特許第6847654号(P6847654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6847654-口腔用及び/又は咽喉用組成物 図000021
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6847654
(24)【登録日】2021年3月5日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】口腔用及び/又は咽喉用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20210315BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20210315BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20210315BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20210315BHJP
   A61K 8/33 20060101ALI20210315BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20210315BHJP
   A61P 11/04 20060101ALI20210315BHJP
   A61K 31/4425 20060101ALI20210315BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20210315BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20210315BHJP
   A61K 47/08 20060101ALI20210315BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   A61K8/49
   A61Q11/00
   A61K8/34
   A61K8/60
   A61K8/33
   A61P1/02
   A61P11/04
   A61K31/4425
   A61K47/10
   A61K47/22
   A61K47/08
   A61K9/08
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-248135(P2016-248135)
(22)【出願日】2016年12月21日
(65)【公開番号】特開2018-100245(P2018-100245A)
(43)【公開日】2018年6月28日
【審査請求日】2019年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 真実
【審査官】 松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−051511(JP,A)
【文献】 特開2012−077032(JP,A)
【文献】 特開2015−174860(JP,A)
【文献】 特開2006−306768(JP,A)
【文献】 特開平11−130642(JP,A)
【文献】 特開2018−052888(JP,A)
【文献】 特開2017−145213(JP,A)
【文献】 特開2016−222556(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0081303(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00− 47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)塩化セチルピリジニウムを0.05〜0.8質量%、
(b)グリセリンを35質量%以上、
(c)ソルビトールを0.5〜30質量%、
(d)l−メントールを0.05〜0.25質量%、
(e)1,8−シネオールを0.0004〜0.09質量%、並びに
(f)オイゲノール、グアイアコール、エチルグアイアコール、メチルオイゲノール、及びチモールからなる群より選択される少なくとも1種を0.0002〜0.08質量%
含有し、
且つ、(b)グリセリンと(c)ソルビトールの合計含有量が48〜90質量%である、
口腔用及び/又は咽喉用組成物。
【請求項2】
(b)グリセリンを35〜80質量%、(c)ソルビトールを3〜30質量%、含有する、請求項1に記載の口腔用及び/又は咽喉用組成物
【請求項3】
(b)グリセリンの含有量をB質量%、(c)ソルビトールの含有量をC質量%としたとき、
1.2≦B/C≦23である、請求項1又は2に記載の口腔用及び/又は咽喉用組成物。
【請求項4】
液体組成物である、請求項1〜3のいずれかに記載の口腔用及び/又は咽喉用組成物。
【請求項5】
スプレー用組成物である、請求項1〜4のいずれかに記載の口腔用及び/又は咽喉用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔用及び/又は咽喉用組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化セチルピリジニウムを含有する口腔用又は咽喉用組成物について、これまで様々な開発が行われてきている(例えば特許文献1〜3)。
【0003】
塩化セチルピリジニウムは、独特の苦みがあり、また刺激性も有しているため、特に口腔や咽喉に適用するにあたっては、これらを出来るだけ低減させることが求められる。また、口腔用又は咽喉用組成物として用いるにあたり、使用後のさっぱり感も重要である。また、使用時に薬効感を効果的に使用者に与えることや、有効成分や薬用成分が有する特有の嫌味による嗜好性の低下を抑制することも重要である。これらの要望を十分に満たす口腔用又は咽喉用組成物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−306768号公報
【特許文献2】特開2010−043031号公報
【特許文献3】特開2010−280610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、塩化セチルピリジニウムの苦み及び刺激性が低減され、適用時にさっぱりとした感覚を得ることができ、さらに薬用感や嗜好性にも優れる、口腔用又は咽喉用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、塩化セチルピリジニウム含有組成物に配合すべき成分及びその配合量を多数検討し、特定の成分を特定の量組み合わせて配合することで、上記課題を解決し得ることを見出し、さらに改良を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
(a)塩化セチルピリジニウムを0.05〜0.8質量%、
(b)グリセリンを35質量%以上、
(c)ソルビトールを0.5〜30質量%、
(d)l−メントールを0.05〜0.25質量%、
(e)1,8−シネオールを0.0004〜0.09質量%、並びに
(f)オイゲノール、グアイアコール、エチルグアイアコール、メチルオイゲノール、及びチモールからなる群より選択される少なくとも1種を0.0002〜0.08質量%
含有し、
且つ、(b)グリセリンと(c)ソルビトールの合計含有量が48〜90質量%である、
口腔用及び/又は咽喉用組成物。
項2.
(b)グリセリンを35〜80質量%、(c)ソルビトールを3〜30質量%、含有する、項1に記載の口腔用及び/又は咽喉用組成物
項3.
(b)グリセリンの含有量をB質量%、(c)ソルビトールの含有量をC質量%としたとき、
1.2≦B/C≦23である、項1又は2に記載の口腔用及び/又は咽喉用組成物。
項4.
液体組成物である、項1〜3のいずれかに記載の口腔用及び/又は咽喉用組成物。
項5.
スプレー用組成物である、項1〜4のいずれかに記載の口腔用及び/又は咽喉用組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明に包含される口腔用及び/又は咽喉用組成物は、塩化セチルピリジニウムの苦み及び刺激性が低減され、適用時にさっぱりとした感覚を得ることができ、さらに薬用感や嗜好性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】噴霧性評価の概要を示す。(α)に濾紙へ組成物を噴霧する様子を示し、(β)に組成物を噴霧した濾紙の様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の各実施形態について、さらに詳細に説明する。
【0011】
本発明に包含される口腔用及び/又は咽喉用組成物(以下、「本発明に係る口腔用及び/又は咽喉用組成物」と呼ぶことがある)は、(a)塩化セチルピリジニウム、(b)グリセリン、(c)ソルビトール、(d)l−メントール、(e)1,8−シネオール、及び(f)オイゲノール、グアイアコール、エチルグアイアコール、メチルオイゲノール、及びチモールからなる群より選択される少なくとも1種を含む。つまり、オイゲノール、グアイアコール、エチルグアイアコール、メチルオイゲノール、及びチモールは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0012】
(a)塩化セチルピリジニウムは、本発明に係る組成物に、0.05〜0.8質量%含まれる。口腔や咽喉に適用した時の殺菌効果や安全性を考慮すると、0.06〜0.6質量%含まれることが好ましく、0.08〜0.4質量%含まれることがより好ましく、0.1〜0.3質量%含まれることがさらに好ましく、0.2〜0.3質量%含まれることが最も好ましい。
【0013】
(b)グリセリンは、本発明に係る組成物に、35質量%以上含まれる。35〜80質量%含まれることが好ましく、40〜70質量%含まれることがより好ましく、50〜70質量%含まれることがさらに好ましい。
【0014】
(c)ソルビトールは、本発明に係る組成物に、0.5〜30質量%含まれる。含有量の下限は、本発明の効果が奏される限り特に限定はされないが、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましい。また、含有量の上限は、本発明の効果が奏される限り特に限定はされないが、28質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、21質量%以下がさらに好ましい。特に、2〜30質量%含まれることが好ましく、5〜25質量%含まれることがより好ましく、7〜21質量%含まれることがさらに好ましい。
【0015】
(d)l−メントールは、本発明に係る組成物に、0.05〜0.25質量%含まれる。0.05〜0.2質量%含まれることが好ましく、0.05〜0.15質量%含まれることがより好ましい。
【0016】
(e)1,8−シネオールは、本発明に係る組成物に、0.0004〜0.09質量%含まれる。0.0005〜0.08質量%含まれることが好ましく、0.001〜0.05質量%含まれることがより好ましく、0.001〜0.03質量%含まれることがさらに好ましい。1,8−シネオールは、天然に由来する成分を用いてもよいが、他の香気成分の影響を受ける恐れがあることから、濃度を高める精製処理を施したものを使用することが好ましい。
【0017】
(f)オイゲノール、グアイアコール、エチルグアイアコール、メチルオイゲノール、及びチモールからなる群より選択される少なくとも1種は、本発明に係る組成物に、0.0002〜0.08質量%含まれる。0.0005〜0.07質量%含まれることが好ましく、0.001〜0.05質量%含まれることがより好ましく、0.002〜0.03質量%含まれることがさらに好ましく、0.004〜0.02質量%含まれることがよりさらに好ましい。また、特に制限はされないが、これら5種の成分のうち、中でもオイゲノール、エチルグアイアコール、メチルオイゲノールが好ましく、オイゲノールがより好ましい。オイゲノール、グアイアコール、エチルグアイアコール、メチルオイゲノール、及びチモールは天然に由来する成分を用いてもよい。
【0018】
オイゲノール、グアイアコール、エチルグアイアコール、メチルオイゲノール、及びチモールの構造式を以下に示す。
【0019】
【化1】
【0020】
【化2】
【0021】
【化3】
【0022】
【化4】
【0023】
【化5】
【0024】
当該組成物に含まれる(b)グリセリン及び(c)ソルビトールの量は、合計して48〜90質量%である。噴霧性の観点から、当該合計量は80質量%以下であることが好ましい。さらに好ましくは50〜78質量%であり、よりさらに好ましくは55〜75質量%であり、特に好ましくは60〜70質量%である。
【0025】
また、当該組成物は、液体組成物であることが好ましい。
【0026】
(a)塩化セチルピリジニウムを0.05〜0.8質量%、(b)グリセリンを35質量%以上、(c)ソルビトールを40質量%以下、(d)l−メントールを0.05〜0.25質量%、(e)1,8−シネオールを0.0004〜0.09質量%、並びに(f)オイゲノール、グアイアコール、エチルグアイアコール、メチルオイゲノール、及びチモールからなる群より選択される少なくとも1種を0.0002〜0.08質量%を含有し、且つ、(b)グリセリンと(c)ソルビトールの合計含有量が48〜90質量%であることにより、本発明に係る口腔用及び/又は咽喉用組成物は、塩化セチルピリジニウムの苦み及び刺激性が低減されており、適用時にはさっぱりとした感覚を使用者に与え、さらに薬用感や嗜好性にも優れる。またさらに、これらに加えて、本発明に係る口腔用及び/又は咽喉用組成物は、変色や析出が抑制され、且つスプレー性にも優れ得る。
【0027】
なお、本明細書における「質量%」は、「(重量/重量)の百分率」を意味する。
【0028】
また、特に制限はされないが、本発明に係る口腔用及び/又は咽喉用組成物においては、(b)グリセリンの含有量をB質量%、(c)ソルビトールの含有量をC質量%としたとき、1.2≦B/C≦23であることが好ましい。より好ましくは1.5≦B/C≦20であり、さらに好ましくは2≦B/C≦10であり、よりさらに好ましくは3≦B/C≦5である。
【0029】
本発明に係る口腔用及び/又は咽喉用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、薬学的に許容される公知成分、あるいは食品衛生学的に許容される公知成分をさらに含んでもよい。特に、口腔用及び/又は咽喉用組成物に配合し得る公知の公知成分をさらに好ましく含有し得る。このような成分としては、例えば、香味剤、甘味剤、湿潤剤、防腐剤、保存剤、着色剤、pH調整剤等が挙げられるが、特に限定されない。以下、当該公知成分について記載するが、当該記載は例示であり、これに限定されるものではない。
【0030】
香味剤としては、カルボン、サリチル酸メチル、バニリン、ベンジルサクシネート、アネトール、リモネン、オシメン、n−デシルアルコール、メチルアセタート、シトロネニルアセテート、エチルリナロール、ナツメグ、シンナミックアルデヒド、ベンズアルデヒド、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、シソ油、冬緑油、ティーツリー油、タバナ油、スターアニス油、フェンネル油、珪藻油、バジル油、ハッカ油などが例示できる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
甘味剤としては、サッカリン、サッカリンナトリウム、アセスルファムカリウム、ステビアエキス、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルチン、ソウマチン、アスパルチルフェニルアラニンメチルエステル(アスパルテーム)、スクラロース、アドバンテーム、メトキシシンナミックアルデヒド、パラチノース、パラチニット、エリスリトール、マルチトール、キシリトール、ラクチトールなどが例示できる。これら甘味剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0032】
湿潤剤としては、エタノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、イソプレングリコール、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、トルナーレ、トレハロース、トレハロース硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸などが挙げられる。これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
防腐剤又は保存剤としては、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のパラベン類、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等が例示できる。これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
着色剤としては、青色1号、黄色4号、赤色202号、緑3号等の法定色素、群青、強化群青、紺青等の鉱物系色素、酸化チタン等が例示できる。これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
pH調整剤としては、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、ピロリン酸、乳酸、酒石酸、グリセロリン酸、酢酸、硝酸、またはこれらの化学的に可能な塩や水酸化ナトリウム等が例示できる。これらは、組成物のpHが、好ましくは4〜8、より好ましくは5〜7の範囲となるよう、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。なかでもpH緩衝能が強く生じる組合せがより好ましい。例えば、酸化合物又はアルカリ化合物とそれらの塩を組み合わせることが好ましい。pH調整剤の配合量は、好ましくは0.01〜2重量%である。
【0036】
また、そのほかの成分として、動植油脂、粉体、紫外線吸収剤、動植物抽出物なども挙げられる。
【0037】
なお、本発明に係る抗歯周病組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに、薬効成分を配合してもよい。例えば、殺菌剤として、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジンなどのカチオン性殺菌剤;ドデシルジアミノエチルグリシンなどの両性殺菌剤;トリクロサン(2’,4,4’−トリクロロ−2−ヒドロキシ−ジフェニルエーテル)などのハロゲン化ジフェニルエーテルやイソプロピルメチルフェノールなどのフェノール系殺菌剤;ヒノキチオール;血行促進剤として酢酸dl−α−トコフェロール、コハク酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロールなどのビタミンE類;デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、溶菌酵素(リテックエンザイム)などの酵素;抗炎症剤としてイプシロンアミノカプロン酸など;出血改善剤としてアスコルビン酸など;組織修復剤としてアラントインなど;再石灰化剤としてフッ化ナトリウムなどのフッ素化合物;その他、水溶性溶媒で抽出された植物抽出物、クロロフィル、塩化ナトリウム、塩化亜鉛、硝酸カリウムなどが挙げられる。これらの薬効成分は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
また、基剤として、水、ブドウ水、ヘチマ水、ボダイジュ水、ヤグルマギク水、ユーカリ水、ヨモギ水、リンゴ水、ローズマリー水などの植物関連の水、エタノール、ブタノール、プロピレングリコールなどのアルコール類、シリコン等を用いることができる。スプレー用組成物として用いる観点からは、水、アルコール類を用いることが好ましい。アルコールとしては、特にエタノールを用いることが好ましい。水及び/又はエタノールを配合する場合、 特に制限はされないが、エタノールの含有量は、好ましくは0.5〜6質量%、より好ましくは1〜4質量%である。また、水の含有量は、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは15〜45質量%、さらに好ましくは25〜40質量%である。当該水含有量には、前記植物関連の水が用いられる場合には、それら植物関連の水も含まれる。
【0039】
本発明に係る口腔用及び/又は咽喉用組成物は、常法に従って製造することができる。例えば、原料を適宜混合して製造することができる。また、本発明に係る口腔用及び/又は咽喉用組成物は、例えば医薬品、医薬部外品として用いることができる。また、本発明に係る口腔用及び/又は咽喉用組成物は、殺菌、抗炎症用として好ましく用いることができる。本発明に係る口腔用及び/又は咽喉用組成物は、優れた噴霧性を有し得ることから、特にスプレー用組成物として用いることが好ましい。
【0040】
なお、本発明に係る口腔用及び/又は咽喉用組成物について上述した各種内容(特に配合成分及び配合割合)については、適宜組み合わせてよい。言い換えれば、本発明に係る口腔用及び/又は咽喉用組成物は、上述した各種内容の任意の組み合わせで示される組成物を包含する。
【0041】
本発明に係る口腔用及び/又は咽喉用組成物は、好ましくは、スプレー容器に収容され、使用時に口腔及び/又は咽喉に噴霧して適用される。この場合、スプレー容器としては、薬剤を噴霧できる構造を有しているものであれば特に制限されない。具体的には、例えば、当該組成物を収容するプラスチックボトル等の容器本体と、ポンプディスペンサー等の噴霧機構を有するスプレー部とを備え、容器本体の上部開口部に密着して装着されたスプレー部の押圧部を押圧することで、容器本体に収容された内容物が、スプレー部の内容物吐出機構によって内容物排出口(ノズル)から噴霧、吐出されるものが使用できる。
【0042】
このようなスプレー容器は、市販品を使用してもよく、例えばスプレー容器のディスペンサー部分としては、吉野工業所製のY−20(1プッシュ約0.2mL吐出)、Y−70(1プッシュ約0.07mL吐出)、Y−150(1プッシュ約0.15mL吐出)等や、三谷バルブ社製Z−155(1プッシュ0.15mL吐出)などのディスペンサーを用いることができる。また、ボトル部としては、吉野工業所製の前記ディスペンサーに対応したポリエチレンテレフタレート製、ポリエチレン製、ポリプロピレン製などのボトルを用いることができる。
【0043】
特に制限されるわけではないが、本発明に係る口腔用及び/又は咽喉用組成物は、ノズル孔径約0.2〜0.4mmのスプレー容器用として好適であり、よって当該範囲のノズルを備えるディスペンサー部分を有するスプレー容器用として好適である。
【0044】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【0046】
<参考例及び参考比較例>
表1〜6に記載の組成に従い、各種成分を混合して、口腔用及び/又は咽喉用組成物を調製した。なお、ソルビトールを組成物に含有させるために、原料としてソルビトール液(ソルビトール70質量%水溶液)を用いた。従って、表に記載されるソルビトール液の使用量に0.7を乗じることで、各組成物に含まれるソルビトール量を算出できる。
【0047】
次に、各組成物を吉野工業所製のY−70ディスペンサーを備えたスプレー容器に入れ、評価に用いた。なお、当該スプレー容器の構成を次に示す。
ディスペンサー部(ポンプ部)
1プッシュ用量(1プッシュで噴霧される量):約0.07〜0.11mL
ノズル孔径:約0.3mm
ボトル部
容量:約20mL
高さ:約62mm
直径:約24mm
材質:PP(ポリプロピレン)
【0048】
各評価内容について次に示す。また、評価結果を表1〜6に併せて示す。
【0049】
<苦み、刺激、及びさっぱり感の評価>
パネラー5人に対して、調製した各組成物を喉及び口腔内に4プッシュして適用し、使用直後の咽喉および舌の付け根の奥に感じる苦味、刺激性、及びさっぱり感を評価した。各評価項目の評価基準(数値)及び判定基準を次に示す。なお、表1〜6に示す評価数値は、5人のパネラーの評価数値の平均値である。
【0050】
〔苦味の評価基準〕
0:苦味なし
1:ほとんど苦味なし
2:わずかに苦味あり
3:苦味あり
4:非常に苦味あり
【0051】
〔苦味の判定基準〕
◎:2点未満
○:2点以上3点未満
×:3点以上
【0052】
〔刺激の評価基準〕
0:刺激なし
1:ほとんど刺激なし
2:わずかに刺激あり
3:刺激あり
4:非常に刺激あり
【0053】
〔刺激の判定基準〕
◎:2点未満
○:2点以上3点未満
×:3点以上
【0054】
〔さっぱり感の評価基準〕
0:全くさっぱりしない
1:ほとんどさっぱりしない
2:ややさっぱりする
3:さっぱりする
4:非常にさっぱりする
【0055】
〔さっぱり感の判定基準〕
◎:3点以上
○:2点以上3点未満
×:2点未満
【0056】
<析出、おりの評価>
調製した各組成物をスプレー容器に充填した状態で、−5℃の温度条件下に1週間放置し、性状を以下の基準で目視評価した。
【0057】
〔析出・おりの評価基準〕
−:無色透明で析出物は認められない
+:析出物又はおりが認められる
【0058】
<変色の評価>
調製した各組成物をスプレー容器に充填した状態で、55℃の温度条件下に1ヶ月放置し、性状を以下の基準で目視評価した。
【0059】
〔変色の評価基準〕
−:無色透明で変色は認められない
+:渇変し黄色味を帯びている
【0060】
<噴霧性評価>
調製した各組成物をスプレー容器に充填した状態で、55℃の温度条件下に1ヶ月放置した。容器を正立させて、室温(20℃)で5cmの距離からろ紙に1プッシュしたときの吐出パターンの直径を評価した。当該評価についての概要を図1に示す。
【0061】
〔噴霧性の評価基準〕
×:40mmを超える、又は10mm未満もしくは吐出しない
○:10mm以上40mm以下
*口腔と喉両方への適応を考えると15mm以上35mm以下がより好ましい。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
【表6】
【0068】
各参考例及び各参考比較例の結果から、好ましい配合成分及びその配合割合がわかった。さらに、特に表6から、1,8−シネオールの代わりに他の香料成分を用いても、析出・おり、変色、及び噴霧性の結果はほとんど変わらないこともわかった。
【0069】
<実施例及び比較例>
特に好ましい参考例の一つである、参考例7をベースとして、さらに薬用感及び嗜好性にも優れる組成物を得るため、さらにオイゲノール等を追加し、同様にして検討を行った。ただ、「香料」については、上記(f)成分がほとんど含まれないものを使用した。具体的には、表7に記載の組成に従い、各種成分を混合して、口腔用及び/又は咽喉用組成物を調製し、各組成物を上記と同様に評価した。評価結果を表7に併せて示す。なお、上記と同様、ソルビトールを組成物に含有させるために、原料としてソルビトール液(ソルビトール70質量%水溶液)を用いた。従って、表に記載されるソルビトール液の使用量に0.7を乗じることで、各組成物に含まれるソルビトール量を算出できる。
【0070】
より具体的には、パネラー5人に対して、調製した各組成物を喉及び口腔内に4プッシュして適用し、使用直後の咽喉および舌の付け根の奥に感じる苦味、刺激性、さっぱり感、薬用感、及び嗜好性を評価した。薬用感及び嗜好性の評価基準(数値)及び判定基準を次に示す。苦味、刺激性、及びさっぱり感の評価基準(数値)及び判定基準は、上記と同じである。なお、表7に示す評価数値は、5人のパネラーの評価数値の平均値である。
【0071】
〔薬用感の評価基準〕
0:全く感じられない
1:ほとんど感じられない
2:やや感じられる
3:感じられる
4:非常に感じられる
【0072】
〔薬用感の判定基準〕
◎:3点以上
○:2点以上3点未満
×:2点未満
【0073】
〔嗜好性の評価基準〕
0:非常に悪い
1:悪い
2:どちらともいえない
3:良い
4:非常に良い
【0074】
〔嗜好性の判定基準〕
◎:3点以上
○:2点以上3点未満
×:2点未満
【0075】
なお、口腔用組成物の使用後に、使用者が薬用成分を用いてオーラルケアをしたとの感覚を得られれば、当該口腔用組成物は良好な薬用感を有するといえる。薬用感を有する口腔用組成物は、オーラルケアに有効な薬用成分を用いたとの感覚を使用者に与えることができ、使用者の満足度を向上させ得る。より詳細に説明すれば、薬用感は、香りや味、刺激等により得られる、薬用成分を用いたと感じる感覚のことである。口腔用組成物の使用者は、使用時(使用中や使用後)の使用感を、香りや味から感じることができるので、口腔用組成物に薬的な香りや味を与えることにより、使用者の“薬用成分を用いた”との感覚が高まる。この感覚が高い程、良好な薬用感を有するといえる。
【0076】
【表7】
【0077】
以下に、本発明に係る口腔用又は咽喉用組成物において、上記(d)〜(f)成分に加えて、さらに配合するために好ましい香料の組成をいくつか例示する。これらの香料の中には、組成によっては、上記(d)〜(f)成分が含まれるものもあるが、組成物全体における寄与率は極めて低く、上述した組成物に含まれるべき(d)〜(f)成分の量を逸脱させるようなことはなく、よって本発明の効果を損なわせるような影響を与えるものではない。
【0078】
【表8】
【0079】
【表9】
【0080】
【表10】
【0081】
【表11】
【0082】
【表12】
【0083】
【表13】
【0084】
【表14】
図1