特許第6847726号(P6847726)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6847726
(24)【登録日】2021年3月5日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20210315BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   H01L21/306 R
   H01L21/304 643A
   H01L21/304 648F
【請求項の数】17
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2017-60046(P2017-60046)
(22)【出願日】2017年3月24日
(65)【公開番号】特開2018-163976(P2018-163976A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2019年12月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 光治
(72)【発明者】
【氏名】長田 直之
【審査官】 佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−167568(JP,A)
【文献】 特開2017−011033(JP,A)
【文献】 特開2003−297739(JP,A)
【文献】 特開2011−077145(JP,A)
【文献】 特開2010−130024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板保持ユニットと、
内壁面および外壁面を有する処理液流通部材であって、前記内壁面によって、前記基板保持ユニットに保持されている基板に処理液を吐出する吐出口に連通する処理液流通路の少なくとも一部を区画する処理液流通部材と、
常温よりも高い所定の第1の高温の処理液を前記処理液流通路に供給する処理液供給ユニットと、
前記処理液流通部材の前記外壁面に対して外側から加熱または冷却して、前記処理液流通部材を温度変化させるための温度変化ユニットと、
前記処理液供給ユニットを制御して、前記処理液流通路に前記第1の高温の処理液を供給して、前記吐出口から前記第1の高温の処理液を吐出することにより、前記基板保持ユニットに保持されている基板に処理を施す基板処理工程と、前記処理液流通路に前記処理液供給ユニットから処理液が供給されていない状態において、前記温度変化ユニットを制御して、前記処理液流通部材の前記内壁面を、常温よりも高くかつ前記第1の高温よりも低い所定の熱平衡温度に維持する平衡温度維持工程を実行する制御装置とを含む、基板処理装置。
【請求項2】
基板を保持する基板保持ユニットと、
内壁面および外壁面を有する処理液流通部材であって、前記内壁面によって、前記基板保持ユニットに保持されている基板に処理液を吐出する吐出口に連通する処理液流通路の少なくとも一部を区画する処理液流通部材と、
常温よりも高い高温の処理液を前記処理液流通路に供給する処理液供給ユニットと、
前記処理液流通部材の前記外壁面に対して外側から加熱または冷却して、前記処理液流通部材を温度変化させるための温度変化ユニットと、
前記処理液供給ユニットを制御して、前記処理液流通路に前記高温の処理液を供給して、前記吐出口から前記高温の処理液を吐出することにより、前記基板保持ユニットに保持されている基板に処理を施す基板処理工程と、前記処理液流通路に前記処理液供給ユニットから処理液が供給されていない状態において、前記温度変化ユニットを制御して、前記処理液流通部材の前記内壁面を熱平衡温度に維持する平衡温度維持工程とを実行する制御装置とを含み、
前記制御装置は、前記平衡温度維持工程において、前記内壁面を前記熱平衡温度に保ち、かつ前記外壁面を常温よりも高くかつ前記熱平衡温度よりも低い所定温度に保つ工程を実行する、基板処理装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記平衡温度維持工程の開始時において、
前記外壁面の温度を前記熱平衡温度よりも高温に昇温させるべく、当該外壁面を加熱する第1の加熱工程と、
前記第1の加熱工程に次いで、前記外壁面の温度を処理液の温度よりも低温に降下させるべく当該外壁面を冷却する冷却工程と、
前記冷却工程に次いで、前記内壁面が前記熱平衡温度に保たれるようにかつ前記外壁面の温度が前記所定温度に保たれるように、当該外壁面を加熱する第2の加熱工程とを実行する、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記平衡温度維持工程の次に実行される前記基板処理工程において用いられる処理液の温度に応じて当該平衡温度維持工程において設定される前記熱平衡温度を調整し、
前記制御装置は、設定されている前記熱平衡温度に基づいて前記平衡温度維持工程を実行する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記処理液流通部材は、前記吐出口を有するノズルを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記ノズルは、前記基板保持ユニットに保持されている基板に処理液を吐出するための処理位置と、前記基板保持ユニットから退避した退避位置との間で移動可能に設けられており、
前記温度変化ユニットは、前記ノズルが前記退避位置に配置されている状態で、当該ノズルを温度変化させる、請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記退避位置に配置された前記ノズルを包囲する包囲部材を含み、
前記温度変化ユニットは前記包囲部材の側壁に配置されている、請求項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記ノズルは複数設けられており、
前記包囲部材は、それぞれ前記退避位置に配置されている複数の前記ノズルを一括して
包囲可能に設けられており、
前記温度変化ユニットは複数設けられており、前記温度変化ユニットは前記ノズルに対応して設けられており、
各温度変化ユニットは、対応する前記ノズルの温度を個別に温度変化させる、請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記ノズルは、前記吐出口に連通する連通路と、前記連通路を区画するボディとを含み、前記処理液流通部材は前記ボディを含み、
前記処理液流通部材の外壁面は、前記ボディの外壁面を含む、請求項〜8のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記連通路は複数の分岐路を含み、各分岐路は前記吐出口を有しており、
前記ボディは、前記複数の分岐路を収容する吐出口ボディを含む、請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記ボディは、樹脂材料を用いて形成されている、請求項9または10に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記樹脂材料は、PCTFE、PTFEおよびPFAの少なくとも一つを含む、請求項11に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記温度変化ユニットは、ペルチェ素子を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項14】
処理液流通部材の処理液流通路に常温よりも高い所定の第1の高温の処理液を供給し、前記処理液流通路に連通する吐出口から前記第1の高温の処理液を吐出することにより、基板保持ユニットに保持されている基板に処理を施す基板処理工程と、
前記基板処理工程が行われてない状態において、前記処理液流通部材の外壁面に対して外側から加熱または冷却して、前記処理液流通部材を温度変化させることにより、前記処理液流通部材の内壁面を、常温よりも高くかつ前記第1の高温よりも低い所定の熱平衡温度に維持する平衡温度維持工程とを含む、基板処理方法。
【請求項15】
処理液流通部材の処理液流通路に常温よりも高い高温の処理液を供給し、前記処理液流通路に連通する吐出口から前記高温の処理液を吐出することにより、基板保持ユニットに保持されている基板に処理を施す基板処理工程と、
前記基板処理工程が行われていない状態において、前記処理液流通部材の外壁面に対して外側から加熱または冷却して、前記処理液流通部材を温度変化させることにより、前記処理液流通部材の内壁面を熱平衡温度に維持する平衡温度維持工程とを含み、
前記平衡温度維持工程は、前記内壁面を前記熱平衡温度に保ち、かつ前記外壁面を、常温よりも高くかつ前記熱平衡温度よりも低い所定温度に保つ工程を含む、基板処理方法。
【請求項16】
前記平衡温度維持工程は、
前記外壁面の温度を前記熱平衡温度よりも高温に昇温させるべく、当該外壁面を加熱する第1の加熱工程と、
前記第1の加熱工程に次いで、前記外壁面の温度を処理液の温度よりも低温に降下させるべく当該外壁面を冷却する冷却工程と、
前記冷却工程に次いで、前記処理液流通部材の前記内壁面が前記熱平衡温度に保たれるようにかつ前記外壁面の温度が前記所定温度に保たれるように、当該外壁面を加熱する第2の加熱工程とを含む、請求項15に記載の基板処理方法。
【請求項17】
前記平衡温度維持工程は、当該平衡温度維持工程の後に実行される前記基板処理工程において用いられる処理液の温度に応じて当該平衡温度維持工程における前記熱平衡温度を調整する、請求項14〜16のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板処理装置および基板処理方法に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置の製造工程では、半導体ウエハや液晶表示装置用ガラス基板などの基板に対して処理液を用いた処理が行われる。たとえば、基板を一枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置は、基板を水平に保持して回転させるスピンチャックと、このスピンチャックに保持された基板の表面に処理液を供給するノズルとを備えている。ノズルに対し、所定の高温に温度調整された処理液が供給されるものがある(たとえば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−172079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような基板処理装置では、ノズルからの吐出停止状態では、ノズルの管壁や処理液配管の管壁が温度低下する。したがって、高温の処理液を用いた前回の処理から長期間が経過した後に、高温の処理液を用いた処理を再開する際には、処理液配管やノズルに送り出された高温の処理液が、温度の低いノズルの管壁や処理液配管の管壁と熱交換して冷却される恐れがある。そのため、高温の処理液を用いた処理の再開時に、温度低下した処理液が基板に供給されるおそれがある。高温の処理液が所望の温度よりも低いと処理レートが低下するなどの問題が発生する。そして、その後に連続して処理が行われる場合には、処理を重ねるごとに管壁が温度上昇し、ノズルからは所期の高温を有する処理液が吐出されるようになる。したがって、このような熱影響に起因して基板間の処理がばらつくおそれがある。
【0005】
すなわち、複数枚の基板に対し高温処理を繰り返し連続的に施す場合に、このような熱影響に起因する基板間の処理のばらつきを抑制または防止することが求められている。
そこで、本発明の目的は、基板間の処理のばらつきを抑制または防止できる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の一実施形態は、基板を保持する基板保持ユニットと、内壁面および外壁面を有する処理液流通部材であって、前記内壁面によって、前記基板保持ユニットに保持されている基板に処理液を吐出する吐出口に連通する処理液流通路の少なくとも一部を区画する処理液流通部材と、常温よりも高い高温(第1の高温)の処理液を前記処理液流通路に供給する処理液供給ユニットと、前記処理液流通部材の前記外壁面に対して外側から加熱または冷却して、前記処理液流通部材を温度変化させるための温度変化ユニットと、前記処理液供給ユニットを制御して、前記処理液流通路に前記高温の処理液を供給して、前記吐出口から前記高温の処理液を吐出することにより、前記基板保持ユニットに保持されている基板に処理を施す基板処理工程と、前記処理液流通路に前記処理液供給ユニットから処理液が供給されていない状態において、前記温度変化ユニットを制御して、前記処理液流通部材の前記内壁面を、常温よりも高くかつ前記第1の高温よりも低い所定の熱平衡温度に維持する平衡温度維持工程を実行する制御装置とを含む、基板処理装置を提供する。
【0007】
この明細書において、熱平衡温度とは、基板処理工程を繰り返し連続的に実行させた場合に収束する、前記処理液流通部材の内壁面の温度のことをいう。
この構成によれば、処理液流通部材のうち外壁面を温度変化ユニットによって加熱または冷却して、処理液流通部材を温度変化させることにより、処理液流通路に高温の処理液が供給されていない状態において、処理液流通部材の内壁面が熱平衡温度に維持される。
【0008】
熱平衡温度は、基板処理工程を繰り返し連続的に実行させた場合に収束する内壁面の温度である。処理液流通路に高温の処理液が供給されていない状態において処理液流通部材の内壁面を熱平衡温度に維持することにより、その次に実行される基板処理工程において、処理液流通部材の内壁面が熱平衡温度に維持される。それだけでなく、それ以降に繰り返し実行される基板処理工程においても、処理液流通部材の内壁面が熱平衡温度に維持される。すなわち、内壁面に温度変化がない。
【0009】
熱平衡温度は、常温よりも高くかつ前記高温(第1の高温)よりも低い所定の温度であってもよい。
処理液流通路に供給された高温の処理液は、熱平衡温度に維持された処理液流通部材の内壁面と接触した後に、吐出口から吐出される。内壁面に温度変化がないので、吐出口からの処理液の温度を、複数の基板処理工程間に亘って均一に保つことができる。これにより、基板間の処理のばらつきを抑制または防止できる。
の発明の一実施形態では、前記制御装置は、前記平衡温度維持工程において、前記内壁面を前記熱平衡温度に保ち、かつ前記外壁面を常温よりも高くかつ前記熱平衡温度よりも低い所定温度に保つ工程を実行する。
【0010】
この構成によれば、外壁面が、常温よりも高くかつ熱平衡温度よりも低い所定温度に保たれる。これにより、外壁面において熱の出入りを抑制または防止することができ、換言すると、処理液流通部材に対する熱の出入りを抑制または防止することができる。ゆえに、内壁面を熱平衡状態に維持し続けることが可能である。
の発明の一実施形態では、前記制御装置は、前記平衡温度維持工程の開始時において、前記外壁面の温度を前記熱平衡温度よりも高温に昇温させるべく、当該外壁面を加熱する第1の加熱工程と、前記第1の加熱工程に次いで、前記外壁面の温度を処理液の温度よりも低温に降下させるべく当該外壁面を冷却する冷却工程と、前記冷却工程に次いで、前記内壁面が前記熱平衡温度に保たれるようにかつ前記外壁面の温度が前記所定温度に保たれるように、当該外壁面を加熱する第2の加熱工程とを実行する。
【0011】
この構成によれば、平衡温度維持工程の開始時において、まず、温度変化ユニットによって外壁面を加熱することにより、外壁面の温度を熱平衡温度よりも高温に昇温させる。次いで、温度変化ユニットによって外壁面を冷却することにより、外壁面の温度を降下させる。次いで、温度変化ユニットによって外壁面を加熱することにより、処理液流通部材の内壁面が熱平衡温度に保たれ、かつ外壁面の温度が所定温度に保たれる。このように、処理液流通部材の内壁面が熱平衡温度に保たれかつ外壁面が常温よりも高くかつ熱平衡温度よりも低い所定温度に保たれる状態を、比較的簡単な手法で実現することができる。
【0012】
の発明の一実施形態では、前記制御装置は、前記平衡温度維持工程の次に実行される前記基板処理工程において用いられる処理液の温度に応じて当該平衡温度維持工程において設定される前記熱平衡温度を調整する。そして、前記制御装置は、設定されている前記熱平衡温度に基づいて前記平衡温度維持工程を実行する。
この構成によれば、2つの基板処理工程において互いに異なる温度の高温の処理液が用いられる場合には、これら2つの基板処理工程の間に実行される平衡温度維持工程において、処理液流通部材の内壁面が、その次に実行される基板処理工程において用いられる処理液の温度に対応した熱平衡温度に調整される。これにより、それ以降に実行される基板処理工程において、処理液流通部材の内壁面が熱平衡温度に維持され続ける。これにより
、吐出すべき高温の処理液の温度が途中で変わった場合でもあっても、それ以降の高温処理において、基板間のばらつきを抑制または防止できる。
【0013】
の発明の一実施形態では、前記処理液流通部材は、前記吐出口を有するノズルを含む。
この構成によれば、温度変化ユニットによってノズルの外壁面を加熱または冷却して、ノズルを温度変化させることにより、ノズルの内部に高温の処理液が供給されていない状態において、ノズルの内壁面が熱平衡温度に維持される。
【0014】
熱平衡温度は、基板処理工程を繰り返し連続的に実行させた場合に収束するノズルの内壁面の温度である。処理液流通路に高温の処理液が供給されていない状態において、ノズルの内壁面を熱平衡温度に維持することにより、その次に実行される基板処理工程において、ノズルの内壁面が熱平衡温度に維持される。それだけでなく、それ以降に繰り返し実行される基板処理工程においても、ノズルの内壁面が熱平衡温度に維持される。すなわち、ノズルの内壁面に温度変化がない。
【0015】
ノズルの内部に供給された高温の処理液は、熱平衡温度に維持されたノズルの内壁面と接触した後に、吐出口から吐出される。ノズルの内壁面に温度変化がないので、吐出口から吐出される処理液の温度を、複数の基板処理工程間に亘って均一に保つことができる。これにより、基板間の処理のばらつきを抑制または防止できる。
の発明の一実施形態では、前記ノズルは、前記基板保持ユニットに保持されている基板に処理液を吐出するための処理位置と、前記基板保持ユニットから退避した退避位置との間で移動可能に設けられている。そして、前記温度変化ユニットは、前記ノズルが前記退避位置に配置されている状態で、当該ノズルを温度変化させる。
【0016】
この構成によれば、退避位置に配置されているノズルの外壁面が、温度変化ユニットによって加熱または冷却される。処理位置と退避位置との間で移動可能なタイプのノズルでは、基板への処理液非供給の期間のうち長い期間において、ノズルが退避位置に配置されている。基板への処理液非供給の期間を有効に活用して肉厚部分を温めておくことができる。
【0017】
の発明の一実施形態では、前記退避位置に配置された前記ノズルを包囲する包囲部材を含む。そして、前記温度変化ユニットは前記包囲部材の側壁に配置されている。
この構成によれば、包囲部材の壁面に温度変化ユニットを配置することにより、退避位置に配置されているノズルの外壁面を温度変化ユニットによって加熱または冷却する構成を、比較的簡単に実現することができる。
【0018】
の発明の一実施形態では、前記ノズルは複数設けられている。そして、前記包囲部材は、それぞれ前記退避位置に配置されている複数の前記ノズルを一括して包囲可能に設けられている。そして、前記温度変化ユニットは複数設けられている。そして、前記温度変化ユニットは前記ノズルに対応して設けられている。そして、各温度変化ユニットは、対応する前記ノズルの温度を個別に温度変化させる。
【0019】
この構成によれば、各温度変化ユニットは、対応するノズルの外壁面の温度を個別に温度変化させる。これにより、ノズルの内壁面の温度を、互いに異なる温度に調整することができる。ノズルが複数設けられる場合、各ノズルから吐出される処理液の温度が異なる場合がある。このような場合に、各ノズルの内壁面の温度を、熱平衡温度に設けることも可能である。
【0020】
の発明の一実施形態では、前記ノズルは、前記吐出口に連通する連通路と、前記連通路を区画するボディとを含む。そして、前記処理液流通部材は前記ボディを含む。そして、前記処理液流通部材の外壁面は、前記ボディの外壁面を含む。
この構成によれば、温度変化ユニットによってボディの外壁面を加熱または冷却して、ボディを温度変化させることにより、連通路に高温の処理液が供給されていない状態において、ボディの内壁面が熱平衡温度に維持される。
【0021】
熱平衡温度は、基板処理工程を繰り返し連続的に実行させた場合に収束するボディの内壁面の温度である。連通路に高温の処理液が供給されていない状態において、ボディの内壁面を熱平衡温度に維持することにより、その次に実行される基板処理工程において、ボディの内壁面が熱平衡温度に維持される。それだけでなく、それ以降に繰り返し実行される基板処理工程においても、ボディの内壁面が熱平衡温度に維持される。すなわち、ボディの内壁面に温度変化がない。
【0022】
連通路に供給された高温の処理液は、熱平衡温度に維持されたボディの内壁面と接触した後に、吐出口から吐出される。ボディの内壁面に温度変化がないので、吐出口から吐出される処理液の温度を、複数の基板処理工程間に亘って均一に保つことができる。これにより、基板間の処理のばらつきを抑制または防止できる。
の発明の一実施形態では、前記連通路は複数の分岐路を含む。そして、各分岐路は前記吐出口を有している。そして、前記ボディは、前記複数の分岐路を収容する吐出口ボディを含む。
【0023】
この構成によれば、ノズルは複数の吐出口を有している。各分岐路に供給された高温の処理液は、熱平衡温度に維持されたボディの内壁面と接触した後、各吐出口から吐出される。ボディの内壁面に温度変化がないので、各吐出口から吐出される処理液の温度を、複数の基板処理工程間に亘って均一に保つことができる。
の発明の一実施形態では、前記ボディは、樹脂材料を用いて形成されている。
【0024】
この構成によれば、ボディは、耐熱性を有する樹脂材料を用いて形成されている。樹脂材料は、熱容量の大きな材料である。そのため、熱伝導効率が悪い。ボディがこのような材料を用いて形成されているために、ボディが温度変化し難いという問題がある。 そのため、ボディの内壁面がたとえば常温にある状態で、複数の基板処理工程を繰り返し行った場合、基板処理工程を重ねるごとに吐出口から吐出される処理液の温度が上昇し、これにより、複数の基板処理工程の間で、吐出口から吐出される処理液の温度がばらつくという問題がある。その結果、基板間の処理のばらつきが顕在化するおそれがある。
【0025】
これに対し、この構成では、処理液流通路に高温の処理液が供給されていない状態において、処理液流通部材の内壁面が熱平衡温度に維持される。これにより、吐出口から吐出される処理液の温度を、複数の基板処理工程間に亘って均一に保つことができる。ゆえに、ボディが熱容量の大きな材料によって形成されている場合であっても、基板間の処理のばらつきを効果的に抑制または防止できる。
【0026】
の発明の一実施形態では、前記樹脂材料は、PCTFE、PTFEおよびPFAの少なくとも一つを含む。
この構成によれば、ボディの材料として、PCTFEや、PTFE、PFAを例示できる。これらをボディの材料とする場合、ボディが温度変化し難いという問題があるが、ボディがPCTFE、PTFEおよびPFAの少なくとも一つを含む場合であっても、基板
間の処理のばらつきを効果的に抑制または防止できる。
【0027】
の発明の一実施形態では、前記温度変化ユニットは、ペルチェ素子を含む。
この構成によれば、温度変化ユニットがペルチェ素子を含むことにより、温度変化ユニットが処理液流通部材のうち外壁面を加熱する構成、および温度変化ユニットが、処理液流通部材のうち外壁面を冷却する構成を、一部材で実現することができる。
【0028】
の発明の一実施形態は、処理液流通部材の処理液流通路に常温よりも高い高温(第1の高温)の処理液を供給し、前記処理液流通路に連通する吐出口から前記高温の処理液を吐出することにより、基板保持ユニットに保持されている基板に処理を施す基板処理工程と、前記基板処理工程が行われてない状態において、前記処理液流通部材の外壁面に対して外側から加熱または冷却して、前記処理液流通部材を温度変化させることにより、前記処理液流通部材の内壁面を熱平衡温度に維持する平衡温度維持工程とを含む、基板処理方法を提供する。
【0029】
この方法によれば、処理液流通部材のうち外壁面を加熱または冷却して、処理液流通部材を温度変化させることにより、処理液流通路に高温の処理液が供給されていない状態において、処理液流通部材の内壁面が熱平衡温度に維持される。
熱平衡温度は、基板処理工程を繰り返し連続的に実行させた場合に収束する内壁面の温度である。処理液流通路に高温の処理液が供給されていない状態において処理液流通部材の内壁面を熱平衡温度に維持することにより、その次に実行される基板処理工程において、処理液流通部材の内壁面が熱平衡温度に維持される。それだけでなく、それ以降に繰り返し実行される基板処理工程においても、処理液流通部材の内壁面が熱平衡温度に維持される。すなわち、内壁面に温度変化がない。
【0030】
熱平衡温度は、常温よりも高くかつ前記高温(第1の高温)よりも低い所定の温度であってもよい。
処理液流通路に供給された高温の処理液は、熱平衡温度に維持された処理液流通部材の内壁面と接触した後に、吐出口から吐出される。内壁面に温度変化がないので、吐出口からの処理液の温度を、複数の基板処理工程間に亘って均一に保つことができる。これにより、基板間の処理のばらつきを抑制または防止できる。
の発明の一実施形態では、前記平衡温度維持工程は、前記内壁面を熱平衡温度に保ち、かつ前記外壁面を、常温よりも高くかつ前記熱平衡温度よりも低い所定温度に保つ工程を含む。
【0031】
この方法によれば、外壁面が、常温よりも高くかつ熱平衡温度よりも低い所定温度に保たれる。これにより、外壁面において熱の出入りを抑制または防止することができ、換言すると、処理液流通部材に対する熱の出入りを抑制または防止することができる。ゆえに、内壁面を熱平衡状態に維持し続けることが可能である。
の発明の一実施形態では、前記平衡温度維持工程は、前記外壁面の温度を前記熱平衡温度よりも高温に昇温させるべく、当該外壁面を加熱する第1の加熱工程と、前記第1の加熱工程に次いで、前記外壁面の温度を処理液の温度よりも低温に降下させるべく当該外壁面を冷却する冷却工程と、前記冷却工程に次いで、前記処理液流通部材の前記内壁面が前記熱平衡温度に保たれるようにかつ前記外壁面の温度が前記所定温度に保たれるように、当該外壁面を加熱する第2の加熱工程とを含む。
【0032】
この方法によれば、まず、外壁面を加熱することにより、外壁面の温度を熱平衡温度よりも高温に昇温させる。次いで、外壁面を冷却することにより、外壁面の温度を処理液の温度よりも低温に降下させる。次いで、外壁面を加熱することにより、処理液流通部材の内壁面が熱平衡温度に保たれ、かつ外壁面の温度が所定温度に保たれる。このように、処理液流通部材の内壁面が熱平衡温度に保たれかつ外壁面が常温よりも高くかつ熱平衡温度よりも低い所定温度に保たれる状態を、比較的簡単な手法で実現することができる。
【0033】
の発明の一実施形態では、前記平衡温度維持工程は、当該平衡温度維持工程の後に実行される前記基板処理工程において用いられる処理液の温度に対応して当該平衡温度維持工程における前記熱平衡温度を調整する。
この方法によれば、連続的に実行される2つの基板処理工程において、互いに異なる温度の高温の処理液が用いられる場合には、これら2つの基板処理工程の間に実行される平衡温度維持工程において、処理液流通部材の内壁面が、その後に実行される基板処理工程において用いられる処理液の温度に対応した熱平衡温度に調整される。これにより、それ以降に実行される基板処理工程において、処理液流通部材の内壁面が熱平衡温度に維持され続ける。これにより、吐出すべき高温の処理液の温度が途中で変わった場合でもあっても、それ以降の高温処理において、基板間のばらつきを抑制または防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置の内部のレイアウトを説明するための図解的な平面図である。
図2図2は、前記基板処理装置に備えられた処理ユニットの内部を示す模式的な正面図である。
図3図3は、前記処理ユニットの内部を示す模式的な平面図である。
図4図4は、前記処理ユニットに含まれる複数のノズルを示す模式的な正面図である。
図5図5は、前記ノズルに含まれる吐出バルブの一例の内部を示す断面図である。
図6図6は、前記基板処理装置に含まれる、吐出停止状態の処理液供給システムを示す模式図である。
図7図7は、前記基板処理装置に含まれる、吐出状態の処理液供給システムを示す模式図である。
図8図8は、前記基板処理装置に含まれる、吸引除去状態の処理液供給システムを示す模式図である。
図9図9は、図2に示す退避ポットの概略構成を示す断面図である。
図10図10は、図9を、矢視Xから見た図である。
図11図11は、図9に示す温度調整ユニットの断面図である。
図12図12は、前記基板処理装置の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。
図13図13は、前記処理ユニットによって行われる処理の処理例について説明するためのフローチャートである。
図14図14は、前記処理例における制御装置の主たる制御内容を説明するためのタイムチャートである。
図15図15は、前記ノズルに含まれる吐出口ボディの外壁面を、温度調整ユニットが加熱している状態を示す模式的な図である。
図16図16は、温度調整ユニットによる加熱開始時に実行される平衡温度調整工程の内容を示すフローチャートである。
図17図17は、前記平衡温度調整工程における、前記吐出口ボディの内壁面および外壁面の温度変化を示すグラフである。
図18図18は、図13に示す薬液工程を連続的に実行する場合の、吐出口ボディの内壁面温度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1の内部のレイアウトを説明するための図解的な平面図である。基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円板状の基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。
基板処理装置1は、基板Wを収容する複数の基板収容器Cを保持する複数のロードポートLPと、複数のロードポートLPから搬送された基板Wを薬液等の処理液で処理する複数の処理ユニット2と、複数のロードポートLPから複数の処理ユニット2に基板Wを搬送する搬送ロボットと、基板処理装置1を制御する制御装置3とを含む。搬送ロボットは、ロードポートLPと処理ユニット2との間の経路上で基板Wを搬送するインデクサロボットIRと、インデクサロボットIRと処理ユニット2との間の経路上で基板Wを搬送する搬送ロボットCRとを含む。
【0036】
基板処理装置1は、吐出バルブ68(図6等参照)等を収容する複数の流体ボックス4を含む。処理ユニット2および流体ボックス4は、基板処理装置1のフレーム8の中に配置されており、基板処理装置1のフレーム8で覆われている。処理液を貯留する薬液タンク6等を収容する貯留ボックス7は、図1の例では、基板処理装置1のフレーム8の外に配置されているが、フレーム8の中に収容されていてもよい。貯留ボックス7は、複数の流体ボックス4に対応する1つのボックスであってもよいし、流体ボックス4に一対一対応で設けられた複数のボックスであってもよい。
【0037】
図2は、基板処理装置1に備えられた処理ユニット2の内部を示す模式的な正面図である。図3は、図2の処理ユニット2の内部を示す模式的な平面図である。
処理ユニット2は、チャンバー9と、チャンバー9内で基板Wを水平に保持しながら基板Wの中央部を通る鉛直な回転軸線A1まわりに基板Wを回転させる(基板保持ユニット)10と、基板Wから排出された処理液を受け止める筒状のカップ11とを含む。スピンチャック10は、基板Wを水平に保持する基板保持ユニットの一例である。
【0038】
チャンバー9は、基板Wが通過する搬入搬出口12aが設けられた箱型の隔壁12と、搬入搬出口12aを開閉するシャッター12bとを含む。シャッター12bは、搬入搬出口12aが開く開位置と、搬入搬出口12aが閉じられる閉位置(図3に示す位置)との間で、隔壁12に対して移動可能である。図示しない搬送ロボットは、搬入搬出口12aを通じてチャンバー9に基板Wを搬入し、搬入搬出口12aを通じてチャンバー9から基板Wを搬出する。
【0039】
スピンチャック10は、水平な姿勢で保持された円板状のスピンベース13と、スピンベース13の上方で基板Wを水平な姿勢で保持する複数のチャックピン14と、複数のチャックピン14を回転させることにより回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンモータ15とを含む。スピンチャック10は、複数のチャックピン14を基板Wの周端面に接触させる挟持式のチャックに限らず、非デバイス形成面である基板Wの裏面(下面)をスピンベース13の上面に吸着させることにより基板Wを水平に保持するバキューム式のチャックであってもよい。
【0040】
カップ11は、スピンチャック10を回転軸線A1まわりに取り囲む筒状のスプラッシュガード16と、スプラッシュガード16を回転軸線A1まわりに取り囲む円筒状の外壁面17とを含む。処理ユニット2は、スプラッシュガード16の上端がスピンチャック10による基板Wの保持位置よりも上方に位置する上位置(図2に示す位置)と、スプラッシュガード16の上端がスピンチャック10による基板Wの保持位置よりも下方に位置する下位置との間で、スプラッシュガード16を鉛直に昇降させるガード昇降ユニット18を含む。
【0041】
処理ユニット2は、スピンチャック10に保持されている基板Wの上面に向けてリンス液を下方に吐出するリンス液ノズル19を含む。リンス液ノズル19は、リンス液バルブ20が介装されたリンス液配管21に接続されている。処理ユニット2は、処理位置と退避位置との間でリンス液ノズル19を移動させるノズル移動ユニットを備えていてもよい。
【0042】
リンス液バルブ20が開かれると、リンス液が、リンス液配管21からリンス液ノズル19に供給され、リンス液ノズル19から吐出される。リンス液は、たとえば、純水(脱イオン水:Deionized water)である。リンス液は、純水に限らず、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、および希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。
【0043】
処理ユニット2は、処理液を下方に吐出する複数のノズル22と、複数のノズル22のそれぞれを保持するホルダ23と、ホルダ23を移動させることにより、処理位置(図3に二点鎖線で示す位置)と退避位置(図3に実線で示す位置)との間で複数のノズル22を移動させるノズル移動ユニット24とを含む。
処理液はたとえば薬液である。薬液はたとえばエッチング液である。エッチング液の具体例は、DHF(希釈されたフッ酸)、TMAH(Tetramethylammonium Hydroxide:水酸化テトラメチルアンモニウム)、dNHOH(希釈された水酸化アンモニウム)、およびSC−1(NHOHとHとを含む混合液)である。その他、処理液は、たとえば、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(たとえばクエン酸、蓚酸など)、TMAHを除く有機アルカリ、疎水化剤(たとえばTMS、HMDSなど)、有機溶剤(たとえば、IPA:イソプロピルアルコールなど)、および界面活性剤、腐食防止剤の少なくとも1つを含む液である。
【0044】
各ノズル22は、ホルダ23によって片持ち支持されて、当該ホルダ23から水平な長手方向D1に延びるアーム25と、各アーム25の先端に接続されたノズルヘッド26(第1のノズルヘッド26A、第2のノズルヘッド26B、第3のノズルヘッド26C、および第4のノズルヘッド26D)を含む。
複数のアーム25は、第1のノズルヘッド26A〜第4のノズルヘッド26Dの順番で、長手方向D1に直交する水平な配列方向D2に並んでいる。複数のアーム25は、同じ高さに配置されている。配列方向D2に隣接する2つのアーム25の間隔は、他のいずれの間隔と同じであってもよいし、他の間隔の少なくとも一つと異なっていてもよい。図3は、複数のアーム25が等間隔で配置されている例を示している。
【0045】
長手方向D1への複数のアーム25の長さは、第1のノズルヘッド26A〜第4のノズルヘッド26Dの順番で短くなっている。複数のノズルヘッド26は、長手方向D1に関して第1のノズルヘッド26A〜第4のノズルヘッド26Dの順番で並ぶように長手方向D1にずれている。複数のノズルヘッド26は、平面視で直線状に並んでいる。
ノズル移動ユニット24は、カップ11のまわりで鉛直に延びるノズル回動軸線A2まわりにホルダ23を回動させることにより、平面視で基板Wを通る円弧状の経路に沿って複数のノズル22を移動させる。これにより、処理位置(図4の処理位置P1)と退避位置(図4の退避位置P2)との間で複数のノズル22が水平に移動する。処理ユニット2は、複数のノズル22の退避位置の下方に配置された有底筒状の退避ポット(包囲部材)27をさらに含む。退避ポット27は、平面視でカップ11のまわりに配置されている。
【0046】
処理位置は、複数のノズル22から吐出された処理液が基板Wの上面に着液する位置である。処理位置では、複数のノズル22のノズルヘッド26と基板Wとが平面視で重なり、複数のノズルヘッド26が、平面視において、回転軸線A1側から第1のノズルヘッド26A〜第4のノズルヘッド26Dの順番で径方向Drに並ぶ。このとき、第1のノズルヘッド26Aは、平面視で基板Wの中央部に重なり、第4のノズルヘッド26Dは、平面視で基板Wの周縁部に重なる。
【0047】
退避位置は、複数のノズルヘッド26と基板Wとが平面視で重ならないように、複数のノズルヘッド26が退避した位置である。退避位置では、複数のノズルヘッド26が、平面視でカップ11の外周面(外壁面17の外周面)に沿うようにカップ11の外側に位置し、第1のノズルヘッド26A〜第4のノズルヘッド26Dの順番で周方向(回転軸線A1まわりの方向)に並ぶ。複数のノズルヘッド26は、第1のノズルヘッド26A〜第4のノズルヘッド26Dの順番で、回転軸線A1から遠ざかるように配置される。
【0048】
以下の説明では、第1のノズルヘッド26Aに対応する構成の先頭および末尾に、それぞれ「第1の」および「A」を付ける場合がある。たとえば、第1のノズルヘッド26Aに対応する薬液供給流路32を、「第1の薬液供給流路32A」と記載する場合がある。第2のノズルヘッド26B〜第4のノズルヘッド26Dに対応する構成についても同様である。
【0049】
図4は、複数のノズル22を示す模式的な正面図である。図4では、複数のノズル22が基板Wの上面上に設定された処理位置P1に配置されている状態を示す。図4では、複数のノズル22のノズルヘッド26のうち、第2のノズルヘッド26Bのみ内部を詳細に記載しているが、第2のノズルヘッド26B以外の各ノズルヘッド26の内部の構成も同様である。
【0050】
第1のノズル22Aは、1つの吐出口31を有している。第2のノズル22B、第32のノズル22Cおよび第4のノズル22Dは、それぞれ3つの吐出口31を有している。すなわち、複数のノズル22に設けられた吐出口31の総数が10個である。
第1〜第4のノズル22A〜22Dは、それぞれ吐出バルブ28をさらに含む。各吐出バルブ28はノズルヘッド26内に設けられている。各吐出バルブ28は、2つのチューブ29,30が接続されている。チューブ29,30は、それぞれ処理液を案内する流路を形成している。
【0051】
第1のノズルヘッド26Aの吐出バルブ28には、吐出口部70が結合されている。吐出口部70の内部には、処理液を案内する1つの流路が形成されている。吐出口部70の1つの流路は、各吐出口部70の下面で開口して、1つの吐出口31(31A)を形成している。
第2のノズルヘッド26B〜第4のノズルヘッド26Dの各吐出バルブ28には、吐出口ボディ34が結合されている。吐出口ボディ34は、処理液を案内する複数(たとえば3つ)の流路を形成している。第2のノズルヘッド26Bの吐出口ボディ34の複数の流路は、各吐出口ボディ34の下面で開口して、複数(たとえば3つ)の吐出口31(31B)を形成している。第3のノズルヘッド26Cの吐出口ボディ34の複数の流路は、各吐出口ボディ34の下面で開口して、複数(たとえば3つ)の吐出口31(31C)を形成している。第4のノズルヘッド26Dの吐出口ボディ34の複数の流路は、各吐出口ボディ34の下面で開口して、複数(たとえば3つ)の吐出口31(31D)を形成している。
【0052】
各吐出口ボディ34に設けられた3つの吐出口31(31B,31C,31D)は、3つの吐出口31のうちで回転軸線A1に最も近い内側吐出口と、3つの吐出口31のうちで回転軸線A1から最も遠い外側吐出口と、内側吐出口と外側吐出口との間に配置された中間吐出口とを含む。複数の吐出口31は、平面視で略直線状に並んでいる。隣接する2つの吐出口31の間隔は、他のいずれの間隔と同じであってもよいし、他の間隔の少なくとも一つと異なっていてもよい。また、複数の吐出口31は、2つ以上の異なる高さに配置されていてもよいし、同じ高さに配置されていてもよい。
【0053】
各吐出口31は、基板Wの上面に対して垂直な吐出方向に処理液を吐出する。複数の吐出口31は、基板Wの上面内の複数の着液位置に向けて処理液を吐出する。複数の着液位置は、回転軸線A1からの距離が異なる別々の位置である。
複数のノズルヘッド26が処理位置に配置された状態で、複数の吐出口31は、回転軸線A1からの距離(平面視での最短距離)が異なる複数の位置にそれぞれ配置される。複数の吐出口31は、平面視で基板Wの回転は回転半径方向に沿って一列に配列されている。第1のノズルヘッド26Aに設けられた第1の吐出口31Aは、基板Wの上面中央部に対向するように配置されている。また、第1のノズルヘッド26A以外の各ノズルヘッド26に設けられた第2の吐出口31B、第3の吐出口31Cおよび第4の吐出口31Dは、中央部以外の基板Wの上面に対向するように配置されている。この状態で、複数の吐出口31のうちで回転軸線A1に最も近い最内吐出口(第1の吐出口31A)は、基板Wの中央部の上方に配置され、複数の吐出口31のうちで回転軸線A1から最も遠い最外吐出口(第4の吐出口31D)は、基板Wの周縁部の上方に配置される。
【0054】
チューブ29から各吐出口31に至る流路は、薬液タンク6(図1参照)から供給される処理液を、吐出口31に向けて案内する薬液供給流路32(後述する)の一部に該当する。吐出バルブ28内で薬液供給流路32から分岐してチューブ30に続く流路は、薬液供給流路32を流通している処理液を薬液タンク6に戻す第2の帰還流路33(後述する)の一部に該当する。
【0055】
図5は、吐出バルブ28の一例の内部を示す断面図である。
吐出バルブ28は、処理液を導く流路35が形成された本体36と、流路35を開閉する弁体37と、弁体37を軸方向X1に進退させて流路35を開閉させる空圧アクチュエータ38と、吐出口31とを含む。
本体36は、空圧アクチュエータ38を構成するシリンダ39と、弁体37を進退させる弁室40と、チューブ29と連通して弁室40に至る流路35aと、流路35aの、弁室40よりも上流の位置で、流路35aに接続された、チューブ30と連通する流路35bと、弁室40から吐出口31に至る流路35cとを含む。シリンダ39と弁室40とは、軸方向X1に並んでいる。シリンダ39と弁室40との間は、隔壁41によって隔てられている。
【0056】
流路35cは、吐出口ボディ34の内部を挿通し、かつ吐出口31に連通する連通路69が形成されている。この実施形態では、連通路69は、弁室40側の主連通路69Aと、主連通路69Aと各吐出口31とを接続する複数の分岐路69Bとを含む。
空圧アクチュエータ38は、シリンダ39、ピストン42、バネ43およびロッド44を含む。シリンダ39は、ピストン42によって、隔壁41側の前室と、当該ピストン42を挟んで軸方向X1の反対側の後室とに隔てられている。本体36には、シリンダ39の前室および後室にそれぞれ別個に空気圧を伝達するチューブ(図4に示すチューブ45)を接続するためのジョイント47が、各々接続されている。ピストン42は、チューブ45およびジョイント47を介して、シリンダ39の前室または後室のいずれ一方に空気圧を伝達することにより、シリンダ39内を、軸方向X1に沿って進退される。
【0057】
バネ43は、シリンダ39の後室側において、ピストン42と本体36との間に介挿されて、ピストン42を、隔壁41の方向に押圧している。
ロッド44は、基部がピストン42に連結され、先端部が、隔壁41を貫通して弁室40に突出されている。弁室40に突出されたロッド44の先端部には、弁体37が連結されている。弁体37は円板状に形成され、ロッド44の先端部に、径方向を軸方向X1と直交させて連結されている。弁体37は、シリンダ39内で、ピストン42が軸方向X1に沿って進退されると、ロッド44を介して、弁室40内で、軸方向X1に沿って進退される。
【0058】
弁室40は、隔壁41と対向し、軸方向X1と直交する円環状の弁座面46を含み、弁座面46の中心位置に、流路35aが同心状に開口されている。流路35cは、弁室40の、弁体37の進退方向(軸方向X1)の側方に開口されている。
チューブ29と流路35a、チューブ30と流路35bは、それぞれジョイント48を介して接続される。
【0059】
本体36は、先端に吐出口31が形成され、ノズルヘッド26の下面から下方へ突出される筒部49を含む。第1のノズルヘッド26A以外の各ノズルヘッド26では、図示していないが、筒部49に、処理液を案内する複数の流路が形成された吐出口ボディ34が接続され、吐出口ボディ34の複数の流路が下面で開口されて、複数の吐出口31が形成されている。
【0060】
吐出バルブ28において処理液に接する部分(接液部)は、処理液に対する耐性を有する材料(たとえば、フッ素樹脂等の合成樹脂)によって作製されるか、もしくは処理液に対する耐性を有する材料からなる被膜によって被覆されている。流路35や弁室40の内面、あるいは弁体37やロッド44の外面は、接液部に含まれる。
シリンダ39の前室および後室のいずれにも空気圧を作用させず、空圧アクチュエータ38を作動させない状態では、ピストン42が、バネ43によって、シリンダ39内で前進位置、つまり、図8に示すように、隔壁41側に近接した位置に押圧され、それによって弁室40内で、弁体37が弁座面46に接触されて、流路35aの開口が閉鎖される。そのため、流路35aと流路35cとの間が閉じられて、薬液タンク6からチューブ29と流路35aとを通して供給される処理液は、流路35bとチューブ30とを通して薬液タンク6に帰還させられる(吐出停止状態)。
【0061】
この吐出停止状態において、シリンダ39の前室に空気圧を伝達して、ピストン42を、バネ43の押圧力に抗して、シリンダ39の後室方向に後退させると、弁室40内で、弁体37が弁座面46から離れて、流路35aの開口が弁室40に解放される。そのため、流路35aと流路35cとが、弁室40を介して繋がれて、薬液タンク6からチューブ29と流路35aとを通して供給される処理液が、流路35cを通して、吐出口31から吐出される(吐出状態)。
【0062】
この吐出状態において、シリンダ39の前室への空気圧の伝達を停止し、代わって、シリンダ39の後室に空気圧を伝達して、ピストン42を、バネ43の押圧力とともに、シリンダ39の前室方向、すなわち、隔壁41に近接する方向に前進させると、弁室40内で、弁体37が弁座面46に接触されて、流路35aの開口が閉鎖される。そのため、流路35aと流路35cとの間が閉じられて、薬液タンク6からチューブ29と流路35aとを通して供給される処理液は、流路35bとチューブ30とを通して薬液タンク6(図1参照)に帰還させられる吐出停止状態に復帰する。
【0063】
なお吐出バルブ28は、電磁バルブであってもよいし、それ以外のバルブであってもよい。
図6図8は、基板処理装置1に含まれる処理液供給システムを示す模式図である。図6図7および図8は、それぞれ、吐出停止状態、吐出状態および吸引除去状態を示している。
【0064】
処理液供給システムは、薬液を貯留する薬液タンク6と、薬液タンク6から送られた薬液を案内する薬液流路66と、薬液流路66内を流れる薬液を常温(RT。たとえば約23〜25℃)よりも高い温度で加熱することにより薬液タンク6内の薬液の温度を調整する第1の循環ヒータ51と、薬液タンク6内の薬液を薬液流路66に送るポンプ52と、薬液流路66内の薬液を薬液タンク6に戻す第1の帰還流路65とを含む。薬液タンク6、薬液流路66、および第1の帰還流路65が、薬液タンク6に貯留されている処理液を循環させて薬液タンク6に戻す第1の循環流路50に含まれる。
【0065】
処理液供給システムは、薬液流路66を開閉する供給バルブ54と、第1の循環流路50を開閉する第1の帰還バルブ53と薬液流路66に接続された薬液供給流路32とを含む。薬液供給流路32は、第1の循環流路50から供給された処理液を複数の吐出口31に向けて案内する複数の薬液供給流路32(第1の薬液供給流路32A、第2の薬液供給流路32B、第3の薬液供給流路32Cおよび第4の薬液供給流路32D)を含む。処理液供給システムは、さらに、複数の薬液供給流路32内を流れる処理液の流量を検出する複数の流量計55と、複数の薬液供給流路32内を流れる処理液の流量を変更する複数の流量調整バルブ56と、複数の薬液供給流路32内を流れる処理液を、薬液流路66内を流れる薬液を常温(たとえば約23〜25℃)よりも高い温度で加熱することにより薬液タンク6内の薬液の温度を調整する、複数の第2の循環ヒータ57と、複数の薬液供給流路32をそれぞれ開閉する複数の薬液供給バルブ68と、チャンバー9内で複数の薬液供給流路32をそれぞれ開閉する複数の吐出バルブ28とを含む。
【0066】
処理液供給システムは、チャンバー9内で、かつ複数の吐出バルブ28よりも上流の位置で、複数の薬液供給流路32にそれぞれ接続されて、薬液供給流路32を流通している処理液を第1の循環流路50に帰還させる複数の第2の帰還流路33と、複数の第2の帰還流路33をそれぞれ開閉する複数の第2の帰還バルブ58とをさらに含む。
処理液供給システムは、複数の薬液供給流路32において、第2の帰還流路33との接続位置よりも上流の位置で、第2の帰還流路33に接続された複数のバイパス流路59と、複数のバイパス流路59をそれぞれ開閉する複数のバイパスバルブ60と、バイパス流路59との接続位置よりも上流の位置で、複数の第2の帰還流路33に接続された複数の吸引流路61と、複数の吸引流路61をそれぞれ開閉する複数の吸引バルブ62とをさらに含む。吸引流路61の下流側には、図示していないが、吸引装置が接続されている。バイパス流路59、バイパスバルブ60、吸引流路61および吸引バルブ62は、いずれも流体ボックス5内に設けられている。
【0067】
薬液供給バルブ68、吐出バルブ28、第2の帰還バルブ58、および吸引バルブ62は、処理液供給システムを吐出状態、吐出停止状態および吸引除去状態に切り替える切替ユニットの一例である。またバイパスバルブ60は、バイパス流路59を開閉する開閉ユニットの一例である。
処理液供給システムは、複数の第2の帰還流路33から帰還させられた処理液を冷却するクーラー63と、クーラー63から薬液タンク6に処理液を案内する回収流路64とを含む。複数の第2の帰還流路33からクーラー63に帰還させられた処理液は、クーラー63によって、循環温度に近づけられた後、回収流路64を介して薬液タンク6に案内される。クーラー63は、水冷ユニットまたは空冷ユニットであってもよいし、これら以外の冷却ユニットであってもよい。薬液タンク6、薬液流路66、薬液供給流路32、第2の帰還流路33および回収流路64が、薬液タンク6に貯留されている処理液を循環させて薬液タンク6に戻す第2の循環流路(処理液供給ユニット)67に含まれる。
【0068】
次に、図6を参照して、複数の吐出口31からの処理液の吐出が停止された吐出停止状態の処理液供給システムについて説明する。図6では、開いているバルブを黒色で示しており、閉じているバルブを白色で示している。
吐出停止状態では、第1の帰還バルブ53が閉じられかつ供給バルブ54が開かれる。これにより、第1の循環流路50を循環している薬液が、複数の薬液供給流路32に流れ、第2の循環流路67を循環する。具体的には、薬液供給流路32に供給された処理液は、第2の循環ヒータ57によって加熱された後、チャンバー9内に配置された吐出口31の近傍の、第2の帰還流路33との接続位置まで送られて、当該接続位置から、第2の帰還流路33を介して、薬液タンク6に帰還させられる。
【0069】
この吐出停止状態においては、複数の薬液供給流路32と、そのそれぞれに接続された第2の帰還流路33とを介して処理液を循環させ続けることにより、それぞれの薬液供給流路32内の処理液を、チャンバー9内の(すなわち吐出口31の近傍の)第2の帰還流路33との接続位置まで、所定の高温に維持することができる。
次に、図7を参照して、複数の吐出口31から処理液が吐出される吐出状態の処理液供給システムについて説明する。図7では、やはり、開いているバルブを黒色で示しており、閉じているバルブを白色で示している。
【0070】
薬液タンク6内の処理液は、ポンプ52によって第1の循環流路50に送られる。ポンプ52によって送られた処理液は、第1の循環ヒータ51によって加熱された後、第1の循環流路50から複数の薬液供給流路32に流れる。薬液供給流路32に供給された処理液は、第2の循環ヒータ57によって加熱された後、チャンバー9内に配置された複数の吐出口31に供給される。
【0071】
第1の薬液供給流路32Aに供給された処理液は、第1のノズルヘッド26Aに設けられた1つの第1の吐出口31Aに供給される。第2の薬液供給流路32Bに供給された処理液は、第2のノズルヘッド26Bに設けられた複数の第2の吐出口31Bに供給される。第3の薬液供給流路32Cおよび第4の薬液供給流路32Dについても、第2の薬液供給流路32Bと同様である。これにより、全ての吐出口31から処理液が吐出される。
【0072】
この吐出状態においては、複数の吐出口31から、基板Wの上面内の異なる複数の位置に処理液を供給することで、処理液の温度の均一性の低下を抑制できる。また、基板Wを回転軸線まわりに回転させながら、当該回転軸線からの距離が異なる複数の位置に、複数の吐出口31から吐出させた処理液を着液させる場合には、基板Wの上面の全域に、速やかに、処理液を行き渡らせることができる。
【0073】
次に、図8を参照して、薬液供給流路32の、第2の帰還流路33との接続位置よりも下流の領域に残留する処理液が吸引除去される吸引除去状態の処理液供給システムについて説明する。図8では、やはり、開いているバルブを黒色で示しており、閉じているバルブを白色で示している。
薬液タンク6内の処理液は、ポンプ52によって薬液流路66に送られる。ポンプ52によって送られた処理液の一部は、第1の循環ヒータ51によって加熱された後、第1の帰還流路65を介して薬液タンク6に戻る。ポンプ52によって送られた残りの処理液は、第1の循環流路50から複数の薬液供給流路32に流れる。薬液供給流路32に供給された処理液は、第2の循環ヒータ57によって加熱された後、バイパス流路59を介して、薬液タンク6に帰還させられる。
【0074】
薬液供給流路32の、第2の帰還流路33との接続位置よりも下流の領域に残留した処理液は、吸引流路61から第2の帰還流路33を介して伝達された吸引力によって、吸引流路61内に吸引除去される。
図9は、退避ポット27の概略構成を示す断面図である。図10は、図9を、矢視Xから見た図である。図11は、温度調整ユニット(温度変化ユニット)80の断面図である。
【0075】
退避ポット27は、略直方体の内部空間71を区画する、たとえば有底筒状のハウジング72を含む。ハウジング72は、ハウジング72の上面に形成された挿入口73と、ハウジング72の下壁72aに形成された排出口74とを有する。退避ポット27の排出口74には、機外の廃液処理設備に他端が接続された排出配管76の一端が接続されている。図9および図10には、複数のノズル22が退避位置P2に配置されている状態を示している。
【0076】
複数のノズル22が退避位置P2に配置された状態では、各吐出口ボディ34が退避ポット27の内部に収容されている。この収容状態では、吐出口ボディ34の上端が、退避ポット27の挿入口73よりも下方に位置している。換言すると、ノズル22が退避位置P2に配置された状態では、各吐出口ボディ34が退避ポット27によって包囲されている。さらに、この実施形態は、退避ポット27は、複数(たとえば3つ)の吐出口ボディ34を一括して包囲する。
【0077】
退避ポット27には、温度調整ユニット80が設置されている。温度調整ユニット80は、ペルチェ素子などの熱源83を内蔵する温度調整器77と、温度調整器77の表面温度を検出するための温度センサ78とを含む。この実施形態では、温度調整ユニット80は一対設けられている。
各温度調整器77は、退避ポット27のハウジング72の双方の側壁72bの外側側面に、それぞれ配置されている。各温度調整器77は、断熱材によって形成された固定プレート81およびボルト82によって、ハウジング72の側壁72bに固定されている。
【0078】
図11に示すように、温度調整器77は矩形のシート状をなしている。温度調整器77は、フィルム状の熱源83と、熱源83の周囲を包囲する断熱層84と、断熱層84の周囲を包囲する熱拡散体85と、熱拡散体85の周囲を包囲する断熱体86とを含む。熱源83は、たとえば、発熱および吸熱可能な構成が採用されている。このような熱源83はペルチェ素子を含む。また、温度センサ78として、たとえば熱電対が採用される。
【0079】
温度調整器77の熱源83に電力が供給されると、熱源83が発熱または吸熱し、温度調整器77の表面が昇温または降温する。ノズル22が退避位置P2に配置されている状態で、温度調整器77の表面が昇温または降温させられることにより、吐出口ボディ34の外壁面34Aが加熱または冷却される。熱源83がペルチェ素子を含むので、温度調整ユニット80が吐出口ボディ34の外壁面34Aを加熱する構成、および温度調整ユニット80が吐出口ボディ34の外壁面34Aを冷却する構成を、一部材で実現することができる。
【0080】
図12は、基板処理装置1の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。
制御装置3は、たとえばマイクロコンピュータを用いて構成されている。制御装置3はCPU等の演算ユニット91、固定メモリデバイス(図示しない)、ハードディスクドライブ等の記憶ユニット92、および入出力ユニット(図示しない)を有している。記憶ユニット92には、演算ユニット91が実行するプログラム93が記憶されている。
【0081】
記憶ユニット92は、基板Wに対する各処理の内容を規定するレシピを記憶するレシピ記憶部94を含む。レシピ記憶部94は、電気的にデータを書き換え可能な不揮発性メモリからなる。レシピ記憶部94には、基板Wに対する処理の内容(手順および条件を含む。以下同じ。)が規定されたプロセスレシピ(図示しない)が格納されている。
基板処理装置1には、一つのロットを構成する所定枚数(たとえば、25枚)の基板Wが基板収容器C(図1参照)に一括して収容された状態で搬入される。基板処理装置1では、基板収容器Cごとにプロセスジョブが対応付けられている。基板収容器Cが、基板処理装置1のロードポートLP(図1参照)に載置されると、基板収容器Cに含まれるロットの情報を示す基板情報が、ホストコンピュータから制御装置3に送られる。ホストコンピュータは、半導体製造工場に設置された複数の基板処理装置を統括するコンピュータである。制御装置3は、ホストコンピュータから送られた基板情報(プロセスジョブ)に基づいて、そのロットに対するプロセスレシピがレシピ記憶部94から読み出される。そして、制御装置3が、このプロセスレシピに従った制御を繰り返し実行することにより、1つの基板収容器Cに収容された基板Wは、次々と連続して処理ユニット2に搬入され、処理ユニット2で基板処理を受ける。そして、プロセスレシピに従った制御が基板収容器Cに収容された基板の枚数に等しい所定回数だけ実行されると、当該基板収容器Cに次いで搬入された基板収容器Cに収容されている基板に対し、当該処理が実行される。
【0082】
さらに、制御装置3は、記憶ユニット92に記憶されているプログラム93の内容に従って、スピンモータ15、第2の循環ヒータ57および温度調整ユニット80等の動作を制御する。また、制御装置3は、吐出バルブ28およびリンス液バルブ20等を制御する。
図13は、処理ユニット2によって行われる処理の処理例について説明するためのフローチャートである。図14は、前記処理例における制御装置3の主たる制御内容を説明するためのタイムチャートである。
【0083】
図1図14を参照しつつ処理例について説明する。この処理例は、高温の薬液として、エッチング液を用いてエッチング処理を基板Wに施す処理例である。
基板処理装置1(つまり処理液供給システム)の起動後直ちに、制御装置3は、ポンプ52を作動開始させ、かつ第1および第2の循環ヒータ51,57を作動開始させる。その後、制御装置3は、第1の帰還バルブ53を閉じかつ供給バルブ54を閉じる。この状態で、第2の循環流路67を薬液が循環する(処理液供給システムが図6に示す吐出停止状態になる)。制御装置3は、温度計(図示しない)の出力値を常時参照することにより、第2の循環流路67内を循環している薬液の温度を監視している。第2の循環流路67内の薬液は、予め定める高温処理温度(この処理例では、たとえば約82℃)を目標に昇温させられ、その処理温度に達した後は、当該高温処理温度のまま維持される。
【0084】
また、制御装置3は、基板処理装置1の起動後直ちに、温度調整ユニット80を制御して、温度調整ユニット80による吐出口ボディ34の外壁面34Aの加熱を開始する。
その後、基板Wが搬入されてくるまで、基板処理装置1はIDLE状態(待機状態)にある。
未処理の基板Wを収容する基板収容器CがロードポートLPに載置されると(READY)、インデクサロボットIRによって基板収容器Cから、処理対象の基板Wが取り出される。取り出された基板Wは搬送ロボットCRに受け渡され、搬送ロボットCRによって、チャンバー9の内部に搬入される(図13のステップS1)。具体的には、基板Wを保持している搬送ロボットCRのハンドHをチャンバー9の内部に進入させることにより、基板Wがその表面(エッチング対象面)を上方に向けた状態でスピンチャック10に受け渡される。その後、スピンチャック10に基板Wが保持され、かつ、ハンドHがチャンバー9外に退避させられる。また、基板Wの搬入前の状態で、ノズル22は、退避位置P2に配置されている。
【0085】
スピンチャック10に基板Wが保持された後、制御装置3はスピンモータ15を制御して、基板Wを回転開始させる(図13のステップS2)。基板Wの回転速度は、液処理速度(約300rpm〜約1000rpmの所定の速度)まで上昇させられる。
次に、基板Wに薬液を供給する高温薬液工程(図13のステップS4)が行われる。具体的には、制御装置3は、ノズル移動ユニット24を制御して、退避位置P2に配置されている(すなわち、退避ポット27に収容されている)ノズル22を処理位置P1(図4参照)に配置させる(図13のステップS3)。ノズル22が処理位置P1に配置された後、制御装置3は、吐出バルブ28を開く。これにより、回転状態の基板Wの上面に向けてノズル22から薬液が吐出される。ノズル22から吐出された薬液は、基板Wの上面に供給される(S4)。吐出口31が基板Wの回転半径方向に沿って複数並んでいるので(多点吐出)、基板Wの上面の全域に薬液を行き渡らせることができ、これにより、基板Wの上面を均一に薬液処理(たとえばエッチング処理)することができる。薬液の吐出開始から予め定める期間が経過すると、制御装置3は、吐出バルブ28を閉じて、ノズル22からの薬液の吐出を停止する。これにより、高温薬液工程(S3)が終了する。
【0086】
薬液の吐出停止後、制御装置3は、ノズル移動ユニット24を制御して、ノズル22を、処理位置P1から退避位置P2まで退避させる(図13のステップS5)。
高温薬液工程(S4)の終了に次いで、リンス液を基板Wに供給するリンス工程(図13のステップS6)が行われる。具体的には、制御装置3は、リンス液バルブ20を開いて、リンス液ノズル19からのリンス液の吐出を開始する。リンス液ノズル19から吐出されたリンス液は、回転状態にある基板Wの上面に供給される。このリンス液により、基板Wの上面に付着している薬液が洗い流される。リンス液の吐出開始から予め定める期間が経過すると、制御装置3は、リンス液バルブ20を閉じてリンス液ノズル19からのリンス液の吐出を停止する。これにより、リンス工程(S6)が終了する。
【0087】
次いで、制御装置3はスピンモータ15を制御して、各工程S4,S5における回転速度よりも大きい乾燥回転速度(たとえば数千rpm)まで基板Wを加速させ、その乾燥回転速度で基板Wを回転させる。これにより、大きな遠心力が基板W上の液体に加わり、基板Wの周縁部に付着している液体が基板Wの周囲に振り切られる。このようにして、基板Wの周縁部から液体が除去され、基板Wの周縁部が乾燥する(図13のS7:乾燥工程)。
【0088】
乾燥工程(S7)が予め定める期間に亘って行われると、制御装置3は、スピンモータ15を制御して、スピンチャック10の回転(基板Wの回転)を停止させる(図13のステップS8)。
基板Wの回転停止後は、複数のチャックピン14による基板Wの保持が解除される。その後、制御装置3は、基板Wを搬入したときと同様に、処理済みの基板Wを搬送ロボットによってチャンバー9内から搬出させる(図13のステップS9)。
【0089】
その後、引き続いて、次の基板Wが搬入され、当該基板WにS1〜S9の各工程が施される。
吐出口ボディ34の連通路69に供給される。このとき、連通路69に供給される薬液の温度Tc(図15参照)は、たとえば約82℃であり、この温度の薬液が吐出口31から吐出される。
【0090】
薬液供給工程(S4)を除いて、ノズル22は、退避位置P2に配置されている。ノズル22が退避位置P2に配置されている状態では、吐出口ボディ34の内壁面34Bが温度調整ユニット80によって加熱されている。
図15は、吐出口ボディ34の外壁面34Aを、温度調整ユニット80が加熱している状態を示す模式的な図である。
【0091】
吐出口ボディ34は、耐熱性を有する樹脂材料を用いて形成されている。このような樹脂材料として、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシエチレン)を例示できる。PCTFE、PTFEおよびPFAは、それぞれ熱容量の大きな材料である。そのため、熱伝導率が悪い。また、吐出口ボディ34は肉厚に設けられており、かつ、その肉厚が大きい。この実施形態では、吐出口ボディ34の厚み(すなわち、外壁面34Aと内壁面34Bとの間の距離)が、約10ミリメートル程度と、大きく設けられている。
【0092】
この状態では、制御装置3は、温度調整ユニット80を制御して、温度調整ユニット80の制御温度(すなわち温度調整器77の表面温度)を高温度(たとえば約120℃)に維持している。この状態では、吐出口ボディ34の外壁面34Aが温められ、この外壁面34Aの温度Tが低温度T(たとえば約50℃)に達している。この低温度Tは、温度調整ユニット80からの加熱状態において、吐出口ボディ34の外壁面34Aがその周囲の雰囲気と熱平衡状態に保たれるような温度である。一方、内壁面34Bの温度Tは、内壁面34Bの熱平衡温度である熱平衡温度T(たとえば約80℃)に維持されている。内壁面34Bの熱平衡温度とは、複数回の高温薬液工程(図13のS4)を繰り返し連続的に実行させた場合に収束する、薬液の非流通状態における内壁面34Bの温度である。内壁面34Bの熱平衡温度Tは、予め行われる実験等によって求められる。
【0093】
すなわち、図15に示す状態は、吐出口ボディ34の内壁面34Bが熱平衡温度Tに保たれかつ吐出口ボディ34の外壁面が低温度Tに保たれる状態である。このような状態では、吐出口ボディ34の外壁面34Aにおいて、吐出口ボディ34に対する熱の出入りを防止することができる。ゆえに、吐出口ボディ34の内壁面34Bを熱平衡状態に維持し続けることが可能である。このような状態は、温度調整ユニット80による加熱開始時(熱平衡温度維持工程の開始時)時に行われる熱平衡温度調整工程によって実現される。
【0094】
図16は、熱平衡温度調整工程の内容を示すフローチャートである。図17は、熱平衡温度調整工程における、吐出口ボディ34の内壁面34Bおよび外壁面34Aの温度変化を示すグラフである。
熱平衡温度調整工程において、制御装置3は、温度調整ユニット80を制御して、温度調整ユニット80の制御温度を極めて高温に昇温させる。これにより、吐出口ボディ34の外壁面34Aが加熱される(図16のS11:第1の加熱工程)。このような外壁面34Aの加熱により、図17に実線で示すように、外壁面34Aの温度Tが上昇し、高温(たとえば約160℃)に達する。また、熱伝導により、図17に破線で示すように、内壁面34Bの温度Tが、外壁面34Aの温度上昇に伴って温度上昇する。外壁面34Aの温度Tは、熱平衡温度Tよりも高い所定の高温度(たとえば約120℃)まで上昇させられる。
【0095】
加熱開始から所定の期間が経過すると、制御装置3は、温度調整ユニット80を制御して、温度調整ユニット80の制御温度を極めて低温に降温させる。これにより、吐出口ボディ34の外壁面34Aが急激に冷却される(図16のS12:冷却工程)。このような外壁面34Aの冷却により、吐出口ボディ34の外壁面34Aの温度Tが、目標とする低温度Tよりも低い温度(たとえば約40℃)まで急激に降下する。
【0096】
一方、吐出口ボディ34の冷却を開始した後も、内壁面34Bの温度Tは上昇する。これは、吐出口ボディ34を形成している樹脂材料の熱容量が比較的大きいことと、内壁面34Bと外壁面34Aとの間に距離があることから、外壁面34Aから内壁面34Bに熱が伝わり難いことに起因している。しかし、時間の経過に伴って、内壁面34Bの温度上昇は緩やかになり、その後、内壁面34Bの温度Tは下降に向かう。
【0097】
冷却開始から所定の期間が経過すると、制御装置3は、温度調整ユニット80を制御して、温度調整ユニット80の制御温度を高温度(たとえば約120℃)に昇温させる。これにより、吐出口ボディ34の外壁面34Aが加熱される(図16のS13:第2の加熱工程)。このような外壁面34Aの加熱により、図17に実線で示すように、外壁面34Aの温度Tが上昇し、外壁面34Aの温度Tが低温度Tに達する。低温度Tに達した後、外壁面34Aの温度Tは低温度Tに保たれる。一方、降下していた内壁面34Bの温度Tが、目標とする熱平衡温度Tに達する。熱平衡温度Tに達した後、内壁面34Bの温度Tは熱平衡温度Tに保たれる。これにより、吐出口ボディ34の内壁面34Bが熱平衡温度Tに保たれかつ吐出口ボディ34の外壁面34Aが低温度Tに保たれる状態を、比較的簡単な手法で実現することができる。その後、制御装置3は、温度調整ユニット80の制御温度を高温度(約120℃)に維持し続ける。
【0098】
図18は、図13に示す高温薬液工程(S4)を連続的に実行する場合の、吐出口ボディ34の内壁面34Bの温度Tの変化を示すグラフである。
前述のように、この実施形態では、基板処理装置1(つまり処理液供給システム)の起動後直ちに、温度調整ユニット80による加熱が開始される。そのため、基板処理装置1が起動しているが待機しているIDLE状態(待機状態。ノズルが使用されていない状態)において、内壁面34Bの温度Tが熱平衡温度Tに保たれている。
【0099】
基板処理装置1に基板Wが搬入されると、各基板Wに対して高温薬液工程(図13のS4)が繰り返し連続的に実行される。この高温薬液工程(S4)では、第2の循環流路67(図6等参照)において所定の温度Tcに温度調整された薬液が、吐出口ボディ34の連通路69(図15参照)に供給される。このとき、図15に示すように、連通路69に供給される薬液の温度Tcは、たとえば約82℃であり、この温度の薬液が吐出口31から吐出される。連通路69の管壁である内壁面34Bの温度Tは、連通路69を流れる薬液に接液することにより、温度Tcと略同じ温度まで昇温させられる。
【0100】
したがって、IDLE状態から復帰後の最初の1枚目の基板Wに対する高温薬液工程(図13のS4)から、高温に精度良く調整された薬液を吐出口31から吐出することができる。そして、吐出口ボディ34の内壁面34Bに温度変化がないので、その次の基板Wに対する高温薬液工程(図13のS4)においても、同じ温度の薬液を吐出口31から吐出することができる。すなわち、吐出口31から吐出される薬液の温度を、複数の高温薬液工程(図13のS4)間に亘って均一に保つことができる。これにより、基板W間の高温処理のばらつきを抑制または防止できる。
【0101】
これに対し、使用されていない状態のノズルが加熱されていない場合を、図18に破線で示す。この場合、IDLE状態から復帰時には、内壁面34Bの温度Tは常温である。このとき、温度Tcの薬液が連通路69に供給されても、内壁面34Bと熱交換して薬液の温度が低下する。そのため、IDLE状態から復帰後の最初の数枚の基板Wの温度は低い。その後に、高温薬液工程(図13のS4)が繰り返し連続的に実行されることにより、内壁面34Bが温度上昇し、やがて、薬液が供給されていない状態において、熱平衡温度Tに維持されるようになる。
【0102】
また、基板処理装置1の処理ユニット2において、基板W(ロット単位)の種類に応じて、使用される薬液の温度が異なることがある。このような場合には、その前のロットの基板Wに対する基板処理が終了した後、温度調整ユニット80による吐出口ボディ34の加熱温度が変更される。
具体的には、ロードポートLPに載置された基板収容器Cに含まれる基板Wのレシピにおける高温薬液の設定温度がそれまでの設定温度と異なる場合には、制御装置は、退避位置P2に配置されている吐出口ボディ34の内壁面34Bの温度Tが新たな高温薬液に対応する熱平衡温度になり、かつ当該吐出口ボディ34の外壁面34Aの温度Tが、新たな熱平衡温度よりも低温でかつ外壁面34Aがその周囲の雰囲気と熱平衡状態に保たれるような低温度になるように、温度調整ユニット80を制御される。そして、それ以降に実行される高温薬液処理工程(図13のS4)において、内壁面34Bの温度Tが新たな高温薬液に対応する熱平衡温度に維持され続ける。これにより、吐出すべき薬液の設定温度が途中で変わった場合でもあっても、それ以降の高温処理における基板W間のばらつきを抑制または防止できる。
【0103】
以上によりこの実施形態によれば、温度調整ユニット80(温度変化ユニット)によって吐出口ボディ34の外壁面34Aを加熱または冷却して、吐出口ボディ34を温度変化させることにより、連通路69に高温の薬液が供給されていない状態において、吐出口ボディ34の内壁面34Bが熱平衡温度Tに維持される。
熱平衡温度Tには、高温薬液工程(S4。基板処理工程)を繰り返し連続的に実行させた場合に収束する吐出口ボディ34の内壁面34Bの温度である。連通路69に高温の薬液が供給されていない状態において、吐出口ボディ34の内壁面34Bを熱平衡温度Tに維持することにより、その次に実行される高温薬液工程(S4)において、吐出口ボディ34の内壁面34Bが熱平衡温度Tに維持される。それだけでなく、それ以降に繰り返し実行される高温薬液工程(S4)においても、吐出口ボディ34の内壁面34Bが熱平衡温度Tに維持される。すなわち、吐出口ボディ34の内壁面34Bに温度変化がない。
【0104】
連通路69に供給された高温の薬液は、熱平衡温度Tに維持された吐出口ボディ34の内壁面34Bと接触した後に、吐出口31から吐出される。吐出口ボディ34の内壁面34Bに温度変化がないので、吐出口31から吐出される薬液の温度を、複数の高温薬液工程(S4)間に亘って均一に保つことができる。これにより、基板W間の高温処理のばらつきを抑制または防止できる。
【0105】
また、吐出口ボディ34の外壁面34Aが、常温よりも高くかつ熱平衡温度Tよりも低い低温度Tに保たれる。低温度Tは、温度調整ユニット80からの加熱状態において、吐出口ボディ34の外壁面34Aがその周囲の雰囲気と熱平衡状態に保たれるような温度である。これにより、吐出口ボディ34の外壁面34Aにおいて、吐出口ボディ34に対する熱の出入りを防止することができる。ゆえに、吐出口ボディ34の内壁面34Bを熱平衡状態に維持し続けることが可能である。
【0106】
また、温度調整ユニット80によって吐出口ボディ34の外壁面34Aを加熱することにより、吐出口ボディ34の外壁面34Aの温度を熱平衡温度Tよりも高温に昇温させる。次いで、温度変化ユニットによって吐出口ボディ34の外壁面34Aを冷却することにより、吐出口ボディ34の外壁面34Aの温度を降下させる。次いで、温度調整ユニット80によって吐出口ボディ34の外壁面34Aを加熱することにより、吐出口ボディ34の外壁面34Bが熱平衡温度Tに保たれ、かつ吐出口ボディ34の外壁面34Aの温度が低温度Tに保たれる。このように、比較的簡単な手法で、吐出口ボディ34の内壁面34Bが熱平衡温度Tに保たれ、かつ吐出口ボディ34の外壁面34Aが低温度Tに保たれる状態を実現することができる。
【0107】
また、退避位置P2に配置されているノズル22の吐出口ボディ34が、温度変化ユニットによって加熱または冷却される。処理位置P1と退避位置P2との間で移動可能なスキャン式のノズル22では、基板Wへの薬液非供給の期間のうち長い期間において、ノズル22が退避位置P2に配置されている。基板Wへの薬液非供給の期間を有効に活用して吐出口ボディ34を温めておくことができる。
【0108】
吐出口ボディ34がPCTFEやPTFE、PFAを用いて形成されている。PCTFE、PTFEおよびPFAは、それぞれ熱容量の大きな材料である。そのため、熱伝導率が悪い。吐出口ボディ34がこのような材料を用いて形成されているために、吐出口ボディ34が温度変化し難いという問題がある。そのため、吐出口ボディ34の内壁面34Bがたとえば常温にある場合において、複数の薬液処理工程(図13のS4)を繰り返し行った場合、高温薬液工程(S4)ごとに、吐出口ボディ34の内壁面34Bの温度がばらつき、これにより、吐出口31から吐出される薬液の温度がばらつくという問題がある。その結果、基板W間の高温処理のばらつきが顕在化するおそれがある。
【0109】
これに対し、実施形態では、連通路69に高温の薬液が供給されていない状態において、吐出口ボディ34の内壁面34Bが熱平衡温度Tに維持される。これにより、吐出口31から吐出される薬液の温度を、複数の高温薬液工程(図13のS4)間に亘って均一に保つことができる。ゆえに、吐出口ボディ34が熱容量の大きな材料によって形成されている場合であっても、基板W間の処理のばらつきを効果的に抑制または防止できる。
【0110】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、他の形態で実施することもできる。
また、前述の実施形態では、温度調整ユニット80の熱源83として、ペルチェ素子を用いるとして説明したが、熱源を、加熱源(ヒータ)と、冷却源(クーラー)とに分けて設けるようにしてもよい。
【0111】
また、前述の処理例では、プリディスペンスを行っていないが、高温薬液工程(図13のS4)に先立ってプリディスペンスを行うようにしてもよい。この場合、平衡温度維持工程(温度調整ユニット80による加熱)と、基板処理工程(高温薬液工程(S4))との間にプリディスペンスが行われるようになる。この場合、プリディスペンスのために吐出口31から吐出された薬液は、退避ポット27に受け止められる。ディスペンスを行う場合であっても、廃棄する薬液の量が少量で済むから、薬液の消費量は少量で済み、かつプリディスペンスに要する時間も短時間で済む。
【0112】
また、温度調整ユニット80を複数設け、複数のノズル22に対して個々に対応付けられていてもよい。この場合、各ノズル22が、対応する温度調整ユニット80によって個別に温度調整されるようになっていてもよい。
前述の実施形態では、温度調整ユニット80の熱源83として、ペルチェ素子を用いるとして説明したが、熱源を、加熱源(ヒータ)と、冷却源(クーラー)とに分けて設けるようにしてもよい。
【0113】
また、高温の処理液として、高温の薬液を例に挙げたが、高温の処理液が、高温の水であってもよい。この場合、水は、たとえば、純水(脱イオン水:Deionized water)であるが、純水に限らず、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、および希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。
また、前述の実施形態では、ノズル22が複数設けられる場合について説明したが、ノズル22が退避位置P2において、温度調整ユニット80によって加熱(温度変更)されるのであれば、温度変更対象のノズル22は複数でなく1つであってもよい。
【0114】
また、温度調整ユニット80からの吐出口ボディ34の加熱状態において、内壁面34Bの温度Tが熱平衡温度Tに保たれていれば、吐出口ボディ34の外壁面34Aが、必ずしも、熱平衡温度Tよりも低温に保たれていなくてもよい。
また、温度調整ユニット80によってノズル22を加熱(温度変更)する場合について説明したが、温度変更の対象は、ノズル22でなく、処理液流通路の一部を構成する処理液流通部材であってもよい。しかしながら、温度変更の対象は、循環流路(第2の循環流路67)の下流側の部分に限られる。
【0115】
また、前述の実施形態では、基板処理装置1が円板状の基板Wを処理する装置である場合について説明したが、基板処理装置1が、液晶表示装置用ガラス基板などの多角形の基板を処理する装置であってもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能で
ある。
【符号の説明】
【0116】
1 :基板処理装置
2 :処理ユニット
3 :制御装置
10 :スピンチャック(基板保持ユニット)
22 :ノズル
22A :第1のノズル
22B :第2のノズル
22C :第3のノズル
22D :第4のノズル
27 :退避ポット(包囲部材)
31 :吐出口
31A :第1の吐出口
31B :第2の吐出口
31C :第3の吐出口
31D :第4の吐出口
34 :吐出口ボディ
34A :外壁面
34B :内壁面
67 :第2の循環流路(処理液供給ユニット)
69 :連通路
69B :分岐路
72b :側壁
80 :温度調整ユニット(温度変化ユニット)
P1 :処理位置
P2 :退避位置
:低温度(所定温度)
:熱平衡温度
W :基板
図1
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