特許第6847724号(P6847724)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6847724
(24)【登録日】2021年3月5日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】目封止ハニカム構造体
(51)【国際特許分類】
   B01D 46/00 20060101AFI20210315BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20210315BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20210315BHJP
   C04B 38/00 20060101ALN20210315BHJP
【FI】
   B01D46/00 302
   B01D39/20 D
   F01N3/022 C
   !C04B38/00 303Z
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-54567(P2017-54567)
(22)【出願日】2017年3月21日
(65)【公開番号】特開2018-153783(P2018-153783A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2019年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】結城 一也
【審査官】 宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/126333(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/089901(WO,A1)
【文献】 特開2013−203572(JP,A)
【文献】 特開2010−082485(JP,A)
【文献】 特開2010−235338(JP,A)
【文献】 特開2015−187044(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0038294(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/20
B01D 46/00
F01N 3/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の角柱状のハニカムセグメントと、
複数個の前記ハニカムセグメントの側面同士を互いに接合する接合層と、
複数個の前記ハニカムセグメントが接合されたハニカムセグメント接合体の外周を囲繞するように配設された外周壁と、を備え、
前記ハニカムセグメントが、流入端面から流出端面まで延びる複数のセルを取り囲むように配設された多孔質の隔壁を有し、
それぞれの前記ハニカムセグメントにおける前記セルは、前記流入端面側又は前記流出端面側のいずれか一方の端部が、目封止部によって目封止されており、
前記接合層において、前記外周壁と接するように配置された前記ハニカムセグメント同士を接合する前記接合層を外周接合層とし、前記ハニカムセグメント接合体の前記セルの延びる方向に直交する断面の重心を含む又は当該重心に最も近い位置に存在する前記ハニカムセグメントと、当該ハニカムセグメントに隣接する他の前記ハニカムセグメントとを接合する前記接合層を中央接合層とし、前記外周接合層の接合強度A1は、前記中央接合層の接合強度A2よりも大であり、前記外周接合層の前記接合強度A1が、前記中央接合層の前記接合強度A2の1.2〜1.6倍である、目封止ハニカム構造体。
【請求項2】
前記外周接合層の前記接合強度A1が、850〜1200kPaである、請求項1に記載の目封止ハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目封止ハニカム構造体に関する。更に詳しくは、複数個のハニカムセグメントが接合層によって接合されたセグメント構造の目封止ハニカム構造体であって、接合層に沿った外周壁の表面でのクラックの発生を有効に抑制することが可能な目封止ハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の各種内燃機関から排出される排ガスの中には、塵、スス、及びカーボン微粒子等の多くの粒子状物質(パティキュレートマター:Particulate Matter)が含まれている。このため、例えば、ディーゼルエンジンを動力源とする自動車から排出される排ガスを浄化する浄化装置として、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter)が用いられている。以下、粒子状物質を「PM」ということがある。また、ディーゼルパティキュレートフィルタを「DPF」ということがある。
【0003】
上記DPFは、通常、多孔質の隔壁によって流体の流路となる複数のセルが区画されたものであり、複数のセルの開口部を交互に目封止することで、セルを形成する多孔質の隔壁がフィルタの役目を果たす構造である。
【0004】
DPFによって排ガス中のPMの除去を継続して行うと、DPFの内部にPMが堆積し、浄化効率が低下するとともに、DPFの圧力損失が大きくなる。そこで、DPFを用いた浄化装置においては、ディーゼル機関から発生する高温の排ガスにより、堆積したPMを燃焼させる「再生処理」を行う必要がある。
【0005】
上述した再生処理の際には、PMの燃焼熱によってDPFに高い熱応力が発生するため、DPFの破損を防止するための対策が必要である。特に、乗用車等は、再生処理の頻度が多くなる傾向があり、DPFの破損を防止するための対策が特に重要視されている。
【0006】
従来、こうしたDPFの破損を防止するための技術として、DPFを一つのハニカム構造体によって製造するのではなく、ハニカム構造を有するセグメントの複数個を、接合材を介して接合する技術が提案されている(特許文献1参照)。以下、「ハニカム構造を有するセグメント」を、「ハニカムセグメント」ということがある。また、「複数個のハニカムセグメントが接合層によって接合されたハニカム構造体」を、「セグメント構造のハニカム構造体」ということがある。なお、このようなセグメント構造のハニカム構造体と対比されるハニカム構造体として、ハニカム構造体を構成する隔壁の全てが連続した1つの構造物となっているハニカム構造体がある。このような「隔壁の全てが連続した1つの構造物となっているハニカム構造体」を、「一体構造のハニカム構造体」ということがある。また、「セルの開口部が目封止部によって目封止されたハニカム構造体」を、「目封止ハニカム構造体」ということがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−340224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
セグメント構造のハニカム構造体は、ハニカム構造体全体の熱応力を緩和することができるものの、ハニカム構造体の外周部の接合層に、クラック等が発生し易いという問題があった。例えば、DPF用のハニカム構造体は、再生処理時のPMの酸化・燃焼を促進するために、酸化触媒が担持されることがある。酸化触媒を担持する際には、ハニカム構造体に、酸化触媒を含むスラリーをコートした後、高温で熱処理して焼き付ける操作が行われるが、この熱処理時に、外周部の接合層にクラック等が発生することがある。また、車両走行時に発生する排ガスの急昇温や急降温においても、接合層にクラック等が発生することがある。
【0009】
昨今、大型トラック等においては、DPFのダウンサイジング等の要求により、コージェライト製のDPFからSiC製のDPFへ切り替える傾向があり、大型サイズのSiC製のDPFの採用が高まっている。大型サイズのDPFでは、触媒を担持する際に、DPFの内外温度差がよりつきやすく、クラックが入りやすいという問題があった。
【0010】
また、SiC化においても、SCRとDPFを一体化したDPFにおいては、担持する触媒量も多く、DPFの材料として高気孔率で熱伝導の低い材料を使う傾向がある。ここで、「SCR」とは、「Selective Catalitic Reduction:選択還元型NOx触媒」の略である。高気孔率の材料は、特性的に低熱伝導となるため、DPFの材料として使用した場合に、触媒を担持する際に、DPFの内外温度差がつきやすく、クラックが入りやすいという問題があった。
【0011】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。本発明によれば、セグメント構造の目封止ハニカム構造体であって、接合層に沿った外周壁の表面でのクラックの発生を有効に抑制することが可能な目封止ハニカム構造体が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、以下に示す、目封止ハニカム構造体が提供される。
【0013】
[1] 複数個の角柱状のハニカムセグメントと、
複数個の前記ハニカムセグメントの側面同士を互いに接合する接合層と、
複数個の前記ハニカムセグメントが接合されたハニカムセグメント接合体の外周を囲繞するように配設された外周壁と、を備え、
前記ハニカムセグメントが、流入端面から流出端面まで延びる複数のセルを取り囲むように配設された多孔質の隔壁を有し、
それぞれの前記ハニカムセグメントにおける前記セルは、前記流入端面側又は前記流出端面側のいずれか一方の端部が、目封止部によって目封止されており、
前記接合層において、前記外周壁と接するように配置された前記ハニカムセグメント同士を接合する前記接合層を外周接合層とし、前記ハニカムセグメント接合体の前記セルの延びる方向に直交する断面の重心を含む又は当該重心に最も近い位置に存在する前記ハニカムセグメントと、当該ハニカムセグメントに隣接する他の前記ハニカムセグメントとを接合する前記接合層を中央接合層とし、前記外周接合層の接合強度A1は、前記中央接合層の接合強度A2よりも大であり、前記外周接合層の前記接合強度A1が、前記中央接合層の前記接合強度A2の1.2〜1.6倍である、目封止ハニカム構造体。
【0015】
] 前記外周接合層の前記接合強度A1が、850〜1200kPaである、前記[1]に記載の目封止ハニカム構造体。
【発明の効果】
【0016】
本発明の目封止ハニカム構造体は、接合層に沿った外周壁の表面でのクラックの発生を有効に抑制することができる。即ち、本発明の目封止ハニカム構造体は、外周壁と接するように配置されたハニカムセグメント同士を接合する接合層の接合強度のみが大きくなるように構成されている。このように構成することによって、ハニカムセグメントの端面のクラック、及び外周壁の表面のクラック(例えば、周方向に延びるクラック)の発生状況を悪化させることなく、接合層に沿った外周壁の表面でのクラックの発生を有効に抑制することができる。外周壁の表面の周方向に延びるクラックは、「リングオフクラック:Ring−off crack」と称されることがある。このように、本発明の目封止ハニカム構造体は、他の構成要素に対するクラックの発生状況を悪化させずに、接合層及び接合層に沿った外周壁の表面でのクラックの発生を極めて有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の目封止ハニカム構造体の第一実施形態を模式的に示す、流入端面側からみた斜視図である。
図2】本発明の目封止ハニカム構造体の第一実施形態を模式的に示す、流入端面側からみた平面図である。
図3図2のA−A’を模式的に示す断面図である。
図4図2に示すハニカム構造体の接合層の構成を説明するための模式的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0019】
(1)目封止ハニカム構造体:
本発明の目封止ハニカム構造体の第一実施形態は、図1図4に示すように、複数個のハニカムセグメント4と、接合層6と、目封止部5と、を備えた、目封止ハニカム構造体100である。本実施形態の目封止ハニカム構造体100は、所謂、セグメント構造の目封止ハニカム構造体である。目封止ハニカム構造体100の外周には、複数個のハニカムセグメント4を囲繞するように配設された外周壁21を更に備えている。本実施形態の目封止ハニカム構造体100は、排ガス中に含まれる粒子状物質を除去するための捕集フィルタとして好適に利用することができる。
【0020】
ここで、図1は、本発明の目封止ハニカム構造体の第一実施形態を模式的に示す、流入端面側からみた斜視図である。図2は、本発明の目封止ハニカム構造体の第一実施形態を模式的に示す、流入端面側からみた平面図である。図3は、図2のA−A’を模式的に示す断面図である。図4は、図2に示すハニカム構造体の接合層の構成を説明するための模式的な説明図である。
【0021】
ハニカムセグメント4は、流入端面11から流出端面12まで延びる複数のセル2を取り囲むように配設された多孔質の隔壁1を有するものである。ハニカムセグメント4は、隔壁1の外周部分に、セグメント外周壁を更に有することにより、その全体形状が、例えば、角柱状を呈するように構成されている。なお、本発明において、セル2とは、隔壁1によって取り囲まれた空間のことを意味する。
【0022】
目封止ハニカム構造体100は、複数個のハニカムセグメント4を備え、この複数個のハニカムセグメント4の側面同士が接合層6を介して接合されている。複数個のハニカムセグメント4のうち、目封止ハニカム構造体100の中央部分に配置されたハニカムセグメント4は、流入端面11から流出端面12に向かう方向を軸方向とする「角柱状」を呈するものとなっている。一方で、複数個のハニカムセグメント4のうち、外周壁21と接している外周部分に配置されたハニカムセグメント4は、角柱状に形成されたハニカムセグメント4の一部が、外周壁21の形状に沿って研削された柱状のものとなっている。
【0023】
接合層6は、複数個のハニカムセグメント4の側面同士を互いに接合する接合材によって構成されたものである。複数個のハニカムセグメント4が接合層6を介して接合された接合体を、以下、「ハニカムセグメント接合体20」ということがある。
【0024】
それぞれのハニカムセグメント4におけるセル2は、流入端面11側又は流出端面12側のいずれか一方の端部が、目封止部5によって目封止されている。即ち、目封止部5は、それぞれのハニカムセグメント4の流入端面11における所定のセル2の開口部、及び流出端面12における所定のセル2以外の残余のセル2の開口部に配設されている。
【0025】
以下、ハニカムセグメント4の流入端面11におけるセル2の開口部に目封止部5が配設されたセル2(即ち、上述した所定のセル2)を、「流出セル」ということがある。ハニカムセグメント4の流出端面12におけるセル2の開口部に目封止部5が配設されたセル2(即ち、上述した残余のセル2)を、「流入セル」ということがある。ハニカムセグメント4のセル2の開口部に目封止部5が配設されたものを、「目封止ハニカムセグメント」ということがある。
【0026】
本実施形態の目封止ハニカム構造体100は、特に、ハニカムセグメント4を接合する接合層6の接合強度に関して、主要な特徴を有している。ここで、ハニカムセグメント接合体20を構成するハニカムセグメント4であって、外周壁21と接するように配置されたハニカムセグメント4を、「外周ハニカムセグメント4a」という。そして、外周ハニカムセグメント4a同士を接合する接合層6を、「外周接合層6a」という。外周ハニカムセグメント4a同士を接合している外周接合層6aの接合強度を、「接合強度A1」とする。また、ハニカムセグメント接合体20のセル2の延びる方向に直交する断面の重心を含む又は当該重心に最も近い位置に存在するハニカムセグメント4を、「中央ハニカムセグメント4b」という。そして、中央ハニカムセグメント4bと、当該中央ハニカムセグメント4bに隣接する他のハニカムセグメント4とを接合する接合層6を、「中央接合層6b」という。この中央接合層6bの接合強度を、「接合強度A2」とする。なお、中央ハニカムセグメント4bにおいて、「断面の重心を含むハニカムセグメント4」とは、この中央ハニカムセグメント4b中に、上記した重心が位置しているものをいう。一方、中央ハニカムセグメント4bにおいて、「断面の重心に最も近い位置に存在するハニカムセグメント4」とは、例えば、接合層6上に、上記した重心が位置している場合に、この重心から最も近い位置に存在しているものをいう。
【0027】
本実施形態の目封止ハニカム構造体100は、外周接合層6aの接合強度A1が、中央接合層6bの接合強度A2よりも大であることを特徴とする。このように構成することによって、目封止ハニカム構造体100は、以下のような効果を奏するものである。即ち、ハニカムセグメント4の端面のクラック、及び外周壁21の表面の周方向に延びるクラックの発生状況を悪化させることなく、接合層6(より具体的には、外周接合層6a)に沿った外周壁21の表面でのクラックの発生を有効に抑制することができる。
【0028】
外周接合層6aの接合強度A1と、中央接合層6bの接合強度A2とが同じ場合、接合強度A1及び接合強度A2が共に小さい値であると、ハニカムセグメント接合体20の外周部分における接合層6にクラックが発生し易くなる。一方で、接合強度A1及び接合強度A2を共に大きい値とすると、再生処理の際に、PMの燃焼熱によってDPFに高い熱応力が発生した際に、接合層6での応力緩和が不十分となりハニカムセグメント4の端面でのクラックの抑制が困難になる。また、外周接合層6aの接合強度A1が、中央接合層6bの接合強度A2よりも小さくなる場合においても、ハニカムセグメント接合体20の外周部分における接合層6にクラックが発生し易くなる。
【0029】
ここで、本発明において、「外周接合層6aの接合強度A1」及び「中央接合層6bの接合強度A2」とは、以下の測定方法によって測定される値のことをいう。まず、「接合強度A1」を測定方法について説明する。まず、ハニカムセグメント接合体20から、測定対象となる「外周接合層6a」を含む2つの外周ハニカムセグメント4aを切り出して、接合強度A1を測定するための測定試料を作製する。この測定試料は、2つの外周ハニカムセグメント4aが外周接合層6aによって接合されたものである。この測定試料を、せん断荷重測定器を使用し、外周ハニカムセグメント4aの端面に、荷重速度が2mm/minとなるように荷重を加えていき、外周接合層6aが破壊する際の破壊荷重F1を測定する。また、2つの外周ハニカムセグメント4aを接合する外周接合層6aの接合面の面積S1を測定し、下記式(1)に基づいて、接合強度A1を算出する。なお、せん断荷重測定器での破壊荷重F1の測定においては、2つの外周ハニカムセグメント4aのうち、一方の外周ハニカムセグメント4aの下側端面のみを支持し、もう一方の外周ハニカムセグメント4aの下側端面を支持せずに、荷重を加えることとする。
式(1):接合強度A1=破壊荷重F1/接合面の面積S1
【0030】
次に、「接合強度A2」を測定方法について説明する。まず、ハニカムセグメント接合体20から、セル2の延びる方向に直交する断面の重心を含む又は当該重心に最も近い位置に存在する中央ハニカムセグメント4bを見つける。そして、測定対象となる「中央接合層6b」を含む中央ハニカムセグメント4bと他のハニカムセグメント4とを切り出して、接合強度A2を測定するための測定試料を作製する。この測定試料は、中央ハニカムセグメント4bと他のハニカムセグメント4とが中央接合層6bによって接合されたものである。この測定試料を、せん断荷重測定器を使用し、接合強度A1の測定と同様の方法で、中央接合層6bが破壊する際の破壊荷重F2を測定する。また、中央接合層6bの接合面の面積S2を測定し、下記式(2)に基づいて、接合強度A2を算出する。
式(2):接合強度A2=破壊荷重F2/接合面の面積S2
【0031】
接合強度A1が、接合強度A2の1.2〜1.6倍であ、1.2〜1.5倍であることが好ましい。このように構成することによって、外周接合層6aに沿った外周壁21の表面でのクラックの発生をより有効に抑制することができる。
【0032】
外周接合層6aの接合強度A1が、850〜1200kPaであることが好ましく、900〜1150kPaであることが更に好ましく、900〜1100kPaであることが特に好ましい。接合強度A1が850kPa未満であると、接合層6におけるクラックの発生を有効に抑制するという観点からあまり好ましくない。一方、接合強度A1が1200kPaを超えると、ハニカムセグメント4の端面でのクラックを抑制するという観点からあまり好ましくない。なお、接合強度A1が上記数値範囲の場合においても、接合強度A1が、接合強度A2よりも大である。
【0033】
中央接合層6bの接合強度A2が、400〜900kPaであることが好ましく、600〜850kPaであることが更に好ましく、700〜800kPaであることが特に好ましい。接合強度A2が400kPa未満であると、中央接合層6bによる接合を維持するという観点からあまり好ましくない。一方、接合強度A2が900kPaを超えると、ハニカムセグメント4の端面でのクラックの抑制、及びリングオフクラックの抑制という観点からあまり好ましくない。なお、接合強度A2が上記数値範囲の場合においても、接合強度A1が、接合強度A2よりも大である。
【0034】
外周接合層6aの接合強度A1が、中央接合層6bの接合強度A2の1.2〜1.6倍であ、1.2〜1.5倍であることが好ましく、1.3〜1.4倍であることが特に好ましい。接合強度A1が、接合強度A2の1.2倍未満であると、外周接合層6aに沿った外周壁21の表面でのクラックの抑制という観点からあまり好ましくない。一方、接合強度A1が、接合強度A2の1.6倍を超えると、ハニカムセグメント4の端面でのクラックの抑制という観点からあまり好ましくない。
【0035】
本実施形態の目封止ハニカム構造体100においては、外周接合層6aと、中央接合層6bとは、その材質が異なっていてもよい。また、外周接合層6aと、中央接合層6bとは、その気孔率等が異なることにより、互いの接合強度が異なるように構成されたものであってもよい。このように構成することによって、接合強度A1と接合強度A2との差が明確となり、これまでに説明した各効果を有効に発現させることができる。
【0036】
接合層6の材料については、特に制限はなく、従来公知のハニカム構造体における接合層の材料を用いることができる。
【0037】
本実施形態の目封止ハニカム構造体100においては、ハニカムセグメント接合体20の最外周に配置されている外周ハニカムセグメント4a同士を接合する外周接合層6aの接合強度A1が、それ以外の接合層6の接合強度よりも大であってもよい。即ち、外周接合層6aの接合強度A1のみが、それ以外の接合層6の接合強度よりも大であってもよい。ただし、接合強度A1が、接合強度A2よりも大であれば、外周接合層6a及び中央接合層6b以外の接合強度については、特に制限はない。例えば、外周ハニカムセグメント4aよりも1個又は2個以上内側のハニカムセグメント4を接合する接合層(但し、中央接合層6bを除く)の接合強度が、外周接合層6aの接合強度A1と同じであってもよい。また、外周ハニカムセグメント4aよりも1個又は2個以上内側のハニカムセグメント4を接合する接合層の接合強度が、中央接合層6bの接合強度A2と同じであってもよい。例えば、「最外周に配置されている外周ハニカムセグメント4a同士を接合する外周接合層6a」の接合強度のみが、特に高い接合強度となっている実施形態等の様々形態をとることができる。
【0038】
これまでに説明したように、本実施形態の目封止ハニカム構造体100は、セル2の延びる方向に直交する断面において、外周接合層6aを含む接合強度が相対的に大きい外周部15と、中央接合層6bを含む接合強度が相対的に小さい中央部16と、が存在する。以下、外周部15における接合強度が相対的に大きい接合層6を、「高接合強度接合層6x」と称することがある。セル2の延びる方向に直交する断面において、接合層6が占める全面積に対する、高接合強度接合層6xが占める面積の比率が、5〜55%であることが好ましく、10〜50%であることが更に好ましく、10〜40%であることが特に好ましい。高接合強度接合層6xが占める面積の比率が、上記数値範囲を超えると、高接合強度接合層6xでのクラックの発生抑制と、ハニカムセグメント4の端面や外周壁21の表面でのクラックの発生抑制とのバランスがとり難くなることがある。
【0039】
「接合層6のセル2の延びる方向に直交する方向における幅」については特に制限はない。ここで、「接合層6のセル2の延びる方向に直交する方向における幅」とは、接合層によって接合されるハニカムセグメントの側面相互間の距離のことである。以下、「接合層6のセル2の延びる方向に直交する方向における幅」を、単に、「接合層6の幅」ということがある。接合層6の幅は、例えば、0.3〜3.0mmであることが好ましく、0.5〜2.0mmであることが特に好ましい。接合層6の幅が0.3mm未満であると、目封止ハニカム構造体100の接合強度が低下し易くなる点で好ましくない。接合層6の幅が3.0mmを超えると、目封止ハニカム構造体100の圧力損失が増大することがある点で好ましくない。
【0040】
ハニカムセグメント4に形成されているセル2の形状については特に制限はない。例えば、セル2の延びる方向に直交する断面における、セル2の形状としては、多角形、円形、楕円形等を挙げることができる。多角形としては、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等を挙げることができる。なお、セル2の形状は、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形であることが好ましい。また、セル2の形状については、全てのセル2の形状が同一形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。例えば、図示は省略するが、四角形のセルと、八角形のセルと混在したものであってもよい。また、セル2の大きさについては、全てのセル2の大きさが同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、図示は省略するが、複数のセルのうち、一部のセルの大きさを大きくし、他のセルの大きさを相対的に小さくしてもよい。
【0041】
隔壁1によって区画されるセル2のセル密度が、15〜90個/cmであることが好ましく、30〜60個/cmであることが更に好ましい。このように構成することによって、本実施形態の目封止ハニカム構造体を、自動車のエンジンから排出される排ガスを浄化するためのフィルタとして好適に利用することができる。
【0042】
隔壁1の気孔率が、30〜80%であることが好ましく、35〜75%であることが更に好ましく、40〜70%であることが特に好ましい。隔壁1の気孔率は、水銀圧入法によって測定された値である。隔壁1の気孔率の測定は、例えば、Micromeritics社製のオートポア9500(商品名)を用いて行うことができる。気孔率の測定は、各ハニカムセグメント4の隔壁1の一部を切り出して試験片とし、その試験片を用いて行うことができる。隔壁1の気孔率が、30%未満であると、目封止ハニカム構造体100自体の圧力損失が増大することや、触媒の担持後における圧力損失のばらつきが大きくなることがある。隔壁1の気孔率が、80%を超えると、目封止ハニカム構造体100のフィルタとしての強度、捕集性能が低下してしまうことがある。
【0043】
ハニカムセグメント4の形状については、特に制限はない。例えば、ハニカムセグメント4の形状として、当該ハニカムセグメント4の軸方向に直交する断面形状が四角形や六角形等の多角形の角柱状を挙げることができる。なお、目封止ハニカム構造体100の最外周に配設されるハニカムセグメント4は、目封止ハニカム構造体100の全体形状に応じて、角柱状の一部が研削等により加工されたものであってもよい。
【0044】
目封止ハニカム構造体100の全体形状については、特に制限はない。例えば、図1に示す目封止ハニカム構造体100の全体形状は、流入端面11及び流出端面12が円形の円柱状である。その他、図示は省略するが、目封止ハニカム構造体の全体形状としては、流入端面及び流出端面が、楕円形やレーストラック(Racetrack)形や長円形等の略円形の柱状であってもよい。また、目封止ハニカム構造体の全体形状としては、流入端面及び流出端面が、四角形や六角形等の多角形の角柱状であってもよい。
【0045】
ハニカムセグメント4を構成する材料に特に制限はないが、強度、耐熱性、耐久性等の観点から、下記材料群から選択される少なくとも1種の材質が好ましい。材料群とは、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、窒化珪素、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、チタン酸アルミニウム、及びFe−Cr−Al系金属の材料群である。これらの中でも、炭化珪素、又は珪素−炭化珪素系複合材料が更に好ましい。珪素−炭化珪素系複合材料は、炭化珪素(SiC)を骨材とし、かつ珪素(Si)を結合材とする複合材料である。
【0046】
目封止部5の材料については特に制限はない。目封止部5の材料は、例えば、ハニカムセグメント4を構成する材料として例示した材料と同様な材料が好ましい。
【0047】
目封止ハニカム構造体100の大きさ、例えば、流入端面11から流出端面12までの長さや、目封止ハニカム構造体100のセル2の延びる方向に直交する断面の大きさについては、特に制限はない。本実施形態の目封止ハニカム構造体100を、排ガス浄化用のフィルタとして用いた際に、最適な浄化性能を得るように、各大きさを適宜選択すればよい。例えば、目封止ハニカム構造体100の流入端面11から流出端面12までの長さは、150〜305mmであることが好ましく、150〜200mmであることが特に好ましい。また、目封止ハニカム構造体100のセル2の延びる方向に直交する断面の面積は、144〜330mmであることが好ましく、144〜178mmであることが特に好ましい。
【0048】
本実施形態の目封止ハニカム構造体100においては、所定のセル2の流入端面11側の開口部、及び残余のセルの流出端面12側の開口部に、目封止部5が配設されている。ここで、流出端面12側の開口部に目封止部5が配設され、流入端面11側が開口したセル2を、流入セルとする。また、流入端面11側の開口部に目封止部5が配設され、流出端面12側が開口したセル2を、流出セルとする。流入セルと流出セルとは、隔壁1を隔てて交互に配設されていることが好ましい。そして、それによって、目封止ハニカム構造体100の両端面に、目封止部5と「セル2の開口部」とにより、市松模様が形成されていることが好ましい。
【0049】
本実施形態の目封止ハニカム構造体100においては、複数のセル2を形成する隔壁1に触媒が担持されていてもよい。隔壁1に触媒を担持するとは、隔壁1の表面及び隔壁に形成された細孔の内壁に、触媒がコーティングされることをいう。このように構成することによって、排ガス中のCOやNOxやHCなどを触媒反応によって無害な物質にすることができる。また、捕集した煤等のPMの酸化を促進させることができる。
【0050】
(2)目封止ハニカム構造体の製造方法:
実施形態の目封止ハニカム構造体の製造方法については、特に制限はなく、例えば、以下のような方法により製造することができる。まず、ハニカムセグメントを作製するための可塑性の坏土を調製する。ハニカムセグメントを作製するための坏土は、原料粉末として、前述のハニカムセグメントの好適な材料の中から選ばれた材料に、適宜、バインダ等の添加剤、及び水を添加することによって調製することができる。
【0051】
次に、このようにして得られた坏土を押出成形することにより、複数のセルを取り囲むように配設された隔壁、及び最外周に配設されたセグメント外周壁を有する、角柱状のハニカム成形体を作製する。ハニカム成形体は、複数個作製する。
【0052】
得られたハニカム成形体を、例えば、マイクロ波及び熱風で乾燥し、ハニカム成形体の作製に用いた材料と同様の材料で、セルの開口部を目封止することで目封止部を作製する。目封止部を作製した後に、ハニカム成形体を更に乾燥してもよい。
【0053】
次に、目封止部を作製したハニカム成形体を焼成することにより、目封止ハニカムセグメントを得る。焼成温度及び焼成雰囲気は原料により異なり、当業者であれば、選択された材料に最適な焼成温度及び焼成雰囲気を選択することができる。
【0054】
次に、複数の目封止ハニカムセグメントを、接合材を用いて互いに接合し、乾燥硬化させた後、所望の形状となるよう外周を加工することによって、セグメント構造の目封止ハニカム構造体を得ることができる。接合材としては、セラミックス材料に、水等の溶媒を加えてペースト状又はスラリー状にしたものを用いることができる。この際、接合材としては、以下のように、2種類の接合材を作製することが好ましい、例えば、接合材に添加する水等の溶媒の量を調節し、溶媒含有比の異なる接合材を2種類作製する。また、接合材に対して、異なる量の造孔材を添加し、造孔材含有比の異なる接合材を2種類作製する。溶媒の量を少なくすると、接合材によって形成される接合層の接合強度が高くなる。また、造孔材の量を少なくすると、接合材によって形成される接合層の接合強度が高くなる。
【0055】
上記のように作製した2種類の接合層を、最外周に配置される目封止ハニカムセグメント同士を接合する部分と、それ以外の部分とで、それぞれ使い分けることで、得られる目封止ハニカム構造体において、外周部と中央部とで、接合層の接合強度を変えることができる。
【0056】
また、目封止ハニカムセグメントの接合体の外周を加工した後の加工面は、セルが露出した状態となっているため、接合体の加工面に外周コート材を塗工して、外周壁を形成してもよい。外周コート材の材料としては、例えば、無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、セラミック粒子等の無機原料に、有機バインダ、発泡樹脂、分散剤等の添加剤と水とを加えて混練し、スラリー状としたものを挙げることができる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0058】
(実施例1)
セラミックス原料として、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを80:20の質量割合で混合した混合原料を準備した。この混合原料に、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔材として吸水性樹脂を添加するとともに、水を添加して成形原料を作製した。得られた成形原料を、ニーダー(kneader)を用いて混練し、坏土を得た。
【0059】
次に、得られた坏土を、真空押出成形機を用いて成形し、四角柱状のハニカム成形体を25個作製した。この四角柱状のハニカム成形体の1個ずつが、ハニカムセグメントとなる。
【0060】
次に、得られたハニカム成形体を高周波誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥した。
【0061】
次に、乾燥後のハニカム成形体に、目封止部を形成した。まず、乾燥後のハニカム成形体の流入端面にマスクを施した。次に、マスクの施された端部(流入端面側の端部)を目封止スラリーに浸漬し、マスクが施されていないセル(流出セル)の開口部に目封止スラリーを充填した。このようにして、乾燥後のハニカム成形体の流入端面側に、目封止部を形成した。そして、乾燥後のハニカム成形体の流出端面についても同様にして、流入セルにも目封止部を形成した。
【0062】
そして、目封止部の形成されたハニカム成形体を脱脂し、焼成し、目封止ハニカムセグメントを得た。脱脂の条件は、550℃で3時間とし、焼成の条件は、アルゴン雰囲気下で、1450℃、2時間とした。
【0063】
以上のようにして、実施例1の目封止ハニカム構造体の製造に使用する目封止ハニカムセグメントを作製した。作製した目封止ハニカムセグメントは、軸方向に直交する断面が正方形で、その正方形の一辺の長さ(セグメントサイズ)が36.5mmであった。結果を、表1の「ハニカムセグメント」の「一辺の長さ(mm)」の欄に示す。また、目封止ハニカムセグメントは、その軸方向の長さが178mmであった。
【0064】
目封止ハニカムセグメントは、隔壁の厚さが0.3mmで、セル密度が46個/cmであった。また、隔壁の気孔率は、41%であった。隔壁の気孔率は、Micromeritics社製のオートポア9500(商品名)によって測定した。
【0065】
次に、目封止ハニカムセグメントを接合するための接合材を、2種類作製した。即ち、目封止ハニカム構造体における接合層を形成するための材料が、上記接合材である。以下、2種類の接合材を、「接合材A」及び「接合材B」とする。接合材Aは、その接合強度が900kPaとなるように調製した。接合材Bは、その接合強度が700kPaとなるように調製した。
【0066】
次に、得られた目封止ハニカムセグメントを、互いの側面同士が対向するように隣接して配置された状態で、接合材によって接合し、700℃にて熱処理を行って、ハニカムセグメント接合体を作製した。ハニカムセグメント接合体は、その端面において、縦方向に5個、横方向に5個の合計25個のハニカムセグメントが配列するように接合して作製した。表1の「ハニカムセグメント」における「個数(個)」及び「配置(個×個)」の欄には、各実施例に用いたハニカムセグメントの個数、及びその配置を示す。例えば、「配置(個数×個数)」の欄に、「5×5」と記載されている場合には、縦方向に5個、横方向に5個の合計25個のハニカムセグメントを用いたことを意味する。
【0067】
実施例1においては、ハニカムセグメント接合体の最外周に位置する12個の目封止ハニカムセグメント同士を接合する際に、上記した「接合材A」を使用した。また、それ以外の接合部分については、上記した「接合材B」を使用した。接合材によって形成された接合層の厚さは、1.0mmであった。接合材Aを使用した部分を、ハニカムセグメント接合体の外周部とする。また、接合材Bを使用した部分を、ハニカムセグメント接合体の中央部とする。
【0068】
次に、ハニカムセグメント接合体の外周を円柱状に研削加工し、その外周面にコート材を塗布して、実施例1の目封止ハニカム構造体を得た。実施例1の目封止ハニカム構造体は、端面の直径が191mmであった。
【0069】
実施例1の目封止ハニカム構造体について、外周部における接合層の接合強度と、中央部における接合層の接合強度とを、以下の方法で測定した。結果を、表2の「外周部における接合強度(kPa)」、及び「中央部における接合強度(kPa)」の欄に示す。また、表2の「接合強度比率(外周部/中央部)」の欄に、中央部における接合強度に対する、外周部における接合強度の比率を示す。また、表2の「接合面積比率(高接合強度面積/総接合面積)」の欄に、接合層の総接合面積に対する、高接合強度接合層の接合面積の比率を示す。なお、高接合強度接合層とは、外周部における接合強度が相対的に大きい接合層のことを意味する。また、高接合強度面積とは、高接合強度接合層によって接合されている接合面の面積のことを意味する。
【0070】
(接合強度の測定方法)
まず、外周接合層を含む2つの外周ハニカムセグメントを切り出して、外周部における接合強度(即ち、接合強度A1)を測定するための測定試料を作製した。作製した測定試料を、せん断荷重測定器を使用し、外周ハニカムセグメントの端面に、荷重速度が2mm/minとなるように荷重を加えていき、外周接合層が破壊する際の破壊荷重F1を測定した。また、2つの外周ハニカムセグメントを接合する外周接合層の接合面の面積S1を測定し、上記式(1)に基づいて、接合強度A1としての「外周部における接合強度(kPa)」を求めた。また、中央接合層を含む中央ハニカムセグメントと他のハニカムセグメントとを切り出して、中央部における接合強度(即ち、接合強度A2)を測定するための測定試料を作製した。作製した測定試料を、せん断荷重測定器を使用し、上記と同様の方法で、中央接合層が破壊する際の破壊荷重F2を測定した。また、中央接合層の接合面の面積S2を測定し、上記式(2)に基づいて、接合強度A2としての「中央部における接合強度(kPa)」を求めた。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
また、実施例1の目封止ハニカム構造体について、以下の方法で、「急速冷却試験(電気炉スポーリング試験:E−sp評価)」、及び「クラック限界評価」を行った。結果を表3に示す。
【0074】
[急速冷却試験(電気炉スポーリング試験:E−sp評価)]
目封止ハニカム構造体を、炉内の温度が200℃の電気炉に入れて2時間加熱し、目封止ハニカム構造体の均一な温度にした。その後、加熱した目封止ハニカム構造体を電気炉から取り出し、室温まで急速に冷却する。急速冷却後の目封止ハニカム構造体について、外周壁におけるクラックの発生を確認する。外周壁にクラックが発生していない場合には、炉内の温度を25℃ずつ上昇させて、外周壁にクラックが発生するまで、上記した加熱と急速冷却とを繰り返し行う。外周壁にクラックが発生した炉内温度よりも1回前の操作の炉内温度を、急速冷却試験における測定値とする。
【0075】
[クラック限界評価]
目封止ハニカム構造体を、ディーゼルエンジンの排気系に搭載し、この目封止ハニカム構造体にススを堆積させた。次いで、排ガス温度を2℃/秒で650℃まで上昇させた。その後、アイドリング運転に条件を変更して、ガス流量を急激に減らした。このような条件で目封止ハニカム構造体内に堆積したススを燃焼させ、目封止ハニカム構造体の再生を行なった。目封止ハニカム構造体内のススの堆積割合を次第に増加させて、上記した試験(目封止ハニカム構造体の再生)を繰り返し行った。なお、ススの堆積割合とは、目封止ハニカム構造体の単位容積あたり(1Lあたり)の、目封止ハニカム構造体内に堆積したススの質量(g)の割合である。そして、目封止ハニカム構造体にクラックが発生しない最大のススの堆積割合を調査した。このときのススの堆積割合を「クラック限界」とする。クラック限界が、6g/L未満である場合を「B」とした。6g/L以上である場合を「A」とした。
【0076】
【表3】
【0077】
(実施例2,3)
表2に示すような接合強度となるように調製した接合材を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で、目封止ハニカム構造体を製造した。
【0078】
(実施例4〜6)
ハニカムセグメント、及びハニカム接合体の構成を表1に示すように変更し、また、表2に示すような接合強度となるように調製した接合材を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で、目封止ハニカム構造体を製造した。
【0079】
(比較例1〜3)
ハニカムセグメント接合体を作製する際に接合材として、1種類の接合材を用いて、目封止ハニカム構造体を製造したこと以外は、実施例1と同様の方法で、目封止ハニカム構造体を製造した。
【0080】
実施例2〜6及び比較例1〜3の目封止ハニカム構造体についても、実施例1と同様の方法で、「急速冷却試験(電気炉スポーリング試験:E−sp評価)」を行った。結果を表3に示す。
【0081】
(結果)
実施例1〜3の目封止ハニカム構造体は、比較例1の目封止ハニカム構造体に比して、急速冷却試験において良好な結果を得ることができた。また、比較例2の目封止ハニカム構造体は、接合層の接合強度が外周部と中央部の双方において高く、急速冷却試験において良好な結果を得ることができたが、クラック限界評価において、クラック限界が6g/L未満となってしまった。また、実施例4〜6の目封止ハニカム構造体は、比較例3の目封止ハニカム構造体に比して、急速冷却試験において良好な結果を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の目封止ハニカム構造体は、直噴ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等から排出される排ガスに含まれる微粒子等を除去するための捕集フィルタとして利用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1:隔壁、2:セル、4:ハニカムセグメント、4a:外周ハニカムセグメント、4b:中央ハニカムセグメント、5:目封止部、6:接合層、6a:外周接合層、6b:中央接合層、6x:高接合強度接合層、11:流入端面、12:流出端面、15:外周部、16:中央部、20:ハニカムセグメント接合体、21:外周壁、100:目封止ハニカム構造体。
図1
図2
図3
図4