(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位A1及びカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位A2を含み、前記構成単位A2の含有率が、全構成単位に対して6質量%〜15質量%の範囲であり、重量平均分子量が40万〜150万の範囲であり、かつ、ガラス転移温度が0℃以下である(メタ)アクリル系共重合体Aと、
単独重合体のガラス転移温度が80℃以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位B1、単独重合体のガラス転移温度が0℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位B2、並びに、アミノ基及び水酸基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単量体に由来し、前記構成単位B1及び前記構成単位B2とは異なる構成単位B3を含み、重量平均分子量が0.5万〜20万の範囲であり、かつ、ガラス転移温度が30℃以上である(メタ)アクリル系共重合体Bと、
架橋剤と、を含有し、
前記(メタ)アクリル系共重合体Bに対する前記(メタ)アクリル系共重合体Aの含有比率が、質量基準で、100/5〜100/30の範囲であり、
前記(メタ)アクリル系共重合体Aの溶解度パラメータと前記(メタ)アクリル系共重合体Bの溶解度パラメータとの差の絶対値が、0.6(J/cm3)1/2〜2.4(J/cm3)1/2の範囲である加飾フィルム用粘着剤組成物。
前記(メタ)アクリル系共重合体Bにおける前記構成単位B2の含有率が、全構成単位に対して、5質量%〜40質量%である請求項1に記載の加飾フィルム用粘着剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0011】
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本明細書において、各成分の量は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、複数種の物質の合計量を意味する。
【0012】
本明細書において「粘着剤組成物」とは、(メタ)アクリル系共重合体と架橋剤とを混合した後から、架橋反応が終了する前の、液状又はペースト状の物質を意味する。
本明細書において「粘着剤層」とは、粘着剤組成物における架橋反応が終了した後の物質からなる層を意味する。粘着剤層は、例えば、固形状又はゲル状の層である。
【0013】
本明細書において「(メタ)アクリル系共重合体」とは、共重合体を構成する単量体のうち、少なくとも主成分である単量体が(メタ)アクリロイル基を有する単量体である共重合体をそれぞれ意味する。ここでいう主成分である単量体とは、共重合体を構成する単量体の中で最も含有率(質量%)が大きい単量体を意味する。本発明における(メタ)アクリル系共重合体のある実施態様では、主成分である(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が全構成単位の50質量%以上である。
【0014】
本明細書において「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両方を包含する用語である。
【0015】
[加飾フィルム用粘着剤組成物]
本発明の加飾フィルム用粘着剤組成物(以下、適宜「粘着剤組成物」と称する。)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位A1及びカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位A2を含み、上記構成単位A2の含有率が、全構成単位に対して6質量%〜15質量%の範囲であり、重量平均分子量が40万〜150万の範囲であり、かつ、ガラス転移温度が0℃以下である(メタ)アクリル系共重合体A(以下、適宜「特定共重合体A」と称する。)と、単独重合体のガラス転移温度が80℃以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位B1、単独重合体のガラス転移温度が0℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位B2、並びに、アミノ基及び水酸基から選ばれる少なくとも1種の官能基(以下、適宜「特定官能基」と称する。)を有する単量体に由来し、上記構成単位B1及び上記構成単位B2とは異なる構成単位B3を含み、重量平均分子量が0.5万〜20万の範囲であり、かつ、ガラス転移温度が30℃以上である(メタ)アクリル系共重合体B(以下、適宜「特定共重合体B」と称する。)と、架橋剤と、を含有し、特定共重合体Bに対する特定共重合体Aの含有比率〔特定共重合体A/特定共重合体B〕(以下、適宜「含有比率(A/B)」と称する。)が、質量基準で、100/5〜100/30の範囲であり、特定共重合体Aの溶解度パラメータと特定共重合体Bの溶解度パラメータとの差の絶対値(以下、適宜「SP値差(|A−B|)」と称する。)が、0.6(J/cm
3)
1/2〜2.4(J/cm
3)
1/2の範囲の粘着剤組成物である。
【0016】
複雑な形状、例えば、三次元曲面を有する成形体に対し加飾フィルムを貼着するために、加飾フィルムを高い温度に加熱して引き伸ばすと、加飾フィルムに大きな歪が生じ得る。加飾フィルムに大きな歪が生じると、加飾後の成形体を高温条件下に置いた場合に、加飾フィルムのずれ、剥がれ等の不具合が生じ易い。そのため、加飾フィルムが備える粘着剤層には、加飾フィルムを高温(例えば、140℃)に加熱して貼着した加飾後の成形体を高温条件下に置いた場合であっても、加飾フィルムに生じた歪の影響を受けない程度の高い粘着力を示すことが求められる。
【0017】
これに対し、本発明の粘着剤組成物によれば、高温加熱による被着体への貼着後、高温環境下で高い粘着力を示す粘着剤層を形成できる。
本発明の粘着剤組成物がこのような効果を奏し得る理由については明らかでないが、本発明者らは以下のように推測している。但し、以下の推測は、本発明の粘着剤組成物の効果を限定的に解釈するものではなく、一例として説明するものである。
【0018】
従来、粘着剤組成物では、主成分となる重合体(即ち、主ポリマー)と比較的低分子の重合体(所謂、副ポリマー)とを組み合わせて用いることで、各種物性を調整することが行われている。例えば、特開2009−35588号公報(既述の特許文献1)に記載の発明では、加熱して成形体に貼着させる加飾フィルムにおいて、粘着剤層の粘着力をより高く保つために、副ポリマーのガラス転移温度(Tg)を高める設計を行っている。
これに対し、発明者らは、副ポリマー中に構成単位として、ガラス転移温度(Tg)を下げる要素である「単独重合体のガラス転移温度が0℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位B2」を含ませることで、粘着剤組成物が被着体との濡れ性、凝集力等を適度に発現し、高温に加熱された粘着剤層が高い粘着力を示し、かつ、被着体への貼着後、高温環境下に置かれても高い粘着力を示すことを見出した。
【0019】
高温加熱後に高い粘着力を示す粘着剤層を形成するためには、粘着剤組成物の被着体への濡れ性は、高いことが望ましく、粘着剤組成物の凝集力は、高すぎず、低すぎず、適度に高いことが望ましい。また、被着体への貼着後、高温環境下において粘着剤層の高い粘着力を保持させるためには、高温環境下において凝集力が経時で保持されることが望ましい。
本発明の粘着剤組成物は、特定共重合体Aと特定共重合体Bと架橋剤とを含み、特定共重合体Aと特定共重合体Bとの含有比率が特定の範囲内であり、かつ、特定共重合体Aの溶解度パラメータと特定共重合体Bの溶解度パラメータの差の絶対値〔即ち、SP値差(|A−B|)〕が特定の範囲内であることで、被着体への濡れ性が高く、適度に高い凝集力を示し、かつ、その適度に高い凝集力が高温環境下で低下し難い粘着剤組成物となる。その結果、高温加熱による被着体への貼着後、高温環境下で高い粘着力を示す粘着剤層を形成できる。
【0020】
詳細には、本発明の粘着剤組成物は、特定共重合体Bを含むため、適度に高い凝集力を示す。そのため、粘着剤層は、高温加熱後に高い粘着力を示し、かつ、その高い粘着力が高温環境下に置かれても低下し難い。
また、本発明の粘着剤組成物では、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位A2を特定の範囲の比率で含み、かつ、特定の範囲の重量平均分子量を有する特定共重合体Aと、単独重合体のガラス転移温度が0℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位B2を含み、かつ、特定共重合体Aの重量平均分子量よりも低い特定の範囲の重量平均分子量を有する特定共重合体Bと、を特定の比率で含む組成とし、かつ、特定共重合体A及び特定共重合体Bの溶解度パラメータの差の絶対値〔即ち、SP値差(|A−B|)〕を特定の範囲内に調整することで、特定共重合体Bの特定共重合体Aとの相溶性が過度にならないため、特定共重合体Bが加熱中に粘着剤層の表面(所謂、被着体との界面付近)に適度に局在化する。特定共重合体Bが粘着剤層の表面に適度に局在化すると、被着体との濡れ性が向上するため、粘着剤層が高い粘着力で被着体に貼着し得る。そのため、粘着剤層は、高温加熱後に高い粘着力を示し、かつ、その高い粘着力が高温環境下に置かれても低下し難い。なお、SP値差(|A−B|)が特定の範囲外であると、特定共重合体Aと特定共重合体Bとが相溶し難くなるため、特定共重合体Bが加熱中に粘着剤層の表面に過度に局在化する。特定共重合体Bが粘着剤層の表面に過度に局在化すると、被着体との濡れ性が向上し過ぎるため、粘着剤層の粘着力は低下する。
また、本発明の粘着剤組成物に含まれる特定共重合体Bは、所謂、粘着付与樹脂の効果を奏する。通常、粘着付与樹脂は、加熱後の粘着力を経時で低下させる方向に作用する。これに対し、本発明の粘着剤組成物は、特定共重合体Bが、単独重合体のガラス転移温度が0℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位B2を含むことで、特定共重合体Aとの相溶性が適度となるため、粘着剤層の高い粘着力が、高温環境下に置かれても低下し難い。
【0021】
本発明の粘着剤組成物では、特定共重合体Bに含まれるアミノ基及び水酸基から選ばれる少なくとも1種の官能基(即ち、特定官能基)を有する単量体に由来する構成単位B3と、特定共重合体Aに含まれる構成単位A2のカルボキシ基とが相互作用するため、高い凝集力を示し得る。また、特定共重合体Bにおける特定官能基と、特定共重合体Aにおけるカルボキシ基との相互作用により、特定共重合体Bが加熱中に粘着剤層の表面に過度に局在化することが抑制されるため、粘着剤組成物の被着体への濡れ性が適度に高くなる。その結果、粘着剤層は、高温加熱後に高い粘着力を示し、かつ、その高い粘着力が高温環境下に置かれても低下し難い。
また、本発明の粘着剤組成物は、特定共重合体Aのガラス転移温度が0℃以下であるため、形成される粘着剤層が硬くなりすぎず、特定共重合体Bのガラス転移温度が30℃以上であるため、形成される粘着剤層が高い弾性率を有する。これにより、粘着剤層は、高温加熱後に高い粘着力を示し、かつ、その高い粘着力が高温環境下に置かれても低下し難い。
【0022】
以下、本発明の粘着剤組成物の各成分について説明する。
なお、本明細書では、特定共重合体A及び特定共重合体Bを総称して、「特定共重合体」と称する場合がある。
【0023】
〔特定共重合体A〕
本発明の粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル系共重合体A(即ち、特定共重合体A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位A1及びカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位A2を含み、上記構成単位A2の含有率が、全構成単位に対して6質量%〜15質量%の範囲であり、重量平均分子量が40万〜150万の範囲であり、かつ、ガラス転移温度が0℃以下である。
【0024】
(構成単位A1)
特定共重合体Aは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位A1を含む。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位A1は、粘着剤層の粘着力の調整に寄与する。
【0025】
本明細書において「(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位」とは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0026】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、無置換の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が好ましく、その種類は特に制限されない。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよい。また、アルキル基の炭素数は、例えば、粘着剤層の粘着力、及び、粘着剤層と基材との密着性の観点から、1〜18の範囲が好ましく、1〜12の範囲がより好ましい。
【0027】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、i−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えば、粘着剤層の凝集力と粘着力とを調整しやすいとの観点から、メチルアクリレート(MA)、n−ブチルアクリレート(n−BA)、及び2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、n−ブチルアクリレート(n−BA)がより好ましい。
【0028】
特定共重合体Aは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位A1を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0029】
特定共重合体Aにおける構成単位A1の含有率(割合)は、例えば、粘着剤層の粘着力を調整しやすいとの観点から、全構成単位(即ち、特定共重合体Aを構成する全構成単位)に対して、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。
特定共重合体Aにおける構成単位A1の含有率の上限は、特に制限されず、例えば、全構成単位に対して、94質量%以下が好ましい。
【0030】
(構成単位A2)
(メタ)アクリル系共重合体A(即ち、特定共重合体A)は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位A2を含む。
本明細書において、「カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位」とは、カルボキシ基を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0031】
カルボキシ基を有する単量体の種類は、特に制限されない。
カルボキシ基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、グルタコン酸、シトラコン酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、カルボキシ基を有する単量体としては、例えば、粘着剤層の粘着力、及び、粘着剤層と基材との密着性の観点から、アクリル酸(AA)が好ましい。
【0032】
特定共重合体Aは、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位A2を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0033】
特定共重合体Aにおける構成単位A2の含有率(割合)は、全構成単位(即ち、特定共重合体Aを構成する全構成単位)に対して、6質量%〜15質量%の範囲であり、6質量%〜13質量%の範囲が好ましく、6質量%〜10質量%の範囲がより好ましい。
特定共重合体Aにおける構成単位A2の含有率が、全構成単位に対して6質量%以上であると、特定共重合体Aと架橋剤との架橋反応が十分に進行するため、高温加熱による被着体への貼着後、高温環境下に置かれても、粘着剤層が高い粘着力を示し得る。
また、特定共重合体Aにおける構成単位A2の含有率が、全構成単位に対して6質量%以上であると、粘着剤層が被着体(特に、ABS樹脂、ポリカーボネート等の非極性の材料で形成された被着体)に対し、高い粘着力を示し得る。
特定共重合体Aにおける構成単位A2の含有率が、全構成単位に対して15質量%以下であると、特定共重合体Aと架橋剤との架橋反応が過度に進行しないため、粘着剤層が適度な粘弾性を示し、高温加熱による被着体への貼着後、高温環境下に置かれても高い粘着力を示し得る。
また、特定共重合体Aにおける構成単位A2の含有率が、全構成単位に対して15質量%以下であると、特定共重合体Aが特定共重合体Bと適度に相溶するため、特定共重合体Bが加熱中に粘着剤層の表面(所謂、被着体との界面付近)に適度に局在化する。特定共重合体Bが粘着剤層の表面に適度に局在化すると、被着体(例えば、成形体;以下、同じ)との濡れ性が向上するため、粘着剤層が高い粘着力で被着体に貼着する。そのため、高温加熱による被着体への貼着後、高温環境下に置かれても、粘着剤層が高い粘着力を示し得る。また、特定共重合体Aが特定共重合体Bと適度に相溶すると、例えば、相溶性の低下に起因する粘着力の低下が防止されるため、高温環境下においても高い粘着力を保持し得る。
【0034】
(その他の構成単位A3)
特定共重合体Aは、本発明の効果が発揮される範囲内において、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位A1及びカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位A2以外の構成単位(所謂、その他の構成単位A3)を含んでいてもよい。
【0035】
その他の構成単位A3を構成する単量体の種類は、特に制限されない。
その他の構成単位A3を構成する単量体としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートに代表される環状基を有する(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、及びエトキシエチル(メタ)アクリレートに代表されるアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレン、及びビニルトルエンに代表される芳香族モノビニル、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルに代表されるシアン化ビニル、並びに、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及びバーサチック酸ビニルに代表されるビニルエステルが挙げられる。また、これらの単量体の各種誘導体が挙げられる。
【0036】
−特定共重合体Aの重量平均分子量−
特定共重合体Aの重量平均分子量(Mw)は、40万〜150万の範囲であり、50万〜120万の範囲が好ましく、60万〜100万の範囲がより好ましい。
特定共重合体Aの重量平均分子量(Mw)が40万以上であると、粘着剤組成物の凝集力が適度に高くなるため、粘着剤層は、高温環境下に置かれても高い粘着力を示し得る。
また、特定共重合体Aの重量平均分子量(Mw)が150万以下であると、凝集力が過度に高くなりすぎず、また、被着体との濡れ性が良好となるため、粘着剤層が高い粘着力で被着体に貼着し得る。そのため、高温環境下においても高い粘着力を保持し得る。
特定共重合体Aの重量平均分子量(Mw)は、反応温度、反応時間、有機溶媒の使用量、重合開始剤の種類、重合開始剤の使用量等を調整することにより、所望の値にできる。
【0037】
特定共重合体Aの重量平均分子量(Mw)は、下記の方法により測定される値である。具体的には、下記(1)〜(3)に従って測定する。
(1)特定共重合体Aの溶液を剥離紙に塗布し、100℃で1分間乾燥し、フィルム状の特定共重合体Aを得る。
(2)上記(1)で得られたフィルム状の特定共重合体Aとテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度が0.2質量%である試料溶液を得る。
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、下記条件にて、標準ポリスチレン換算値として、特定共重合体Aの重量平均分子量(Mw)を測定する。
【0038】
〜条件〜
測定装置:高速GPC(型番:HLC−8220 GPC、東ソー(株))
検出器:示差屈折率計(RI)(HLC−8220に組込、東ソー(株))
カラム:TSK−GEL GMHXL(東ソー(株))を直列に4本接続
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.2質量%
注入量:100μL
流量:0.6mL/分
【0039】
−特定共重合体Aのガラス転移温度−
特定共重合体Aのガラス転移温度(Tg)は、0℃以下である。
特定共重合体Aのガラス転移温度(Tg)が0℃以下であると、粘着剤層が硬くなりすぎず、高温加熱により貼着した後、高温環境下に置かれても高い粘着力を示す傾向がある。
また、特定共重合体Aのガラス転移温度(Tg)は、粘着剤層の粘着力をより向上し得るとの観点から、−50℃以上0℃以下が好ましく、−40℃以上0℃以下がより好ましく、−30℃以上−10℃以下が更に好ましい。
【0040】
特定共重合体Aのガラス転移温度(Tg)は、下記の式1から計算により求められる絶対温度(K)をセルシウス温度(℃)に換算した値である。
1/Tg=m1/Tg1+m2/Tg2+・・・+m(k−1)/Tg(k−1)+mk/Tgk (式1)
【0041】
式1中、Tg1、Tg2、・・・、Tg(k−1)、及びTgkは、特定共重合体Aを構成する各単量体を単独重合体としたときの絶対温度(K)で表されるガラス転移温度(Tg)をそれぞれ表す。m1、m2、・・・、m(k−1)、及びmkは、特定共重合体Aを構成する各単量体のモル分率をそれぞれ表し、m1+m2+・・・+m(k−1)+mk=1である。
なお、絶対温度(K)から273を引くことで絶対温度(K)をセルシウス温度(℃)に換算でき、セルシウス温度(℃)に273を足すことでセルシウス温度(℃)を絶対温度(K)に換算できる。
【0042】
「単独重合体としたときのガラス転移温度(Tg)」とは、その単量体を単独で重合して製造した単独重合体のガラス転移温度(Tg)をいう。
単独重合体のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定装置(DSC)(型番:EXSTAR6000、セイコーインスツル(株))を用い、窒素気流中、測定試料10mg、昇温速度10℃/分の条件で測定し、得られたDSCカーブの変曲点を単独重合体のガラス転移温度(Tg)としたものである。
なお、「単独重合体としたときのガラス転移温度」を「単独重合体のガラス転移温度」とも称する。
【0043】
代表的な単量体を単独で重合して製造した「単独重合体のセルシウス温度(℃)で表されるガラス転移温度(Tg)」は、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)が−76℃、2−エチルヘキシルメタクリレート(2EHMA)が−10℃、n−ブチルアクリレート(n−BA)が−57℃、n−ブチルメタクリレートが21℃、t−ブチルアクリレート(t−BA)が41℃、t−ブチルメタクリレートが107℃、メチルアクリレート(MA)が5℃、メチルメタクリレート(MMA)が103℃、イソボニルメタクリレート(IBMX)が155℃、エチルアクリレート(EA)が−27℃、メタクリル酸が185℃、4−ヒドロキシブチルアクリレートが−39℃、2−ヒドロキシエチルアクリレートが−15℃、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2HEMA)が55℃、アクリル酸(AA)が163℃、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DM)が18℃である。
【0044】
特定共重合体Aのガラス転移温度(Tg)は、例えば、単独重合体としたときのガラス転移温度(Tg)が異なる単量体を用いることで、適宜調整できる。
【0045】
本発明の粘着剤組成物に含まれる特定共重合体Aは、1種のみであってもよく、単量体の組成、重量平均分子量(Mw)、ガラス転移温度(Tg)等が異なる2種以上であってもよい。
【0046】
〔特定共重合体B〕
本発明の粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル系共重合体B(即ち、特定共重合体B)は、単独重合体のガラス転移温度が80℃以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位B1、単独重合体のガラス転移温度が0℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位B2、並びに、アミノ基及び水酸基から選ばれる少なくとも1種の官能基(即ち、特定官能基)を有する単量体に由来し、上記構成単位B1及び上記構成単位B2とは異なる構成単位B3を含み、重量平均分子量が0.5万〜20万の範囲であり、かつ、ガラス転移温度が30℃以上である。
【0047】
(構成単位B1)
特定共重合体Bは、単独重合体のガラス転移温度(Tg)が80℃以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位B1を含む。
単独重合体のガラス転移温度(Tg)が80℃以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位B1は、凝集力に寄与する。
【0048】
単独重合体のガラス転移温度(Tg)が80℃以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、単独重合体のガラス転移温度(Tg)が80℃以上であり、かつ、無置換の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が好ましく、その種類は特に制限されない。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよい。また、アルキル基の炭素数は、例えば、粘着剤層の粘着力、及び、粘着剤層と基材との密着性の観点から、1〜18の範囲が好ましく、1〜12の範囲がより好ましい。
【0049】
単独重合体のガラス転移温度(Tg)が80℃以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、メチルメタクリレート(MMA、Tg:103℃)、イソボニルメタクリレート(IBMX、Tg:155℃)、イソボニルメタクリレート(Tg:96℃)、i−プロピルメタクリレート(Tg:81℃)等が挙げられる。
これらの中でも、ガラス転移温度(Tg)が80℃以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えば、凝集力と濡れ性とのバランスの観点から、メチルメタクリレート(MMA)及びイソボニルメタクリレート(IBMX)から選ばれる少なくとも1種が好ましく、メチルメタクリレート(MMA)がより好ましい。
【0050】
特定共重合体Bは、単独重合体のガラス転移温度(Tg)が80℃以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位B1を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0051】
特定共重合体Bにおける構成単位B1の含有率(割合)は、例えば、凝集力と濡れ性とのバランスの観点から、全構成単位(即ち、特定共重合体Bを構成する全構成単位)に対して、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましい。
特定共重合体Bにおける構成単位B1の含有率の上限は、特に制限されず、例えば、全構成単位に対して、93質量%以下が好ましい。
【0052】
(構成単位B2)
特定共重合体Bは、単独重合体のガラス転移温度(Tg)が0℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位B2を含む。
特定共重合体Bが構成単位B2を含むと、特定共重合体Bが特定共重合体Aと適度に相溶するため、特定共重合体Bが加熱中に粘着剤層の表面(所謂、被着体との界面付近)に適度に局在化する。特定共重合体Bが粘着剤層の表面に適度に局在化すると、被着体との濡れ性が向上するため、粘着剤層が高い粘着力を示し得る。このため、加飾フィルムを高温に加熱して被着体に貼着した後、高温環境下に置いても高い粘着力が保持される傾向がある。また、特定共重合体Bが特定共重合体Aと適度に相溶すると、例えば、相溶性が低いことに起因する粘着力の低下が防止されるため、高温環境下に置いても高い粘着力を保持し得る。
【0053】
単独重合体のガラス転移温度(Tg)が0℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、単独重合体のガラス転移温度(Tg)が0℃以下であり、かつ、無置換の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が好ましく、その種類は特に制限されない。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよい。また、アルキル基の炭素数は、例えば、粘着剤層の粘着力、及び、粘着剤層と基材との密着性の観点から、1〜18の範囲が好ましく、1〜12の範囲がより好ましい。
【0054】
単独重合体のガラス転移温度(Tg)が0℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、エチルアクリレート(EA、Tg:−27℃)、2−エチルヘキシルメタクリレート(2EHMA、Tg:−10℃)、n−ブチルアクリレート(n−BA、Tg:−57℃)、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA、Tg:−76℃)、n−オクチルアクリレート(Tg:−80℃)等が挙げられる。
これらの中でも、単独重合体のガラス転移温度(Tg)が0℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えば、濡れ性と凝集力とのバランスの観点から、エチルアクリレート(EA)、2−エチルヘキシルメタクリレート(2EHMA)、及びn−ブチルアクリレート(n−BA)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、エチルアクリレート(EA)がより好ましい。
【0055】
特定共重合体Bは、単独重合体のガラス転移温度(Tg)が0℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位B2を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0056】
特定共重合体Bにおける構成単位B2の含有率(割合)は、全構成単位(即ち、特定共重合体Bを構成する全構成単位)に対して、1質量%〜45質量%の範囲が好ましく、5質量%〜40質量%の範囲がより好ましく、10質量%〜35質量%の範囲が更に好ましい。
特定共重合体Bにおける構成単位B2の含有率が、全構成単位に対して1質量%以上であると、粘着剤層の被着体への濡れ性がより向上するため、粘着剤層がより高い粘着力で被着体に貼着する。そのため、高温加熱による被着体への貼着後、高温環境下に置かれてもより高い粘着力を保持し得る。
特定共重合体Bにおける構成単位B2の含有率が、全構成単位に対して45質量%以下であると、特定共重合体Bのガラス転移温度(Tg)が比較的高くなるため、高温加熱による粘着剤層の粘弾性の低下(即ち、凝集力の低下)が抑制される。粘着剤層は、適度な粘弾性を有することで、貼着後、高温環境下に置かれてもより高い粘着力を示し得る。
【0057】
(構成単位B3)
特定共重合体Bは、アミノ基及び水酸基から選ばれる少なくとも1種の官能基(即ち、特定官能基)を有する単量体に由来し、既述の構成単位B1及び構成単位B2とは異なる構成単位B3を含む。
特定共重合体Bが構成単位B3を含むと、被着体への濡れ性が向上するため、粘着剤層が高い粘着力で被着体に貼着し得る。そのため、高温加熱による被着体への貼着後、高温環境下に置かれても高い粘着力を保持し得る。
【0058】
特定官能基を有する単量体は、特定官能基として、アミノ基のみを有していてもよく、水酸基のみを有していてもよく、アミノ基及び水酸基の両方を有していてもよい。
例えば、被着体への濡れ性をより向上し得るとの観点からは、特定官能基を有する単量体が、特定官能基として少なくともアミノ基を有していること、即ち、構成単位B3が、アミノ基を有する単量体に由来する構成単位であることが好ましい。
なお、ここでいうアミノ基は、一級アミノ基又は二級アミノ基を指す。
【0059】
構成単位B3におけるアミノ基を有する単量体の種類は、特に制限されない。
構成単位B3におけるアミノ基を有する単量体としては、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DM)、ジエチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、構成単位B3におけるアミノ基を有する単量体としては、例えば、被着体への濡れ性の観点から、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DM)が好ましい。
特定共重合体Bがアミノ基を有する単量体に由来する構成単位(但し、既述の構成単位B1及び構成単位B2とは異なる構成単位)を含む場合、アミノ基を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0060】
構成単位B3における水酸基を有する単量体の種類は、特に制限されない。
構成単位B3における水酸基を有する単量体としては、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2HEMA)、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、構成単位B3における水酸基を有する単量体としては、例えば、凝集力の観点から、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2HEMA)が好ましい。
【0061】
特定共重合体Bにおける構成単位B3の含有率(割合)は、全構成単位(即ち、特定共重合体Bを構成する全構成単位)に対して、1質量%〜20質量%の範囲が好ましく、1質量%〜10質量%の範囲がより好ましく、2質量%〜8質量%の範囲が更に好ましい。
特定共重合体Bにおける構成単位B3の含有率が、全構成単位に対して1質量%以上であると、粘着剤層の被着体への濡れ性がより向上するため、粘着剤層がより高い粘着力で被着体に貼着し得る。そのため、高温加熱による被着体への貼着後、高温環境下に置かれてもより高い粘着力を保持し得る。
特定共重合体Bにおける構成単位B3の含有率が、全構成単位に対して20質量%以下であると、特定共重合体Aとの相互作用が過度にならず、粘着剤組成物の凝集力がより適度なものとなるため、高温加熱による被着体への貼着後、高温環境下に置かれてもより高い粘着力を示し得る。
【0062】
−特定共重合体Bの重量平均分子量−
特定共重合体Bの重量平均分子量(Mw)は、0.5万〜20万の範囲であり、1万〜15万の範囲が好ましく、2万〜10万の範囲がより好ましい。
特定共重合体Bの重量平均分子量(Mw)が0.5万以上であると、粘着剤組成物が適切な凝集力を示し得る。また、特定共重合体Bの特定共重合体Aとの相溶性が過度にならないため、特定共重合体Bが加熱中に粘着剤層の表面(所謂、被着体との界面付近)に適度に局在化する。特定共重合体Bが粘着剤層の表面に適度に局在化すると、被着体との濡れ性が向上するため、粘着剤層が高い粘着力で被着体に貼着し得る。そのため、高温加熱による被着体への貼着後、高温環境下に置かれても高い粘着力を保持し得る。
また、特定共重合体Bの重量平均分子量(Mw)が20万以下であると、粘着剤組成物の凝集力が過度に高くなりすぎず、また、被着体との濡れ性が良好となるため、粘着剤層が高い粘着力で被着体に貼着する。そのため、高温加熱による被着体への貼着後、高温環境下に置かれても高い粘着力を保持し得る。
【0063】
特定共重合体Bの重量平均分子量(Mw)は、反応温度、反応時間、有機溶媒の使用量、重合開始剤の種類、重合開始剤の使用量等を調整することにより、所望の値にできる。
【0064】
特定共重合体Bの重量平均分子量(Mw)は、既述の特定共重合体Aの重量平均分子量(Mw)と同様の方法により測定される値である。
【0065】
−特定共重合体Bのガラス転移温度−
特定共重合体Bのガラス転移温度(Tg)は、30℃以上である。
特定共重合体Bのガラス転移温度(Tg)が30℃以上であると、高温加熱による粘着剤層の粘弾性の低下(即ち、凝集力の低下)が抑制される。粘着剤層は、適度な粘弾性を有することで、高温加熱による被着体への貼着後、高温環境下に置かれても高い粘着力を保持し得る。
また、特定共重合体Bのガラス転移温度(Tg)は、凝集力の観点から、30℃以上115℃以下が好ましく、30℃以上100℃以下がより好ましく、40℃以上95℃以下が更に好ましい。
【0066】
特定共重合体Bのガラス転移温度(Tg)は、例えば、単独重合体としたときのガラス転移温度(Tg)が異なる単量体を用いることで、適宜調整できる。
【0067】
特定共重合体Bのガラス転移温度(Tg)は、既述の特定共重合体Aのガラス転移温度(Tg)と同様の方法により測定される値である。
【0068】
(特定共重合体Bに対する特定共重合体Aの含有比率)
本発明の粘着剤組成物は、特定共重合体Bに対する特定共重合体Aの含有比率〔含有比率(A/B)〕が、質量基準で、100/5〜100/30の範囲である。
含有比率(A/B)が質量基準で100/5以上であると、換言すると、特定共重合体Bの含有量が特定共重合体A 100質量部に対して5質量部以上であると、特定共重合体Bが加熱中に粘着剤層の表面(所謂、被着体との界面付近)に適度に局在化する。特定共重合体Bが粘着剤層の表面に適度に局在化すると、被着体との濡れ性が向上するため、粘着剤層が高い粘着力で被着体に貼着し得る。そのため、高温加熱による被着体への貼着後、高温環境下に置かれても高い粘着力を保持し得る。
含有比率(A/B)が質量基準で100/30以下であると、換言すると、特定共重合体Bの含有量が特定共重合体A 100質量部に対して30質量部以下であると、特定共重合体Aと特定共重合体Bとが適度な相溶性を保つため、例えば、相溶性が低いことに起因する粘着力の低下が防止される。そのため、粘着剤層は、高い粘着力を経時で保持し得る。
上記と同様の観点から、含有比率(A/B)は、質量基準で、100/5〜100/25の範囲が好ましく、100/10〜100/20の範囲がより好ましい。
【0069】
本発明の粘着剤組成物における特定共重合体A及び特定共重合体Bの合計含有率は、特に制限されず、例えば、粘着力の観点から、粘着剤組成物の全固形分に対して、80質量%〜99.5質量%の範囲が好ましい。
【0070】
(特定共重合体Aの溶解度パラメータと特定共重合体Bの溶解度パラメータとの差)
本発明の粘着剤組成物は、特定共重合体Aの溶解度パラメータと特定共重合体Bの溶解度パラメータとの差の絶対値〔SP値差(|A−B|)〕が、0.6(J/cm
3)
1/2〜2.4(J/cm
3)
1/2の範囲である。
SP値差(|A−B|)が0.6(J/cm
3)
1/2以上であると、特定共重合体Bが加熱中に粘着剤層の表面(所謂、被着体との界面付近)に適度に局在化する。特定共重合体Bが粘着剤層の表面に適度に局在化すると、粘着剤層と被着体との濡れ性が向上するため、粘着剤層が高い粘着力で被着体に貼着する。そのため、高温加熱による被着体への貼着後、高温環境下に置かれても高い粘着力を保持し得る。
SP値差(|A−B|)が2.4(J/cm
3)
1/2以下であると、特定共重合体Aと特定共重合体Bとが適度な相溶性を保つため、高い粘着力を経時で保持し得る粘着剤層を形成できる。
上記と同様の観点から、SP値差(|A−B|)は、0.7(J/cm
3)
1/2以上2.2(J/cm
3)
1/2以下が好ましく、1.0(J/cm
3)
1/2以上1.8(J/cm
3)
1/2以下がより好ましい。
【0071】
特定共重合体(即ち、特定共重合体A及び特定共重合体B)の溶解度パラメータ(SP値)は、以下の式(1)に基づき算出される。
SP値=[ΣEcohM1/(ΣVM1×4.182)]
1/2×XM1/100+[ΣEcohM2/(ΣVM2×4.182)]
1/2×XM2/100+・・・[ΣEcohMn/(ΣVMn×4.182)]
1/2×XMn/100 式(1)
ΣEcohM1、M2・・・Mn : M1、M2・・・Mnの凝集エネルギー密度
ΣVM1、M2・・・Mn : M1、M2・・・Mnのモル容積
XM1、M2・・・Mn : 特定共重合体の全構成単位に対する、M1、M2・・・Mnの含有率(質量%)
M1、M2・・・Mn : 特定共重合体を構成する単量体の種類
上述のΣEcoh及びΣVは、「SP値基礎・応用と計算方法」山本秀樹著 株式会社情報機構出版、2006年4月3日発行の67ページに記載されている各構造の凝集エネルギー密度Ecohと各構造のモル容積(V)をもとに、同一の構成単位ごとに計算される値である。
【0072】
〔特定共重合体A及び特定共重合体Bの製造方法〕
特定共重合体A及び特定共重合体B(即ち、特定共重合体)の製造方法は、特に制限されない。
特定共重合体は、例えば、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、及び塊状重合に代表される公知の重合方法で、単量体を重合して製造できる。
これらの中でも、重合方法としては、例えば、製造後に本発明の粘着剤組成物を調製するにあたり、処理工程が比較的簡単であり、かつ、短時間で行える点で、溶液重合が好ましい。
【0073】
溶液重合は、一般に、重合槽内に所定の有機溶媒、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中又は有機溶媒の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させる。この場合、有機溶媒、単量体、重合開始剤及び/又は連鎖移動剤の少なくとも一部を逐次添加してもよい。
【0074】
重合反応時に用いられる有機溶媒としては、芳香族炭化水素化合物、脂肪系又は脂環族系炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物、グリコールエーテル化合物、アルコール化合物等が挙げられる。
重合反応時には、これらの有機溶媒を1種のみ用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0075】
重合反応時に用いられる有機溶媒としては、より具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、テトラリン、デカリン、及び芳香族ナフサに代表される芳香族炭化水素類、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、i−オクタン、n−デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、及びテレピン油に代表される脂肪系又は脂環族系炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸n−アミル、酢酸2−ヒドロキシエチル、酢酸2−ブトキシエチル、酢酸3−メトキシブチル、及び安息香酸メチルに代表されるエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、及びメチルシクロヘキサノンに代表されるケトン類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルに代表されるグリコールエーテル類、並びに、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、s−ブチルアルコール、並びに、t−ブチルアルコールに代表されるアルコール類が挙げられる。
【0076】
特定共重合体の製造に際しては、エステル類、ケトン類等の重合反応中に連鎖移動を生じ難い有機溶媒の使用が好ましく、特に、特定共重合体の溶解性、重合反応の容易さ等の観点から、酢酸エチル、トルエン等の使用が好ましい。
【0077】
重合開始剤としては、通常の溶液重合で用いられる有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、カプロイルペルオキシド、ジ−i−プロピルペルオキシジカルボナト、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカルボナト、t−ブチルペルオキシビバラト、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−アミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−オクチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−α−クミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)ブタン、及び2,2−ビス(4,4−ジ−t−オクチルペルオキシシクロヘキシル)ブタンが挙げられる。
アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチルニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ABVN)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、及び2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチルが挙げられる。
【0078】
特定共重合体の製造に際しては、重合反応中にグラフト反応を起こさない重合開始剤の使用が好ましく、特に、アゾビス系の重合開始剤の使用が好ましい。
【0079】
重合開始剤の使用量は、特に制限されず、目的とする特定共重合体の分子量に応じて、適宜設定される。
【0080】
特定共重合体の製造に際しては、本発明の目的及び効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて連鎖移動剤を用いてもよい。
連鎖移動剤としては、例えば、シアノ酢酸、シアノ酢酸の炭素数1〜8のアルキルエステル類、ブロモ酢酸、ブロモ酢酸の炭素数1〜8のアルキルエステル類、α‐メチルスチレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン、及び9−フェニルフルオレンに代表される芳香族化合物類、p−ニトロアニリン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p−ニトロ安息香酸、p−ニトロフェノール、及びp−ニトロトルエンに代表される芳香族ニトロ化合物類、ベンゾキノン及び2,3,5,6−テトラメチル−p−ベンゾキノンに代表されるベンゾキノン誘導体類、トリブチルボランに代表されるボラン誘導体、四臭化炭素、四塩化炭素、1,1,2,2−テトラブロモエタン、トリブロモエチレン、トリクロロエチレン、ブロモトリクロロメタン、トリブロモメタン、及び3−クロロ−1−プロペンに代表されるハロゲン化炭化水素類、クロラール及びフラルデヒドに代表されるアルデヒド類、炭素数1〜18のアルキルメルカプタン類、チオフェノール及びトルエンメルカプタンに代表される芳香族メルカプタン類、メルカプト酢酸、メルカプト酢酸の炭素数1〜10のアルキルエステル類、炭素数1〜12のヒドロキシアルキルメルカプタン類、並びに、ビネン及びターピノレンに代表されるテルペン類が挙げられる。
【0081】
特定共重合体の製造に際し、連鎖移動剤を用いる場合、連鎖移動剤の使用量は、特に制限されず、目的とする特定共重合体の分子量に応じて、適宜設定される。
【0082】
重合温度は、特に制限されず、目的とする特定共重合体の分子量に応じて、適宜設定される。
【0083】
〔架橋剤〕
本発明の粘着剤組成物は、架橋剤を含有する。
架橋剤としては、特に制限されず、公知のものを用いることができる。
架橋剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物、アジリジン化合物、メラミン化合物、尿素化合物等が挙げられる。
これらの中でも、架橋剤としては、イソシアネート化合物及びエポキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、特定共重合体Aと特定共重合体BとのSP値の差を調整しやすいとの観点から、エポキシ化合物がより好ましい。
本発明の粘着剤組成物は、架橋剤を1種のみ含有していてもよく、2種以上含有していてもよい。
【0084】
イソシアネート化合物としては、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)に代表される芳香族ポリイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート、上記の芳香族ポリイソシアネート化合物の水素添加物に代表される鎖状又は環状の脂肪族ポリイソシアネート化合物、これらのポリイソシアネート化合物のビウレット体、2量体、3量体又は5量体、これらのポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体などが挙げられる。
本発明の粘着剤組成物は、架橋剤としてイソシアネート化合物を用いる場合、イソシアネート化合物を1種のみ含有していてもよく、2種以上含有していてもよい。
【0085】
これらの中でも、イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートの2量体、トリレンジイソシアネートとポリオールとのアダクト体、トリレンジイソシアネートの3量体又は5量体であるイソシアヌレート体、トリレンジイソシアネートのビウレット体等の各種トリレンジイソシアネートに由来するトリレンジイソシアネート化合物が好ましい。
また、イソシアネート化合物としては、反応性に優れ、架橋密度を高めることができるとの観点、及び特定共重合体との相溶性に優れるとの観点から、トリレンジイソシアネート、及び、トリレンジイソシアネートとポリオールとのアダクト体から選ばれる少なくとも1種が好ましく、架橋時のゲル化を抑制するとの観点から、トリレンジイソシアネート、及び、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト体から選ばれる少なくとも1種が特に好ましい。
【0086】
イソシアネート化合物としては、市販品を使用できる。
イソシアネート化合物の市販品としては、例えば、東ソー(株)の「コロネート(登録商標)HX」、「コロネート(登録商標)HL−S」、「コロネート(登録商標)L」、「コロネート(登録商標)L−45E」、「コロネート(登録商標)2031」、「コロネート(登録商標)2030」、「コロネート(登録商標)2234」、「コロネート(登録商標)2785」、「アクアネート(登録商標)200」、及び「アクアネート(登録商標)210」、住化コベストロウレタン(株)の「スミジュール(登録商標)N3300」、「デスモジュール(登録商標)N3400」、及び「スミジュール(登録商標)N−75」、旭化成(株)の「デュラネート(登録商標)E−405−80T」、「デュラネート(登録商標)24A−100」、及び「デュラネート(登録商標)TSE−100」、並びに、三井武田ケミカル(株)の「タケネート(登録商標)D−110N」、「タケネート(登録商標)D−120N」、「タケネート(登録商標)M−631N」及び「MT−オレスター(登録商標)NP1200」の商品名により市販されているものを好適に使用できる。
【0087】
エポキシ化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリトリトールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、トリス(グリシジル)イソシアヌレート、トリス(グリシドキシエチル)イソシアヌレート、1,3−ビス(N,N−グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−1,3−ベンゼンジ(メタンアミン)等が挙げられる。
本発明の粘着剤組成物は、架橋剤としてエポキシ化合物を用いる場合、エポキシ化合物を1種のみ含有していてもよく、2種以上含有していてもよい。
【0088】
これらの中でも、エポキシ化合物としては、凝集力の観点から、1,3−ビス(N,N−グリシジルアミノメチル)シクロヘキサンが好ましい。
【0089】
エポキシ化合物としては、市販品を使用できる。
エポキシ化合物の市販品としては、例えば、三菱ガス化学(株)の「TETRAD−X」及び「TETRAD−C」の商品名により市販されているものを好適に使用できる。
【0090】
金属キレート化合物としては、アルミニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物、コバルトキレート化合物等が挙げられる。
本発明の粘着剤組成物は、架橋剤として金属キレート化合物を用いる場合、金属キレート化合物を1種のみ含有していてもよく、2種以上含有していてもよい。
【0091】
これらの中でも、金属キレート化合物としては、アルミニウムキレート化合物が好ましい。
アルミニウムキレート化合物としては、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)等が挙げられる。
【0092】
金属キレート化合物としては、市販品を使用できる。
金属キレート化合物の市販品としては、例えば、川研ファインケミカル(株)の「アルミキレートA」、「アルミキレートD」、及び「ALCH−TR」の商品名により市販されているものを好適に使用できる。
【0093】
本発明の粘着剤組成物における架橋剤の含有量は、特に制限されず、例えば、濡れ性と凝集力とのバランスの観点から、架橋剤の種類に応じて、適宜設定される。
例えば、架橋剤としてイソシアネート化合物を用いる場合、本発明の粘着剤組成物におけるイソシアネート化合物の含有量は、既述の特定共重合体A 100質量部に対して、0.5質量部〜10質量部が好ましく、1質量部〜9質量部がより好ましく、2質量部〜8質量部が更に好ましい。
例えば、架橋剤としてエポキシ化合物を用いる場合、本発明の粘着剤組成物におけるエポキシ化合物の含有量は、既述の特定共重合体A 100質量部に対して、0.025質量部〜0.5質量部が好ましく、0.05質量部〜0.3質量部がより好ましく、0.1質量部〜0.2質量部が更に好ましい。
例えば、架橋剤として金属キレート化合物を用いる場合、本発明の粘着剤組成物における金属キレート化合物の含有量は、既述の特定共重合体A 100質量部に対して、1質量部〜8質量部が好ましく、2質量部〜6質量部がより好ましく、3質量部〜5質量部が更に好ましい。
【0094】
〔有機溶媒〕
本発明の粘着剤組成物は、塗布性向上のため、有機溶媒を含んでいてもよい。
有機溶媒としては、例えば、既述の特定共重合体の重合反応時に用いられる有機溶媒が挙げられる。
【0095】
〔他の成分〕
本発明の粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、既述した成分以外の成分(所謂、他の成分)を含有していてもよい。
他の成分としては、特定共重合体A及び特定共重合体B以外の重合体、架橋触媒、酸化防止剤、着色剤(例えば、染料及び顔料)、光安定剤(例えば、紫外線吸収剤)、帯電防止剤等の各種添加剤が挙げられる。
【0096】
[粘着剤組成物の用途]
本発明の粘着剤組成物は、加飾フィルムを被着体に貼着するための用いるものである。
加飾フィルムを被着体に貼着する方法としては、真空成形法、圧空成形法が挙げられる。これらの中でも、加飾フィルムを被着体に貼着する方法としては、真空成形法が好ましく、特に、OMD工法のようなフィルムを加熱して柔らかく引き伸ばすことにより被着体に貼着させる方法が、本発明の粘着剤組成物の効果がより発揮されるため好ましい。
【0097】
被着体としては、本発明における加飾フィルムを貼着できるものであれば、特に制限されず、平板、曲面板等の板材、立体形状物品、フィルムなどの成形体が挙げられる。
これらの中でも、被着体としては、立体形状物品が好ましい。
被着体を形成する材料としては、特に制限されず、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0098】
〔粘着シート〕
本発明の粘着剤組成物は、粘着シートに適用できる。
本発明における粘着シートは、既述の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を有する。
本発明における粘着シートは、基材を有しない無基材タイプの粘着シートでもよく、基材の少なくとも片面に粘着剤層を有する有基材タイプの粘着シートでもよい。
【0099】
粘着剤層の厚さは、特に制限されるものではなく、用途、要求される性能等によって適宜設定できる。粘着剤層の厚さとしては、例えば、1μm〜100μmの範囲が挙げられる。
【0100】
本発明における粘着シートの露出した粘着剤層は、剥離フィルムによって保護されていてもよい。剥離フィルムとしては、粘着剤層からの剥離を容易に行えるものであれば、特に制限されず、例えば、少なくとも片面に剥離処理剤による易剥離処理が施された樹脂フィルムが挙げられる。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムに代表されるポリエステルフィルムが挙げられる。剥離処理剤としては、フッ素系樹脂、パラフィンワックス、シリコーン、長鎖アルキル基化合物等が挙げられる。剥離フィルムは、粘着シートを実用に供するまでの間、粘着剤層の表面を保護し、使用時に剥離される。
【0101】
本発明における粘着シートは、例えば、既述の粘着剤組成物を剥離フィルム及び/又は基材に塗布し、乾燥後に一定期間養生することによって粘着剤層を形成して作製できる。
養生の条件は、例えば、雰囲気温度23℃、相対湿度50%の環境下で1日間〜10日間に設定できる。粘着剤層を養生することにより、特定共重合体を架橋剤によって十分に架橋された状態にできる。
【0102】
無基材タイプの粘着シートは、例えば、剥離フィルムの剥離処理面に粘着剤組成物を塗布し、乾燥させ、粘着剤組成物の層を形成し、得られた層の、剥離フィルムと接しない露出した面に、別の剥離フィルムを剥離処理面が接するように重ね、養生して粘着剤層を形成する方法により作製できる。
【0103】
有基材タイプの粘着シートは、粘着剤組成物を基材に塗布する方法により作製してもよいし、粘着剤組成物を剥離フィルムに塗布する方法により作製してもよい。このような方法としては、例えば、剥離フィルムの剥離処理面に粘着剤組成物を塗布し、乾燥させ、粘着剤組成物の層を形成し、得られた層の剥離フィルムと接しない露出した面に基材を貼合し、養生して粘着剤層を形成する方法が挙げられる。
【0104】
剥離フィルム又は基材に粘着剤組成物を塗布する方法としては、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等を用いた公知の方法が挙げられる。
【0105】
〔加飾フィルム〕
有基材タイプの粘着シートとしては、基材と、上記基材上に設けられ、既述の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、を少なくとも備える加飾フィルムが例示できる。
加飾フィルムにおける基材は、例えば、熱可塑性樹脂から形成される樹脂層であってもよく、樹脂層は、アクリル系樹脂を含んでなることが好ましい。アクリル系樹脂を用いて形成された基材は、加飾成形品を真空成形法により製造する際に要求される、展延性、折曲性、形状追従性等の真空成形加工性に優れている。
【0106】
加飾フィルムにおける基材は、成形体が加飾フィルムにより加飾された後、加飾成形品の最外層に位置し、加飾成形品の保護層としての機能を果たすものである。基材を、アクリル系樹脂を用いて形成することで、耐摩耗性、耐薬品性、耐候性等の耐久性に優れた加飾成形品となる。
【0107】
加飾フィルムにおける基材は、無色であってもよいし、有色であってもよい。基材を着色する場合には、公知の着色剤を樹脂中に添加すればよい。
また、加飾フィルムにおける基材は、透明であってもよいし、半透明であってもよいし、不透明であってもよい。
【0108】
通常、基材の厚さは、好ましくは25μm〜300μmであり、より好ましくは50μm〜200μmである。基材層の厚さが上記範囲内であれば、真空成形法により加飾成形品を製造する際に、加工成形性、形状追従性、及び取扱い性が良好となる。
【0109】
本発明における加飾フィルムは、基材上及び/又は基材と粘着剤層との間に、装飾層を有していてもよい。装飾層は、加飾フィルムに意匠性を付与するために設けられる層であり、模様、文字、パターン状の絵柄等を表現する柄層である。装飾層は、例えば、インクジェット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷等の公知の印刷方法により設けることができる。
【0110】
〔加飾成形品〕
加飾成形品は、真空成形法、圧空成形法(好ましくは、真空成形法)等により、成形体上に、本発明における加飾フィルムを貼り合せることで形成される。すなわち、加飾成形品は、成形体と、成形体上に配置された加飾フィルムと、を含むものであり、より具体的には、成形体上に、粘着剤層、必要に応じて装飾層、及び基材がこの順に積層されたものである。
【実施例】
【0111】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0112】
[(メタ)アクリル系共重合体Aの製造]
<製造例1A>
撹拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、及び温度計を備えた反応器内に、n−ブチルアクリレート(n−BA;(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体)68.0質量部(57.4mol%)、メチルアクリレート(MA;(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体)22.0質量部(27.6mol%)、アクリル酸(AA;カルボキシ基を有する単量体)10.0質量部(15.0mol%)からなる単量体混合物のうち18質量%、酢酸エチル(EAc)52質量部、及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN;重合開始剤)0.01質量部を入れて加熱し、還流温度で10分間重合を行った。
次いで、還流温度条件下で、単量体混合物の残量82質量%と、EAc 75質量部及びAIBN 0.04質量部からなる重合開始剤溶液と、を約150分かけて逐次滴下し、更に70分後、EAc 11質量部及びAIBN 0.17質量部からなる重合開始剤溶液を60分かけて逐次滴下し、更に90分間反応させた。反応終了後、反応混合物をメチルエチルケトン(MEK)で希釈し、固形分が30質量%の(メタ)アクリル系共重合体Aの溶液を得た。なお、「固形分」とは、(メタ)アクリル系共重合体Aの溶液から溶媒等の揮発性成分を除去した残渣量を意味する(以下、同じ)。
得られた(メタ)アクリル系共重合体Aは、溶解度パラメータ(SP値)が21.75(J/cm
3)
1/2であり、ガラス転移温度(Tg)が−23℃であり、重量平均分子量(Mw)が60万であった。
製造例1Aにて製造した(メタ)アクリル系共重合体Aの単量体組成を下記の表1に示す。
【0113】
<製造例2A、3A、6A〜12A、及び15A〜17A>
製造例2A、3A、6A〜12A、及び15A〜17Aでは、下記の表1に示す単量体組成としたこと以外は、製造例1Aと同様にして、固形分が30質量%の(メタ)アクリル系共重合体Aの溶液を得た。
【0114】
<製造例4A>
撹拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、及び温度計を備えた反応器内に、n−ブチルアクリレート(n−BA;(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体)68.0質量部(57.4mol%)、メチルアクリレート(MA;(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体)22.0質量部(27.6mol%)、アクリル酸(AA;カルボキシ基を有する単量体)10.0質量部(15.0mol%)からなる単量体混合物のうち18質量%、酢酸エチル(EAc)82質量部、及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN;重合開始剤)0.01質量部を入れて加熱し、還流温度で10分間重合を行った。
次いで、還流温度条件下で、単量体混合物の残量82質量%と、EAc 75質量部及びAIBN 0.04質量部からなる重合開始剤溶液と、を約150分かけて逐次滴下し、更に70分後、EAc 11質量部及びAIBN 0.17質量部からなる重合開始剤溶液を60分かけて逐次滴下し、更に90分間反応させた。反応終了後、反応混合物をメチルエチルケトン(MEK)で希釈し、固形分が30質量%の(メタ)アクリル系共重合体Aの溶液を得た。
得られた(メタ)アクリル系共重合体Aは、溶解度パラメータ(SP値)が21.75(J/cm
3)
1/2であり、ガラス転移温度(Tg)が−23℃であり、重量平均分子量(Mw)が40万であった。
製造例4Aにて製造した(メタ)アクリル系共重合体Aの単量体組成を下記の表1に示す。
【0115】
<製造例5A>
撹拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、及び温度計を備えた反応器内に、n−ブチルアクリレート(n−BA;(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体)68.0質量部(57.4mol%)、メチルアクリレート(MA;(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体)22.0質量部(27.6mol%)、アクリル酸(AA;カルボキシ基を有する単量体)10.0質量部(15.0mol%)、及び酢酸エチル(EAc)185質量部を入れ、反応器内の空気を窒素ガスで置換した。その後、撹拌下、窒素雰囲気中で、反応容器の内容物温度を70℃に昇温させた。その後、EAc 120質量部及びAIBN 0.002質量部からなる重合開始剤溶液を4時間かけて逐次滴下し、更に1.5時間反応させた。反応終了後、反応混合物をメチルエチルケトン(MEK)で希釈し、固形分が20質量%の(メタ)アクリル系共重合体Aの溶液を得た。
得られた(メタ)アクリル系共重合体Aは、溶解度パラメータ(SP値)が21.75(J/cm
3)
1/2であり、ガラス転移温度(Tg)が−23℃であり、重量平均分子量(Mw)が150万であった。
製造例5Aにて製造した(メタ)アクリル系共重合体Aの単量体組成を下記の表1に示す。
【0116】
<製造例13A>
撹拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、及び温度計を備えた反応器内に、n−ブチルアクリレート(n−BA;(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体)68.0質量部(57.4mol%)、メチルアクリレート(MA;(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体)22.0質量部(27.6mol%)、アクリル酸(AA;カルボキシ基を有する単量体)10.0質量部(15.0mol%)、及び酢酸エチル(EAc)42質量部、トルエン5質量部、及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN;重合開始剤)0.015質量部を入れて加熱し、還流温度で20分間重合を行った。
次いで、還流温度条件下で、単量体混合物の残量75質量%と、EAc 42質量部、トルエン5質量部、及びAIBN 0.25質量部からなる重合開始剤溶液と、を約2.5時間かけて逐次滴下し、更に1時間後、EAc 12.5質量部及びAIBN 0.25質量部からなる重合開始剤溶液を40分かけて逐次滴下し、更に2時間反応させた。反応終了後、反応混合物をメチルエチルケトン(MEK)で希釈し、固形分が35質量%の(メタ)アクリル系共重合体Aの溶液を得た。
得られた(メタ)アクリル系共重合体Aは、溶解度パラメータ(SP値)が21.75(J/cm
3)
1/2であり、ガラス転移温度(Tg)が−23℃であり、重量平均分子量(Mw)が10万であった。
製造例13Aにて製造した(メタ)アクリル系共重合体Aの単量体組成を下記の表1に示す。
【0117】
<製造例14A>
撹拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、及び温度計を備えた反応器内に、n−ブチルアクリレート(n−BA;(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体)68.0質量部(57.4mol%)、メチルアクリレート(MA;(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体)22.0質量部(27.6mol%)、アクリル酸(AA;カルボキシ基を有する単量体)10.0質量部(15.0mol%)、及び酢酸エチル(EAc)185質量部を入れ、反応器内の空気を窒素ガスで置換した。その後、撹拌下、窒素雰囲気中で、反応容器の内容物温度を70℃に昇温させた。その後、EAc 80質量部及びAIBN 0.002質量部からなる重合開始剤溶液を4時間かけて逐次滴下し、更に1.5時間反応させた。反応終了後、反応混合物をメチルエチルケトン(MEK)で希釈し、固形分が20質量%の(メタ)アクリル系共重合体Aの溶液を得た。
得られた(メタ)アクリル系共重合体Aは、溶解度パラメータ(SP値)が21.75(J/cm
3)
1/2であり、ガラス転移温度(Tg)が−23℃であり、重量平均分子量(Mw)が180万であった。
製造例14Aにて製造した(メタ)アクリル系共重合体Aの単量体組成を下記の表1に示す。
【0118】
【表1】
【0119】
上記の表1中、組成の欄に記載の「−」は、該当する成分を含まないことを意味する。
【0120】
上記の表1に記載の各単量体の詳細は、以下に示す通りである。
「n−BA」:n−ブチルアクリレート(単独重合体のTg:−57℃)
「2EHA」:2−エチルへキシルアクリレート(単独重合体のTg:−76℃)
「t−BA」:t−ブチルアクリレート(単独重合体のTg:41℃)
「MA」:メチルアクリレート(単独重合体のTg:5℃)
「AA」:アクリル酸(単独重合体のTg:163℃、カルボキシ基を有する単量体)
【0121】
上記の表1に記載の(メタ)アクリル系共重合体Aのガラス転移温度(Tg)、重量平均分子量(Mw)、及び溶解度パラメータ(SP値)は、既述の方法により測定した値である。
【0122】
参考として、製造例1Aにて製造した(メタ)アクリル系共重合体Aについて、溶解度パラメータ(SP値)の算出方法を以下に記載する。
【0123】
(SP値の算出)
製造例1Aにて製造した(メタ)アクリル系共重合体Aの溶解度パラメータ(SP値)は、以下の式(1A)に基づいて算出される。
SP値=[ΣEcohM1/(ΣVM1×4.182)]
1/2×XM1/100+[ΣEcohM2/(ΣVM2×4.182)]
1/2×XM2/100+・・・[ΣEcohMn/(ΣVMn×4.182)]
1/2×XMn/100 式(1A)
ΣEcohM1、M2・・・Mn : M1、M2・・・Mnの凝集エネルギー密度
ΣVM1、M2・・・Mn : M1、M2・・・Mnのモル容積
XM1、M2・・・Mn : (メタ)アクリル系共重合体Aの全構成単位に対する、M1、M2・・・Mnの含有率(質量%)
M1、M2・・・Mn : (メタ)アクリル系共重合体Aを構成する単量体の種類
上述のΣEcoh及びΣVは、「SP値基礎・応用と計算方法」山本秀樹著 株式会社情報機構出版、2006年4月3日発行の67ページに記載されている各構造の凝集エネルギー密度Ecohと各構造のモル容積(V)をもとに、Fedorsの式を用いて同一の構成単位ごとに計算される値である。
【0124】
製造例1Aにて製造した(メタ)アクリル系共重合体Aは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位A1として、n−ブチルアクリレート(n−BA)に由来する構成単位及びメチルアクリレート(MA)に由来する構成単位を含み、かつ、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位A2として、アクリル酸(AA)に由来する構成単位を含む。
まず、BAに由来する構成単位のΣEcoh及びΣV、MAに由来する構成単位のΣEcoh及びΣV、並びに、AAに由来する構成単位のΣEcoh及びΣVを算出した。
【0125】
−n−BAに由来する構成単位のΣEcoh−
n−BAに由来する構成単位は、CH
3、CH
2、COO及びCHの各構造を有し、各構造の凝集エネルギー密度は、それぞれ4710[J/mol]、4940[J/mol]、18000[J/mol]及び3430[J/mol]である。したがって、n−BAに由来する構成単位のΣEcohは以下のように算出される。
n−BAに由来する構成単位のΣEcoh=4710×1+4940×4+18000×1+3430×1=45900
【0126】
−n−BAに由来する構成単位のΣV−
n−BAに由来する構成単位は、CH
3、CH
2、COO及びCHの各構造を有し、各構造のモル容積は、それぞれ33.5[cm
3/mol]、16.1[cm
3/mol]、18.0[cm
3/mol]及び−1.0[cm
3/mol]である。したがって、n−BAに由来する構成単位のΣVは以下のように算出される。
BAに由来する構成単位のΣV=33.5×1+16.1×4+18.0×1+(−1.0)×1=114.9
【0127】
−MAに由来する構成単位のΣEcoh−
MAに由来する構成単位は、CH
3、CH
2、COO及びCHの各構造を有する。したがって、MAに由来する構成単位のΣEcohは以下のように算出される。
MAに由来する構成単位のΣEcoh=4710×1+4940×1+18000×1+3430×1=31080
【0128】
−MAに由来する構成単位のΣV−
MAに由来する構成単位は、CH
3、CH
2、COO及びCHの各構造を有する。したがって、MAに由来する構成単位のΣVは以下のように算出される。
MAに由来する構成単位のΣV=33.5×1+16.1×1+18.0×1+(−1.0)×1=66.6
【0129】
−AAに由来する構成単位のΣEcoh−
AAに由来する構成単位は、CH
2、COOH及びCHの各構造を有する。したがって、AAに由来する構成単位のΣEcohは以下のように算出される。
AAに由来する構成単位のΣEcoh=4940×1+27630×1+3430×1=36000
【0130】
−AAに由来する構成単位のΣV−
AAに由来する構成単位は、CH
2、COOH及びCHの各構造を有する。したがって、AAに由来する構成単位のΣVは以下のように算出される。
AAに由来する構成単位のΣV=16.1×1+28.5×1+(−1.0)×1=43.6
【0131】
n−BAに由来する構成単位、MAに由来する構成単位、及びAAに由来する構成単位の合計に対する、n−BAに由来する構成単位の含有率、MAに由来する構成単位の含有率、及びAAに由来する構成単位の含有率が、それぞれ68.0質量%、22.0質量%、及び10.0質量%であるため、SP値は以下のようにして算出される。なお、表中では、SP値について、小数点以下2桁目を四捨五入している。
SP値[単位:(J/cm
3)
1/2]=[45900/(114.9×4.182)]
1/2×68.0/100+[31080/(66.6×4.182)]
1/2×22.0/100+[36000/(43.6×4.182)]
1/2×10.0/100=21.75
【0132】
[(メタ)アクリル系共重合体Bの製造]
<製造例1B>
撹拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、及び温度計を備えた反応器内に、メチルメタクリレート(MMA;単独重合体のTgが80℃以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体)80.0質量部(81.8mol%)、エチルアクリレート(EA;単独重合体のTgが0℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体)14.0質量部(14.3mol%)、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DM;アミノ基を有する単量体)6.0質量部(3.9mol%)からなる単量体混合物のうち20質量%、酢酸エチル(EAc)45質量部、及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN;重合開始剤)0.15質量部を入れて加熱し、還流温度で20分間重合を行った。
次いで、還流温度条件下で、単量体混合物の残量75質量%と、EAc 30質量部及びAIBN 0.15質量部からなる重合開始剤溶液と、を90分間かけて逐次滴下し、更に60分後、EAc 25質量部及びAIBN 0.30質量部からなる重合開始剤溶液を60分間かけて逐次滴下し、更に120分間反応させた。反応終了後、反応混合物をメチルエチルケトン(MEK)で希釈し、固形分が36質量%の(メタ)アクリル系共重合体Bの溶液を得た。なお、「固形分」とは、(メタ)アクリル系共重合体Bの溶液から溶媒等の揮発性成分を除去した残渣量を意味する(以下、同じ)。
得られた(メタ)アクリル系共重合体Bは、溶解度パラメータ(SP値)が20.37(J/cm
3)
1/2であり、ガラス転移温度(Tg)が73℃であり、重量平均分子量(Mw)が5万であった。
製造例1Bにて製造した(メタ)アクリル系共重合体Bの単量体組成を下記の表2に示す。
【0133】
<製造例2B、5B〜19B、及び22B>
製造例2B、5B〜19B、及び22Bでは、下記の表2に示す単量体組成としたこと以外は、製造例1Bと同様にして、固形分が36質量%の(メタ)アクリル系共重合体Bの溶液を得た。
【0134】
<製造例3B>
撹拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、及び温度計を備えた反応器内に、トルエン13.3質量部、及びメチルエチルケトン(MEK)13.3質量部を入れ、撹拌を行いながら反応容器内の温度を還流が発生するまで上昇させた。還流開始から10分後、メチルメタクリレート(MMA;単独重合体のTgが80℃以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体)80.0質量部(81.8mol%)、エチルアクリレート(EA;単独重合体のTgが0℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体)14.0質量部(14.3mol%)、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DM;アミノ基を有する単量体)6.0質量部(3.9mol%)、及び2,2’‐アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(V−601;重合開始剤、和光純薬工業(株))13.3質量部を、トルエン10質量部及びMEK 10質量部に溶解させた溶液を3時間かけて滴下し、更に2.5時間反応させた。反応終了後、反応混合物をMEKで希釈し、固形分が36質量%の(メタ)アクリル系共重合体Bの溶液を得た。
得られた(メタ)アクリル系共重合体Bは、溶解度パラメータ(SP値)が20.37(J/cm
3)
1/2であり、ガラス転移温度(Tg)が73℃であり、重量平均分子量(Mw)が0.5万であった。
製造例3Bにて製造した(メタ)アクリル系共重合体Bの単量体組成を下記の表2に示す。
【0135】
<製造例4B>
撹拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、及び温度計を備えた反応器内に、メチルメタクリレート(MMA;単独重合体のTgが80℃以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体)80.0質量部(81.8mol%)、エチルアクリレート(EA;単独重合体のTgが0℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体)14.0質量部(14.3mol%)、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DM;アミノ基を有する単量体)6.0質量部(3.9mol%)からなる単量体混合物のうち20質量%、酢酸エチル(EAc)30質量部、及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN;重合開始剤)0.025質量部を入れて加熱し、還流温度で20分間重合を行った。
次いで、還流温度条件下で、単量体混合物の残量75質量%と、EAc 16.6質量部及びAIBN 0.10質量部からなる重合開始剤溶液と、を約1.5時間かけて逐次滴下し、更に1時間後、EAc 25質量部及びAIBN 0.30質量部からなる重合開始剤溶液を1時間かけて逐次滴下し、更に2時間反応させた。反応終了後、反応混合物をメチルエチルケトン(MEK)で希釈し、固形分が36質量%の(メタ)アクリル系共重合体4Bの溶液を得た。
得られた(メタ)アクリル系共重合体4Bは、溶解度パラメータ(SP値)が20.37(J/cm
3)
1/2であり、ガラス転移温度(Tg)が73℃であり、重量平均分子量(Mw)が20万であった。
製造例4Bにて製造した(メタ)アクリル系共重合体Bの単量体組成を下記の表2に示す。
【0136】
<製造例20B>
撹拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、及び温度計を備えた反応器内に、メチルエチルケトン(MEK)50.0質量部を入れ、撹拌を行いながら反応容器内の温度を還流が発生するまで上昇させた。還流開始から10分後、メチルメタクリレート(MMA;単独重合体のTgが80℃以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体)80.0質量部(81.8mol%)、エチルアクリレート(EA;単独重合体のTgが0℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体)14.0質量部(14.3mol%)、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DM;アミノ基を有する単量体)6.0質量部(3.9mol%)、及び2,2’‐アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(V−601;重合開始剤)20.0質量部を、MEK20質量部に溶解させた溶液を3時間かけて滴下し、更に2.5時間反応させた。反応終了後、反応混合物をトルエンで希釈し、固形分が40質量%の(メタ)アクリル系共重合体20Bの溶液を得た。
得られた(メタ)アクリル系共重合体20Bは、溶解度パラメータ(SP値)が20.37(J/cm
3)
1/2であり、ガラス転移温度(Tg)が73℃であり、重量平均分子量(Mw)が0.1万であった。
製造例20Bにて製造した(メタ)アクリル系共重合体Bの単量体組成を下記の表2に示す。
【0137】
<製造例21B>
撹拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、及び温度計を備えた反応器内に、メチルメタクリレート(MMA;単独重合体のTgが80℃以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体)80.0質量部(81.8mol%)、エチルアクリレート(EA;単独重合体のTgが0℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体)14.0質量部(14.3mol%)、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DM;アミノ基を有する単量体)6.0質量部(3.9mol%)からなる単量体混合物のうち20質量%、酢酸エチル(EAc)15質量部、及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN;重合開始剤)0.01質量部を入れて加熱し、還流温度で20分間重合を行った。
次いで、還流温度条件下で、単量体混合物の残量75質量%と、EAc 16.6質量部及びAIBN 0.03質量部からなる重合開始剤溶液と、を約1.5時間かけて逐次滴下し、更に1時間後、EAc 25質量部及びAIBN 0.1質量部からなる重合開始剤溶液を1時間かけて逐次滴下し、更に2時間反応させた。反応終了後、反応混合物をメチルエチルケトン(MEK)で希釈し、固形分が36質量%の(メタ)アクリル系共重合体21Bの溶液を得た。
得られた(メタ)アクリル系共重合体Bは、溶解度パラメータ(SP値)が20.37(J/cm
3)
1/2であり、ガラス転移温度(Tg)が73℃であり、重量平均分子量(Mw)が40万であった。
製造例21Bにて製造した(メタ)アクリル系共重合体Bの単量体組成を下記の表2に示す。
【0138】
【表2】
【0139】
上記の表2中、組成の欄に記載の「−」は、該当する成分を含まないことを意味する。
【0140】
上記の表2に記載の各単量体の詳細は、以下に示す通りである。
「MMA」:メチルメタクリレート(単独重合体のTg:103℃)
「IBMX」:イソボニルメタクリレート(単独重合体のTg:155℃)
「EA」:エチルアクリレート(単独重合体のTg:−27℃)
「2EHMA」:2−エチルへキシルメタクリレート(単独重合体のTg:−10℃)
「DM」:ジメチルアミノエチルメタクリレート(単独重合体のTg:18℃、アミノ基を有する単量体)
「2HEMA」:2−ヒドロキシエチルメタクリレート(単独重合体のTg:55℃、水酸基を有する単量体)
【0141】
上記の表2に記載の(メタ)アクリル系共重合体Bのガラス転移温度(Tg)、重量平均分子量(Mw)、及び溶解度パラメータ(SP値)は、既述の方法により測定した値である。
【0142】
参考として、製造例1Bにて製造した(メタ)アクリル系共重合体Bについて、溶解度パラメータ(SP値)の算出方法を以下に記載する。
【0143】
(SP値の算出)
実施例1Bにて製造した(メタ)アクリル系共重合体Bの溶解度パラメータ(SP値)は、以下の式(1B)に基づいて算出される。
SP値=[ΣEcohM1/(ΣVM1×4.182)]
1/2×XM1/100+[ΣEcohM2/(ΣVM2×4.182)]
1/2×XM2/100+・・・[ΣEcohMn/(ΣVMn×4.182)]
1/2×XMn/100 式(1B)
ΣEcohM1、M2・・・Mn : M1、M2・・・Mnの凝集エネルギー密度
ΣVM1、M2・・・Mn : M1、M2・・・Mnのモル容積
XM1、M2・・・Mn : (メタ)アクリル系共重合体Bの全構成単位に対する、M1、M2・・・Mnの含有率(質量%)
M1、M2・・・Mn : (メタ)アクリル系共重合体Bを構成する単量体の種類
【0144】
実施例1Bにて製造した(メタ)アクリル系共重合体Bは、単独重合体のガラス転移温度が80℃以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位B1として、メチルメタクリレート(MMA)に由来する構成単位を含み、単独重合体のガラス転移温度が0℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位B2として、エチルアクリレート(EA)に由来する構成単位を含み、かつ、アミノ基を有する単量体に由来し、構成単位B1及び構成単位B2とは異なる構成単位B3として、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DM)に由来する構成単位を含む。
まず、MMAに由来する構成単位のΣEcoh及びΣV、EAに由来する構成単位のΣEcoh及びΣV、並びに、DMに由来する構成単位のΣEcoh及びΣVを算出した。
【0145】
−MMAに由来する構成単位のΣEcoh−
MMAに由来する構成単位は、CH
3、CH
2、COO及びCの各構造を有し、各構造の凝集エネルギー密度は、それぞれ4710[J/mol]、4940[J/mol]、18000[J/mol]及び1470[J/mol]である。したがって、MMAに由来する構成単位のΣEcohは以下のように算出される。
MMAに由来する構成単位のΣEcoh=4710×1+4940×2+18000×1+1470×1=33830
【0146】
−MMAに由来する構成単位のΣV−
MMAに由来する構成単位は、CH
3、CH
2、COO及びCの各構造を有し、各構造のモル容積は、それぞれ33.5[cm
3/mol]、16.1[cm
3/mol]、18.0[cm
3/mol]及び−19.2[cm
3/mol]である。したがって、MMAに由来する構成単位のΣVは以下のように算出される。
MMAに由来する構成単位のΣV=33.5×2+16.1×1+18.0×1+(−19.2)×1=81.9
【0147】
−EAに由来する構成単位のΣEcoh−
EAに由来する構成単位は、CH
3、CH
2、COO及びCHの各構造を有し、各構造の凝集エネルギー密度は、それぞれ4710[J/mol]、4940[J/mol]、18000[J/mol]及び3430[J/mol]である。したがって、EAに由来する構成単位のΣEcohは以下のように算出される。
EAに由来する構成単位のΣEcoh=4710×1+4940×2+18000×1+3430×1=36020
【0148】
−EAに由来する構成単位のΣV−
EAに由来する構成単位は、CH
3、CH
2、COO及びCHの各構造を有し、各構造のモル容積は、それぞれ33.5[cm
3/mol]、16.1[cm
3/mol]、18.0[cm
3/mol]及び−1.0[cm
3/mol]である。したがって、EAに由来する構成単位のΣVは以下のように算出される。
EAに由来する構成単位のΣV=33.5×1+16.1×2+18.0×1+(−1.0)×1=82.7
【0149】
−DMに由来する構成単位のΣEcoh−
DMに由来する構成単位は、CH
3、CH
2、COO、C及びNの各構造を有し、各構造の凝集エネルギー密度は、それぞれ4710[J/mol]、4940[J/mol]、18000[J/mol]、1470[J/mol]及び4190[J/mol]である。したがって、DMに由来する構成単位のΣEcohは以下のように算出される。
DMに由来する構成単位のΣEcoh=4710×3+4940×3+18000×1+1470×1=52610
【0150】
−DMに由来する構成単位のΣV−
DMに由来する構成単位は、CH
3、CH
2、COO、C及びNの各構造を有し、各構造のモル容積は、それぞれ33.5[cm
3/mol]、16.1[cm
3/mol]、18.0[cm
3/mol]、−19.2[cm
3/mol]及び−9.0[cm
3/mol]である。したがって、DMに由来する構成単位のΣVは以下のように算出される。
DMに由来する構成単位のΣV=33.5×3+16.1×3+18.0×1+(−19.2)×1+(−9.0)×1=138.6
【0151】
MMAに由来する構成単位、EAに由来する構成単位、及びDMに由来する構成単位の合計に対する、MMAに由来する構成単位の含有率、EAに由来する構成単位の含有率、及びDMに由来する構成単位の含有率が、それぞれ80.0質量%、14.0質量%、及び6.0質量%であるため、SP値は以下のようにして算出される。なお、表中では、SP値について、小数点以下2桁目を四捨五入している。
SP値[単位:(J/cm
3)
1/2]=[33830/(81.9×4.182)]
1/2×80.0/100+[36020/(82.7×4.182)]
1/2×14.0/100+[52610/(138.6×4.182)]
1/2×6.0/100=19.48
【0152】
[粘着剤組成物の調製]
<実施例1>
(メタ)アクリル系共重合体Aの溶液100質量部(固形分換算値)と、(メタ)アクリル系共重合体Bの溶液10質量部(固形分換算値)と、架橋剤(商品名:TETRAD−C、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、エポキシ化合物、三菱ガス化学(株))0.1質量部(固形分換算値)と、を十分に撹拌混合して、粘着剤組成物を得た。
実施例1にて調製した粘着剤組成物の組成を表3に示す。
【0153】
<実施例2〜29>
実施例2〜29では、表3に示す粘着剤組成物の組成としたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着剤組成物を調製した。
【0154】
<比較例1〜14>
比較例1〜14では、表4に示す粘着剤組成物の組成としたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着剤組成物を調製した。
【0155】
[試験用フィルムの作製]
実施例1〜29、及び比較例1〜14にて得られた粘着剤組成物を用い、以下のようにして試験用フィルムを作製した。
まず、粘着剤組成物を、片面に離型処理が施されているポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(剥離フィルム、厚さ:100μm)の離型処理面上に、乾燥後の厚さが約20μmとなるように塗布し、100℃の条件下にて1分間乾燥した。次いで、PETフィルムのもう一方の面に、加圧ニップロールを通して、塩化ビニルフィルム(型番:0012−30B、厚さ:150μm、日本カーバイド工業(株))を圧着して貼り合せた後、23℃、50%RHの条件下にて7日間養生を行い、試験用フィルム(PETフィルム/粘着剤層/塩化ビニルフィルム)を作製した。
【0156】
[評価]
<粘着力の測定>
上記にて作製した試験用フィルムを切断し、25mm×150mm(長辺)の大きさの試験片を準備した。
試験片の剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層の表面を、ABS樹脂製の板(ABS板)の表面に重ねて貼り合わせた後、2kgのローラーを1往復させて圧着した。次いで、圧着後の試験片を、温度を140℃に調整した乾燥機内に1分間投入した後、23℃の環境下にて30分間放置した。次いで、放置後の試験片を、温度を100℃に調整した恒温槽内に5分間投入した後、100℃の環境下にて、長辺(150mm)方向に180°剥離した場合の粘着力(単位:N/25mm)を、測定装置として、テンシロン万能試験機(型番:RTF−1350、(株)エー・アンド・デイ)を用い、剥離速度300mm/分の条件にて測定し、下記の評価基準に従って、高温環境下での粘着力を評価した。結果を下記の表(表3及び表4)に示す。
評価結果が「A」、「B」又は「C」であれば、粘着力が十分に高く、実用上問題がないと判断した。
【0157】
−評価基準−
A:粘着力が20N/25mm以上である。
B:粘着力が15N/25mm以上20N/25mm未満である。
C:粘着力が10N/25mm以上15N/25mm未満である。
D:粘着力が10N/25mm未満である。
【0158】
なお、剥離の際にジッピングが生じた場合には、測定値の中間値を採用した。また、下記の表(表3及び表4)中では、一部にジッピングが生じたものについては「pZ」を併記し、全体にジッピングが生じたものについては「Z」を併記した。
ここで、「ジッピング」とは、粘着力の強弱に起因して、滑らかに剥離せず、バリバリと音を立てて剥離する現象をいう。
【0159】
【表3】
【0160】
【表4】
【0161】
上記の表(表3及び表4)に記載の各架橋剤の詳細は、以下に示す通りである。
・「TETRAD−C」:商品名、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、固形分:100質量%、エポキシ化合物、三菱ガス化学(株)
・「コロネートL−45E」:商品名(「コロネート」は登録商標)、トリレンジイソシアネート(TDI)とトリメチロールプロパンとのアダクト体、固形分:45質量%、イソシアネート基の含有率:7.9質量%、イソシアネート化合物、東ソー(株)
・「アルミキレートA」:商品名、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、金属キレート系架橋剤、川研ファインケミカル(株))
【0162】
表3に示すように、実施例1〜29の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、粘着力の評価結果がいずれも「A」、「B」、又は「C」であり、140℃の高温加熱による貼着後、高温環境下に曝されても高い粘着力を示した。
【0163】
一方、表4に示すように、比較例1〜14の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、粘着力の評価結果がいずれも「D」であり、140℃の高温加熱による貼着後、高温環境下に曝されると、高い粘着力を示さないことがわかった。
【0164】
以上の結果より、実施例1〜29の粘着剤組成物は、フィルムを高温(例えば、140℃)に加熱して成形体に貼着させる加飾法における上記貼着に使用した場合であっても、貼着後の高温環境下で高い粘着力を示す粘着剤層を形成できると考えられる。