(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記冷却ステップは、上下に対向して配置され、同期して回転する冷却された上冷却ロールと下冷却ロールとの間に、前記帯状立体装飾片を送り込んで冷却するステップである、
請求項1又は請求項2に記載の熱可塑性合成樹脂製の帯状立体装飾片の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
制服の袖やズボン、帽子などには、装飾として縞織金線等の長尺装飾テープが縫付け或いは装着等される。これら長尺装飾テープは、細い金糸や銀糸の織りによって製造しているため、加工に時間が掛かる。また、近年、需要が制限されるため加工業者が極端に減少し、織り製の長尺装飾テープは入手が困難になっている。
【0005】
そこで、熱可塑性合成樹脂を用いて縞織金線の如き長尺装飾テープに代わる帯状の立体装飾片を製造することが望まれる。しかしながら、熱可塑性合成樹脂製の立体装飾片は、金型間に装飾片材料を配置し、高周波誘電加熱することで、装飾片材料を軟化、賦形及び溶着させることで製造されるものであるため、立体装飾片は、金型の幅、特に長さの制限を受け、長尺の帯状立体装飾片を製造することができなかった。
【0006】
本発明は、熱可塑性合成樹脂からなる長尺の帯状立体装飾片を製造することのできる方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の熱可塑性合成樹脂製の帯状立体装飾片の製造方法は、
帯状の熱可塑性合成樹脂シートを含む下層の上に、帯状の熱可塑性合成樹脂フィルムを含む上層と、帯状の高周波では溶断されない保護・保持層を重ねて帯状装飾片材料を送り出す送出ステップ、
前記帯状装飾片材料を予熱して加熱軟化させる予熱ステップ、
上側に回転駆動する上電極ロール金型を配置し、前記上電極ロール金型の下方に下電極金型を配置し、前記上電極ロール金型と前記下電極金型との間に、加熱軟化した前記帯状装飾片材料を送り込み、前記上電極ロール金型と前記下電極金型との間に高周波を連続して発振させることで、高周波誘電加熱により前記帯状装飾片材料を賦形して帯状立体装飾片を得る賦形ステップ、
賦形された前記帯状立体装飾片を冷却する冷却ステップ、及び、
前記冷却された帯状立体装飾片を巻き取る巻取ステップ、
を含む。
【0008】
前記送出ステップは、それぞれ送出ロールに巻回された前記下層、前記上層及び前記保護・保持層を引き出して重ねて送り出すステップとすることができる。
【0009】
前記予熱ステップは、上下に対向して配置され、同期して回転する加熱された上ヒートロールと下ヒートロールとの間に、前記帯状装飾片材料を送り込んで加熱軟化させるステップとすることができる。
【0010】
前記冷却ステップは、上下に対向して配置され、同期して回転する冷却された上冷却ロールと下冷却ロールとの間に、前記帯状立体装飾片を送り込んで冷却するステップとすることができる。
【0011】
前記上電極ロール金型は、周面に1又は複数枚の溶断刃が突設された構成とすることができる。
【0012】
前記上電極ロール金型は、胴部に模様が彫刻された構成とすることができる。
【0013】
前記送出ステップは、前記下層と前記上層との間に合成樹脂フォームシートを重ねて送り出すことができる。
【0014】
前記送出ステップは、帯状の熱可塑性合成樹脂シートを含む下層の下に基材シート、両面テープ又はホットメルトフィルムを重ねて送り出すことができる。
【0015】
また、本発明の熱可塑性合成樹脂製の帯状立体装飾片の製造装置は、
帯状の熱可塑性合成樹脂シートを含む下層の上に、帯状の熱可塑性合成樹脂フィルムを含む上層と、帯状の高周波では溶断されない保護・保持層を重ねて帯状装飾片材料を送り出す送出機構と、
前記送出機構の下流側に設けられ、前記帯状装飾片材料を予熱して加熱軟化させる予熱機構と、
前記予熱機構の下流側に設けられる賦形機構であって、上側に回転駆動する上電極ロール金型を配置し、前記上電極ロール金型の下方に前記上電極ロール金型と当接する下電極金型を配置し、前記上電極ロール金型と前記下電極金型との間に、加熱軟化した前記帯状装飾片材料を送り込み、前記上電極ロール金型と前記下電極金型との間に高周波を連続して発振させることで、高周波誘電加熱により前記帯状装飾片材料を賦形して帯状立体装飾片を得る賦形機構と、
前記賦形機構の下流側に設けられ、賦形された前記帯状立体装飾片を冷却する冷却機構、及び、
前記冷却機構の下流側に設けられ、前記冷却された帯状立体装飾片を巻き取る巻取機構と、
を含む。
【0016】
前記上電極ロール金型は、周面に1又は複数枚の溶断刃が突設されている構成とすることができる。
【0017】
前記上電極ロール金型は、胴部に模様が彫刻されている構成とすることができる。
【0018】
前記予熱機構は、上下に対向して配置され、同期して回転する加熱された上ヒートロールと下ヒートロールから構成することができる。
【0019】
前記冷却機構は、上下に対向して配置され、同期して回転する加熱された上冷却ロールと下冷却ロールから構成することができる。
【0020】
前記上電極ロール金型、前記上ヒートロール及び前記上冷却ロールは、上下動可能な上側機構に載置した構成とすることができる。
【0021】
前記上電極ロール金型、前記上ヒートロール及び前記上冷却ロールは、動力伝達可能に連繋され、上モーターにより回転し、
前記下ヒートロール及び前記下冷却ロールは、動力伝達可能に連繋され、下モーターにより回転する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の熱可塑性合成樹脂製の帯状立体装飾片の製造方法及び製造装置によれば、帯状装飾片材料を順次送り込んで、予熱軟化させた後、回転する上電極ロール金型と下電極金型により高周波誘電加熱により連続して長尺の帯状に賦形できる。そして、賦形された帯状立体装飾片は、冷却して形状固定し、巻き取ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の熱可塑性合成樹脂製の帯状立体装飾片100とその製造方法について、図面を参照しながら説明を行なう。以下では、まず製造装置10について説明し、その後、帯状装飾片材料101の望ましい実施形態、製造方法の説明を行なう。なお、各図において、帯状立体装飾片100や帯状装飾片材料101の各層の厚み、金型の凹凸、厚みなどは説明のため強調して示している。また、これらの形状、模様、寸法などは一例であり、適宜変更可能である。
【0025】
<熱可塑性合成樹脂製の帯状立体装飾片100の製造装置10>
図1乃至
図4は、本発明の一実施形態に係る熱可塑性合成樹脂製の帯状立体装飾片100を製造する製造装置10を示している。製造装置10は、
図1において右手側となる上流側に送出機構20、中央に加工機構30、下流側に巻取機構70を具える。加工機構30は、上流側から予熱機構40、賦形機構50及び冷却機構60を具え、各機構は、上下に接近離間可能な上側機構31と下側機構32に配置されている。
【0026】
送出機構20は、
図1及び
図3に示すように、複数の送出ロール21,22,23を具える。図示の実施形態では、送出ロールは、第1〜第3送出ロール21,22,23の3本であり、夫々のロール軸24は、下フレーム32aに取り付けられたアーム34に回動自在に装着されている。なお、
図3は、下フレーム32aの一部を点線で示している。送出ロール21,22,23には、夫々後述する帯状装飾片材料101が巻回されている。たとえば、帯状装飾片材料101は、保護・保持層102、上層103及び下層104であり、第1〜第3送出ロール21,22,23に巻回される。帯状装飾片材料101の層数を増やす場合、これに合わせて送出ロールの数も増やせばよい。
【0027】
ロール軸24には、
図1、
図3に示すように、端縁にプーリ25(送出ロール23のみ図示)が装着されており、プーリ25に懸架されたVベルト26は後述する下駆動機構90に動力伝達可能に連繋されている。送出ロール21,22,23は、下駆動機構90の動力を受けて帯状装飾片材料101の送出方向に回転するようにしている。なお、送出ロール21,22,23は他の駆動機構で駆動することもできる。
【0028】
そして、送出機構20の各送出ロール21,22,23から送り出された保護・保持層102、上層103及び下層104は、加工機構30に送られる。加工機構30には、下フレーム32aの端縁に送りローラー35が設けられており、送り出された保護・保持層102、上層103及び下層104が、保護・保持層102を上にして送りローラー35で重ね合わされる。
【0029】
加工機構30は、上流側から予熱機構40、賦形機構50、及び、冷却機構60を有する。各機構は、対向して配置される上側機構31と下側機構32に設けられ、上側機構31は、下側機構32に対して相対的に上下動可能に構成される。たとえば、
図2に示すように、下フレーム32aから突設されたアーム36にシリンダー37からなる昇降機構を設け、当該シリンダー37の下端に上側機構31を取り付けることで、シリンダー37の伸縮により上側機構31を上下動可能とすることができる。なお、各部の構成をわかりやすくするため、
図1及び
図2では、上側機構31を下側機構32から離間して示しているが、帯状立体装飾片100を製造する際には、上側機構31は下側機構32に接近し、ヒートロール41,42、電極金型51,58、冷却ロール61,62は夫々近接した位置まで移動する。
【0030】
加工機構30の中で上流側に位置する予熱機構40は、帯状装飾片材料101を予熱して軟化させる機構である。予熱機構40は、たとえば、ヒーターを内蔵したヒートロール41,42とすることができる。ヒートロール41,42は、上下に対向して配置され、夫々後述する駆動機構80,90により同期して回転可能となっている。上ヒートロール41は、上側機構31に配置され、
図1及び
図4に示すように、上フレーム31aの下面から周面の一部が臨出するよう設置されている。また、下ヒートロール42は、下側機構32に配置され、
図1及び
図3に示すように、下フレーム32aの上面に形成された窓33aから周面の一部が臨出するよう設置されている。なお、予熱機構40は、回転可能なヒートロール41,42とせずに、ブロック状のヒーターとしても構わない。
【0031】
予熱機構40に帯状装飾片材料101が送り込まれると、上下のヒートロール41,42により帯状装飾片材料101が加熱されて軟化する。そして、軟化状態にある帯状装飾片材料101は、下流側の賦形機構50に送り込まれる。
【0032】
賦形機構50は、予熱機構40にて軟化された帯状装飾片材料101を賦形すると共に必要に応じて溶断する機構である。賦形機構50は、上側にドラム状の上電極ロール金型51、下側に対向して下電極金型58を具え、これら金型51,58を電極として高周波誘電加熱を行なう。
【0033】
上電極ロール金型51は、
図1及び
図4に示すように、上フレーム31aの下面から周面の一部が臨出するよう設置されており、後述する上駆動機構80により回転可能となっている。上電極ロール金型51は、たとえば長さが6cm〜12cm、直径3cm〜10cmのドラム状の形状とすることができる。上電極ロール金型51は、たとえば、
図5(a)〜(c)に示すように、胴部に模様52や先端が尖った溶断刃54が彫刻されている。上電極ロール金型51の端縁には、下フレーム32a又は下電極金型58との干渉や衝突を和らげ、また、絶縁を行なうためにクッションゴムリング55が装着されている。
【0034】
図5(a)に示す上電極ロール金型51は、模様52として胴部に微細なジグザグ模様が彫刻され、等間隔に5列の溶断刃54を形成しており、後述する帯状立体装飾片100(
図7(a))にジグザグ模様を付すようにしている。
図5(b)に示す上電極ロール金型51は、胴部の周面からやや高さを高く溶断刃54を形成し、
図7(b)に示す中央がやや膨らんだかまぼこ状の帯状立体装飾片100を形成することができる。
図5(c)に示す上電極ロール金型51は、溶断刃54よりも高さの低いライン押え突条53を複数突設して、
図7(c)に示すように帯状立体装飾片100に筋状のライン模様を付すようにしている。もちろん、これら模様や溶断刃54は一例である。
【0035】
上電極ロール金型51には、ヒーターを内蔵し、賦形や溶断を容易に行なうことができるようにすることが望ましい。
【0036】
上電極ロール金型51の下方に配置される下電極金型58は、上面がフラットに形成され、下フレーム32aの上面に形成された窓33bから上面が臨出するよう設置されている。下電極金型58の表面には、上電極ロール金型51との絶縁を図り、スパークの発生を防ぐために絶縁クロス59が掛けられている。
【0037】
上電極ロール金型51と下電極金型58の間では、帯状装飾片材料101の高周波誘電加熱が行なわれる。たとえば、
図2に示すように、製造装置10の背面側に配置された制御ボックス11に高周波発振器を内蔵しており、上電極ロール金型51と下電極金型58を高周波発振器に接続している。そして、上電極ロール金型51と下電極金型58間に予熱機構40にて軟化された帯状装飾片材料101を送り込んで高周波誘電加熱を行なうことで、帯状装飾片材料101は膨張して賦形されると共に、溶断刃54により溶断される。
【0038】
そして、賦形機構50にて賦形及び溶断され、加熱状態にある帯状装飾片材料101は、下流側の冷却機構60に送られ、冷却を受けて形状を固定する。冷却機構60は、たとえば、冷却ロール61,62であり、冷水循環器(チラー)にチューブで接続して冷水を循環させて低温を保つ構成とすることができる。冷却ロール61,62は、上下に対向して配置され、夫々後述する駆動機構80,90により同期して回転可能となっている。上冷却ロール61は、上側機構31に配置され、
図1及び
図4に示すように、上フレーム31aの下面から周面の一部が臨出するよう設置されている。また、下冷却ロール62は、下側機構32に配置され、
図1及び
図3に示すように、下フレーム32aの上面に形成された窓33cから周面の一部が臨出するよう設置されている。なお、冷却機構60は、回転可能な冷却ロール61,62とせずに、ブロック状の形状としても構わない。
【0039】
冷却機構60において冷却されることで帯状装飾片材料101は形状が固定された帯状立体装飾片100となる。そして、帯状立体装飾片100は、下フレーム32aの端縁に設けられた送りローラー38を通って、巻取機構70に送り出される。巻取機構70は、
図1及び
図3に示すように、巻取ロール71を具える。巻取ロール71のロール軸72は、下フレーム32aに取り付けられたアーム39に回動自在に装着されている。ロール軸72には、端縁にプーリ73が装着されており、プーリ73に懸架されたVベルト74を介して後述する下駆動機構90の動力を受けて回転し、帯状立体装飾片100を巻き取る。
【0040】
上記した製造装置10において、上側機構31の上ヒートロール41、上電極ロール金型51及び上冷却ロール61の回転は、上駆動機構80により行なうことができる。たとえば、上駆動機構80は、上フレーム31aに配置された1つの上変速モーター81を駆動源として構成することができる。具体的には、上ヒートロール41、上電極ロール金型51及び上冷却ロール61の回転軸に夫々ギア82a,82b,82cを設け、ギア82a,82bどうし、ギア82b,82cどうしを送りギア83a,83bで同方向に回転可能に連繋している。また、送りギア83aに同軸にプーリ84を具え、上変速モーター81をVベルト85で連繋し、動力伝達可能としている。そして、上側機構31は、上変速モーター81を駆動することで、Vベルト85が送りギア83aを回転させ、ギア82a,83a,82b,83b,82cの噛み合いにより、上ヒートロール41、上電極ロール金型51及び上冷却ロール61が回転する。なお、上ヒートロール41、上電極ロール金型51及び上冷却ロール61は、帯状装飾片材料101の弛みを防ぐため、外径が同じ場合、同じ回転数で同期して回転させることが望ましい。
【0041】
然して、上変速モーター81を駆動することで、上ヒートロール41、上電極ロール金型51及び上冷却ロール61は、同方向に同期して回転する。
【0042】
また、下側機構32の下ヒートロール42、下冷却ロール62、送出ロール21,22,23及び巻取ロール71の回転は、下駆動機構90により行なうことができる。たとえば、下駆動機構90は、下フレーム32aに配置された1つの下変速モーター91を駆動源として構成することができる。具体的には、下ヒートロール42と下冷却ロール62の回転軸にギア92a,92bを設け、ギア92a,92bを送りギア93a,93b,93cで同方向に回転可能に連繋している。また、送りギア93aと同軸にプーリ94を具え、下変速モーター91をVベルト95で連繋し、動力伝達可能としている。さらに、下ヒートロール42はギア92aと同軸にプーリ94aを設け、送出ロール21,22,23のロール軸24にもプーリ25を夫々設け、これらプーリ94a,25間をVベルト26(第3送出ロール23のみ図示)で連繋している。同様に、下冷却ロール62の回転軸にプーリ94bを設け、巻取ロール71のロール軸72にもプーリ73を設け、これらプーリ94b,73間をVベルト74で連繋している。
【0043】
然して、下変速モーター91を駆動することで、下ヒートロール42、下冷却ロール62は、同方向に回転し、送出ロール21,22,23は、帯状装飾片材料101の送り出し方向、また、巻取ロール71は、帯状立体装飾片100の巻取方向に回転する。
【0044】
なお、駆動機構80,90は、本実施形態に限定されるものではない。たとえば、後述する
図10乃至
図12に示すようにギアを用いずVベルトとプーリで動力伝達可能とした構成とすることもできるし、個々の機構を独立或いは複数に共通した駆動モーターで駆動する構成とすることも勿論可能である。
【0045】
<帯状装飾片材料101>
帯状立体装飾片100の材料となる帯状装飾片材料101は、
図6(a)〜(f)に一例を示すように、保護・保持層102、上層103及び下層104を少なくとも含む長尺の材料から構成することができ、それぞれ送出ロール21,22,23に巻回される。なお、帯状立体装飾片100の層構成、材料、厚さなどは以下に限定されるものではない。
【0046】
保護・保持層102:高周波では溶断されないポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム等であり、厚みは30μm〜100μmのフィルムである。保護・保持層102は、他の層の熱可塑性合成樹脂の成形や溶断を助けると共に、成形後の帯状立体装飾片100を保持する役割を担う。
【0047】
上層103:ポリ塩化ビニル、ポリウレタン等の軟質の熱可塑性合成樹脂フィルムや、金属蒸着を施した金属蒸着積層フィルム。上層103には、適宜着色や模様等を印刷することができる。印刷は、ロールスクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷等を例示できる。また、金属蒸着層の下面に接着剤層を介在させて移染防止フィルム、熱可塑性合成樹脂フィルムを積層したフィルムであってもよい。移染防止フィルムとしてエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)を例示できる。移染防止フィルムは、衣服等の染料が帯状立体装飾片100の表面に移染することを防止する。
【0048】
下層104:熱可塑性合成樹脂の軟質シート。軟質ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)を例示できる。
【0049】
図6(a)は、保護・保持層102、上層103及び下層104を積層した3層構造の帯状装飾片材料101の例である。その他、下記の中間層105、接着剤層106、基材107等を加えることで、
図6(b)〜(f)の層構造とした帯状装飾片材料101を構成することができる。
【0050】
中間層105:熱可塑性合成樹脂発泡シート(フォームシート)。
接着剤層106:両面テープ106aやホットメルトフィルム106b。
基材107:布帛、合成皮革、合成樹脂シート。
【0051】
なお、帯状装飾片材料101の幅は要求される帯状立体装飾片100の幅(複数列の場合にはその合計幅)や上電極ロール金型51の幅に合わせて適宜設定することができる。
【0052】
<熱可塑性樹脂の帯状立体装飾片100の製造方法>
上記した製造装置10と、
図6(a)の帯状装飾片材料101を用いた帯状立体装飾片100の製造方法について説明する。
【0053】
製造装置10は、送出ロール21,22,23に保護・保持層102、上層103及び下層104を夫々巻回している。また、初期状態では、シリンダー37を縮小して上側機構31は、下側機構32から離れた状態で位置している。
【0054】
この状態から、まず、保護・保持層102、上層103及び下層104を所定長さ引き出す。引き出された帯状装飾片材料101は、送りローラー35で重ねて、上側機構31と下側機構32の間を通し、送りローラー35を経由して巻取ロール71に先端をテープなどで貼着する。
【0055】
そして、予熱機構40、賦形機構50のヒーターを作動させ、ヒートロール41,42、上電極ロール金型51、下電極金型58を加熱する。また、冷却機構60を作動させて冷却ロール61,62を冷却する。
【0056】
続いて、上変速モーター81、下変速モーター91を作動させると共に、シリンダー37を伸長し、上側機構31を下側機構32に接近させる。また、賦形機構50は、上電極ロール金型51と下電極金型58との間で高周波を連続的に発振し、高周波誘電を行なう。
【0057】
上変速モーター81及び下変速モーター91が作動することで、駆動機構80,90は、送出ロール21,22,23、ヒートロール41,42、上電極ロール金型51、冷却ロール61,62、及び、巻取ロール71を回転させる。
【0058】
送出ロール21,22,23と巻取ロール71が回転することで、送出ロール21,22,23に巻回された保護・保持層102、上層103及び下層104が送り出され、重なった帯状装飾片材料101として加工機構30に供給される。
【0059】
加工機構30では、上流側の予熱機構40において、ヒートロール41,42間で帯状装飾片材料101が加熱を受けて、予熱軟化する。ヒートロール41,42を帯状装飾片材料101の走行方向に回転させることで、帯状装飾片材料101は、予熱軟化を受けつつ、予熱機構40をスムーズに通過する。
【0060】
続く賦形機構50では、予熱軟化された帯状装飾片材料101が上電極ロール金型51と下電極金型58との間で高周波誘電加熱を受け、上電極ロール金型51の模様52に賦形すると共に、溶断刃54によって所定幅に切断される。なお、保護・保持層102は、溶断は受けない。
【0061】
賦形機構50では、上電極ロール金型51を帯状装飾片材料101の走行方向に回転させることで、スムーズに帯状装飾片材料101を走行させることができ、賦形と溶断を効率的に行なうことができる。
【0062】
図7(a)は、
図5(a)の上電極ロール金型51によりジグザグ模様が転写された帯状立体装飾片100である。
図7(b)は、
図5(b)の上電極ロール金型51によりかまぼこ形の断面に形成された帯状立体装飾片100である。
図7(c)は、
図5(c)の上電極ロール金型51により筋状の凹みがライン模様として形成された断面を有する帯状立体装飾片100である。
図5(a)〜(c)の上電極ロール金型51は、夫々5列の溶断刃54を具えるから、
図7(a)〜(c)の帯状立体装飾片100を4列同時に形成することができ、これらは1枚の保護・保持層102により保持された状態で得られる。
【0063】
この後、下流側の冷却機構60の冷却ロール61,62間に帯状立体装飾片100は侵入し、冷却を受けて形状が固定される。そして、下流側の巻取機構70において巻取ロール71に巻き取ることで、巻取ロール71に巻き取られた形態の長尺の帯状立体装飾片100を得ることができる。
【0064】
得られた帯状立体装飾片100は、使用時に保護・保持層102から不要部分である耳を除去し、適当な長さにカットして車、バイク、ボート、家電、ゲーム機、衣類、バッグ、帽子などの被着体に装着すればよい。
【0065】
本発明によれば、帯状装飾片材料101を、回転するヒートロール41,42、回転する上電極ロール金型51と下電極金型58、回転する冷却ロール61,62間に順次送り込み、ヒートロール41,42で予熱軟化し、上電極ロール金型51と下電極金型58で高周波誘電加熱により連続して賦形し、さらに、冷却ロール61,62で形状固定することで、長尺の帯状立体装飾片100を容易に製造することができる。
【0066】
図8は、より複雑な縞織金線柄の模様を付した帯状立体装飾片100の一例である。また、帯状立体装飾片100は、
図9に示すように、布帛からなる基材107に縫い代を残して溶着することもできる。
【0067】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【0068】
たとえば、
図10乃至
図12は、駆動機構の異なる実施形態を示す図である。図に示すように、上駆動機構80は、上ヒートロール41、上電極ロール金型51及び上冷却ロール61の端縁にプーリ86a,86b,86cを具える。プーリ86bは2本溝プーリである。そして、上変速モーター81とプーリ86bをVベルト85で連繋し、プーリ86a,86b、プーリ86b,86cを同じくVベルト85a,85bで連繋している。上変速モーター81を駆動することで、上ヒートロール41、上電極ロール金型51及び上冷却ロール61が同方向に同期して回転する。
【0069】
また、下駆動機構90は、下ヒートロール42と下冷却ロール62の端縁及びこれら間にプーリ96a,96b,96cを具える。プーリ96a,96b,96cはそれぞれ2本溝プーリである。そして、下変速モーター91とプーリ96bをVベルト95、プーリ96a,96b、プーリ96b,96cをVベルト95a,95bで連繋している。なお、送出ロール23等や巻取ロール71は、
図1等と同様にVベルト26,74で連繋している。これにより、下変速モーター91を駆動することで、下ヒートロール42、下冷却ロール62、送出ロール21〜23、巻取ロール71が同方向に同期して回転する。