(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記長手方向における前記補助補強部の両端のうち、前記第二位置側に位置する端は、前記第二位置よりも前記被接合部材から離れた位置にあることを特徴とする請求項1に記載の構造物。
一対の前記補助補強部の各々は、前記高さ方向において、仮想的に延長させた各々の前記傾斜部の前記傾斜面と前記フランジ部との間に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の構造物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、梁端部における強度の不連続変化を解消するための方法としては、特許文献1に記載された方法以外にも考えられる。例えば、梁端部における梁部材の強度が連続的に変わるように拡張部105を成形する代わりに、
図13に示すように梁端部101aにおいてウェブ部104の側面に補強リブ111を取り付けることが考えられる。
図13は、参考例に係る梁端部接合構造を示す斜視図である。
【0007】
参考例に係る梁端部接合構造では、
図13に示すように、補強リブ111が梁部材101の高さ方向において対称となるように上下一対配置されている。また、各補強リブ111は、接合箇所に向かうほどフランジ部に近付くように(換言すると、補強リブ間の隙間が広がるように)傾斜している。このような構成であれば、特許文献1のように梁端部における強度が連続的に変わるように拡張部105を成形する必要がない分、より簡単に、梁端部の強度の不連続変化を緩和させることが可能となる。
【0008】
また、上記の構成であれば、
図14に示すように、梁部材101において補強リブ111が設けられた範囲では、接合箇所に近付くにつれて強度が線形状に大きくなる。この結果、地震時に梁部材に荷重が掛かったとき、その荷重分布に応じて梁端部が変形(延伸)するようになり、地震時の荷重に対する梁端部の順応性(靱性)が確保されることになる。
【0009】
図14は、参考例に係る補強リブ111と梁部材101の強度分布との関係を示す図であり、
図14の上図は、梁部材101における強度分布を示し、横軸が接合箇所からの距離(位置)を示し、縦軸が強度を示している。
図14の下図は、参考例に係る梁部材101の側面図を示している。なお、
図14の下図には、各補強リブ111の後端部(接合箇所から離れている側の端部)を補強リブ111同士が交差する位置まで延ばした場合の各補強リブ111の形状を、破線にて図示している。また、
図14の上図には、各補強リブ111の後端部(接合箇所から離れている側の端部)を補強リブ111同士が交差する位置まで延ばした場合の強度分布を、破線にて図示している。
【0010】
ところで、上記の補強リブ111をウェブ部104の側面に取り付けると、
図14に示すように、梁端部101aの補強範囲における強度が補強リブ111の端位置(厳密には、接合箇所から離れている側の端位置であり、以下、便宜的に「後端位置」ともいう)を起点として変化する。
【0011】
梁部材のうち、強度変化の起点位置(補強リブ111の後端位置)に相当する部分には、地震時の荷重が梁部材に掛かった際に歪みが集中し易くなる。この結果、梁部材が起点位置に相当する部分にて破断してしまう虞がある。したがって、強度変化の起点位置に相当する部分での梁部材101の破断を抑える手段が必要となる。
【0012】
なお、上下一対の補強リブ111が各々の後端部にて互いに交差する場合、強度変化の起点位置は、
図14に示すように補強リブ111同士の交差位置(厳密には、補強リブ111同士が交差してなすV字状の角部の頂点位置)となる。この場合の起点位置は、理想的な起点位置であり、
図14に示すように当該起点位置から強度が緩やかに変化する。
【0013】
他方、上下一対の補強リブ111が交差せずに、互いに離間している場合が考えられる。この場合、強度変化の起点位置(すなわち、補強リブ111の後端位置)は、補強リブ111同士が交差している場合の交差位置よりも接合箇所に幾分近付いた位置となる。このようなケースにおいては、理想的な強度変化の起点位置(すなわち、補強リブ111同士の交差位置)を踏まえつつ、強度変化の起点位置での梁部材の破断を抑える必要がある。
【0014】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、長手方向端部が補強された梁部材において強度変化の起点位置で当該梁部材が破断してしまうのを抑制することが可能な構造物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題は、本発明の構造物によれば、(A)一対のフランジ部及びウェブ部を有する梁部材と、該梁部材の長手方向端部が接合される被接合部材と、を有する構造物であって、(B)前記長手方向端部に位置する前記フランジ部の側端から張り出すように設けられた拡張部と、(C)前記梁部材の長手方向において前記拡張部が設けられている範囲と隣り合う位置又は当該範囲と重なり合う位置に設けられ、前記長手方向に対して傾斜した状態で前記ウェブ部の側面から突出した一対の傾斜部と、(D)前記長手方向において、各々の前記傾斜部の両端のうち、前記被接合部材に近い第一端よりも、前記被接合部材から離れた第二端に近い位置に設けられた補助補強部と、を備え、(E)各々の前記傾斜部の、前記梁部材の高さ方向において前記フランジ部と対向する側の端面は、前記第一端から前記第二端に向かうにつれて前記ウェブ部の中央に近付くように傾斜した傾斜面をなしており、(F)前記長手方向において、前記第二端が在る位置を第一位置とし、各々の前記傾斜部の前記傾斜面を仮想的に延長させた際に前記傾斜面同士が交差する位置を第二位置としたときに、前記補助補強部は、前記第一位置から前記第二位置までの範囲に亘って存在していることにより解決される。
【0016】
上記のように構成された本発明の構造物では、梁部材のウェブ部の側面から突出した一対の傾斜部が設けられている。また、各傾斜部においてフランジ部と対向する側の端面は、梁部材と被接合部材との接合箇所から離れるにつれてウェブ部の中央に近付くように傾斜した傾斜面となっている。このような構成によれば、梁部材中、拡張部や傾斜部によって補強された範囲における強度の不連続変化が緩和される。
また、本発明の構造物では、各傾斜部の両端のうち、被接合部材に近い端(第一端)よりも被接合部材から離れた端(第二端)に近い位置に補助補強部が設けられている。ここで、梁部材の長手方向において傾斜部の第二端が在る位置を第一位置とし、各傾斜部の傾斜面を仮想的に延長させた際に傾斜面同士が交差する位置を第二位置としたときに、補助補強部は、第一位置から第二位置までの範囲に亘って存在している。このような構成であれば、梁部材中、実際の強度変化の起点位置(第一位置)から理想的な起点位置(第二位置)までの範囲に亘って強度を補助補強部によって高めることが可能となる。この結果、強度変化の起点に相当する部分での梁部材の破断が効果的に抑えられるようになる。
【0017】
また、上記の構造物に関してより好適な構成を述べると、前記長手方向における前記補助補強部の両端のうち、前記第二位置側に位置する端は、前記第二位置よりも前記被接合部材から離れた位置にあるとよい。
上記の構成では、梁部材の長手方向において第二位置を越える位置まで補助補強部が設けられている。このような構成であれば、梁部材中、理想的な強度変化の起点位置(第二位置)にある部分の強度を、より適切に確保することが可能となる。
【0018】
また、上記の構造物に関してより好適な構成を述べると、一対の前記傾斜部は、前記高さ方向において互いに離れた状態で、前記高さ方向における前記ウェブ部の中央を境にして対称となるように配置されており、前記補助補強部は、前記高さ方向における前記ウェブ部の中央を境にして対称となるように前記ウェブ部の側面に取り付けられているとよい。
上記の構成では、一対の傾斜部は、梁部材の高さ方向において互いに離れた状態で、ウェブ部の中央を境にして対称となるように配置されている。また、梁部材の高さ方向において補助補強部がウェブ部の中央を境にして対称となるようにウェブ部の側面に取り付けられている。このような構成であれば、補助補強部が一対の傾斜部の各々と対応させて設けられることになり、補助補強部による梁部材の補強がより適切になされるようになる。
【0019】
また、上記の構造物に関してより好適な構成を述べると、前記補助補強部は、前記ウェブ部の側面から突出しており、一対設けられているとよい。
上記の構成では、一対の補助補強部がウェブ部の側面から突出するように設けられている。このような構成であれば、補助補強部をウェブ部の中央を境にして対称となるように設けることが、より容易になる。
【0020】
また、上記の構造物に関してより好適な構成を述べると、一対の前記補助補強部の各々は、前記長手方向に沿って延出しているとよい。
上記の構成では、一対の補助補強部の各々が梁部材の長手方向に沿って延出している。このような構成であれば、第一位置から第二位置までの範囲において補助補強部を存在させることが、より容易になる。
【0021】
また、上記の構造物に関してより好適な構成を述べると、一対の前記補助補強部の各々は、前記高さ方向において、仮想的に延長させた各々の前記傾斜部の前記傾斜面と前記フランジ部との間に配置されているとよい。
上記の構成では、一対の補助補強部の各々が、ウェブ部において、傾斜部の傾斜面(厳密には、仮想的に延長させた傾斜面)とフランジ部との間に配置されている。このような構成であれば、傾斜面とフランジ部との間のスペースを利用して各補助補強部をウェブ部の側面に適切に取り付けることが可能となる。
【0022】
また、上記の構造物に関してより好適な構成を述べると、一対の前記補助補強部の各々は、一対の前記傾斜部のうち、対応する前記傾斜部と隣接して該傾斜部と連続しているとよい。
上記の構成では、各補助補強部が、対応する傾斜部と連続して一体化している。このような構成であれば、傾斜部と補助補強部が分離している場合と比較して、傾斜部及び補助補強部を取り扱い易くなる。
【0023】
また、上記の構造物に関してより好適な構成を述べると、互いに連続している前記傾斜部及び前記補助補強部は、一つのリブ部材によって構成されているとよい。
上記の構成では、互いに連続している傾斜部及び補助補強部が一つのリブ部材によって構成されている。このような構成であれば、傾斜部及び補助補強部が互いに別部材によって構成されている場合と比較して、部品点数がより少なくなる。
【0024】
また、上記の構造物に関してより好適な構成を述べると、前記高さ方向における前記拡張部の端面は、矩形形状であるとよい。
上記の構成では、拡張部が上面視で矩形形状となっている。このような構成であれば、ウェブ部に一対の傾斜部を取り付けることによる効果が、より有意義に発揮される。具体的に説明すると、拡張部が上面視で矩形形状となっている場合、拡張部の端位置において強度が著しく変化する。かかる構成では、梁端部における強度の不連続変化を緩和するという本発明の効果がより際立って発揮されるようになる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の構造物では、梁部材のうち、被接合部材に接合される側に位置する部分(梁端部)を拡張部や一対の傾斜部によって補強する。また、傾斜部の端位置(接合箇所から離れている側の端位置)から各傾斜部の傾斜面を仮想的に延長させた際に傾斜面同士が交差する位置までの範囲に亘って補助傾斜部が設けられている。この結果、強度変化の起点位置で梁端部が破断してしまうのを効果的に抑制することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明について具体例(第一実施形態〜第五実施形態)を挙げながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内で変更、改良され得る。また、当然ながら、本発明にはその等価物が含まれる。
【0028】
また、以下では、建物の躯体を構造物の一例として挙げ、当該躯体の構成について説明することとする。ただし、建物の躯体は、あくまでも構造体の一例に過ぎず、本発明は、建物の躯体以外の構造物、例えば設備据置用の架台や橋脚等にも適用可能である。
【0029】
また、以下の説明中、「長手方向」とは、後述する形鋼梁10の長手方向を意味し、「梁幅方向」とは、形鋼梁10の横幅方向を意味し、「高さ方向」とは、形鋼梁10の高さ方向(梁せい方向)を意味する。また、「断面」とは、特に断る場合を除き、長手方向を法線方向とする断面を意味する。また、本発明において、「強度」とは、曲げ強度(厳密には、全塑性モーメント)のことである。
【0030】
<<第一実施形態について>>
第一実施形態について
図1乃至
図5を参照しながら説明する。
図1は、第一実施形態に係る躯体(以下、躯体1)の梁端部接合構造を示す斜視図である。
図2及び
図3は、第一実施形態に係る梁部材(具体的には、形鋼梁10)の上面図及び側面図である。なお、梁部材の形状は、その長手方向中央を境にして対称形状であるため、
図2及び
図3では、梁部材中の長手方向一端側半分のみを図示している。
【0031】
図4は、後述する傾斜リブ15の配置位置に関するバリエーションを示す図であり、
図3と対応する図である。
図5は、後述する補助補強リブ16による効果についての説明図であり、補助補強リブ16を用いたときの梁端部10aの補強範囲における強度分布を示している。
図5の横軸は、接合箇所からの距離(位置)を示しており、縦軸は、強度を示している。なお、
図5には、地震時の荷重が形鋼梁10に掛かった際の梁端部10aでの荷重分布を、一点鎖線にて図示している。
【0032】
躯体1は、鉄骨造の構造物であり、H形鋼からなる梁部材(以下、形鋼梁10)を構成部材として有する。形鋼梁10は、上下一対のフランジ部11とウェブ部12とを有する。また、形鋼梁10の中には、
図1に示すように柱部材20に接合されるものがある。柱部材20は、被接合部材に相当し、例えば角筒型の鋼材からなる。そして、形鋼梁10は、その長手方向端部(以下、梁端部10a)にて柱部材20に接合される。
【0033】
形鋼梁10と柱部材20との接合様式については、公知の接合様式が利用可能であり、例えば
図1に示すように柱部材20の外表面に溶接された接合プレート21(具体的には、シアープレート)によって両部材を接合することが可能である。この接合方式を採用した場合には、接合プレート21に形鋼梁10が組み付けられている箇所(具体的には、ボルト留めされている箇所)が、形鋼梁10と柱部材20との接合箇所に該当する。
【0034】
また、柱部材20の外表面に形鋼梁10の長手方向端面を突き当てて形鋼梁10を柱部材20に溶接してもよい。この接合方式を採用した場合には、柱部材20の外表面に形鋼梁10が溶接されている箇所が、形鋼梁10と柱部材20との接合箇所に該当する。
【0035】
第一実施形態に係る躯体1では、
図1に図示の梁端部接合構造が採用されている。この梁端部接合構造によれば、形鋼梁10と柱部材20との接合箇所(以下、単に「接合箇所」という)での応力発生を軽減すると共に、形鋼梁10の所定部位(具体的には、後述する拡張部14の端位置)における歪みの集中を抑制することが可能となる。以下、第一実施形態に係る梁端部接合構造について詳しく説明する。
【0036】
第一実施形態に係る梁端部接合構造では、地面に対して略鉛直に立設された柱部材20に対して、略水平に置かれた形鋼梁10の梁端部10aが接合される。例えば、前述したように、柱部材20の外表面に溶接された接合プレート21に形鋼梁10のウェブ部12の端部(長手方向において柱部材20側に位置する端部)を重ね合わせ、両者をボルト留めする。これにより、形鋼梁10が柱部材20に剛接合される。なお、
図1に示すようにウェブ部12の端部の隅角部にはスカラップ13が形成されている。
【0037】
また、
図1に示すように、柱部材20の外表面において、鉛直方向において接合プレート21を挟む位置に上下一対のダイヤフラム22が設けられている。形鋼梁10が柱部材20に接合された状態では、形鋼梁10のフランジ部11が、鉛直方向においてダイヤフラム22の厚みの範囲内に収まっている。
【0038】
以上の接合様式では、地震により形鋼梁10に荷重(外力)が掛かった際に、接合箇所において形鋼梁10の仕口部(梁端部10a)が破断する虞がある。そのため、第一実施形態では、梁端部10aに位置する上下一対のフランジ部11の各々に拡張部14が設けられている。この拡張部14は、梁端部10aの横幅を拡張させる鋼材であり、梁端部10aに位置する各フランジ部11の両側端から梁幅方向外側に向かって略水平に張り出している。
【0039】
拡張部14について
図2を参照しながら説明すると、拡張部14は、上面視で矩形形状であり、換言すると、高さ方向における拡張部14の端面は、矩形形状の平面となっている。また、拡張部14は、長手方向において幾分長く延出しており、例えば、ウェブ部12において接合プレート21と重ね合わせられる部分の長さよりも幾分長くなっている。また、拡張部14は、梁端部10aに位置する各フランジ部11の両側端に溶接、厳密には完全溶け込み溶接にて取り付けられている。
【0040】
なお、拡張部14の形状については、特に限定されるものではなく、上面視で三角形状、台形状、側端が半円状に切り欠かれた矩形状、若しくはこれら以外の形状であってもよい。
【0041】
梁端部10aに拡張部14を設けて梁端部10aを拡幅することで、接合箇所における形鋼梁10の断面積を増やすことができ、これにより形鋼梁10の仕口部(梁端部10a)の破断を防止することが可能となる。
【0042】
しかし、拡張部14を設けると、拡張部14の端位置(厳密には、接合箇所からより離れている側の端位置)において形鋼梁10の断面性能が著しく変化するために、拡張部14の端位置にて形鋼梁10の強度が不連続に変化してしまう。特に、拡張部14が上方視で矩形形状である場合には、強度の不連続変化が顕著となる。このように強度が不連続に変化している梁端部10aに対して荷重(地震によって生じる外力)が掛かると、拡張部14の端位置においてフランジ部11に応力が集中してしまう。さらに、応力が集中する部位には歪みが生じ、最終的には形鋼梁10が歪み発生箇所にて破断する可能性がある。
【0043】
そこで、第一実施形態では、梁端部10a(厳密には、梁端部10aのうち、拡張部14によって補強された範囲)での強度の不連続変化を緩和する手段として、
図1や
図3に図示の傾斜リブ15を形鋼梁10のウェブ部12の側面に取り付けている。以下、
図3を参照しながら傾斜リブ15について説明する。なお、以降では、説明の便宜上、接合箇所により近い側を「前側」とし、接合箇所からより離れている側を「後側」とする。
【0044】
傾斜リブ15は、傾斜部に相当し、梁端部10aにおいてウェブ部12の側面から梁幅方向外側に向かって略水平に突出した補強リブである。傾斜リブ15は、若干の厚みを有する平鋼からなり、上面視で長手方向に長い矩形状をなしている。つまり、傾斜リブ15は、長手方向に沿って長く延出している。
【0045】
なお、第一実施形態、並びに以降で説明する実施形態のうち、傾斜リブ15が用いられる実施形態では、
図3に示すように側面視で平行四辺形(厳密には、方形以外の平行四辺形)の形状をなす鋼板によって傾斜リブ15が構成されていることとする。ただし、これに限定されるものではなく、傾斜リブ15を実際に製作する上では、側方視で長方形状の鋼板によって傾斜リブ15を構成してもよい。
【0046】
傾斜リブ15は、形鋼梁10とは別部材からなり、形鋼梁10のウェブ部12の側面に溶接にて固定されている。第一実施形態では、ウェブ部12の両側面(梁幅方向における両端面)の各々に傾斜リブ15が対称的に固定されている。
【0047】
また、傾斜リブ15の前端位置は、長手方向において拡張部14の端位置(厳密には、後側の端位置)と略同じ位置にある。換言すると、傾斜リブ15は、長手方向において拡張部14が設けられている範囲と隣り合う位置に設けられている。ただし、これに限定されるものではなく、
図4に示すように、傾斜リブ15は、長手方向において拡張部14が設けられている範囲と重なり合う位置(具体的には、傾斜リブ15の前端が拡張部14の後側の端位置よりも前方に配置されるような位置)に設けられてもよい。
【0048】
また、傾斜リブ15は、長手方向に傾斜した状態でウェブ部12の側面に固定されている。具体的に説明すると、傾斜リブ15は、その前端から後端に向かうにつれてウェブ部12の高さ方向中央に徐々に近付くように傾斜した状態で固定されている。換言すると、高さ方向においてフランジ部11と対向する側に位置する傾斜リブ15の端面(以下、フランジ部対向面15a)は、傾斜リブ15の前端から後端に向かうにつれてウェブ部12の高さ方向中央に近付くように傾斜した傾斜面をなしている。
【0049】
ここで、ウェブ部12の高さ方向中央とは、ウェブ部12を側方から見たときの中立軸の位置(
図3中、一点鎖線にて示す位置)に相当する。また、長手方向における傾斜リブ15の両端のうち、前端は、柱部材20に近い第一端に相当し、後端は、柱部材20から離れた第二端に相当する。
【0050】
また、傾斜リブ15は、
図3に示すように上下一対設けられている。より具体的に説明すると、ウェブ部12の両側面のうち、少なくとも一方の側面に一対の傾斜リブ15が固定されている。一対の傾斜リブ15は、高さ方向において互いに離れた状態にあり、また、ウェブ部12の高さ方向中央を境にして上下対称となるように配置されている。すなわち、上方の傾斜リブ15は、長手方向において下方の傾斜リブ15と同じ位置に配置されており、高さ方向において中立軸を挟んで下方の傾斜リブ15とは反対側に位置している。
【0051】
また、各傾斜リブ15は、上述のように傾斜した状態でウェブ部12の側面に固定されている。具体的に説明すると、上下一対の傾斜リブ15は、傾斜リブ15間の隙間が接合箇所に近付くにつれて漸次的に(厳密には、線形状に)増加するように傾斜している。
【0052】
以上の傾斜リブ15が梁端部10aにおいてウェブ部12の側面に固定されることにより、梁端部10aにおける強度の不連続変化を緩和することが可能となる。
【0053】
具体的に説明すると、前述したように、上下一対の傾斜リブ15の各々が傾斜しており、傾斜リブ15間の隙間が接合箇所に近付くにつれて漸次的に増加している。これにより、形鋼梁10の断面性能が傾斜リブ15の後端から接合箇所に向かって徐々に大きくなり、これに伴って、梁端部10aの強度も傾斜リブ15の後端から接合箇所に向かって線形状に増加する。以上により、梁端部10aにおける強度の不連続変化が緩和されるようになる。この効果は、発明が解決しようとする課題の項で既に説明した内容であり、既出の
図14からも明らかである。
【0054】
また、上記の傾斜リブ15をウェブ部12の側面に固定する方法であれば、梁端部10aの補強範囲(拡張部14や傾斜リブ15を設けることで補強された範囲)における強度の不連続変化を、比較的簡単に緩和することが可能である。
【0055】
さらに、梁端部10aの補強範囲において強度が線形状に変化している領域(以下、対応領域)では、地震時に形鋼梁10に掛かる荷重に対する順応性(靱性)が備わるようになる。
図5を参照しながら説明すると、地震時に形鋼梁10に掛かる荷重の大きさ(厳密には、荷重が周期的に変動する際の振幅)は、
図5に示すように、接合箇所に近付くにつれて大きくなるように線形状に変化する。一方、対応領域では強度が線形状に変化している。これにより、地震が発生したとき、形鋼梁10の梁端部10aのうち、対応領域内に相当する部分は、同領域における荷重分布に順応しながら変形(延伸)し得ることになる。
【0056】
以上までに説明してきたように、傾斜リブ15がウェブ部12の側面に固定されることで、梁端部10aの補強範囲における強度の不連続変化を解消すると共に、地震時の荷重に対する梁端部10aの順応性(靱性)を確保することが可能となる。
【0057】
なお、傾斜リブ15の形状(具体的には、ウェブ部12の側面からの突出量や長手方向における長さ)、傾斜角度及び配置位置については、形鋼梁10の材質や躯体1の要求仕様を踏まえつつ、上記の効果を得るのに適した値であることが望ましい。
【0058】
一方、傾斜リブ15をウェブ部12の側面に取り付けると、
図5に示すように、梁端部10aの補強範囲における強度が傾斜リブ15の後端位置を起点として変化する。なお、
図5では、長手方向において傾斜リブ15の後端が在る位置を「第一位置」と表記しており、以下の説明においても同様とする。
【0059】
形鋼梁10のうち、強度変化の起点位置に相当する部分には、地震時の荷重が形鋼梁10に掛かった際に歪みが集中し易くなる。このため、起点位置に相当する部分にて形鋼梁10が破断してしまう虞がある。
【0060】
そこで、第一実施形態では、強度変化の起点位置に相当する部分での形鋼梁10の破断を抑える手段として、
図1や
図3に図示の補助補強リブ16をウェブ部12の側面に取り付けている。以下、
図3を参照しながら補助補強リブ16について説明する。
【0061】
補助補強リブ16は、補助補強部に相当し、梁端部10aの補強範囲において強度変化の起点位置に相当する部分及びその周辺部分を補強するリブである。補助補強リブ16は、
図3に示すように、長手方向において傾斜リブ15の前端及び後端のうち、後端により近い位置に設けられている。より詳しく説明すると、補助補強リブ16は、
図3に示すように、補助補強リブ16の前端部と傾斜リブ15の後端部とが上下に並ぶように配置されている。
【0062】
また、補助補強リブ16は、形鋼梁10とは別部材からなり、梁端部10aにおいてウェブ部12の側面から梁幅方向外側に向かって略水平に突出した状態でウェブ部12の側面に溶接にて固定されている。具体的に説明すると、ウェブ部12の両側面(梁幅方向における両端面)のうち、少なくとも一方の側面に補助補強リブ16が固定されている。
【0063】
ここで、補助補強リブ16の突出量(梁幅方向における長さ)については、強度変化の起点位置に相当する部分での形鋼梁10の破断を抑えるのに好適な量とするのが望ましい。より具体的には、傾斜リブ15の突出量、傾斜リブ15と傾斜リブ15との位置関係、及び傾斜リブ15及び補助補強リブ16の各々の厚み等を考慮して、補助補強リブ16の突出量が最適な量に決められるのが好適である。
【0064】
補助補強リブ16は、若干の厚みを有する平鋼からなり、上面視で長手方向に長い矩形状をなしている。つまり、補助補強リブ16は、長手方向に沿って長く延出している。また、補助補強リブ16は、
図3に示すように、傾斜リブ15と対応するように上下一対設けられている。より具体的に説明すると、ウェブ部12において傾斜リブ15が固定されている側面に一対の補助補強リブ16が固定されている。一対の補助補強リブ16は、高さ方向において離れた状態にあり、ウェブ部12の高さ方向中央を境にして上下対称となるように配置されている。すなわち、上方の補助補強リブ16は、長手方向において下方の補助補強リブ16と同じ位置に配置されており、高さ方向において中立軸を挟んで下方の補助補強リブ16とは反対側に位置している。
【0065】
また、上下一対の補助補強リブ16の各々は、高さ方向において、対応する傾斜リブ15(上下一対の傾斜リブ15のうち、より近い方の傾斜リブ15)のフランジ部対向面15aとフランジ部11との間に配置されている。より厳密に説明すると、
図3に示すように、各補助補強リブ16は、高さ方向において、仮想的に延長させた各傾斜リブ15のフランジ部対向面15a(傾斜面)とフランジ部11との間に配置されている。なお、
図3では、フランジ部対向面15aのうち、仮想的に延長させた部分を破線にて図示している。
【0066】
また、各補助補強リブ16は、対応する傾斜リブ15とは別部材をなし、当該傾斜リブ15から若干離間した位置に設けられている。
【0067】
そして、上下一対の補助補強リブ16は、互いに平行に配置されており、第一実施形態では長手方向に沿って直線状に延出している。また、各補助補強リブ16の前端は、
図3に示すように、長手方向において第一位置(傾斜リブ15の後端が在る位置)よりも前側に位置している。また、各補助補強リブ16の後端は、
図3に示すように、長手方向において、各傾斜リブ15のフランジ部対向面15aを仮想的に延長させた際にフランジ部対向面15a同士が交差する位置(
図3中、記号Pにて示す位置)よりも後側に位置している。以下では、フランジ部対向面15a同士が交差する位置Pを「第二位置」と呼ぶこととする。
【0068】
以上のように、各補助補強リブ16は、長手方向において第一位置から第二位置までの範囲に亘って存在している。特に、第一実施形態において、各補助補強リブ16の後端(第二位置側に位置する端)は、第二位置よりも後側(すなわち、柱部材20から離れた位置)に在り、各補助補強リブ16の前端(第一位置側に位置する端)は、第一位置よりも前側(すなわち、柱部材20により近い位置)に在る。
【0069】
以上のような補助補強リブ16が梁端部10aにおいてウェブ部12の側面に取り付けられていることにより、
図5に示すように、補助補強リブ16が設けられている範囲において強度(
図5中、太線の実線にて図示)が一段と高められることになる。具体的に説明すると、
図5から分かるように、補助補強リブ16が設けられている範囲における強度変化は、補助補強リブ16を設けない場合の強度変化(
図5中、細実線にて図示)を、補助補強リブ16に応じた増加分だけ上方にシフトさせたものとなっている。
【0070】
また、
図5から分かるように、補助補強リブ16によって強度が高められる範囲には、第一位置から第二位置までの範囲が含まれている。すなわち、傾斜リブ15をウェブ部12の側面に取り付けたときの強度変化の起点となる位置(換言すると、第一位置)及びその周辺において、十分な強度が確保される。これにより、強度変化の起点位置に相当する部分での形鋼梁10の破断が抑制されることになる。
【0071】
補助補強リブ16による効果について付言しておくと、補助補強リブ16が設けられている範囲は、長手方向において第二位置を含むように設定されている。ここで、第二位置は、前述したように、各傾斜リブ15のフランジ部対向面15aを仮想的に延長させた際にフランジ部対向面15a同士が交差する位置である。この第二位置まで各傾斜リブ15の後端部が仮に延出していると(つまり、傾斜リブ15同士が交差していると)、第二位置を起点として強度が変化することになる。そして、
図5から明らかなように、第二位置を起点として強度が変化する場合には、それ以外の位置(厳密には、第二位置よりも接合箇所に近い位置)に起点がある場合に比較して、起点位置での強度の変化度合いが緩やかになる。かかる意味で、第二位置は、理想的な強度変化の起点位置であると言える。
【0072】
一方、第一実施形態では、傾斜リブ15の後端が第二位置まで達しておらず、第二位置よりも幾分接合箇所に近い位置にある。かかる場合において、傾斜リブ15の後端位置(すなわち、第一位置)が実際の強度変化の起点位置となる。
【0073】
そして、第一実施形態では、実際の強度変化の起点位置である第一位置から理想的な起点位置である第二位置までの範囲に亘って補助補強リブ16が存在し、これにより当該範囲において強度が更に高められる。以上により、傾斜リブ15が理想的な強度変化の起点位置(第二位置)まで延びていない構成であっても、強度変化の起点位置に相当する部分での形鋼梁10の破断を抑制することが可能である。
【0074】
なお、第一実施形態では、補助補強リブ16の前端が長手方向において傾斜リブ15の後端位置(すなわち、第一位置)よりも前側に位置していることとしたが、これに限定されるものではない。例えば、長手方向において補助補強リブ16の前端位置が傾斜リブ15の後端位置と同一位置であってもよい。
【0075】
<<第二実施形態について>>
第一実施形態では、
図3に示すように、傾斜リブ15と補助補強リブ16とが互いに分離していることとした。ただし、これに限定されるものではなく、第一実施形態に係る傾斜リブ15に相当する部分と、補助補強リブ16に相当する部分とが一体化して連続していてもよい。このような実施形態(第二実施形態)について
図6A及び
図6Bを参照しながら説明する。
図6A及び
図6Bは、第二実施形態に係る形鋼梁10の側面図である。なお、第二実施形態に係る形鋼梁10の形状は、その長手方向中央を境にして対称形状であるため、
図6A及び
図6Bでは、梁部材中の長手方向一端側半分のみを図示している。
【0076】
また、以下では、第二実施形態のうち、第一実施形態と相違する構成のみを説明することとする。また、
図6A及び
図6Bのそれぞれにおいて、第一実施形態と共通する部材には、第一実施形態と同じ符号(具体的には
図3中に記載された符号)が付されている。
【0077】
第二実施形態としては、
図6Aに図示の例(第一例)と、
図6Bに図示の例(第二例)が挙げられる。第一例及び第二例では、
図6A及び
図6Bに示すように、上下一対のリブ部材30が梁端部10aにおいてウェブ部12の側面に固定(溶接)されている。上下一対のリブ部材30は、ウェブ部12の高さ方向中央を境にして上下対称となるようにウェブ部12の側面に固定されている。また、各リブ部材30は、長手方向中途位置で屈曲しており、屈曲箇所より前側(接合箇所に近い側)に位置する傾斜部30aと、屈曲箇所より後側(接合箇所から離れた側)に位置する水平部30bと、を有する。
【0078】
傾斜部30aは、第一実施形態に係る傾斜リブ15に相当する部分であり、傾斜リブ15と同様の形状を有し、傾斜リブ15と同じ傾斜角度にて傾斜し、梁端部10aにおいて傾斜リブ15と同じ位置に配置されている。水平部30bは、第二実施形態に係る補助補強部に該当し、長手方向に沿って延出している。また、水平部30bは、第一実施形態に係る補助補強リブ16と同じ機能を有する。なお、水平部30bの突出量(梁幅方向における長さ)は、傾斜部30aの突出量や傾斜部30a及び水平部30bの各々の厚みに応じて適切な量に設定されている。
【0079】
一方、上下一対のリブ部材30の各々に備えられた水平部30bは、対応する傾斜部30a(厳密には、同じリブ部材30に属する傾斜部30a)と隣接して当該傾斜部30aと連続している。より詳しく説明すると、第二実施形態では、傾斜リブ15に相当する傾斜部30aと、補助補強リブ16に相当する水平部30bとが互いに連続しており、かつ、一つのリブ部材30によって構成されている。このような構成であれば、傾斜リブ15及び補助補強リブ16が分離している構成と比較して、補強部材(具体的には、リブ部材30)が取り扱い易くなり、部品点数がより少なくなる。
【0080】
また、第二実施形態の第一例及び第二例では、傾斜部30aと水平部30bとの境界(すなわち、リブ部材30の屈曲点)が在る位置が第一位置に相当する。また、各傾斜部30a中、フランジ部11と対向する側の端面は、傾斜面をなしており、当該傾斜面を仮想的に延長した際に傾斜面同士が交差する位置(
図6A中、記号Pにて示す位置)が第二位置に相当する。
【0081】
そして、第二実施形態の第一例及び第二例では、補助補強部としての水平部30bが長手方向において第一位置から延出し、第二位置よりも後側まで延出している。つまり、水平部30bの前端(換言すると、リブ部材30の屈曲点)は、長手方向において第一位置と同じ位置に在り、水平部30bの後端は、第二位置よりも後側(柱部材20から離れた位置)に在る。
【0082】
以上の点において第二実施形態に係る形鋼梁10は、第一実施形態に係る形鋼梁10と相違するが、それ以外の構成については、第一実施形態に係る形鋼梁10と共通する。すなわち、第二実施形態においても、補助補強部(具体的には水平部30b)を設けることで、強度変化の起点位置に相当する部分での形鋼梁10の破断を抑制することが可能となる。
【0083】
また、第二実施形態の第二例では、第一例の構成に加えて、各リブ部材30における屈曲部分に嵌合している補強部(以下、嵌合補強部31)が更に設けられている。嵌合補強部31は、
図6Bに示すように側面視で略楔状の金属片であり、嵌合補強部31の角部がリブ部材30の屈曲部分に嵌合した状態でリブ部材30に溶接されている。嵌合補強部31が設けられていることで、リブ部材30中、水平部30bが補強される。これにより、地震時の荷重が形鋼梁10に掛かった際に水平部30bが傾斜部30aよりも先に壊れてしまうのを抑制することが可能となる。
【0084】
より詳しく説明すると、第二実施形態では、前述したように傾斜部と補助補強部とが一つの部材(具体的にはリブ部材30)によって構成されているため、傾斜部及び補助補強部(具体的には、傾斜部30a及び水平部30b)の各々の厚みが略均一である。ただし、高さ方向(梁せい方向)にて傾斜部30a及び水平部30bの各々の厚みを見ると、傾斜部30a各部の厚みは、傾斜している分、水平部30b各部の厚みよりも大きくなる。このため、傾斜部30aは、強度上、水平部30bよりも有利になり、地震時の荷重が形鋼梁10に掛かった場合には水平部30bよりも壊れ難くなる。このような構成において水平部30bが嵌合補強部31によって補強されると、水平部30bが傾斜部30aよりも壊れ難くなる。この結果、地震時の荷重が形鋼梁10に掛かった場合には、形鋼梁10において傾斜部30aが設けられている部分から先に破断させることが可能となる。
【0085】
<<第三実施形態について>>
第一実施形態では、
図3に示すように、補助補強部としての補助補強リブ16が上下一対設けられており、互いに分離していることとした。ただし、これに限定されるものではなく、第一実施形態に係る補助補強リブ16に相当する部分が、ウェブ部12の高さ方向中央を境にして上下対称に設けられ、かつ、一体化して連続していてもよい。このような実施形態(第三実施形態)について
図7A及び
図7Bを参照しながら説明する。
図7A及び
図7Bは、第三実施形態に係る形鋼梁10の側面図である。なお、第三実施形態に係る形鋼梁10の形状は、その長手方向中央を境にして対称形状であるため、
図7A及び
図7Bでは、梁部材中の長手方向一端側半分のみを図示している。
【0086】
また、以下では、第三実施形態のうち、第一実施形態と相違する構成のみを説明することとする。また、
図7A及び
図7B中、第一実施形態と共通する部材には、第一実施形態と同じ符号(具体的には
図3中に記載された符号)が付されている。
【0087】
第三実施形態としては、
図7Aに図示の例(第一例)と、
図7Bに図示の例(第二例)が挙げられる。第一例及び第二例では、
図7A及び
図7Bに示すように、第一実施形態と同様、上下一対の傾斜リブ15が梁端部10aにおいてウェブ部12の側面に固定(溶接)されている。また、各傾斜リブ15の形状、傾斜角度及び配置位置は、第一実施形態の場合と同様である。
【0088】
一方、第三実施形態の第一例では、第一実施形態で採用された補助補強リブ16の代わりに、L字形の補助補強アングル40がウェブ部12の側面に固定されている。補助補強アングル40は、
図7Aに示すように、互いに長さが等しく、かつ、直交した2つの延出部(以下、上側延出部40a及び下側延出部40b)によって構成されている。第三実施例の第一例では、補助補強アングル40の上側延出部40a及び下側延出部40bが補助補強部を構成している。なお、上側延出部40a及び下側延出部40bの各々の突出量(梁幅方向における長さ)は、傾斜リブ15の突出量や傾斜リブ15、上側延出部40a及び下側延出部40bの各々の厚みに応じて適切な量に設定されている。
【0089】
上側延出部40a及び下側延出部40bは、長手方向において傾斜リブ15の後端により近い位置に設けられており、より具体的には、それぞれの前端部が傾斜リブ15の後端部と上下に並ぶように配置されている。
【0090】
また、上側延出部40a及び下側延出部40bは、ウェブ部12の高さ方向中央を境にして上下対称となるように配置されている。具体的に説明すると、
図7Aに示すように、補助補強アングル40の頂部(上側延出部40aと下側延出部40bとの連結点)がウェブ部12の高さ方向中央に位置し、かつ、上側延出部40a及び下側延出部40bの双方が中立軸に対して略45度傾斜するように補助補強アングル40が配置されている。
【0091】
また、第三実施形態の第一例において、上側延出部40a及び下側延出部40bの各々は、長手方向において各傾斜リブ15の後端位置(すなわち、第一位置)よりも幾分前側から延出し、仮想的に延長させた各傾斜リブ15のフランジ部対向面15aが交差する位置(第二位置であり、
図7A中、記号Pにて示す位置)よりも後側まで延びている。
【0092】
第三実施形態の第二例では、略C字状の補助補強チャンネル41がウェブ部12の側面に固定されている。補助補強チャンネル41は、
図7Bに示すように、上下一対の水平延出部41aと、水平延出部41aの後端部同士を連結している連結部41bとを有する。そして、第三実施形態の第二例では、上下一対の水平延出部41aが補助補強部をなしている。なお、各水平延出部41aの突出量(梁幅方向における長さ)は、傾斜リブ15の突出量や傾斜リブ15及び水平延出部41aの各々の厚みに応じて適切な量に設定されている。
【0093】
上下一対の水平延出部41aは、長手方向に沿って延出しており、長手方向において傾斜リブ15の後端により近い位置に設けられている。より具体的に説明すると、各水平延出部41aは、その前端部が傾斜リブ15の後端部と上下に並ぶように配置されている。また、上下一対の水平延出部41aは、ウェブ部12の高さ方向中央を境にして上下対称に配置されている。また、上下一対の水平延出部41aは、高さ方向において互いに離れた状態で並んでいる。
【0094】
連結部41bは、水平延出部41aと交差するように高さ方向に沿って延出しており、上下一対の水平延出部41aの後端部同士を連結している。この連結部41bの手前位置には、各傾斜リブ15のフランジ部対向面15aの交差点(
図7B中、記号Pと表記)が存在する。すなわち、第三実施形態の第二例では、上下一対の水平延出部41aの各々が、長手方向において各傾斜リブ15の後端位置(すなわち、第一位置)よりも幾分前側から延出し、各傾斜リブ15のフランジ部対向面15aが交差する位置(すなわち、第二位置)よりも後側まで延びている。
【0095】
以上のように、第三実施形態では、上下一対の補助補強部が連続しており、かつ、一つの部材(具体的には補助補強アングル40や補助補強チャンネル41)によって構成されている。かかる点において、第三実施形態に係る形鋼梁10は、第一実施形態に係る形鋼梁10と相違するが、それ以外の構成については、第一実施形態に係る形鋼梁10と共通する。すなわち、第三実施形態においても、補助補強部(具体的には、第一例における上側延出部40a及び下側延出部40b、あるいは第二例における上下一対の水平延出部41a)が設けられていることで、強度変化の起点位置に相当する部分での形鋼梁10の破断を抑制することが可能となる。
【0096】
<<第四実施形態について>>
第一実施形態では、
図3に示すように、補助補強部としての補助補強リブ16が形鋼梁10のウェブ部12の側面から突出していることとした。ただし、これに限定されるものではなく、第一実施形態に係る補助補強リブ16に相当する部分が、ウェブ部12の側面以外の場所に取り付けられていてもよい。このような実施形態(第四実施形態)について
図8を参照しながら説明する。
図8は、第四実施形態に係る形鋼梁10を示す図であり、同図の(a)が側面図であり、(b)が上面図である。なお、第四実施形態に係る形鋼梁10の形状は、その長手方向中央を境にして対称形状であるため、
図8の(a)及び(b)では、梁部材中の長手方向一端側半分のみを図示している。
【0097】
また、以下では、第四実施形態のうち、第一実施形態と相違する構成のみを説明することとする。また、
図8の(a)及び(b)中、第一実施形態と共通する部材には、第一実施形態と同じ符号(具体的には
図3中に記載された符号)が付されている。
【0098】
第四実施形態では、
図8の(a)に示すように、第一実施形態と同様、上下一対の傾斜リブ15が梁端部10aにおいてウェブ部12の側面に固定(溶接)されている。また、各傾斜リブ15の形状、傾斜角度及び配置位置は、第一実施形態の場合と同様である。
【0099】
一方、第四実施形態では、
図8の(a)及び(b)に示すように、補助補強部としての補助補強プレート50がウェブ部12の側面ではなく、拡張部14と同じようにフランジ部11の両側端に固定されている。補助補強プレート50は、フランジ部11の側端から梁幅方向外側に略水平に突出した平鋼であり、上面視で、長手方向に長く延びた矩形形状をなしている。なお、補助補強プレート50の突出量(梁幅方向における長さ)は、傾斜リブ15の突出量や傾斜リブ15及び補助補強プレート50の各々の厚みに応じて適切な量に設定されている。
【0100】
また、
図8の(a)に示すように、補助補強プレート50は、ウェブ部12の高さ方向中央を境にして上下対称に設けられている。すなわち、上側のフランジ部11に固定された補助補強プレート50は、長手方向において、下側のフランジ部11に固定された補助補強プレート50と同じ位置に配置されている。
【0101】
また、上下一対の補助補強プレート50の各々は、長手方向において各傾斜リブ15の後端位置(すなわち、第一位置)よりも幾分前側から延出し、仮想的に延長させた各傾斜リブ15のフランジ部対向面15aが交差する位置(第二位置であり、
図8の(a)中、記号Pにて示す位置)よりも後側まで延びている。
【0102】
以上のように、第四実施形態では、補助補強部としての補助補強プレート50がウェブ部12の側面ではなくフランジ部11の側端に固定されている。かかる点において、第四実施形態に係る形鋼梁10は、第一実施形態に係る形鋼梁10と相違するが、それ以外の構成については、第一実施形態に係る形鋼梁10と共通する。すなわち、第四実施形態においても、補助補強部(具体的には補助補強プレート50)を設けることで、強度変化の起点位置に相当する部分での形鋼梁10の破断を抑制することが可能となる。
【0103】
なお、上述したケースでは、補助補強プレート50がフランジ部11の側端に固定されていることとしたが、これに限定されるものではない。例えば、高さ方向におけるフランジ部11の端面(具体的には、上側のフランジ部11の上端面、及び下側のフランジ部11の下端面)に補助補強プレート50が固定されてもよい。あるいは、フランジ部11においてウェブ部12の両脇位置にある部分に補助補強プレート50が固定されてもよい。
【0104】
<<第五実施形態について>>
第一実施形態では、傾斜リブ15の突出量(梁幅方向における長さ)が、傾斜リブ15の前端から後端に亘って一定であることとした。ただし、これに限定されるものではなく、傾斜部に相当する部分の突出量が一定ではなく、例えば後端に向かうにしたがって漸次的に小さくなってもよい。このような実施形態(第五実施形態)について
図9、
図10、
図11A及び
図11Bを参照しながら説明する。
図9、
図10及び
図11Aは、第五実施形態に係る形鋼梁10を示す斜視図であり、特に、傾斜部に相当する部分を拡大した図である。
図11Bは、第五実施形態に係る傾斜部及び補助補強部(厳密には、
図11Aに図示のリブ部材80)を上方から見た図である。
【0105】
また、以下では、第五実施形態のうち、第一実施形態と相違する構成のみを説明することとする。また、
図9に図示の実施例(第一例)は、第一実施形態と類似している。このため、
図9中、第一実施形態と共通する部材には、第一実施形態と同じ符号(具体的には
図3中に記載された符号)が付されている。
【0106】
また、
図10に図示の実施例(第二例)、及び、
図11Aに図示の実施例(第三例)は、第二実施形態と類似している。このため、
図10及び
図11A中、第二実施形態と共通する部材には、第二実施形態と同じ符号(具体的には
図6中に記載された符号)が付されている。
【0107】
第五実施形態では、傾斜部の突出量が傾斜部の前端から後端に向かって徐々に減少する。具体的に説明すると、
図9に図示した第一例に係る傾斜リブ65は、第一例の傾斜部に相当し、上面視で略台形状となっている。より詳しく説明すると、傾斜リブ65の突出量は、傾斜リブ65の前端から後端に向かって線形状に減少している。なお、傾斜リブ65は、ウェブ部12の高さ方向中央を境にして上下対称となるようにウェブ部12の側面に固定されている。各傾斜リブ65の長手方向における長さ、配置位置及び傾斜角度は、第一実施形態に係る傾斜リブ15と同様である。
【0108】
以上の傾斜リブ65がウェブ部12の側面に固定されることにより、梁端部10aにおいて傾斜リブ65によって補強される範囲では、強度がより緩やかに変化するようになる。
【0109】
図10に図示した第二例について説明すると、第二例では、
図6に図示した第二実施形態と同様、上下一対のリブ部材30が梁端部10aにおいてウェブ部12の側面に固定(溶接)されている。各リブ部材30は、傾斜部70aと水平部30bとを有する。傾斜部70aは、水平部30bと連続している。すなわち、第二例では、傾斜部70aと補助補強部としての水平部30bとが一つのリブ部材30によって構成されている。また、傾斜部70aの長手方向における長さ、配置位置及び傾斜角度は、第二実施形態に係る傾斜部30aと同様である。
【0110】
また、傾斜部70aは、上面視で略台形状となっている。より詳しく説明すると、傾斜部70aの突出量は、傾斜部70aの前端から後端に向かって線形状に減少している。このような傾斜部70aが設けられていることにより、梁端部10aにおいて傾斜部70aによって補強される範囲では、強度がより緩やかに変化するようになる。
【0111】
図11A及び
図11Bに図示した第三例について説明すると、第三例では、
図11Aに示すように、上下一対のリブ部材80がウェブ部12の高さ方向中央を境にして上下対称となるようにウェブ部12の側面に固定されている。また、各リブ部材80は、長手方向において連続する2つの部分を有し、具体的には、より前側に位置する前側傾斜部80aと、より後側に位置する後側傾斜部80bと、を有する。
【0112】
前側傾斜部80aは、第三例において傾斜部として機能し、第二例の傾斜部70aと同様の形状をなし、かつ、第二例の傾斜部70aと同じ傾斜角度にて傾斜している。前側傾斜部80aは、上方視で略台形状をなしている。つまり、前側傾斜部80aの突出量は、
図11Bに示すように、前側傾斜部80aの前端から後端に向かって線形状に減少している。このような前側傾斜部80aが設けられていることにより、梁端部10aにおいて前側傾斜部80aによって補強される範囲では、強度がより緩やかに変化するようになる。
【0113】
後側傾斜部80bは、第三例において補助補強部として機能し、前側傾斜部80aと連続している。すなわち、第三例では、傾斜部としての前側傾斜部80aと、補助補強部としての後側傾斜部80bとが一つのリブ部材80によって構成されている。後側傾斜部80bは、上方視で略長方形状をなしている。つまり、後側傾斜部80bの突出量は、
図11Bに示すように、後側傾斜部80bの前端から後端に亘って略一定である。また、後側傾斜部80bは、前側傾斜部80aと同じ傾斜角度にて傾斜している。つまり、後側傾斜部80bは、前側傾斜部80aと同様、後端に向かうほどウェブ部12の高さ方向中央(中立軸)に近付くように傾斜している。
【0114】
なお、長手方向において、前側傾斜部80aの側端(自由端側の端面)を仮想的に延長させてウェブ部12の側面と交差する位置(
図11B中、記号Qにて示す位置)を第三位置としたとき、後側傾斜部80bは、
図11Bに示すように、第三位置よりも後側まで延出している。
【0115】
以上までに説明してきたように、第五実施形態に係る形鋼梁10では、傾斜部の突出量が傾斜部の後端に向かって徐々に小さくなる点において、第一実施形態や第二実施形態に係る形鋼梁10と相違する。一方、それ以外の構成において、第五実施形態に係る形鋼梁10は、第一実施形態や第二実施形態に係る形鋼梁10と共通する。すなわち、第五実施形態においても、補助補強部を設けることで、強度変化の起点位置に相当する部分での形鋼梁10の破断を抑制することが可能となる。
【0116】
<<その他の実施形態>>
以上までに本発明の構造物について具体例(第一実施形態〜第五実施形態)を挙げて説明したが、上述した実施形態以外の実施形態も考えられる。具体的に説明すると、補助補強部の形状、配置数及び配置位置については、上述した5つの実施形態で説明した内容に限定されない。補助補強部は、長手方向において第一位置から第二位置までの範囲に亘って存在していればよく、この条件を満たすものである限り、任意に設定することが可能である。例えば、長手方向において第一位置から第二位置までの範囲に亘って平板プレートをウェブ部12の側面に重ね合わせて配置し、かかる平板プレートを補助補強部として用いてもよい。
【0117】
また、上述の実施形態(具体的には第一実施形態)では、一対の補助補強リブ16がウェブ部12において同一の側面に固定されており、当該側面において一対の補助補強リブ16がウェブ部12の高さ方向中央を境にして上下対称に配置されていることとした。ただし、これに限定されるものではなく、ウェブ部12において互いに反対側に位置する側面に補助補強リブ16が一つずつ固定されていてもよい。かかる構成では、一方の側面に固定された補助補強リブ16と、他方の側面に固定された補助補強リブ16とがウェブ部12の高さ方向中央を境にして上下対称となるように配置される形になる。