特許第6847697号(P6847697)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6847697
(24)【登録日】2021年3月5日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】電気車制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 9/18 20060101AFI20210315BHJP
   B60L 7/14 20060101ALI20210315BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20210315BHJP
【FI】
   B60L9/18 A
   B60L7/14
   H02M7/48 E
   H02M7/48 M
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-24281(P2017-24281)
(22)【出願日】2017年2月13日
(65)【公開番号】特開2018-133843(P2018-133843A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2019年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾谷 浩昭
(72)【発明者】
【氏名】牧野 友由
【審査官】 吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/136220(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/021265(WO,A1)
【文献】 特開2004−173424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 9/18
B60L 7/14
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架線から供給される交流を直流に変換する第1の変換部と、
前記第1の変換部に直流リンクを介して接続され、前記第1の変換部により変換された直流を、モータを駆動させるための三相交流電圧に変換する第2の変換部と、
電気車の回生運転による電流が、所定電流を超える場合に、前記直流リンクの電圧を上昇させるように制御する電圧制御部と、を備え
前記電圧制御部は、前記電気車の回生運転による電流が、前記電気車の力行運転による最大電流値に近づくように、前記直流リンクの電圧を制御する、
電気車制御装置。
【請求項2】
前記所定電流は、制御目標値として決定される電流の上限値である、
請求項1記載の電気車制御装置。
【請求項3】
前記電圧制御部は、前記電気車の回生運転による電流が所定電流を超える場合に上昇させる直流リンクの電圧の限度値である上昇限度値を、前記第1の変換部と前記第2の変換部との間に接続された部材の定格電圧以下に制御する、
請求項1に記載の電気車制御装置。
【請求項4】
前記第1の変換部と前記第2の変換部との間における直流リンクの電圧を検知する電圧検出部と、
前記電圧検出部により検出された電圧が閾値を超える場合に、前記電圧検出部により検出された電圧が過電圧であると判定する過電圧判定部と、を更に備え、
前記電圧制御部は、前記直流リンクの電圧の上限値を、前記過電圧判定部が判定に用いる閾値以下に制御する、
請求項1から3のうち、いずれか1項に記載の電気車制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電気車制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交流架線により走行する電気車に搭載される電気車制御装置において、コンバータやインバータ等の変換部を構成する半導体素子は、それらに流れる電流によって素子が選定される。仮に、電気車の回生運転時の変換部に流れる最大電流が、力行運転時に流れる最大電流よりも大きい場合、回生運転時の電流値に基づいて半導体素子の定格電流を決定する必要が生じる。しかしながら、回生運転は、力行運転に比べて発生頻度が低いため、これに基づいて定格電流を決定するのは非効率である。すなわち、回生運転時の電流値に基づいて半導体素子の定格電流を決定すると、相対的に装置外形の増大やコスト増につながる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−087299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、装置外形の増大やコスト増を抑制することができる電気車制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の電気車制御装置は、第1の変換部と、第2の変換部と、電圧制御部とを持つ。第1の変換部は、架線から供給される交流を直流に変換する。第2の変換部は、直流リンクを介して第1の変換部に接続され、前記第1の変換部により変換された直流を、モータを駆動させるための三相交流電圧に変換する。電圧制御部は、電気車の回生運転による電流が、所定電流を超える場合に、前記直流リンクの電圧を上昇させるように制御する。また、電圧制御部は、前記電気車の回生運転による電流が、電気車の力行運転による最大電流値に近づくように、直流リンクの電圧を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態の電気車制御装置を搭載した電気車システム1の概要構成図。
図2】実施形態における制御部30の機能構成図。
図3】コンバータ22の力行運転時および回生運転時の速度と電流との関係を示す図。
図4】電圧制御部33が電圧制御を行った場合の結果の一例を示す図。
図5】実施形態の制御部30による処理の流れの一例を示すフローチャート。
図6】実施形態の電気車制御装置を搭載した電気車システム1Aの概要構成図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の電気車制御装置を、図面を参照して説明する。
【0008】
図1は、実施形態の電気車制御装置を搭載した電気車システム1の概要構成図である。図1に示す電気車(鉄道車両)は、交流電力の供給源である架線Pに集電器10が接触することにより、架線Pから電力供給を受けて走行する。電気車システム1は、主要な構成要素として、集電器10と、遮断器12と、変圧器14と、モータ16と、電気車制御装置20とを備える。電気車制御装置20は、第1の電流検出部21と、コンバータ(第1の変換部)22と、コンデンサ23−1および23−2と、電圧検出部24−1および24−2と、インバータ(第2の変換部)25と、制御部30とを備える。
【0009】
集電器10は、架線Pから交流電力を取得する。遮断器12は、集電器10と変圧器14との間に設けられる。遮断器12は、所定の条件下で変圧器14への交流電力の供給を遮断する。変圧器14は、集電器10により出力された交流電力の電圧を所望の電圧に変換する。
【0010】
第1の電流検出部21は、コンバータ22に入力される交流電流を検出する。第1の電流検出部21は、変圧器14とコンバータ22とが接続される両極端子の正極側に接続される。第1の電流検出部21は、検出した交流電流を制御部30に出力する。コンバータ22は、変圧器14から入力された交流電力を直流電力に変換する。
【0011】
コンバータ22は、例えば中性点クランプ方式(NPC(Neutral-Point-Clamped)方式)と称される電力変換回路である。コンバータ22の出力側(直流側)は、コンデンサ23−1および23−2を備える3レベル回路を形成している。
【0012】
電気車制御装置20は、コンバータ22とインバータ25とを導通させるように直流リンクが設けられている。図1では、直流リンクの一例として、第1〜第3の給電線を設けている。第1の給電線Pは、例えば正電位に維持される。第2の給電線Cは、第1の給電線Pよりも低電位(中間電位)に維持される。第3の給電線Nは、第2の給電線Cよりも低電位(負電位)に維持される。なお、コンバータ22の出力側は、2レベル回路であってもよい。
【0013】
コンデンサ23−1および23−2は、コンバータ22から出力される電力を平滑化する。コンデンサ23−1は、第1の給電線Pと、第2の給電線Cとの間に接続される。また、コンデンサ23−2は、第2の給電線Cと、第3の給電線Nとの間に接続される。
【0014】
電圧検出部24−1および24−2は、コンバータ22の出力側電圧を検出する。具体的には、電圧検出部24−1および24−2は、コンバータ22と、インバータ25との間における正極側と負極側の電圧を検知する。例えば、電圧検出部24−1は、第1の給電線Pと第2の給電線Cとの間の電圧を検出する。電圧検出部24−2は、第2の給電線Cと第3の給電線Nとの間の電圧を検出する。電圧検出部24−1および電圧検出部24−2は、それぞれの電圧値を制御部30に出力する。以下、電圧検出部24−1から得られる電圧と、電圧検出部24−2から得られる電圧とを加算した値を、中間直流電圧と称する。
【0015】
インバータ25は、コンバータ22から出力された直流電力を、制御部30から入力された制御信号(例えばPWM(Pulse Width Modulation)制御信号)に基づいて、所望の周波数や電圧等を有する三相交流(U相、V相、W相)に変換し、変換した三相交流をモータ16へ出力する。
【0016】
モータ16は、三相交流によってロータを回転させ、駆動力を出力する。モータ16の出力する駆動力は、図示しない歯車等の連結機構を介して車輪Wに伝達され、伝達された駆動力により車輪Wを回転させることで、電気車を走行させる。モータ16は、例えば、かご型三相誘導電動機である。なお、車輪Wは、線路Rを介して接地される。
【0017】
また、電気車システム1は、操作盤40と、表示盤50とを備える。操作盤40は、例えば電気車の主電源をオン/オフするためのマスタースイッチや、運転手が種々の操作を行うマスターコントローラ等を含む。マスターコントローラは、種々の対応を採用し得るが、例えば前方に押すことによって制動・減速による電気車の回生運転を指示し、後方に引くことによって電気車の加速による力行運転を指示することができる横軸型のマスターコントローラである。マスターコントローラに対してなされた操作量を示す信号、あるいは操作に基づいて決定される制御信号は、制御部30に入力される。表示盤50は、制御部30の指示に基づいて、電気車の速度等を含む各種情報を表示する。
【0018】
次に、実施形態における制御部30について説明する。図2は、実施形態における制御部30の機能構成図である。図2に示す制御部30は、運転制御部31と、判定部32と、電圧制御部33と、過電圧判定部34とを備える。
【0019】
運転制御部31は、操作盤40から入力された指示情報(例えば、ノッチ数)により、例えば電気車を回生運転による制御または力行運転による制御を行う。回生運転とは、減速により減少する運動エネルギーをモータ16によって回収し、回収したエネルギーを電力に変換して、架線Pに戻したり、電気車内に設けた蓄電池等に蓄える等の運転動作である。また、力行運転とは、架線Pからの交流電力を、コンバータ22により直流電力に変換し、変換した直流電力をインバータ25により三相交流に変換してモータ16へ出力することで、モータ16に駆動力を発生させ、発生した駆動力を車輪Wに伝えて電気車を加速させる等の運転動作である。すなわち、回生運転では、回転方向と逆方向にトルクを発生させることで発電を行い、力行運転では、回転方向と同方向にトルクを発生させることで電力を消費する。
【0020】
運転制御部31は、電気車に対して回生運転の制御を行っている場合に、その旨を示す信号(回生制御信号)を判定部32に出力する。判定部32は、運転制御部31から回生制御信号が入力された場合に、第1の電流検出部21から入力される検出電流が、所定電流を超えるか否かを判定する。ここで、検出電流は、交流を検出したものであるため、判定部32は、瞬時値を所定電流と比較してもよいし、平均値あるいは実効電流等を、所定電流と比較してもよい。所定電流とは、例えば、制御目標値として決定される上限値であり、電気車の力行運転中における最大電流である。制御部30は、回生運転中において、第1の電流検出部21からの検出電流が最大電流を超えないように制御する。これによって、コンバータ22やコンデンサ23、インバータ25、モータ16等の故障や、寿命の低下を抑制することができる。
【0021】
図3は、コンバータ22の力行運転時および回生運転時の速度と電流との関係を示す図である。図3の例において、横軸は、電気車の速度Mを示し、縦軸はコンバータ22の入出力電流Iを示す。コンバータ22の入出力電流Iは、電気車の回生運転時および力行運転時において、高速走行時に最大電流となる。図3の例では、回生運転時にコンバータ22に入出力される最大電流をI1_maxとし、力行運転時にコンバータ22に入出力される最大電流をI2_maxとする。ここで、力行運転においては、制御目標値が設定されているため、I2_maxを超えないように制御される。一方、回生運転において特段の工夫がされなければ、I2_maxを超えるI1_maxまで入出力電流Iが上昇する可能性がある。
【0022】
そこで、制御部30は、回生運転時の入出力電流Iが力行運転時の最大電流I2_maxより高くなった場合に、中間直流電圧を上昇させ、回生運転時にコンバータ22の入出力電流Iを低下させる制御を行う。中間直流電圧を上昇させることで、インバータ25の入力側電位も上昇するため、インバータ25の出力側から入力側に流れる電流は低くなる。
【0023】
判定部32は、回生運転中に、第1の電流検出部21からの検出電流が、電気車の力行運転中における最大電流I2_maxを超えるか否かを判定し、その判定結果を電圧制御部33に出力する。電圧制御部33は、判定部32から入力された判定結果に基づいて、力行運転中における最大電流I2_maxを超えている場合に、中間直流電圧Vを上昇させるための電圧制御信号を生成し、生成した電圧制御信号をコンバータ22およびインバータ25に出力する。この中間直流電圧Vの上昇幅は、電流が最大電流に近づくように設定される。この場合、電圧制御部33は、中間直流電圧Vを上昇させる場合に、その上昇値が力行運転時による最大電流値I2_maxに近づくように制御してもよい。これにより、回生運転時において、最大限許容される限度近くまで回生を継続することができる。
【0024】
図4は、電圧制御部33が電圧制御を行った場合の結果の一例を示す図である。図4の横軸は、電気車の速度Mを示し、縦軸は、中間直流電圧Vを示す。図示するように、回生運転時の入出力電流Iが、力行運転時の最大電流I2_maxを超えるタイミングで中間直流電圧Vが上昇するように制御される。
【0025】
また、電圧制御部33は、中間直流電圧Vを上昇させる場合に、中間直流電圧Vの上昇値が予め設定された上昇限度値を超えないように制御する。上昇値とは、入出力電流Iが、力行運転時の最大電流I2_maxを超えると判定されてからの上昇値であってもよいし、所定時間前からの上昇値であってもよいし、その他、任意の基準で定義されてもよい。
【0026】
例えば、電圧制御部33は、上昇させる中間直流電圧Vの上昇値が、例えばコンバータ22とインバータ25との間に接続された部材(コンデンサ23等)の定格電圧以下になるように制御する。電圧制御部33は、更に、上昇させる中間直流電圧Vの上昇値が、コンバータ22またはインバータ25に含まれる半導体素子の定格電圧以下になるように制御してもよい。このように、回生運転時の所定状態のときに中間直流電圧Vを高くすることで、回生運転よりも頻度の多い力行運転時の中間直流電圧Vは低くすることができる。したがって、電気車制御装置20は、常時高い電圧が印加されることはなく部材の信頼性や寿命を大きく損なわず、回生運転時の入出力電流Iを下げることが可能となり、素子定格の低減、装置の小型化に寄与することができる。
【0027】
また、電圧制御部33は、中間直流電圧Vを上昇させる場合に、後述する過電圧判定部34から過電圧であるか否かを判定するための閾値を取得し、その閾値を上限値として、中間直流電圧Vが閾値以下となるように制御してもよい。
【0028】
過電圧判定部34は、電圧検出部24−1および24−2により検出された中間直流電圧Vが過電圧であるか否かを判定する。過電圧判定部34は、中間直流電圧Vが予め設定された閾値を超える場合に、中間直流電圧Vが過電圧であると判定する。
【0029】
このように、中間直流電圧Vの上限値を、過電圧判定部34の閾値以下とすることで、制御部30は、過電圧判定部34による誤検知を防止することができる。
【0030】
ここで、実施形態の制御部30による処理の流れについてフローチャートを用いて説明する。図5は、実施形態の制御部30による処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、運転制御部31は、電気車が回生運転中であるか否かを判定する(ステップS100)。回生運転中である場合、判定部32は、第1の電流検出部21からコンバータ22の入出力電流Iを取得し(ステップS102)、取得した入出力電流Iが力行運転中の最大電流I2_maxを超えているか否かを判定する(ステップS104)。
【0031】
取得した電流値が力行運転中の最大電流I2_maxを超えている場合、電圧制御部33は、中間直流電圧Vを上昇させる制御を行う(ステップS106)。また、電圧制御部33は、上昇させた中間直流電圧Vの上昇値が、コンデンサ23等の部材の定格電圧以下であるか否かを判定する(ステップS108)。中間直流電圧Vの上昇値が定格電圧以下でない場合、電圧制御部33は、中間直流電圧Vの上昇値が定格電圧以下になるように制御する(ステップS110)。
【0032】
また、電圧制御部33は、中間直流電圧Vが、過電圧であるかを判定するための閾値以下であるか否かを判定する(ステップS112)。中間直流電圧Vが閾値以下でない場合、電圧制御部33は、中間直流電圧Vが閾値以下となるように制御する(ステップS114)。これによって、本フローチャートの処理が終了する。
【0033】
また、中間直流電圧Vが定格電圧以下である場合、ステップS100の処理において、回生運転中でない場合、または、ステップS104の処理において、電流値が力行運転中の最大電流I2_maxを超えていない場合にも、本フローチャートの処理が終了する。なお、本フローチャートの処理は、制御部30による運転制御中、継続して繰り返し実行される。
【0034】
以上説明した実施形態によれば、回生運転時の電流が力行運転時の最大電流I2_maxを超えている場合に、中間直流電圧Vを上昇させ、回生運転時のコンバータ22の電流を下げる制御を行うことで、信頼性や寿命を大きく損なわず、回生電流を下げることが可能となり、素子定格の低減、装置の小型化に寄与することができる。したがって、装置外形の増大やコスト増を抑制することができる。また、上昇させる中間直流電圧Vを、過電圧と判定する基準となる閾値以下に制御することで、中間直流電圧Vを上昇させることによる誤検知の発生を防止することができる。したがって、更に信頼性や寿命を大きく損なわず、回生電流を下げることが可能となる。
【0035】
(実施形態の変形例)
次に、実施形態の変形例について説明する。上述した実施形態では、第1の電流検出部21によりコンバータ22の入力側の電流値を取得するものとしたが、本変形例では、インバータ25の出力側の電流値を取得し、取得した電流が、所定電流を超えるか否かを判定する。
【0036】
図6は、実施形態の電気車制御装置を搭載した電気車システム1Aの概要構成図である。なお、電気車システム1Aの説明においては、図1に示す電気車システム1と同様の構成については、同一の符号を付するものとし、ここでの具体的な説明は省略する。電気車システム1Aは、上述した電気車システム1と比較すると、電気車制御装置20Aにおいて、第1の電流検出部21の代わりに、第2の電流検出部26−1および26−2を備えている。
【0037】
第2の電流検出部26−1および26−2は、インバータ25の出力側に設けられており、インバータ25から出力される三相交流(U相、V相、W相)のうち、任意の2つの相の電流値を抽出する。第2の電流検出部26−1は、U相電流Iuを検出する。また、第2の電流検出部26−2は、V相電流Ivを検出する。第2の電流検出部26−1および26−2は、それぞれで検出された電流値を制御部30に出力する。制御部30では、回生運転時において、判定部32によりU相電流Iuと、V相電流Ivとに基づいて計算した値が力行運転時の最大電流I2_maxを超えているか否かを判定し、力行運転時の最大電流I2_maxを超えている場合に、電圧制御部33により中間直流電圧Vを上昇させ、回生運転時のコンバータ22の入出力電流Iを下げる制御を行う。この場合、コンバータ22の入力側の電流値を比較対象とする場合に比して、計算方法または上限電流等を異ならせてもよい。これにより、上述した実施形態と同様に、装置外形の増大やコスト増を抑制することができる。
【0038】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、架線Pから供給される交流を直流に変換するコンバータ22と、コンバータ22により変換された直流を、モータ16を駆動させるための三相交流電圧に変換するインバータ25と、電気車の回生運転による電流が、所定電流を超える場合に、中間直流電圧Vを上昇させるようにインバータ25を制御する電圧制御部33とを持つことにより、装置外形の増大やコスト増を抑制することができる。
【0039】
具体的には、制御部30は、コンバータ22の回生運転時の入出力電流Iが、力行運転時の最大電流I2_maxを超える時点で、中間直流電圧Vを上昇させる。また、制御部30は、中間電流電圧Vの上昇値が予め設定された中間電流電圧Vの限度値である上昇限度値を超えないように制御する。
【0040】
また、制御部30は、上昇させる中間電流電圧Vの上昇値が、例えばコンバータ22とインバータ25との間に接続された部材(コンデンサ23等)の定格電圧以下になるように制御する。これにより、部材の信頼性や寿命を大きく損なわず、回生運転時の入出力電流Iを下げることが可能となり、素子定格の低減、装置の小型化に寄与することができる。
【0041】
また、制御部30は、中間直流電圧Vを上昇させる場合に、コンバータ22の回生運転時の入出力電流Iが力行運転時による最大電流値I2_maxに近づくように制御することで、回生運転時において、最大限許容される限度近くまで発電を行うことができる。また、力行運転時および回生運転時のそれぞれにおいて、近似または同等の最大電流を基準に制御することができる。そのため、電気車の力行運転または回生運転による制御を効率化することができる。
【0042】
また、制御部30は、上昇させる中間直流電圧Vが、過電圧であるか否かを判定するための閾値以下となるように制御することで、中間直流電圧Vを上昇させることによる誤検知の発生を防止することができる。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0044】
1、1A…電気車システム、10…集電器、12…遮断器、14…変圧器、16…モータ、20、20A…電気車制御装置、21…第1の電流検出部、22…コンバータ(第1の変換部)、23…コンデンサ、24…電圧検出部、25…インバータ(第2の変換部)、26…第2の電流検出部、30…制御部、31…運転制御部、32…判定部、33…電圧制御部、34…過電圧判定部、P…架線、W…車輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6