(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記通気介在部材は、前記真空吸引部の真空吸引による、積層された前記半含浸プリプレグの前記樹脂シートへの移動に抗して、前記半含浸プリプレグと前記樹脂シートとの間に脱気回路を形成する緩衝材であることを特徴とする請求項3に記載の複合材の修理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、積層されたプリプレグを硬化すると、硬化後の積層されたプリプレグに空隙が残存することで、修理後の損傷部となる補修部の強度が低下する可能性がある。この場合、プリプレグを予め積層して修理パッチとして用意することが考えられる。これによれば、プリプレグの空隙の形成を抑制できるが、一方で、修理パッチの作成にコストがかかり、また、修理パッチを事前に作成する分、修理に長時間を要する可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、被修理部を適切に修理することができる複合材の修理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の複合材の修理方法は、複合材の修理対象となる被修理部を補修する複合材の修理方法において、繊維に樹脂が含浸している含浸領域と繊維に樹脂が含浸していない未含浸領域とを含むプリプレグである半含浸プリプレグと、シート状に形成された樹脂シートと、通気性を有する部材である通気部材と、が用意されており、前記複合材の表面から窪んで形成される前記被修理部に、前記樹脂シートを配置する樹脂シート配置工程と、前記樹脂シート上に前記半含浸プリプレグを積層して配置するプリプレグ配置工程と、積層した前記半含浸プリプレグの前記未含浸領域と連通するように前記通気部材を配置すると共に、前記通気部材を、真空吸引部と接する位置に配置する通気部材配置工程と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、複合材の被修理部に、未含浸領域を有する半含浸プリプレグを積層して配置し、未含浸領域と通気部材とを連通させた状態で、通気部材に真空吸引部を接触させることができる。このため、真空吸引部による真空吸引時において、未含浸領域と通気部材とにより脱気回路を形成することができる。そして、脱気回路が形成された状態で樹脂を溶融させることにより、樹脂を未含浸領域及び通気部材に好適に含浸させることができ、空隙の形成を抑制することができる。よって、修理後の被修理部である補修部において空隙の残存が抑制されるため、補修部の強度の低下を抑制することができ、被修理部を適切に修理することができる。
【0008】
また、前記半含浸プリプレグは、積層される積層方向である面外方向に亘って前記未含浸領域が形成されており、前記通気部材は、前記半含浸プリプレグの最表面側に配置されて前記半含浸プリプレグを被覆すると共に、前記真空吸引部と接する位置に配置される通気被覆部材を有し、前記通気部材配置工程では、前記プリプレグ配置工程後において、前記半含浸プリプレグを被覆するように、積層された前記半含浸プリプレグの最表面側に前記通気被覆部材を配置することが、好ましい。
【0009】
この構成によれば、半含浸プリプレグの未含浸領域が面外方向に亘って形成される場合、積層された半含浸プリプレグを被覆して通気被覆部材を配置することで、通気被覆部材と未含浸領域と連通して配置することができる。このため、積層された半含浸プリプレグの全域に亘って脱気回路を形成でき、空隙の形成をより抑制することができる。
【0010】
また、前記半含浸プリプレグは、積層される積層方向に直交する面内方向に亘って前記未含浸領域が形成されており、前記通気部材は、前記樹脂シートと前記半含浸プリプレグとの間に配置されて前記半含浸プリプレグの前記未含浸領域と連通する通気介在部材と、前記半含浸プリプレグの最表面側に配置されて前記半含浸プリプレグを被覆すると共に、前記通気介在部材及び前記真空吸引部と接する位置に配置される通気被覆部材と、を有し、前記通気部材配置工程は、前記樹脂シート配置工程後において、前記樹脂シート上に前記通気介在部材を配置する通気介在部材配置工程と、前記プリプレグ配置工程後において、前記半含浸プリプレグを被覆するように、積層された前記半含浸プリプレグの最表面側に前記通気被覆部材を配置する通気被覆部材配置工程と、を含むことが、好ましい。
【0011】
この構成によれば、半含浸プリプレグの未含浸領域が面内方向に亘って形成される場合、樹脂シートと半含浸プリプレグとの間に通気介在部材を配置することで、通気介在部材と未含浸領域と連通して配置することができる。また、積層された半含浸プリプレグを被覆して通気被覆部材を配置することで、通気被覆部材と通気介在部材と連通して配置することができる。このため、積層された半含浸プリプレグの全域に亘って脱気回路を形成でき、空隙の形成をより抑制することができる。
【0012】
また、前記通気介在部材は、前記真空吸引部の真空吸引による、積層された前記半含浸プリプレグの前記樹脂シートへの移動に抗して、前記半含浸プリプレグと前記樹脂シートとの間に脱気回路を形成する緩衝材であることが、好ましい。
【0013】
この構成によれば、真空吸引によって、積層された半含浸プリプレグが樹脂シートへ移動する場合でも、通気介在部材が緩衝材として機能することで、脱気回路を形成することができる。
【0014】
また、前記通気介在部材は、不織布であり、前記不織布の厚さは、前記樹脂シートの厚さの0.7倍以上となっていることが、好ましい。
【0015】
この構成によれば、不織布の厚さを適切な厚さとすることができるため、修理後の被修理部である補修部において空隙の残存をより好適に抑制することができ、また、補修部の強度の低下を抑制することができる。なお、不織布は、単層(1枚)であってもよいし、複数層(複数枚重ねたもの)であってもよく、特に限定されない。
【0016】
また、前記不織布の厚さは、前記樹脂シートの厚さの3倍以下となっていることが、好ましい。
【0017】
この構成によれば、不織布の厚さを樹脂が含浸する適切な厚さとすることができるため、修理後の被修理部である補修部において、複合材の被修理部における半含浸プリプレグの一体化を好適に行うことができ、補修部の強度の低下を抑制することができる。
【0018】
また、前記プリプレグ配置工程では、前記半含浸プリプレグを所定数積層するごとに真空吸引を行うことが、好ましい。
【0019】
この構成によれば、半含浸プリプレグ同士の層間における空隙の形成を抑制することができる。
【0020】
また、前記半含浸プリプレグを前記被修理部の形状に合わせて予め積層して形成された修理パッチが用意され、前記プリプレグ配置工程では、前記樹脂シート上に前記修理パッチを配置することが、好ましい。
【0021】
この構成によれば、半含浸プリプレグ同士の層間において空隙が生じないように、予め半含浸プリプレグを積層して修理パッチとすることができる。このため、半含浸プリプレグ同士の層間における空隙の形成を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0024】
[実施形態1]
実施形態1に係る複合材1の修理方法は、複合材1に形成された損傷等による欠損部を修理対象としており、この修理対象となる被修理部5を修理する方法となっている。この修理方法によって修理された後の被修理部5である補修部8は、予め設定された所定の強度を満足するように修理される。
【0025】
図1は、実施形態1に係る複合材の修理方法の修理対象となる複合材を模式的に示す断面図である。
図2は、実施形態1に係る複合材の修理方法に関する一例の説明図である。
図3は、実施形態1に係る複合材の修理方法に関する一例の説明図である。
【0026】
複合材1の修理方法の説明に先立ち、
図1を参照して、被修理部5が修理されることで補修部8が形成された複合材1について説明する。複合材1は、強化繊維と樹脂とが一体に成形された材料である。複合材1は、例えば、強化繊維として炭素繊維が用いられた炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastic)である。なお、強化繊維は、炭素繊維に限定されず、その他のプラスチック繊維、ガラス繊維、天然繊維又は金属繊維でもよい。樹脂は、熱硬化性樹脂が好ましいが、熱可塑性樹脂でもよい。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂である。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、及びポリフェニレンサルファイド(PPS)等である。なお、樹脂は、これらに限定されず、その他の樹脂を用いてもよい。
【0027】
複合材1は、その表面側(
図1の上側)に、修理対象となる被修理部5が形成され、この被修理部5に、シート状の半含浸プリプレグ10を複数積層して硬化させることで、補修部8が形成される。被修理部5は、側面及び底面を有する有底の孔となっている。被修理部5は、孔の開口部分が円形状に形成され、底面が開口部分よりも小さな円形状に形成され、側面が底面から開口部分に向かって広がるように傾斜するテーパ面となっている。なお、
図10に示すように、被修理部5は、底面を有しない貫通孔であってもよい。
図10に示す貫通孔は、複合材1の一方側の面(
図10の上面)から他方側の面(
図10の下面)に向かって先細りとなるように貫通形成される孔である。被修理部5が
図10に示す貫通孔である場合、小さい開口面積となる下面側の開口部分の周囲に、シーラント等のシール部材15を配置し、シール部材15を介して下面側の開口部分を覆うように、封止部材16を配置する。これにより、封止部材16を貫通孔の底部として機能させる。
【0028】
この被修理部5には、孔の深さ方向を積層方向として、複数の半含浸プリプレグ10が積層される。半含浸プリプレグ10は、強化繊維に樹脂が含浸している含浸領域と、強化繊維に樹脂が含浸していない未含浸領域と、を含むプリプレグである。半含浸プリプレグ10は、その種類に応じて、未含浸領域の形成状態が異なるものとなっている。実施形態1において、半含浸プリプレグ10は、積層される積層方向である面外方向、及び積層方向に直交する面内方向に亘って、未含浸領域が形成されている。このような、半含浸プリプレグ10としては、例えば、
図11に示すものがあり、強化繊維Fの束の外周面を樹脂Rが被覆する含浸領域とし、強化繊維Fの束の内部を未含浸領域とした両サイドタックの半含浸プリプレグ10であり、強化繊維Fの束の内部を未含浸領域とすることで、面内方向に亘って未含浸領域を形成するものとなる。また、この半含浸プリプレグ10は、網目を有する織布(織物)として形成することで、面外方向に亘って未含浸領域を形成するものとなる。半含浸プリプレグ10は、被修理部5と相補的な形状となるように、複数積層される。なお、実施形態1においては、半含浸プリプレグ10として、少なくとも面外方向に亘って未含浸領域を形成するものであればよく、面内方向に亘って未含浸領域を形成しないものであってもよいし、面内方向に亘って未含浸領域を形成するものであってもよい。
【0029】
補修部8は、積層された複数の半含浸プリプレグ10が加熱され、含浸領域の樹脂が溶融し、溶融した樹脂が未含浸領域に流入して、強化繊維と樹脂とが一体となって硬化することで形成される。
【0030】
次に、
図2及び
図3を参照して、被修理部5を有する複合材1の修理方法について説明する。複合材1の修理方法では、上記の半含浸プリプレグ10と、樹脂シート11と、通気部材としての通気被覆シート(通気被覆部材)12とが使用される。樹脂シート11は、樹脂をシート状に形成したものであり、半含浸プリプレグ10に用いられる樹脂と接着可能な材料となっている。なお、樹脂シート11は、半含浸プリプレグ10に用いられる樹脂と同じものであってもよいし、異なるものであってもよく、特に限定されない。通気被覆シート12は、シート状に形成したものであり、少なくとも面内方向において通気性を有するシートとなっている。通気被覆シート12としては、例えば、ピールプライが用いられる。
【0031】
図2及び
図3に示すように、複合材1の修理方法では、被修理部形成工程S2と、樹脂シート配置工程S3と、プリプレグ配置工程S4と、通気部材配置工程S5と、成形工程S6とを順に行っている。被修理部形成工程S2を行う前において、複合材1の表面には、欠損部21が形成されている(ステップS1)。
【0032】
被修理部形成工程S2では、複合材1の表面に形成された欠損部21を切削等により加工して、上記の形状となる被修理部5を形成する。被修理部形成工程S2では、上記の形状となる被修理部5を形成することで、被修理部5を修理に適した形状とすることができる。
【0033】
樹脂シート配置工程S3では、複合材1の表面から窪んで形成される被修理部5に、樹脂シート11を配置する。具体的に、樹脂シート配置工程S3では、被修理部5の底面及び側面に接して、これらの面を被覆するように、樹脂シート11を配置する。
【0034】
プリプレグ配置工程S4では、樹脂シート11上に半含浸プリプレグ10を複数積層して配置する。積層される複数の半含浸プリプレグ10のうち、被修理部5の底面側となる下層の半含浸プリプレグ10は、被修理部5の開口側となる上層の半含浸プリプレグ10に比して、小径となるように形成されている。つまり、小径の半含浸プリプレグ10を、上層に向かって大径の半含浸プリプレグ10となるように積層することで、被修理部5と相補的な形状とする。また、プリプレグ配置工程S4では、半含浸プリプレグ10を所定数だけ積層するごとに真空吸引を行っている。つまり、半含浸プリプレグ10を積層すると、積層される半含浸プリプレグ10の層間に空隙が形成される可能性があるため、定期的に真空吸引を行うことで、半含浸プリプレグ10の層間に形成される空隙を除去する。
【0035】
通気部材配置工程S5では、積層した半含浸プリプレグ10の未含浸領域と連通するように、通気被覆シート12を配置する。通気部材配置工程S5では、プリプレグ配置工程S4において積層された半含浸プリプレグ10を被覆するように、積層された半含浸プリプレグ10の最表面側(最上層側)に通気被覆シート12を配置する。
【0036】
また、通気部材配置工程S5では、通気被覆シート12を、後述する成形工程S6において用いられる真空吸引ポート(真空吸引部)25と接する位置に配置する。つまり、通気被覆シート12は、被修理部5よりも一回り大きく形成されており、被修理部5を被覆する中央の被覆部位12aと、被覆部位12aの外周側に設けられる被修理部5を被覆しない余剰部位12bとを有する。そして、通気被覆シート12は、余剰部位12bに真空吸引ポート25が接する。通気部材配置工程S5では、通気被覆シート12の被覆部位12aを、半含浸プリプレグ10を被覆するように配置する。また、通気部材配置工程S5では、通気被覆シート12の余剰部位12bを、被修理部5の外側、すなわち、成形工程S6において用いられる真空吸引ポート(真空吸引部)25と接する位置に配置する。
【0037】
成形工程S6では、通気被覆シート12の被覆部位12a上に、ヒータマット28を設置すると共に、通気被覆シート12の余剰部位12bに真空吸引ポート25を設置する。ヒータマット28は、半含浸プリプレグ10の樹脂を溶融させて熱硬化させる所定の温度となるように、半含浸プリプレグ10を加熱する。また、成形工程S6では、ヒータマット28を被覆するように、シール材30を介してバッグフィルム29を配置する。バッグフィルム29は、通気被覆シート12よりも一回り大きく形成されており、シール材30は、バッグフィルム29と複合材1との間に気密に配置される。
【0038】
成形工程S6では、真空吸引ポート25によりバッグフィルム29の内部を、真空吸引ポート25を介して真空吸引することで、半含浸プリプレグ10の未含浸領域及び通気被覆シート12を脱気回路として形成する。そして、成形工程S6では、脱気回路が形成された状態で、ヒータマット28により樹脂を溶融させることにより、樹脂を半含浸プリプレグ10の未含浸領域及び通気被覆シート12に含浸させる。半含浸プリプレグ10の未含浸領域及び通気被覆シート12に含浸した樹脂は熱硬化し、強化繊維と樹脂とが一体となって硬化することで、補修部8が形成される(ステップS7)。なお、通気被覆シート12としてピールプライが用いられている場合、硬化後の通気被覆シート12は、引き剥がされる。
【0039】
以上のように、実施形態1によれば、複合材1の被修理部5に、未含浸領域を有する半含浸プリプレグ10を積層して配置し、未含浸領域と通気被覆シート12とを連通させた状態で、通気被覆シート12に真空吸引ポート25を接触させることができる。このため、真空吸引ポート25による真空吸引時において、未含浸領域と通気被覆シート12とにより脱気回路を形成することができる。そして、脱気回路が形成された状態で樹脂を溶融させることにより、樹脂を未含浸領域及び通気被覆シート12に好適に含浸させることができ、空隙の形成を抑制することができる。よって、修理後の被修理部5である補修部8において空隙の残存が抑制されるため、補修部8の強度の低下を抑制することができ、被修理部5を適切に修理することができる。
【0040】
また、実施形態1によれば、半含浸プリプレグ10の未含浸領域が面外方向に亘って形成される場合、積層された半含浸プリプレグ10を被覆するように通気被覆シート12を配置することで、通気被覆シート12と未含浸領域と連通して配置することができる。このため、積層された半含浸プリプレグ10の全域に亘って脱気回路を形成でき、空隙の形成をより抑制することができる。
【0041】
また、実施形態1によれば、半含浸プリプレグの積層時に定期的に真空吸引を行うことで、半含浸プリプレグ10同士の層間における空隙の形成を抑制することができる。
【0042】
[実施形態2]
次に、
図4から
図7を参照して、実施形態2に係る複合材の修理方法について説明する。なお、実施形態2では、重複した記載を避けるべく、実施形態1と異なる部分について説明し、実施形態1と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
図4は、実施形態2に係る複合材の修理方法に関する一例の説明図である。
図5は、実施形態2に係る複合材の修理方法に関する一例の説明図である。
図6は、実施形態2に係る複合材の修理方法において修理された複合材の補修部の断面図である。
図7は、実施形態2に係る複合材の修理方法において修理された複合材の補修部の強度に関するグラフである。
【0043】
実施形態2の複合材の修理方法では、半含浸プリプレグ10として、面内方向に亘って未含浸領域が形成されるものが用いられ、また、通気部材として、実施形態1の通気被覆シート12の他、通気介在シート(通気介在部材)35が用いられる。
【0044】
半含浸プリプレグ10は、少なくとも面内方向に亘って未含浸領域が形成されており、このような半含浸プリプレグ10としては、実施形態1と同様に、
図11に示す両サイドタックの半含浸プリプレグ10であってもよい。また、半含浸プリプレグ10としては、例えば、
図12に示すものがあり、繊維方向と直交する方向に並べた強化繊維Fの束の一方側の面(上面)を樹脂Rが被覆する含浸領域とし、他方面の面(下面)を未含浸領域としたワンサイドタックの半含浸プリプレグ10であってもよい。つまり、
図11及び
図12に示す半含浸プリプレグ10は、いずれも面内方向に亘って未含浸領域を形成するものである。また、実施形態2においては、半含浸プリプレグ10は織布とする必要はなく、繊維方向を面内方向に引き揃えたプライを用いてもよい。
【0045】
通気介在シート35は、シート状に形成したものであり、面内方向及び面外方向において通気性を有するシートとなっている。通気介在シート35としては、例えば、不織布(以下、不織布35ともいう)が用いられる。この不織布35は、半含浸プリプレグ10と樹脂シート11との間に設けられ、半含浸プリプレグ10の未含浸領域と連通するものとなっている。不織布35は、半含浸プリプレグ10に用いられる強化繊維と同じ繊維が用いられ、例えば、炭素繊維が用いられている。この不織布35は、被修理部5よりも一回り大きく形成されており、被修理部5を被覆する中央の被覆部位35aと、被覆部位35aの外周側に設けられる被修理部5を被覆しない余剰部位35bとを有する。不織布35の余剰部位35bは、通気被覆シート12の余剰部位12bと重ね合わせられ、通気被覆シート12の余剰部位12bを介して、真空吸引ポート25が接する。なお、不織布35は、樹脂繊維又はガラス繊維が用いられてもよい。
【0046】
また、真空吸引ポート25の真空吸引によって、積層された半含浸プリプレグ10が樹脂シート11へ向かって移動するが、不織布35は、半含浸プリプレグ10の樹脂シート11への移動に抗して、半含浸プリプレグ10と樹脂シート11との間に脱気回路を形成可能な緩衝材として機能している。この不織布35は、その厚さが、樹脂シート11の厚さ以上、樹脂シート11の厚さの3倍以下となっている。
【0047】
次に、
図4及び
図5を参照して、被修理部5を有する複合材1の修理方法について説明する。実施形態2の複合材1の修理方法では、実施形態1の通気部材配置工程S5が、通気介在シート35を配置する通気介在シート配置工程(通気介在部材配置工程)S5aと、通気被覆シート12を配置する通気被覆シート配置工程(通気被覆部材配置工程)S5bとに分けて行われている。
【0048】
通気介在シート配置工程S5aは、被修理部形成工程S2及び樹脂シート配置工程S3の後に行われると共に、プリプレグ配置工程S4の前に行われる。通気介在シート配置工程S5aでは、樹脂シート11上に通気介在シート35を配置する。具体的に、通気介在シート配置工程S5aでは、通気介在シート35の被覆部位35aを、被修理部5の底面及び側面を被覆するように配置する。また、通気介在シート配置工程S5aでは、通気介在シート35の余剰部位35bを、被修理部5の外側、すなわち、成形工程S6において用いられる真空吸引ポート(真空吸引部)25と接する位置に配置する。
【0049】
プリプレグ配置工程S4では、通気介在シート35上に半含浸プリプレグ10を複数積層して配置する。このとき、プリプレグ配置工程S4では、積層される半含浸プリプレグ10の未含浸領域が、通気介在シート35と連通するように、半含浸プリプレグ10が配置される。なお、プリプレグ配置工程S4の他の部分については、実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0050】
通気被覆シート配置工程S5bは、プリプレグ配置工程S4の後に行われると共に、成形工程S6の前に行われる。通気被覆シート配置工程S5bでは、通気被覆シート12の被覆部位12aを、半含浸プリプレグ10を被覆するように、積層された半含浸プリプレグ10の最表面側(最上層側)に配置する。また、通気被覆シート配置工程S5bでは、通気被覆シート12の余剰部位12bを、被修理部5の外側、すなわち、成形工程S6において用いられる真空吸引ポート(真空吸引部)25と接する位置に配置する。このとき、通気被覆シート配置工程S5bでは、通気被覆シート12の余剰部位12bを、通気介在シート35の余剰部位35bに重ね合わせて配置する。
【0051】
成形工程Sで6は、実施形態1と同様に、通気被覆シート12の被覆部位12a上に、ヒータマット28を設置すると共に、通気被覆シート12の余剰部位12b及び通気介在シート35の余剰部位35bに真空吸引ポート25を設置する。また、成形工程S6では、ヒータマット28を被覆するように、シール材30を介してバッグフィルム29を配置する。
【0052】
成形工程S6では、真空吸引ポート25によりバッグフィルム29の内部を、真空吸引ポート25を介して真空吸引することで、半含浸プリプレグ10の未含浸領域、通気被覆シート12及び通気介在シート35を脱気回路として形成する。そして、成形工程S6では、脱気回路が形成された状態で、ヒータマット28により樹脂を溶融させることにより、樹脂を半含浸プリプレグ10の未含浸領域、通気被覆シート12及び通気介在シート35に含浸させる。半含浸プリプレグ10の未含浸領域、通気被覆シート12及び通気介在シート35に含浸した樹脂は熱硬化し、強化繊維と樹脂とが一体となって硬化することで、補修部8が形成される(ステップS7)。
【0053】
次に、
図6及び
図7を参照して、実施形態2の複合材1の修理方法によって修理された複合材1の補修部8の一例について説明する。
図6は、不織布35の厚みに応じて変化する空隙率のグラフである。
図6は、その縦軸が、空隙率となっており、その横軸が、樹脂シート11の厚さに対する不織布35の厚さの割合(不織布の厚さ/樹脂シートの厚さ)である。
【0054】
ここで、樹脂シート11の厚さは、0.20mmとなっており、不織布35の厚みは、樹脂シート11の厚さに対して、0.7倍以上3倍以下となる範囲となっている。以下、具体的に説明する。
【0055】
空隙率は、複合材1の補修部8の断面における評価領域に対して、補修部8に発生する空隙の空隙領域の割合である。
図6において、不織布の厚さ/樹脂シートの厚さの割合(0.11/0.20)が0.55である場合、補修部8の空隙率は3.6%となる。
図6において、不織布の厚さ/樹脂シートの厚さの割合(0.14/0.20)が0.7である場合、補修部8の空隙率は1.0%となる。
図6において、不織布の厚さ/樹脂シートの厚さの割合(0.21/0.20)が1.05である場合、補修部8の空隙率は0.1%となる。
図6において、不織布の厚さ/樹脂シートの厚さの割合(0.28/0.20)が1.4である場合、補修部8の空隙率はほぼ0%(空隙なし)となる。そして、空隙率の品質基準(クライテリア)を2%未満として評価した場合、不織布の厚さ/樹脂シートの厚さの割合が、0.7以上の範囲が良いことが確認された。以上から、不織布35の厚みは、樹脂シート11の厚さの0.7倍よりも厚いことが好ましいものとなる。
【0056】
次に、
図7を参照して、補修部8の強度について説明する。
図7は、その縦軸が、強度保持率となっている。強度保持率は、未修理となる複合材1の強度を100%としたときの、補修部8における強度の割合である。
図7では、不織布の厚さ/樹脂シートの厚さの値に応じた強度保持率となっており、左側から順に、不織布の厚さ/樹脂シートの厚さの割合が0.7となるもの、1.05となるもの、1.4となるものとなっている。
【0057】
図7では、第1から第3までの補修部8を用意し、第1から第3の補修部8について、それぞれ評価した強度保持率を示すと共に、第1から第3の平均となる補修部8の平均強度保持率を示している。
【0058】
図7において、不織布の厚さ/樹脂シートの厚さの割合が0.7となる場合(
図7の左側の場合)、補修部8の平均強度保持率は79.9%となる。
図7において、不織布の厚さ/樹脂シートの厚さの割合が1.05となる場合(
図7の中央の場合)、補修部8の平均強度保持率は80.0%となる。
図7において、不織布の厚さ/樹脂シートの厚さの割合が1.4となる場合、補修部8の平均強度保持率は81.3%となる。そして、強度保持率の品質基準(クライテリア)を80%以上として評価した場合、上記の割合における不織布35の厚みの範囲が適切であることが確認された。また、不織布の厚みが増大すると補修部8が複合材1に対して不織布35の厚み分外側に突出し、意匠性や空力抵抗の観点から問題となる可能性がある。また、突出を防ぐために補修部8の半含浸プリプレグ10を薄くした場合には強度低下が懸念される。以上から、不織布35の厚みは、樹脂シート11の厚さの3.0倍以下がより好ましいものとなる。
【0059】
以上のように、複合材1の被修理部5に、未含浸領域を有する半含浸プリプレグ10を積層して配置し、未含浸領域、通気被覆シート12及び通気介在シート35を連通させた状態で、通気被覆シート12に真空吸引ポート25を接触させることができる。このため、真空吸引ポート25による真空吸引時において、未含浸領域、通気被覆シート12及び通気介在シート35により脱気回路を形成することができる。そして、脱気回路が形成された状態で樹脂を溶融させることにより、樹脂を未含浸領域及び通気介在シート35に好適に含浸させることができ、空隙の形成を抑制することができる。よって、修理後の被修理部5である補修部8において空隙の残存が抑制されるため、補修部8の強度の低下を抑制することができ、被修理部5を適切に修理することができる。
【0060】
また、実施形態2によれば、真空吸引によって、積層された半含浸プリプレグ10が樹脂シート11側へ移動する場合でも、通気介在シート35が緩衝材として機能することで、脱気回路が閉塞することなく、脱気回路を好適に形成することができる。
【0061】
また、実施形態2によれば、不織布35の厚さを適切な厚さとすることで、補修部8における空隙の残存をより好適に抑制することができ、また、補修部8における半含浸プリプレグの一体化を好適に行うことができるため、補修部8の強度の低下を抑制することができる。
【0062】
なお、実施形態2では、不織布35を複数枚重ねたものとしたが、単層(1枚)で構成してもよく、特に限定されない。
【0063】
[実施形態3]
次に、
図8及び
図9を参照して、実施形態3に係る複合材の修理方法について説明する。なお、実施形態3でも、重複した記載を避けるべく、実施形態1及び2と異なる部分について説明し、実施形態1及び2と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
図8は、実施形態3に係る複合材の修理方法に関する一例の説明図である。
図9は、実施形態3に係る複合材の修理方法に関する一例の説明図である。
【0064】
実施形態3の複合材の修理方法では、半含浸プリプレグ10を被修理部5の形状に合わせて予め積層した修理パッチ41を用いている。修理パッチ41は、
図8に示すように、成形型42を用いて半含浸プリプレグ10を積層することにより、被修理部5と相補的な形状にプリ成形されている。なお、プリ成形は、積層した半含浸プリプレグ10を一体とする成形であって、半含浸プリプレグ10に含まれる樹脂を溶融させ熱硬化させたものではない。修理パッチ41をプリ成形する場合、半含浸プリプレグ10を所定数だけ積層するごとに真空吸引を行っている。つまり、半含浸プリプレグ10を積層すると、積層される半含浸プリプレグ10の層間に空隙が形成される可能性があるため、定期的に真空吸引を行うことで、半含浸プリプレグ10の層間に形成される空隙を除去する。
【0065】
そして、
図9に示すように、例えば、実施形態2のプリプレグ配置工程S4では、通気介在シート35上に修理パッチ41を配置する。このとき、プリプレグ配置工程S4では、修理パッチ41における半含浸プリプレグ10の未含浸領域が、通気介在シート35と連通するように、修理パッチ41が配置される。
【0066】
以上のように、実施形態3によれば、半含浸プリプレグ10同士の層間において空隙が生じないように、予め半含浸プリプレグ10を積層して修理パッチ41とすることができる。このため、半含浸プリプレグ10同士の層間における空隙の形成を抑制することができる。