特許第6847671号(P6847671)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6847671
(24)【登録日】2021年3月5日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】セラミックス部材
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20210315BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   H01L21/68 R
   H02N13/00 D
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-4699(P2017-4699)
(22)【出願日】2017年1月13日
(65)【公開番号】特開2018-113422(P2018-113422A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2019年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅家 篤
【審査官】 三浦 みちる
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−209755(JP,A)
【文献】 特開2000−344584(JP,A)
【文献】 特開平10−144778(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1196441(KR,B1)
【文献】 特開2004−273736(JP,A)
【文献】 特開2014−091676(JP,A)
【文献】 特開2004−253786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部が形成された基材と、
前記凹部の底に配置された電極と、
前記凹部の底に前記電極が配置された状態で、前記凹部に挿入されて前記凹部を閉塞する閉塞部と、
前記凹部と前記閉塞部とを接合する接合部と、
を備えるセラミックス部材であって、
前記凹部には、前記電極の周囲に位置させて前記凹部の深さ方向において前記閉塞部の周縁と少なくとも一部が重なる段部が設けられており、
前記閉塞部の前記電極と対向する対向面は、前記電極の外面と接触していることを特徴とするセラミックス部材。
【請求項2】
請求項1に記載のセラミックス部材であって、
前記凹部の周面と前記段部の前記凹部の開口側の面とは、曲面又は前記凹部の周面及び前記段部の前記凹部の開口側の面との間で鈍角をなす平面で接続されていることを特徴とするセラミックス部材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のセラミックス部材であって、
前記閉塞部の前記電極側の端部の外周縁は曲面又は前記外周縁に隣接する閉塞部の面との間で鈍角をなす平面であることを特徴とするセラミックス部材。
【請求項4】
凹部が形成された基材と、
前記凹部の底に配置された電極と、
前記凹部の底に前記電極が配置された状態で、前記凹部に挿入されて前記凹部を閉塞する閉塞部と、
前記凹部と前記閉塞部とを接合する接合部と、
を備えるセラミックス部材であって、
前記凹部には、前記電極の周囲に位置させて前記凹部の深さ方向において前記閉塞部の周縁と少なくとも一部が重なる段部が設けられており、
前記閉塞部の対向面に陥没した陥没部が設けられ、
前記電極の外面は、段部の係止面よりも上方であって、前記陥没部内に位置していることを特徴とするセラミックス部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極が埋設されたセラミックス部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、凹部が形成された基材と、凹部の底に配置された電極と、凹部の底に電極が配置された状態で、凹部に挿入されて凹部を閉塞する閉塞部と、凹部と閉塞部とを接着剤などで接合する接合部とを備えるセラミックス部材が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4419579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のセラミックス部材、特にセラミックス製の静電チャックでは、閉塞部を基材に設けられた凹部に押し込み過ぎると、電極を介して凹部の底を形成する基材の部分に過度な応力が作用することで基材が損傷し十分な絶縁性を保てなくなる虞がある。逆に、閉塞部の凹部への押し込みが不十分だと、閉塞部を凹部内で固定するための接着剤で構成される接合部が閉塞部と電極又は凹部の周面との間に十分に入り込めずに、空洞部(巣)ができてセラミックス部材の耐電圧性能が低下する虞がある。
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、閉塞部を押し込み過ぎることなく且つ耐電圧性能の低下を防止又は抑制することができるセラミックス部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]上記目的を達成するため、本発明は、
凹部が形成された基材と、
前記凹部の底に配置された電極と、
前記凹部の底に前記電極が配置された状態で、前記凹部に挿入されて前記凹部を閉塞する閉塞部と、
前記凹部と前記閉塞部とを接合する接合部と、
を備えるセラミックス部材であって、
前記凹部には、前記電極の周囲に位置させて前記凹部の深さ方向において前記閉塞部の周縁と少なくとも一部が重なる段部が設けられており、
前記閉塞部の前記電極と対向する対向面は、前記電極の外面と接触していることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、凹部の閉塞部の周縁と重なる位置に段部が設けられているため、凹部に押し込められた閉塞部を段部で受けることもできる。従って、段部で閉塞部の過度な押し込みを規制することができ、セラミックス部材の耐電圧性能の低下を防止又は抑制することができる。
【0008】
即ち、閉塞部を受ける段部が凹部に設けられることによって、閉塞部を凹部に押し込む際に、電極を過度に押し込むことなく閉塞部によって凹部に設けられている接着剤に十分な圧力を加えることができる。その結果、電極から凹部の外側にまで達する空洞部が形成されることが抑制され、セラミックス部材の絶縁性を高めることができる。
【0009】
[2]また、本発明においては、前記凹部の周面と前記段部の前記凹部の開口側の面とが、曲面又は前記凹部の周面及び前記段部の前記凹部の開口側の面との間で鈍角をなす平面で接続されていることが好ましい。かかる構成によれば、凹部の周面と段部の凹部の開口側の面とが接続される角部での流動抵抗を低減して、凹部と閉塞部とを接合する接着剤の凹部の外への流れをスムーズにすることができ、閉塞部の凹部への組み付けを容易とすることができる。なお、凹部の周面に直交する凹部の深さ方向に沿った断面において、曲面の曲率半径は0.2mm以上が好ましく、平面の長さは0.2mm以上が好ましい。
【0010】
[3]また、本発明においては、前記閉塞部の前記電極側の端部の外周縁が曲面又は前記外周縁に隣接する閉塞部の面との間で鈍角をなす平面であることが好ましい。かかる構成によれば、閉塞部の外周縁に対向している凹部の周面と段部の凹部の開口側の面とが接続される角部の位置での流動抵抗を低減して接着剤の凹部の外への流れをスムーズにすることができ、閉塞部の凹部への組み付けを容易とすることができる。
【0011】
[4]また、本発明は、
凹部が形成された基材と、
前記凹部の底に配置された電極と、
前記凹部の底に前記電極が配置された状態で、前記凹部に挿入されて前記凹部を閉塞する閉塞部と、
前記凹部と前記閉塞部とを接合する接合部と、
を備えるセラミックス部材であって、
前記凹部には、前記電極の周囲に位置させて前記凹部の深さ方向において前記閉塞部の周縁と少なくとも一部が重なる段部が設けられており、
前記閉塞部の対向面に陥没した陥没部が設けられ、
前記電極の外面は、段部の係止面よりも上方であって、前記陥没部内に位置していることを特徴とする。
また、本発明においては、閉塞部の電極との対向面と電極との間に隙間が形成されていることが好ましい。かかる構成によれば、閉塞部の過度な押し込みによる凹部の底を形成する基材の部分の損傷を確実に防止することができる。なお、隙間は凹部と閉塞部とを接合する接合部で満たされていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のセラミックス部材の第1実施形態を示す説明図。
図2】第1実施形態のセラミックス部材を図1のII−II線で切断して示す断面図。
図3】第1実施形態のセラミックス部材を分解して示す断面図。
図4】第1実施形態のセラミックス部材を一部拡大して示す断面図。
図5参考例のセラミックス部材を示す断面図。
図6】本発明のセラミックス部材の第実施形態を示す断面図。
図7】本発明のセラミックス部材の第実施形態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
図1から図3を参照して、本発明のセラミックス部材の第1実施形態を説明する。第1実施形態のセラミックス部材は、シリコンウェハなど半導性基板を静電吸着する静電チャック1として用いられている。図1を参照して、静電チャック1は、円盤状電気絶縁性セラミック焼結体からなる基材2と、半月形状の一対の電極3,3(半月状双極電極)と、を備える。電極3は、印刷により設置してもよく、又はモリブデン箔(例えば、厚さ0.3mm)等の導電性の箔や導電性の薄板を設置してもよい。基材2は、純度99.5%の酸化アルミニウム(Al)焼結体で構成されている。
【0014】
図2は、図1の静電チャック1を、II−II線で切断した断面を示す説明図である。図3は、図2の静電チャック1を分解した状態で示す説明図である。基材2は、図2及び図3の下方に位置する面である表面2aと、図2及び図3の上方に位置する面である裏面2bとを備える。裏面2bには、表面2aに向かって凹んだ半月形状の凹部4が互いに間隔を存して一対形成されている。基材2は直径300mm、厚さ2mmであり、凹部は深さ1.7mmに設定されている。
【0015】
凹部4の底4aには、電極3が配置される。一対の電極3の間の距離は6mmに設定されている。また、凹部4には、底4aに配置された電極3の周囲に位置させて電極3の周縁を囲うように上方へ突出した半月形状の段部5が設けられている。段部5は幅2.5mm、凹部4の底4aから高さ0.3mmに設定されている。
【0016】
また、各凹部4には、底4aに電極3を配置した状態で、凹部4を閉塞する半月形状の閉塞部6が嵌め込まれている。閉塞部6は、純度99.5%の酸化アルミニウム(Al)焼結体で構成されており、凹部4に接着剤(電気絶縁性シリコーン接着剤)を充填した状態で凹部4に嵌め込まれることにより凹部4に固定される。凹部4内の接着剤はその後に固化して接合部7(固体の接着剤)となる。段部5の高さは、電極3の外面3aと同一又は外面3aよりも若干低くなるように設定されている。従って、閉塞部6の電極3と対向する対向面6bは、電極3の外面3aと接触している。
【0017】
図4は、段部5を拡大して示す断面図である。図4に示すように、凹部4の周面4bと段部5の凹部4の開口側の面(図2図4の上方側の面)である係止面5aとは、第1曲面8で接続されている。なお、図7の本発明の第実施形態として示すように、周面4bと係止面5aとは、周面4b及び係止面5aとの間で鈍角をなす平面(第1平面11)で接続されていてもよい。
【0018】
また、閉塞部6の電極3側の端部の外周縁は第2曲面9である。なお、図7の本発明の第4実施形態として示すように、閉塞部6の電極3側の端部の外周縁は、外周縁に隣接する閉塞部6の面6b、6dとの間で鈍角をなす平面(第2平面12)であってもよい。
【0019】
この第1曲面8と第2曲面9とにより、凹部4の周面4bと段部5の係止面5aとが接続される角部での接着剤の流動抵抗を低減して、接着剤の凹部4の外への流れをスムーズにすることができ、閉塞部6の凹部4への組み付けを容易とすることができる。
【0020】
閉塞部6には、凹部4の底4aに配置された電極3と接続される端子10を挿通させる端子用孔6aが設けられている。
【0021】
本発明のセラミックス部材が適用された第1実施形態の静電チャック1によれば、凹部4に凹部4の深さ方向において閉塞部6の周縁と重なる段部5が設けられているため、凹部4に押し込められた閉塞部6を段部5で受けることもできる。従って、段部5で閉塞部6による電極3の押し潰しを規制することができ、電極3が押し潰されることを防止又は抑制して、セラミックス部材としての静電チャック1の耐電圧性能の低下を防止又は抑制することができる。
【0022】
なお、第1実施形態においては、接着剤として、有機接着剤の電気絶縁性シリコーン接着剤を用いて説明した。しかしながら、本発明の接合部としての接着剤はこれに限らず、例えば、電気絶縁性のガラス接合材や、Al−SiO系等のセラミック接着剤を用いてもよい。
【0023】
また、電極は、半月形状に限らず、他の形状(パターン)であってもよく、例えば、櫛歯形状であってもよい。この場合、電極間距離を3mm以上に設定すればよい。
【0024】
参考例
図5は、参考例のセラミックス部材を適用した静電チャック1を示している。参考例の静電チャック1は、閉塞部6の電極3と対向する対向面6bと電極3の外面3aの間に隙間Aが形成されている。隙間Aには接着剤が入り込んで固化し接合部7(固体の接着剤)が形成される。段部5は例えば幅2.5mm、凹部4の底4aから高さ1mmに設定されている。他の構成は、第1実施形態と同一に構成されている。
【0025】
参考例の静電チャック1によっても、段部5で閉塞部6による電極3の押し潰しを規制することができ、電極3が過度に押し込まれることを防止又は抑制して、セラミックス部材としての静電チャック1の耐電圧性能の低下を防止又は抑制することができる。
【0026】
また、隙間Aにおいて、接着剤が閉塞部6によって強く押さえ付けられて接着剤が密となるため、接着剤が存在しない接着剤の空洞部(巣)が出来難く、絶縁性の低下を防止又は抑制することができる。
【0027】
なお、参考例の静電チャック1においては、閉塞部6の対向面6bに電極3に向かって突出する凸部を形成して隙間Aを小さくしたり、又は隙間Aを無くして電極3と閉塞部6の突部とが接触するように構成してもよい。
【0028】
また、参考例においても、第1実施形態と同様に、接着剤として、有機接着剤の電気絶縁性シリコーン接着剤を用いて説明した。しかしながら、本発明の接合部としての接着剤はこれに限らず、例えば、電気絶縁性のガラス接合材や、Al−SiO系等のセラミック接着剤を用いてもよい。
【0029】
また、電極は、半月形状に限らず、他の形状(パターン)であってもよく、例えば、櫛歯形状であってもよい。この場合、電極間距離を3mm以上に設定すればよい。
【0030】
[第実施形態]
図6は、本発明のセラミックス部材の第実施形態を示している。第実施形態の静電チャック1では、閉塞部6の対向面6bに図6の上方に向かって陥没する陥没部6cが設けられている。また、電極3の外面3aは、段部5の係止面5aよりも上方に位置している。また、参考例と同様に、閉塞部6の電極3との対向面6b、換言すれば、陥没部6cの底と、電極3の外面3aとの間に接合部7(固体の接着剤)で満たされた隙間Aが形成されている。
【0031】
実施形態の静電チャック1によっても、段部5と陥没部6cとで閉塞部6による電極3の押し潰しを規制することができ、電極3が過度に押し込まれることを防止又は抑制して、セラミックス部材としての静電チャック1の耐電圧性能の低下を防止又は抑制することができる。
【0032】
なお、第実施形態においても隙間Aは無くてもよい。
【0033】
また、第実施形態においても、第1実施形態と同様に、接着剤として、有機接着剤の電気絶縁性シリコーン接着剤を用いて説明した。しかしながら、本発明の接合部としての接着剤はこれに限らず、例えば、電気絶縁性のガラス接合材や、Al−SiO系等のセラミック接着剤を用いてもよい。
【0034】
また、電極は、半月形状に限らず、他の形状(パターン)であってもよく、例えば、櫛歯形状であってもよい。この場合、電極間距離を3mm以上に設定すればよい。
【符号の説明】
【0035】
1 静電チャック
2 基材
2a 表面
2b 裏面
3 電極
3a 外面
4 凹部
4a 底
4b 周面
5 段部
5a 係止面
6 閉塞部
6a 端子用孔
6b 対向面
6c 陥没部
6d 外周面
7 接合部
8 第1曲面
9 第2曲面
10 端子
11 第1平面
12 第2平面
A 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7