(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱可塑性樹脂層として第一の熱可塑性樹脂層および第二の熱可塑性樹脂層を有し、前記第一の熱可塑性樹脂層と前記第二の熱可塑性樹脂層との間に前記紙層が介在している、請求項1〜4のいずれか1項に記載の結束バンド。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。
以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記
載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。
さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨
を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0009】
〔実施形態〕
実施形態の結束バンドは、熱可塑性樹脂層と紙層とが積層された帯状の結束バンドであって、上記熱可塑性樹脂層に含まれる高分子が配向方向に分子配向性を有しており、上記配向方向が、上記結束バンドの短手方向に対して、上記結束バンドの短手方向における切り裂き荷重が上記結束バンドの長手方向における切り裂き荷重よりも小さくなる方向に向いている。このように、実施形態の結束バンドにおいては、配向方向が短手方向に対して特定の方向を向いていることにより、短手方向の切り裂き荷重が長手方向の切り裂き荷重よりも小さくなっている。
【0010】
ここで、配向方向とは、上記のように、高分子が分子配向している方向である。具体的には、配向方向とは、上記熱可塑性樹脂層に含まれる高分子を構成するモノマー単位間の共有結合の多くが向かっている方向である。たとえば、高分子がすべて直線状であり、該高分子がすべて平行に並んでいるならば、この平行方向に沿った向きが配向方向となる。
【0011】
ここで、切り裂き荷重とは、引張試験機を用いた切り裂き荷重試験によって求められる値(単位:N)である。この試験方法について
図1を参照しながら説明する。
【0012】
切り裂き荷重試験の方法:
結束バンドを切断して得られた短冊状の試料片11について、切り裂き荷重を求めようとする方向、すなわち切り裂き荷重試験方向A(たとえば短手方向)と垂直な方向(たとえば長手方向)の端部の中心に、切り裂き荷重試験方向Aに沿って点Bまで約5cmの切り込みを入れる。
【0013】
切り込みによって2つに分かれた端部111、112をチャック201、202にそれぞれ挟み、引張試験機に試料片11をセットする。
【0014】
引張試験機を用いて、チャック202を固定し、引張速度200mm/minで、チャック201を上方向に引張り始め、点Bまでの切り込みがさらに切り裂かれ始めるときの荷重を求める。この値を切り裂き荷重(N)とする。
【0015】
試料片11について、切り裂き荷重試験方向Aが長手方向の場合は、結束バンドを切って長さ10cmの短冊状の試験片11を準備する。一方、切り裂き荷重試験方向Aが短手方向の場合、結束バンドの幅が10cm未満のときは、熱可塑性樹脂層と紙層とが積層された積層体であって、幅を調整する前の積層体から、試験片11を得ることができる。たとえば、切り裂き荷重試験方向A(結束バンドとしたときの短手方向)の長さを10cmに切り、切り裂き荷重試験方向Aと垂直な方向(結束バンドとしたときの長手方向)の長さを約1cmに切って、短冊状の試験片11を準備する。
【0016】
実施形態の結束バンドは、より具体的には、上記熱可塑性樹脂層として第一の熱可塑性樹脂層および第二の熱可塑性樹脂層を有し、第一の熱可塑性樹脂層と第二の熱可塑性樹脂層との間に上記紙層が介在している。すなわち、
図2に示すように、結束バンド30は、第一の熱可塑性樹脂層31、紙層32および第二の熱可塑性樹脂層33がこの順に積層されている。また、
図3には、結束バンド30の分解図を示す。
図2、3において、Xは結束バンドの短手方向を表し、Yは結束バンドの長手方向を表す。なお、第一の熱可塑性樹脂層31および第二の熱可塑性樹脂層33は、以下に説明する材料、厚さ、延伸倍率などの構成が同じ層である。
【0017】
このような熱可塑性樹脂層/紙層/熱可塑性樹脂層の構成を有する結束バンド30は、熱融着が可能であり、製造コストも抑えられるため好ましく用いられる。
【0018】
熱可塑性樹脂層31、33は、一軸延伸された熱可塑性樹脂フィルムからなる。このような熱可塑性樹脂フィルムに含まれる高分子は、一軸延伸方向に分子配向性を有する。したがって、結束バンド30の場合、上記配向方向は一軸延伸方向と一致する。
【0019】
一軸延伸された熱可塑性樹脂フィルムにおいて、延伸倍率は、通常1.5倍以上20倍以下、好ましくは3倍以上10倍以下である。延伸倍率がこの範囲にあると、結束バンド30として好ましい強度が得られる。
【0020】
熱可塑性樹脂フィルムを構成する熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエステルが挙げられる。熱可塑性樹脂は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちで、延伸させやすいため、ポリプロピレン、ポリエチレンが好適に用いられる。また、容易に熱融着できるため、ポリプロピレンがより好適に用いられる。さらに、短手方向の切り裂き荷重を小さくできるため、ポリプロピレンの中でも、結晶性の高いプロピレン単独重合体がさらに好適に用いられる。
【0021】
熱可塑性樹脂層31、33の厚さは、0.05mm以上0.25mm以下である。厚さがこの範囲にあると、結束バンド30として好ましい強度が得られる。
【0022】
紙層32は、紙材料からなり、該紙材料としては、主に包装紙として用いられるクラフト紙、クレープ紙、パラフィン紙などが挙げられる。さらに、紙材料としては、上質紙、中質紙、下級紙、マット紙、グラシン紙、クレーコート紙、再生紙なども挙げられる。
【0023】
これらのうちで、結束バンド30として好ましい強度が得られるため、クラフト紙、クレープ紙が好適に用いられる。
【0024】
紙層32の厚さは、0.05mm以上0.50mm以下である。厚さがこの範囲にあると、結束バンド30として好ましい強度が得られる。
【0025】
本実施形態では、
図3のように、結束バンドの短手方向Xと短手方向Xに対する配向方向Zとが一致する。すなわち、結束バンドの短手方向Xに対する
図3の仮想の配向方向Z’のなす角を角θとすると、本実施形態においては、角θは0°である。また、本実施形態では、第一の熱可塑性樹脂層31および第二の熱可塑性樹脂層33において、配向方向Zは同じであり、角θも0°で等しい。
【0026】
熱可塑性樹脂層31、33を構成する熱可塑性樹脂フィルムに含まれる高分子は、配向方向Z(一軸延伸方向)に沿って分子配向しており、この方向と交差する方向では弱い分子間力が支配的に働いている。このため、熱可塑性樹脂フィルムは、配向方向Z(一軸延伸方向)に沿った切り裂き荷重が小さく、この方向に沿って裂けやすい。
【0027】
したがって、本実施形態のように、短手方向Xに対する配向方向Zのなす角θが0°であると、短手方向Xの切り裂き荷重は、長手方向Yの切り裂き荷重よりも小さくなり、結束バンド30は、短手方向Xに沿って切りやすくなる。具体的には、物品を結束する際に、短手方向Xに沿って必要な長さに結束バンド30を切るとき、または物品を結束した結束バンド30を短手方向Xに沿って切るとき、刃物を使わず、手で切ることも可能になる。このように、刃物を使わずにすむと、作業効率が向上し、また、物品自体に傷がつきにくくなる。
【0028】
なお、本実施形態では、第一の熱可塑性樹脂層31および第二の熱可塑性樹脂層33の角θはともに0°で等しいため、短手方向Xの切り裂き荷重はより小さくなっており、結束バンド30は、短手方向Xに沿ってより切りやすくなっている。
【0029】
これに対して、従来の結束バンドでは、結束バンドの長手方向に配向方向(一軸延伸方向)がほぼ一致しているため、短手方向の切り裂き荷重は、長手方向の切り裂き荷重よりも大きい。このため、短手方向に沿って結束バンドを切る際に手で切ることは難しかった。
【0030】
上述した実施形態の結束バンドにおいては、結束バンドの短手方向Xの切り裂き荷重は通常5N以下である。短手方向Xの切り裂き荷重が上記範囲にある結束バンド30は、より手で切りやすい。
【0031】
一方、結束バンドの長手方向Yの切り裂き荷重は、高分子を構成するモノマー単位間の共有結合の多くが向いている配向方向Zと交差する方向の切り裂き荷重であるため、かなり大きくなる。したがって、上記切り裂き荷重試験において、通常、試験片11は裂けにくく、破断する。すなわち、結束バンドの長手方向Yの切り裂き荷重は、結束バンド30が破断するまでの最大荷重に対応する。
【0032】
また、実施形態では、第一の熱可塑性樹脂層31と第二の熱可塑性樹脂層33との間に紙層32を介在させている。このように紙層32を介在させても、紙層32を構成する紙材料の繊維は短いため、短手方向Xの切り裂き荷重はそれほど大きくならない。一方、紙層32の介在により、結束バンドの長手方向Yの強度を大きくできる。いいかえると、本実施形態では、2層の熱可塑性樹脂層31、33とともに、さらに紙層32を用いることにより、結束バンドの長手方向Yの強度を大きくできる。このため、結束バンド30によれば、しっかりと物品を結束できる。また、熱融着をするためにはある程度の強度が必要になるため、結束バンドの長手方向Yの引張強度は、40MPa以上であることが好ましい。
【0033】
なお、切り裂き荷重または破断するまでの最大荷重は、たとえば上述した熱可塑性樹脂層の種類、厚さ、延伸倍率、紙層の種類、厚さ、積層構成、または結束バンドの短手方向Xに対する配向方向Zのなす角などを適宜変更することで調整できる。
【0034】
結束バンド30の厚さは、通常0.15mm以上1.0mm以下(エンボス工程前)であり、幅は、通常5mm以上30mm以下である。また、結束バンド30は、長尺であるため、たとえば巻き芯に巻き回した巻回体とすることができる。
【0035】
実施形態の結束バンドの製造方法は、熱可塑性樹脂層と紙層とが積層された帯状の結束バンドであり、上記熱可塑性樹脂層に含まれる高分子が配向方向に分子配向性を有しており、上記配向方向が、上記結束バンドの短手方向に対して、上記結束バンドの短手方向における切り裂き荷重が上記結束バンドの長手方向における切り裂き荷重よりも小さくなる方向に向いている結束バンドの製造方法であって、熱可塑性樹脂フィルムを一軸延伸する工程(一軸延伸工程)と、一軸延伸された熱可塑性樹脂フィルムからなる熱可塑性樹脂層と紙層とを積層する工程(積層工程)とを含む。
【0036】
一軸延伸工程に用いる熱可塑性樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂組成物から得られる。
上記熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂としては、上述のようにポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエステルが挙げられる。
【0037】
ポリプロピレンとしては、プロピレン単独重合体、プロピレンとエチレンおよび/または炭素数4以上14以下のα−オレフィンとのランダム共重合体、プロピレンとエチレンおよび/または炭素数4以上14以下のα−オレフィンとのブロック共重合体が挙げられる。
【0038】
ポリエチレンとしては、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状短鎖分岐ポリエチレン(LLDPE)、中低圧法高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。
【0039】
ポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12が挙げられる。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)が挙げられる。
【0040】
熱可塑性樹脂は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。たとえば、ポリプロピレンに、ポリエチレン(LLDPE、LDPE、HDPE)を配合してもよい。上述のように、これらのうちで、延伸させやすいため、ポリプロピレン、ポリエチレンが好適に用いられる。また、容易に熱融着できるため、ポリプロピレンがより好適に用いられる。さらに、短手方向Xの切り裂き荷重を小さくできるため、ポリプロピレンの中でも、結晶性の高いプロピレン単独重合体がさらに好適に用いられる。
【0041】
熱可塑性樹脂組成物には、実施形態の目的が損なわれない範囲で、添加剤を配合してもよい。
上記添加剤としては、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、充填剤、造核剤が挙げられる。添加剤は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
熱可塑性樹脂組成物は、上記成分を用いて従来公知の方法によって調製できる。たとえば、熱可塑性樹脂に、必要に応じて添加剤をドライブレンドし、バンバリミキサー、押出機などにより溶融混練し、ペレット化して熱可塑性樹脂組成物を調製してもよい。また、添加剤の少なくとも一部を用いてマスターバッチを製造し、このマスターバッチと、必要に応じて残りの添加剤と熱可塑性樹脂とをドライブレンドし、バンバリミキサー、押出機などにより溶融混練し、ペレット化して熱可塑性樹脂組成物を調製してもよい。
【0043】
熱可塑性樹脂フィルム(未延伸)は、上記熱可塑性樹脂組成物を用いて従来公知の方法に従って製造できる。たとえば、熱可塑性樹脂組成物をTダイ付押出機に入れ、180℃以上300℃以下の温度で溶融混練し、広幅状ダイまたはスリット状ダイより押出す。次いで、押出されたシートを冷却水槽または冷却ロールで冷却固化して熱可塑性樹脂フィルム(原反)を製造する。
【0044】
一軸延伸工程では、長さ方向に上記熱可塑性樹脂フィルム(原反)を一軸延伸(縦一軸延伸)する。熱可塑性樹脂フィルムは所定の幅にスリットしてから一軸延伸してもよい。
【0045】
具体的には、たとえば、熱風加熱炉、加熱ロール、熱板、遠赤外加熱炉などによって熱可塑性樹脂フィルム(原反)を加熱しながら、回転速度の異なる2組以上のニップロール間で、長さ方向に熱可塑性樹脂フィルム(原反)を延伸する。この延伸は、1段であっても2段以上の多段であってもよい。熱可塑性樹脂フィルム(原反)中の高分子は一軸延伸方向に配向するが、一軸延伸における延伸の度合いにより、高分子の分子配向性の程度が変わる。これを利用して結束バンド30の強度も調整可能である。
【0046】
上記縦一軸延伸の処理において、延伸倍率は、上述のように、通常1.5倍以上20倍以下、好ましくは3倍以上10倍以下である。また、延伸温度は、通常100℃以上200℃以下、好ましくは110℃以上190℃以下である。
【0047】
また、一軸延伸工程において、上述した縦一軸延伸ではなく、横一軸延伸を行ってもよい。この場合は、たとえば、テンター式延伸装置で熱可塑性樹脂フィルム(原反)を延伸する。テンター式延伸装置は、通常予熱ゾーン、延伸ゾーンおよび熱処理ゾーンからなるオーブンと、横延伸用のクリップ走行装置とを有する。具体的には、クリップで横端部を挟持された原反を走行させ、オーブン内の予熱ゾーンで延伸温度まで加熱して、延伸ゾーンで横方向に引張って延伸し、必要により熱処理ゾーンで熱処理を行った後に冷却する。横方向への引張りは、クリップ走行装置のガイドレールを開いて左右2列のクリップ間の距離を広げて行われる。
【0048】
上記横一軸延伸の処理において、延伸倍率は、通常1.5倍以上20倍以下である。
次いで、積層工程において、一軸延伸された熱可塑性樹脂フィルムからなる熱可塑性樹脂層31、33と紙材料からなる紙層32とを積層する。
【0049】
熱可塑性樹脂層31、33と紙層32との積層は、通常一軸延伸された熱可塑性樹脂フィルムと紙材料とを接着剤により接着して行う。
【0050】
上記接着剤としては、熱可塑性樹脂フィルムと紙材料とが接着できれば特に制限されないが、たとえば、酢酸ビニル系樹脂またはアクリル系樹脂を含む接着剤が挙げられる。また、エマルジョンタイプの接着剤が好適に用いられる。
【0051】
具体的には、たとえば、一軸延伸された熱可塑性樹脂フィルムに、従来公知の方法に従って上記接着剤を塗布し、接着剤を塗布した面に紙材料を載せ、両者を接着して、第一の熱可塑性樹脂層31および紙層32からなる積層体を得る。次いで、紙層32に上記接着剤を塗布し、接着剤を塗布した面に別の一軸延伸された熱可塑性樹脂フィルムを載せる。このとき、一軸延伸された熱可塑性樹脂フィルムの一軸延伸方向が第一の熱可塑性樹脂層31における一軸延伸方向と一致するように載せる。次いで、両者を接着して、第一の熱可塑性樹脂層31、紙層32および第二の熱可塑性樹脂層33からなる積層体を得る。
【0052】
通常、第一の熱可塑性樹脂層31、紙層32および第二の熱可塑性樹脂層33からなる積層体を適宜裁断して、所定の幅および長さを有する結束バンド30を得る。積層体を裁断する際には、結束バンド30の短手方向Xに対する配向方向Z(すなわち熱可塑性樹脂層31、33を構成する熱可塑性樹脂フィルムの一軸延伸方向)のなす角θが0°となるように裁断する。
【0053】
上記製造方法においては、一軸延伸工程の前に、容易にまたは均一に原反を延伸するために、原反を予熱する工程を設けてもよい。さらに、一軸延伸された熱可塑性樹脂フィルムの物性が経時によって低下しないようにするために、一軸延伸工程の後であって積層工程の前に、一軸延伸された熱可塑性樹脂フィルムを熱処理(アニーリング)する工程、積層工程の後に、一軸延伸された熱可塑性樹脂フィルム表面に模様をつけるエンボス工程などを設けてもよい。
【0054】
このようにして得られた結束バンド30は、上述のように、短手方向Xの切り裂き荷重が小さく、短手方向Xに沿って手で切ることも可能である。
【0055】
結束バンドは、熱可塑性樹脂層と紙層とが積層された帯状の結束バンドであって、上記熱可塑性樹脂層に含まれる高分子が配向方向に分子配向性を有しており、上記配向方向が、上記結束バンドの短手方向に対して、上記結束バンドの短手方向における切り裂き荷重が前記結束バンドの長手方向における切り裂き荷重よりも小さくなる方向に向いていればよく、下記のような結束バンドであってもよい。なお、上記のように、結束バンドの短手方向Xの切り裂き荷重は通常5N以下であることが好ましい。
【0056】
たとえば、上記実施形態の結束バンドにおいて、上記角θは0°でなくてもよい。すなわち、角θは、結束バンドの短手方向における切り裂き荷重が結束バンドの長手方向における切り裂き荷重よりも小さくなる範囲であればよい。具体的な角θの範囲は、結束バンドの幅によって変わるが、上記角θが−30°以上+30°以下の範囲の場合は、通常の幅を有する結束バンドにおいて、結束バンドの短手方向における切り裂き荷重が結束バンドの長手方向における切り裂き荷重よりも小さくなる。
【0057】
このような結束バンドは、たとえば、積層工程で得られた積層体について、上記角θが所望の値となるように裁断して製造される。
【0058】
上記実施形態の結束バンドにおいて、第一の熱可塑性樹脂層、第二の熱可塑性樹脂層などの熱可塑性樹脂層の厚さは、上記範囲になくてもよい。また、紙層の厚さも、上記範囲になくてもよい。
【0059】
上記実施形態で説明した第一の熱可塑性樹脂層および第二の熱可塑性樹脂層は、材料、厚さ、延伸倍率、上記角θなどの構成がそれぞれ異なっていてもよい。ただし、上記角θについては、第一の熱可塑性樹脂層および第二の熱可塑性樹脂層において交差する範囲は除く。
【0060】
また、上記実施形態の結束バンドは、熱可塑性樹脂層および紙層を1層ずつ有していればよく、熱可塑性樹脂層/紙層の構成を有する結束バンド、紙層/熱可塑性樹脂層/紙層の構成を有する結束バンドであってもよい。
【0061】
さらに、上記実施形態の結束バンドは、4層以上が積層した結束バンドであってもよく、紙層同士または熱可塑性樹脂層同士が連続して積層されている結束バンドであってもよい。
【0062】
このような結束バンドは、たとえば、上述した熱可塑性樹脂フィルムおよび紙層を適宜選び、上述した接着剤を用いてこれらを積層して製造できる。
【0063】
また、結束バンドの表面層が紙層の場合は、該紙層の上にコート層を設けてもよい。
たとえば、コート層は、紙層に上記接着剤を塗布し、または含浸させて形成できる。このようなコート層を設けることにより、熱融着が可能となる。
【0064】
上述した実施形態の結束バンドにおいて、熱可塑性樹脂層は、該層に含まれる高分子が配向方向に分子配向性を有していればよく、該熱可塑性樹脂層は、一軸延伸された熱可塑性樹脂フィルムでなくてもよい。
【0065】
また、上記実施形態の結束バンドにおいて、熱可塑性樹脂層が一軸延伸された熱可塑性樹脂フィルムからなる場合は、「上記熱可塑性樹脂層に含まれる高分子が配向方向に分子配向性を有している」という要件を必須としなくてもよい。すなわち、結束バンドは、熱可塑性樹脂層と紙層とが積層された帯状の結束バンドであって、上記熱可塑性樹脂層が一軸延伸された熱可塑性樹脂フィルムからなり、上記一軸延伸方向が、上記結束バンドの短手方向に対して、上記結束バンドの短手方向における切り裂き荷重が前記結束バンドの長手方向における切り裂き荷重よりも小さくなる方向に向いている結束バンドであってもよい。なお、この結束バンドの詳細については、上記要件を必須としないこと以外は、上記実施形態で説明したとおりである。具体的には、上記実施形態についての説明において、配向方向を一軸延伸方向に読み替えた場合である。
【0066】
上述した実施形態の結束バンドは、電線、ファイバー、ワイヤーなどの長尺物の結束に好適に用いられる。
【0067】
結束バンドの両表面が熱可塑性樹脂層またはコート層を有する紙層からなる場合は、熱融着により結束できる。たとえば、電線をリング状に巻いて束巻き電線を形成した後、結束バンドを巻き付け、所定の長さに結束バンドを切り、両端部を重ね合わせ、この重ね合わせたところを加熱して熱融着させて固定する。結束バンドの巻き付けから熱融着による固定までは、手動で行ってもよく、自動結束機を用いて行ってもよい。束巻き電線は、結束バンドで複数個所固定されることが好ましい。
【0068】
上述した実施形態の結束バンドを用いると、束巻き電線に結束バンドを巻き付ける際、結束バンドを所定の長さに切るときに、刃物を使わずに手で切ることができる。また、結束された束巻き電線から電線を取りして使用する際に結束バンドを切るときにも、刃物を使わずに手で切ることができる。また、実施形態の結束バンドは、長手方向は物品の結束に十分な強度を有している。
【0069】
なお、たとえば、結束バンドの両表面の少なくともいずれか一方がコート層を有しない紙層からなる場合は、結束バンドの固定には、糊、口金などを用いてもよい。
【0070】
上述した実施形態の結束バンドは、新聞、郵便物、書籍、小包、パレット建材、鋼板、機械などを梱包するために用いることもできる。
【0071】
[実施例]
[実施例1]
熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂フィルムとして、一軸延伸されたポリプロピレンフィルム(東京インキ株式会社製、KST1W、厚さ0.05mm)を用い、紙層を構成する紙材料として、クラフト紙(日本製紙株式会社製、筋入、厚さ0.05mm)を用いた。
【0072】
まず、ポリプロピレンフィルムに酢酸ビニル系樹脂を含むエマルジョンタイプの接着剤(昭和電工株式会社製、ポリゾール)を塗布し、接着剤を塗布した面に紙材料を載せ、両者を接着して、第一の熱可塑性樹脂層31および紙層32からなる積層体を得た(
図2参照)。
【0073】
次いで、紙層32に上記接着剤を塗布し、接着剤を塗布した面に別のポリプロピレンフィルムを載せた。このとき、ポリプロピレンフィルムの一軸延伸方向が第一の熱可塑性樹脂層31における一軸延伸方向と一致するように載せた。次いで、両者を接着して、第一の熱可塑性樹脂層31、紙層32および第二の熱可塑性樹脂層33からなる積層体を得た(
図2参照)。
【0074】
第一の熱可塑性樹脂層31、紙層32および第二の熱可塑性樹脂層33からなる積層体を裁断して、幅5mmの結束バンド30を製造した(
図2参照)。積層体を裁断する際には、結束バンドの短手方向Xに対する配向方向Z(すなわち熱可塑性樹脂層31、33を構成する熱可塑性樹脂フィルムの一軸延伸方向)のなす角θが0°となるように裁断した。
【0075】
[実施例2]
熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂フィルムとして、一軸延伸されたポリプロピレンフィルム(東京インキ株式会社製、KST1W、厚さ0.10mm)を用い、紙層を構成する紙材料として、クラフト紙(株式会社小松製、両更クラフト紙、厚さ0.17mm)を用いた以外は、実施例1と同様にして結束バンド30を製造した。
【0076】
[実施例3]
第一の熱可塑性樹脂層31、紙層32および第二の熱可塑性樹脂層33からなる積層体を裁断する際に、幅30mmとした以外は、実施例1と同様にして結束バンド30を製造した。
【0077】
[実施例4]
第一の熱可塑性樹脂層31、紙層32および第二の熱可塑性樹脂層33からなる積層体を裁断する際に、幅30mmとした以外は、実施例2と同様にして結束バンド30を製造した。
【0078】
[実施例5]
θ=30°となるように裁断した結束バンド30を製造した。それ以外の製造方法は実施例1と同様である。
【0079】
[比較例1]
一軸延伸されたポリプロピレン製の結束バンド(積水樹脂株式会社製、ゆうバンド、厚さ0.58mm)を用いた。
【0080】
[比較例2]
一軸延伸されたポリプロピレン製のフィルム(東京インキ株式会社製、KST1W、厚さ0.10mm)を裁断して、結束バンド(PPバンド、幅30mm)を製造した。この結束バンドにおいては、結束バンドの短手方向と配向方向(一軸延伸方向)とが一致していた。
【0081】
[比較例3]
樹脂層/伸張紙/樹脂層/平坦紙/樹脂層/伸張紙/樹脂層の順に積層した結束バンド(幅10mm、厚さ0.10mm)を製造した。伸張紙としてはクラフト伸張紙(王子製紙製、商品名:テープ用原紙、坪量73g/m
2)を、平坦紙としてはクラフト紙(王子製紙製、商品名:OKゴールド、坪量75g/m
2、重包装用)を用いた。また、樹脂層は低密度ポリエチレン(日本ポリケム社製、商品名:LC−522)を用い、通常の押出しラミネート法により15μmの厚みとなるように形成した。具体的な製造方法は、特開2006−8196号公報の実施例1などに記載されている。
【0082】
[評価]
得られた結束バンドについて、引張試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフ)を用いて切り裂き荷重試験を行った(
図1参照)。切り裂き荷重試験は、長手方向および短手方向について行ったが、詳細は上記のとおりである。また、得られた結束バンドについて、長手方向の引張強度を測定した。試験の結果を表1に示す。