(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態におけるモータ及びそれを用いたアクチュエータの一例について説明する。
【0028】
以下の説明において、モータのシャフトに平行な方向を、回転軸方向ということがある。また、回転軸方向を、上下方向ということがある(モータのフレームから見てシャフトが突出している方向が上方向)。ここでいう「上下」、「上」、「下」等は、モータのみに着目した場合について便宜上採用する示し方であって、このモータが搭載される機器における方向や、このモータが使用される姿勢について何ら限定するものではない。
【0030】
図1は、本発明の実施の形態の1つにおけるモータ1を示す断面図である。
【0031】
図1に示される断面は、後述の
図2においてB−B線として示される断面である。以下の図において、矢印A1は、回転軸方向を示す。矢印A1において、矢先がある方向が上である。
【0032】
モータ1は、例えばDCモータである。モータ1は、大まかに、フレーム組立体1aと、フレーム組立体1aに対して回転可能なアマチュア組立体1bとを有している。
【0033】
アマチュア組立体1bは、回転軸(シャフト)2と、アマチュア部4と、整流子部6などを有している。アマチュア部4は、回転軸2に取り付けられている。アマチュア部4は、ラジアル方向に複数突出する突極を有するアマチュアコア5及び各突極に巻回された巻線(図示せず)などを有している。整流子部6は、回転軸2の一方の端部近傍に設けられている。整流子部6は、後述のように、フレーム組立体1aに設けられているブラシ25と、ブラシ25に接触する整流子7などを有している。
【0034】
フレーム組立体1aは、フレーム(モータケース)10、ブラケット30、プレート40、磁石50などで構成されている。
【0035】
フレーム10は、上側の端部と、下側の端部とを備え、上側の端部が面で覆われた筒形状を有している。すなわち、フレーム10において、下側の端部が開口部となるカップ形状を有している。フレーム10の下側の端部(
図1において右側の端部)の開口部は、プレート40によりふさがれている。フレーム10及びプレート40により構成されるハウジング内に、アマチュア組立体1bが収納されている。
【0036】
プレート40の内側には、ブラケット30が取り付けられている。ブラケット30には、外部からの電流が供給される端子26が保持されている。端子26は、ブラシ25と連結されている。ブラシ25は、整流子7に接触するようにして保持されている。
【0037】
回転軸2は、フレーム10の上側の面を貫通している。すなわち、回転軸2の上端部は、フレーム10から、フレーム10の外部に突出しており、回転軸2の他の部分は収納されている。フレーム10の上側の面の中央部には、軸受21が保持されている。また、プレート40の中央部には、軸受22が保持されている。回転軸2は、2箇所の軸受21,22により、フレーム10に対して回転可能に支持されている。
【0038】
図2は、
図1のA−A線における断面図である。
【0039】
図2に示されるように、本実施の形態においては、4個1組の磁石50が設けられている。各磁石50は、フレーム10の内側に配置されている。フレーム組立体1aは、各磁石50の外周面50aをフレーム10で囲んだ断面構造を有している。フレーム10の外周面が、モータ1の外周面となる。
【0040】
フレーム10は、磁性材料を用いて形成されている。フレーム10は、複数の角部12と、隣接する2つの角部12の間にある平面部(面部の一例)11とを有している。具体的には、フレーム10は、平面部11と角部12とをそれぞれ4つずつ有する外形を有している。周方向に隣接する2つの平面部11同士は、1つの角部12を介して接続されている。周方向に隣接する2つの平面部11のうち一方は、他方に対して略垂直である。角部12は、丸みを帯びた形状(R形状)を有している。フレーム10は、回転軸2に垂直な断面において略正方形である。フレーム10は、全体として角型に形成されている。
【0041】
フレーム10は、略均一の厚みを有している。すなわち、フレーム10の内周面10bは、平面部11による平坦な部分と、角部12による丸みを持った部分とが複数繋がることで構成され、角型に形成されている。
【0042】
磁石50は、例えば公知の希土類材料と公知の樹脂材料とを用いて形成されたボンド磁石である。なお、磁石50は、ボンド磁石に限られず、例えば焼結型の磁石であってもよい。
【0043】
4つの磁石50は、それぞれ、磁極要素61(N極61a、S極61b、N極61c、S極61d)を有している。すなわち、4つの磁石は、モータ1の角部12の数と同一の数の磁極要素61を有している。磁極要素61は、周方向に、極性が互い違いになるように配置されている。4つの磁石50は、フレーム10の4つの角部12に、磁極要素61が向かい合った状態で配置されている。すなわち、1組の磁石50としてみると、4つの磁極要素61の切り替え部分は、それぞれ、フレーム10の平面部11に径方向に重なる位置にある。
【0044】
4つの磁石50のそれぞれは、角部12のフレーム10の内周面10bに沿う丸みを帯びた形状の外周面50aを有している。4つの磁石50のそれぞれは、円柱面状の内周面50bを有している。各磁石50の内周面50bとアマチュアコア5との間には、わずかなエアギャップが設けられている。4つの磁石50のそれぞれは、周方向において、隣接する磁石50との間に隙間が空くようにして配置されている。すなわち、フレーム組立体1aにおいて、各平面部11の一部の内周面10bはアマチュア組立体1bに向けて露出している。また、各平面部11の他の部分の内周面10bは、磁石50が配置されていることにより、磁石50により覆われている。このようにフレーム10の内周面10bが露出している部分を除いて4つの磁石50の内周面50bで構成される円柱面により、アマチュアコア5が略全周にわたって覆われている。
【0045】
本実施の形態において、磁石50は、フレーム10の内周面10bに、接着剤70によって接着されている。すなわち、磁石50の外周面50aとフレーム10の内周面10bとの間には、接着剤70がある。
【0046】
図3は、フレーム組立体1aの分解斜視図である。
【0047】
図3においては、ブラケット30の図示は省略されている。
【0048】
図3に示されるように、4つの磁石50は、フレーム10の下側の開口部からフレーム10の内側に納められ、フレーム10の内周面10bに接着される。その後、フレーム10の内部にアマチュア組立体1bを納めてブラケット30及びプレート40をフレーム10に取り付けることにより、モータ1が組み立てられる。
【0049】
図4は、磁石50に対する接着剤70が配置される領域を説明する図である。
【0050】
接着剤70は、公知の樹脂材料で形成されており、塗布等の方法で各磁石50の外周面50aに配置される。接着剤70は、各磁石50の外周面50aのうち全域ではなく、一部の領域に配置されている。具体的には、接着剤70が配置されるのは、例えば以下の外周面50aの領域である。
【0051】
図4に示されるように、外周面50aを、回転軸方向に3つの領域(上部外周面55T、中部外周面55C、及び下部外周面55B)に分けた場合を想定する。上部外周面55Tは、外周面50aの上側3分の1の領域である。下部外周面55Bは、外周面50aの下側3分の1の領域である。中部外周面55Cは、上部外周面55Tと下部外周面55Bとの間の、残り3分の1の領域である。本実施の形態において、接着剤70は、上部外周面55Tと、下部外周面55Bとの2つの領域に配置される。接着剤70は、中部外周面55Cには配置されない。すなわち、接着剤70は、回転軸方向の上側の領域と下側の領域とに配置されるが、回転軸方向の中央部の領域には配置されない。接着剤70は、外周面50aを構成する回転軸方向に分かれた3つの領域のうち、互いに隣り合わない2つの領域に配置されている。
【0052】
図1に示されるように、このように接着剤70が磁石50の外周面50aの一部の領域に配置されていることにより、フレーム10の内周面10bと磁石50の外周面50aとの間には、空隙80が設けられている。そして、回転軸方向において、空隙80の両側には、磁石50をフレーム10に接着する接着剤70がある。言い換えれば、この接着剤70により、空隙80の両側にある磁石50とフレーム10とが連結している。
【0053】
具体的には、空隙80は、中部外周面55Cとフレーム10の内周面10bとの間に設けられている。空隙80は、周方向に延在している。空隙80の上側には、接着剤70がある。すなわち、接着剤70は、上部外周面55Tとフレーム10の内周面10bとの間に挟まれている。また、空隙80の下側には、接着剤70がある。すなわち、接着剤70は、下部外周面55Bとフレーム10の内周面10bとの間に挟まれている。
【0054】
なお、磁石50とフレーム10との接着状況によって、フレーム10の内周面10bと磁石50の外周面50aとの間隔が、各位置間で微妙に異なる場合がある。このような原因で、上部外周面55Tや下部外周面55Bに塗布された接着剤70が上下にはみ出したり、空隙80の領域が若干広がったりしていてもよい。また、各領域55T,55C,55Bの比率は、3分の1ずつに限られず、いずれかの領域が広めであったり狭めであったりしてもよい。また、各領域55T,55C,55Bの比率は、それぞれ4分の1、4分の2、4分の1であっても構わない。
【0055】
図5は、
図1のC−C線における断面図である。
【0056】
図1のC−C線における断面は、中部外周面55Cがある領域の断面である。
図5に示されるように、この領域においては、磁石50の外周面50aとフレーム10の内周面10bとの間に、接着剤70が配置されていない。すなわち、磁石50の外周面50aとフレーム10の内周面10bとの間には、周方向に延在する空隙80が設けられている。
【0057】
図6は、ブラケット30及びプレート40を示す斜視図である。
【0058】
図6においては、ブラケット30及びプレート40の上側の部分が示されている。
図6に示されるように、ブラケット30には、2つの端子26が取り付けられている。各ブラシ25の一端部は、端子26に接続されている。これにより、2つのブラシ25は、それぞれ、端子26によって支持されている。各ブラシ25の他端部は、アマチュア組立体1bの整流子7に接触する。
【0059】
ブラケット30は、例えば樹脂部材により成形されている。ブラケット30は、回転軸方向に厚みを有している。ブラケット30は、回転軸2が通る開口35を有する筒部を有している。本実施の形態において、ブラケット30は、中央部に開口35を有する筒部である。開口35には、ブラシ25が配置されている。また、回転軸2は、開口35を貫通する。ブラケット30は、環状で閉じた形状である外周面30aを有する。すなわち、筒部は、外周面30aを有している。
【0060】
回転軸方向から見て(平面視で)、筒部の外周面30aは、大まかに、フレーム10の内周面10bと略同じ形状を有している。すなわち、ブラケット30は、4つの角部32と、隣接する2つの角部32の間に設けられた平面部31とを有している。筒部の外周面30aは、4つの角部32と4つの平面部とに設けられている。
図1に示されるように、回転軸方向において、ブラケット30の外周面30aは、磁石50に向かって延在している。ブラケット30の回転軸方向の長さは、例えば、ブラシ25の回転軸方向の寸法より若干大きくなっている。ブラシ25は、開口35の内側に収容される。
【0061】
ブラケット30には、上側から下に凹むように形成された凹部37が設けられている。筒部の外周面30aと開口35を構成する内周面30bとの間には、凹部37や、その他の孔部を除き、樹脂部材が存在している。凹部37が設けられていることにより、ブラケット30の成形を容易に行うことができる。ブラケット30は、径方向に剛性を有している。すなわち、ブラケット30において、外周面30aから内側に向けて径方向の肉厚は一定程度確保されており、外周面30aの一部に径方向の力が加わっても、ブラケット30が歪みにくくなっている。ブラケット30の径方向の剛性は大きく損なわれないように、凹部37はブラケット30の剛性を考慮して設けられている。
【0062】
ブラケット30がフレーム10に取り付けられている状態で、ブラケット30の外周面30aは、フレーム10の内周面10bに接触している。フレーム10の平面部11に対向する、ブラケット30の外周面30aの平面部31部分は、径方向において剛性を有している。
【0063】
以上説明したように、本実施の形態では、磁石50の外周面50aとフレーム10の内周面10bとの間には、周方向に延在する空隙80が設けられており、その両側に接着剤70が配置されている。すなわち、外周面50aのうち、3分の1の面積の中部外周面55Cには接着剤70が塗布されず、残り3分の2の面積の上部外周面55T及び下部外周面55Bに接着剤70が塗布される。このように接着剤70を配置しない領域が設けられているので、接着剤70の使用量を削減することができる。したがって、モータ1を軽量化することができる。また、モータ1の製造コストを削減することができる。
【0064】
ここで、接着剤70を塗布する領域が、上部外周面55Tと下部外周面55Bとに制限されている。これにより、モータ1の径方向の固有振動数を、接着剤70を外周面50aの全域に塗布する場合と同様の固有振動数に維持することができる。
【0065】
すなわち、モータ1のようなインナーロータ型モータでは、磁石50とフレーム10とを組み合わせた組立体の径方向の固有振動がモータ1の運転時に発生することで、騒音が発生する。多くの場合では、磁石50とフレーム10との組立体について、後述する円環2次モードが、最も代表的な固有振動モードである。モータ1において、径方向の電磁力のうち、高調波の周波数が、磁石50とフレーム10との組立体の径方向の固有振動数に一致すると、円環2次モードでの振動の振幅が高くなり、顕著な振動や騒音が発生して問題となることがある。特に近年では、磁石50として磁力が比較的高いネオジム系磁石が用いられる場合が多くなっている。そのため、径方向の電磁力の高調波の振幅が高くなり、このような共振問題が顕在化する場合がある。
【0066】
図7は、モータ1の振動モードについて説明する図である。
図8は、モータ1の振動モードの解析結果について説明する図である。
【0067】
図7においては、フレーム10の回転軸2に垂直な断面が模式的に示されている。円環2次モードでの振動では、フレーム10が、二点鎖線で示すような変形状態と、破線で示すような変形状態とを交互に繰り返す(変形量は誇張して示されている。)。すなわち、4つの角部12の付近に節Nがあり、4つの平面部11の中央部付近が腹ANとなる。円環2次モードは、径方向に対向する部位が互いに逆位相となるように振動し、隣り合う部位が径方向において逆向きに振動するモードということができる。
【0068】
図8においては、円環2次モードでの振動時のモータ1の変形状態が、固有値解析により模式的に示されている。図において、モータ1のフレーム10の変位量の最大値が大きい部分ほど、低い濃度の色で着色されている。
【0069】
フレームに磁石を接着する際には、磁石の外周面の全面に接着剤が塗布される場合がある。この場合、磁石の外周面の全面をフレームの内周面に接着することによって磁石とフレームとが一体的な構造体となる。それにより、円環2次モードの固有振動数を高い値にシフトさせることができ、電磁振動騒音の発生を抑制することができる。その一方で、接着剤を磁石の外周面の全面に塗布すると、接着剤の使用量が多くなり、モータの製造コストが高くなる場合がある。また、接着剤が多いと、モータが重くなる場合がある。
【0070】
このような場合について、本実施の形態においては、接着剤70が上部外周面55Tと下部外周面55Bとの限定した領域に配置されているので、上記のように接着剤70の使用量を減らすことができる。したがって、モータ1の製造コストを削減することができる。また、モータ1を軽量化することができる。なお、製造コストの削減、モータ1の軽量化どちらか一方が達成されていても構わない。
【0071】
接着剤70は、磁石50aの外周面50aのうち、互いに回転軸方向に離れた上部外周面55Tと下部外周面55Bとに配置されている。したがって、回転軸方向において互いに離れた2箇所でフレーム10を磁石50aに対して固定することができるので、フレーム10と磁石50aとを一体的に組み立てることができる。なお、シミュレーションにより固有値解析を行った結果、本実施の形態においては、径方向の固有振動数を、磁石50の外周面50aの全面に接着剤70を塗布した場合と略同じ程度に維持することができることが確認された。すなわち、振動により発生する騒音を、磁石50の外周面50aの全面に接着剤70を塗布した場合と同じように抑制することができる。固有振動数を可聴域外(10kHz以上)の領域に留めて、異音を抑えたまま、モータ1の軽量化を実現できる。
【0072】
具体的には、例えば、接着剤70を外周面50aの全面に配置した場合の径方向の固有振動数は、11734Hzであった。これに対し、本実施の形態のように、回転軸方向において、外周面50aの両端の3分の1の領域にそれぞれ接着剤70を配置した場合の径方向の固有振動数は、11665Hzであった。径方向の固有振動数は、接着剤70を外周面50aの全面に配置した場合と比較して0.6パーセント低下するだけである。すなわち、接着剤70を削減しても、実際の振動や騒音にはほぼ影響がないといえる。接着剤70の使用量を、接着剤70を外周面50aの全面に配置した場合と比較して3分の1ほど削減することができる。したがって、モータ1の製造コストを削減することができる。また、モータ1を軽量化することができる。
【0073】
また、本実施の形態においては、フレーム10の内周面10bにブラケット30の外周面30aが接触している。そのため、フレーム10の内周面10bの回転軸方向において磁石50が接着されていない領域をブラケット30により支持することができ、モータ1の振動を抑えることができる。ブラケット30の外周面30aは、径方向に剛性を有しているので、フレーム10の内周面10bが確実に支持される。回転軸方向において、ブラケット30の外周面30aは磁石50に向かって延在しているので、フレーム10の内周面10bを確実に支持し、モータ1の振動を抑えることができる。また、磁石50に支持されていないフレーム10の平面部11部分をブラケット30の外周面30aにより支持することができるので、モータ1の振動を抑え、異音の発生を防止することができる。
【0074】
モータ1は、モータ1の動作にそれほど影響のない磁極要素61の切替え部分で分かれた4個1組の磁石50を用いている。モータ1の性能を維持しながら、磁石50の使用量を削減することができる。したがって、モータ1の製造コストを低減でき、また、モータ1を軽量化できる。
【0076】
以下の説明において、上述と同様の構成を有する部材や部分については上述と同じ符号を付して表す。
【0078】
図9は、本実施の形態の一変形例に係るモータの磁石150を示す斜視図である。
【0079】
図9においては、本実施の形態の一変形例に係るモータの磁石150が示されている。
【0080】
図9に示されるように、磁石50は、単一の部材で形成されている。磁石150は、環状である。すなわち、磁石150は、筒状に形成されている。磁石150の内周面10bは、円柱面である。磁石150の外周面150aは、フレーム10の内周面10bに沿う形状を有している。すなわち、磁石150は、フレーム10に対応するように、4つの角部152と、それぞれ隣接する角部152の間にある4つの平面部151とを有している。
【0081】
図10は、磁石150に対する接着剤70が配置される領域を説明する図である。
【0082】
本変形例においても、上記の実施の形態と同様に、接着剤70は、各磁石150の外周面150aのうち全域ではなく、一部の領域に配置されている。このことについて、具体的に、上記の実施の形態と同様に外周面150aを回転軸方向に3分の1ずつ分割して、上部外周面155T、中部外周面155C、下部外周面155Bの3領域に区分して説明する。すなわち、接着剤70は、上部外周面155Tと、下部外周面155Bとの2つの領域に配置される。接着剤70は、中部外周面155Cには配置されない。接着剤70は、回転軸方向の上側の領域と下側の領域とに配置されるが、回転軸方向の中央部の領域には配置されない。接着剤70は、外周面150aを構成する回転軸方向に分かれた3つの領域のうち、互いに隣り合わない2つの領域に配置されている。
【0083】
図11は、本変形例に係るモータの断面図である。
【0084】
図11に示される断面は、上述の実施の形態に係るモータ1の、
図5に示される断面に対応する。すなわち、中部外周面155C部分を通る断面が示されている。磁石150の4つの角部152には、それぞれ、磁極要素61が設けられている。すなわち、磁石150は、複数の磁極要素61を有している。磁石50の複数の磁極要素61の切替え部分は、それぞれ、フレーム10の平面部11に位置している。
【0085】
本変形例において、接着剤70が磁石150の外周面150aの一部の領域に配置されていることにより、フレーム10の内周面10bと磁石150の外周面150aとの間には、周方向に延在する空隙80が設けられている。回転軸方向において、空隙80の両側には、接着剤70がある。すなわち、上部外周面155Tとフレーム10の内周面10bとの間に、接着剤70がある。また、下部外周面155Bとフレーム10の内周面10bとの間には、接着剤70がある。
【0086】
このように、本変形例においても、接着剤70が配置される領域が、磁石150の外周面150aの上部外周面155Tと下部外周面155Bとに限られており、中部外周面155Cには接着剤70が配置されない。この場合も、上述の実施の形態と同様に、接着剤70の使用量を削減でき、また、振動を抑制できる。すなわち、フレーム10と磁石150との組立体の径方向の固有振動数を、磁石150と接着剤70を磁石150の外周面150aの全部に塗布する場合と同程度に維持することができる。したがって、モータ1における異音の発生を抑制でき、また、モータ1を軽量化することができる。また、モータ1における異音の発生の抑制と、モータ1の製造コストの削減とを両立させることができる。
【0087】
なお、接着剤70は、磁石50,150の外周面50a,150aを構成する回転軸方向に分かれた3つ以上の領域のうち、互いに隣り合わない複数の領域に配置されているようにしてもよい。一例として、磁石150に対して、接着剤70が塗布されない領域が2箇所に分かれている場合について説明する。なお、接着剤70の配置態様はこれに限られるものではない。
【0088】
図12は、磁石150に対する接着剤70の配置例を説明する図である。
【0089】
図12に示される例では、外周面150aを回転軸方向に5つの領域に分割して示している。すなわち、外周面150aは、上側から、上部外周面155T1、第1中部外周面155C1、第2中部外周面155C2,第3中部外周面155C3、及び下部外周面155B1の5領域で構成されている。
【0090】
このとき、接着剤70は、例えば、上部外周面155T1と、第2中部外周面155C2と、下部外周面155B1とに配置することができる。すなわち、第1中部外周面155C1と第3中部外周面155C3とのそれぞれには、接着剤70は配置されない。これにより、第1中部外周面155C1とフレーム10の内周面10bとの間には、空隙80が設けられる。また、第3中部外周面155C3とフレーム10の内周面10bとの間にも、空隙80が設けられる。回転軸方向において、各空隙80の両側には、接着剤70が配置されている。
【0091】
このような接着剤70の配置態様であっても、上述と同様に、接着剤70の使用量を削減することができ、かつ、モータ1における異音の発生を抑制することができる。
【0092】
また、
図12に示されるような配置例とは異なり、接着剤70は、例えば、第1中部外周面155C1と第3中部外周面155C3とのそれぞれに配置してもよい。これにより、第2中部外周面155C2とフレーム10の内周面10bとの間には、空隙80が設けられる。回転軸方向において、空隙80の両側には、接着剤70が配置される。
【0093】
このような接着剤70の配置態様であっても、上述と同様に接着剤70の使用量を削減することができ、かつ、モータ1における異音の発生を抑制することができる。特に、このように回転軸方向において空隙80の両側に接着剤70が存在するように接着剤70を配置することで、同量の接着剤70を磁石150の外周面150a上のまとまった領域に塗布する場合と比較して、モータ1における異音の発生を抑制することができる。
【0094】
図13は、本実施の形態の別の変形例に係るモータの磁石50を示す斜視図である。
【0095】
本実施の形態において、磁石50の外周面50aには、リブ59が設けられていてもよい。リブ59は、例えば、接着剤70が配置されない中部外周面55Cに配置されている。リブ59は、外周面50aから径方向に延びている。リブ59は、4つの磁石50のそれぞれに設けられている。リブ59は、周方向に延在している。
【0096】
リブ59は、例えば、磁石50とは別個に形成された補強部材である。すなわち、リブ59は、磁石50とは異なる部材である。リブ59は、例えば、磁石50に接着されている。なお、リブ59の磁石50への取り付け方法は、これに限られるものではない。リブ59は、金属製であっても、樹脂製であってもよい。また、その他の材質であってもよい。なお、リブ59は、磁石50と同一の部材であってもよい。すなわち、磁石50の成形時に、リブ59が形成されてもよい。
【0097】
このように磁石50にリブ59が形成されていることにより、磁石50をフレーム10の内周面10bに接着した状態で、リブ59が内周面10bに接触する。これにより、フレーム10と磁石50との間に空隙80が設けられている部分において、フレーム10がリブ59に付勢された状態が維持される。そのため、フレーム10の磁石50が接着されていない部分がリブ59により支持され、フレーム10と磁石50との組立体の固有振動数が高くなる。したがって、モータ1の振動を抑え、モータ1における異音の発生を抑制することができる。
【0098】
なお、上述の環状の磁石150を用いる場合においても、同様に、リブを設けてもよい。磁石150の中部外周面155Cに、フレーム10の内周面10bに接触するようにリブを設ければよい。
【0099】
図14は、本実施の形態の別の変形例に係るフレーム210を示す斜視図である。
【0100】
側面に補強部材又はリブを有するフレームを用いてもよい。あるいは側面に補強部材又はリブが設けられたフレームを用いてもよい。補強部材又はリブは、径方向に延びているものである。また、補強部材又はリブは、周方向に延在しているものである。補強部材又はリブは、フレームの剛性を高める補強要素である。
【0101】
具体的には、例えば、
図14に示されるフレーム210においては、4つの平面部11のそれぞれに、3つのリブ215が形成されている。3つのリブ215は、回転軸方向において、互いに略等間隔に配置されている。各リブ215は、フレーム210の外周面からフレーム210の外側に、径方向に延びている。すなわち、各リブ215は、フレーム210の外周面から外側に突出している。各リブ215は、それが形成されている平面部11に対して略垂直な方向に延びている。
【0102】
各リブ215は、周方向に延在している。本変形例において、各リブ215の端部215a,215bは、角部12に設けられている。すなわち、各リブ215が設けられている平面部11に隣接する角部12の一方に、そのリブ215の一方の端部215aがある。また、角部12の他方に、そのリブ215の他方の端部215bがある。
【0103】
各リブ215は、フレーム210に形成された凸部である。すなわち、各リブ215が設けられている部分は、フレーム210の内周面10bにおいて凹んでいる。リブ215は、フレーム210を構成する金属板に対してプレス加工等を行うことなどにより設けることができる。
【0104】
このように、フレーム210には、リブ215が形成されているので、フレーム210の固有振動数が、リブ215が形成されていない場合と比較して高くなる。したがって、モータ1の振動を抑え、モータ1における異音の発生を抑制することができる。
【0105】
リブ215は周方向に延在しており、端部215a,215bが角部12上に位置しているので、フレーム210の剛性を向上させることができ、フレーム210の固有振動数をより高くすることができる。リブ215は、フレーム210に形成された凸部であるので、容易に形成することができ、モータ1の製造コストを低く抑えることができる。
【0106】
なお、リブの延びる方向は回転軸2に向かう方向であってもよい。また、リブの数は上記とは異なっていてもよい。周方向に延在しているリブには、上述のように長手方向が周方向であるもののほか、短手方向が周方向であるものが含まれてもよい。
【0107】
図15は、本実施の形態の別の変形例に係るフレーム310を示す斜視図である。
【0108】
図15に示されるフレーム310においては、4つの平面部11のそれぞれに、4つのリブ315が設けられている。4つのリブ315は、回転軸方向において、互いに略等間隔に配置されている。各リブ315は、フレーム310の内周面10bからフレーム310の内側に、径方向に延びている。すなわち、各リブ315は、フレーム310の内周面10bから内側に突出している。
【0109】
各リブ315は、周方向に延在している。本変形例において、各リブ315の端部315a,315bは、角部12に設けられている。すなわち、各リブ315が設けられている平面部11に隣接する角部12の一方に、そのリブ315の一方の端部315aがある。また、角部12の他方に、そのリブ315の他方の端部315bがある。
【0110】
各リブ315は、フレーム310に形成された凹部である。すなわち、各リブ315が設けられている部分は、フレーム310の外周面において凹んでいる。リブ315は、フレーム310を構成する金属板に対してプレス加工等を行うことなどにより設けることができる。
【0111】
このようなリブ315が形成されたフレーム310でも、上述のフレーム210と同様に、固有振動数を高くすることができ、モータ1における異音の発生を抑制することができる。
【0112】
また、上記のようなリブ215,315に代えて、フレームとは異なる部材で形成された補強部材をフレームに設けてもよく、補強部材を有するフレームを用いてもよい。補強部材は、リブと同様に、フレームの平面部に、径方向に延びるように設けられていればよい。このような補強部材を設けることによっても、フレームの固有振動数を高くすることができ、モータ1における異音の発生を抑制することができる。
【0113】
図16は、本実施の形態の別の変形例に係るアクチュエータ501の構成を説明する斜視図である。
【0114】
本実施の形態又はその変形例に係るモータ1や、その他のモータを用いて構成されたアクチュエータ501において、補強部材又はリブを設けてもよい。補強部材又はリブは、モータのフレームを付勢する付勢手段である。
【0115】
例えば、
図16においては、モータ1を有するアクチュエータ501について、アクチュエータ501の筐体503に対するモータ1の取り付け構造が示されている。
図16においては、筐体503の一部とモータ1とを除くアクチュエータ501の構成部材(例えば、歯車やねじなど)の図示は省略されている。
【0116】
アクチュエータ501の筐体503には、モータ1の収容部510が設けられている。モータ1は、収容部510に収容されて、アクチュエータ501の筐体503に取り付けられる。
【0117】
収容部510には、2つの角部512と、隣接する2つの角部512の間にある平面部(面部の一例)511とが設けられている。角部512及び平面部511は、モータ1のフレーム10の形状に対応する形状を有している。
【0118】
平面部511には、例えば4つのリブ515が設けられている。4つのリブ515は、回転軸方向において、リブ515は、平面部511に対して略垂直な方向に延びている。すなわち、リブ515は、収容部510に配置されるモータ1の径方向に延びている。リブ515は、収容部510に配置されるモータ1に対して周方向に延在している。
【0119】
各リブ515は、周方向に延在している。本変形例において、各リブ515の端部515a,515bは、角部512に設けられている。すなわち、各リブ515が設けられている平面部511に隣接する角部512の一方に、そのリブ515の一方の端部515aがある。また、角部512の他方に、そのリブ515の他方の端部515bがある。
【0120】
図17は、収容部510部分の、回転軸2に垂直な断面図である。
【0121】
図17において示されるように、本変形例において、モータ1は、例えば、アクチュエータ501の筐体503を構成する2つの部材で挟まれることにより、収容部510に収容されている。収容部510において、対向する2つの平面部511(
図17において左右の平面部511)に設けられているリブ511が、モータ1に対して、径方向に延びている。リブ511は、モータ1のフレーム10の平面部11の外周面に接触し、平面部11をモータ1の内部に向けて付勢する。
【0122】
このように、モータ1のフレーム10がリブ511によって付勢されているので、フレーム10の振動がリブ511により抑えられる。したがって、モータ1及びアクチュエータ501における異音の発生を抑制することができる。
【0123】
リブ515はモータ1に対して周方向に延在しており、端部515a,515bが角部512上に位置しているので、筐体503の収容部510部分の剛性を向上させることができる。そのため、フレーム10を確実に付勢することができ、モータ1の振動を寄り確実に抑えることができる。
【0124】
なお、リブ515は、例えば、樹脂により形成されている。リブ515は、筐体503の成形時に形成された凸部である。リブ515は、容易に形成することができるので、モータ1の製造コストを低く抑えることができる。リブ515に代えて、筐体503とは別部材で形成された形成された補強部材を筐体503の収容部510に設けてもよい。補強部材は、リブ515と同様に、収容部510の平面部511に、モータ1の径方向に延びるように設けられていればよい。このような補強部材を設けることによっても、モータ1の振動を抑えることができ、モータ1及びアクチュエータ501における異音の発生を抑制することができる。また、リブ515に代えて、筐体503の複数の凹部の間に形成されるリブにより、振動の伝搬を抑止するようにしてもよい。この場合には、複数の凹部とリブは、筐体503において、回転軸方向に並んで配置されている。また、リブ515とともに、複数の凹部の間に形成されるリブにより、振動の伝搬を抑止してもよい。
【0126】
上述の実施の形態や各変形例における各部分の構成を組み合わせてモータやアクチュエータを構成してもよい。上記のようにフレームの内周面と磁石の外周面との間に周方向に延在する空隙が設けられており空隙の両側に接着剤が配置されていれば、上述と同様に異音の発生が抑えられる。
【0127】
フレーム、磁石、及び収容部のそれぞれにおいて、平面部は、平面ではなく、小さな起伏があったり、小さく湾曲していてもよい。角部に対して曲率半径が大きい曲面を、平面部と呼ぶことができる。
【0128】
上記の実施の形態では、モータは回転軸に垂直な断面形状が略正方形形状のものであるが、これに限られるものではない。例えば、六角形形状や八角形形状のモータにおいても、上記のようにフレームの内周面と磁石の外周面との間に周方向に延在する空隙が設けられており空隙の両側に接着剤が配置されていれば、上述と同様に異音の発生が抑えられる。また、円筒状のフレームを有する円柱形状のモータにおいても、上述と同様の効果を得ることができる。
【0129】
モータは、上述のようなブラシ付DCモータに限られない。種々の形式のモータにおいて、上述の実施の形態と同様の構成を用いることで、モータの異音の発生を抑えることができる。
【0130】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。