(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態を説明する。
【0011】
(マウスガード)
図1に、本実施形態のマウスガードの一例を示す。
【0012】
マウスガード10は、左右両側の歯T及び歯肉Gを密接した状態で覆う。マウスガード10は、前歯部の外側(頬側)を覆う側の一部に、第1の樹脂を含む材料11と、シリコーンゲルを含む材料12と、第2の樹脂を含む材料13とが順次積層されている領域Aが形成されている。一方、マウスガード10の領域Aを除く領域、即ち、臼歯部の外側(頬側)及び内側(舌側)、並びに、前歯部の内側(舌側)を覆う側と、前歯部の外側(頬側)を覆う側の領域Aを除く領域は、第1の樹脂を含む材料11からなる。このため、マウスガード10の前歯部を覆う側の耐衝撃性を向上させることができる。
【0013】
ここで、前歯部とは、歯列における1番〜4番(または1番〜3番)を意味し、臼歯部とは、歯列における5番〜8番(または4番〜8番)を意味する(
図2参照)。
【0014】
また、外側(頬側)及び内側(舌側)とは、それぞれ、歯Tの頂点に対して、外側(頬側)及び内側(舌側)であることを意味する。
【0015】
なお、マウスガード10は、前歯部の外側(頬側)を覆う側の全域が領域Aであってもよい。
【0016】
また、マウスガード10の領域Aを除く領域は、第2の樹脂を含む材料13からなっていてもよいし、第1の樹脂を含む材料11及び第2の樹脂を含む材料13からなっていてもよい。
【0017】
さらに、領域A、領域Aを除く領域の何れも、上記構成に加えて、さらに1層以上の層が形成されていてもよい。
【0018】
上記の層を構成する材料は、特に限定されず、第1の樹脂を含む材料11、シリコーンゲルを含む材料12、第2の樹脂を含む材料13のいずれかであってもよく、その他の材料であってもよい。
【0019】
マウスガード10としては、特に限定されないが、カスタムメイドタイプ、マウスフォームドタイプ、ストックタイプ等が挙げられるが、カスタムメイドタイプが好ましい。
【0020】
また、マウスガード10は、上顎用、下顎用の何れであってもよい。
【0021】
シリコーンゲルは、オルガノポリシロキサンを主成分とする架橋密度の低い硬化物である。
【0022】
シリコーンゲルは、針入度試験(石油アスファルト/JIS K 2207)による針入度(1/10mm)が10以上150以下である、又は、アスカーC型デュロメータ(日本ゴム協会標準規格SRIS0101に規定されたデュロメータ)を用いた硬さ試験(熱硬化性ポリウレタンエラストマー成形物の物理試験方法/JIS K 7312)による硬度が10以上55以下である。
【0023】
シリコーンゲルは、ゲル状であり、粘着性もある。
【0024】
シリコーンゲルのヤング率は、通常、20kPa以上1500kPa以下である。
【0025】
第1の樹脂(第2の樹脂)としては、従来から使用されているマウスガード用の樹脂を使用することができ、例えば、ポリスチレン−ポリオレフィンブロック共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィンが挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0026】
第2の樹脂は、第1の樹脂と同一の材料であることが好ましい。これにより、第1の樹脂と第2の樹脂の接着性を向上させることができる。
【0027】
(マウスガードの製造方法の第1の例)
図3に、マウスガード10の製造方法の第1の例を示す。
【0028】
まず、マウスガードの使用者の口腔内の形状を反映した石膏模型を作製する。
【0029】
次に、吸引式の成形装置を用い、第1の樹脂を含む材料11からなるシートを加熱し軟化させた状態で、石膏模型上に押し当てることにより成形して、第1の樹脂を含む材料11からなるマウスガードの本体10Aを作製する(
図3(a)参照)。
【0030】
なお、吸引式の成形装置の代わりに、加圧式の成形装置を用いてもよい。
【0031】
次に、マウスガードの本体10Aの前歯部の外側(頬側)を覆う側の少なくとも一部に、シート状のシリコーンゲルを含む材料12を貼り付ける(
図3(b)参照)。さらに、シリコーンゲルを含む材料12の少なくとも一部を覆うように、シート状の第2の樹脂を含む材料13を被せる(
図3(c)参照)。
【0032】
最後に、マウスガードの本体10Aに被せられた第2の樹脂を含む材料13を加熱し、軟化させて一体化させた後、室温まで冷却してマウスガード10が完成する(
図3(d)参照)。
【0033】
この場合、マウスガード10の領域Aは、第1の樹脂を含む材料11と、シリコーンゲルを含む材料12と、第2の樹脂を含む材料13とが順次積層されており、マウスガード10の領域Aを除く領域は、第1の樹脂を含む材料11からなる。
【0034】
第2の樹脂を含む材料13の加熱方法としては、特に限定されないが、ハンドバーナー、ハンドヒーター等で加熱する方法等が挙げられる。
【0035】
第2の樹脂を含む材料13の加熱温度は、100〜120℃であることが好ましい。
【0036】
(マウスガードの製造方法の第2の例)
次に、マウスガードの製造方法の第2の例を説明する。
【0037】
まず、マウスガードの使用者の口腔内の形状を反映した石膏模型を作製する。
【0038】
次に、吸引式の成形装置を用い、第1の樹脂を含む材料11からなるシートを加熱し軟化させた状態で、石膏模型上に押し当てることにより成形して、第1の樹脂を含む材料11からなるマウスガードの本体10Aを作製する(
図3(a)参照)。
【0039】
なお、吸引式の成形装置の代わりに、加圧式の成形装置を用いてもよい。
【0040】
次に、マウスガードの本体10Aを切断して前歯部の外側及び内側を覆う領域のみの断片とした後、断片の前歯部の外側を覆う側の少なくとも一部に、シート状のシリコーンゲルを含む材料12を貼り付ける。
【0041】
次に、シリコーンゲルを含む材料12が貼り付けられた断片を石膏模型に装着した後、再び、吸引式の成形装置を用い、第2の樹脂を含む材料13からなるシートを加熱し軟化させた状態で、断片が装着された石膏模型上に押し当てることにより成形して、マウスガード10が完成する。
【0042】
この場合、マウスガード10の領域Aは、第1の樹脂を含む材料11と、シリコーンゲルを含む材料12と、第2の樹脂を含む材料13とが順次積層されており、マウスガード10の領域Aを除く領域は、第2の樹脂を含む材料13からなる、又は、第1の樹脂を含む材料11と、第2の樹脂を含む材料13とが順次積層されている。
【0043】
なお、第1の樹脂を含む材料11からなるマウスガードの本体10Aの代わりに、第2の樹脂を含む材料13からなるマウスガードの本体10Aを作製してもよい。この場合、マウスガード10の領域Aは、第2の樹脂を含む材料13と、シリコーンゲルを含む材料12と、第2の樹脂を含む材料13とが順次積層されており、マウスガード10の領域Aを除く領域は、第2の樹脂を含む材料13からなる。
【0044】
また、第2の樹脂を含む材料13からなるシートの代わりに、第1の樹脂を含む材料11からなるシートを石膏模型上に押し当てることにより成形してもよい。この場合、マウスガード10の領域Aは、第1の樹脂を含む材料11と、シリコーンゲルを含む材料12と、第1の樹脂を含む材料11とが順次積層されており、マウスガード10の領域Aを除く領域は、第1の樹脂を含む材料11からなる。
【0045】
(マウスガードの製造方法の第3の例)
次に、マウスガードの製造方法の第3の例を説明する。
【0046】
まず、マウスガードの使用者の口腔内の形状を反映した石膏模型を作製する。
【0047】
次に、吸引式の成形装置を用い、第1の樹脂を含む材料11からなるシートを加熱し軟化させた状態で、石膏模型上に押し当てることにより成形して、第1の樹脂を含む材料11からなるマウスガードの本体10Aを作製する(
図3(a)参照)。
【0048】
なお、吸引式の成形装置の代わりに、加圧式の成形装置を用いてもよい。
【0049】
次に、マウスガードの本体10Aの前歯部の外側を覆う側の少なくとも一部に、シート状のシリコーンゲルを含む材料12を貼り付ける。
【0050】
次に、シリコーンゲルを含む材料12が貼り付けられたマウスガードの本体10Aを石膏模型に装着した後、再び、吸引式の成形装置を用い、第2の樹脂を含む材料13からなるシートを加熱し軟化させた状態で、マウスガードの本体10Aが装着された石膏模型上に押し当てることにより成形して、マウスガード10が完成する。
【0051】
この場合、マウスガード10の領域Aは、第1の樹脂を含む材料11と、シリコーンゲルを含む材料12と、第2の樹脂を含む材料13とが順次積層されており、マウスガード10の領域Aを除く領域は、第1の樹脂を含む材料11と、第2の樹脂を含む材料13とが順次積層されている。
【0052】
なお、第1の樹脂を含む材料11からなるマウスガードの本体10Aの代わりに、第2の樹脂を含む材料13からなるマウスガードの本体10Aを作製してもよい。この場合、マウスガード10の領域Aは、第2の樹脂を含む材料13と、シリコーンゲルを含む材料12と、第2の樹脂を含む材料13とが順次積層されており、マウスガード10の領域Aを除く領域は、第2の樹脂を含む材料13からなる。
【0053】
また、第2の樹脂を含む材料13からなるシートの代わりに、第1の樹脂を含む材料11からなるシートを石膏模型上に押し当てることにより成形してもよい。この場合、マウスガード10の領域Aは、第1の樹脂を含む材料11と、シリコーンゲルを含む材料12と、第1の樹脂を含む材料11とが順次積層されており、マウスガード10の領域Aを除く領域は、第1の樹脂を含む材料11からなる。
【実施例】
【0054】
マウスガードの耐衝撃性を評価するのが困難であるため、シートの耐衝撃性を評価することにより、マウスガードの耐衝撃性を間接的に評価した。
【0055】
[実験例1]
厚さ1mmのポリスチレン−ポリオレフィンブロック共重合体シートとしての、インパクトガード(株式会社ジーシー製)、厚さ1mmのシリコーンゲルシートとしての、アルファゲル θ−5(株式会社タイカ製)及び厚さ1mmのインパクトガード(株式会社ジーシー製)を順次積層した後、ハンドバーナーで約120℃に加熱し、積層シートを得た。
【0056】
アルファゲル θ−5(株式会社タイカ製)は、針入度(1/10mm)が55であり、ヤング率が119.5kPaである。
【0057】
[実験例2]
厚さ1mmのシリコーンゲルシートとして、アルファゲル θ−7(株式会社タイカ製)を用いた以外は、実験例1と同様にして、積層シートを得た。
【0058】
アルファゲル θ−7(株式会社タイカ製)は、針入度(1/10mm)が100であり、ヤング率が37.5kPaである。
【0059】
[実験例3]
厚さ1mmのシリコーンゲルシートとして、アルファゲル θ−8(株式会社タイカ製)を用いた以外は、実験例1と同様にして、積層シートを得た。
【0060】
アルファゲル θ−8(株式会社タイカ製)は、硬度が52.5であり、ヤング率が1432.6kPaである。
【0061】
[比較実験例1]
厚さ3mmのポリスチレン−ポリオレフィンブロック共重合体シートとして、インパクトガード(株式会社ジーシー製)を用いた。
【0062】
[実験例4]
シリコーンゲルシートの厚さを2mmに変更した以外は、実験例1と同様にして、積層シートを得た。
【0063】
[実験例5]
シリコーンゲルシートの厚さを2mmに変更した以外は、実験例2と同様にして、積層シートを得た。
【0064】
[比較実験例2]
厚さ4mmのポリスチレン−ポリオレフィンブロック共重合体シートとして、インパクトガード(株式会社ジーシー製)を用いた。
【0065】
[耐衝撃性]
厚さ5mmのアクリル板上に設置したシート上に、高さ10cmから、直径30mm、重さ111gの鉄球を落下させて、シート及びアクリル板を抜けて伝わった荷重を、ロードセルを用いて計測し、平均値(ave)及び標準偏差(sd)を求めた。
【0066】
また、コントロールとして、シートを設置せず、厚さ5mmのアクリル板(コントロール)に、高さ10cmから、直径30mm、重さ111gの鉄球を落下させて、アクリル板を抜けて伝わった荷重を、ロードセルを用いて計測し、平均値及び標準偏差を求めた。
【0067】
さらに、式
[(コントロールの荷重の平均値)−(シート及びアクリル板を抜けて伝わった荷重の平均値)]/(コントロールの荷重の平均値)×100
により、衝撃緩和率を算出し、耐衝撃性を評価した。
【0068】
表1に、シートの耐衝撃性の評価結果を示す。
【0069】
【表1】
表1から、実験例1〜3の積層シートは、厚さが同一の比較実験例1のシートに対して、耐衝撃性が向上していることがわかる。このため、マウスガードの前歯部の外側を覆う側に、実験例1〜3の積層シートを配置すると、比較実験例1のシートを配置した場合に対して、前歯部を覆う側の耐衝撃性が向上すると考えられる。
【0070】
また、実験例4、5の積層シートは、厚さが同一の比較実験例2のシートに対して、耐衝撃性が向上していることがわかる。このため、マウスガードの前歯部の外側を覆う側に、実験例4、5の積層シートを配置すると、比較実験例2のシートを配置した場合に対して、前歯部を覆う側の耐衝撃性が向上すると考えられる。
【0071】
次に、耐衝撃性を向上させる効果が確認された実験例1の積層シートを構成する材料を用いて、マウスガードを作製した。
【0072】
[実施例1]
まず、マウスガードの使用者の口腔内の形状を反映した石膏模型を作製した。
【0073】
次に、加熱吸引式のマウスガード作製装置プロフォーム(株式会社ジーシー製)を用い、厚さ1mmのインパクトガード(株式会社ジーシー製)のシートを約120℃に加熱し軟化させた状態で、石膏模型上に押し当て、下部より吸引することにより成形して、マウスガードの本体を作製した。
【0074】
次に、得られたマウスガードの本体の前歯部の外側(頬側)を覆う側に、縦20mm×横80mm×厚さ1mmのアルファゲル θ−5(株式会社タイカ製)を貼り付けた。次に、アルファゲル θ−5(株式会社タイカ製)を覆うように、縦30mm×横100mm×厚さ1mmのインパクトガード(株式会社ジーシー製)を被せた。次に、マウスガードの本体に被せられたインパクトガード(株式会社ジーシー製)をハンドバーナーで約120℃に加熱して一体化させた後、室温まで冷却し、マウスガードを作製した。
【0075】
[実施例2]
まず、マウスガードの使用者の口腔内の形状を反映した石膏模型を作製した。
【0076】
次に、加熱吸引式のマウスガード作製装置プロフォーム(株式会社ジーシー製)を用い、厚さ1mmのインパクトガード(株式会社ジーシー製)のシートを約120℃に加熱し軟化させた状態で、石膏模型上に押し当て、下部より吸引することにより成形して、マウスガードの本体を作製した。
【0077】
次に、得られたマウスガードの本体を切断して前歯部の外側及び内側を覆う領域のみの断片とした後、断片の前歯部の外側を覆う側に、縦20mm×横80mm×厚さ1mmのアルファゲル θ−5(株式会社タイカ製)を貼り付けた。
【0078】
次に、アルファゲル θ−5(株式会社タイカ製)が貼り付けられた断片を石膏模型に装着した後、再び、加熱吸引式のマウスガード作製装置を用い、厚さ1mmのインパクトガード(株式会社ジーシー製)のシートを約120℃に加熱し軟化させた状態で、断片が装着された石膏模型上に押し当て、下部より吸引することにより成形して、マウスガードを作製した。