(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示は、洗浄剤組成物に上記成分A〜成分Dを含有させることで、セリアの溶解性が向上し、かつ、セリアの溶解性の経時変化が抑制されるという知見に基づく。そして、セリアスラリーを用いたCMP後の基板の洗浄に、上記成分A〜成分Dを含有する洗浄剤組成物を用いると、基板表面に残留するセリアを効率よく洗浄できるという知見に基づく。
【0017】
すなわち、本開示は、一態様において、下記成分A、下記成分B、下記成分C及び下記成分Dを含有する、半導体デバイス用基板用の洗浄剤組成物(以下、「本開示に係る洗浄剤組成物」ともいう)に関する。
成分A:硫酸
成分B:アスコルビン酸
成分C:チオ尿素及びジチオトレイトールの少なくとも一つ
成分D:水
本開示によれば、セリアに対する洗浄性に優れ、セリアの溶解性の経時変化を抑制できる半導体デバイス用基板用の洗浄剤組成物を提供できる。そして、本開示に係る洗浄剤組成物を用いることによって、高品質の半導体デバイス用基板が得られうる。
【0018】
本開示に係る洗浄剤組成物における効果の作用メカニズムの詳細は不明な部分があるが、以下のように推定される。
本開示に係る洗浄剤組成物中に硫酸(成分A)及びアスコルビン酸(成分B)が共存することにより、セリアの溶解性(以下、「セリア溶解性」ともいう)が高くなると考えられる。
通常、成分A及び成分Bを含む洗浄剤組成物は、強酸性を示し、空気に曝される環境下では、成分Aによる成分Bの酸化劣化が生じ、経時的にセリア溶解性が低下する傾向にある。しかし、本開示に係る洗浄剤組成物には、チオ尿素及びジチオトレイトールから選ばれる少なくとも一つ(成分C)が含まれており、成分Cによって、成分Aによる成分Bの酸化劣化が抑制され、セリア溶解性の経時変化が抑制され、経時的にセリア溶解性が低下することが抑制されると考えられる。
但し、本開示はこのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0019】
本開示においてセリア溶解性の経時変化とは、調製直後の洗浄剤組成物によるセリアの溶解性と、調製してから時間が経過した後(例えば、1週間〜1ヶ月)の洗浄剤組成物によるセリアの溶解性とが異なることをいう。洗浄剤組成物の洗浄性能の点から、セリア溶解性の経時変化は小さいほど好ましい。
【0020】
[成分A:硫酸]
本開示に係る洗浄剤組成物に含まれる成分Aは、硫酸である。
【0021】
本開示に係る洗浄剤組成物の洗浄時における成分Aの含有量は、セリア溶解促進の観点から、0.005質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上がさらに好ましく、0.25質量%以上がさらにより好ましく、そして、セリア溶解性の経時変化抑制の観点から、0.5質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましく、0.2質量%以下がさらに好ましく、0.1質量%以下がさらにより好ましい。
【0022】
本開示において「洗浄剤組成物の洗浄時における各成分の含有量」とは、一又は複数の実施形態において、洗浄工程に使用される洗浄剤組成物の各成分の含有量をいう。
【0023】
[成分B:アスコルビン酸]
本開示に係る洗浄剤組成物に含まれる成分Bは、アスコルビン酸である。成分Bは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。成分Bとしては、例えば、L-アスコルビン酸、エリソルビン酸及びこれらの塩から選ばれる1種以上が挙げられ、セリア溶解性促進の観点から、L−アスコルビン酸及びその塩から選ばれる1種以上が好ましく、L−アスコルビン酸がより好ましい。
【0024】
本開示に係る洗浄剤組成物の洗浄時における成分Bの含有量は、セリア溶解促進及びセリア溶解性の経時変化抑制の観点から、0.0005質量%以上が好ましく、0.001質量%以上がより好ましく、0.002質量%以上がさらに好ましく、0.003質量%以上がさらにより好ましく、そして、排水処理負荷低減の観点から、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.2質量%以下がさらに好ましく、0.1質量%以下がさらにより好ましく、0.05質量%以下がさらにより好ましい。
【0025】
本開示に係る洗浄剤組成物中の成分Aの含有量に対する成分Bの含有量の質量比B/Aは、セリア溶解促進の観点から、0.01以上が好ましく、0.02以上がより好ましく、0.05以上がさらに好ましく、そして、同様の観点から、2以下が好ましく、1以下がより好ましく、0.7以下がさらに好ましい。
【0026】
[成分C]
本開示に係る洗浄剤組成物に含まれる成分Cは、チオ尿素及びジチオトレイトールから選ばれる少なくとも1種であり、セリア溶解性の経時変化抑制の観点から、チオ尿素がより好ましい。成分Cは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
本開示に係る洗浄剤組成物の洗浄時における成分Cの含有量は、セリア溶解促進の観点から、0.0005質量%以上が好ましく、0.001質量%以上がより好ましく、0.002質量%以上がさらに好ましく、0.003質量%以上がさらにより好ましく、セリア溶解性の経時変化抑制の観点から、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.2質量%以下がさらに好ましく、0.1質量%以下がさらにより好ましく、0.05質量%以下がさらにより好ましい。
【0028】
本開示に係る洗浄剤組成物の洗浄時における成分B及び成分Cの合計含有量は、セリア溶解促進の観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.002質量%以上がより好ましく、0.004質量%以上がさらに好ましく、そして、排水処理負荷低減の観点から、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.2質量%以下がさらに好ましく、0.1質量%以下がさらにより好ましく、0.05質量%以下がさらにより好ましい。
【0029】
本開示に係る洗浄剤組成物中の成分Cの含有量に対する成分Bの含有量の質量比B/Cは、セリア溶解促進の観点から、0.05以上が好ましく、0.1以上がより好ましく、0.2以上がさらに好ましく、そして、セリア溶解性の経時変化抑制の観点から、10以下が好ましく、7以下がより好ましく、5以下がさらに好ましい。
【0030】
本開示に係る洗浄剤組成物中の成分Aの含有量に対する成分Bと成分Cの合計含有量の質量比(B+C)/Aは、セリア溶解促進の観点から、0.01以上が好ましく、0.02以上がより好ましく、0.03以上がさらに好ましく、そして、セリア溶解性の経時変化抑制の観点から、3以下が好ましく、2以下がより好ましく、1.5以下がさらに好ましい。
【0031】
[成分D:水]
本開示に係る洗浄剤組成物に含まれる成分Dは、水である。成分Dとしては、例えば、イオン交換水、RO水、蒸留水、純水、超純水等の水が使用されうる。本開示に係る洗浄剤組成物中の成分Dの含有量は、洗浄剤組成物の使用態様にあわせて適宜設定することができる。
【0032】
本開示に係る洗浄剤組成物の洗浄時における成分Dの含有量は、セリア溶解促進の観点から、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以上がさらに好ましく、99.5質量%以上がさらにより好ましく、そして、同様の観点から、99.99質量%以下が好ましく、99.95質量%以下がより好ましく、99.9質量%以下がさらに好ましい。
【0033】
[成分E:分散剤]
本開示に係る洗浄剤組成物は、分散剤(成分E)をさらに含有することができる。
通常、基板表面に残留する研磨くずや研磨砥粒由来の異物は、一旦基板から剥離しても、基板表面へ再付着しやすいため、洗浄剤組成物には異物の高い分散性を有することも求められる。特に、研磨砥粒にセリア及びシリカが含まれる場合、洗浄剤組成物にはセリア及びシリカの高い分散性が求められる。これに対し、本開示に係る洗浄剤組成物が成分Eを含有する場合、基板表面に付着する研磨屑並びに研磨砥粒由来のセリアやシリカの分散性が向上し、セリアに対する洗浄性が相乗的に向上すると考えられる。よって、成分Eを含む本開示に係る洗浄剤組成物は、セリア及びシリカを含む研磨液組成物を用いたCMP後の基板の洗浄に好適に用いられうる。本開示において、洗浄剤組成物中におけるセリア及びシリカの分散性を「セリア−シリカ分散性」ともいう。
【0034】
成分Eとしては、一実施形態において、例えば、下記式(I)で表される化合物、下記式(II)で表される化合物、下記式(III)で表される化合物、カルボン酸基を有するビニル系モノマー由来の構成単位e1を含むポリマー、スルホン酸基を有するビニル系モノマー由来の構成単位e2を含むポリマー、及びスルホン酸基を有する芳香族モノマー由来の構成単位e3を含むポリマーから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。成分Eは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
前記式(I)において、Rは、セリア−シリカ分散性向上の観点から、炭素数10以上22以下の炭化水素基が好ましい。Rの炭素数は、同様の観点から、10以上が好ましく、12以上がより好ましく、16以上がさらに好ましく、そして、22以下が好ましく、20以下がより好ましい。
前記式(I)において、EOはエチレンオキサイド基を示し、POはプロピレンオキサイド基を示し、m及びpはEOの平均付加モル数を示し、n及びqはPOの平均付加モル数を示す。m及びpはそれぞれ独立に、セリア−シリカ分散性向上の観点から、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、5以上がさらに好ましく、7以上がよりさらに好ましく、そして、20以下が好ましく、18以下がより好ましく、15以下がさらに好ましい。n及びqはそれぞれ独立に、セリア−シリカ分散性向上の観点から、0以上が好ましく、そして、5以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下がさらに好ましく、1以下がよりさらに好ましい。m+pは、セリア−シリカ分散性向上の観点から、5以上が好ましく、7以上がより好ましく、10以上がさらに好ましく、15以上がよりさらに好ましく、そして、34以下が好ましく、30以下がより好ましく、25以下がさらに好ましく、20以下がよりさらに好ましい。m+pの数値とRの炭素数の比[(m+p)/Rの炭素数]は、セリア−シリカ分散性向上の観点から、0.3以上が好ましく、0.35以上がより好ましく、0.4以上がさらに好ましく、0.6以上がよりさらに好ましく、そして、1.7以下が好ましく、1.6以下がより好ましく、1.2以下がさらに好ましい。EOとPOの配列はブロックでもランダムでもよい。
式(I)で表される化合物としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンステアリルアミン等が挙げられる。
【0037】
R
2O−(AO)r−SO
3M (II)
【0038】
前記式(II)において、R
2は、セリア−シリカ分散性向上の観点から、炭素数1以上24以下の炭化水素基が好ましい。R
2の炭素数は、同様の観点から、1以上が好ましく、6以上がより好ましく、8以上がさらに好ましく、そして、24以下が好ましく、20以下がより好ましく、18以下がさらに好ましい。
前記式(II)において、AOは、セリア−シリカ分散性向上の観点から、炭素数2以上4以下のアルキレンオキシド基が好ましく、エチレンオキシド基及び/又はプロピレンオキシド基がより好ましい。AOは1種でも2種以上でもよい。AOが2種以上の場合、その付加形式はランダムでもブロックでもよい。
前記式(II)において、rは、AOの平均付加モル数を示し、セリア−シリカ分散性向上の観点から、0以上が好ましく、そして、90以下が好ましく、30以下がより好ましく、20以下がさらに好ましい。Mは、セリア−シリカ分散性向上の観点から、水素原子又は陽イオンが好ましく、すすぎ性の観点から、水素原子が好ましい。
式(II)で表される化合物としては、例えば、ポリオキシエチレンオクチル硫酸エステル、ポリオキシエチレンオクチル硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレンラウリル硫酸エステル、ポリオキシエチレンラウリル硫酸エステルナトリウム塩等が挙げられる。
【0039】
R
3O−(AO)s−SO
3Q (III)
【0040】
前記式(III)において、R
3は、セリア−シリカ分散性向上の観点から、水素原子又は−SO
3Qが好ましい。
前記式(III)において、AOは、セリア−シリカ分散性向上の観点から、炭素数2以上4以下のアルキレンオキシド基が好ましく、エチレンオキシド基及び/又はプロピレンオキシド基がより好ましい。AOは1種でも2種以上でもよい。AOが2種以上の場合、その付加形式はランダムでもブロックでもよい。
前記式(III)において、sは、AOの平均付加モル数を示し、セリア−シリカ分散性向上の観点から、10以上が好ましく、20以上がより好ましく、30以上がさらに好ましく、そして、130以下が好ましく、100以下がより好ましく、85以下がさらに好ましい。Qは、セリア−シリカ分散性向上の観点から、水素原子又は陽イオンが好ましく、すすぎ性の観点から、水素原子が好ましい。
式(III)で表される化合物としては、例えば、ポリオキシエチレン硫酸エステル、ポリオキシエチレン硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレンジ硫酸エステル、ポリオキシエチレンジ硫酸エステルナトリウム塩等が挙げられる。
【0041】
構成単位e1の供給源であるカルボン酸基を有するビニル系モノマー(以下、単に「モノマーe1」ともいう)は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム等のアルカリ土類金属;アンモニウム;トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
構成単位e1を含むポリマーとしては、例えば、モノマーe1のホモポリマー、モノマーe1と該モノマーe1以外のモノマーとのコポリマー等が挙げられる。構成単位e1を含むポリマーの具体例としては、ポリアクリル酸、アクリル酸/マレイン酸共重合物、メタクリル酸/モノメトキシポリオキシエチレンメタクリル酸エステル共重合物等が挙げられる。
【0042】
構成単位e2の供給源であるスルホン酸基を有するビニル系モノマー(以下、単に「モノマーe2」ともいう)は、2−ヒドロキシ−3−(アリルオキシ)−1−プロパンスルホン酸(HAPS)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸(ATBS)、ビニルスルホン酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。塩としては、上述したカルボン酸基を有するビニル系モノマーの塩を用いることができる。
構成単位e2を含むポリマーとしては、例えば、モノマーe2のホモポリマー、モノマーe2と該モノマーe2以外のモノマーとのコポリマー等が挙げられる。構成単位e2を含むポリマーの具体例としては、アクリル酸/HAPS共重合物、アクリル酸/AMPS共重合物、アクリル酸/ATBS共重合物等が挙げられる。
【0043】
構成単位e3の供給源であるスルホン酸基を有する芳香族モノマー(以下、単に「モノマーe3」ともいう)は、スチレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、エチルナフタレンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。塩としては、上述したカルボン酸基を有するビニル系モノマーの塩を用いることができる。
構成単位e3を含むポリマーとしては、例えば、モノマーe3のホモポリマー、モノマーe3と該モノマーe3以外のモノマーとのコポリマー、モノマーe3のホルマリン縮合物及びそれらの塩から選ばれる1種以上が挙げられる。構成単位e3を含むポリマーの具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、スチレン/スチレンスルホン酸共重合物、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物のナトリウム塩等が挙げられる。
【0044】
成分Eは、例えば、アクリル酸/HAPS共重合物、アクリル酸/AMPS共重合物、アクリル酸/ATBS共重合物等の構成単位e1、構成単位e2及び構成単位e3から選ばれる2種以上を含むポリマーであってもよい。
【0045】
成分Eが、構成単位e1、構成単位e2、及び/又は構成単位e3を含むポリマーである場合、成分Eは、構成単位e1、構成単位e2、及び構成単位e3以外の他の構成単位e4をさらに含有してもよい。他の構成単位e4としては、例えば、ポリオキシエチレンメタクリレート、ポリオキシエチレンアクリレート、ポリオキシエチレンアリルエーテル、モノメトキシポリオキシエチレンメタクリル酸エステル、ホルムアルデヒド、1−ブテン、2−ブテン、エチレン、プロペン、及びスチレンから選ばれる少なくとも1種の化合物由来の構成単位が挙げられる。
【0046】
成分Eの重量平均分子量は、セリア−シリカ分散性向上の観点から、1,000以上が好ましく、2,000以上がより好ましく、3,000以上がさらに好ましく、そして、同様の観点から、50,000以下が好ましく、20,000以下がより好ましく、10,000以下がさらに好ましい。成分Eの重量平均分子量は、実施例に示す方法により測定できる。
【0047】
本開示に係る洗浄剤組成物の洗浄時における成分Eの含有量は、セリア−シリカ分散性向上の観点から、0.02質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.08質量%以上がさらに好ましく、0.1質量%以上がさらにより好ましく、そして、排水処理負荷低減の観点から、1質量%以下が好ましく、0.7質量%以下がより好ましく、0.6質量%以下がさらに好ましく、0.5質量%以下がさらにより好ましく、0.3質量%以下がさらにより好ましく、0.2質量%以下がさらにより好ましい。
【0048】
[他の任意成分]
本開示に係る洗浄剤組成物は、上記成分A〜E以外に、必要に応じて任意成分を含有することができる。他の任意成分としては、通常洗浄剤に用いられる、ヒドロキシエチルアミノ酢酸、ヒドロキシエチルイミノ2酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸等のアミノカルボン酸塩等のキレート力を持つ化合物、還元剤、防腐剤、防錆剤、殺菌剤、抗菌剤、シリコーン系消泡剤、酸化防止剤、ヤシ脂肪酸メチルや酢酸ベンジル等のエステルあるいはアルコール類等が挙げられる。
【0049】
本開示に係る洗浄剤組成物の洗浄時における他の任意成分の含有量は、本開示の効果を妨げない観点から、0質量%以上2.0質量%以下が好ましく、0質量%以上1.5質量%以下がより好ましく、0質量%以上1.3質量%以下がさらに好ましく、0質量%以上1.0質量%以下がさらにより好ましい。
【0050】
[洗浄剤組成物のpH]
本開示に係る洗浄剤組成物の洗浄時のpHは、セリアに対する洗浄性向上の観点から、5以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下がさらに好ましく、2.5以下がさらにより好ましく、そして、1以上が好ましい。
【0051】
本開示に係る洗浄剤組成物のpH調整は、成分Aの硫酸及び成分Bのアスコルビン酸を用いて行うことができるが、例えば、硝酸等の無機酸;オキシカルボン酸、多価カルボン酸、アミノポリカルボン酸、アミノ酸等の有機酸;及びそれらの金属塩やアンモニウム塩、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アミン等の塩基性物質;等を用いて行うこともできる。本開示において「洗浄時のpH」とは、25℃における洗浄剤組成物の使用時(希釈後)のpHであり、pHメータを用いて測定できる。具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
【0052】
[洗浄剤組成物の製造方法]
本開示に係る洗浄剤組成物は、例えば、前記成分A〜D及び必要に応じて成分E及び任意成分を公知の方法で配合することにより製造できる。例えば、本開示に係る洗浄剤組成物は、少なくとも前記成分A〜Dを配合してなるものとすることができる。したがって、本開示は、一態様において、少なくとも前記成分A〜Dを配合する工程を含む、洗浄剤組成物の製造方法に関する。本開示において「配合する」とは、成分A〜D及び必要に応じて成分E及び任意成分を同時に又は任意の順に混合することを含む。本開示に係る洗浄剤組成物の製造方法において、各成分の配合量は、上述した本開示に係る洗浄剤組成物の各成分の含有量と同じとすることができる。
【0053】
本開示に係る洗浄剤組成物は、分離や析出等を起こして保管安定性を損なわない範囲で成分Eの水の量を減らした濃縮物として調製してもよい。洗浄剤組成物の濃縮物は、輸送及び貯蔵の観点から、希釈倍率10倍以上の濃縮物とすることが好ましく、保管安定性の観点から、希釈倍率100倍以下の濃縮物とすることが好ましい。洗浄剤組成物の濃縮物は、使用時に各成分が上述した含有量(すなわち、洗浄時の含有量)になるよう水で希釈して使用することができる。さらに洗浄剤組成物の濃縮物は、使用時に各成分を別々に添加して使用することもできる。本開示において洗浄剤組成物の濃縮物の「使用時」又は「洗浄時」とは、洗浄剤組成物の濃縮物が希釈された状態をいう。
【0054】
本開示に係る洗浄剤組成物の濃縮物のpHは、希釈後の洗浄性向上の観点から、5以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下がさらに好ましく、2.5以下がさらにより好ましい。本開示において洗浄剤組成物の濃縮物のpHは、上述した洗浄時のpHと同様の方法で測定できる。
【0055】
[被洗浄基板]
本開示に係る洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、セリアを含む研磨液組成物(セリアスラリー)を用いた研磨後の基板の洗浄、セリア及びシリカを含む研磨液組成物を用いた研磨後の基板の洗浄、セリアスラリーを用いたCMP後の基板の洗浄、セリア及びシリカを含む研磨液組成物を用いたCMP後の基板の洗浄、基板表面にセリア砥粒由来の異物が付着した基板の洗浄、又は、基板表面にセリア及びシリカ砥粒由来の異物が付着した基板の洗浄に使用されうる。本開示に係る洗浄剤組成物は、種々の材料及び形状の被洗浄基板に対して使用できる。被洗浄基板としては、例えば、シリコン基板、ガラス基板、セラミックス基板が挙げられる。本開示に係る洗浄剤組成物が適用可能な被洗浄基板の表面材料は特に限定されず、例えば、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、熱シリコン酸化膜、ノンドープシリケートガラス膜、リンドープシリケートガラス膜、ボロンドープシリケートガラス膜、リンボロンドープシリケートガラス膜、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)膜、プラズマCVD酸化膜、シリコン窒化膜、シリコンカーバイド膜、シリコンオキサイドカーバイド膜、又はシリコンオキサイドカーバイドナイトライド膜等が挙げられる。さらに、ガラス、石英、水晶、セラミックス等も挙げられる。被洗浄基板としては、これら材料単独で構成されるものでもよいし、2種以上の材料がある分布を持ってパターニングされたものや積層されたものでもよい。
【0056】
[基板洗浄方法]
本開示は、一態様において、本開示に係る洗浄剤組成物を用いて被洗浄基板を洗浄する洗浄工程を含む、半導体デバイス用基板の洗浄方法(以下、「本開示に係る洗浄方法」ともいう)に関する。被洗浄基板としては、上述した基板を用いることができる。前記洗浄工程は、一又は複数の実施形態において、被洗浄基板に本開示に係る洗浄剤組成物を接触させる工程を含むことができる。被洗浄基板を本開示に係る洗浄剤組成物を用いて洗浄する方法としては、例えば、洗浄槽に浸漬して接触させる方法、超音波洗浄装置の浴槽内で接触させる方法、洗浄剤組成物をスプレー状に射出して接触させる方法、回転させている被洗浄基板上に洗浄剤組成物を吐出させたり、吹き付けたりして接触させる方法、超音波を洗浄剤組成物に印加しながらスプレー状に射出して接触させる方法及び洗浄剤組成物を吹きかけながらブラシ等を介して接触させる方法等が挙げられる。
【0057】
本開示に係る洗浄剤組成物が濃縮物である場合、本開示に係る洗浄方法は、洗浄剤組成物の濃縮物を希釈する希釈工程をさらに含むことができる。本開示に係る洗浄方法は、被洗浄基板を洗浄剤組成物に接触させた後、水でリンスし、乾燥する工程を含むことが好ましい。本開示の洗浄方法であれば、基板表面に残留するセリアを効率よく除去できる。本開示に係る洗浄方法による洗浄性の観点から、CMPには、セリアを含む研磨液組成物、又は、セリア及びシリカを含む研磨液組成物を用いることが好ましい。本開示に係る洗浄方法は、本開示に係る洗浄剤組成物の洗浄力が発揮されやすい点から、本開示に係る洗浄剤組成物と被洗浄基板との接触時に超音波を照射することが好ましく、その超音波は比較的強いものであることがより好ましい。超音波の照射条件としては、同様の観点から、20〜2,000kHzが好ましく、40〜2,000kHzがより好ましく、40〜1,500kHzがさらに好ましい。
【0058】
[半導体デバイス用基板の製造方法]
本開示は、一態様において、本開示に係る洗浄剤組成物を用いて、被洗浄基板を洗浄する洗浄工程を含む、半導体デバイス用基板の製造方法(以下、「本開示に係る基板製造方法」ともいう)に関する。被洗浄基板としては、上述した基板を用いることができる。本開示に係る基板製造方法の洗浄工程における洗浄方法や洗浄条件は、上述した本開示に係る洗浄方法の洗浄工程と同じとすることができる。本開示に係る基板製造方法は、例えば、素子分離構造を形成する工程で行われるセリアを含む研磨液組成物(セリアスラリー)を用いてCMPを行う工程、及び本開示に係る洗浄剤組成物を用いて被洗浄基板を洗浄する工程を含むことができる。
【0059】
ここで、CMPを行う工程の具体例を以下に示す。
まず、シリコン基板を酸化炉内で酸素に晒して二酸化シリコン層を含むシリコン基板を形成する。次いで、シリコン基板の二酸化シリコン層側、例えば二酸化シリコン層上に、窒化珪素(Si
3N
4)膜を、例えばCVD法(化学気相成長法)にて形成する。次に、このようにして得られたシリコン基板と前記シリコン基板の一方の主面側に配置された窒化珪素膜とを含む基板、例えば、シリコン基板とシリコン基板の一方の主面上に配置された窒化珪素膜とを含む基板、又はシリコン基板とシリコン基板の一方の主面上に配置された窒化珪素膜とからなる基板に、フォトリソグラフィー技術を用いて窒化珪素膜を貫通し溝底がシリコン基板内に達したトレンチを形成する。次いで、例えばシランガスと酸素ガスを用いたCVD法により、トレンチ埋め込み用の酸化珪素(SiO
2)膜を形成し、前記トレンチに酸化珪素が埋め込まれ、トレンチ及び窒化珪素膜が酸化珪素膜で覆われた被研磨基板を得る。酸化珪素膜の形成により、前記トレンチは酸化珪素膜の酸化珪素で満たされ、窒化珪素膜の前記シリコン基板側の面の反対面は酸化珪素膜によって被覆される。このようにして形成された酸化珪素膜のシリコン基板側の面の反対面は、下層の凸凹に対応して形成された、段差を有する。次いで、CMP法により、酸化珪素膜を、少なくとも窒化珪素膜のシリコン基板側の面の反対面が露出するまでセリアスラリーで研磨し、より好ましくは、酸化珪素膜の表面と窒化珪素膜の表面とが面一になるまで酸化珪素膜を研磨する。
【0060】
本開示に係る基板製造方法は、被洗浄基板の洗浄に本開示に係る洗浄剤組成物を用いることにより、CMP後の基板表面に残留する砥粒や研磨屑等の異物が低減され、異物が残留することに起因する後工程における不良発生が抑制されるから、信頼性の高い半導体デバイス用基板の製造が可能になる。さらに、本開示に係る洗浄方法を行うことにより、CMP後の基板表面の砥粒や研磨屑等の残渣の洗浄が容易になることから、洗浄時間が短縮化でき、半導体デバイス用基板の製造効率を向上できる。
【0061】
[キット]
本開示は、一態様において、本開示に係る洗浄方法及び/又は本開示に係る基板製造方法に使用するためのキットであって、本開示に係る洗浄剤組成物を構成する前記成分A〜Dのうちの少なくとも1成分を他の成分と混合されない状態で含む、キットに関する。
【0062】
本開示に係るキットの一実施形態としては、例えば、成分Aを含有する溶液(第1液)と、成分B〜Dを含有する溶液(第2液)とを、相互に混合されていない状態で含み、これらが使用時に混合されるキット(2液型洗浄剤組成物)が挙げられる。前記第1液及び第2液の各々には、必要に応じて上述した成分E及び任意成分が混合されていてもよい。前記第1液と前記第2液とが混合された後、必要に応じて水系媒体で希釈されてもよい。
【0063】
本開示に係るキットの他の実施形態としては、例えば、成分Aを含有する溶液(第1液)と、成分Bを含有する溶液(第2液)と、成分Cを含有する溶液(第3液)とを、相互に混合されていない状態で含み、第1液及び第2液の少なくとも一方は成分Dをさらに含有し、第1液、第2液及び第3液が使用時に混合されるキット(3液型洗浄剤組成物)が挙げられ、前記第1液、第2液及び第3液の各々には、必要に応じて上述した成分E及び任意成分が混合されていてもよい。前記第1液、前記第2液及び前記第3液が混合された後、必要に応じて水系媒体で希釈されてもよい。
【0064】
本開示は、さらに以下の洗浄剤組成物、洗浄方法、製造方法及びキットに関する。
<1> 下記成分A、下記成分B、下記成分C及び下記成分Dを含有する、半導体デバイス用基板用の洗浄剤組成物。
成分A:硫酸
成分B:アスコルビン酸
成分C:チオ尿素及びジチオトレイトールの少なくとも一つ
成分D:水
【0065】
<2> 洗浄時における成分Aの含有量は、0.005質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上がさらに好ましく、0.25質量%以上がさらにより好ましい、<1>に記載の洗浄剤組成物。
<3> 洗浄時における成分Aの含有量は、0.5質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましく、0.2質量%以下がさらに好ましく、0.1質量%以下がさらにより好ましい、<1>又は<2>に記載の洗浄剤組成物。
<4> 洗浄時における成分Bの含有量は、0.0005質量%以上が好ましく、0.001質量%以上がより好ましく、0.002質量%以上がさらに好ましく、0.003質量%以上がさらにより好ましい、<1>から<3>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<5> 洗浄時における成分Bの含有量は、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.2質量%以下がさらに好ましく、0.1質量%以下がさらにより好ましく、0.05質量%以下がさらにより好ましい、<1>から<4>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<6> 成分Aの含有量に対する成分Bの含有量の質量比B/Aは、0.01以上が好ましく、0.02以上がより好ましく、0.05以上がさらに好ましい、<1>から<5>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<7> 成分Aの含有量に対する成分Bの含有量の質量比B/Aは、2以下が好ましく、1以下がより好ましく、0.7以下がさらに好ましい、<1>から<6>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<8> 洗浄時における成分Cの含有量は、0.0005質量%以上が好ましく、0.001質量%以上がより好ましく、0.002質量%以上がさらに好ましく、0.003質量%以上がさらにより好ましい、<1>から<7>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<9> 洗浄時における成分Cの含有量は、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.2質量%以下がさらに好ましく、0.1質量%以下がさらにより好ましく、0.05質量%以下がさらにより好ましい、<1>から<8>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<10> 洗浄時における成分B及び成分Cの合計含有量は、0.001質量%以上が好ましく、0.002質量%以上がより好ましく、0.004質量%以上がさらに好ましい、<1>から<9>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<11> 洗浄時における成分B及び成分Cの合計含有量は、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.2質量%以下がさらに好ましく、0.1質量%以下がさらにより好ましく、0.05質量%以下がさらにより好ましい、<1>から<10>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<12> 成分Cの含有量に対する成分Bの含有量の質量比B/Cは、0.05以上が好ましく、0.1以上がより好ましく、0.2以上がさらに好ましい、<1>から<11>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<13> 成分Cの含有量に対する成分Bの含有量の質量比B/Cは、10以下が好ましく、7以下がより好ましく、5以下がさらに好ましい、<1>から<12>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<14> 成分Aの含有量に対する成分Bと成分Cの合計含有量の質量比(B+C)/Aは、0.01以上が好ましく、0.02以上がより好ましく、0.03以上がさらに好ましい、<1>から<13>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<15> 成分Aの含有量に対する成分Bと成分Cの合計含有量の質量比(B+C)/Aは、3以下が好ましく、2以下がより好ましく、1.5以下がさらに好ましい、<1>から<14>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<16> 洗浄時における成分Dの含有量は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以上がさらに好ましく、99.5質量%以上がさらにより好ましい、<1>から<15>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<17> 洗浄時における成分Dの含有量は、99.99質量%以下が好ましく、99.95質量%以下がより好ましく、99.9質量%以下がさらに好ましい、<1>から<16>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<18> さらに、分散剤(成分E)を含有する、<1>から<17>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<19> 成分Eは、下記式(I)で表される化合物、下記式(II)で表される化合物、下記式(III)で表される化合物、カルボン酸基を有するビニル系モノマー由来の構成単位e1を含むポリマー、スルホン酸基を有するビニル系モノマー由来の構成単位e2を含むポリマー、及びスルホン酸基を有する芳香族モノマー由来の構成単位e3を含むポリマーから選ばれる少なくとも1種である、<18>に記載の洗浄剤組成物。
【化2】
前記式(I)において、Rは、炭素数10以上22以下の炭化水素基を示し、EOはエチレンオキサイド基を示し、POはプロピレンオキサイド基を示し、m及びpはEOの平均付加モル数を示し、n及びqはPOの平均付加モル数を示し、m及びpはそれぞれ独立に2以上20以下の数であり、n及びqはそれぞれ独立に0以上5以下の数であり、m+pは5以上34以下であり、m+pの数値とRの炭素数の比[(m+p)/Rの炭素数]は0.3以上1.7以下であり、EOとPOの配列はブロックでもランダムでもよい。
R
2O−(AO)r−SO
3M (II)
前記式(II)において、R
2は、炭素数1以上24以下の炭化水素基を示し、AOは、炭素数2以上4以下のアルキレンオキシド基を示し、rは、AOの平均付加モル数であって0以上90以下の数を示し、Mは、水素原子又は陽イオンを示す。
R
3O−(AO)s−SO
3Q (III)
前記式(III)において、R
3は、水素原子又は−SO
3Qを示し、AOは、炭素数2以上4以下のアルキレンオキシド基を示し、sは、AOの平均付加モル数であって10以上130以下の数を示し、Qは、水素原子又は陽イオンを示す。
<20> 成分Eの重量平均分子量は、1,000以上が好ましく、2,000以上がより好ましく、3,000以上がさらに好ましい、<18>又は<19>に記載の洗浄剤組成物。
<21> 成分Eの重量平均分子量は、50,000以下が好ましく、20,000以下がより好ましく、10,000以下がさらに好ましい、<18>から<20>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<22> 洗浄時における成分Eの含有量は、0.02質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.08質量%以上がさらに好ましく、0.1質量%以上がさらにより好ましい、<18>から<21>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<23> 洗浄時における成分Eの含有量は、1質量%以下が好ましく、0.7質量%以下がより好ましく、0.6質量%以下がさらに好ましく、0.5質量%以下がさらにより好ましく、0.3質量%以下がさらにより好ましく、0.2質量%以下がさらにより好ましい、<18>から<22>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<24> 洗浄時のpHは、5以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下がさらに好ましく、2.5以下がさらにより好ましい、<1>から<23>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<25> 洗浄時のpHは、1以上が好ましい、<1>から<24>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<26> 洗浄剤組成物の濃縮物のpHは、5以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下がさらに好ましく、2.5以下がさらにより好ましい、<1>から<25>のいずれかに記載の洗浄時組成物。
<27> <1>から<26>のいずれかの洗浄剤組成物の製造方法であって、少なくとも前記成分A〜Dを配合する工程を含む、洗浄剤組成物の製造方法。
<28> <1>から<26>の洗浄剤組成物の、セリアを含む研磨液組成物(セリアスラリー)を用いた研磨後の基板の洗浄への使用、セリア及びシリカを含む研磨液組成物を用いた研磨後の基板の洗浄への使用、セリアスラリーを用いたCMP後の基板の洗浄への使用、セリア及びシリカを含む研磨液組成物を用いたCMP後の基板の洗浄への使用、又は、基板表面にセリア砥粒由来の異物が付着した基板の洗浄への使用。
<29> <1>から<26>のいずれかに記載の洗浄剤組成物を用いて被洗浄基板を洗浄する洗浄工程を含み、前記被洗浄基板は、セリアを含む研磨液組成物を用いた研磨後の基板である、半導体デバイス用基板の洗浄方法。
<30> <1>から<26>のいずれかに記載の洗浄剤組成物を用いて被洗浄基板を洗浄する洗浄工程を含み、前記被洗浄基板は、セリアを含む研磨液組成物を用いた研磨後の基板である、半導体デバイス用基板の製造方法。
<31> <29>に記載の半導体デバイス用基板の洗浄方法及び/又は<30>に記載の半導体デバイス用基板の製造方法に使用するためのキットであって、<1>から<26>のいずれかに記載の洗浄剤組成物を構成する前記成分A〜Dのうちの少なくとも1成分を他の成分と混合されない状態で含む、キット。
【実施例】
【0066】
以下に、実施例により本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0067】
1.洗浄剤組成物の濃縮物の調製(実施例1〜11及び比較例1〜6)
100mLガラスビーカーに、表1に示す含有量となるように、各成分を秤量し、下記条件で混合することにより、実施例1〜11及び比較例1〜6の洗浄剤組成物の濃縮物を調製した。表1中の各成分の数値は、断りのない限り、質量%であり、有効分で示す。
<混合条件>
液温度:25℃
攪拌機:マグネチックスターラー(50mm回転子)
回転数:300rpm
攪拌時間:10分
【0068】
洗浄剤組成物に含まれる各成分には以下のものを用いた。
<成分A:酸>
A1:硫酸(和光純薬工業株式会社製、高純度特級)
A2:リン酸(和光純薬工業株式会社製、試薬特級、85質量%)(非成分A)
<成分B:アスコルビン酸>
B1:アスコルビン酸(関東化学株式会社製、L(+)‐アスコルビン酸(特級))
B2:過酸化水素(和光純薬工業株式会社製、精密分析用、33質量%)(非成分B)
<成分C:>
C1:チオ尿素(ナカライテスク株式会社製、JIS試薬特級)
C2:ジチオトレイトール(東京化成工業株式会社製、DL-ジチオトレイトール)
C3:システイン(和光純薬工業株式会社製、L−システイン(特級))(非成分C)
<成分D:水>
D:栗田工業株式会社製の連続純水製造装置(ピュアコンティ PC-2000VRL型)
とサブシステム(マクエース KC-05H型)を用いて製造した超純水
<成分E:分散剤>
E1:ポリオキシエチレン(20モル)ステアリルアミン(青木油脂工業株式会社製、ブラウノン S−220)
E2:メタクリル酸/モノメトキシポリオキシエチレン(23モル)メタクリル酸エステル(モル比73/23)共重合体のナトリウム塩(40質量%水溶液、重量平均分子量:50,000)
E3:β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(40質量%水溶液、重量平均分子量:5,000)
【0069】
2.重量平均分子量の測定
使用した各ポリマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下「GPC」ともいう)法を用いて下記条件で測定した。測定結果を表1に示した。
<GPC条件>
カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソー株式会社製)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CH
3CN=9/1(体積比)
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:RI
サンプル濃度:0.5mg/mL
標準物質:ポリエチレングリコール換算
【0070】
3.洗浄剤組成物の評価
調製した実施例1〜11及び比較例1〜6の洗浄剤組成物の濃縮物を用いて下記の評価を行った。
【0071】
[セリア溶解性の評価]
ポリエチレン製50mL広口瓶に、各洗浄剤組成物の濃縮物0.5gと水19.5gとを添加し、40倍希釈された洗浄剤組成物(実施例1〜11及び比較例1〜6)を調製した。調製した洗浄剤組成物(以下、「洗浄時の洗浄剤組成物」ともいう)中の各成分A〜C、Eの含有量及びpHを表2に示した。表2中の各成分の数値は、断りのない限り、質量%であり、有効分で示す。成分A〜C及びEを除いた残余は、成分Dの水である。表2中のpHは、25℃における洗浄剤組成物のpHであり、pHメータ(東亜ディーケーケー株式会社製、HM−30G)を用いて測定し、電極を洗浄剤組成物に浸漬して40分後の数値である。
そして、洗浄時の洗浄剤組成物にセリア(平均粒径200nm)1.5gを添加しマグネチックスターラーを用いて回転数200rpmで15分間撹拌する。その後、フィルター[メンブレンフィルター(セルロース混合エステル)VMWP02500、孔径0.05μm、メルク株式会社製]にてろ過する。ろ液を下記セリア濃度測定方法にて測定し、得られたセリウム(Ce)イオン濃度からセリア溶解量(ppm)を算出する。
各洗浄剤組成物の濃縮物を調製してから25℃で14日間保管した後、上記と同様の手順で、洗浄時の洗浄剤組成物(40倍希釈後)を調製し、セリア溶解量(ppm)を測定する。
そして、調製直後の濃縮物から得た洗浄時の洗浄剤組成物を用いた場合のセリア溶解量を「セリア溶解量1」、14日保管後の濃縮物から得た洗浄時の洗浄剤組成物を用いた場合のセリア溶解量を「セリア溶解量2」とし、下記式にて、溶解性維持率(%)を算出する。セリア溶解量1、セリア溶解量2及び溶解維持率の結果を表2に示す。セリア溶解量が多いほど、セリアに対する洗浄性に優れることを示す。溶解維持率が高いほど、セリア溶解性の経時変化が抑制されていることを示す。
溶解性維持率(%)=セリア溶解量2(ppm)÷セリア溶解量1(ppm)×100
【0072】
<セリア濃度測定方法>
ろ液0.5gに超純水9.5gを添加して20倍希釈溶液を調製し、測定試料中のセリウムイオンの濃度をICP発光分光分析装置(パーキンエルマー社製、Optima 5300)を用いて測定する。
【0073】
[セリア−シリカ分散性の評価]
下記スラリーを用いて、下記手順でセリア−シリカ沈降安定性試験を行い、セリア−シリカ分散性を評価した。
<スラリー>
セリアスラリー:セリア粒子の濃度10%、セリアの平均粒径200nm、水媒体
シリカスラリー:シリカ粒子の濃度20%、シリカの平均粒径200nm、水媒体
<沈降安定性試験>
30mL蓋付き試験管に、各洗浄剤組成物の濃縮物0.25g及び水9.75gと、セリアスラリー0.1g、シリカスラリー0.05g及び水0.05gとを添加し、上下に30回振とうする。振とう直後の上澄みと静置後1時間の上澄みを0.5gずつ採取し、それぞれに各洗浄剤組成物の濃縮物と超純水を質量比で各洗浄剤組成物の濃縮物/超純水=2.5/97.5で調整した希釈液9.5gを添加し、UV吸光光度計(株式会社島津製作所製、UV−2700)を用いて、660nmの波長で吸光度を測定する。下記の式で沈降安定性を算出する。算出結果を表1に示した。沈降安定性から、セリア−シリカ分散性を評価することができる。表1では、算出結果の数値が大きいほど、セリア分散性及びシリカ分散性が良好で、基板への再付着の抑制効果が高く、洗浄性に優れることを示す。
沈降安定性=(1時間後の上澄みの吸光度÷振とう直後の上澄みの吸光度)×100
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
表2に示すとおり、成分A〜Dを含む実施例1〜11は、セリア溶解性が高く、セリア洗浄性に優れており、また、セリア溶解性の経時変化が抑制されていた。さらに、成分A〜Dに加えてさらに成分Eを含む実施例10〜11は、セリア−シリカ分散性に優れていた。一方、成分Aを含まない比較例1は、セリア洗浄性が良好ではなかった。成分Bを含まない比較例2、5は、セリア洗浄性が良好ではなく、セリア溶解性が経時的に減少していた。成分Cを含まない比較例3、4、6は、セリア溶解性が経時的に減少していた。