(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記平板ガイドの半径方向外側に向かう広がりが、前記タービンロータの回転軸に対して周方向に不均一であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のタービン排気室。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態の排気室30Aを備える蒸気タービン1の鉛直方向の子午断面を示す図である。なお、ここでは、軸流タービンとして蒸気タービンを例示する。また、蒸気タービンとして、下方排気型の排気室を備えた複流排気型の低圧タービンを例示して説明する。そのため、以下の実施の形態では、作動流体は蒸気である。
【0020】
図1に示すように、蒸気タービン1において、外部ケーシング10内には、内部ケーシング11が備えられている。内部ケーシング11内には、タービンロータ12が貫設されている。このタービンロータ12には、周方向に亘って半径方向外側に突出するロータディスク13が形成されている。このロータディスク13は、タービンロータ12の回転軸方向に複数段形成されている。
【0021】
タービンロータ12のロータディスク13には、周方向に複数の動翼14が植設され、動翼翼列を構成している。この動翼翼列は、タービンロータ12の回転軸方向に複数段備えられている。タービンロータ12は、ロータ軸受15によって回転可能に支持されている。
【0022】
内部ケーシング11の内側には、ダイアフラム外輪16とダイアフラム内輪17とが設けられている。ダイアフラム外輪16とダイアフラム内輪17との間には、周方向に複数の静翼18が配設され、静翼翼列を構成している。
【0023】
この静翼翼列は、タービンロータ12の回転軸方向に動翼翼列と交互になるように配置されている。静翼翼列と、この静翼翼列の直下流の動翼翼列とで一つのタービン段落を構成する。なお、ここでは、最終段のタービン段落(以下、最終タービン段落という。)に設けられる動翼を最終段動翼14aとして示している。最終タービン段落は、排気室に流入する前に通過する最終のタービン段落である。
【0024】
蒸気タービン1の中央には、クロスオーバー管19からの蒸気が導入される吸気室20を備えている。この吸気室20から左右のタービン段落に蒸気を分配して導入する。
【0025】
次に、最終タービン段落を通過した蒸気が流入する排気室30Aについて説明する。この排気室30Aは、タービン排気室として機能する。
【0026】
図2は、第1の実施の形態の排気室30Aの鉛直方向の子午断面を示す図である。
図3は、
図2のA−A断面を示す断面図である。この
図3は、タービンロータ12の回転軸Oに垂直な排気室30Aの断面をスチームガイド60の下流側から見たときの断面図である。なお、
図3では、便宜上、構成の一部を省略して示している。
【0027】
排気室30Aは、
図2に示すように、排気室30Aの外郭を構成するケーシング40を備える。なお、ここでは、ケーシング40は、
図1に示した蒸気タービン1の外部ケーシング10としても機能している。そこで、以下、ケーシング40を外部ケーシング10として説明する。
【0028】
排気室30Aの外郭を構成する外部ケーシング10は、
図3に示す断面において、外側に凸状に湾曲した円弧状ケーシング41と、この円弧状ケーシング41と接続された筐体状ケーシング42とを備える。ここでは、円弧状ケーシング41は、上に凸状に湾曲している。また、ここでは、筐体状ケーシング42は、円弧状ケーシング41の下方に接続されている。
【0029】
なお、
図3に示す断面において、円弧状ケーシング41は、タービンロータ12の回転軸Oを中心とした円弧に限られない。円弧状ケーシング41は、
図3に示すように、一部が直線状となっていてもよい。
【0030】
ここで、円弧状ケーシング41と筐体状ケーシング42との接続部を
図3に示す断面において接続点43、44とする。
【0031】
円弧状ケーシング41の断面形状は、外側に凸状に湾曲した円弧形状である。円弧状ケーシング41は、この断面形状がタービンロータ12の回転軸Oに沿って延設された形体である。
【0032】
筐体状ケーシング42の断面形状は、一方が開口するコ字状の矩形形状である。筐体状ケーシング42は、この断面形状がタービンロータ12の回転軸Oに沿って延設された形体である。
図3に示す断面において、筐体状ケーシング42の2つの側壁は、直線状に伸びている。筐体状ケーシング42を構成する筐体は、一対の対向する面が開口する直方体や立方体などの箱体の形状である。
【0033】
なお、円弧状ケーシング41および筐体状ケーシング42は、タービンロータ12の回転軸方向の両端は壁部によって閉じられている。
【0034】
図3に示す断面において、接続点43と回転軸Oとを結ぶ仮想直線L1および接続点44と回転軸Oとを結ぶ仮想直線L2は、それぞれ回転軸Oを通る同一直線上にある。また、ここでは、仮想直線L1および仮想直線L2は、回転軸Oを通る水平直線上にある。
【0035】
なお、接続点43および接続点44とは、円弧状ケーシング41と筐体状ケーシング42との接合部の内面側(外部ケーシング10の内面側)の端点である。
【0036】
そのため、仮想直線L1および仮想直線L2からなる直線は、いわゆる上半側と下半側の境界である。なお、一般に、タービンロータ12の回転軸Oを通る水平直線の上方側を上半側、タービンロータ12の回転軸Oを通る水平直線よりも下方側を下半側という。
【0037】
すなわち、
図3に示した構成では、仮想直線L1および仮想直線L2からなる直線を含む円弧状ケーシング41側(上方側)が上半側に相当する。また、仮想直線L1および仮想直線L2からなる直線よりも筐体状ケーシング42側(下方側)が下半側に相当する。
【0038】
そこで、第1の実施の形態では、仮想直線L1および仮想直線L2からなる直線を含む円弧状ケーシング41側(上方側)を上半側といい、仮想直線L1および仮想直線L2からなる直線よりも筐体状ケーシング42側(下方側)を下半側という。
【0039】
排気室30Aは、
図2に示すように、最終タービン段落を通過した蒸気が流入する環状ディフューザ50と、環状ディフューザ50から排出された蒸気を排気室30Aの出口31に導く排気流路80とを備える。なお、排気室30Aの出口31は、例えば、複数の開口部などによって開口されている。
【0040】
環状ディフューザ50は、最終タービン段落を通過した蒸気を半径方向外側に向かって排出する。環状ディフューザ50は、筒状のスチームガイド60およびこのスチームガイド60の内側に設けられた筒状のベアリングコーン70によって形成された環状の通路である。すなわち、環状ディフューザ50は、スチームガイド60とベアリングコーン70との間に形成される環状の流路である。なお、スチームガイド60は、ガイドとして機能し、ベアリングコーン70は、コーンとして機能する。
【0041】
ベアリングコーン70の上流端70aは、最終段動翼14aが植設されたロータディスク13よりも若干下流側に位置する。ベアリングコーン70は、下流に行くに伴って半径方向外側に湾曲する。すなわち、ベアリングコーン70は、下流側に向けてラッパ状に拡開する拡大筒状に構成されている。ベアリングコーン70の下流端70bは、外部ケーシング10の下流壁45に接している。なお、ベアリングコーン70の内部には、例えば、ロータ軸受15などが配置されている。
【0042】
スチームガイド60は、湾曲ガイド61と、平板ガイド62とを備える。湾曲ガイド61の上流端61aは、最終段動翼14aを包囲するダイアフラム外輪16の下流端16aに接続されている。湾曲ガイド61は、下流に行くに伴って半径方向外側に湾曲する。すなわち、湾曲ガイド61は、下流側に向けてラッパ状に拡開する拡大筒状に構成されている。
【0043】
換言すると、湾曲ガイド61は、タービン排気方向でかつタービンロータ12の回転軸方向に行くに伴い、半径方向外側に広がりながらラッパ状に拡大する。そして、湾曲ガイド61の下流端61bにおける半径方向外側への広がり方向は、タービンロータ12の回転軸Oに垂直な方向となっている。
【0044】
湾曲ガイド61は、上半側も下半側も同じ形状である。すなわち、湾曲ガイド61は、周方向に亘って同じ形状である。換言すれば、湾曲ガイド61は、
図2において上半側に示した湾曲ガイド61の断面をタービンロータ12の回転軸Oを回転軸として回転させることで得られる回転体である。
【0045】
平板ガイド62の上流端62aは、湾曲ガイド61の下流端61bに接続される。平板ガイド62は、タービンロータ12の回転軸方向に垂直で、かつ半径方向外側に向かって放射状に広がる。平板ガイド62は、中央が湾曲ガイド61の外径に対応して切り欠かれ、開口した円盤状の平板である。
【0046】
ここで、湾曲ガイド61の下流端61bにおける半径方向外側への広がり方向は、タービンロータ12の回転軸Oに垂直な方向となっているため、平板ガイド62は、湾曲ガイド61に連続的にかつなめらかに接続されている。そのため、平板ガイド62と湾曲ガイド61との接続部を蒸気が通過する際、乱れることなくスムーズに流れる。
【0047】
また、平板ガイド62は円盤状の平板であるため、溶接などによって、平板ガイド62を湾曲ガイド61に容易に接合することができる。なお、ここでは、平板ガイド62と湾曲ガイド61とを別体で作製し、それぞれを接合する構成を示したが、平板ガイド62と湾曲ガイド61とを一体的に作製してもよい。
【0048】
平板ガイド62の半径方向外側に向かう放射状の広がりは、
図3に示すように、タービンロータ12の回転軸Oに対して周方向に不均一である。例えば、
図3に示すように、上半側の平板ガイド62よりも下半側の平板ガイド62の外径を構造上可能な範囲で大きく構成してもよい。
【0049】
なお、蒸気の流れの圧力損失を抑制するために、下半側の平板ガイド62の外径は、上半側と連結される下半側上端部の外径から緩やかに増加することが好ましい。
【0050】
ここで、
図4は、
図2のA−A断面に相当する断面図であり、
図3に示した平板ガイド62の形状とは異なる形状の一例を示している。なお、
図4には、蒸気の流れを矢印で示している。
【0051】
最終タービン段落を通過した蒸気は、タービンロータ12の回転軸Oを中心に時計回りまたは反時計回りに旋回しながら環状ディフューザ50に流入する。この際、周方向における蒸気の流速に偏りが生じる。すなわち、環状ディフューザ50内において、周方向の蒸気の流量に偏りが生じる。
【0052】
そこで、
図4に示すように、蒸気の流量が多くなる領域における平板ガイド62の半径方向外側に向かう広がりを構造上可能な範囲で大きくしてもよい。すなわち、蒸気の流量が多くなる領域における平板ガイド62の外径を大きくしてもよい。
【0053】
図4では、
図4の断面において反時計回りに旋回しながら環状ディフューザ50内に流入する蒸気の流れを想定しているため、下半側の左側に蒸気の流量が多くなる領域が存在する。そのため、その領域における平板ガイド62の外径を、下半部の他の領域の平板ガイド62の外径よりも大きくしている。
【0054】
下半側における平板ガイド62の外径を大きくすることは、環状ディフューザ50内において蒸気の流速を低減し、静圧を回復させることに好適である。そのため、下半側における平板ガイド62の外径は、構造上可能な範囲で大きくすることが好ましい。
【0055】
ここで、上半側における蒸気の流れについて説明する。
【0056】
上記した下半側における平板ガイド62においては、外径を大きくすることで、環状ディフューザ50内における整流効果を得ることができる。一方、上半側においては、環状ディフューザによって半径方向外側に向けて排出された蒸気は、外部ケーシング10の内面46に沿って流れることで、その流れ方向が、例えば180°逆向きに転向される。そのため、上半側の平板ガイド62の外径が大き過ぎると、環状ディフューザ50の出口51と、外部ケーシング10の内面46との間隙で流れが詰まる。これによって、環状ディフューザ50の出口51近傍の流体性能が悪化する。
【0057】
このようなことから、上半側においては、環状ディフューザ50の出口51と、外部ケーシング10の内面46との間隙には、流体性能を向上させるための最適な範囲が存在する。
【0058】
そこで、発明者らは、上半側において、環状ディフューザ50の出口51と、外部ケーシング10の内面46との間隙が流体性能に及ぼす影響を調べた。
【0059】
ここで、
図2および
図3に示すように、上半側における、タービンロータ12の回転軸Oと平板ガイド62の下流端62bとの間の距離をD、上半側における、タービンロータ12の回転軸Oと外部ケーシング10の内面46との間の距離をHとする。
【0060】
そして、環状ディフューザ50の出口51と外部ケーシング10の内面46との間隙の最適な範囲を、D/Hをパラメータとして評価した。
【0061】
ここで、パラメータD/Hに使用するDおよびHは、上半側において、同じ半径方向におけるDおよびHである。具体的には、
図3には、半径方向が鉛直方向となる場合のDおよびH、半径方向が鉛直方向より反時計回りに傾いた方向となる場合のDおよびHが例示されている。すなわち、パラメータD/Hに使用するDおよびHは、上半側かつ同じ半径方向におけるDおよびHであればよい。
【0062】
このように、D/Hをパラメータとすることで、運転条件、最終タービン段落における動翼の先端外径や翼長さなどの構造条件に依存することなく評価することができる。
【0063】
図5は、D/Hに対する流体性能を示す図である。
図5には、環状ディフューザ50における流体性能、排気流路80における流体性能、排気室30Aにおける流体性能をそれぞれ示している。
【0064】
環状ディフューザ50における流体性能(環状ディフューザ性能)は、環状ディフューザ50の入口52から環状ディフューザ50の出口51までに生じる圧力損失を考慮した性能である。排気流路80における流体性能(排気流路性能)は、環状ディフューザ50の出口51から排気室30Aの出口31までに生じる圧力損失を考慮した性能である。排気室における流体性能(排気室性能)は、環状ディフューザ50の入口52から排気室30Aの出口31までに生じる圧力損失を考慮した性能である。
【0065】
ここで、環状ディフューザ50および排気流路80を含む排気室30A全体における流体性能は、排気室性能によって示されている。
図5において、縦軸の値が大きいほど流体性能は優れていることになる。
【0066】
なお、
図5に示した流体性能は、数値解析により得られた結果である。また、
図5では、蒸気タービン1の定格出力時を想定したときの結果を示している。
【0067】
図5に示すように、環状ディフューザ性能は、D/Hの増加に伴って向上している。一方、排気流路性能は、0.54≦D/H≦0.75の範囲で高い流体性能が得られている。排気室30A全体における流体性能を示す排気室性能は、0.6≦D/H≦0.8の範囲で高い流体性能が得られている。
【0068】
なお、図示していないが、運転条件が異なる、定格出力よりも低出力時もしくは定格出力よりも高出力時を想定したときの結果においても、
図5と同様に、上記したD/Hの範囲で、高い排気室性能が得られる。
【0069】
以上ことから、高い排気室性能を得るためには、上半側におけるD/Hを0.6以上0.8以下(0.6≦D/H≦0.8)の範囲とすることが最適であることがわかった。そこで、排気室30Aの上半側において、D/Hが0.6以上0.8以下となるように構成されている。
【0070】
このように上半側におけるD/Hを上記した範囲に設定することで、環状ディフューザ50の出口51と外部ケーシング10の内面46との間隙を適正な範囲に維持しつつ、平板ガイド62の外径を大きくすることができる。上半側における平板ガイド62の外径を大きくすることで出口51における流路断面積が増加し、蒸気の流れは、減速され、静圧が十分に回復される。
【0071】
すなわち、上半側におけるD/Hを上記した範囲に設定することで、環状ディフューザ50の出口51と外部ケーシング10の内面46との間隙において生じる流体性能の低下を抑制しつつ、環状ディフューザ50内において十分な整流効果が得られる。
【0072】
ここで、上記した環状ディフューザ50は、例えば、上下に2つ割り構造で構成されてもよい。その場合、環状ディフューザ50は、タービンロータ12の回転軸Oを通る水平面によって上方および下方に分割された構造でもよい。また、環状ディフューザ50は、例えば、タービンロータ12の回転軸Oを通らない水平面によって上方および下方に分割された構造でもよい。すなわち、環状ディフューザ50が上下に2つ割り構造で構成される場合、上方および下方の分割境界の位置は、特に限定されるものではない。
【0073】
ここで、蒸気タービン1および排気室30Aにおける蒸気の流れについて説明する。
【0074】
図1に示すように、クロスオーバー管19を経て蒸気タービン1内の吸気室20に流入した蒸気は、左右のタービン段落に分岐して流れる。そして、各タービン段落の静翼18、動翼14を備える蒸気流路を膨張仕事をしながら通過し、タービンロータ12を回転させる。最終タービン段落を通過した蒸気は、環状ディフューザ50内に流入する。
【0075】
環状ディフューザ50内に流入した蒸気は、その流れ方向を半径方向外側に転向されながら出口51に向かって流れる。この際、蒸気の流れは、減速され、静圧が回復される。そして、蒸気は、半径方向外側に向かって出口51から排気流路80内に流出する。
【0076】
ここで、上半側の平板ガイド62の外径は、構造上可能な範囲で前述したD/Hの範囲を満たすように設定されている。そのため、環状ディフューザ50の出口51と外部ケーシング10の内面46との間隙において生じる流体攪拌や渦等による流体性能の低下が抑制されつつ、環状ディフューザ50内において十分な整流効果が得られる。
【0077】
また、下半側の平板ガイド62の外径は、上半側の平板ガイド62の外径に比べて大きいため、下半側の出口51における流路断面積は、上半側の出口51における流路断面積よりも広い。そのため、下半側において、蒸気の流れは、十分に減速され、静圧が回復される。
【0078】
上半側において環状ディフューザ50の出口51から流出した蒸気は、その流れ方向が下方に転向される。そして、流れ方向が下方に転向された蒸気は、排気室30Aの出口31に向かって流れる。
【0079】
下半側において環状ディフューザ50の出口51から流出した蒸気は、排気室30Aの出口31に向かって流れる。
【0080】
そして、上半側からの蒸気の流れと、下半側の環状ディフューザ50の出口51から流出した蒸気の流れは、合流する。この際、下半側の平板ガイド62の外径は大きいため、上半側から流れてくる蒸気と合流して流れる領域は少ない。また、流れの合流部においては、それぞれの流れは十分に減速されているため、合流による圧力損失は低減される。
【0081】
そして、合流した蒸気は、出口31から、例えば、復水器(図示しない)内に排出される。
【0082】
上記したように、第1の実施の形態の排気室30Aによれば、例えば、
図3に示すように、タービンロータ12の回転軸Oに垂直な排気室30Aの断面をスチームガイド60の下流側から見たときに、平板ガイド62の半径方向外側に向かう広がりをタービンロータ12の回転軸Oに対して周方向に不均一に構成することができる。例えば、蒸気の流量が多くなる領域における平板ガイド62の半径方向外側に向かう広がりを大きくことができる。これによって、環状ディフューザ50の出口51における流路断面積が大きくなるため、環状ディフューザ50内において蒸気の流速を確実に低減し、静圧を回復させることができる。
【0083】
また、上半側において、D/Hを前述した範囲に設定することで、環状ディフューザ50の出口51と外部ケーシング10の内面46との間隙において生じる流体性能の低下を抑制しつつ、環状ディフューザ50内において十分な整流効果が得られる。
【0084】
また、第1の実施の形態の排気室30Aによれば、湾曲ガイド61を周方向に亘って同じ形状とし、平板ガイド62によって半径方向外側に向かう広がりを調整することができる。このように、湾曲ガイド61と平板ガイド62とを別体で作製し、それぞれを接合する構成とした場合、容易にスチームガイド60を作製することができる。
【0085】
(第2の実施の形態)
図6は、第2の実施の形態の排気室30Bの、
図2のA−A断面に相当する断面図である。すなわち、
図6は、タービンロータ12の回転軸Oに垂直な排気室30Bの断面をスチームガイド60の下流側から見たときの断面図である。
【0086】
なお、
図6では、便宜上、構成の一部を省略して示している。また、以下の実施の形態において、第1の実施の形態の排気室30Aの構成と同一の構成部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略または簡略する。
【0087】
第2の実施の形態の排気室30Bでは、接続点43と回転軸Oとを結ぶ仮想直線L1および接続点44と回転軸Oとを結ぶ仮想直線L2が同一直線上に無いことが、第1の実施の形態の排気室30Aにおける仮想直線L1、L2と異なる。そのため、ここでは、この異なる構成について主に説明する。
【0088】
図6に示すように、円弧状ケーシング41と筐体状ケーシング42との接続点43、44は、回転軸Oを通る水平直線よりも円弧状ケーシング41側に位置している。ここでは、接続点43、44は、回転軸Oを通る水平直線よりも上方側に位置している。
【0089】
そのため、
図6に示す断面において、仮想直線L1および仮想直線L2は、タービンロータ12の回転軸Oから円弧状ケーシング41側に傾いて伸びている。すなわち、仮想直線L1は、回転軸Oから接続点43側(
図6において左側)に延びる水平直線を回転軸Oを中心に時計回りに所定の角度回転させた直線である。仮想直線L2は、回転軸Oから接続点44側(
図6において右側)に延びる水平直線を回転軸Oを中心に反時計回りに所定の角度回転させた直線である。
【0090】
この場合においても、仮想直線L1および仮想直線L2を含む円弧状ケーシング41側において、第1の実施の形態で示したD/Hの関係を満たすように構成される。すなわち、排気室30Bでは、仮想直線L1および仮想直線L2を含む円弧状ケーシング41側(上方側)の領域90が、構造上可能な範囲で第1の実施の形態で示したD/Hの関係を満たすように構成される。
【0091】
また、仮想直線L1および仮想直線L2よりも筐体状ケーシング42側(下方側)の領域91では、平板ガイド62の外径が、領域90よりも大きく構成される。
【0092】
このように、第2の実施の形態の排気室30Bにおいて、接続点43、44が回転軸Oを通る水平直線よりも円弧状ケーシング41側(上方側)に位置する場合においても、第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、前述したD/Hの関係を満たす排気室30Bにおいて、環状ディフューザ50の出口51と外部ケーシング10の内面46との間隙において生じる流体性能の低下を抑制しつつ、環状ディフューザ50内において十分な整流効果が得られる。
【0093】
また、第2の実施の形態の排気室30Bによれば、
図6に示すように、タービンロータ12の回転軸Oに垂直な排気室30Bの断面をスチームガイド60の下流側から見たときに、平板ガイド62の半径方向外側に向かう広がりをタービンロータ12の回転軸Oに対して周方向に不均一に構成することができる。この構成を備えることによる作用効果は、第1の実施の形態における作用効果と同様である。
【0094】
(第3の実施の形態)
図7は、第3の実施の形態の排気室30Cの、
図2のA−A断面に相当する断面図である。すなわち、
図7は、タービンロータ12の回転軸Oに垂直な排気室30Cの断面をスチームガイド60の下流側から見たときの断面図である。なお、
図7では、便宜上、構成の一部を省略して示している。
【0095】
第3の実施の形態の排気室30Cでは、接続点43と回転軸Oとを結ぶ仮想直線L1および接続点44と回転軸Oとを結ぶ仮想直線L2が同一直線上に無いことが、第1の実施の形態の排気室30Aにおける仮想直線L1、L2と異なる。そのため、ここでは、この異なる構成について主に説明する。
【0096】
図7に示すように、円弧状ケーシング41と筐体状ケーシング42との接続点43、44は、回転軸Oを通る水平直線よりも筐体状ケーシング42側に位置している。ここでは、接続点43、44は、回転軸Oを通る水平直線よりも下方側に位置している。
【0097】
そのため、
図7に示す断面において、仮想直線L1および仮想直線L2は、タービンロータ12の回転軸Oから筐体状ケーシング42側に傾いて伸びている。すなわち、仮想直線L1は、回転軸Oから接続点43側(
図6において左側)に延びる水平直線を回転軸Oを中心に反時計回りに所定の角度回転させた直線である。仮想直線L2は、回転軸Oから接続点44側(
図6において右側)に延びる水平直線を回転軸Oを中心に時計回りに所定の角度回転させた直線である。
【0098】
この場合においても、仮想直線L1および仮想直線L2を含む円弧状ケーシング41側において、第1の実施の形態で示したD/Hの関係を満たすように構成される。すなわち、排気室30Cでは、仮想直線L1および仮想直線L2を含む円弧状ケーシング41側(上方側)の領域100が、構造上可能な範囲で第1の実施の形態で示したD/Hの関係を満たすように構成される。
【0099】
また、仮想直線L1および仮想直線L2よりも筐体状ケーシング42側(下方側)の領域101では、平板ガイド62の外径が、領域100よりも大きく構成される。
【0100】
このように、第3の実施の形態の排気室30Cにおいて、接続点43、44が回転軸Oを通る水平直線よりも筐体状ケーシング42側(下方側)に位置する場合においても、第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、前述したD/Hの関係を満たす排気室30Cにおいて、環状ディフューザ50の出口51と外部ケーシング10の内面46との間隙において生じる流体性能の低下を抑制しつつ、環状ディフューザ50内において十分な整流効果が得られる。
【0101】
また、第3の実施の形態の排気室30Cによれば、
図7に示すように、タービンロータ12の回転軸Oに垂直な排気室30Cの断面をスチームガイド60の下流側から見たときに、平板ガイド62の半径方向外側に向かう広がりをタービンロータ12の回転軸Oに対して周方向に不均一に構成することができる。この構成を備えることによる作用効果は、第1の実施の形態における作用効果と同様である。
【0102】
(第4の実施の形態)
上記した第1〜第3の実施の形態では、鉛直下方に出口31を備える排気室30A、30B、30Cを示したが、出口31はこの位置に限られない。
【0103】
図8は、第4の実施の形態の排気室30Dの、タービンロータ12の回転軸Oに垂直な排気室30Dの断面をスチームガイド60の下流側から見たときの断面図である。なお、
図8に示した排気室30Dは、
図3に示した排気室30Aの断面を回転軸Oを中心に時計回りに90°回転した構成である。
【0104】
図8に示すように、排気室30Dの出口31を側部側に設けてもよい。換言すれば、本実施の形態の排気室の構成は、下方排気型の蒸気タービンに限らず、側方排気型の蒸気タービンにも適用することができる。
【0105】
排気室30Dにおいても、仮想直線L1および仮想直線L2を含む円弧状ケーシング41側において、構造上可能な範囲で第1の実施の形態で示したD/Hの関係を満たすように構成される。そして、第4の実施の形態の排気室30Dでは、第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0106】
なお、ここでは、排気室30Dとして、
図3に示した排気室30Aの断面を回転軸Oを中心に時計回りに90°回転した構成を示したが、
図6に示した排気室30Bの断面、または
図7に示した排気室30Cの断面を回転軸Oを中心に時計回りに90°回転した構成であってもよい。これらの場合においても、第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0107】
ここで、上記した本実施の形態の排気室30A、30B、30C、30Dの構成は、低圧の蒸気タービンの排気室に限らず、高圧または中圧の蒸気タービンの排気室に適用することができる。
【0108】
以上説明した実施形態によれば、排気室における作動流体の圧力損失を抑制し、タービン排気損失を低減することが可能となる。
【0109】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。