特許第6847610号(P6847610)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6847610
(24)【登録日】2021年3月5日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/26 20060101AFI20210315BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20210315BHJP
   H01L 21/268 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   H01L21/26 Q
   H01L21/265 602B
   H01L21/268 Z
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-179382(P2016-179382)
(22)【出願日】2016年9月14日
(65)【公開番号】特開2018-46141(P2018-46141A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2019年6月24日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】山田 隆泰
(72)【発明者】
【氏名】阿部 誠
(72)【発明者】
【氏名】布施 和彦
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 純
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 真治
【審査官】 鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−003050(JP,A)
【文献】 特開2013−161934(JP,A)
【文献】 特開2010−045113(JP,A)
【文献】 特開2012−191110(JP,A)
【文献】 特開2014−135507(JP,A)
【文献】 特開2008−182228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/26
H01L 21/265
H01L 21/268
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にフラッシュ光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、
基板を収容するチャンバーと、
前記チャンバーの内壁面に取り付けられたリング状の支持部材と、
前記支持部材に支持された板状の石英のサセプタと、
前記サセプタに支持された基板にフラッシュ光を照射するフラッシュランプと、
前記サセプタおよび前記支持部材によって仕切られた前記チャンバー内の上部空間にアンモニアを供給する第1ガス供給機構と、
前記サセプタおよび前記支持部材によって仕切られた前記チャンバー内の下部空間に窒素を供給する第2ガス供給機構と、
を備えることを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の熱処理装置において、
前記支持部材は、前記チャンバーの内壁面の上部を覆うように着脱自在に取り付けられることを特徴とする熱処理装置。
【請求項3】
請求項2記載の熱処理装置において、
前記支持部材の内周面は鏡面とされることを特徴とする熱処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の熱処理装置において、
前記支持部材は、アルミニウムまたはステンレススチールにて形成されることを特徴とする熱処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の熱処理装置において、
前記サセプタに支持された基板に前記フラッシュランプとは反対側から光を照射するハロゲンランプをさらに備えることを特徴とする熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハー等の薄板状精密電子基板(以下、単に「基板」と称する)に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいて、不純物導入は半導体ウェハー内にpn接合を形成するための必須の工程である。現在、不純物導入は、イオン打ち込み法とその後のアニール法によってなされるのが一般的である。イオン打ち込み法は、ボロン(B)、ヒ素(As)、リン(P)といった不純物の元素をイオン化させて高加速電圧で半導体ウェハーに衝突させて物理的に不純物注入を行う技術である。注入された不純物はアニール処理によって活性化される。この際に、アニール時間が数秒程度以上であると、打ち込まれた不純物が熱によって深く拡散し、その結果接合深さが要求よりも深くなり過ぎて良好なデバイス形成に支障が生じるおそれがある。
【0003】
そこで、極めて短時間で半導体ウェハーを加熱するアニール技術として、近年フラッシュランプアニール(FLA)が注目されている。フラッシュランプアニールは、キセノンフラッシュランプ(以下、単に「フラッシュランプ」とするときにはキセノンフラッシュランプを意味する)を使用して半導体ウェハーの表面にフラッシュ光を照射することにより、不純物が注入された半導体ウェハーの表面のみを極めて短時間(数ミリ秒以下)に昇温させる熱処理技術である。
【0004】
キセノンフラッシュランプの放射分光分布は紫外域から近赤外域であり、従来のハロゲンランプよりも波長が短く、シリコンの半導体ウェハーの基礎吸収帯とほぼ一致している。よって、キセノンフラッシュランプから半導体ウェハーにフラッシュ光を照射したときには、透過光が少なく半導体ウェハーを急速に昇温することが可能である。また、数ミリ秒以下の極めて短時間のフラッシュ光照射であれば、半導体ウェハーの表面近傍のみを選択的に昇温できることも判明している。このため、キセノンフラッシュランプによる極短時間の昇温であれば、不純物を深く拡散させることなく、不純物活性化のみを実行することができるのである。
【0005】
このようなキセノンフラッシュランプを使用した熱処理装置として、特許文献1には、石英製のサセプタ上に支持した半導体ウェハーにフラッシュ加熱を行う技術が開示されている。特許文献1に開示の装置では、サセプタ上に載置した半導体ウェハーの下面からハロゲンランプが光照射を行って予備加熱した後、ウェハー表面にフラッシュランプからフラッシュ光を照射してフラッシュ加熱を行う。また、特許文献1に開示の装置においては、半導体ウェハーを収容するチャンバーに支持された基台とサセプタとを複数の連結部によって連結してサセプタを設置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−191110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されるような熱処理装置においては、密閉されたチャンバー内に半導体ウェハーを収容して加熱処理を行っており、そのチャンバーの床部分を構成する下側チャンバー窓にパーティクルが堆積しやすい。フラッシュランプは大きなエネルギーを有するフラッシュ光を瞬間的に照射するため、照射時にチャンバーにも衝撃を与えて下側チャンバー窓に堆積されたパーティクルを巻き上げることがある。フラッシュ光照射によって巻き上げられたパーティクルが半導体ウェハーの表面に付着すると当該半導体ウェハーが汚染されるという問題が生じる。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、フラッシュ光照射時の基板の汚染を防止することができる熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、基板にフラッシュ光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置において、基板を収容するチャンバーと、前記チャンバーの内壁面に取り付けられたリング状の支持部材と、前記支持部材に支持された板状の石英のサセプタと、前記サセプタに支持された基板にフラッシュ光を照射するフラッシュランプと、前記サセプタおよび前記支持部材によって仕切られた前記チャンバー内の上部空間にアンモニアを供給する第1ガス供給機構と、前記サセプタおよび前記支持部材によって仕切られた前記チャンバー内の下部空間に窒素を供給する第2ガス供給機構と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る熱処理装置において、前記支持部材は、前記チャンバーの内壁面の上部を覆うように着脱自在に取り付けられることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3の発明は、請求項2の発明に係る熱処理装置において、前記支持部材の内周面は鏡面とされることを特徴とする。
【0012】
また、請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれかの発明に係る熱処理装置において、前記支持部材は、アルミニウムまたはステンレススチールにて形成されることを特徴とする。
【0013】
また、請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれかの発明に係る熱処理装置において、前記サセプタに支持された基板に前記フラッシュランプとは反対側から光を照射するハロゲンランプをさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1から請求項5の発明によれば、基板を収容するチャンバーの内壁面に取り付けられたリング状の支持部材に板状のサセプタを支持しているため、チャンバー内が上下2つの空間に分離され、フラッシュ光照射時に下部空間に巻き上げられたパーティクルが基板の表面に付着して当該基板を汚染するを防止することができる。
【0015】
特に、請求項3の発明によれば、支持部材の内周面が鏡面とされているため、フラッシュランプから出射されたフラッシュ光が支持部材の内周面で反射されて基板の表面に到達することとなり、基板の表面温度をさらに昇温することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る熱処理装置の構成を示す縦断面図である。
図2】支持部の斜視図である。
図3】サセプタの平面図である。
図4】サセプタの断面図である。
図5】移載機構の平面図である。
図6】移載機構の側面図である。
図7】複数のハロゲンランプの配置を示す平面図である。
図8】支持部の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る熱処理装置1の構成を示す縦断面図である。本実施形態の熱処理装置1は、基板として円板形状の半導体ウェハーWに対してフラッシュ光照射を行うことによってその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。処理対象となる半導体ウェハーWのサイズは特に限定されるものではないが、例えばφ300mmやφ450mmである。なお、図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0019】
熱処理装置1は、半導体ウェハーWを収容するチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するフラッシュ加熱部5と、複数のハロゲンランプHLを内蔵するハロゲン加熱部4と、を備える。チャンバー6の上側にフラッシュ加熱部5が設けられるとともに、下側にハロゲン加熱部4が設けられている。また、熱処理装置1は、チャンバー6の内部に、半導体ウェハーWを水平姿勢に保持するサセプタ74と、サセプタ74と装置外部との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う移載機構10と、を備える。さらに、熱処理装置1は、ハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6に設けられた各動作機構を制御して半導体ウェハーWの熱処理を実行させる制御部3を備える。
【0020】
チャンバー6は、筒状のチャンバー側部61の上下に石英製のチャンバー窓を装着して構成されている。チャンバー側部61は上下が開口された概略筒形状を有しており、上側開口には上側チャンバー窓63が装着されて閉塞され、下側開口には下側チャンバー窓64が装着されて閉塞されている。チャンバー6の天井部を構成する上側チャンバー窓63は、石英により形成された円板形状部材であり、フラッシュ加熱部5から出射されたフラッシュ光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。上側チャンバー窓63の下面周縁部とチャンバー側部61との間にOリングを挟み込むとともに、クランプリング62を上側チャンバー窓63の上面周縁部に当接させ、そのクランプリング62をチャンバー側部61にネジ止めすることによって、上側チャンバー窓63をチャンバー6に装着している。また、チャンバー6の床部を構成する下側チャンバー窓64も、石英により形成された円板形状部材であり、ハロゲン加熱部4からの光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。
【0021】
また、チャンバー側部61の内壁面にはリング状の支持部68が取り付けられている。図2は、支持部68の斜視図である。支持部68は円環形状に形成されている。図2には、支持部68の断面形状の理解のため、支持部68の一部の斜視図を示している。支持部68は、チャンバー側部61の上側から嵌め込むことによって装着される。すなわち、支持部68は着脱自在にチャンバー6の内壁面に取り付けられている。図1に示すように、支持部68をチャンバー6に装着することによって、チャンバー6の内壁面の上部がリング状の支持部68によって覆われることとなる。
【0022】
支持部68は、アルミニウムまたはステンレススチールにて形成される。また、支持部68の内周面は、電解ニッケルメッキによって鏡面とされている。また、支持部68には、周方向に沿って一部にスリット69が設けられている。
【0023】
図1に示すように、支持部68の内周下端に突設された鍔部によってサセプタ74の周縁部が支持される。すなわち、サセプタ74は支持部68によって吊り下げられるように支持される。図3は、サセプタ74の平面図である。また、図4は、サセプタ74の断面図である。サセプタ74は、保持プレート75、ガイドリング76および複数の基板支持ピン77を備える。保持プレート75は、石英にて形成された略円形の平板状部材である。保持プレート75の直径は半導体ウェハーWの直径よりも大きい。すなわち、保持プレート75は、半導体ウェハーWよりも大きな平面サイズを有する。
【0024】
保持プレート75の上面周縁部にガイドリング76が設置されている。ガイドリング76は、半導体ウェハーWの直径よりも大きな内径を有する円環形状の部材である。例えば、半導体ウェハーWの直径がφ300mmの場合、ガイドリング76の内径はφ320mmである。ガイドリング76の内周は、保持プレート75から上方に向けて広くなるようなテーパ面とされている。ガイドリング76は、保持プレート75と同様の石英にて形成される。ガイドリング76は、保持プレート75の上面に溶着するようにしても良いし、別途加工したピンなどによって保持プレート75に固定するようにしても良い。或いは、保持プレート75とガイドリング76とを一体の部材として加工するようにしても良い。
【0025】
保持プレート75の上面のうちガイドリング76よりも内側の領域が半導体ウェハーWを保持する平面状の保持面75aとされる。保持プレート75の保持面75aには、複数の基板支持ピン77が立設されている。本実施形態においては、保持面75aの外周円(ガイドリング76の内周円)と同心円の周上に沿って30°毎に計12個の基板支持ピン77が立設されている。12個の基板支持ピン77を配置した円の径(対向する基板支持ピン77間の距離)は半導体ウェハーWの径よりも小さく、半導体ウェハーWの径がφ300mmであればφ270mm〜φ280mm(本実施形態ではφ280mm)である。それぞれの基板支持ピン77は石英にて形成されている。複数の基板支持ピン77は、保持プレート75の上面に溶接によって設けるようにしても良いし、保持プレート75と一体に加工するようにしても良い。
【0026】
このような略平板状のサセプタ74がチャンバー6に装着された支持部68に支持されることによって、サセプタ74の保持プレート75は水平姿勢(法線が鉛直方向と一致する姿勢)となる。すなわち、保持プレート75の保持面75aは水平面となる。
【0027】
チャンバー6に搬入された半導体ウェハーWは、サセプタ74の上に水平姿勢にて載置されて保持される。このとき、半導体ウェハーWは保持プレート75上に立設された12個の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。より厳密には、12個の基板支持ピン77の上端部が半導体ウェハーWの下面に接触して当該半導体ウェハーWを支持する。12個の基板支持ピン77の高さ(基板支持ピン77の上端から保持プレート75の保持面75aまでの距離)は均一であるため、12個の基板支持ピン77によって半導体ウェハーWを水平姿勢に支持することができる。
【0028】
また、半導体ウェハーWは複数の基板支持ピン77によって保持プレート75の保持面75aから所定の間隔を隔てて支持されることとなる。基板支持ピン77の高さよりもガイドリング76の厚さの方が大きい。従って、複数の基板支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの水平方向の位置ずれはガイドリング76によって防止される。
【0029】
本実施形態では、リング状の支持部68に支持された円板形状のサセプタ74によって半導体ウェハーWが支持されるため、半導体ウェハーWの周囲はウェハー中心を軸として対称的な形状の構造となる。
【0030】
また、図1に示すように、サセプタ74がチャンバー6の内壁面に取り付けられた支持部68に支持されることによって、チャンバー6の空間が上下に二分される。上側チャンバー窓63、サセプタ74および支持部68によって囲まれる空間が上部空間65として規定される。一方、下側チャンバー窓64、サセプタ74およびチャンバー側部61によって囲まれる空間が下部空間67として規定される。
【0031】
また、図3に示すように、サセプタ74の保持プレート75には、上下に貫通して開口部78が形成されている。開口部78は、放射温度計120(図1参照)がサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの下面から放射される放射光(赤外光)を受光するために設けられている。すなわち、放射温度計120が開口部78を介してサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの下面から放射された赤外光を受光し、別置のディテクタによってその半導体ウェハーWの温度が測定される。さらに、サセプタ74の保持プレート75には、後述する移載機構10のリフトピン12が半導体ウェハーWの受け渡しのために貫通する4個の貫通孔79が穿設されている。
【0032】
図1に戻り、チャンバー側部61には、チャンバー6に対して半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部(炉口)66が形設されている。搬送開口部66は、ゲートバルブ185によって開閉可能とされている。上述した支持部68のスリット69は搬送開口部66に臨む位置に設けられている。換言すれば、スリット69が搬送開口部66に対向するように支持部68はチャンバー6の内壁面に取り付けられる。ゲートバルブ185が搬送開口部66を開放しているときには、搬送開口部66から支持部68のスリット69を通過して上部空間65への半導体ウェハーWの搬入を行うことができる。また、スリット69から搬送開口部66を通過して上部空間65からの半導体ウェハーWの搬出を行うことができる。一方、ゲートバルブ185が搬送開口部66を閉鎖するとチャンバー6内の上部空間65および下部空間67が密閉空間とされる。
【0033】
また、熱処理装置1は、上部空間65および下部空間67のそれぞれに処理ガスを供給する第1ガス供給機構81および第2ガス供給機構85を備える。第1ガス供給機構81は、ガス供給管82、バルブ83および第1処理ガス供給源84を備える。ガス供給管82の先端は支持部68の上端と上側チャンバー窓63との間の隙間を介して上部空間65に連通接続され、ガス供給管82の基端は第1処理ガス供給源84に接続されている。ガス供給管82の経路途中にはバルブ83が介挿されている。バルブ83が開放されると、第1処理ガス供給源84からガス供給管82を介して上部空間65に処理ガスが供給される。
【0034】
一方、第2ガス供給機構85は、ガス供給管86、バルブ87および第2処理ガス供給源88を備える。ガス供給管86の先端は支持部68の下方にて下部空間67に連通接続され、ガス供給管86の基端は第2処理ガス供給源88に接続されている。ガス供給管86の経路途中にはバルブ87が介挿されている。バルブ87が開放されると、第2処理ガス供給源88からガス供給管86を介して下部空間67に処理ガスが供給される。第1ガス供給機構81および第2ガス供給機構85が供給する処理ガスとしては、窒素(N)等の不活性ガス、または、水素(H)、アンモニア(NH)等の反応性ガスを用いることができる。
【0035】
熱処理装置1は、上部空間65および下部空間67から気体を排気する排気機構90を備える。排気機構90は、排気管91、バルブ92および排気部93を備える。排気管91の先端は搬送開口部66に連通接続され、排気管91の基端は排気部93に接続されている。排気管91の経路途中にはバルブ92が介挿されている。排気部93としては排気ポンプ等を用いることができる。排気部93を作動させつつバルブ92を開放すると、上部空間65の気体は支持部68のスリット69を通って搬送開口部66から排気管91へと排出される。また、下部空間67の気体も搬送開口部66から排気管91へと排出される。すなわち、第1ガス供給機構81および第2ガス供給機構85はそれぞれ上部空間65および下部空間67に専用の給気機構であるのに対して、排気機構90は第1ガス供給機構81および第2ガス供給機構85に共用される機構である。
【0036】
図5は、移載機構10の平面図である。また、図6は、移載機構10の側面図である。移載機構10は、2本の移載アーム11を備える。移載アーム11は、概ね円環状のチャンバー側部61の内壁に沿うような円弧形状とされている。それぞれの移載アーム11には2本のリフトピン12が立設されている。各移載アーム11は水平移動機構13によって回動可能とされている。水平移動機構13は、一対の移載アーム11をサセプタ74に対して半導体ウェハーWの移載を行う移載動作位置(図5の実線位置)とサセプタ74に保持された半導体ウェハーWと平面視で重ならない退避位置(図5の二点鎖線位置)との間で水平移動させる。水平移動機構13としては、個別のモータによって各移載アーム11をそれぞれ回動させるものであっても良いし、リンク機構を用いて1個のモータによって一対の移載アーム11を連動させて回動させるものであっても良い。
【0037】
また、一対の移載アーム11は、昇降機構14によって水平移動機構13とともに昇降移動される。昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて上昇させると、計4本のリフトピン12がサセプタ74に穿設された貫通孔79(図3参照)を通過し、リフトピン12の上端がサセプタ74の上面から突き出る。一方、昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて下降させてリフトピン12を貫通孔79から抜き取り、水平移動機構13が一対の移載アーム11を開くように移動させると各移載アーム11が退避位置に移動する。一対の移載アーム11の退避位置は、支持部68の下方である。なお、移載機構10の駆動部(水平移動機構13および昇降機構14)が設けられている部位の近傍にも図示省略の排気機構が設けられており、移載機構10の駆動部周辺の雰囲気がチャンバー6の外部に排出されるように構成されている。
【0038】
図1に戻り、チャンバー6の上方に設けられたフラッシュ加熱部5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。フラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光は上側チャンバー窓63を透過して上部空間65に照射される。
【0039】
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向がサセプタ74に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
【0040】
キセノンフラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。このようなキセノンフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし100ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、ハロゲンランプHLの如き連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。すなわち、フラッシュランプFLは、1秒未満の極めて短い時間で瞬間的に発光するパルス発光ランプである。なお、フラッシュランプFLの発光時間は、フラッシュランプFLに電力供給を行うランプ電源のコイル定数によって調整することができる。
【0041】
また、リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光をチャンバー6の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
【0042】
チャンバー6の下方に設けられたハロゲン加熱部4は、筐体41の内側に複数本(本実施形態では40本)のハロゲンランプHLを内蔵している。ハロゲン加熱部4は、複数のハロゲンランプHLによってチャンバー6の下方から下側チャンバー窓64を介して光照射を行って半導体ウェハーWを加熱する光照射部である。
【0043】
図7は、複数のハロゲンランプHLの配置を示す平面図である。40本のハロゲンランプHLは上下2段に分けて配置されている。チャンバー6に近い上段に20本のハロゲンランプHLが配設されるとともに、上段よりもチャンバー6から遠い下段にも20本のハロゲンランプHLが配設されている。各ハロゲンランプHLは、長尺の円筒形状を有する棒状ランプである。上段、下段ともに20本のハロゲンランプHLは、それぞれの長手方向がサセプタ74に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように配列されている。よって、上段、下段ともにハロゲンランプHLの配列によって形成される平面は水平面である。
【0044】
また、図7に示すように、上段、下段ともにサセプタ74に保持される半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域におけるハロゲンランプHLの配設密度が高くなっている。すなわち、上下段ともに、ランプ配列の中央部よりも周縁部の方がハロゲンランプHLの配設ピッチが短い。このため、ハロゲン加熱部4からの光照射による加熱時に温度低下が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部により多い光量の照射を行うことができる。
【0045】
また、上段のハロゲンランプHLからなるランプ群と下段のハロゲンランプHLからなるランプ群とが格子状に交差するように配列されている。すなわち、上段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向と下段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向とが互いに直交するように計40本のハロゲンランプHLが配設されている。
【0046】
ハロゲンランプHLは、ガラス管内部に配設されたフィラメントに通電することでフィラメントを白熱化させて発光させるフィラメント方式の光源である。ガラス管の内部には、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲン元素(ヨウ素、臭素等)を微量導入した気体が封入されている。ハロゲン元素を導入することによって、フィラメントの折損を抑制しつつフィラメントの温度を高温に設定することが可能となる。したがって、ハロゲンランプHLは、通常の白熱電球に比べて寿命が長くかつ強い光を連続的に照射できるという特性を有する。すなわち、ハロゲンランプHLは少なくとも1秒以上連続して発光する連続点灯ランプである。また、ハロゲンランプHLは棒状ランプであるため長寿命であり、ハロゲンランプHLを水平方向に沿わせて配置することにより上方の半導体ウェハーWへの放射効率が優れたものとなる。
【0047】
また、ハロゲン加熱部4の筐体41内にも、2段のハロゲンランプHLの下側にリフレクタ43が設けられている(図1)。リフレクタ43は、複数のハロゲンランプHLから出射された光をチャンバー6の側に反射する。
【0048】
制御部3は、熱処理装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行う回路であるCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えている。制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理装置1における処理が進行する。
【0049】
上記の構成以外にも熱処理装置1は、半導体ウェハーWの熱処理時にハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLから発生する熱エネルギーによるハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、チャンバー6の壁体には水冷管(図示省略)が設けられている。また、ハロゲン加熱部4およびフラッシュ加熱部5は、内部に気体流を形成して排熱する空冷構造とされている。
【0050】
次に、熱処理装置1における半導体ウェハーWの処理手順について説明する。ここで処理対象となる半導体ウェハーWはイオン注入法により不純物(イオン)が添加された半導体基板である。その不純物の活性化が熱処理装置1によるフラッシュ光照射加熱処理(アニール)により実行される。以下に説明する熱処理装置1の処理手順は、制御部3が熱処理装置1の各動作機構を制御することにより進行する。
【0051】
まず、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、装置外部の搬送ロボットにより搬送開口部66を介して半導体ウェハーWがチャンバー6内に搬入される。当該搬送ロボットは半導体ウェハーWを保持する搬送アームを搬送開口部66から支持部68のスリット69を通して上部空間65に挿入する。搬送ロボットは搬送アームをサセプタ74の直上位置にまで進出させて停止させる。そして、移載機構10の一対の移載アーム11が退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12が貫通孔79を通ってサセプタ74の保持プレート75の上面から突き出て搬送アームから半導体ウェハーWを受け取る。このとき、リフトピン12は基板支持ピン77の上端よりも上方にまで上昇する。
【0052】
半導体ウェハーWがリフトピン12に載置された後、搬送ロボットが空になった搬送アームを上部空間65からスリット69および搬送開口部66を通して退出させ、その後ゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖される。そして、一対の移載アーム11が下降することにより、半導体ウェハーWは移載機構10からサセプタ74に受け渡されて水平姿勢にて下方より保持される。半導体ウェハーWは、保持プレート75上に立設された複数の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。また、半導体ウェハーWは、パターン形成がなされて不純物が注入された表面を上面としてサセプタ74に支持される。複数の基板支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの裏面(表面とは反対側の主面)と保持プレート75の保持面75aとの間には所定の間隔が形成される。サセプタ74の下方にまで下降した一対の移載アーム11は水平移動機構13によって退避位置に退避する。
【0053】
また、ゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖されて熱処理空間65が密閉空間とされた後、チャンバー6内の雰囲気調整が行われる。具体的には、バルブ83が開放されて第1ガス供給機構81から上部空間65に処理ガスを供給するとともに、バルブ87が開放されて第2ガス供給機構85から下部空間67に処理ガスを供給する。本実施形態では、第1ガス供給機構81および第2ガス供給機構85ともに処理ガスとして窒素をそれぞれ上部空間65および下部空間67に供給する。
【0054】
また、バルブ92が開放されて上部空間65および下部空間67内の気体が排気される。これにより、上部空間65および下部空間67が窒素雰囲気に置換される。また、図示省略の排気機構によって移載機構10の駆動部周辺の雰囲気も排気される。
【0055】
上部空間65および下部空間67内が窒素雰囲気に置換され、半導体ウェハーWがサセプタ74によって水平姿勢にて下方より支持された後、ハロゲン加熱部4の40本のハロゲンランプHLが一斉に点灯して予備加熱(アシスト加熱)が開始される。ハロゲンランプHLから出射されたハロゲン光は、石英にて形成された下側チャンバー窓64およびサセプタ74を透過して半導体ウェハーWの裏面から照射される。ハロゲンランプHLからの光照射を受けることによって半導体ウェハーWが予備加熱されて温度が上昇する。なお、移載機構10の移載アーム11は退避位置に退避しているため、ハロゲンランプHLによる加熱の障害となることは無い。
【0056】
ハロゲンランプHLによる予備加熱を行うときには、半導体ウェハーWの温度が放射温度計120によって測定されている。すなわち、サセプタ74に保持された半導体ウェハーWの裏面から開口部78を介して放射された赤外光を放射温度計120が受光して昇温中のウェハー温度を測定する。測定された半導体ウェハーWの温度は制御部3に伝達される。制御部3は、ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウェハーWの温度が所定の予備加熱温度T1に到達したか否かを監視しつつ、ハロゲンランプHLの出力を制御する。すなわち、制御部3は、放射温度計120による測定値に基づいて、半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1となるようにハロゲンランプHLの出力をフィードバック制御する。予備加熱温度T1は、200℃ないし800℃程度、好ましくは350℃ないし600℃程度とされる(本実施の形態では600℃)。
【0057】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した後、制御部3は半導体ウェハーWをその予備加熱温度T1に暫時維持する。具体的には、放射温度計120によって測定される半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した時点にて制御部3がハロゲンランプHLの出力を調整し、半導体ウェハーWの温度をほぼ予備加熱温度T1に維持している。
【0058】
このようなハロゲンランプHLによる予備加熱を行うことによって、半導体ウェハーWの全体を予備加熱温度T1に均一に昇温している。ハロゲンランプHLによる予備加熱の段階においては、より放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部の温度が中央部よりも低下する傾向にあるが、ハロゲン加熱部4におけるハロゲンランプHLの配設密度は、半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域の方が高くなっている。このため、放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部に照射される光量が多くなり、予備加熱段階における半導体ウェハーWの面内温度分布を均一なものとすることができる。
【0059】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達して所定時間が経過した時点にてフラッシュ加熱部5のフラッシュランプFLが半導体ウェハーWの表面にフラッシュ光照射を行う。このとき、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接にチャンバー6内へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ52により反射されてからチャンバー6内へと向かい、これらのフラッシュ光の照射により半導体ウェハーWのフラッシュ加熱が行われる。
【0060】
フラッシュ加熱は、フラッシュランプFLからのフラッシュ光(閃光)照射により行われるため、半導体ウェハーWの表面温度を短時間で上昇することができる。すなわち、フラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光は、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された、照射時間が0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の極めて短く強い閃光である。そして、フラッシュランプFLからのフラッシュ光照射によりフラッシュ加熱される半導体ウェハーWの表面温度は、瞬間的に1000℃以上の処理温度T2まで上昇し、半導体ウェハーWに注入された不純物が活性化された後、表面温度が急速に下降する。このように、熱処理装置1では、半導体ウェハーWの表面温度を極めて短時間で昇降することができるため、半導体ウェハーWに注入された不純物の熱による拡散を抑制しつつ不純物の活性化を行うことができる。なお、不純物の活性化に必要な時間はその熱拡散に必要な時間に比較して極めて短いため、0.1ミリセカンドないし100ミリセカンド程度の拡散が生じない短時間であっても活性化は完了する。
【0061】
フラッシュ加熱処理が終了した後、所定時間経過後にハロゲンランプHLが消灯する。これにより、半導体ウェハーWが予備加熱温度T1から急速に降温する。降温中の半導体ウェハーWの温度は放射温度計120によって測定され、その測定結果は制御部3に伝達される。制御部3は、放射温度計120の測定結果より半導体ウェハーWの温度が所定温度まで降温したか否かを監視する。そして、半導体ウェハーWの温度が所定以下にまで降温した後、移載機構10の一対の移載アーム11が再び退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12がサセプタ74の上面から突き出て熱処理後の半導体ウェハーWをサセプタ74から受け取る。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、装置外部の搬送ロボットが搬送アームを搬送開口部66から支持部68のスリット69を通してリフトピン12上に載置された半導体ウェハーWの下方にまで進出させる。この状態で一対の移載アーム11が下降することにより、半導体ウェハーWはリフトピン12から搬送ロボットの搬送アームに受け渡される。そして、搬送ロボットが半導体ウェハーWを保持した搬送アームを上部空間65から退出させることにより、半導体ウェハーWが熱処理装置1から搬出されて熱処理装置1における半導体ウェハーWの加熱処理が完了する。
【0062】
本実施形態においては、チャンバー6の内壁面にリング状の支持部68を取り付け、その支持部68によってサセプタ74を支持している。サセプタ74に半導体ウェハーWが載置されると、開口部78および貫通孔79等の孔は半導体ウェハーWによって覆われる。従って、サセプタ74に半導体ウェハーWが支持された状態では、上部空間65と下部空間67とが概ね分離されることとなる。
【0063】
ところで、チャンバー6内においては、移載機構10の駆動部等から若干のパーティクルが発生することがある。チャンバー6内にて発生したパーティクルは、特にチャンバー6の床部である下側チャンバー窓64上に堆積しやすい。また、フラッシュランプFLは、大きなエネルギーを有するフラッシュ光を0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の極めて照射時間で瞬間的に照射するため、フラッシュ光照射時にはチャンバー6にも衝撃を与える。フラッシュ加熱時にチャンバー6に衝撃が与えられると、下側チャンバー窓64に堆積したパーティクルがチャンバー6内の下部空間67に巻き上がるのであるが、上部空間65と下部空間67とは分離されているため、下部空間67に巻き上がったパーティクルが上部空間65に流れ込むことは防止される。その結果、フラッシュ光照射時に巻き上げられたパーティクルが半導体ウェハーWの表面に付着して当該半導体ウェハーWを汚染するのを防止することができる。
【0064】
また、支持部68の内周面は、ニッケルメッキによって鏡面とされている。これにより、フラッシュ光照射時にはフラッシュランプFLから出射されて支持部68に到達したフラッシュ光が支持部68の内周面によって反射されて半導体ウェハーWの表面に照射されることとなる。その結果、フラッシュ光照射時に半導体ウェハーWの表面に到達するフラッシュ光の光量が増加することとなり、半導体ウェハーWの表面温度の上昇をさらに大きくすることができる。
【0065】
また、本実施形態においては、チャンバー6の内壁面に取り付けた支持部68に平板状のサセプタ74を支持するだけの簡素な構造としている。このため、サセプタ74の製造工程では、低コストおよび短納期とすることができる。
【0066】
また、本実施形態では、チャンバー6の内壁面に取り付けられたリング状の支持部68に支持された円板形状のサセプタ74によって半導体ウェハーWが支持されている。このため、半導体ウェハーWの周囲は対称的な形状の構造となっている。その結果、フラッシュ光照射時の半導体ウェハーWの表面におけるフラッシュ光の照度分布の面内均一性が向上し、温度分布の面内均一性も良好なものとすることができる。また、半導体ウェハーWの周囲が対称的な形状の構造であれば、上部空間65における処理ガスの流れも対称的となり、これによっても半導体ウェハーWの面内温度分布の均一性が向上する。
【0067】
さらに、支持部68は着脱自在にチャンバー6の内壁面に取り付けられている。このため、昇温した半導体ウェハーWから放出された物質が付着して支持部68が変色して汚染された場合であっても、容易に支持部68を交換して対処することができる。
【0068】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においては、リング状の支持部68によってチャンバー6の内壁面の上部が覆われてサセプタ74が支持部68に吊り下げられるように支持されていたが、サセプタ74は必ずしも吊り下げられていなくても良い。図8は、支持部の他の例を示す図である。図8において、図1と同一の要素については同一の符合を付している。図8に示す構成が図1と相違するのは支持部の形状である。
【0069】
図8に示す構成においては、リング状の支持部168がチャンバー6の内壁面から突出するように設けられている。支持部168は、着脱自在にチャンバー6の内壁面に取り付けられているものの、チャンバー6の内壁面の上部は支持部168によって覆われていない。よって、サセプタ74は吊り下げられるように支持されるのではなく、支持部68の上面に載せられようにしてサセプタ74の周縁部が支持されている。
【0070】
図8のような構成においても、サセプタ74に半導体ウェハーWが支持された状態では、上部空間65と下部空間67とが概ね分離されることとなる。このため、上記実施形態と同様に、フラッシュ光照射時に巻き上げられたパーティクルが上部空間65に流れ込んで半導体ウェハーWの表面に付着して当該半導体ウェハーWを汚染するのを防止することができる。要するに、チャンバー6の内壁面に取り付けられたリング状の支持部材によって板状のサセプタ74を支持する形態であれば良い。
【0071】
また、上記実施形態においては、上部空間65および下部空間67ともに窒素が供給されていたが、上部空間65と下部空間67とに異なる種類の処理ガスを供給するようにしても良い。例えば、処理対象となる半導体ウェハーWが高誘電率膜(High-k膜)を形成した半導体基板等である場合には、第1ガス供給機構81が上部空間65にアンモニアを供給するとともに、第2ガス供給機構85が下部空間67に窒素を供給するようにしても良い。このようにすると、上部空間65がアンモニア雰囲気とされるとともに、下部空間67が窒素雰囲気となるのであるが、上部空間65と下部空間67とが概ね分離されているため、両空間の雰囲気の混合は最小限に抑制される。
【0072】
図1,8に示す構成では、熱処理中の半導体ウェハーWの温度を測定する放射温度計120は下部空間67に設置されている。典型的には、放射温度計120は窒素雰囲気で使用するように校正されているのであるが、アンモニアは放射温度計120が測定に使用する波長域の一部の赤外線を吸収するため、アンモニア雰囲気にて放射温度計120を使用する場合には校正しなおす必要がある。上述のように、半導体ウェハーWが収容される上部空間65はアンモニア雰囲気とされているものの、下部空間67が窒素雰囲気であれば放射温度計120の再校正を行うことなくアンモニア雰囲気で処理される半導体ウェハーWの温度を正確に測定することができる。また、アンモニア雰囲気とされるのは上部空間65のみであるため、アンモニアの消費量を少なくすることができる。
【0073】
また、放射温度計120を上部空間65に設けて半導体ウェハーWの表面の温度を測定するようにしても良い。本実施形態では、チャンバー6の内壁面に取り付けられたリング状の支持部68によって板状のサセプタ74を支持している。支持部68は、アルミニウムまたはステンレススチールにて形成されており、ハロゲンランプHLから出射された光に対して不透明である。従って、サセプタ74に半導体ウェハーWが支持された状態では、ハロゲンランプHLから出射された光は支持部68および半導体ウェハーWによって遮光され、その光が上部空間65に漏れることが抑制される。その結果、上部空間65に設けられた放射温度計120はハロゲンランプHLからの光の影響を受けることなく半導体ウェハーWの温度を測定することができる。
【0074】
また、上記実施形態においては、フラッシュ加熱部5に30本のフラッシュランプFLを備えるようにしていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュランプFLの本数は任意の数とすることができる。また、フラッシュランプFLはキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。また、ハロゲン加熱部4に備えるハロゲンランプHLの本数も40本に限定されるものではなく、任意の数とすることができる。
【0075】
また、上記実施形態においては、ハロゲンランプHLによる予備加熱後に半導体ウェハーWにフラッシュランプFLからフラッシュ光を照射する熱処理装置1に本発明に係る技術を適用していたが、本発明に係る技術はハロゲンランプのみによって半導体ウェハーWを加熱する装置(例えば、スパイクアニール装置、CVD装置等)やレーザーアニール装置に適用しても良い。
【符号の説明】
【0076】
1 熱処理装置
3 制御部
4 ハロゲン加熱部
5 フラッシュ加熱部
6 チャンバー
61 チャンバー側部
63 上側チャンバー窓
64 下側チャンバー窓
65 上部空間
67 下部空間
68,168 支持部
69 スリット
74 サセプタ
75 保持プレート
77 基板支持ピン
81 第1ガス供給機構
85 第2ガス供給機構
90 排気機構
120 放射温度計
FL フラッシュランプ
HL ハロゲンランプ
W 半導体ウェハー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8