを介して接合することにより、それらの間に挿入して、その目違いを吸収している。
【0061】
また、本実施例は、上弦面と下弦面が平行な複層立体トラス架構の設定なので、T形断面部材である2本の弦材(1、2)のフランジ面を上下弦面に平行に配設すれば、両弦材の部材軸が非平行であっても(トラス構面は捻じれていても)、2本の弦材(1、2)は、その部材軸回りに捩じることなく、節点束材4の上下端部に接合することができる。
【0062】
なお、上記実施例は最も単純な架構形態の場合であり、2本の弦材(1、2)は、その部材軸回りに捩じる必要はなかったが、自由曲面のトラス架構では、前記2本の弦材を節点束材4の上下端部に無理なく接合するには、前記実施例1や2のように、弦材の部材軸回りに捩ることが有効な方法である。
【0063】
図8は、本発明の第4実施例であり、第2実施例において、ラチス材3の少なくとも片方(図8では下端)の端部が、下弦材2の部材中間部のウェブ2´と重なる位置まで伸ばして接合される場合であって、例えば図8(b)に図示のように、下弦材2のウェブ2´面とラチス材3の側面との間に角度γが生じることを想定して、最小隙間寸法w2、w2を確保して部材を製作することにより、下弦材2のウェブ2´とラチス材3の端部との干渉を避けるようにしたものである。
【0064】
この時、溶接ビード13、13の幅も考慮して、2本のL形鋼からなるラチス材3の隙間寸法w1を決定する必要がある。
本実施例では、トラスの製作精度があまり高くない場合でも、ラチス材と弦材のウェブとの干渉を避けることができるので、トラス組立て時の問題発生が回避され、作業容易性が向上する。
【0065】
上記何れの実施例においても、上弦材1もしくは下弦材2の端部接合面と、第1実施例の弦材取付け部J1aもしくはJ2a、あるいは第2実施例の弦材フランジ取付けプレート7b、8b他との接合面が、接合前に合っていなければ、図9に示すように、それら弦材の部材軸回りに捩りモーメントMTを加えるなどして、弦材(1、2)端部と弦材取付け部(J1a、J2a)等との面を合わせて接合する必要がある。
【0066】
本発明では、上弦材1もしくは下弦材2が捩られることが特徴であるが、これらを捩じるために、例えば、トラス梁の組立て時に、弦材端部のボルト孔を利用して仮ボルトを締めることにより肌すきを無くす方法をとった場合、その仮ボルトの軸力はどの程度になるかを試算したものが、図10および表1である。
【0067】
【表1】
【0068】
図10(a)は、上弦材1端部と弦材取付け部J1aとを挟み板S1とS2で挟み、ボルト孔を貫通する仮ボルト9、9を締付ける状況を模式的に表現したものである。仮ボルト9、9を締付けることで上弦材1端部に作用する捩りモーメントMTは、上弦材1端部のフランジ両端に作用する偶力Rで表せば、MT=R×b(b:フランジ幅)なので、仮ボルト9、9の軸力は、P=MT/2e(e:弦材ウェブ芯から仮ボルト9までの寸法)である。
【0069】
表1は、図10のモデルによるフランジ締付力Pの計算結果例であり、捩り角度φ=5°、部材捩り長さL=300cm、500cmとした場合の、T形部材6サイズに対する仮ボルト9の軸力P(単位:kg)を試算した結果である(φとLおよびθの関係は図10(b)を参照)。No.1〜4は、サイズが小さいので、Pは100〜250kg程度であり、スパナを用いた手締めでも問題なく締付け可能である。
【0070】
しかし、No.9〜12のような大きなサイズでは、1000〜3000kg程度とかなり大きくなる。ボルトを締めるだけなら、この程度でも手締めは可能だが、現場でのトラス組立て中において、ボルトを締付けている部材端部の反対側端部には、同じだけの捩りモーメントMTが反力として作用するので、仮締め状態にある反対側端部の節点位置が動いてしまい、架構の組み上がりが安定しないという問題が発生し、現場建て方の効率を大きく損なう可能性がある。
【0071】
勿論、そのような問題がない程度の捩り角度や小さな部材サイズ、あるいは、捩り剛性の小さいL形鋼等であれば、上記方法を用いることは可能である。
【0072】
上記問題を回避して現場建て方の効率化を図るには、弦材の端部を予めに捩り加工しておくことが最善の解決策である。
【0073】
そこで、その部材捩り加工方法の実施例として、例えば、次のような部材捩り装置20(図11、12参照)を用いることが考えられる。即ち、図11、12および図13のフローチャートを参照して、
(i)2本のT形部材11、12を、そのフランジ同士を背合わせした状態(図11(a)、(b))、もしくはそのウェブの縁端同士が相対する状態(図12(a)、(b))で、その両端部を、一定の距離Lを置いて2箇所に設置された回転機20aの固定装置21、21、…で掴み(Step.1)、
【0074】
(ii)前記2箇所の回転機20aを相対的に逆方向に回転させることにより、前記一対のT形部材に目標角度φまで捩り変形を与え、その後、捩り力を解除して捩り変形を残留させ(Step.2、3)、
(iii)その残留捩り角度φiを測定し、所定残留角度φ0の許容範囲になるまで前工程(ii)を繰り返す(Step.4、5、5a)。
【0075】
(iv)残留捩り角度φiが所定残留角度φ0の許容範囲に収まったことを確認して、回転機20aの固定装置21、21、…から部材を取外して終了する(Step.6)。
以上の工程を含む、部材捩り加工方法である。
【0076】
図11に示す捩り装置20のイメージ図にて説明すれば、図11(b)に図示のように、2本のT形部材11、12をそのフランジ同士を背合わせした状態で、その両端部を、捩り装置20の回転機20a、20aに挿入し、図11(a)に図示のように、固定装置21、21、…にて幅広矢印の方向に締付け固定する。
【0077】
その後、一対のジャッキ22、22のピストンロッド22a、22aを直線矢印のように逆方向に伸縮させ、回転機20aを円弧矢印の方向に回転させる。その時の捩り目標角度φは所定残留角度φ0が残留する大きさとする必要がある。
【0078】
1回の捩り加工で所定残留角度φ0が得られなかった場合は、目標角度φを増大させて再度捩り変形を与える。この時、部材の捩りモーメントMTと捩り角度φの関係は、図13の付図1の模式図のように、初期点oから弾性限界aに至り、降伏して変形が進行する。点bで捩りモーメントMTを解除すれば、点cまで弾性的に戻るが、所定残留角度φ0 に対応する点fには達していないので、再度加力して点dまで戻し、更に点eまで変形を微増した後、捩りモーメントMTを解除して、一定の誤差の範囲で点fに至れば、捩り加工完了である。
【0079】
以上説明した図11(a)、(b)に図示の方法では、2本のT形部材11、12のフランジ断面が回転機20a、20aの回転軸に近いため、部材の捩り剛性が低い。そのため、所定残留角度φ0 を得るためには、目標角度φを相当大きくする必要がある。
【0080】
一方、図12(a)、(b)に図示の方法では、2本のT形部材11、12のウェブの縁端同士が相対する状態で、その両端部を回転機20a、20aの固定装置21、21、…で掴んで捩るので、そのフランジ断面が回転機20a、20aの回転軸から遠いため、部材の捩り剛性が高い。よって、目標角度φ図11(a)、(b)に図示の方法よりも小さくてよい。
【0081】
なお、図11、12に図示の方法では、T形部材を2本一緒に捩じるので、異なるサイズの組み合わせでも同時に捩ることが可能であり、また、捩り角度が同じである1台のトラスの上下弦材を一度に加工でき、1本づつ捩じるよりも効率的である。但し、サイズが同じもしくは近い組合せでない場合、捩り完了後の残留角度に相応の差が出てしまうことに考慮し、所定残留角度φ0に対する加工管理値にある程度の許容幅を設ける必要がある。
【0082】
前記とは別の、捩れたT形部材を作製する方法として、図12に図示の捩り装置20を利用して、H形部材をそのまま捩じった後に、ウェブを軸方向に切断する方法が考えられる。H形部材を捩る場合は、図12(a)、(b)に図示の回転機20aに装着する固定装置21、21、…を、H形部材用として利用することが可能である。
【0083】
図12(a)、(b)および図14のフローチャートを参照して、
(i)H形部材(図示しない)を、一定の距離Lを置いて2箇所に設置された回転機20aの固定装置21、21、…で掴み(Step.1)、
(ii)前記2箇所の回転機20aを相対的に逆方向に回転させることにより、前記H形部材に目標角度φまで捩り変形を与え、その後、捩り力を解除して捩り変形を残留させ(Step.2、3)、
(iii)その残留捩り角度φiを測定し、所定残留角度φ0の許容範囲になるまで前工程(ii)を繰り返す(Step.4、5、5a)。
【0084】
(iv)残留捩り角度φiが所定残留角度φ0の許容範囲に加工されたH形部材を切断装置(図示せず)に移し、例えば図14の付図3に図示のように、加圧装置を用いて強制的に捩り角度を0°まで変形を戻す(Step.7)。この時、部材は、付図2を参照して、点fから点gの状態に移るが、gの状態は弾性域であり、強制力を解除すれば状態fに戻るので、所定残留角度φ0 は確保される。
【0085】
(v)その状態にて、前記H形部材のウェブを部材軸方向に切断装置を用いて切断して、2本のT形部材に分割した後、切断装置から部材を取り外して終了する(Step.8、9、10)。切断に際して、捩れ角度が0°の状態なので、ウェブの切断精度が確保し易い。
【0086】
以上の工程を含む、部材捩り加工方法である。
なお、この方法ではH形部材を2本のT形部材に分割するので、捩れた同じサイズの弦材を一度に2本製作することができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、一様でない曲面の複層立体トラス架構を構成する捩れた弦材にT形部材等を用いる場合であっても、それら捩れた弦材の中間部にラチス材を無理なくに接合することができるので、軽量で安価な大規模屋根等の大空間架構の実現に大いに貢献できる。
【符号の説明】
【0088】
1、1a:上弦材
2、2a:下弦材
3:ラチス材
3a:中間束材
4:節点束材
5、6:ラチス取付けプレート
5a:連結プレート
5b:仕切りプレート
6a:束取付けプレート
7a:上節点プレート
8a:下節点プレート
7b、8b:弦材フランジ取付けプレート
7c、8c:弦材ウェブ取付けプレート
7d:補剛プレート
9:仮ボルト
10:二次部材
10a:取付けピース
11、12:T形部材
13:溶接ビード
20:捩り装置
20a:回転機
21:固定装置
22:ジャッキ
22a:ピストンロッド
J1:上節点部材
J2:下節点部材
J1a、J2a:弦材取付け部
L:部材の捩り区間長さ
P:仮ボルトの締付け力
:捩り力(捩りモーメント)
γ:ラチス材側面と弦材ウェブ面との角度
φ:捩り角度
θ:比捩り角度=φ/L
W:トラス一構面の範囲
w1、w2:隙間寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15