特許第6847741号(P6847741)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6847741
(24)【登録日】2021年3月5日
(45)【発行日】2021年3月24日
(54)【発明の名称】射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/40 20060101AFI20210315BHJP
   B29C 33/44 20060101ALI20210315BHJP
   B29C 45/80 20060101ALI20210315BHJP
   B22D 17/22 20060101ALI20210315BHJP
   B22D 17/26 20060101ALI20210315BHJP
【FI】
   B29C45/40
   B29C33/44
   B29C45/80
   B22D17/22 L
   B22D17/26 J
【請求項の数】8
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-72634(P2017-72634)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-171826(P2018-171826A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2019年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小木曽 太郎
【審査官】 ▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−205217(JP,A)
【文献】 特開平05−177674(JP,A)
【文献】 特開2016−112752(JP,A)
【文献】 特開昭62−108020(JP,A)
【文献】 特開2001−150496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00 − 45/84
B29C 33/00 − 33/76
B22D 17/22
B22D 17/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動プラテンと固定プラテンとを有する型締装置を備える射出成形機であって、
前記可動プラテンに取り付けられる可動金型から落下する成形品群に関する情報を取得する成形品群情報取得部と、
前記成形品群情報取得部により取得された情報に基づき、前記固定プラテンに取り付けられる固定金型と前記成形品群との距離に関する落下情報を算出する落下情報算出部と、
前記落下情報算出部により算出された前記落下情報に応じて、前記固定金型に対する前記成形品群の落下位置を調整する調整部と、
を備える射出成形機。
【請求項2】
前記成形品群情報取得部は、前記可動金型から落下する成形品群を撮影するカメラである、
請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記調整部は、前記可動プラテンの型開速度を変更することにより、前記固定金型に対する前記成形品群の落下位置を調整する、
請求項1または2に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記調整部は、前記可動金型から前記成形品群を突き出すエジェクタ装置の突き出し開始タイミングを変更することにより、前記固定金型に対する前記成形品群の落下位置を調整する、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項5】
前記調整部は、前記可動プラテンの型開速度と、前記可動金型から前記成形品群を突き出すエジェクタ装置の突き出し速度との比である同期率を変更することにより、前記固定金型に対する前記成形品群の落下位置を調整する、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項6】
前記落下情報算出部は、前記可動金型から落下する前記成形品群の型開閉方向速度を前記落下情報として算出し、
前記調整部は、前記型開閉方向速度が0になるよう前記同期率を変更することにより、前記固定金型に対する前記成形品群の落下位置を調整する、
請求項5に記載の射出成形機。
【請求項7】
前記落下情報算出部は、前記可動金型から落下する前記成形品群の型開閉方向に沿った落下位置幅を算出し、
前記調整部は、前記同期率を用いた前記落下位置の調整の後に、前記落下情報算出部により算出された前記落下位置幅と、前記可動プラテンの型開量との関係に応じて、前記可動プラテンの型開限を調整する、
請求項5または6に記載の射出成形機。
【請求項8】
可動プラテンと固定プラテンとを有する型締装置を備える射出成形機であって、
当該射出成形機の作業員の操作入力を受け付ける操作入力部と、
前記操作入力部を介する前記操作入力に応じて、前記可動プラテンに取り付けられる可動金型から落下する成形品群の、前記固定プラテンに取り付けられる固定金型に対する落下位置を調整する調整部と、
を備え、
前記操作入力部の前記操作入力は、前記可動プラテンの型開速度と、前記可動金型から前記成形品群を突き出すエジェクタ装置の突き出し速度との比である同期率の増減に関する情報であり、
前記調整部は、前記操作入力に応じて前記同期率を変更することにより、前記固定金型に対する前記成形品群の落下位置を調整する、
射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エジェクタ装置を型開速度に同期させ、フレームに対するエジェクタ先端速度を0とすることで、同一サイクルで成形される複数の成形品を真下に落とすことが行われている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−150496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
理想的には、エジェクタ速度を型開速度と逆方向の同一速度とすれば相対速度が0となって、金型から外された成形品は真下に落ちるはずである。しかし実際には、エジェクタが成形品を金型から突き出す際に成形品が金型から受ける抵抗などの影響によって、成形品に型開閉方向に速度が発生して、各サイクルの成形品群ごとに成形品の落下位置にバラツキが生じる場合がある。このようなバラツキを無くすための対策としては、従来は成形機の作業員が目視により成形品の落下位置を監視して、型開速度等を手動で調整することが一般的であったが、成形品を所望の位置に落下させるための設定が難しかった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、成形品を所望の位置に落下させるための設定を簡易に行うことができる射出成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る射出成形機は、可動プラテンと固定プラテンとを有する型締装置を備える射出成形機であって、前記可動プラテンに取り付けられる可動金型から落下する成形品群に関する情報を取得する成形品群情報取得部と、前記成形品群情報取得部により取得された情報に基づき、前記固定プラテンに取り付けられる固定金型と前記成形品群との距離に関する落下情報を算出する落下情報算出部と、前記落下情報算出部により算出された前記落下情報に応じて、前記固定金型に対する前記成形品群の落下位置を調整する調整部と、を備える。
【0007】
同様に、上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る射出成形機は、可動プラテンと固定プラテンとを有する型締装置を備える射出成形機であって、当該射出成形機の作業員の操作入力を受け付ける操作入力部と、前記操作入力部を介する前記操作入力に応じて、前記可動プラテンに取り付けられる可動金型から落下する成形品群の、前記固定プラテンに取り付けられる固定金型に対する落下位置を調整する調整部と、を備え、前記操作入力部の前記操作入力は、前記可動プラテンの型開速度と、前記可動金型から前記成形品群を突き出すエジェクタ装置の突き出し速度との比である同期率の増減に関する情報であり、前記調整部は、前記操作入力に応じて前記同期率を変更することにより、前記固定金型に対する前記成形品群の落下位置を調整する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、成形品を所望の位置に落下させるための設定を簡易に行うことができる射出成形機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態による射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
図2】一実施形態による射出成形機の型締時の状態を示す図である。
図3】第1実施形態に係る射出成形機が備える落下位置調整システムの概略構成を示す図である。
図4】エジェクタ速度と型開速度との同期関係を示す図である。
図5】エジェクタ位置とエジェクタ速度との関係を示す図である。
図6】可動プラテンの型開速度と、エジェクタ装置の突き出し速度との同期率による調整の一例を示す図である。
図7】第1実施形態で実施される同期率σを用いた成形品群Mの落下位置の調整手法のフローチャートである。
図8】第1実施形態で実施される可動プラテンの型開限の調整手法のフローチャートである。
図9】第2実施形態に係る射出成形機が備える落下位置調整システムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0011】
[第1実施形態]
図1図8を参照して第1実施形態を説明する。なお、図1図3において、X方向、Y方向、Z方向は互いに垂直な方向である。X方向及びY方向は水平方向、Z方向は鉛直方向である。X方向は、本実施形態に係る射出成形機1の可動プラテン120や射出装置300の移動方向や型開閉方向と同一方向であり、Y方向は射出成形機1の幅方向である。
【0012】
まず図1及び図2を参照して、本実施形態に係る射出成形機1の全体の概略構成について説明する。
【0013】
(射出成形機)
図1は、一実施形態による射出成形機1の型開完了時の状態を示す図である。図2は、一実施形態による射出成形機1の型締時の状態を示す図である。図1図2に示すように、射出成形機1は、型締装置100と、エジェクタ装置200と、射出装置300と、移動装置400と、制御装置700とを有する。以下、射出成形機1の各構成要素について説明する。
【0014】
(型締装置)
型締装置100の説明では、型閉時の可動プラテン120の移動方向(図1および図2中右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(図1および図2中左方向)を後方として説明する。
【0015】
型締装置100は、金型装置10の型閉、型締、型開を行う。型締装置100は例えば横型であって、型開閉方向が水平方向である。型締装置100は、固定プラテン110、可動プラテン120、トグルサポート130、タイバー140、トグル機構150、型締モータ160、運動変換機構170、および型厚調整機構180を有する。
【0016】
固定プラテン110は、フレームFrに対し固定される。固定プラテン110における可動プラテン120との対向面に固定金型11が取付けられる。
【0017】
可動プラテン120は、フレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされる。フレームFr上には、可動プラテン120を案内するガイド101が敷設される。可動プラテン120における固定プラテン110との対向面に可動金型12が取付けられる。
【0018】
固定プラテン110に対し可動プラテン120を進退させることにより、型閉、型締、型開が行われる。固定金型11と可動金型12とで金型装置10が構成される。
【0019】
トグルサポート130は、固定プラテン110と間隔をおいて連結され、フレームFr上に型開閉方向に移動自在に載置される。尚、トグルサポート130は、フレームFr上に敷設されるガイドに沿って移動自在とされてもよい。トグルサポート130のガイドは、可動プラテン120のガイド101と共通のものでもよい。
【0020】
尚、本実施形態では、固定プラテン110がフレームFrに対し固定され、トグルサポート130がフレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされるが、トグルサポート130がフレームFrに対し固定され、固定プラテン110がフレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされてもよい。
【0021】
タイバー140は、固定プラテン110とトグルサポート130とを型開閉方向に間隔Lをおいて連結する。タイバー140は、複数本(例えば4本)用いられてよい。各タイバー140は、型開閉方向に平行とされ、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー140には、タイバー140の歪を検出するタイバー歪検出器141が設けられてもよい。タイバー歪検出器141は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。タイバー歪検出器141の検出結果は、型締力の検出などに用いられる。
【0022】
尚、本実施形態では、型締力を検出する型締力検出器として、タイバー歪検出器141が用いられるが、本発明はこれに限定されない。型締力検出器は、歪みゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取付け位置もタイバー140に限定されない。
【0023】
トグル機構150は、可動プラテン120とトグルサポート130との間に配設され、トグルサポート130に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる。トグル機構150は、クロスヘッド151、一対のリンク群などで構成される。各リンク群は、ピンなどで屈伸自在に連結される第1リンク152および第2リンク153を有する。第1リンク152は可動プラテン120に対しピンなどで揺動自在に取付けられ、第2リンク153はトグルサポート130に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153は、第3リンク154を介してクロスヘッド151に取付けられる。トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させると、第1リンク152および第2リンク153が屈伸し、トグルサポート130に対し可動プラテン120が進退する。
【0024】
尚、トグル機構150の構成は、図1および図2に示す構成に限定されない。例えば図1および図2では、各リンク群の節点の数が5つであるが、4つでもよく、第3リンク154の一端部が、第1リンク152と第2リンク153との節点に結合されてもよい。
【0025】
型締モータ160は、トグルサポート130に取付けられており、トグル機構150を作動させる。型締モータ160は、トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させることにより、第1リンク152および第2リンク153を屈伸させ、トグルサポート130に対し可動プラテン120を進退させる。型締モータ160は、運動変換機構170に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構170に連結されてもよい。
【0026】
運動変換機構170は、型締モータ160の回転運動をクロスヘッド151の直線運動に変換する。運動変換機構170は、ねじ軸171と、ねじ軸171に螺合するねじナット172とを含む。ねじ軸171と、ねじナット172との間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0027】
型締装置100は、制御装置700による制御下で、型閉工程、型締工程、型開工程などを行う。
【0028】
型閉工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定速度で型閉完了位置まで前進させることにより、可動プラテン120を前進させ、可動金型12を固定金型11にタッチさせる。クロスヘッド151の位置や速度は、例えば型締モータエンコーダ161などを用いて検出する。型締モータエンコーダ161は、型締モータ160の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
【0029】
型締工程では、型締モータ160をさらに駆動してクロスヘッド151を型閉完了位置から型締位置までさらに前進させることで型締力を生じさせる。型締時に可動金型12と固定金型11との間にキャビティ空間14が形成され、射出装置300がキャビティ空間14に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。キャビティ空間14の数は複数でもよく、その場合、複数の成形品が同時に得られる。
【0030】
型開工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定速度で型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、可動金型12を固定金型11から離間させる。その後、エジェクタ装置200が可動金型12から成形品を突き出す。
【0031】
型閉工程および型締工程における設定条件は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、型閉工程および型締工程におけるクロスヘッド151の速度や位置(速度の切替位置、型閉完了位置、型締位置を含む)は、一連の設定条件として、まとめて設定される。尚、クロスヘッド151の速度や位置などの代わりに、可動プラテン120の速度や位置などが設定されてもよい。また、クロスヘッドの位置(例えば型締位置)や可動プラテンの位置の代わりに、型締力が設定されてもよい。
【0032】
ところで、トグル機構150は、型締モータ160の駆動力を増幅して可動プラテン120に伝える。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク152と第2リンク153とのなす角θ(以下、「リンク角度θ」とも呼ぶ)に応じて変化する。リンク角度θは、クロスヘッド151の位置から求められる。リンク角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。
【0033】
金型装置10の交換や金型装置10の温度変化などにより金型装置10の厚さが変化した場合、型締時に所定の型締力が得られるように、型厚調整が行われる。型厚調整では、例えば可動金型12が固定金型11にタッチする型タッチの時点でトグル機構150のリンク角度θが所定の角度になるように、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
【0034】
型締装置100は、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整することで、型厚調整を行う型厚調整機構180を有する。型厚調整機構180は、タイバー140の後端部に形成されるねじ軸181と、トグルサポート130に回転自在に保持されるねじナット182と、ねじ軸181に螺合するねじナット182を回転させる型厚調整モータ183とを有する。
【0035】
ねじ軸181およびねじナット182は、タイバー140ごとに設けられる。型厚調整モータ183の回転は、回転伝達部185を介して複数のねじナット182に伝達されてよい。複数のねじナット182を同期して回転できる。尚、回転伝達部185の伝達経路を変更することで、複数のねじナット182を個別に回転することも可能である。
【0036】
回転伝達部185は、例えば歯車などで構成される。この場合、各ねじナット182の外周に受動歯車が形成され、型厚調整モータ183の出力軸には駆動歯車が取付けられ、複数の受動歯車および駆動歯車と噛み合う中間歯車がトグルサポート130の中央部に回転自在に保持される。尚、回転伝達部185は、歯車の代わりに、ベルトやプーリなどで構成されてもよい。
【0037】
型厚調整機構180の動作は、制御装置700によって制御される。制御装置700は、型厚調整モータ183を駆動して、ねじナット182を回転させることで、ねじナット182を回転自在に保持するトグルサポート130の固定プラテン110に対する位置を調整し、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
【0038】
尚、本実施形態では、ねじナット182がトグルサポート130に対し回転自在に保持され、ねじ軸181が形成されるタイバー140が固定プラテン110に対し固定されるが、本発明はこれに限定されない。
【0039】
例えば、ねじナット182が固定プラテン110に対し回転自在に保持され、タイバー140がトグルサポート130に対し固定されてもよい。この場合、ねじナット182を回転させることで、間隔Lを調整できる。
【0040】
また、ねじナット182がトグルサポート130に対し固定され、タイバー140が固定プラテン110に対し回転自在に保持されてもよい。この場合、タイバー140を回転させることで、間隔Lを調整できる。
【0041】
さらにまた、ねじナット182が固定プラテン110に対し固定され、タイバー140がトグルサポート130に対し回転自在に保持されてもよい。この場合、タイバー140を回転させることで間隔Lを調整できる。
【0042】
間隔Lは、型厚調整モータエンコーダ184を用いて検出する。型厚調整モータエンコーダ184は、型厚調整モータ183の回転量や回転方向を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。型厚調整モータエンコーダ184の検出結果は、トグルサポート130の位置や間隔Lの監視や制御に用いられる。
【0043】
型厚調整機構180は、互いに螺合するねじ軸181とねじナット182の一方を回転させることで、間隔Lを調整する。複数の型厚調整機構180が用いられてもよく、複数の型厚調整モータ183が用いられてもよい。
【0044】
尚、本実施形態の型厚調整機構180は、間隔Lを調整するため、タイバー140に形成されるねじ軸181とねじ軸181に螺合されるねじナット182とを有するが、本発明はこれに限定されない。
【0045】
例えば、型厚調整機構180は、タイバー140の温度を調節するタイバー温調器を有してもよい。タイバー温調器は、各タイバー140に取付けられ、複数本のタイバー140の温度を連携して調整する。タイバー140の温度が高いほど、タイバー140は熱膨張によって長くなり、間隔Lが大きくなる。複数本のタイバー140の温度は独立に調整することも可能である。
【0046】
タイバー温調器は、例えばヒータなどの加熱器を含み、加熱によってタイバー140の温度を調節する。タイバー温調器は、水冷ジャケットなどの冷却器を含み、冷却によってタイバー140の温度を調節してもよい。タイバー温調器は、加熱器と冷却器の両方を含んでもよい。
【0047】
尚、本実施形態の型締装置100は、型開閉方向が水平方向である横型であるが、型開閉方向が上下方向である竪型でもよい。竪型の型締装置は、下プラテン、上プラテン、トグルサポート、タイバー、トグル機構、および型締モータなどを有する。下プラテンと上プラテンのうち、いずれか一方が固定プラテン、残りの一方が可動プラテンとして用いられる。下プラテンには下金型が取付けられ、上プラテンには上金型が取付けられる。下金型と上金型とで金型装置が構成される。下金型は、ロータリーテーブルを介して下プラテンに取付けられてもよい。トグルサポートは、下プラテンの下方に配設され、タイバーを介して上プラテンと連結される。タイバーは、上プラテンとトグルサポートとを型開閉方向に間隔をおいて連結する。トグル機構は、トグルサポートと下プラテンとの間に配設され、可動プラテンを昇降させる。型締モータは、トグル機構を作動させる。型締装置が竪型である場合、タイバーの本数は通常3本である。尚、タイバーの本数は特に限定されない。
【0048】
尚、本実施形態の型締装置100は、駆動源として、型締モータ160を有するが、型締モータ160の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置100は、型開閉用にリニアモータを有し、型締用に電磁石を有してもよい。
【0049】
(エジェクタ装置)
エジェクタ装置200の説明では、型締装置100の説明と同様に、型閉時の可動プラテン120の移動方向(図1および図2中右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(図1および図2中左方向)を後方として説明する。
【0050】
エジェクタ装置200は、金型装置10から成形品を突き出す。エジェクタ装置200は、エジェクタモータ210、運動変換機構220、およびエジェクタロッド230などを有する。
【0051】
エジェクタモータ210は、可動プラテン120に取付けられる。エジェクタモータ210は、運動変換機構220に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構220に連結されてもよい。
【0052】
運動変換機構220は、エジェクタモータ210の回転運動をエジェクタロッド230の直線運動に変換する。運動変換機構220は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0053】
エジェクタロッド230は、可動プラテン120の貫通穴において進退自在とされる。エジェクタロッド230の前端部は、可動金型12の内部に進退自在に配設される可動部材15と接触する。エジェクタロッド230の前端部は、可動部材15と連結されていても、連結されていなくてもよい。
【0054】
エジェクタ装置200は、制御装置700による制御下で、突き出し工程を行う。
【0055】
突き出し工程では、エジェクタモータ210を駆動してエジェクタロッド230を設定速度で待機位置から突き出し位置まで前進させることにより、可動部材15を前進させ、成形品を突き出す。その後、エジェクタモータ210を駆動してエジェクタロッド230を設定速度で後退させ、可動部材15を元の待機位置まで後退させる。エジェクタロッド230の位置や速度は、例えばエジェクタモータエンコーダ211を用いて検出する。エジェクタモータエンコーダ211は、エジェクタモータ210の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
【0056】
(射出装置)
射出装置300の説明では、型締装置100の説明やエジェクタ装置200の説明とは異なり、充填時のスクリュ330の移動方向(図1および図2中左方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(図1および図2中右方向)を後方として説明する。
【0057】
射出装置300は、フレームFrに対し進退自在なスライドベース301に設置され、金型装置10に対し進退自在とされる。射出装置300は、金型装置10にタッチし、金型装置10内のキャビティ空間14に成形材料を充填する。射出装置300は、例えば、シリンダ310、ノズル320、スクリュ330、計量モータ340、射出モータ350、圧力検出器360などを有する。
【0058】
シリンダ310は、供給口311から内部に供給された成形材料を加熱する。供給口311はシリンダ310の後部に形成される。シリンダ310の後部の外周には、水冷シリンダなどの冷却器312が設けられる。冷却器312よりも前方において、シリンダ310の外周には、バンドヒータなどの加熱器313と温度検出器314とが設けられる。
【0059】
シリンダ310は、シリンダ310の軸方向(図1および図2中左右方向)に複数のゾーンに区分される。各ゾーンに加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ゾーン毎に、温度検出器314の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0060】
ノズル320は、シリンダ310の前端部に設けられ、金型装置10に対し押し付けられる。ノズル320の外周には、加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ノズル320の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0061】
スクリュ330は、シリンダ310内において回転自在に且つ進退自在に配設される。スクリュ330を回転させると、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ310からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。その後、スクリュ330を前進させると、スクリュ330前方に蓄積された液状の成形材料がノズル320から射出され、金型装置10内に充填される。
【0062】
スクリュ330の前部には、スクリュ330を前方に押すときにスクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流を防止する逆流防止弁として、逆流防止リング331が進退自在に取付けられる。
【0063】
逆流防止リング331は、スクリュ330を前進させるときに、スクリュ330前方の成形材料の圧力によって後方に押され、成形材料の流路を塞ぐ閉塞位置(図2参照)までスクリュ330に対し相対的に後退する。これにより、スクリュ330前方に蓄積された成形材料が後方に逆流するのを防止する。
【0064】
一方、逆流防止リング331は、スクリュ330を回転させるときに、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って前方に送られる成形材料の圧力によって前方に押され、成形材料の流路を開放する開放位置(図1参照)までスクリュ330に対し相対的に前進する。これにより、スクリュ330の前方に成形材料が送られる。
【0065】
逆流防止リング331は、スクリュ330と共に回転する共回りタイプと、スクリュ330と共に回転しない非共回りタイプのいずれでもよい。
【0066】
尚、射出装置300は、スクリュ330に対し逆流防止リング331を開放位置と閉塞位置との間で進退させる駆動源を有していてもよい。
【0067】
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。スクリュ330を回転させる駆動源は、計量モータ340には限定されず、例えば油圧ポンプなどでもよい。
【0068】
射出モータ350は、スクリュ330を進退させる。射出モータ350とスクリュ330との間には、射出モータ350の回転運動をスクリュ330の直線運動に変換する運動変換機構などが設けられる。運動変換機構は、例えばねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットの間には、ボールやローラなどが設けられてよい。スクリュ330を進退させる駆動源は、射出モータ350には限定されず、例えば油圧シリンダなどでもよい。
【0069】
圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される圧力を検出する。圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間の圧力の伝達経路に設けられ、圧力検出器360に作用する圧力を検出する。
【0070】
圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。圧力検出器360の検出結果は、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力などの制御や監視に用いられる。
【0071】
射出装置300は、制御装置700による制御下で、充填工程、保圧工程、計量工程などを行う。
【0072】
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定速度で前進させ、スクリュ330の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置10内のキャビティ空間14に充填させる。スクリュ330の位置や速度は、例えば射出モータエンコーダ351を用いて検出する。射出モータエンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切替(所謂、V/P切替)が行われる。V/P切替が行われる位置をV/P切替位置とも呼ぶ。スクリュ330の設定速度は、スクリュ330の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
【0073】
尚、充填工程においてスクリュ330の位置が設定位置に達した後、その設定位置にスクリュ330を一時停止させ、その後にV/P切替が行われてもよい。V/P切替の直前において、スクリュ330の停止の代わりに、スクリュ330の微速前進または微速後退が行われてもよい。
【0074】
保圧工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を前方に押し、スクリュ330の前端部における成形材料の圧力(以下、「保持圧力」とも呼ぶ。)を設定圧に保ち、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置10に向けて押す。金型装置10内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充できる。保持圧力は、例えば圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。保持圧力の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間などに応じて変更されてもよい。
【0075】
保圧工程では金型装置10内のキャビティ空間14の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間14の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間14からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間14内の成形材料の固化が行われる。成形サイクル時間の短縮のため、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
【0076】
計量工程では、計量モータ340を駆動してスクリュ330を設定回転数で回転させ、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。スクリュ330の回転数は、例えば計量モータエンコーダ341を用いて検出する。計量モータエンコーダ341は、計量モータ340の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
【0077】
計量工程では、スクリュ330の急激な後退を制限すべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330が計量完了位置まで後退し、スクリュ330の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。
【0078】
尚、本実施形態の射出装置300は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式などでもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内にはスクリュが回転自在にまたは回転自在に且つ進退自在に配設され、射出シリンダ内にはプランジャが進退自在に配設される。
【0079】
また、本実施形態の射出装置300は、シリンダ310の軸方向が水平方向である横型であるが、シリンダ310の軸方向が上下方向である竪型であってもよい。竪型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、竪型でも横型でもよい。同様に、横型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、横型でも竪型でもよい。
【0080】
(移動装置)
移動装置400の説明では、射出装置300の説明と同様に、充填時のスクリュ330の移動方向(図1および図2中左方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(図1および図2中右方向)を後方として説明する。
【0081】
移動装置400は、金型装置10に対し射出装置300を進退させる。また、移動装置400は、金型装置10に対しノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。移動装置400は、液圧ポンプ410、駆動源としてのモータ420、液圧アクチュエータとしての液圧シリンダ430などを含む。
【0082】
液圧ポンプ410は、第1ポート411と、第2ポート412とを有する。液圧ポンプ410は、両方向回転可能なポンプであり、モータ420の回転方向を切り替えることにより、第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液(例えば油)を吸入し他方から吐出して液圧を発生させる。尚、液圧ポンプ410はタンクから作動液を吸引して第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液を吐出することもできる。
【0083】
モータ420は、液圧ポンプ410を作動させる。モータ420は、制御装置700からの制御信号に応じた回転方向および回転トルクで液圧ポンプ410を駆動する。モータ420は、電動モータであってよく、電動サーボモータであってよい。
【0084】
液圧シリンダ430は、シリンダ本体431、ピストン432、およびピストンロッド433を有する。シリンダ本体431は、射出装置300に対して固定される。ピストン432は、シリンダ本体431の内部を、第1室としての前室435と、第2室としての後室436とに区画する。ピストンロッド433は、固定プラテン110に対して固定される。
【0085】
液圧シリンダ430の前室435は、第1流路401を介して、液圧ポンプ410の第1ポート411と接続される。第1ポート411から吐出された作動液が第1流路401を介して前室435に供給されることで、射出装置300が前方に押される。射出装置300が前進され、ノズル320が固定金型11に押し付けられる。前室435は、液圧ポンプ410から供給される作動液の圧力によってノズル320のノズルタッチ圧力を生じさせる圧力室として機能する。
【0086】
一方、液圧シリンダ430の後室436は、第2流路402を介して液圧ポンプ410の第2ポート412と接続される。第2ポート412から吐出された作動液が第2流路402を介して液圧シリンダ430の後室436に供給されることで、射出装置300が後方に押される。射出装置300が後退され、ノズル320が固定金型11から離間される。
【0087】
尚、本実施形態では移動装置400は液圧シリンダ430を含むが、本発明はこれに限定されない。例えば、液圧シリンダ430の代わりに、電動モータと、その電動モータの回転運動を射出装置300の直線運動に変換する運動変換機構とが用いられてもよい。
【0088】
(制御装置)
制御装置700は、図1図2に示すようにCPU(Central Processing Unit)701と、メモリなどの記憶媒体702と、入力インターフェース703と、出力インターフェース704とを有する。制御装置700は、記憶媒体702に記憶されたプログラムをCPU701に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置700は、入力インターフェース703で外部からの信号を受信し、出力インターフェース704で外部に信号を送信する。
【0089】
制御装置700は、型閉工程や型締工程、型開工程などを繰り返し行うことにより、成形品を繰り返し製造する。また、制御装置700は、型締工程の間に、計量工程や充填工程、保圧工程などを行う。成形品を得るための一連の動作、例えば計量工程の開始から次の計量工程の開始までの動作を「ショット」または「成形サイクル」とも呼ぶ。また、1回のショットに要する時間を「成形サイクル時間」とも呼ぶ。
【0090】
制御装置700は、操作装置750や表示装置760と接続されている。操作装置750は、ユーザによる入力操作を受け付け、入力操作に応じた信号を制御装置700に出力する。表示装置760は、制御装置700による制御下で、操作装置750における入力操作に応じた操作画面を表示する。
【0091】
操作画面は、射出成形機1の設定などに用いられる。操作画面は、複数用意され、切り替えて表示されたり、重ねて表示されたりする。ユーザは、表示装置760で表示される操作画面を見ながら、操作装置750を操作することにより射出成形機1の設定(設定値の入力を含む)などを行う。
【0092】
操作装置750および表示装置760は、例えばタッチパネルで構成され、一体化されてよい。尚、本実施形態の操作装置750および表示装置760は、一体化されているが、独立に設けられてもよい。また、操作装置750は、複数設けられてもよい。
【0093】
(落下位置調整システム)
次に、図3図8を参照して、第1実施形態の要部である、成形品の落下具合を観測して条件を自動的に調整する落下位置調整システム800について説明する。図3は、第1実施形態に係る射出成形機1が備える落下位置調整システム800の概略構成を示す図である。
【0094】
図3に示すように、落下位置調整システム800は、カメラ801(成形品群情報取得部)と、調整装置802とを備える。
【0095】
カメラ801は、型締装置100の金型から落下する成形品群Mを撮影し、撮影した画像データを調整装置802に出力する。
【0096】
調整装置802は、カメラ801により撮影された成形品群Mの画像データに基づき、固定プラテン110に取り付けられる固定金型11と成形品群Mとの距離に関する落下情報を算出し、算出した落下情報に応じて固定金型11に対する成形品群Mの落下位置を調整する。
【0097】
本実施形態では、上記の「落下情報」とは、具体的には、可動プラテン120に取り付けられる可動金型12から落下する成形品群Mの型開閉方向の水平速度vと、成形品群Mの型開閉方向に沿った落下位置の幅Wとを含む。なお、水平速度vは、フレームFr(固定金型11)に対する速度である。また、本実施形態では、成形品群Mの落下位置を調整するために、調整装置802は可動プラテン120とエジェクタ装置200との同期率σを変更する。同期率σは、可動プラテン120の型開速度vと、可動金型12から成形品群Mを突き出すエジェクタ装置200の突き出し速度v(以下ではエジェクタ速度vとも表記する)との比として定義される。
【0098】
なお、本実施形態では、エジェクタ装置200の突き出し速度vとは、図3に示すように、エジェクタ装置200のエジェクタモータ210の動力によって、エジェクタロッド230を介して可動金型12の内部で突き出し位置まで前進される可動部材15の速度である。また、型締装置100の型開速度vとは、型開工程における可動金型12の移動速度である。
【0099】
調整装置802は、上記の機能に関して、カメラ制御部803と、落下情報算出部804と、調整部805と、を備える。
【0100】
カメラ制御部803は、カメラ801の動作を制御する。カメラ制御部803は、例えば型開工程の期間中に亘り、可動プラテン120に取り付けられる可動金型12から落下する成形品群Mの全体の動画像を撮影するようカメラ801を制御する。カメラ制御部803は、カメラ801により撮影された成形品群Mの画像データをカメラ801から受信して落下情報算出部804に出力する。
【0101】
落下情報算出部804は、カメラ801により撮影された成形品群Mの画像データに基づき、固定プラテン110に取り付けられる固定金型11と成形品群Mとの距離に関する落下情報として、上記の成形品群Mの水平速度vと、成形品群Mの落下位置の幅Wとを算出する。
【0102】
調整部805は、落下情報算出部804により算出された落下情報(水平速度V、落下位置幅W)に基づいて、固定金型11に対する成形品群Mの落下位置を調整する。具体的には、水平速度vが0になるように、可動プラテン120とエジェクタ装置200との同期率σを変更することにより、成形品群Mの落下位置を調整する。
【0103】
また、調整部805は、同期率σを用いた成形品群Mの落下位置の調整の後に、落下情報算出部804により算出された落下位置幅Wと、可動プラテン120の型開量との関係に応じて、型締装置100の型開限を調整する。
【0104】
調整装置802は、物理的には、CPU、メモリ、入力インターフェース、出力インターフェース等を有するコンピュータ装置である。調整装置802は、上述の制御装置700の一部として実装されてもよいし、制御装置700と別の演算装置として実装されてもよい。
【0105】
また、図3では、調整装置802の構成要素を機能ブロックで示しているが、各機能ブロックは概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。各機能ブロックの全部または一部を、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。各機能ブロックにて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUにて実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
【0106】
図4図6を参照して、同期率σを用いた成形品群Mの落下位置の調整手法の概略を説明する。図4は、エジェクタ速度vと型開速度vとの同期関係を示す図である。本実施形態では、エジェクタ装置200の突き出し速度vと、型開速度vとを逆方向の同一速度として、相対速度が0となるように両速度を同期させるために、図4に示すような型開速度vの速度パターンを設定する。図4では型開速度vを実線で示し、エジェクタ速度vを点線で示し、クロスヘッド速度を一点鎖線で示している。
【0107】
図4に示すように、本実施形態では、型開工程を二つの区間I、IIに分け、区間Iでは可動金型12と固定金型11とを接触状態から離間状態へ遷移させ、区間IIではエジェクタ装置200による成形品群Mの突き出しを行って、エジェクタ速度vと型開速度vとを同期させている。区間Iと区間IIとの間の時間t1では、型開速度vが一旦0となり、可動金型の型開動作が一時停止される。
【0108】
区間Iでは、クロスヘッド151の速度軌道を図4に示すように台形状で計画して、これに基づき型開を行う。区間Iでは、型開速度vは、クロスヘッド速度の増加に伴って滑らかに増加し、クロスヘッドが減速するのに応じて滑らかに減少する。
【0109】
区間IIでは、エジェクタ速度vと型開速度vとを同期させる。より詳細には、エジェクタ装置200の速度軌道を計画して、型開速度vがこれに同期するようにクロスヘッド151の速度軌道を制御する。区間IIでは、クロスヘッド速度は、型開速度vの台形の内側になる。
【0110】
図5は、エジェクタ位置とエジェクタ速度との関係を示す図である。図5ではエジェクタ位置を実線で示し、エジェクタ速度を点線で示している。図5に示すように、エジェクタ装置200の軌道は、突き出し量Sと、突き出し速度vによって決定される。突き出し量は、金型の構造で決まる固定値である。突き出し速度vは変更可能である。
【0111】
図4図5より、型開工程の区間IIにおける型締装置100の型開速度vと、エジェクタ装置200の突き出し速度vとの同期率σは、下記の(1)式で表すことができる。
【0112】
【数1】
(1)式に示すように、型開速度vと突き出し速度vとの同期率σは、型締装置100の型開速度vの絶対値と、エジェクタ装置200の突き出し速度vの絶対値との比、とも表現できる。
【0113】
図6は、可動プラテン120の型開速度vと、エジェクタ装置200の突き出し速度vとの同期率σによる調整の一例を示す図である。図6では、型開速度vとクロスヘッド速度は、同期率σが1のとき(σ=1)の推移を実線で示し、同期率σが1より小さいとき(σ<1)の推移を点線で示し、同期率σが1より大きいとき(σ>1)の推移を一点鎖線で示している。なお、エジェクタ速度vを同期率σによらず一定として、単一の実線のグラフで示している。図6の(a)は型開速度、(b)はエジェクタ速度、(c)はクロスヘッド速度のグラフである。
【0114】
図6に示すように、区間IIにおいて、同期率σが1のとき、型開速度vと突き出し速度vとは逆方向の同一速度となる。この関係は図4と同様である。また、同期率σが1より小さいとき(σ<1)、型開速度vは突き出し速度vより小さくなる。同期率σが1より大きいとき(σ>1)、型開速度vは突き出し速度vより大きくなる。また、区間IIでは、クロスヘッド速度軌跡も、σの変化、すなわち型開速度vの増減に応じて同様に変動する。
【0115】
区間IIにおいて、同期率σによらず型開限を同一とする制約を課すとき、型開速度vと突き出し速度vとの同期率σによって型開の一時停止位置が変化する。すなわち、図6の時間t1のタイミングにおける型開量が同期率σによって異なる。例えば、同期率σが小さくなるほど区間IIにおける型開量は減少し、同期率σが大きくなるほど区間IIにおける型開量は増大する。
【0116】
このため、型開動作の完了時の型開限をσによらず同一とするためには、同期率σが小さいほど区間Iの型開量を大きくとる必要がある。すなわち、区間Iの開始タイミングに対して型開の一時停止タイミング(時間t1)を遅くする。この区間IとIIとの間の時間t1は、「エジェクタ装置200の突き出し開始タイミング」とも表現できる。
【0117】
なお、このように実際には時間t1は同期率σに応じて変動するが、図6では説明の便宜上、時間t1の位置を揃えて表現している。言い換えると、型開動作の開始タイミングは、実際には、同期率σによらず同じタイミングであるが、図6では時間t1を基準としたため、グラフ左端の開始タイミングがσによってずれて表されている。このため、図6では、同期率σが小さい場合(σ<1)、区間Iの型開速度vの軌道が時間軸方向に延びている。
【0118】
同様に、同期率σが大きいほど区間Iの型開量を小さくとる必要がある。すなわち、区間Iの開始タイミングに対して型開の一時停止タイミング(時間t1)を速くする。上述のとおり、図6では説明の便宜上、同期率σによらず時間t1の位置を揃えて表現しているので、同期率σが大きい場合(σ>1)区間Iの型開速度vの軌道が時間軸方向に縮んでいる。また、区間Iでは、クロスヘッド速度軌跡も同期率σの変化に応じて型開速度vと同様に変形する。
【0119】
なお、図6に例示した制約条件とは異なり、型開工程の一時停止位置を同期率σによらず同一位置に固定する制約を課す場合には、図6に示す区間Iのσに応じた型開速度軌跡の変形は行われず、区間IIの変形のみを適用できる。すなわち、型開速度vと突き出し速度vとの同期率σの変化によって型開限の位置が変化することになる。
【0120】
なお、上記の2種類のケースでは、突き出し完了と型開限到達が同時に行われるという前提条件は共通する。
【0121】
図7を参照して、第1実施形態における同期率σを用いた成形品群Mの落下位置の調整手法の手順の一例を説明する。図7は、第1実施形態で実施される同期率σを用いた成形品群Mの落下位置の調整手法のフローチャートである。図7に示すフローチャートは、調整装置802によって例えば所定周期ごとに実施される。以下、図7のフローチャートに沿って説明する。
【0122】
ステップS101では、カメラ制御部803によってカメラ801が制御されて、型締装置100の可動金型12から落下する成形品群Mが撮影される。カメラ制御部803は、カメラ801から入力された撮影データを落下情報算出部804に出力する。ステップS101の処理が完了するとステップS102に進む。
【0123】
ステップS102では、落下情報算出部804により、ステップS101にて撮影された成形品群Mの撮影データを用いて、成形品群Mの水平速度vが算出される。落下情報算出部804は、例えばオプティカルフローなどの画像処理手法を利用して各成形品の水平方向の速度を算出して、これらの速度を平均化して成形品群Mの水平速度vとして算出できる。落下情報算出部804は、算出した水平速度vの情報を調整部805に出力する。ステップS102の処理が完了するとステップS103に進む。
【0124】
ステップS103では、調整部805により、ステップS102にて算出された成形品群Mの水平速度vが正の値である(v>0)か否かが判定される。ここで、水平速度vの正負の方向は、x軸の正負方向と同一である。すなわち、水平速度vが正の値のとき成形品群Mは、まっすぐ下へ落下するのではなく、固定金型11の側(図3の右側)に偏って落下し、水平速度vが負の値のとき成形品群Mは可動金型12の側(図3の左側)に偏って落下する傾向となる。
【0125】
ステップS103の判定の結果、水平速度vが正の値である場合(ステップS103のYes)には、成形品群Mは、まっすぐ下へ落下するのではなく、固定金型11の側(図3の右側)に偏って落下しているものと判断できるので、ステップS104にて、調整部805により、型開速度vと突き出し速度vとの同期率σが増加される。これにより、型開速度vが突き出し速度vに対して大きくなるよう調整され、型開速度vと突き出し速度vとの相対速度が負方向(図3の左方向)に生じるので、水平速度vが0側に近づき、この結果、成形品群Mの落下軌跡が真下になるように変化する。また、本ステップの同期率σの増加により、エジェクタ速度vと型開速度vとを同期するとき(図6の区間II)の型開量も増加する。このため、上述のように同期率σによらず型開限を同一とする制約を課す場合には、本ステップではさらに図6の区間Iの型開量を減少させる。具体的には、例えば区間Iの開始タイミングに対して型開の一時停止タイミング(図6の時間t1)を速くする。ステップS104の処理が完了するとステップS101に戻り、本制御フローが繰り返される。
【0126】
一方、ステップS103の判定の結果、水平速度vが正の値ではない場合(ステップS103のNo)には、ステップS105に進む。ステップS105では、調整部805により、ステップS102にて算出された成形品群Mの水平速度vが負の値である(v<0)か否かが判定される。
【0127】
ステップS105の判定の結果、水平速度vが負の値である場合(ステップS105のYes)には、成形品群Mは可動金型12の側(図3の左側)に偏って落下しているものと判断できるので、ステップS106にて、調整部805により、型開速度vと突き出し速度vとの同期率σが減少される。これにより、型開速度vが突き出し速度vに対して小さくなるよう調整され、型開速度vと突き出し速度vとの相対速度が正方向(図3の右方向)に生じるので、水平速度vが0側に近づき、この結果、成形品群Mの落下軌跡が真下になるように変化する。また、本ステップの同期率σの減少により、エジェクタ速度vと型開速度vとを同期するとき(図6の区間II)の型開量も減少する。このため、上述のように同期率σによらず型開限を同一とする制約を課す場合には、本ステップではさらに図6の区間Iの型開量を増加させる。具体的には、例えば区間Iの開始タイミングに対して型開の一時停止タイミング(図6の時間t1)を遅くする。ステップS106の処理が完了するとステップS101に戻り、本制御フローが繰り返される。
【0128】
一方、ステップS105の判定の結果、水平速度vが負の値ではない場合(ステップS105のNo)には、水平速度vが0であり(v=0)、成形品群Mが真下の所望の位置へ落下していると判断できるので、本制御フローを終了する。
【0129】
なお、本実施形態では水平速度vが0となること(v=0)を落下位置調整の完了の条件としているが、これに限られない。例えば、v=0を含む所定範囲に入ることを完了条件としてもよい。
【0130】
図8を参照して、第1実施形態にて実施される可動プラテン120の型開限の調整手法の一例を説明する。図8は、第1実施形態で実施される可動プラテン120の型開限の調整手法のフローチャートである。本実施形態では、成形品群Mの落下位置幅Wと、可動プラテン120の型開量との関係に応じて、可動プラテン120の型開限を調整する。図8に示すフローチャートは、調整装置802によって、例えば図7を参照して説明した成形品群Mの落下位置の調整処理が完了し、成形品群Mが真下に落下するよう調整された後に実施される。以下、図8のフローチャートに沿って説明する。
【0131】
ステップS201では、カメラ制御部803によってカメラ801が制御されて、金型から落下する成形品群Mが撮影される。カメラ制御部803は、カメラ801から入力された撮影データを落下情報算出部804に出力する。ステップS201の処理が完了するとステップS202に進む。
【0132】
ステップS202では、落下情報算出部804により、ステップS201にて撮影された成形品群Mの撮影データを用いて、成形品群Mの落下位置幅Wが算出される。落下情報算出部804は、算出した落下位置幅Wの情報を調整部805に出力する。ステップS202の処理が完了するとステップS203に進む。
【0133】
ステップS203では、調整部805により、ステップS202にて算出された成形品群Mの落下位置幅Wが、型開限に対して大き過ぎるか否かが判定される。落下位置幅Wと型開限との大小関係を比較する基準としては、例えば型開動作が完了したときの可動金型12の位置と、落下位置幅Wのうち可動金型12側の端部位置との距離を用いることができる。この距離が所定の閾値より小さい場合に、落下位置幅Wが型開限に対して大き過ぎると判定する。
【0134】
ステップS203の判定の結果、落下位置幅Wが型開限に対して大き過ぎる場合(ステップS203のYes)には、成形品群Mの落下範囲が金型と接近しているものと判断できるので、ステップS204にて、調整部805により、型開限が増加される。これにより、成形品群Mと金型との間隙が広がるので、成形品群Mの落下位置幅Wが型開限に対して適正な大きさと判断できる方向に変化する。ステップS204の処理が完了するとステップS201に戻り、本制御フローが繰り返される。
【0135】
一方、ステップS203の判定の結果、落下位置幅Wが型開限に対して大き過ぎない場合(ステップS203のNo)には、ステップS205に進む。ステップS205では、調整部805により、ステップS202にて算出された成形品群Mの落下位置幅Wが、型開限に対して小さ過ぎるか否かが判定される。
【0136】
ステップS205の判定の結果、落下位置幅Wが型開限に対して小さ過ぎる場合(ステップS205のYes)には、成形品群Mの落下範囲が金型から離れ過ぎており、型開限が無駄に大きく設定されているものと判断できるので、ステップS206にて、調整部805により、型開限が減少される。これにより、成形品群Mと金型との間隙が狭まるので、成形品群Mの落下位置幅Wが型開限に対して適正な大きさと判断できる方向に変化する。ステップS206の処理が完了するとステップS201に戻り、本制御フローが繰り返される。
【0137】
一方、ステップS205の判定の結果、落下位置幅Wが型開限に対して小さ過ぎない場合(ステップS205のNo)には、成形品群Mの落下位置幅Wが型開限に対して適正な大きさであると判断できるので、本制御フローを終了する。
【0138】
次に、本実施形態に係る射出成形機1の効果について説明する。本実施形態の射出成形機1は、可動プラテン120と固定プラテン110とを有する型締装置100を備える。射出成形機1は、可動プラテン120に取り付けられる可動金型12から落下する成形品群Mを撮影するカメラ801と、カメラ801により撮影された画像に基づき、固定プラテン110に取り付けられる固定金型11と成形品群Mとの距離に関する落下情報(本実施形態では成形品群Mの型開閉方向速度(水平速度v))を算出する落下情報算出部804と、落下情報算出部804により算出された落下情報に応じて、固定金型11に対する成形品群Mの落下位置を調整する調整部805と、を備える。
【0139】
上述のとおり、成形品の落下位置のバラツキを改善するために、従来は成形機の作業員が目視により成形品の落下位置を監視して、型開速度等を手動で調整することが一般的であった。これに対して本実施形態では、上記構成によって、可動金型12ら落下する成形品群Mのカメラ画像を利用して成形品群Mの落下位置を自動的に調整できる。このため、従来のように成形品を所望の位置に落下させるための設定を、作業員の熟練度などによらず画一的かつ自動的に行うことが可能となる。したがって、本実施形態の射出成形機1は、成形品を所望の位置に落下させるための設定を簡易に行うことができる。また、成形品の落下位置と固定金型11との距離を適正に設定及び補正することができるので、例えば成形品が固定金型11に当たって落下することなど、成形品の落下時間のバラツキやサイクルダウンを抑制することができる。
【0140】
また、本実施形態の射出成形機1において、調整部805は、可動プラテン120の型開速度vを変更することにより、固定金型11に対する成形品群Mの落下位置を調整する。より詳細には、型開速度vと、可動金型12から成形品群Mを突き出すエジェクタ装置200の突き出し速度vとの比である、可動プラテン120とエジェクタ装置200との同期率σを変更することにより、固定金型11に対する成形品群Mの落下位置を調整する。
【0141】
型開速度vと突き出し速度vとは型開閉方向に沿った相互に反対方向の速度であるので、両者の同期率σを変化させることにより、型開速度vに対する突き出し速度vの相対速度を変えることができ、この結果、成形品群Mの水平速度vも変化させることができる。このように制御量である同期率σと制御対象である成形品群Mの落下挙動との関連性が強いので、成形品群Mの落下位置の調整精度をさらに向上できる。
【0142】
成形品群Mは、水平速度が0となって真下に落下するのが理想的な挙動である。本実施形態では、成形品群Mの落下位置を調整するための落下情報として、成形品群Mの水平速度v(型開閉方向速度)を利用するので、成形品群Mの理想的な落下軌跡との差異を的確に捉えることができ、成形品群Mの落下位置の調整精度を向上できる。
【0143】
また、本実施形態の射出成形機1において、調整部805は、水平速度vが0になるよう同期率σを変更することにより、固定金型11に対する成形品群Mの落下位置を調整する。この構成により、成形品群Mの落下軌跡を、水平速度が0となって真下に落下する理想的な挙動に調整することができるので、成形品群Mの落下位置の調整精度をさらに向上できる。
【0144】
また、本実施形態の射出成形機1において、調整部805は、可動金型12から成形品群Mを突き出すエジェクタ装置200の突き出し開始タイミング(図6の時間t1)を変更することにより、固定金型11に対する成形品群Mの落下位置を調整する。
【0145】
図6を参照して説明したとおり、本実施形態では型開工程を二つの区間I、IIに分け、区間Iでは可動金型12と固定金型11とを接触状態から離間状態へ遷移させ、区間IIではエジェクタ装置200による成形品群Mの突き出しを行って、エジェクタ速度vと型開速度vとを同期させている。同期率σを変更すると、区間IIにおける型開量も変動する。上記構成により、エジェクタ装置200の突き出し開始タイミングt1を変更することにより、区間IIの型開量の変動に応じて区間Iの型開量を変更できるので、同期率σによらず型開限を同一とすることができる。
【0146】
また、本実施形態の射出成形機1において、落下情報算出部804は、可動金型12から落下する成形品群Mの型開閉方向に沿った落下位置幅Wを算出する。調整部805は、同期率σを用いた落下位置の調整の後に、落下情報算出部804により算出された落下位置幅Wと、可動プラテン120の型開量との関係に応じて、可動プラテン120の型開限を調整する。
【0147】
この構成により、成形品群Mの落下位置幅Wを型開限に対して適正な大きさに調整することができる。例えば、落下位置幅Wが型開限に対して小さ過ぎる場合には、型開限を狭めて適正に調整することにより、型開量が無駄に大きくならないため、サイクルダウンを抑制できる。また、落下位置幅Wが型開限に対して大き過ぎる場合には、型開限を広げて適正に調整することにより、成形品が固定金型11に当たって落下することによる成形品の落下時間のバラツキやサイクルダウンを抑制することができる。
【0148】
なお、第1実施形態では、可動金型12から落下する成形品群Mをカメラ801で撮影し、カメラにより撮影された画像に基づき落下情報(水平速度v、落下位置幅W)を算出する構成を例示したが、成形品群Mに関する情報を取得できればカメラ801以外の要素を用いてもよい。例えば、マイクロ波を照射して、その反射波から落下情報を取得する構成でもよい。
【0149】
[第2実施形態]
図9を参照して第2実施形態を説明する。図9は、第2実施形態に係る射出成形機が備える落下位置調整システム900の概略構成を示す図である。第2実施形態では、落下位置調整システム900が、カメラ画像ではなく、射出成形機1の作業員の操作入力に応じて成形品群Mの落下位置を調整する点で、第1実施形態の落下位置調整システム800と異なる。
【0150】
図9に示すように、落下位置調整システム900は、操作入力部901と、調整装置902とを備える。
【0151】
操作入力部901は、射出成形機1の作業員が操作入力を行うための要素である。本実施形態では、操作入力とは、可動プラテン120とエジェクタ装置200との同期率σの増減に関する情報である。作業員は、成形品群Mの落下具合を目視で観測して、操作入力部901を用いて、成形品群Mの落下位置を所望の位置するために可動プラテン120とエジェクタ装置200との同期率σの増減を調整する操作を行う。操作入力部901は、操作入力の情報を調整装置902に出力する。
【0152】
操作入力部901は、例えば図9に示すように、一方向に回すと同期率σが増加し、逆方向に回すと同期率σが減少するよう構成されるツマミ部品を適用できる。または、操作入力部901は、σ増加用及びσ減少用の一対のボタン装置を適用してもよいし、タッチパネルなどに表示する構成としてもよい。操作入力部901は、作業員が具体的な設定値を入力する必要がなく、ツマミ回転操作やボタン押下などの直観的な操作によって、同期率σを現在値に対して相対的に増減できるものが好ましい。
【0153】
調整装置902は、操作入力部901による作業員の操作入力に応じて固定金型11に対する成形品群Mの落下位置を調整する。調整装置902は、この機能に関して、入力検出部903と、調整部904と、を備える。
【0154】
入力検出部903は、射出成形機1の作業員の操作入力部901を介した操作入力を検出する。入力検出部903は、操作入力部901から操作入力として同期率σの情報が入力されたことを検出すると、操作入力に基づく同期率σの情報を調整部904に出力する。
【0155】
調整部904は、入力検出部903により検出された操作入力に応じて、可動プラテン120とエジェクタ装置200との同期率σを変更することにより、固定金型11に対する成形品群Mの落下位置を調整する。
【0156】
第2実施形態では、制御対象である成形品群Mの落下挙動との関連性が強い、可動プラテン120とエジェクタ装置200との同期率σを制御量として用いるので、作業員は成形品群Mの落下位置の調整を操作入力部901を介して直観的に行うことができ、成形品を所望の位置に落下させるための設定を簡易に行うことができる。また、成形品の落下位置と固定金型11との距離を適正に設定及び補正することができるので、例えば成形品が固定金型11に当たって落下することなど、操作入力に応じて成形品の落下時間のバラツキやサイクルダウンを抑制することができる。

【0157】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【0158】
上記実施形態では、成形品群Mの落下位置を調整するために、可動プラテン120とエジェクタ装置200との同期率σを調整して、型開速度vを変更する構成を例示したが、型開速度vを変更できれば同期率σ以外の他のパラメータを調整してもよい。また、成形品群Mの落下位置を調整できれば、型開速度v以外の制御量を制御する構成でもよい。
【0159】
上記実施形態では、固定金型11に対する成形品群Mの落下位置を調整する手法として、型開速度vの変更(σの変更)と、エジェクタ装置200の突き出し開始のタイミングの変更(図6の時間t1の変更)とを併用する構成を例示したが、これに限られない。例えば、型開速度vを変更するのみで、突き出し開始のタイミングは同一としてもよい。この場合、型開限は可動プラテン120とエジェクタ装置200との同期率σによって変わる。または、型開速度vを変えずに突出し開始のタイミングの変更のみを行ってもよい。
【0160】
上記実施形態では、型締装置100の固定金型11と成形品群Mとの距離に関する落下情報として水平速度vを例示したが、固定金型11と成形品群Mとの距離の変化を反映させるものであれば他の情報でもよい。
【符号の説明】
【0161】
1 射出成形機
11 固定金型
100 型締装置
200 エジェクタ装置
801 カメラ(成形品群情報取得部)
804 落下情報算出部
805,904 調整部
901 操作入力部
M 成形品群
型開速度
突き出し速度
水平速度(型開閉方向速度)
W 落下位置幅
σ 型締装置とエジェクタ装置との同期率
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9